『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第37話「アーサー王とマスタードラゴン」の感想 【パーフェクトカスケイドの正体発覚!】

 毎週水曜日夜7時からテレビ東京系列で放映されている超次元おもしろアニメ『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』の恒例の感想文。今回はその第37話「アーサー王マスタードラゴン」を観ての感想を書く。悲しい別れと恐るべき敵との再会が描かれる。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第36話「集え!円卓の騎士!!」の感想 【新オープニング・エンディング!】
 をご覧ください。

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  時空最強イレブンの能力を手に入れるため、アーサー王伝説の物語世界の登場人物となった松風天馬(CV:寺崎裕香)たち雷門の一行。

 その世界で首尾よく円卓の騎士の入団テストに合格した天馬とフェイ・ルーン(CV:木村亜希子)だったが、マスタードラゴンを操る黒い騎士(CV:河野裕)の計略によって菜花黄名子(CV:悠木碧)が囚われの身となってしまう。

 アーサー王(CV:星野充昭)が持つあらゆるものを斬ることが出来るという伝説の聖剣「エクスカリバー」の魔力を取り戻し、一行は黄名子が囚われている「嘆きの洞窟」へと向かう。



 嘆きの洞窟では黄名子がマスタードラゴンに向けて優しく語りかける。



黄名子「あなた、本当は良いドラゴンやんね?」


 だがその問いかけを拒絶するかのように、マスタードラゴンは咆吼(ほうこう)を上げる。その大音量とド迫力に黄名子は耳を塞いで目をつぶってしまう。

 それでも黄名子は説得を諦めない。彼女はフェイの必殺シュート「エクストリームラビット」を受けたときのマスタードラゴンの目つきの変化に気付いていたのだ。つかの間、邪気の消えたその表情……それこそがマスタードラゴンの真の姿であることを、黄名子は確信していた。

 そして絵本でもマスタードラゴンが操られていたことを告げ、もうすぐみんな(これは雷門=円卓の騎士)が元に戻してくれるととびっきりの笑顔で語る。

 その屈託のなさに一瞬虚を突かれたようなマスタードラゴンだったが、やはり大咆哮を返答として黄名子の思いを拒絶する。頑(かたく)ななその態度に黄名子は一息、嘆息(たんそく)する。



   オープニング



 一方の天馬たちアーサー王と円卓の騎士の一行は、険しい山々が連なる山岳地帯に到達していた。馬車で行軍できる範囲を逸脱し、ここからは徒歩で嘆きの洞窟に向かわなければならない。

 鎧(よろい)と帯剣(たいけん)という騎士の正装で険しい山道を越えるのだ。さらに厳しい太陽の日差しを受け、一行の行軍はつらい道程(どうてい)であった。

 知らず弱音の言葉が出てくるのも無理はない。瀬戸水鳥(CV:美名)や影山輝(CV:藤村歩)が体調の悪化を訴える。水鳥は本当なら馭者(ぎょしゃ)だからついてくる必要はないんだけど、置いてきぼりは嫌だろうしねぇ。

 そんな仲間の態度を諌(いさ)めるのはトーブ(CV:ゆきじ)だった。恐竜時代に生きた野生児の彼にとってはこんな行軍は何でもないのだろう。だがひ弱な現代っ子の雷門メンバーにそれを望むのは酷だ。「獣の谷」を目指した時もそうだったしな。

 ところがそんな野生児も弱点があった。それはトーブが腹ペコキャラだったということだ。仲間を叱咤していた彼も、お腹を鳴らして急激に元気を失ってしまう。

 倉間典人(CV:高垣彩陽)がこの世界で妖精「ヴィヴィアン」の役どころである山菜茜(CV:ゆりん)に、食べ物や飲み物を出せないのかと尋ねるが、茜は自信満々に無理だと言ってのける。

 妖精「ヴィヴィアン」の魔力は、あくまでもエクスカリバーを復活させることにしか使えないということらしい。何となく頼れそうだった妖精にその能力がないと聞いて力尽きたのか、一行は全員が山道に座り込んでしまう。



 茜は持参していた絵本を繰(く)る。そして挿絵(さしえ)のワンシーンが今の自分たちの置かれた状況に酷似していることに思いが至る。


 仲間たちの疲れ果てた姿を目の当たりにした天馬くん。ここでキャプテンの自分にふさわしい態度を取ろうとするのだが、自信がなくうつむいてしまう。

 そんな天馬の悩みを知らないまま、神童拓人(CV:斎賀みつき)や雨宮太陽(CV:江口拓也)といったキャプテン経験者たちが仲間を励まし、的確な対応を取る。

 そしてそれを聞いた他のメンバーたちも指示された通り立ち上がる。それは現状の天馬が逆立ちしても手に入れられないキャプテンシーの発露(はつろ)であった。天馬はどんな思いでこの場面を見ていたのだろうか……?


天馬『やっぱり俺には神童先輩や太陽みたいにみんなを引っ張っていくことなんて出来ないのかな?』


 段差を登りながらそう思い悩んでいた天馬だったが、その目前でメローラ姫=空野葵(CV:北原沙弥香)がバランスを崩して段差から落ちそうになってしまう。



 葵はお姫様の衣装だし、ロングスカートだから山道は厳しそう。


 あわててその手を取り、助け上げた天馬。体力面で劣る葵に無理はするなと警告するが、葵は自分の身代わりに連れ去られた黄名子が心配で仕方がない様子だ。天馬はそれは葵のせいではないと優しく諭(さと)し、今度は黄名子をみんなで助けようと手を差し伸べる。葵は笑顔でうなづき、その手を取り、共に歩み出す。

 その姿を、アーサー王がじっと見ていた。



 この場面のアーサー王は天馬の心の成長を見届ける役どころだと思うのだが、「大事なわしの娘に手を出しおって!」と天馬を悪い虫扱いする心配性のお父さんのようにも見えてしまったのは内緒だ。



 一向の行軍は続く。切り立った断崖に挟まれた細い道で、茜があることに思い至る。そんな茜の本名を呼んでしまい、あわてて妖精ヴィヴィアンと言い直していた水鳥が可愛い。

 茜はまたも絵本を開いて、これが試練であることを示唆(しさ)する。「試練」とは絵本で描かれているアーサー王たちの境遇がまさに今の自分たちと同じであることを意味していた。そして絵本で描かれる次の試練とは……


 次の瞬間、狩屋マサキ(CV:泰勇気)の悲鳴が辺りに響き渡る。




 茜が絵本を確認した途端、どこからともなく湧いて出た毒蛇(どくじゃ)の大群。狩屋はヘビが大の苦手らしい。下の絵ではちゃっかりと霧野蘭丸(CV:小林ゆう)を盾にしている。


 絵本で描かれている通り、毒蛇の大群が一行の行く手を阻む。ヘビが大の苦手という狩屋のみならず、他のメンバーもそれにビビり出す。まぁ毒蛇が得意という人はあまりいないと思うけど(実は一人だけいるんだけどね)。



 さっきは良いムードだった天馬と葵もこの通り。何とかしろと言いつつなぜか天馬を押し出そうとする葵ちゃんと、無理無理と普通の中1男子の反応を示す天馬くんの図。


 仲間たちの動揺を叱咤したのはアーサー王だった。ヘビ如きは何でもないと逃げ腰の円卓の騎士たちに喝(かつ)を入れる。その「ヘビ」の一語にピンと来たのは、雷門イチの知性派・蘭丸だった。狩屋に背中にしがみつかれたまま、倉間にボールを渡すようクラーク・ワンダバット(CV:吉野裕行)に指示する。

 それを聞いた倉間も、蘭丸がなぜそんな指示を出したのかすぐに理解する。ワンダバから送られたボールを彼の必殺技「サイドワインダー」でヘビの群れに蹴りつける。



 豪快なエフェクトから巨大なガラガラヘビが飛び出し、毒蛇の群れはその大きさにたじろぐ。今まで敵キーパーを引き立たせるしか役に立たなかったお咬ませシュート「サイドワインダー」がイナズマイレブンGOシリーズ中、最も役に立ったシーンだろう。


錦「蛇(じゃ)の道は蛇(へび)ぜよ!」
水鳥「それはちょっと違うと思うぞ……」


 とにかく毒蛇たちは怯(ひる)んで道を開いた。進むなら今のうちだ。神童が指示を出し、一行はヘビを恐れつつもその隙間を通り過ぎる。



 よだれを垂らしているものが約1名。


 だがそれでも狩屋だけは恐れをなして仲間の後に続くことが出来ない。彼のヘビ嫌いは筋金入りだったのだ。震えてその場を動けない狩屋を励まし、一緒に通り抜けようと提案したのは、天馬だった。

 狩屋の肩を抱き、葵をもかばいながらヘビの中を通り抜ける天馬。おっかなびっくりながらも仲間を助けるその姿を、またもアーサー王が頼もしげな視線で見守るのだった……



 そしてようやく毒蛇の道を無事通り抜け、ホッと息を吐く一行。だが野生児トーブだけはさっきからの事態を特に意に介さなかったばかりか、むしろヘビを食材としか見ていなかった(空腹だったとはいえ……)。



トーブ「美味そうなヘビだぞっ!!」


 捕まえてきたヘビを差し出され、それを見た狩屋はこの日一番のええ声で悲鳴を上げる。面白がって狩屋の後を追うトーブ。その喧騒をよそに、茜はまたも絵本を開いて次の試練を確認しようとする。その行動と実際に巻き起こる試練に相関関係を見た水鳥はそれを止めようとする。……だが遅かった!

 茜の開いたページには燃え盛る炎が騎士たちの行く手を阻むというシーンが描かれていた。それを確認した瞬間、周囲から炎が吹き出し、一行を取り囲む!



 ケツを焼かれて激しくあわてるトーブ。さすがの野生児も火には勝てないらしい。一行を足止めするかのような炎にも、アーサー王は一片の動揺もない。エクスカリバーを一閃(いっせん)し、炎を切り裂いて道を開く。そして自分に続くよう命じて駆け出す。みんなは一斉にそれに続く。

 最後尾、天馬と併走(へいそう)していた西園信助(CV:戸松遥)が炎に煽(あお)られる。天馬はそれを見て、自然な動きで信助をかばうように位置を変え、信助に声を掛け励ます。


 無事火の壁を乗り越え、全員が無事を確認する。最後尾を走っていた天馬と信助の顔は煤(すす)で真っ黒だったが、それを互いに笑い合う余裕があれば大丈夫だ。

 試練が続出する状態に困惑を深める一行だったが、そんな気を知ってか知らずか、マイペースの茜ちんはまたも絵本を開く。だが今度こそその行動は水鳥が絵本を取り上げることによって阻止されてしまう。


水鳥「お前が絵本を広げると余計な試練が降りかかるような気がする!」
茜「確かにそうかも……」


 自覚あったんかい! ただその状態でも次の試練が気になると言って取り上げられた絵本に執着する茜を、水鳥は叱りつける。



 味方であるはずの妖精までもがグルになって(?)続けられた試練に疲れた一行は、森で休息を取ることにする。



 それぞれが反省会中の様子。フェイと剣城京介(CV:大原崇)は結構珍しい組み合わせ。茜ちんはまだ水鳥に説教されている模様だ。茜はダメと言われるとかえってやりたくなるプラスマイナスの岩橋みたいな性格してるんだから絵本返すなよ。


 そんな中、天馬はひとり離れた場所で思いに沈んでいた。そこにそれを案じた葵がやって来る。葵は天馬の隣に座り、天馬が最近ずっと考え込んでいることを心配していると語る。

 うつむいてしまう天馬を見て、葵は芝居がかった口調で、天馬の悩みをズバリと言い当てる。


葵「(天馬の悩みって)このまま自分がキャプテンで居続けて良いんだろうか?(でしょ?)」


 図星を突かれて天馬は驚く。だが幼なじみとして長年天馬と接して来た葵にとっては、それを見抜くぐらい訳ない話だった。そして自分自身を全然客観的に見れていないと、天馬の感心できない性格に言及する。

 その意味が分からず問い直す天馬だったが、そこでアーサー王から出発の号令がかかる。葵は「黄名子が心細い思いをしている」から急ごうと言って立ち上がり天馬の質問に答えることなくはぐらかしてしまう。こういうことは誰かに指摘されるより、自ら気付いて自覚しないと仕方がないことだからだ。だが早くKYの幼なじみが真実に気付いて欲しいと思っていたに違いない。



 一方その頃、黄名子は葵の心配をよそに眠りこけていた。マスタードラゴンと黒い騎士の監視の中、堂々とした寝入りっぷりだった。



 黒い騎士は嘆きの洞窟の最奥部で円卓の騎士の到着を待っていた。この地を彼らの墓場にするために……。



 その頃天馬たちはようやく嘆きの洞窟がある「竜の谷」を眼下に望む地点に到達していた。マスタードラゴンとの再会、そして黄名子救出のためにここまで来た一行は、思いも新たにその不気味な洞窟の入口を目指す。

 その姿を近くの山陰(やまかげ)から見つめる人物がいた。それはセカンドステージチルドレンのリーダーでありエルドラドと何らかの取引をした男・SARU(CV:岡本信彦)だった。



 なぜSARUがここに!? 彼は天馬を「天馬くん」と呼び、事の成り行きを面白そうに見つめる。明らかに彼は傍観者(ぼうかんしゃ)としてこの先の展開を楽しむ体(てい)でいる。果たしてSARUの目的は……?



 暗い洞窟内に足を踏み入れる一行。内部は思ったより広く、迷ってしまうと二度と抜け出すことが敵わないという恐るべき洞窟であることがアーサー王から説明される。そういうことは入る前に言ってくれよ!

 案の定、その言葉に緊張が走る。足元と頭に気をつけるようにという天馬の忠告を聞いてなかったトーブは鍾乳石にしたたかに頭を打ち付け、自業自得ではあるが痛い目を見る。

 痛みを紛(まぎ)らわせるように大声を出すトーブだったが、ここはもう敵の勢力圏内なのだ。神童が指を口元に当てて静かにするよう指示する。

 それがまた緊張感をいや増す。感じの悪い洞窟、奥からコウモリの大群が飛んできて一行を驚かせるが、やはり大声を出すわけには行かない。水鳥、茜、輝たちは口を押さえて叫び声が出ないようやり過ごす。

 きっとこれも試練なのだと例によって絵本を開こうとする茜を、対茜専用のツッコミ装置になっている水鳥があわてて制する。怒りの形相(ぎょうそう)の水鳥に、茜は取ってつけたような笑顔を返してごまかす。

 そして今度はごまかしでなく、行く手に光があることをいち早く告げる茜。見ると確かに暗い洞窟内に、うっすらと明るい場所があった。一行はそこが目指す先だとばかりに歩を進める。



 行き着いた場、それはまさしくマスタードラゴンの棲まう場所であった。広場の中心を指し示すアーサー王。そこには眠るマスタードラゴンと、その体躯に囲まれるようにして在(ざい)する鳥かご、そして中には囚われの黄名子の姿があった。

 かごの中で動かない黄名子の姿を見て、心配のあまり葵が叫び声を上げる(実際はただ寝てるだけなんだけどね)。マスタードラゴンを操っていた黒い騎士の姿は見えない。黄名子を救出するのは今が絶好のチャンスだ。


 かくてアーサー王を先頭に黄名子のもとに歩み寄る一行。寝ているマスタードラゴンを起こさないよう、慎重に歩を進める。そして葵が寝ている黄名子に声を掛ける。

 目を覚ました黄名子は仲間が助けに来てくれたことを察して嬉しさのあまり声を上げる。だがすぐ隣で寝ているマスタードラゴンを起こしてしまっては大変だ。あわてて葵がそれを制する。

 ただそれでも我が身を心配して来てくれたみんなに対する黄名子の感謝の思いは押し止められない。声を潜(ひそ)めながらも、感激してとても嬉しそうな黄名子ちゃん。


黄名子「ウチを心配してくれて感激やんね〜♪」


 そしてアーサー王の剣でかごを破ろうとするのだが、そこにくぐもった不気味な声がその場に響く。それは逆鍾乳石の上に立つ、黒い騎士からのものだった。



 黒い騎士はアーサー王の王国を自分のものにするとの野望をそこで明らかにする。どう見てもノリノリなんだけど、この中の人がこんな演技ができる人だったとは……。

 眼下の目障りな敵を殲滅(せんめつ)すべく、黒い騎士はマスタードラゴンを目覚めさせる。悪のしもべとなり果てたマスタードラゴンが高く咆哮する。力も知恵も人を凌駕(りょうが)するドラゴンを前にして、天馬たちは思わず後ずさりする。

 ひとり立ち向かうのは、絶対の勇気とすべてを斬り払う剣を持った、アーサー王。時空最強イレブンの能力を持っている両者が敵同士で立ち会うこととなってしまった。

 マスタードラゴンの本当の姿を知る黄名子はその戦いを止めさせたいが、どうしようもない。マスタードラゴンは黒い騎士の命令以外は聞き届けられない状態にあるからだ。


 猛(たけ)り立つマスタードラゴンを前に、アーサー王は最後の説得を始める。だがその言葉が終わる前にマスタードラゴンは尾による攻撃を開始する。



 すんでのところでそれをかわしたアーサー王は、マスタードラゴンを現在の狂乱する姿に変えてしまった黒い騎士に怒りをぶつける。黒い騎士は意に介さず、マスタードラゴンアーサー王抹殺を命じる。

 激しい攻撃をかわし続けるアーサー王は、なおも説得でマスタードラゴンの正気を取り戻そうと試みる。だが変化を見せないマスタードラゴンを見て、アーサー王は顔をしかめてついに決断する。

 束(つか)に手をかけ、エクスカリバーを抜いて構えたアーサー王。その意図を察した黄名子は必死でそれを止めようと声をからげる。



黄名子「マスタードラゴンはホントは良いドラゴンやんね!!」


 言われるまでもなくアーサー王もそれは分かっている。分かっているのだが……彼が何よりも大事にしているのは、王国の民(たみ)たちであるのだ。黒い騎士の走狗(そうく)となって民たちを苦しめるのなら、マスタードラゴンといえども許すわけにはいかない。それが王であるアーサー王の使命でもあるのだ。

 アーサー王の決意を見て翻意(ほんい)させるのが不可能と見た黄名子は、今度はマスタードラゴンを説得しようとする。あの時見せたマスタードラゴンの柔和(にゅうわ)な表情を思い出させるべく、文字通りの必死の説得だった。

 だがやはり通じない。マスタードラゴンは自分のしていることが分かっていても止められないらしい。黒い騎士の洗脳はそれほどまでに強力なのだろう。アーサー王マスタードラゴンが苦しんでいることを理解した上で、剣を振るうつもりでいた。


 一瞬後、両者は空中でぶつかり合う。マスタードラゴンの尾をエクスカリバーで受け取めたアーサー王は反動で壁際に飛ばされるが、さらに壁を蹴ってマスタードラゴンに挑みかかる。

 再び向かい合った両者は最後の一撃を撃ち合う。



 ………
 ……
 勝ったのは、アーサー王だった。マスタードラゴンは憑(つ)き物が落ちたかのように瞳の濁りが解け、地面に落下していく。

 地表に激しく激突したマスタードラゴンは、その勢いのまま洞窟に存在していた地下水のたまり場の湖に落下してしまう。その直後、黄名子を捕らえていたかごが魔力を失い、消滅する(かごがマスタードラゴンが作っていたものであることが暗示されている)。

 黄名子は脇目もふらずにマスタードラゴンが落ちた湖に駆け寄る。道中ずっと黄名子を心配していた葵がその手を取って黄名子を制する。もしまだマスタードラゴンが生きていて、正気を取り戻していないとしたら、うかつに近づけば危ないからだろう。



 だがマスタードラゴンを心配する黄名子は半狂乱となって葵の手をも振り切ろうとする。それほどまでに黄名子はマスタードラゴンを救いたかったのだ。そしてそのために何も出来なかったおのれの無力さを悔いていた。


 この世界を治める上で無二の同志だったマスタードラゴンすら冷徹に倒してしまったアーサー王の威容に、天馬たちは愕然となる。その絶対の勇気と実行力に、本物の英雄の姿を見たのだ。


 そして湖ではマスタードラゴンが光を放ちながらどんどん沈んでいく。それはマスタードラゴンの消滅を意味しているように思われた。水際に座り込んでそれを見ていた黄名子は心から悲しみ、涙ぐむ。マスタードラゴンが哀れでならなかったのだ。

 そしてその事態を招いたのは、マスタードラゴンを操っていた黒い騎士だ。天馬は怒りをもって黒い騎士を睨みつける。天馬とフェイに詰め寄られ、黒い騎士は逆鍾乳石から降りてくる。

 そしてゆっくりとその兜(かぶと)を脱ぐ。そこには見慣れた不倶戴天(ふぐたいてん)の敵の無表情な顔があった!



 やはり黒い騎士はレイ・ルク(CV:河野裕)だった!!


 ダークドラゴンナイト(黒い竜騎士)は仮の姿だったと告げ、レイ・ルクはその姿をいつものユニフォーム姿に移行させる。同時に後方にパーフェクト・カスケイドのメンバーを招集(しょうしゅう)し、そして極めて事務的な口調でサッカーバトルをアーサー王に諮問(しもん)する。自らの奸計(かんけい)でマスタードラゴンにあんな悲劇を巻き起こしたというのに、この冷静な語り口は……かえって聞く側に怒りを喚起(かんき)する。

 アーサー王はそれを受けて立つと表明し、決着を円卓の騎士=雷門に託す。それを洞窟の暗がりで見ていたSARUは物語の最高の見せ場がやって来たことを確信し、嬉しそうに独りごちる。


 さてサッカーバトルとなれば、監督だ! 今度こそ自分が監督だとワンダバが主張するのだが、当たり前のごとくそうはいかない。



アーサー王「監督はこのアーサーが務める!」


 空回りした思いと共に中空にぶっ飛んでいくワンダバが哀れでならない。目の幅涙を流して落ち込むワンダバだったが、彼にはもう一つ大事な役割がある。水鳥からアーサー王ミキシマックスする機会を逃すなと諭され、その使命を思い出す。

 ただもう一つの時空最強イレブンの力であるマスタードラゴンの方は失われてしまっていた。湖の底に沈んでしまった第9の能力……。一体どうすれば良いのか、誰にもその回答は思いつかない。



 マスタードラゴンに対する打開策が思いつかず、荒れるワンダバ。茜の丸こい顔が微妙に可愛いシーン。


 監督を務めることとなったアーサー王から、試合の布陣が発表される。マスタードラゴンの弔(とむら)い合戦となるこの戦いに対し、全員がその言葉に力強く返答するが、中でも黄名子は最も気合のこもった表情を浮かべていた。


 そして現実世界の沖縄、海の家では夏だというのに焼き鳥のオーダーを受けた店主・矢嶋陽介(CV:佐藤健輔)が頑張ってうちわを扇(あお)いでいた。だが矢嶋が妻の成海(CV:佐々木日菜子)に急(せ)かされる時はその後の展開も決まっている。

 例によって姿を消してしまった矢嶋に怒る成海。これっていつもどうやって後処理してるんだろうね? 矢嶋の記憶はいちいち削除されているだろうし……。このせいで離婚したら歴史の改変になっちゃうだろうしねぇ。



 さぁ、いつも通りブレインジャックされてノリノリ実況を開始する矢嶋。この地が「嘆きの洞窟スタジアム」であることが言明される。




 試合開始前の両チームの布陣。パーフェクト・カスケイドは初登場時からまったく変化なしの、レイ・ルクを中心にした3−5−2。ただ今回は監督のサカマキトグロウ(CV:石井康嗣)の姿が見えない。架空の世界ということで入り込めなかったのか、それとも何か別の理由があったのか?

 一方の雷門の布陣は4−5−1の剣城をワントップにした布陣。前回の円卓の騎士入団テストの時から天馬とフェイが復帰したせいで、輝と倉間がスターティングメンバーから外れる。FW2名が外れたということもあってワントップなのだろう。化身レスで咬ませの輝と倉間を外す辺り、アーサー王は前回の試合で天馬とフェイ以外の部分もちゃんと見ていたようでさすがだ(輝と倉間は涙目だろうけど)。



 試合開始前だというのに、天馬は気もそぞろに自身の左腕に付けたキャプテンマークに見入る。それは彼がそのマークを付けるに値する人物であるという自信の喪失を物語っていた。

 ベンチでは懲りずに絵本を開いていた茜が素っ頓狂(すっとんきょう)な声を上げる。彼女の開いた絵本のラストシーン、アーサー王が黒い騎士を倒して大団円となるその最後のページがみるみるうちに消えていってしまう。

 ラストシーンが消えてなくなるというその状態はパラレルワールドの時空が不完全になっていて、この戦いが正義=アーサー王側が勝利するという前提が絶対ではなくなってしまったということでもある。

 もし円卓の騎士である雷門が負けるようなことがあれば、この世界の存在自体が消滅してしまうかもしれないという事態が想定される。

 それはとりも直さず、この世界の登場人物である彼らをも一緒に消し去ってしまうということだ!! 元の世界に帰ることが出来なくなってしまうという最悪のシナリオもあり得るということなのだ。

「絶対に負けられない戦いが、そこにはあった(CV:川平慈英)」


 絶対に負けられない戦いだということ……それが天馬にとっては何よりもプレッシャーとなり、いつも前向きで「なんとかなるさ」が口癖だった彼をして弱音を吐かせてしまう。天馬は神童に、自分がキャプテンであって良いのかと問うたのだ。



「本当に……キャプテンは俺で良いんですか!?」


「いいんです!!(CV:川平慈英)」


 と、神童には答えて欲しかったんだけど、そうはいかなかった。天馬の突然の弱気発言はメンバーを驚かせる。戦いの前に仲間を動揺させるような発言はキャプテンとしては厳に慎(つつし)むべきなのだが、今の天馬にはそこに考えを至らせる余裕すら無かった。

 神童は、雷門のキャプテンはお前だと強い調子で応じる。だが天馬はここまで溜まっていた感情を吐き出すかのように、神童や太陽の方がキャプテンの能力があるということを口走る。

 自分がリーダーだと雷門の本当の力が出せないと嘆く天馬に、こんな時に何を言うと錦が咎(とが)める。だが天馬は止まらない。こんな時だからこそ言うのだと気色(けしき)ばむ。

 そこで倉間が天馬にはリーダーの資質など求めてはいないと衝撃的に言い放つ。いつものシニカルな口調でそう告げられ、天馬はやはりそうなのだと悲しげな表情を浮かべる。

 倉間は天馬の気持ちを逆なでするように、リーダーなら神童の方が向いていると追い討ちをかける。その発言には輝が色をなして反論する。戦いを前にして、雷門の中はバラバラになってしまう。

 その状態を何とかすべく、神童は天馬を諌める。天馬がどう思おうが、このチームのキャプテンは天馬なのだと告げた。だが冷静さを失った天馬はどうして自分なのかを執拗(しつよう)に問い返す。


 仲間割れの勃発(ぼっぱつ)を見ていたレイ・ルクは、それがチャンスであると見たのだろう、モードチェンジを仲間たちに指示する。だがそこで驚愕(きょうがく)の事態が起こる! 機械音と共にレイ・ルクたちの顔が、それこそ物理的に開き、その表情を一変させたのだ!




 まさにフェイス・オープン! 途中図はホラーすぎる。


 パーフェクト・カスケイドの選手たちが無表情で感情を表に表さないのも当然で、彼らはアンドロイド(人造人間)だったのだ! 「ハイパーダイブモード」と呼称されたその姿こそ、彼らの全力状態のモードなのだろう。



 パーフェクト・カスケイドの驚愕の正体が明かされ、驚く雷門ベンチ一同。だがSF3級の茜ちんだけは喜んでいるところがさすがだ。


 与えられたミッションを忠実に実行すると宣言するレイ・ルク。感情のないアンドロイドの彼らなら、たとえ雷門に勝利することが物語の崩壊=元の世界に帰れなくなることだったとしても何ら感情の変化はないだろう。帰れなくても一向に構わないというのがロボット的な感情だ。まさにこういう場面で戦うにはうってつけの存在だと言える。

 そういう敵を相手に、しかも本気モード全開の敵を相手に、雷門はリーダーの感情があやふやなまま戦わなければならないのだ!



 そして矢嶋の鳴らすホイッスルの中、負けられない戦いが今スタートする。

 パーフェクト・カスケイドのキックオフ。とにかく試合に向かわなければならない。天馬とフェイがブル・レクス(CV:不明)とグラ・フォム(CV:奈良徹)に挑みかかるが、まったく触れることも出来ずに抜き去られてしまう。

 その後も的確なパス回しで前進するブル・レクスとグラ・フォム。黄名子と蘭丸のマークもワンツーパスであっさりとかわしてゴールを目指す。ゴールを守るのは信助ただひとり。

 アーサー王が、そしてSARUが試合を見つめる中、パーフェクト・カスケイドが先制点の絶好のチャンスを迎える!!




 次回に続く



  エンディング




 アーサー王伝説編、第3章終了。これまでのシリーズだと4話編成が多かったので、このアーサー王伝説編も次回で終わりなのかもしれない。ただそれにしては波乱万丈の展開で、本当に次回で終わるのか懐疑的(かいぎてき)ではある。

 まだアーサー王のオーラを受け継いでいないこと。マスタードラゴンの安否も不明であること。パーフェクト・カスケイドが異様な正体を明かし、ハイパーダイブモードなどその状況説明に時間が使われる可能性があることなどなど……。

 ただこの戦いは絶対に負けられない戦い(CV:川平慈英)なわけで、雷門は今度こそパーフェクト・カスケイドに勝利することが予想される。陰でスパイしているSARUの存在が不気味だけど。あとオープニングに姿を見せている謎のチームたちも今後どう絡んでくるのか、非常に気になるところ。


 マスタードラゴンはきっと復活すると思うんだけど、そのミキシマックスの相手はもう黄名子以外は考えられないだろう。感情や気心を通わせ、お互い深く理解し合っているはずだろうから。マスタードラゴンが水中に没した時の黄名子の悲しい口調と表情は見ていてつらかった。



 次回予告ではパーフェクト・カスケイドたちは一層むちゃくちゃな姿になっている。もはや人間性の欠片も見受けられない。ウルトラマンかよ。もしくはトロンかよ。



  次回「恐怖のハイパーダイブモード!」に続く。



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