『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第44話「フェイが敵!?」の感想 【史上最強の欝回】

 毎週水曜日夜7時からテレビ東京系列で放映されている超次元おもしろアニメ『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』の恒例の感想文。今回はその第44話「フェイが敵!?」を観ての感想を書く。松風天馬(CV:寺崎裕香)が再会を待ち焦がれた親友は、2人で築いた絆を頑(かたく)なに否定し続ける。こんな形の再会は見たくはなかった……。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第43話「メカ円堂登場!」の感想 【てめえらの血はなに色だ〜っ!!】
 をご覧ください。

 で、一覧表示されます。

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 人類の支配を目論(もくろ)むセカンドステージチルドレンの組織フェーダとエルドラドのサッカー対決「ラグナロク」は2戦を終えて1勝1敗の五分となり、最終戦にその決着は持ち越された。


 第3戦をエルドラド側のキャプテンとして迎えることとなる天馬は、その日の戦いを控えて無人で静まり返る早朝のラグナロクスタジアムの一角に腰掛け、その最終決戦に思いを馳せていた。

 だが天馬は人類の命運が決してしまうその試合よりも、今ここに居ない親友のことに考えが行ってしまう。いつも隣にいた親友の温(ぬく)もりを探すかのように、彼は隣の席を撫(な)でる。



天馬「君がいない……」


 見上げる青空には、天馬の心の拠り所(よりどころ)であったその親友、フェイ・ルーン(CV:木村亜希子)の笑顔が浮かんでいた。あまりに唐突に、そして理不尽に失われてしまったその笑顔を思い、寂しげな天馬に声を掛ける者がいた。

 それはフェイと共に200年後の世界からやって来て、天馬の前に現れたクラーク・ワンダバット(CV:吉野裕行)であった。フェイのことを思うあまりサッカーバトルに対する戦闘意欲までが減退する天馬を見かねて声を掛けたのだろう。

 そしてその傍(そば)では、思いつめた表情を浮かべる菜花黄名子(CV:悠木碧)が佇(たたず)んでいた。天馬と同様、いやそれ以上にフェイを心配するかのようなその表情……。黄名子はフェイに対し、何を思うのだろうか?




   オープニング



 ワンダバは天馬の隣、ちょうど先ほど天馬が触れたその席に座り、彼とフェイとのあいだの過去の話を問わず語りに話し始める。ワンダバがフェイと行動を共にしてきたのは彼の創造主でありフェイの協力者でもあるクロスワード・アルノ(CV:楠見尚己)博士の指示であり、フェイのお目付け役を言いつかったということを明かす。アルノ博士はフェイの背後に存在したセカンドステージチルドレン皇帝・SARUことサリュー・エヴァン(CV:岡本信彦)の真意も見抜いていたから、フェイが道を踏み誤(あやま)らぬよう、出来れば善導(ぜんどう)できるようワンダバを付けたのだろう。

 だがワンダバがその役を嬉々として受け入れたわけはそれだけではなかった。


ワンダバ「彼が好きだったからだ……」


 初対面の折、フェイはロボットであるワンダバに対しサッカーボールを差し出し、一緒にサッカーをしようと笑顔で語りかけたのだ。監視役のロボットにも普通の友達に接するのと同じ態度を示したフェイの良き性格を察したワンダバは、その瞬間フェイの人柄に惚(ほ)れ込んでしまったのだ。



 フェイとワンダバとのあいだにはその瞬間、人間とロボットという感覚や監視役と被監視役という関係はなくなり、ただ友情だけが芽生えた。いつも狂言回し的な役どころが多いワンダバだけど、このシーンは感動的だった。


 ワンダバは大事な友人であるフェイの奪還を天馬に託す。天馬のサッカーでフェイの目を醒(さ)ましてやって欲しいと懇願(こんがん)する。ワンダバにはフェイの本心がセカンドステージチルドレンとして破壊の限りを尽くす悪魔などではなく、サッカーを愛する一人の少年であることが分かっていた。記憶を消されていた時の姿、それこそが本当のフェイの姿なのだ!

 ワンダバのその言葉を受け、天馬も頷(うなず)き返す。フェイと一緒にサッカーをしたいというのは天馬の願いでもあるからだ。

 ただ天馬は記憶を取り戻したフェイの冷たい態度、そしてそれとは裏腹の熱い憎悪の感情を目の当たりにしていた。フェイを引きとめようとした天馬に対し「自分たちの存在を認めない奴らと戦う」と言い放ったフェイの頑なな態度は、天馬からフェイを説得する自信を奪い去っていた。


黄名子「できるやんね!!」


 そこまでじっと黙っていた黄名子が強い口調でそう叫ぶ。天馬たちの前に出てきた黄名子は、フェイと共に様々な試練を乗り越えてきた天馬になら、フェイの目を醒まさせることが可能であると確信していた。

 フェイの方も天馬やワンダバの気持ちに気付いてくれると、黄名子は太鼓判を押して保証する。そして大空に向けて両手を広げ、フェイがそこにいるかのように言って聞かせる。すべてを包み込む掌(たなごころ)を示すかのように……。



黄名子「フェイ、あなたは一人じゃない!」

黄名子「こーんなにもあなたを思ってくれる仲間がここにいるやんね!!」


 この世の理(ことわり)を達観したかのようにそう言い切る黄名子の自信に満ちた表情はまるで子を思う母親の思いを述べているかのようだった。それを見て天馬とワンダバにもフェイの心を取り戻すことが不可能ではないと思えて来た。

 2人は黄名子に強く同意する。



 そして試合開始を前に、ミーティングルームでは最終戦に臨む【エルドラドチーム03】の意思確認が行われていた。この試合がラグナロクの勝敗を決し、すべてを決定づける試合になるということを監督の豪炎寺修也(CV:野島裕史)は切々(せつせつ)と説く。

 それを受けてキャプテンの天馬は「勝ってサッカーと円堂監督を取り戻すんだ!」と仲間に檄を飛ばす。一斉に拳を振り上げてその言葉に同調するメンバーだったが、旧プロトコル・オメガ勢と旧パーフェクト・カスケイドのレイ・ルク(CV:河野裕)はそんなのどうでも良いとか思ってそう。特にレイ・ルク。



天馬『そして……フェイも!』


 天馬は心の中で、フェイの奪還をも誓うのだった……。



 試合会場に向かう連絡通路上で、豪炎寺は第1戦の監督を務めた鬼道有人(CV:吉野裕行)と向き合う。鬼道は人類の命運を、この中学二年生の時からのライバルであり仲間でもある豪炎寺に託す。

 第1戦で負けを覚悟した上で次に繋げる1点を取った鬼道の気持ちを理解する豪炎寺は、その気持ちに応えてみせると拳を握りしめて、勝利を誓う。彼ら自身のため、そして2人にとって共通の親友、円堂守(CV:竹内順子)のためにも!



 そして一試合終わるたびに元の世界に戻され、試合開始前には必ず招集される悲劇の拉致(らち)られ野郎、沖縄海の家の経営者・矢嶋陽介(CV:佐藤健輔)の元に例のスフィア・デバイスが訪れる。鉄板上で調理中の焼きハマグリと焼きホタテをそのままに、彼は200年後へとタイムトリップする(させられる)。


 喚び出されるたびに驚くのだが、すぐにブレインジャックされてノリノリの実況を開始する矢嶋。試合を終えた【エルドラドチーム01】と【エルドラドチーム02】の選手たち、そして現最高権力者のトウドウヘイキチ(CV:相沢まさき)とその座を狙うSARUとが見守る中、ラグナロク第3戦が間もなく開始されようとしていた。


 試合直前のフィールドでアップのストレッチをする天馬の元に、レイ・ルクが歩み寄る。



レイ・ルク「データベースを更新しました。これよりあなたをキャプテンと見做(みな)します」


 アンドロイドだけに融通が利かないらしく、レイ・ルクはPCのOSをアップデートした時のような素っ気なさで天馬をキャプテンと認める。実際サカマキトグロウ(CV:石井康嗣)辺りの操作でそういう風にプログラミングされたんだろうな。

 緊張する場面の中、妙に場違いで滑稽(こっけい)な展開にさしもの天馬も苦笑いを浮かべる。


 レイ・ルクの態度に毒気を抜かれたものの、天馬はフェイがこの試合を見に来ているのではないかとあわてて観客席に目を凝らす。だが見つけられない。そのうちに天馬の視線はフェーダのVIP席に向かう。そこには卑劣な手段でフェイを天馬に巡(めぐ)り合わせたSARUと、そしてローブ姿の老人、支援者X(CV:家中宏)がいた。

 その姿はワンダバ、黄名子、そして豪炎寺の3人が同時に目撃し、それぞれ特殊な反応を示す。豪炎寺はその老人がタイムブレスレットを自分に託してくれたことを覚えていた。タイムブレスレットを付けていればサッカーを救うことになると言われ、それを実行してきたのだ。だがその支援者XがフェーダのVIP席にいる……。

 豪炎寺は支援者Xがフィフスセクターを支援していたのはセカンドステージチルドレンに進化を遂げるための方策だったのではないかと結論づける。確かにそう考えるのが合理的だろう。つまり支援者Xはフェイと同様、天馬や雷門などサッカーをために協力していたのでは無いということだ。あくまでSSC遺伝子をこの世に誕生させるための方便だったと考えればこの展開も説明がつく。



 支援者Xにタイムブレスレットを託された時の豪炎寺。彼はこの行為をフェーダの野望のためと疑っているが、SARUとのあいだに確執のある支援者Xがそんなに軽い気持ちで行動していたとは思えない気がするのだが……。


 敵の思惑通りの行動を取っていたことに豪炎寺は歯噛みする。だがすぐに思い直す。今は目の前の試合に集中することが大事で、指揮官の自分が動揺していては士気に影響が出てしまう。


 一方天馬はその間もスタジアム全域に目を凝らしていた。だがフェイの姿は発見できなかった。第2戦同様、フェイはこの試合も見に来てはいないのだろうか……?


 その時、通路に繋がる隔壁が音を立てて開く。チーム03の対戦相手【チーム・ガル】が入場して来るのだ。



 この先頭左の選手、木戸川清修の貴志部大河に似てる気がする。


 粛々と入場して来るチーム・ガルの選手たち。だが天馬はそこで信じられないものを目撃する!

 最後尾、他の選手と色違いのユニフォームで入場する選手を見て、観客席の黄名子も声を上げて驚愕(きょうがく)する。ワンダバが信じられないといった表情でその視線を送る先……他の雷門の仲間たちもその異質の存在に気付いた。



 天馬がその姿を探していた当のフェイが、何と敵のユニフォーム姿で試合会場に現れたのだ! しかも左腕には、キャプテンマークまで付けて……。


 天馬はあわててフェイの元に駆け寄る。


天馬「フェイが、決勝戦の相手なの!?」
フェイ「……そうだよ」


 フェイは自身がこのチーム・ガルのキャプテンだとあっさりと認める。天馬の動揺などまったく意に介さないそのそっけない態度は、SARUの後ろ姿を追って天馬の元を去った時と同じ冷たさを感じさせた。

 マネージャーの空野葵(CV:北原沙弥香)もこの残酷なまでの親友の再会を見て言葉が出ない。

 天馬は当然の如く、こんな形でフェイと戦いたくないと叫ぶ。しかしフェイはやはり無感情に仕方がないと返す。フェイは呪われた自分の記憶を思い出してしまったのだ。


 雪の降る夜、暗い室内で帰って来ない父を待っていた幼きフェイ……捨てられたと思い込んだ彼は、父が自らのセカンドステージチルドレンの力を恐れたのだと結論づける。

 一人ぼっちになったフェイに声を掛けたのがSARUだった。おのれの力を素晴らしいものだと肯定し尊重してくれたSARUに同調し、自分たちを認めない連中に復讐(ふくしゅう)することを決意したのだとフェイは語る。

 「復讐」という憎しみの極地の場面で使用される言葉を聞かされ、天馬は驚く。フェイの気持ちを知ったワンダバも悲しそうに見つめる中、天馬はそれが本当にフェイの望む結果を生み出すのかと問いかける。

 フェイはその質問には答えず「手加減はしないよ」とだけ言い捨てて自軍ベンチへと歩み去ってしまう。その背中は『もう仲間ではない、邪魔だてするならお前たちも復讐の対象だ』と言っているようだった。



 変わり果ててしまった親友がこれから戦う敵のキャプテンであるという状況に激しく動揺する天馬に、豪炎寺が厳しく一喝(いっかつ)する。先ほど自身にも課した通り、今は試合に集中するべき時なのだ。ましてや天馬はこのチームのキャプテンである。動揺はチームの士気に影響する。天馬は豪炎寺の指示にハイと返答するが、果たしてそれが天馬に可能なのかどうか……。「友達思い」という天馬の長所が、ここでは短所になりかねない。




 恒例の試合開始前の両チームの布陣。珍しく敵チームの配置の方が先だが、チーム・ガルはやや中央を厚くした3−5−2の割とオーソドックスな布陣。キャプテンのフェイはやはり要のポジションにつく。

 個人的な備忘録(びぼうろく)としてガルのメンバー全員の名前をここに列記しておく。確認のためいちいちWikipedia見に行くのも面倒だし……。なおピンク字表記は女性。

 1番GK チェット
 2番DF カズチ
 3番DF フミータ
 4番DF グゥミ♀
 5番MF ヨッカ
 6番MF ローコ♀
 7番MF ピノ
 8番MF タクジ
 9番MF フェイ
10番FW デッキ
11番FW ユウチ
 (声優は一切不明。主要キャラの使い回しだと思われる)



 かたやチーム03は、攻撃的な3−4−3の布陣。影山輝(CV:藤村歩)と雨宮太陽(CV:江口拓也)がツートップ。10番レイ・ルク、9番レイザ(CV:藤村歩)もいつでも前線に向かえる攻撃的な布陣だ。ただこの2人は2番のメダム(CV:金野潤)を含め、雷門ユニフォームが似合ってねぇ〜。個人的には6番浜野海士(CV:金野潤)と7番速水鶴正(CV:吉野裕行)にも注目。



 試合開始直前、キックオフのためにセンターサークル内に入った天馬は敵になってしまったかつての親友を見つめる。サッカーを守るという使命を持って、今まで共に戦い続けて来たフェイへの思いで天馬の頭は一杯になっていた。さっそく豪炎寺の「試合に集中しろ」という指示が頭から飛んでるよ天馬くん。


 その悩みが命取りになる。それは回りまわってフェイを取り戻すことに失敗するということと同義だ。天馬の葛藤(かっとう)を見てとったワンダバと黄名子が大声で天馬の名を呼び、叱咤激励(しったげきれい)する。

 ハッとなった天馬に対し、ワンダバと黄名子は無言で天を指差す。そこには早朝、3人でフェイを取り戻すと誓い合った青空が広がっていた。我を取り戻した天馬は、フェイにワンダバ、黄名子、そして自身の思いをサッカーで伝えることが出来るのは自分だけなのだと気合いを新たにしてフェイと向き合う。


 そして天馬の心の高まりが最高潮に達した瞬間、試合開始のホイッスルが高らかに鳴り響いた。



 キックオフ! 太陽からパスを受けた天馬はドリブルで駆け上がる。フェイの横を駆け抜ける天馬だったが、フェイが微動だにしないことに逆に驚く。天馬はある程度進んで太陽にパスを送る。

 太陽はずっと着ていたかのように似合う雷門ユニフォーム姿でゴールに視線を送る。そしてサッカーを守るという思いをこの決勝という大事な場面で結実させる。

 化身「太陽神アポロ」を召喚し、さらにここまで試(こころ)みたこともない化身アームドに挑戦したのだ。「太陽神アポロ」は太陽の思いに応え、その姿を光の束に変えて太陽にまといつく。



 ここで初披露の太陽の化身アームド。いつの間に出来るようになったんだろう? ゲームでもいつの間にか出来ていた気がする。ちなみに孔明の化身もアームド出来るので、太陽の化身アームドは2種類ある(ネップウ限定)。


 太陽はその姿でシュートする。化身アームド状態でのシュートは必殺技並みの威力を持つ。だがチーム・ガルのキーパー、チェットはなぜかこれも微動だにせず待ち受ける。その大胆な態度に太陽が驚いた束の間、足を伸ばしてそのシュートを防いだのは……。



 フェイだった! さっき天馬に抜き去られてずっと後方にいたはずなのに……それだけでも驚愕なのだが、さらに太陽の化身アームドシュートを足一本で止めてしまうとは……。そしてさらにフェイの発言がチーム03の全員をより驚愕させる。


フェイ「一緒にいたチームがこれほど弱かったとは……」


 その強さもさることながら、あのフェイがこんな暴言を吐くなんて……。フェイは性格まで変わってしまったかのように不敵な笑みを浮かべ、セカンドステージチルドレンの力を見せてやるとばかりに一気に駆け出す。せっかくの化身アームド初披露を咬(か)ませ状態で破られた太陽をその場に置き去りにしてフェイは7番ピノにパスを送る。受けたピノは空中でアクロバティックにパスを受け、着地する前にはもうパスを出していた。文字で書くと簡単そうだが、これはものすごい身体能力の高さだ!

 レイザがボールに向かうが、それを挑発するように目前で6番ローコが華麗にとんぼ返りで捌(さば)いてしまう。その後もチーム・ガルの選手たちはまるで遊んでいるかのような自由奔放(じゆうほんぽう)なパス回しで一気にチーム03陣内に攻め込んで来る。

 そしてラストパスを受けたフェイが最終ラインの霧野蘭丸(CV:小林ゆう)をかわしてチーム03ゴールを目指す。受けて立つのはキーパーの西園信助(CV:戸松遥)だ。

 フェイは久々の必殺技「バウンサーラビット」を撃つ。信助は必殺キーパー技「ぶっとびパンチ」で迎撃するが、フェイのシュートを止めることは出来なかった!





 かつてはプロトコル・オメガのザノウ(CV:岩崎了)にさえ止められていたフェイの初期必殺技だというのに信助には止められなかった。信助はその強力なパワーに舌を巻く。その様子を見て、葵はフェイがパワーアップしているのではないかと豪炎寺に問う。豪炎寺はそれがフェイの本当の力なのだと見当を付ける。セカンドステージチルドレンとしての記憶を取り戻したフェイの本当の力……。その強引なまでの力によるねじ伏せ方はフェイらしくはなかった。黄名子は悲しそうにフェイの名をつぶやく。

 そのプレーぶりまで変わってしまったフェイの姿に驚愕する天馬に、当のフェイが話しかける。


フェイ「認めてくれるよね!? 僕たちセカンドステージチルドレンの実力を……」


 フェイは天馬を驚愕させ、その力を認めさせようとしたのだ。だが顔色のなかった天馬がここで意外な言葉を返す。



天馬「そんなの、出来ない! だって、フェイは俺たちの仲間だから!!」


 ハッとなるフェイ。天馬のその言葉はフェイの心の琴線(きんせん)に触れた。ここまで頑なに天馬を拒絶し、敵に回ったことを明確にしている自分のことをまだ「仲間」と呼ぶ愚直なまでのその思いが、逆にストレートにフェイの心に響いたのだ。

 自分たちの元に戻ってきて欲しいと泣き出しそうな表情で必死に語りかける天馬。フェイはしばしの沈黙の後、天馬のその言葉をはねのける。



「僕はセカンドステージチルドレンの……フェイ・ルーンだ!!」


 自分を信じて、仲間だと認めてくれた天馬の優しさをフェイははねのけてしまった。それはSARUの狡猾(こうかつ)な勧誘もあったであろうけど、そこまでにフェイが受けた心の傷の深さを想像させるものでもあった。父に捨てられ、自己の存在を全否定されてきたフェイの心の闇は深い。

 捨てゼリフを残して駆け去っていくフェイを引き止める術(すべ)を、天馬は持ち合わせてはいなかった。だが諦(あきら)めはしない。天馬にとってサッカーを取り戻すという目的は、フェイの存在抜きではあり得ないものとなっていたからだ。



 試合再開。輝がボールを持って上がるが、相手のディフェンスが素早く突破することが出来ない。サイドにいたトーブ(CV:ゆきじ)にパスを送るが、その目前でフェイがカットしてしまう。久々の登場だというのにボールを奪われたトーブが見せ場を取り戻そうとフェイの前に回って行く手を遮(さえぎ)るが、フェイはサディスティックな表情を浮かべてそのまま減速せず突き飛ばしてしまう。

 そんなプレーもこれまでのフェイは絶対にやらなかったプレーだった。しかも相手はかつての仲間だ。特にトーブはフェイのミキシマックスした相手であるビッグ(CV:悠木碧)の親友でもある。そんなトーブをフェイは躊躇(ちゅうちょ)なくはじき飛ばしてしまったのだ。

 フェイはゴール前に持ち込んでシュートする。ノーマルシュートだがパワーアップしているだけに油断できない。信助は劉備のオーラをミキシトランスしてシュートに備える。



 だが恐るべきことに、フェイのノーマルシュートはミキシトランスした信助ごとゴールネットに叩きつけてしまう! やはりフェイは、かなりのパワーアップがなされているようだ。これで得点は0−2とワンチャンスでは追いつけない展開となってしまう。


 ピッチでは先ほどフェイに突き飛ばされたトーブが足を痛めて立ち上がれなくなっていた。心配する仲間たちを安心させようと無理に立ち上がるが、やはりその痛みは相当きついようだ。

 足を押さえて痛がるトーブの姿をチーム・ガルのピノとローコは笑い出す。天馬は相手を怪我させるようなラフプレーをしたフェイが許せなかった。猛烈に抗議する天馬の激昂(げっこう)とは逆にあくまでも冷静なフェイは、自分たちセカンドステージチルドレンは特別な存在であり、旧人類である天馬たちを淘汰(とうた)しなければならないと恐ろしいことを平然と語る(この場合の淘汰は絶滅させるという意味)。

 その心の中まで変わり果てたフェイの姿は、それを見守るワンダバと黄名子を悲しませる。



黄名子「こんなサッカーを一番嫌っていたのはフェイやんねっ!?」


フェイ「天馬……君たちは敵なんだ」


 その発言を聞いて、SARUは満足そうに笑う。フェイをこのようにした張本人であるSARUにとって、おのれの教えに忠実なフェイはまさに野望遂行のために望ましい部下であった。



 試合再開。と同時にフェイは枷(かせ)が外れたかの様にラフプレーに徹する。天馬にあのような言葉を投げつけたことにより、完全に仲間を思う心の枷が無くなったということなのかもしれない。まずは太陽に強烈なチャージを仕掛けてボールを奪い取る。



 この場面のフェイは酷い……。歯を食いしばって全力で激突している。太陽はまだ身体に一抹の不安があるというのに……。


 太陽を気遣う間もあらばこそ、フェイは浜野を鎧袖一触(がいしゅういっしょく)で突き飛ばし、速水も予定調和的にぶっ飛ばす。



 何だか「ついで」のようにぶっ飛ばされ、血祭りにあげられるはやみん


 ラフプレーからこぼれ落ちたボールに向けて、ペナルティエリア内から信助が駆け寄ってくる。だがそれは信助をおびき寄せるためのフェイの策略だった!

 信助がボールに追いつこうとした瞬間、フェイはボールの前に駆け寄ってボールごと信助を蹴りつけたのだ。これは反則ではないが、それだけになおのこと卑劣で狡猾な印象を与えるプレーだった。

 激しくダメージを受けた信助は飛ばされて立ち上がれない。その前に勝ち誇るかのように仁王立ちするフェイ。



 何て冷たい視線をしているのだろう。それはかつての仲間を見る目ではない。情け容赦ないプレーのあとにその表情で睨(にら)まれたら信助じゃなくとも恐怖を感じるだろう。その暴挙を止めるべく、天馬が両者のあいだに割って入る。


天馬「止めるんだ! こんなのフェイらしくないよ!」
フェイ「君に僕の何が分かる!?」


 フェイは自分のことを分かっているかのような天馬の言葉に激しく反発する。天馬は本当のフェイのことが分かると続けるが、フェイはその言葉を否定するために考えられるもっとも激しいプレーをもってその返礼とする!


「本当に分かるのなら僕の邪魔をするな!」

 フェイが初めて天馬に命令口調で語り、そして初めて暴力的に振る舞った……つらいストーリー展開の今回の中でも一番つらいシーン。


 人としての心を捨てたかのようなその行為は、黄名子を絶望の淵へと追いやる。小さく叫び声を上げた黄名子はフェイの姿に何を思うのだろうか?

 フェイのシュートで吹き飛ばされ、スローモーションで地面に落ちた天馬は物心両面から来るダメージの大きさから、気を失ったかのように動かなくなってしまう。先のプレーで痛めつけられた信助はようやく上体を起こしてフェイと天馬の両者を見ていた。

 そのフェイの所業を、SARUは肯定をもって見つめていた。セカンドステージチルドレンの圧倒的な力で人類をねじ伏せるという姿はラグナロクという場でSARUが世界に向けて示したかった理想の姿であるからだ。そしてフェイはそんなSARUの野望の尖兵(せんぺい)となり果てていた。


 フェイはシュートすればいつでもゴールが決まる状態の中で、天馬に戦いを諦めるよう最終通告する。天馬はもちろんその勧告を拒絶して立ち上がる。天馬はフェイが復讐することを望んでいると言った先の言葉をどうしても信じられなかった。


天馬「俺の知ってるフェイはサッカーを復讐になんか絶対に使わない!」
天馬「だって、(フェイは)サッカーが好きだから!!」


 その言葉はまたもフェイの固く閉ざしたはずの琴線に触れる。動揺の色をその瞳に宿したフェイに、天馬は再度の説得を試みる。これまでいろんな時代に行って築いてきた思い出を語り、フェイの心に宿されたはずのサッカーへの思いを喚起(かんき)させようとする。

 フェイは本来の記憶を消されていたとはいえ、その間の記憶もちゃんと残されていた。そこではサッカーを通じて培(つちか)われた人と人との温かい繋がりがあった。まるでサッカーボールが思いを伝え合うツールのように、ボールを蹴り合うことで心と心が理解し合える世界がそこにはあった。戦国時代で、中世フランスで、三国志の時代の中国で、幕末で、恐竜時代で、アーサー王の物語の中で……フェイの隣には天馬の笑顔が、天馬の隣にはフェイの笑顔があった。2人が絆でつくった城が、そこにはあった!


 サッカーが懸け橋になったと熱く語る天馬の言葉をフェイは表情に出さずに反芻(はんすう)する。そして天馬は語気を強め、自分の気持ちをぶつけるとばかりに必殺技「ワンダートラップ」でフェイからボールを奪い取る!



 必殺技「ワンダートラップ」炸裂! ただフェイを感動的な言葉で説得していたのにこんな形で騙し討ちみたいにいきなり奪取してしまって良いのだろうか? 私がフェイだったら「天馬、言ってることとやってることが違うよ!」とツッこむが。


 案の定、怒り出したフェイは天馬の後を追いかける。対峙(たいじ)したフェイに、自らの心の鼓動をぶつけるように、天馬はさらなる必殺技「アグレッシブビート」の体勢に入る。その2つの技が、フェイと最初に出会った時に天馬が会得した技であることに、ワンダバは気がつく。天馬はフェイとの思い出をサッカーの必殺技という形でぶつけようとしていたのだ!

 だがフェイも天馬の気持ちなどに自らの使命を邪魔されたくないという本能に忠実に行動する。「アグレッシブビート」が発動する前に詰め寄り、天馬を吹き飛ばしてしまったのだ。



 駆け抜けながらフェイはサッカーが懸け橋の役割を果たしたという天馬のさっきの話を否定する。セカンドステージチルドレンの崇高(すうこう)な使命を自覚するフェイは、天馬とは分かりあえないのだと心に期する。


 天馬が苦悶の表情でフィールドに落下したところで前半戦終了のホイッスルが鳴る。決定的な3点目を奪われることこそ避けられたが、試合展開は0−2とチーム03が圧倒的に不利な情勢のまま後半戦に持ち込まれる。

 点差以上に両チームの実力には大きな開きがあると言わざるを得なかった。フィジカルでは足を痛めたトーブのみならず、太陽や浜野、速水、信助、そして天馬が満身創痍(まんしんそうい)の状態だ(犯人は全部フェイ)。怪我をしていない選手もチーム・ガルの奔放(ほんぽう)なプレーに振り回され、疲労の色が濃い。

 精神的にも天馬はフェイから拒絶の攻撃を受けて落ち込んでいた。敵チームベンチ前のフェイの横顔を見つめる天馬に対し、豪炎寺が試合開始前に言った忠告と同じ言葉をもう一度天馬に伝える。

 悩むのは後で、今は試合に全力を注げ、と。


 さらにデータ面でも完全に押されていたことを物語っていた。こういう計算にはめっぽう強いレイ・ルクが(機械の頭脳ですしおすし)、ガルのボール支配率を95%以上とはじき出す。チーム03がボールを持っていたのは試合開始直後の太陽の化身アームドシュートまでだった。それも敵のお情けで打たせてもらったものだと、太陽は憤懣(ふんまん)やるかたなしといった風情で吐き出す。

 こうまであらゆる面で圧倒されていては、チームの頭脳たる蘭丸も対策が立てられない。彼我(ひが)の実力差を思い、途方に暮れてしまう。


 こんな時に現れるのは本来なら正義の味方……なのだが、



???「やはり俺様の力が必要なようだな!?」



 (バレバレなのだが)何者かの声が響き、思わずそちらを見やるチーム03メンバーたち。この瞬間、画面外から顔を出す浜野と速水がちょっと無理やり感があって可愛い。


 その声の主は、スタジアムの壁面に陣取っていた。その図々しいまでに自信満々で自意識過剰な物言いは……!?




 やっぱりこの男、ザナーク・アバロニク(CV:小西克幸)だった!! 「暴れ馬を乗りこなすから待っててね(意訳)」とか言ってたくせに、もう乗りこなしてきたのかよ!? 早すぎだろ。ただこの場面に関しては、ものすごく頼りになりそうな雰囲気ではある。



 次回に続く



  エンディング



 今回の感想の更新が非常に遅れてしまって申し訳ない。ご心配やご迷惑をおかけしました。

 PCの調子、録画の問題、私自身の不調、多忙などいろんな事象が重なってしまって今回の作業は苛烈を極めた。イナズマの感想が週をまたいで日曜日もオーバーしてしまうのは久しぶりだ。プロバイダとのトラブルでネットに繋げることが出来ず、ネットカフェにまで行って更新した時以来じゃないかな?


 また今回がイナクロ始まって最強レベルの欝な展開だったというのも影響している。私もフェイの行動についてあまりにマイナスで暗い感想を抱いてしまっていたので、当初下書き段階で書いた文章の大半をボツにしたぐらい。今回の内容もまだ暗い状態が残っている気がするが、ストーリーそのものがそうだったわけでそこを糊塗(こと)しても仕方がない。できるだけ暗さ一辺倒にならないよう気をつけて書いたつもりだが、面白くなかったとしたらごめんなさい。



 それにしても……。

 フェイがあのライフセーバーみたいなジャケット着て天馬たちと戦うなんて展開は見たくはなかった(いろんな意味で)。やはりフェイは親に捨てられたという気持ちの隙間をSARUにつけ込まれたというのが真相だったらしい。ただフェイはもう一度「目醒め」ると思うんですよ。サッカーの楽しさ、家族の優しさ、そして天馬たちとの友情というものに。彼を信頼し、一人にしないという存在が天馬であり、きっとその思いは通じると思う。SARUより前に天馬と会っていれば、こんなに歪んだりはしなかっただろうに……。


 他に気になった点。豪炎寺はタイムブレスレットを受け取った相手が支援者Xだったからその正体に気付くのも分かるが、幕末編で支援者Xを一度見かけただけのワンダバと黄名子はどうして反応したのだろうか? この辺は伏線として今後に描かれそうだ。私の想像では支援者Xは敵ではない。フェイと対面したとき、フェイをじっと見つめていたシーンからも、おそらくは彼の父親なのではないだろうか? 何か事情があって正体を明かせないとか……?


 さて次回は「春だ一番! ザナークさん祭り!」というタイトルにしてもいいんじゃないかと思われるぐらいザナークがはっちゃけ大爆発する回になりそう。


 そうなるとザナークが入ることでポジションを奪われてしまう、いわゆる倉間典人(CV:高垣彩陽)的な泣きの役どころは一体誰になるのかという点が注目される。トーブは足を痛めたものの次回予告で出ていたし、化身も持っているだけに外されることは考えにくい。

 となるとやっぱり外れるのは化身を持たない浜野か速水ということになるのか? 倉間と合わせて前作映画の頃から冷遇されている2年生トリオだしなぁ。レイザ、メダムの可能性もあるが、この4人の中の誰かということでおそらく間違いないだろう。



 いつぞやの剣城京介(CV:大原崇)よりも超絶に似合わないザナークさんの雷門ユニフォーム姿。このユニフォームは正義の味方が着るから、悪役だった連中が着ると本当に似合わないと思ってしまうんだろうなぁ……。プロトコル・オメガのユニフォームも似合ってなかったし、ザナークはコーディネートが難しい。鬼のパンツなんかが似合いそう。あと金棒。


 ザナークはハチャメチャな性格だけど、こうなったらどんな存在であろうと、フェイの目を醒まさせるために役立って欲しい気がする。ザナークの持つ雰囲気ならこの暗い閉塞(へいそく)した雰囲気を吹き飛ばしてくれそうだから。



  次回「グレートマックスなオレ!」に続く。



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