『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第50話「最後のタイムジャンプ!」の感想 【時空最強イレブンよ、永遠なれ!!】

 毎週水曜日夜7時からテレビ東京系列で放映されている超次元おもしろアニメ『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』の恒例の感想文。今回はその第50話「最後のタイムジャンプ!」を観ての感想を書く。【フェーダ】と【エルドラド】の戦いもこれで終わる。そして、物語の大きな流れもこの回で終焉(しゅうえん)を迎えることとなる。時空最強イレブンよ、永遠なれ!!


 当ブログは、『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第49話「猛攻!セカンドステージチルドレン!!」の感想 【最終決戦・中盤戦】
 をご覧ください。

 で、一覧表示されます。

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 人類の次期支配権をかけたサッカー決戦「ラグナロク」もいよいよ大詰め、残り時間は僅(わず)かとなる。

 セカンドステージチルドレン最強のチーム【ザ・ラグーン】の攻勢の前に4失点を喫した【クロノ・ストーム】だったが、サッカーの根源的な魅力を思い出し、のびのびとプレーする松風天馬(CV:寺崎裕香)たちのサッカーを触媒としての「絆」の力が、SARUことサリュー・エヴァン(CV:岡本信彦)率いるザ・ラグーンの選手たちを徐々に圧倒していく。

 ついに3−4と1点差に追い上げたクロノ・ストーム。果たして限られた時間内に同点、逆転を果たし、SARUの野望を阻止することが出来るのだろうか?



 セカンドステージチルドレンの威信にかけて負けられないという思いがSARUを衝(つ)き動かす。その前に立ちはだかるのは天馬だった。ザ・ラグーンが特別な力を持ったセカンドステージチルドレンたちの意志の結晶であることを主張するSARUの思惑と、そうではなく仲間であり友達であるからこそ絆でつながれるのだと主張する天馬。2人はサッカーボール越しに互いの人生観をもぶつかり合わせる。



 あくまでも人智を超越した力に依拠(いきょ)するSARUの言い分に対し天馬は懸命にその考えが誤りであることを告げるのだが、旧人類たちに疎(うと)まれ蔑(さげす)まれてきたSARUにとって、セカンドステージチルドレンであることが彼にとってのレゾンデートル(存在意義)なのだ。その考えは絶対に譲れないものがあった。


SARU「僕たちは、特別なんだ!!」



   オープニング



 そんなSARUの悲しくも思い上がった態度を改めさせるには、もはやこのサッカー対決の戦いでその思いごと打ち破るしかない。天馬の渾身(こんしん)のセービングによってボールはサイドラインを割る。

 肩で息をするキャプテンを心配してメイア(CV:佐々木日菜子)とギリス(CV:江口拓也)が駆け寄ってくる。SARUは勝利のために彼らのすべての力を出し切って戦うことを提言する。ギリスとメイアはそのSARUの意見を危険すぎると婉曲的(えんきょくてき)に諌めようとする。

 だがSARUはそんな2人をこれ以上ないという怖い表情で睨みつけ、有無を言わせずに実行すると宣言する。メイアとギリスもその覚悟、そしてSARU自身に対する畏怖(いふ)のために従うより他はなかった。


 試合再開後、即座にSARU、メイア、ギリスの3人は高速で三角形の形でパスを回し始める。そしてSARUが大きく前方に蹴り出す。それはSARUの意地がこもったシュートだった。守備の要、霧野蘭丸(CV:小林ゆう)を司令塔にしたクロノ・ストームDF陣がそのシュートを阻止に向かうが、強烈な威力の前に吹き飛ばされてしまう。



 3人のうちでパスを繰り返して威力を増したのだろうか? これはクロノ・ストーム側の必殺タクティクス「グランドラスター」の3人バージョンとも言えるかもしれない。蘭丸、菜花黄名子(CV:悠木碧)、トーブ(CV:ゆきじ)といった名うてのDF陣が簡単に粉砕されてしまった!


 DF陣を抜ければあとはゴールまで一直線だ。ここでこのシュートが決まってしまえば、残り時間を考えてもクロノ・ストームの敗北は決定的だろう。神童拓人(CV:斎賀みつき)、雨宮太陽(CV:江口拓也)、剣城京介(CV:大原崇)らが見つめる中、クロノ・ストームの最終防衛ラインを担う西園信助(CV:戸松遥)は絶対にゴールを割らないと誓い、必殺キーパー技「大国謳歌」の挙動を取る。



 亜空間に描かれた水墨画の山から飛び降り、この技の究極進化系である「真・大国謳歌」で信助は迎え撃つ。だがSARUのシュートはそれをあっさりと貫いてしまう!!

 SARUだけでなく、メイアとギリスの全力も加わったそのシュート、技名こそなかったもののこれまでにザ・ラグーンサイドから放たれた最強のシュートだったのだろう。信助の技をも破られ、もはや失点するのは必定と思われた、その時!



天馬・剣城「まだだっ!!」


 いつの間にかゴール前にまで戻っていた天馬と剣城が2人がかりで必死のセービングを試みる。諦めない彼らの頑張りは功を奏し、SARUのシュートを止めることに成功する。

 だが転がったボールを再び押さえたのはSARUだった。渾身のシュートを止められ、吹き出す汗を右手で拭(ぬぐ)いながらもSARUはまだ天馬たちを淘汰されるべき旧人類と位置付け、攻撃性を隠そうとしない。


 満身創痍(まんしんそうい)なのはSARUだけではない。信助のミキシマックスした身体から、まるで力が放出するかのようにオーラが一瞬立ち上(のぼ)る。それを見た天馬は自身の身体からも力が失われていることを自覚する。このままミキシマックスし続ける体力も、クロノ・ストームメンバーにはもはや残されてはいなかったのだ。


 ここでキャプテンの天馬が仲間たちに出した指示は、皮肉にも先ほどSARUがメイアとギリスに命じたものと同じだった。残された全力を出し切ってSARUたちの力を受け止めようと提言する。



 だがその意見はSARUとは違い、仲間たちに即座に賛同を持って受け入れられる! ここがこれまで培ってきた絆でつながっていることを自覚するクロノ・ストームのアドバンテージであり、かつ特殊な力を持たない存在でありながらSARUたちに対抗できていた原動力と言えるものなのだろう。まぁぶっちゃけ、ミキシマックスと化身アームドが出来るだけでも十分に特殊能力者だと言えるんだけどね。



 そしてベンチの首脳陣。戦況をジッと見つめる円堂守(CV:竹内順子)に、豪炎寺修也(CV:野島裕史)が天馬たちの健闘を賞賛する言葉が伝えられる。そして彼らを後押しする力として、監督、つまり円堂の最後の力添えが必須であると説く。お互いに指導者であり10年来の親友だ。その必要性は円堂にも十分に分かっていた。

 円堂はやおらフィールドに向き直り、サッカーにとって大切なものは何であるのかを大声で説いて選手たちに自問させる。



「思い出せ! お前たちの大好きなサッカーを!」


 それはハーフタイムから徹底して天馬たちに伝えようとしていた、円堂のサッカーへの思いに対する根源的な問いかけであった。改めて胸に刻みつけられた「俺たちのサッカー」を強く意識する天馬は、かつてアーサー王と出会った幻想世界においてクロノ・ストーン状態の円堂大介(CV:藤本譲)が時空最強イレブンの極意を説いた時の言葉を思い返していた。


「サッカーにおける強さとは、個人の能力ではない。チームの力は選手同士が生み出すハーモニーによって決まる」


 そして次に円堂が雷門中の監督だった頃に語っていた言葉を思い出す。


「全員の力を合わせてぶつかれば、必ず勝てる!」


 それらの言葉は、天馬たちが砂粒(すなつぶ)のような個ではなく、チームという意識の集合体であることを想起させる。



 力を合わせて戦う、それは絆でつながったチームでなければ不可能だ。常にチームとして彼らは喜びや悲しみを共に分かち合い、そしてどんな困難事にも立ち向かってきたのだ。そしてその結果を追い求める過程を含めて、それこそがサッカーの面白さであり天馬たちが追い求め共有して来たものなのだということに思いが至る。

 笑顔でそれを振り返る教え子の姿を、円堂たちは微笑みをもって見つめていた。正しき解に至った天馬の姿を見つめる彼らの視線は優しい。



「甘い!! 甘いんだよ!!」


 だがそんな価値観を受け入れられないSARUは竜宮レナ並みに恐ろしい形相(ぎょうそう)で天馬たちに挑みかかる。天馬は手を広げてSARUの前に立ちはだかる。それで止められるという天馬の態度にSARUはムキになって攻め上がるが、天馬の存在は実はフェイク(おとり)だった。

 天馬しか見えていなかったSARUの横から剣城がスライディングタックルを見舞い、ボールを奪取してみせた。



 ブロック技なんて一切持たない、男らしいまでにストライカーに特化された剣城にボールを奪われてしまうというのは、ある意味屈辱的。ゴール前以外ではてんで役に立たないのがゲーム版の剣城だから。


 怒りを表出させるSARUに対し、天馬はこれがチームとしての戦いだと言わんばかりに笑顔でボールを持つ。ザ・ラグーンの選手たちひとりひとりが最強だというのなら、天馬たちは11人で最強のイレブンになれば良いというその考えは、まさに天馬とSARUの哲学の違いをそのままサッカーの現場に持ち込んだ理屈だ。


 その場の雰囲気を見て、観客席で仲間を見守る雷門のメンバーも流れがこちらに来ていることを肌で感じていた。「フィールドで戦う11人」ではないものの、彼らもチームメイトなのだからフィールドに流れる空気に敏感なのは当然だ! フィールド外にも天馬たちには仲間がいてくれる。



 天馬は今こそ「なれる」のではないかと仲間たちに提案する。それが何のことなのか言葉をもって語らずとも、仲間たちには以心伝心(いしんでんしん)で伝わっていた。無言でうなづく神童、そして他の仲間たち。

 それらにうなづき返した天馬は目を閉じて精神を集中させる。仲間たちもそれに習うと、彼らの体躯(たいく)を黄色いオーラが包み始める。



 彼らの思いが文字通り昇華(しょうか)するかのように天空に舞い上がり、炸裂し、粉雪のようにその粒子が降り落ちてくる。


天馬「感じる……みんなの思いがひとつになって行くのを……」


 そこにいる11人だけではない。様々な時代で出会った様々な人々の思いが彼らの心に、身体に降り積もっていく。

 お勝(CV:高垣彩陽)が、ジャンヌ・ダルク(CV:寿美菜子)が、坂本龍馬(CV:千葉進歩)が、沖田総司(CV:梶裕貴)が、太助(CV:折笠富美子)が、劉備玄徳(CV:平田広明)が、走馬灯のように浮かんでは消えていく。剣城の兄、優一(CV:前野智昭)が浮かんだとき、日頃クールな剣城の表情が自然と笑顔になる。

 時空最強イレブンのオーラを持つ者も持たざる者も関係ない。その旅程で出会い、力を貸してくれたすべての人々の思いがまさに昇華され、クロノ・ストームの力になろうと駆けつけてくれたかのような感覚に至る。

 それは11人のオーラがハーモニーを奏でるという、まさに時空最強イレブン最初の提言者である大介の鑑定眼をもってしても認める、究極の時空最強イレブンの姿であった。天馬の言った「なれる」とは、ハーモニーを奏でる真の意味での【時空最強イレブン】のことだったのだろう。


天馬「この試合必ず勝つ! 未来を守り、みんなを救うんだ!!」


 天馬はそう叫ぶと、勇躍ドリブルで駆け出した。ハーモニーを奏でる仲間たちももちろんその天馬に付き従って攻め上がる。天高く飛び上がった天馬を10のオーラが追随し、大きな光を放つ。その中で天馬は必殺シュート「最強イレブン波動」を撃つ!!



 天馬たちの為すべきことは何が何でも阻止しなければ自らの理想郷は実現しないと強く自覚するSARUはそれを阻止すべく、仲間たちとともに立ち向かうが……



 その時空最強の波動の前になす術(すべ)なく押し流される。その威力を眼前で見て、最終ラインで待ち受けるホス(CV:泰勇気)もおそらくは阻止は不可能と悟ったかもしれない。だが彼は彼自身に出来る全力でそのシュートに立ち向かう。



 進化した「絶・リバースワールド」で止めようとするが、やはり止まらない。シュートがゴールネットを揺らすかと思われたその瞬間、なんとそのシュートによって一度は薙(な)ぎ払われたはずのSARUがゴール前にまで駆け戻って最後の抵抗を試みる。先ほどの天馬と剣城のプレーを彷彿(ほうふつ)とさせる凄まじいまでの執念だ!



 執念でシュートを止めようとするSARU。だが個の思いで止められるほどそのシュートは甘いものではなかった。天馬たちがこれまで関わってきた絆のすべてがこもったシュートだったのだから……。


 勝利への執念で上回ったのは天馬のシュートだった。SARUの絶望の悲鳴が轟(とどろ)く中、シュートはゴールマウスをこじ開ける。これでついに、ついにクロノ・ストームが4−4の同点に追いつくという展開になる!!!


 同点ゴールが決まり、ネットからボールが落ち行くさまをジッと見つめるSARUの表情にはもはやかつての憎たらしいまでの余裕などかけらも見受けられなかった。そこにいるのは、過信した実力を完膚なきまで叩き潰され、追い詰められた絶望にひしぐ一個の少年の姿、だった。



 優れた存在であるはずのセカンドステージチルドレンが淘汰されるべき旧人類に追い詰められている……。その状態を悪夢だと虚勢を張って笑うSARUだった。だが、これは現実だ。


 自嘲(じちょう)とも取れるその笑いを押し殺し、SARUはメイアとギリスの名を呼ぶ。振り向いたSARUは怒りに満ちた表情で「やり返すぞ」と命令する。その迫力に押され、2人はただただうなづき同意するしかなかった。


 そしてSARUはまたもオーラを表出させてその身体を巨大化させていく。また猿の遺伝子とのミキシマックスをするつもりらしい。一個の野獣に姿を変えたSARUはイムス(CV:佐藤健輔)からのパスを受け、突進を開始する。

 錦龍馬(CV:岩崎了)、ザナーク・アバロニク(CV:小西克幸)というクロノ・ストームきっての肉体派の両名が止めにかかるが、野獣化したSARUには敵わず吹き飛ばされてしまう。



 ゴリラ並みのパワーを見せつけてきたザナークといえども、ほんまもんには敵わなかったようだ。スーパーザナークがこうやって力負けして吹き飛ばされるシーンはおそらくこれが最初で最後。


 その怒涛(どとう)の勢いはフェイ・ルーン(CV:木村亜希子)をも抜き去ってしまう。フェイはかつての仲間のSARUを最大限評価しつつ、自身が決定的にSARUに優(まさ)っている点も知っていた。


フェイ「僕たちはひとりじゃない!!」


 ギリスへのパスをカットした神童からパスを受け、フェイはそう言い放つ。やはり全力には無理があったのだろう、SARUは野獣の状態を解き、苦しげな表情を浮かべる。

 先ほどもあったが、満身創痍なのはクロノ・ストームも同じだった。天馬は限界間近を感じて膝を地についてしまう。ふと仲間を見やると、太陽や黄名子が膝に手を当てて辛そうにしている。一人で立っている者も、腰に手をやって疲れと必死に戦っていた。


 お互いに限界が近い状態。天馬は次のプレーで決着をつけることを期し、仲間に全員攻撃の指示を出す。最後のプレーは全員でというその発想は、最後まで仲間の絆を信じてのプレーというわけだ。仲間たちも一瞬のためらいもなくキャプテンのその意見に賛同する。

 イチかバチかという表現がそのまま当てはまるのがサッカーにおける全員攻撃という手段だ。ボールを奪われた瞬間、ほぼ失点が確定する危険な作戦であり、およそこのような局面で採用するものではない。

 だが仲間はキャプテンを信頼していた。今一度思いを共有させた時空最強イレブンはオーラを発動させて宙高く飛び上がる。迎え撃つザ・ラグーンもここが勝負どころだということは分かっている。11人が紫のオーラを噴出させてボールの到来を待ち受ける。先頭に立つのはもちろんSARUだ。




 お互いの意地がぶつかり合うように激突した両者は閃光に包まれる。目を開けた天馬の目に見えるのは、DNAの塩基配列。そしてそこに自らの思いを語るSARUの声が響いてくる。これはSARUの心の内面なのだろうか?




 そこでもSARUは自分たちが未来のために産み出された、いわば神に選ばれし優れた人間だとの自説を述べる。天馬は自分とSARUのどこが違うのかと問う。優れていようがいまいが、どちらも同じ人間であると淘汰という考えの愚かさを説く。

 SARUがどんな思いでここまで歪んだ意識を持ってしまったのかは天馬には想像もつかない。だが天馬はSARUを同じ人間として扱いたかったのだ。

 そんな天馬の思いをSARUは聞き入れようとはしない。自分と天馬は同じではない、自分の方が優れた人間なのだとあくまでもその意識を捨てようとはしないのだ。


SARU「僕たちはセカンドステージチルドレンなんだ!」


 そしてSARUが天馬から差し伸べられた手を拒絶したその瞬間、意識は現実に戻る。ボールを挟んでまたもお互いの意見の齟齬(そご)をぶつけ合わせる天馬とSARU。

 この力比べは怒りに駆られたSARUがボールを押し込み、天馬は自陣サイドにボールを蹴り込まれてしまう。仲間に助力を乞(こ)う天馬に、即座に応じるクロノ・ストームイレブンたち。



 ボールはフェイがキープし、クロノ・ストームの全員攻撃は継続される。仲間のリカバリーをすぐに行える、こういうところも絆というものの強みだろう。

 そして今度はフェイを核にして最強イレブンのオーラが集結する。天馬が放った必殺シュート「最強イレブン波動」の再現を、フェイが果たす!!



SARU「止めろぉおおおおっ!!!」


 SARUの血を吐くように振り絞られた心の叫びを聞き、ザ・ラグーンのメンバーも全員が連結してそのシュートに向かう。だが……



 必殺シュート「最強イレブン波動」はもはや何者にも止めることなど出来はしなかったのだ! このシュートが決まり、ついに試合は5−4とクロノ・ストームが逆転に成功する。

 空野葵(CV:北原沙弥香)が天馬を絶賛するクロノ・ストームベンチ。鬼道有人(CV:吉野裕行)はとうとう事の大半を成し遂げた教え子たちの健闘を心から称える。円堂、豪炎寺ももちろん同意見だ。



 フィールドではこのワンプレーに残りの全体力をかけて挑んだクロノ・ストームの選手たちのミキシマックスが解けていく。彼らの体力はもはや限界を越えていたのだ。


 一方、同様に最後の力をかけて守ろうとし、それが果たせなかったザ・ラグーン。SARUは悔しさにフィールドの芝生を掴みながらもまだ諦めずに立ち上がろうとする。

 だが度重なる無理なプレーで右足を痛めてしまっていた。その痛みに耐えかね、立ち上がったSARUはまたもフィールドに倒れ込んでしまう。


 もがきながらSARUは背後に視線を感じた。ハッとなって振り返ると、そこには部下たちの姿があった。いずれも無表情な視線を向け、その態度はこれまでにないどこか不気味な雰囲気だった。



 その表情を見て、SARUは彼らが皇帝たる自分に対する信頼を失い、落胆し失望しているのではないかと心配する。

 部下に動揺を与えてはならない。SARUはまだ戦えるということを見せようと、必死で立ち上がろうとする。しかしその右足はどうしても言うことを聞かない。悔しさに地面を拳で叩きつけるSARUは、部下たちが倒れる自分を見て嘲笑(ちょうしょう)しているのではないかという妄想にとりつかれる。

 部下を力で押さえつけ、力で支配していた自らが力で敗れたとき、それは部下たちの意識の総離反を意味するものであるということをSARUは心のどこかで覚悟していたのではないだろうか?

 SARUは今、本当に一人ぼっちになってしまう恐怖を感じていた。ラグナロクという人類に対する挑戦も今まさに失敗に終わろうとしている。こんな時に一人ぼっちになってしまうその不安感は、SARUをフェーダの皇帝から一人の年端もいかないただの少年に戻していた。


SARU「もう終わりだ!!」
???「……まだだ」


 初めて弱気を見せたSARUに対し、それを明確に否定する声が聞こえる。見ると笑顔を浮かべたギリスが「まだ試合は終わっていない」とSARUを励ましていた。その笑顔は嘲笑などではなく、心からSARUを心配し、勇気づけようとする意識に満ちていた。そしてそれを受けてメイアも立てないSARUのために膝まづき、自分たちを導くために頑張って欲しいと語りかける。

 なおも力が残っていないと弱気なSARUに、ギリスは試合時間はまだ残っていると言って、最後までともに戦い続けることを望む。なぜなのかを問うSARUに対し、オム(CV:美名)やピグ(CV:野島裕史)、ニケ(CV:戸松遥)といったメンバーたちは当たり前だと言わんばかりの口調でここまでともに戦ってきた同志であることを強調し、キャプテンとしてのSARUの次の指示を待っていた。



ギリス「このまま負けるのは僕の美学に反するんだ」


 冗談めかしてそう言うギリスは、SARUの性格的にも「負けたまま終わるのは許せないだろう?」と手を差し出す。SARUはこの瞬間、初めて本当の意味での仲間を得たのではないだろうか?

 SARUは気づかされた仲間の絆のためにもこのチームを負けさせるわけには行かないと、最後の気力を振り絞って立ち上がろうとする。ギリスの手を借りながら、いつもの強気のフェーダ皇帝を演じるSARUのその態度は、間違いなく絆で結ばれた者でしか到達し得ない境地に達していた。

 立ち上がって一声吼(ほ)えたSARUの表情はもう試合開始前のその飄々(ひょうひょう)とした自信に満ちあふれたものに戻っていた。自分を信じてくれている仲間たちの表情を見回しながら、SARUはこの絆のために痛めた足も厭(いと)わずに仲間に殉(じゅん)じる心境に至る。それはこの試合中、天馬が何度もSARUに言い聞かせようとしていたチーム観そのものだった。


SARU『今分かった……。フェーダがつながっていたのは力を持っていた者同士だったからじゃない。……戦える、この仲間と一緒なら!!』



SARU「さあ行くぞっ!!」
一同「オウッ!!」


 今ここにザ・ラグーンも絆でつながるチームと化した。



 その敵チームの変貌ぶりに、天馬も大喜びで歓迎する。ミキシマックスが解け、本来ならば全力のプレーが敵わないピンチの状況なのだが、この底抜けに明るいキャプテンの指示の下なら何とかなるさと感じられるのが不思議だ。


天馬「よぉし、思いっきりサッカーしよう!!」

 天馬の口車に乗せられる皆さん。心なしかザナークが一番ノリノリのようだ。



 そしてそこからはミキシも化身も超能力もない。お互いの肉体のみでぶつかり合う、本当の意味でのしのぎを削るサッカー対決に突入する。その状態でも両チームの技量はまったくの互角で、一進一退の素晴らしいプレーの応酬となる。

 宙に浮いたボールを奪い合って激突する天馬とSARU。外貌がそっくりな2人はそのボールに対する執着心もそっくり同じだった。疲れきった身体に鞭打ってルーズボールに向かっていくが、両者は互いの肩がぶつかり合って倒れてしまう。

 その疲労はもう両者をフィールドから再び立ち上がらせることを許さなかった。そのまま転がり続けたボールがラインを割って停止した瞬間、実況&審判の矢嶋陽介(CV:佐藤健輔)が高らかにホイッスルを鳴り響かせる。


 それは試合終了のホイッスルだった。つまり試合は……クロノ・ストームの勝利で終了する!!


 精も根も尽き果ててセンターライン付近で倒れたままの天馬とSARUもそのホイッスルを聞いたはずである。その天馬の元に、仲間たちが歓喜の笑顔を浮かべて走り寄ってくる。最初に駆けつけた信助にキャプテンに抱きつく権利を奪われ、剣城が微妙な表情を浮かべたのがツボだった。


 エルドラドVIP席では、議長のトウドウヘイキチ(CV:相沢まさき)が側近議員から祝福の言葉を受けていた。人類の勝利はイコール彼らの安全を確保するものであるのだから喜ぶのも無理はない。だがトウドウは冷静に、人類が救われたことを最初に語る。彼にとってはやはり自身の安全よりも人類全体に累(るい)が及ぶことを恐れていたということが端的に分かるシーンだった。



 一方、敗れたSARUの元にもメイアとギリスを始め、ザ・ラグーンのメンバーが集結する。全力を出し切って敗れた彼らに、悔しい気持ちはあっても悲壮感は窺(うかが)えない。メイアに至っては全力で戦えたことが楽しかったと笑みまでこぼれる。ヘタをしたら人類に対する反逆罪で裁かれてもおかしくはない状況なのだが、彼らは信頼しあえる仲間と全力で戦えたという喜びが今感じるもっとも大きな感情なのだった。

 無邪気に笑うメイアを倒れたまま見ていたSARUは、つられたように笑う。それは自身も天馬たちと全力の戦いをすることが出来たことに満足しているということを肯定していると取れた。



 そして円堂たちは感慨深げにスコアボードを見つめていた。彼らの教え子たちは人類を救うという大難事を見事に果たして見せたのだ。

 円堂は天馬を中心に勝利を喜び称えあう選手たちを見つめつつ、自分が不在の間に、雷門が自身の手をはるかに超えてしまうほどに大きくなったということを心から実感していた。



 ワームホールに閉じ込められていた試合会場、ラグナロクスタジアムが空に開いた穴からゆっくりと地上に降下してくる。すべては終わったのだ。個人的にはこのスタジアムをエルドラド本部ビルに戻す作業が残ってるんじゃないかと思ったんだけどね。



 大空を見つめながら、SARUはこの試合を通じて天馬たちに教えられた友達との絆という思いを噛み締めていた。フェーダの構成員たちは組織の一員などではなく、それぞれが欠くことの出来ない友達だったのだということを。

 またもギリスの差し出した手を取って立ち上がるSARUのその言葉は、仲間たちをやや気恥ずかしい雰囲気にさせる。「トモダチ」という言葉をこれまで使ったことがない彼らにとって、それは気後れしつつも越えるには素敵なハードルでもあった。彼らはこの敗北から上下関係ではない、友達になれる第一歩を踏み出したのだ。


 そこに、その絆を気づかせてくれた張本人の天馬がやって来る。天馬は何も言わずにその手を差し伸べる。それは試合中、何度も差し伸べた友情を確認する天馬からのアプローチであった。

 SARUは今度こそその思いを素直な気持ちで受け止める。感謝の言葉とともに握手をかわす。そのキャプテンの後ろ姿は、ザ・ラグーンの残りのメンバーから見ても清々(すがすが)しく誇らしいものとして映っていたに違いない。

 その思いは天馬の後方にいるクロノ・ストームのメンバーたちにも伝わっていたであろう。SARUは口に出すことを逡巡(しゅんじゅん)しつつも、自分も天馬の友達に加えて欲しいと言う。

 だが天馬は「それは違うよ」と返す。ひょっとして自分なんかを友達にすることは嫌だと言われるのではないかとSARUの心に一瞬不安がよぎる。



天馬「トモダチは加えるものじゃない。こうやって思いをぶつけ合ううちに、いつの間にかなるものなんだ!」


 いたずらっぽく笑いながらそう言う天馬は、もうすでに友達なんだとSARUの手を強く握り返す。SARUは敵だった天馬らを含め、本当の絆にたくさん触れ、仲間を得たことに満足していた。

 そしてエルドラドの要請を受け入れ、SSC制御ワクチンの投与を決断する。それはセカンドステージチルドレンの力などなくても人と人は分かり合えるということを天馬たちが教えてくれたからに他ならない。またこれで寿命が人並みになって、築かれた絆を大事にする期間が伸びることを彼は積極的に望んだのかもしれない。

 何にせよ、これで人類を脅かす脅威というものは消えることになる。SARUたちもごく普通の(サッカーは異様にうまいけど)少年少女になることが出来るのだ。


天馬「じゃあサッカーも喜ぶね!」
SARU「え?」


 サッカーを人間のように表現する天馬独特の言葉はSARUにはにわかに理解できない。天馬は、SARUたちが長く生きられるようになったら、サッカーを続けることを想定してそう言ったのだ。SARUにもその意味が理解できた。長く生きられる分、長くサッカーと付き合い、楽しむことが出来る。サッカーという競技にとってもそれは幸せなことだろう。



 フェーダと人類の和解の雪融(ゆきど)けが進む中、それを面白くないという目で見る2人の人物がまだこの会場内に存在した。それはセカンドステージチルドレンと近しい存在でありながら、フェーダには未加盟のガルシャア・ウルフェイン(CV:関智一)とヴァンフェニー・ヴァンプ(CV:笹沼尭羅)の両名だった。



 筋金入りの人間嫌いの彼らは、この素晴らしい試合を見てもその考えを改める気はないらしい。人間と和解したSARUの行為を、セカンドステージチルドレンとしてのプライドをわきまえない日和(ひよ)った態度だと両断する。


 そんな視線で見られていることなど露知らず、天馬は未来の世界でもサッカーで絆をつなぎ、広げていって欲しいとSARUにその思いを告げる。そのいかにも天馬らしい考えに苦笑しつつも、SARUは天馬の意志を200年後の世界でも受け継ぐことを受け合う。



 瀬戸水鳥(CV:美名)は天馬の成したことを称えて、後輩の天馬のことを「キャプテン」と呼んで賞賛する。山菜茜(CV:ゆりん)とクラーク・ワンダバット(CV:吉野裕行)はこの展開に感動した面持(おもも)ち。


 葵からの祝福の言葉を受け、天馬はお礼を言う。その時、ジッと浮かんでいたクロノ・ストーン状態の大介が突如光り始める。それはなぜかクロスワード・アルノ(CV:楠見尚己)博士の機器の力を借りることなく、人間状態の大介の姿に戻っていく。



 元に戻った大介さん。本来の彼はトンガットル共和国の病院に入院中の身だということを忘れがちだけど忘れちゃいけない。



 観客席からは、最後の戦いを応援し続けた雷門の仲間たちが勝利を祝っていた。前作では化身を持たなかった彼らが本作で活躍する余地はほとんど無かったとはいえ、彼らの存在も忘れちゃいけない。なぜかこの境遇の中から蘭丸だけが化身を持つという恩恵を受け、大活躍したんだよねぇ。浜野海士(CV:金野潤)ファンの私としてはその辺が納得いかなかったのだけど。


 観客席の仲間たちとの挨拶をかわす天馬たちを見つめる大介の後ろ姿に、孫の円堂が語りかける。時空を飛び越えるという未来の概念で本来ならば会うことは出来なかったはずの24歳の円堂と祖父の再会。その運命の不思議さを噛み締めながら、2人は久しぶりの再会を喜んでいた。

 不在の間を大介に助けられたと言う円堂に対し、大介は不敵に笑いサッカーの未来のためなら当然だと答える。再び輝き始める大介の姿を見て、円堂は驚く。それは剣城の兄、優一がかつてそうだったように、歴史のIF(もしも)の世界に存在する人物はそれが正された場合はその姿を消してしまうという原則に則(のっと)るものだった。おそらくクロノ・ストーンから人間の姿に戻れたことも、この原則が関係しているはずだ。

 消えてしまう前にこれだけは言っておかないとならないと大介は語る。



大介「これからもしっかり育ててくれ。わしらのサッカーを!」


 短い再会を終え、大介は笑顔でその姿を消していく。寿命がまもなく尽きそうな自身の心配よりも、自分たちのサッカーの行く末を心配するところがいかにも大介らしい。円堂はその遺志を受け継いで次代にしっかりと伝えることを約して、消え行く祖父を安心させる。



 時を超越するという行為は様々なドラマを生み出す。だがその冒険の物語も目的が果たされ、ついにその終焉を迎えようとしていた。ワンダバの操縦するイナズマTMキャラバンで現代に向けて帰還する天馬たち。

 過去に未来に、天馬たちはサッカーを通じてたくさんの絆を築いた。その絆こそが時空最強のものだったのだろうと、天馬は回想の中でそう語る。



 天馬たちを見送ったスタジアムでは、サカマキトグロウ(CV:石井康嗣)がアルノ博士と会話を交わしていた。人類の次世代の可能性を意味していたセカンドステージチルドレンという存在を彼らは消し去ってしまった。

 科学者という立場でありながら、その存在を否定したことに対してどうしても割り切れない思いを抱くサカマキ。仮に今の人類がセカンドステージチルドレンに滅ぼされることがあったとしても、それが新たな人類の進化の過程であれば受け入れることも必要だったのではないかというのだ。あたかもネアンデルタールを駆逐(くちく)して地上の支配者となったクロマニョンを肯定するかのように。

 その言葉はある意味では真実だったかもしれない。だがその運命はまだ少年の彼らにとって重すぎる荷であったと、アルノ博士は結論づける。それにもし本当に人類に避けようのない進化のタイミングが訪れれば、その時はいかに頑張っても時代の流れには逆らえないはずだと語る。

 その言葉は説得力があった。今回は彼らの尽力で止めることが出来た。つまり人類の進化はまだ時代に必要とされていなかったということなのだ。そう思えば、少なくともサカマキの科学者としての良心が疼(うず)くことはないだろう。



 時代を越える物語が終結し、すべては元の時間軸へ戻っていく。沖縄の海の家では、夕陽に照らされた厨房でカレー作りに汗を流す矢嶋の姿があった。彼に実況の才能があるということは、彼自身も知らないまま日常が過ぎていくことになるだろう。カレーの味を賛美する客の言葉に嬉しそうに受け答えする矢嶋、それこそが本当の時間軸における彼の姿なのだから。



 長い一日だったと何も知らずに振り返る矢嶋。さんざん実況していたせいで、声も枯れていたりする。やっぱり一連の拉致はすべて同じ日に行われていたらしい。矢嶋は実況の才覚はあるけど、審判としてはダメダメだったと思うけどね。


 そんな旦那の苦労をそれとなく感じたのだろうか? 嫁の成海(CV:佐々木日菜子)は彼のほっぺにチューしてその苦労をねぎらう。思えば何度も何度もタダ働きさせられた彼にとっての報酬と呼べるものは、この最愛の嫁のほっぺチューだけだった。だがそれだけで彼は十分に幸せだったろう。



 そして天馬たちにも、それぞれの時間へと戻るための儀式……別れの瞬間が訪れる。



 未来人であるフェイたちと、未来人でありながら恐竜時代を終(つい)の棲家に決めたトーブとの別れである。黄名子は雷門の寄せ書きが書かれたサッカーボールを持っていて、健気だ。


 フェイは名残惜しげに、別れを告げる。同行する黄名子、トーブ、ザナークをそれぞれのあるべき時代に送らなければならないからだ。そしてそれは彼自身にも当てはまる。未来人のフェイは未来に帰らなければならない。

 天馬は笑顔で彼らを送り出す。みんなとサッカーが出来たことを心から嬉しそうに語る天馬に、ザナークは「そういうと思ったぜ!」と言いつつ、天馬のその意見に同意する。彼も天馬たちとサッカー出来たことが嬉しかったのだ。最初からそう言え。ツンデレか?



 一方、黄名子とトーブはみんなとの別れが辛く悲しくて涙を流す。このシーンの2人を見てると本当に悲しくなってしまう。正直、帰らなくてもいいじゃんと思ってしまうよ。100歩譲って黄名子は帰らないとフェイが産まれなくなってしまうという制約があるけど、トーブの場合は帰らなくってもいいんじゃないの? ある意味ミッシングリンクのような存在なんだし。


 見送るサイドでも、信助が涙を浮かべて別れを惜しむ。浜野、そして神童からの惜別(せきべつ)の言葉を受け、フェイは笑顔で感謝の言葉を述べる。お互いがお互いを忘れなければ、時代が違っても築いた絆は残り続ける。それを知っているからなのだろうか、フェイの顔には別れの悲しさは窺えなかった。

 フェイはふと雷門中の校舎を見返す。そこには彼らを精神的につないだイナズママークがそびえていた。夕陽に照らされたそのシンボルマークを笑顔で見つめ、フェイはそのマークの元で培った素晴らしい思い出を永遠に忘れないだろうと心で思う。



 そしてついに出立(しゅったつ)の時。今まで様々な時代の人たちに見送られてきたイナズマTMキャラバンを、今度は見送る立場となった天馬たち。これが最後の見納めだ。しかし天馬は笑顔で飛びたつキャラバンを見つめていた。

 キャラバンの中でもワンダバの言葉を受け、フェイは希望に満ちあふれた未来に帰ることを指示する。


フェイ・ワンダバ「タ〜イムジャ〜ンプ!!」


 その言葉を残し、イナズマTMキャラバンは夕焼け空に消えていく。それは天馬が見る、最後のタイムジャンプなのだった。


 見送りつつ、天馬は未だに一連の経緯に現実感を抱けないでいた。もしかしたら夢を見ていたのだろうかと自問する。フェイを始めとする未来からの存在がすべて消えてしまった現在、そう思えるのも無理はないのかもしれない。それほどに荒唐無稽でハチャメチャで、そして素晴らしい夢のような出来事だったのだ。

 だけどそれがもし仮に本当に夢だったとしても、たくさんの友達が出来た素敵な夢だったと、天馬は納得することにした。




 エピローグ


 未来、それもフェイが本来帰るはずの未来より12〜13年ほど前の未来。フェイはその地に途中下車していた。大事な、本当に大事な人に出会うために……。



 結婚指輪をはめた手で、大きくなったお腹を愛おしそうにさするベッドの上の女性。それはフェイを身ごもった黄名子だった。病室の入口に佇(たたず)むフェイの姿を認めた黄名子は、笑顔で迎える。

 フェイにとってはさっきまで一緒だった黄名子だけど、黄名子にとってはその後の様々な人生のあとに久々に再会した仲間(であり息子)の姿だった。



 もうすぐフェイが産まれることを笑顔で語る黄名子。あの別れの時に雷門イレブンから受け取った寄せ書き入りのサッカーボールに経年劣化の跡が見受けられ、芸が細かい。この見た目の黄名子の姿から、やはり12歳だった頃の黄名子から10年ほど後の姿だろうか。「体を大事にな」と書かれた鬼道のコメントが、このあとの黄名子の運命を知っているかのようで悲しい。


 初めて見る母の顔をした黄名子を見て、フェイは嬉しさと気恥かしさがないまぜとなった表情を浮かべる。ただフェイはその後の母の運命を知っていた。


フェイ「でもキミは……」
黄名子「お母さんに、なれない?」


 黄名子もある程度覚悟していたらしい。夫となるアスレイ・ルーン(CV:家中宏)が未来の黄名子に関して言葉を濁(にご)したのは、フェイを産むに臨んでの黄名子の容態(ようだい)が悪く、その先には赤ちゃんの誕生と引き換えに命を落としてしまうという過酷な運命が待っているからであった。

 だがこれ以前に一度、母となった経験がある黄名子は強かった。薄々そのような運命が待ち受けていることを知りつつも、可愛い息子のために命をかけて産むことを決意していたのだ。


黄名子「でもいいの。ちゃんとこうして会えたから(^ω^)」


 驚くフェイに、黄名子はひだまりのような笑顔で歴史は変えられることを告げる。それはともに過ごした間に経験した冒険の過程で「インタラプト修正」という名で経験したことでもある。黄名子はその時のように自らを待つ死という運命と戦うことを宣言する。

 赤ちゃんのあなたに会うために、このインタラプトを乗り越えて、新しいタイムルートを作ってみせると黄名子は気丈に笑う。その決意を聞き、フェイも笑みを浮かべて母を応援することにする。


 母と子の美しい時間が過ぎていく。フェイはもう行くと告げ、その場を立ち去ろうとする。そんなフェイを呼び止め、黄名子はあの頃の面影が残った仕草でこう語る。



「フェイもしっかり頑張るやんね♡」


 黄名子=母という想いがその仕草で一挙に心に響いたフェイは、感極まった笑顔でただ「ウンッ」とうなづく。その表情は大好きなお母さんから励ましの言葉を受けて嬉しくて仕方がないという、少年のそれであった。



 そしてここからは新しいIFの世界……。フットボールフロンティアに優勝した円堂たち10年前の雷門中の選手たちの前に、天馬が現れる。

 円堂はインタラプト修正の初期に出会った天馬のことを覚えていた(時間軸的には1年の時間が流れている)。久々の再会、それもお祝いに来てくれた天馬の出現を円堂は素直に喜ぶ。

 だが天馬は単にお祝いに来たわけではなかった。サッカーボールを持ち、ユニフォーム姿の天馬は無言で右手側を指差す。そこには現代の雷門中サッカー部が臨戦態勢で円堂たちを見つめていた。



 なにげにフェイとワンダバも加わってる。まぁイナズマTMキャラバンを使わないと過去の世界には来れないハズだからな。


 唖然とする円堂に、サッカーボールを提示して、天馬はサッカーをしに来たのだと告げる。「また一緒にサッカーをやる」というあの時の約束を果たすために。

 強引に勝負に誘う天馬を見て、サッカーに対する情熱では誰にも負けないと自負する円堂も乗り気になる。ここに10年前と現代の、雷門のサッカー史に伝説を作った両雄の夢の対決が実現する!



天馬・円堂「よぉし! サッカーやろうぜ!!」



 次回に続く!!



  エンディング



 一応の大団円!!

 ゲームではここでエンディングに突入するのだけど、アニメはもう少しだけあるようだ。と言っても総集編になるんだろうけど。秋ねえこと木野秋(CV:折笠富美子)が出てくるのがイナクロでは総集編の合図というか……。


 セカンドステージチルドレンに勝利し、SARUたちは改心して未来のサッカーを担う存在となるという、実に良い終わり方だったと思う。ただ気になるのは、ガルシャアとヴァンフェニーの両者の存在がまだクリアされていないということ。もしかして映画なんかで登場したりするんだろうか?


 最後の場面、天馬たちが10年前の円堂に再会してサッカー対決するという終わり方もゲームそのままで楽しかった。ただこれもクレームつけるとすると、フェイとワンダバとはスッキリ別れたはずなのに、また登場するっておかしくない?

 だってフェイとの別れが今回のサブタイトル「最後のタイムジャンプ!」ということでしょ? もっかいタイムジャンプしてるやんね! まぁ個人的には別れたあとにまた会いに来るという展開は望ましいのだけど(笑)。黄名子やトーブ、ザナークなんかも誘えよと。


 黄名子と言えば、エピローグ的にお母さん黄名子とフェイが会うというシーンもアニメで再現してくれて嬉しかった。あのシーンは本当に泣いたよ。おそらく黄名子はインタラプトの修正をすることは不可能なんだと思う。もし黄名子が死なずに生き残れば、フェイが一人ぼっちとなり、そこからフェーダに加わるという展開も無くなってしまうわけで、歴史が大きく改変してしまうからだ。

 フェイがフェーダに加入しなければ、その後の展開として過去の天馬のところにやって来るという歴史も無くなり、そうなるとアスレイが過去の黄名子を雷門に送り込むことも無くなるわけで……。その辺のタイムパラドックスがどうしようもないと思うので、多分黄名子はお母さんになれないのではないかと……。

 お母さんになって欲しい気もするなぁ。私はbotを作るぐらい黄名子のことが好きだから。次回作にも絶対に黄名子を出して欲しいやんね! もちろんフェイ、トーブ、ザナークも!

 レベルファイブの人が拙ブログを見ててくれたらなぁ……。日野社長が「そういうと思ったぜ!」とか言ってくれたら最高なんだけど。



  次回「サッカーが帰ってきた!」に続く。



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