『イナズマイレブンGOギャラクシー』第36話「最凶!イクサルフリート誕生!!」の感想 【親友が敵に回るトラウマ再び】
恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第36話「最凶!イクサルフリート誕生!!」を観ての感想を書く。サブタイトルの「イクサルフリート」の意味、そしてそこから連なる物語のラスボスの真意が明らかとなる内容。物語を彩ってきた様々なキャラクターがその正体を現す回と言っても良いかもしれない。
当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。
- 前回の感想は、
『イナズマイレブンGOギャラクシー』第35話「希望の欠片」の感想 【ニセ剣城の本当の顔が見たい】
をご覧ください。
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松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】は、星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の決勝戦に進出する。
同時に惑星キエルの王女、カトラ・ペイジ(CV:上田麗奈)から託された4つの希望の欠片(かけら)を集めた天馬たちだったが、ビットウェイ・オズロック(CV:津田健次郎)の指示のもと、剣城京介(CV:大原崇)を拉致(らち)し成りすましていたニセ剣城(CV:大原崇)がその本性を現して欠片と水川みのり(CV:高垣彩陽)を奪って逃げ去ってしまう。
欠片とみのりの身体の中に存在するポトムリ(CV:三木眞一郎)という決め手となり得る存在を失ったまま、アースイレブンは決勝戦の舞台【ファラム・オービアス】に到着する。
ブラックホールに今にも飲まれそうになっている銀河系最大の惑星を前に、監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)の真意を問いただした神童拓人(CV:斎賀みつき)は驚愕すべき黒岩の野望を知る。
最終決戦を前に、監督とチームとの連携が取れなくなるという事態は果たしてアースイレブンにどのような影響を与えるのであろうか?
その科学力も最先端のファラム・オービアス。科学力の粋を結集した移動用の飛行物体に乗り、天馬たちはコーディネーターのイシガシ・ゴーラム(CV:遠藤綾)に導かれ、市街中心部に存在するサッカースタジアムに向かう。
天馬『あそこが、俺たちの最後の戦いの場……!』
天馬は最後の戦いを前に、メンバーに檄を飛ばして意識の高揚(こうよう)を図る。この戦いは宇宙を救い、そして大事なチームメイトを救うという意味でも負けられない戦いなのだ。
天馬「みんな勝とう! 勝って地球を、宇宙を救おう! そして剣城を助け出すんだ!!」
一同「オウッ!!!」
しかしその意思統一され高揚した場に懸念される存在、黒岩が声を掛けてくる。
黒岩「今日この限りで私はアースイレブンの監督から退くことにする……」
その言葉を神童を除く天馬たちは驚愕をもって迎える。この大事な戦いを前に、黒岩は何を考えているのか……!?
オープニング
ファラム・オービアスのステーション。【ギャラクシーノーツ】号から小さなトランクひとつ分の荷物を持って立ち去ろうとする黒岩の前に立ちはだかったのは天馬と神童だった。
言わずもがな、監督を辞めるという黒岩の言葉の意味を確かめるためだ。だが黒岩は天馬のその質問に答えることなく歩を進める。
たまりかねた天馬が黒岩の名を叫ぶと、黒岩はようやくその口を開いた。
黒岩「お前たちに私はもう必要ない……私は私を必要としている者たちのところへ行くのだ……」
ここまで来て、黒岩は何を言っているのか? そしてこの期に及んで彼を必要とする者たちとは一体……? しかもここは地球ではない。18万8千光年離れた惑星でどこに向かおうとしているのかを神童は問いただす。
だが黒岩は不敵な笑みを浮かべてその質問を黙殺する。この星に降り立つ前、黒岩の狂気に触れていた神童は黒岩が狂気の中にあることを言及しつつ、その狂気の住人なればこそ、アースイレブンをこの決勝の舞台まで連れてくることが可能だったのかもしれないと大胆な仮説で黒岩を論評する。
ギャラクシーノーツ号内のブラックルームで最終調整を図るアースイレブン。だが黒岩という精神的支柱を失ったことはイレブンに大きな動揺を与えていた。こういう逆境に何度も接してきた天馬と神童を除くメンバーはその動きに精彩(せいさい)を欠いていた。
天馬は落ち着かせようと声をかけるのだが、一言も発しないままチームをひとつにまとめ上げ、見事なまでの指揮能力を発揮してきた黒岩監督という存在の大きさを意識せずにはいられなかった。そして自分たち同様、逆境の中にあっても絶対にブレない強いハートを持った心強い同志、剣城の不在……。
黒岩と剣城という2人の存在がいかに大きなものであったのかを天馬は改めて思うのだった。しかし天馬はこのチームのキャプテンなのだ。左手に巻いたキャプテンマークを握り締め、天馬はシュートを放つ。
そのシュートはゴールの枠を叩いて外れてしまう。そう、天馬自身も動揺を隠しきれていないのだ。ため息をついてベンチに腰掛ける天馬にドリンクを差し出すのは神童であった。
天馬の苦悩を誰よりも知るのは、誰よりも天馬と共に戦い続けてきた神童なのだ。さらにキャプテンの苦悩を知るのはかつて雷門中でキャプテンの立場にあった神童ならではと言えるだろう。
神童の心遣いに触れ、天馬は心の重荷が少し軽くなるのを感じていた。尊敬する神童からキャプテンとしての頑張りを認められ、嬉しくならないはずはない。
笑顔でドリンクを受け取る天馬を見つめるのは瞬木隼人(CV:石川界人)であった。雷門中の2人の馴れ合いをまるで皮肉るかのようにシニカルな笑顔を見せる瞬木は何を思うのか……?
その頃、希望の欠片を手に入れ、ポトムリを監禁したオズロックはポトムリにあることを強要していた。それはブラックホールをも消滅させる能力を持ったコズミックプラズマ光子砲を運用すること、であった。
オズロックの部下たちが銃口を向ける中、ポトムリは毅然とした口調で惑星キエルの技術がなぜ禁断と呼ばれ封印されてきたのかを説く。
その技術は人類を滅ぼしてしまうほどに強力なものだったのだ。それでもブラックホールに飲まれようとしている母星のため、封印を解こうとしたのだろうとオズロックは痛いところを突いてくる。
オズロックは一度は失敗したコズミックプラズマ光子砲の製作を今度こそ成功させる必要があると言う。「宇宙を救うために」という彼の言葉に、ポトムリは懐疑的ではあった。だが宇宙を救うために他の手段が無いことも事実である。ポトムリは決然とコズミックプラズマ光子砲の装置に向き合う。彼にとってそれは惑星キエルを、そして敬愛するカトラ姫を救えなかった過去と向き合うということでもあった。
ポトムリの操作でコズミックプラズマ光子砲はテスト運行される。砲の中央に浮かんだ光子は今一歩のところでその勢いを失い、消えてしまう。ポトムリは肩を落とす。
誰が見てもテストは失敗だとわかる。オズロックはコズミックプラズマ光子砲が完成しているのではないのかと問うが、ポトムリは今ファラム・オービアスに迫るブラックホールがキエルを飲み込んだブラックホールの3倍の大きさであることを挙げ、これでは出力が不足している旨(むね)を解説する。
オズロックは澄ました顔で出力を上げれば良いと語り、ポトムリに銃を向ける。彼が何か隠し事をしているということをオズロックは決め付けたのだ。
ポトムリは隠し事など無いと反論する。今ここで自分に危害を加えればコズミックプラズマ光子砲の完成形は永遠にオズロックの手には入らないということを知るポトムリの強気の表われだった。
しかしオズロックはポトムリの真の弱点をも押さえていた。彼が指を鳴らすことが合図だったのだろう。その場に転送されてきた人物の姿を見てポトムリは動揺する。
そしてオズロックは悠々とそのカトラに銃口を向ける。カトラはオズロックを睨みつけつつ、今なぜ自身がこの場にいるのかを説明する。
惑星キエルがブラックホールに飲み込まれた際、オズロックは突然カトラの前に現われ、星や国民と運命を共にしようとしていたカトラを連れ出したのだった。
それは死にゆく女性を助けたいというヒューマニズムなものではなく、このような場面でポトムリに対する抑止力としての駒としてカトラを使うためのものであったことは言うまでもない。事実、救出後のカトラは一貫してオズロックに幽閉されてきたのだから。
つまり道中で天馬にビジョンを送り続けて来たのはオズロックの目を盗んでの行為だったということだろう。やはりカトラは生きていたのだ。それがカトラの望む形ではなかったにせよ……。
カトラはオズロックの真の野望についても見当が付いていた。オズロックがコズミックプラズマ光子砲を望むのは、その絶大なる力で宇宙を支配するということだと彼女は喝破(かっぱ)する。オズロックは邪悪な微笑を浮かべ、その指摘が正解であることを事実上示唆する。
そうと知ってポトムリはなおさらオズロックに協力するわけには行かない。だがポトムリのその決意は意外な方面から覆(くつがえ)される。
カトラ「いいえ、協力して下さい!」
他ならぬカトラ自身がオズロックに協力せよと懇願したのだ。野望を持つことは事実ながら、それでもブラックホールを消し去り宇宙に平和をもたらすという約定を交わしているということがその理由だった。
ポトムリはオズロックの宇宙支配を前提にした身勝手な言い草だと意見する。それでも、それでもカトラは宇宙に住む多くの人々の命を救うことを考えなければならないと返す。必要悪だと言わんばかりのその言い分にポトムリは納得行かないが、カトラの強い決意に触れたポトムリは最後は反論の言葉を失う。
2人のやり取りを聞いていたオズロックは勝ち誇ったように笑う。そしてポトムリにさらなる協力を強(し)いる。ポトムリは自分に出来ることはここまでだと返す。オズロックが疑った「隠し事」というものは本当に存在しないらしい。
だがそこでもまたカトラがオズロックに協力的に振る舞う。人が持つ魂の力、万物が存在し続けようとするその力を増幅させて使えばコズミックプラズマ光子砲のエネルギーになり得ると彼女は語る。
人の生きたいと思う魂をエナジーとして出力に補充するという発想は科学者であるポトムリには思いつかないものであったろう。そのライフエナジーがコズミックプラズマと同じプラスのエナジーでありマイナスのエナジーであるブラックホールにはきっと効果があるとカトラは確信していた。
それらのやり取りをオズロックに気づかれずに見つめていた2つの小さな影。それはポトムリに着いて来ていたピクシー(CV:北原沙弥香)と、かつて剣城の傍にいた黒いピクシー(CV:悠木碧)の2匹であった。彼らは何かをするためにその場を飛び立つ。カトラとポトムリが囚われている現状、この小さな彼らがオズロックの野望を打ち砕く希望の光だ。
そして囚われているという立場では同じ境遇の2人に場面は移る。ファラム・オービアスの王宮内にある牢獄には、側近のルーザ・ドノルゼン(CV:美名)のクーデターによって実権を奪われたララヤ・オビエス(CV:高垣彩陽)と剣城の姿があった。
今の今まで側近に騙されていた自身を自嘲気味(じちょうぎみ)に語るララヤを、剣城は突き放したような彼流の言い回しで叱咤(しった)する。
女王としてすべきことを促(うなが)され、ララヤの瞳から悲しげな光が消える。女王としてのノブレス・オブリージュ、自身の立場を自覚したのだ。
その時、牢獄の外から争う音が聞こえてくる。何が起こったのかを怯(おび)えるララヤを自然に庇(かば)う剣城がイケメンすぎる。さっきの突き放した言い回しもララヤを思う彼の優しさの発露だったというのがこれを見るとよくわかる。
外部の制圧を終え、扉を開いたのはララヤのもう一人の側近にして真に忠実な側近であるミネル・エイバ(CV:佐藤健輔)だった。ララヤ派であり忠義を尽くすミネルはここまで彼女を救うためにやって来たのだ。ミネルはララヤの前に膝まづいてその無事を安堵する。
自由を回復した剣城はテラスで接近するブラックホールを見つめ、仲間である天馬たちに思いを馳せる。そこに飛んでくるのは、例の黒ピクシーだった。何かを伝えようとするかのように剣城の周囲を飛び回った黒ピクシーはその姿を変えていく。それは可愛かった小動物の頃の面影をまったく残さない詐欺なみの変化であった!
「我が名はアクロウス……」
それはかつてララヤの記憶の中で再現された剣城とよく似た彼女の父、アクロウス・オビエス(CV:花田光)その人であった。あの可愛い黒ピクシーがこんなオッサンだったとは……。
正体を現したアクロウスは可愛かった悠木碧ボイスから渋い大人の男性の声になって剣城にあることを伝えにやって来たと語る。それはおそらく、コズミックプラズマ光子砲及びそれに付随するオズロックの野望に関する話なのであろう。
一方、ララヤは王宮の執務室の主人に返り咲いていた。ルーザを捕らえ、クーデターを失敗に導いて収拾したことを伝えるミネル。
権力の回復に尽力してくれたミネルに対し、ララヤは詫びの言葉を口にする。以前剣城を連れて来いだの泣いている子供を泣き止ませろだのと無茶ぶりワガママ言い放題だった主人のこの殊勝な態度をミネルがどう聞いたのかはわからない。
ルーザの裏切りを含め、すべては自身の責任ということを語るララヤはファラム・オービアスを代表する者としてグランドセレスタ・ギャラクシー決勝戦を辞退し、腐敗した自分たちは滅びるべきなのだと語る。
剣城「いや、棄権はしない!」
その会話に割り込んできたのは剣城だった。地球人でありファラム・オービアスには拉致されてきたはずの彼がファラム・オービアスの側に立って発言することは違和感があった。
しかし剣城は何かの確信を持って、試合に出場することを誓う。それもファラム・オービアスの選手として!
剣城「ファラム・オービアスは地球に勝利する!!」
地球人である剣城がファラム・オービアスの選手としてグランドセレスタ・ギャラクシー決勝戦に出場し、しかも勝利すると言うのだ。ララヤもミネルも口をポカンと開けて言葉もない。
「地球を倒し宇宙に存在し続ける、それこそがファラム・オービアスが歩み続ける道だ!!」
この前向きな意思は一体……? ララヤちゃん可愛さに地球を裏切ろうというのだろうか!? もちろんそんなことはありえないと思うが、ファラム・オービアスに与(くみ)するということは親友である天馬と戦うという意思の発現でもあった。
剣城が彼自身の意思で敵に回ったということを知らないまま、天馬はギャラクシーノーツ号内の自室で明日の決勝戦に思いを馳せていた。
天馬は希望の欠片を奪われ、宇宙を救うことが可能なのかを心配する。カトラとの約束では4つの希望の欠片を集め、彼女のもとにたどり着くということが条件だったからだ。
そんな天馬を勇気づけようとするかのように陽気な声で現れたのは、ピクシーだった。攫(さら)われたみのりと一緒に姿を消していたピクシーを案じていた天馬は喜ぶ。しかし次の瞬間、ピクシーは光を放ってその姿を変えていく。まさか、まさかお前までオッサンに……!?
「よっ。俺、サージェス!」
現れたのは金髪のお兄ちゃん、サージェス・ルーグ(CV:小西克幸)だった。こんな市川座名九郎(CV:小西克幸)みたいな声をした男らしい人があの可愛らしいピクシーの正体だったとは……。ということは初登場の際、天馬のほっぺをペロペロ舐めていたのもこいつか。……┌(┌^o^)┐ホモォ
ピクシーが変身したという天馬の叫びを笑って否定するサージェス。彼が言うにはこれこそが本当の姿なのだということだ。つまり可愛いのが仮の姿というわけね。
サージェスの身の上話が続けられる。彼はカトラに仕(つか)える騎士だったという。強い意思を持った魂はピクシーのような形を持つものらしい。つまりサージェスもポトムリと同様に魂だけの存在であり、もう生きてはいないということなのだろう。
カトラはどこにいるのかを問われ、サージェスは返答を濁(にご)らせる。(オズロックに囚われているという意味で)カトラは今はまだ話せる状態にないと語る彼は伝言役でこの場にやって来たのだと言う。
次の戦いで全力を出して戦えとサージェスは厳命する。
サージェス「勝てば宇宙は救われる……かもしれん!!」
天馬「え……え!?」
何とも締(し)まらない言い方だが、サージェスは詳しいことはわからないと明言を避ける。ここまでの喋りぶりからしてこの男、結構なお調子者のようだ。
とにかく全力で戦い、必ず勝つよう言い聞かせるサージェス。天馬からの快諾(かいだく)を聞き満足する。天馬は一緒に姿を消したポトムリ(みのり)がどうなったのかを尋ねる。
サージェスは無事であると返答するが、次の瞬間その姿を元の愛らしいピクシーの姿に戻してしまう。どうやら本来の姿でいられる時間には制限があるらしい。
再度、囚われのカトラとポトムリにカメラは移る。カトラの理論ではグランドセレスタ・ギャラクシー決勝戦におけるサッカーの戦いで発生するライフエナジーがブラックホールをも消失させるほどのパワーを秘めていると予測する。強い意思と意思のぶつかり合いがとてつもないエネルギーを生じさせるという考えはポトムリの想像を超越していた。
カトラは肯定しつつも、それには大きな危険があると語る。失敗すればスタジアムにいる観客を含めた全員が宇宙の塵(ちり)と化してしまうというのだ。
まさに命がけの戦いだ。カトラは自分たちの力で未来を勝ち取らねばならないと語り、その上でこれまで未来を託してきた天馬を今度も信じると強い口調で語る。
そしてカトラはポトムリのことも信じていた。この計画が成功するかどうかの最終局面ではポトムリの果たす役割が何よりも大きいのだ。
カトラの全人類を救いたいという気持ち……そしてポトムリの科学者としてカトラの思いに殉(じゅん)じようとする気持ち……そんな彼らの苦悩をも踏み台にして宇宙の支配者を目論(もくろ)むオズロック。その表情は本性にふさわしく邪悪に歪(ゆが)んでいた。悪い顔やで。
夜の帳(とばり)がギャラクシーノーツ号を包みこんでいた。
ブラックルームにてキーパーの井吹宗正(CV:鈴木達央)の特訓に付き合うのは神童だった。豪快なシュートを決められた井吹は雪辱を期してもう一度シュートを乞(こ)う。
次のシュートを撃とうとした神童に向け、井吹はサッカーの楽しさを教えてくれた神童に感謝の言葉を贈る。
井吹「明日は最高のプレーを見せてやる!」
井吹の変わらぬ負けん気の強さを見てとり、神童は静かに苦笑する。井吹は神童から「参った」の言葉を引き出すまではサッカーはやめないと宣言する。
意地っ張りな奴にはイジワルに対応する。これが神童流なのだろう。だがこれは裏を深読みすれば一生お前と一緒にサッカーを楽しんでやるという宣告にも等しいわけで、ある意味プロポーズにも匹敵する発言だと私は思ったのだがどうだろう?
冗談めかした物言いはそこまでだった。表情を引き締めた神童と井吹は必勝を期する。
神童「勝つぞ!!」
井吹「おうっ!!」
鉄骨落下の中をドリブルする特訓を続ける野咲さくら(CV:遠藤綾)と森村好葉(CV:悠木碧)、九坂隆二(CV:岡林史泰)も必勝を心に期していたことでは同じだった。
井吹とは違うステージでキーパー練習に励む西園信助(CV:戸松遥)とそれに付き合うシュート役の瞬木。控えキーパーなのに張り切っている信助をやや小馬鹿にしたような言い方で瞬木は茶化す。
例え試合に出られなくとも全力を尽くすことが信助のサッカーなのだ。またそれがチームの総合力を底上げすることに繋がる。井吹に何かあった場合、信助がゴールを守る存在になるわけだからその役割は重要だ。
なおも努力を否定する言い分の瞬木に反抗するように、信助は愚直なまでにその意思を曲げようとしない。
これって「今日の格言」で使われても良いぐらいの名言なのだが、瞬木は笑って努力が必ずしも報いられる結果に終わらないことを例示する。信助が日本代表(=アースイレブン)に選ばれなかったことを暗に皮肉ってみせたのだ。
口ごもりつつも、今は自分もアースイレブンの一員であることを告げる信助。そして絶対ゴールは守ってみせると彼にしては強気に言ってのける。その態度には瞬木も感じるものがあったのだろうか、笑ってその健闘を見守る気になったようだ。
そして真名部陣一郎(CV:野島裕史)と皆帆和人(CV:代永翼)は、体力作りのために駆け巡った吊り橋のステージで語らい合う。
当初イナズマジャパンに加入した時に黒岩に提示した条件を思い出し、今はそんなこととは無関係に宇宙のために戦い、優勝することだけを考えている。運命の急展開をまるで懐かしく回顧(かいこ)するように2人は楽しげに語り明かす。頭脳派同士とはいえ通う学校も違う両者、サッカーが触媒にならなければこの2人は永遠に出会うことはなかったであろう。彼らは親友としていつまでもこの不思議な経験を記憶し続けるはずだ。神童と井吹同様、この2人の関係も一生ものだと思う。
ただこの場が語らいの場ではなく、特訓の場であることだけは変わっていない。足場が抜けていく懐かしい音を背中で聞きながら、2人は最後の特訓を共にして汗を流す。特訓内容を忘れてたっぽいので冷や汗混じりだろうけど。
急流下りのステージではボクシングと歌舞伎というお互いが慣れ親しんだポーズでバランスを取る鉄角真(CV:泰勇気)と座名九郎の姿があった。
座名九郎「ボクシングの身のこなし、面白いですね」
鉄角「歌舞伎っていうやつも、なかなかだ!」
年長者の座名九郎の方が敬語を使うという不思議な光景だ。お互いがお互いのジャンルに興味を抱いた両者は、相手の分野に挑戦してみようという思いで意気投合(いきとうごう)する。
そして天馬は皮肉にも剣城と同じような構図でブラックホールを見つめつつ、これまでのアースイレブンの軌跡を思い返していた。
初めて出会った仲間たちはサッカーは初心者、気持ちもバラバラでチームの体(てい)を成していなかった。エキシビションマッチの帝国学園戦で大敗した頃には想像もつかない強さと団結心が今のアースイレブンを構築している。
天馬『今はハッキリ言える。このメンバーで良かったって!』
そしてこの最高のメンバーで明日の試合を勝ち、宇宙の平和を取り戻し、最後の仲間である剣城を取り戻す。そして地球に戻り、みんなでまたサッカーをする。それが天馬の望みなのだった。
そして翌日が訪れる。グランドセレスタスタジアムのVIP席ではララヤとミネル、そして剣城の姿があった。運命の戦いを前に、ララヤは今一度、剣城に戦うことが出来るのかを問う。何といっても相手は剣城の故郷の星、地球代表でありメンバーは全員が剣城の仲間なのだ。
剣城は思った以上にサバサバと、本当に戦いたい相手と戦えるとその心境を語る。やる気を見せる剣城の姿を見て、ララヤはかえって申し訳なさそうな表情を浮かべる。
剣城はララヤに向け、ファラム・オービアスの女王としてこの試合をしっかり見ておけと言う。それが一度はこの星の統治を失敗してしまったララヤへの大事な課題であるかのように。
一方、天馬たちアースイレブンのメンバーもこのグランドセレスタスタジアムに到着する。この戦いで地球の運命が決まると思うと自然と身が引き締まる思いとなる天馬だった。
スタジアムの電光掲示板が一瞬乱れ、奇妙な映像が映し出された。それは一瞬のことだったのだが天馬たちは見逃さなかった。何かが争い合う戦闘のシーンのようだった。まだクーデター騒動は収まっていないのか、それとも別の何かが起こっているのか……?
ファラム・オービアス側の選手控え室にやって来た剣城は必ずこの試合に勝つよう、メンバーに喝を入れる。そこには懐かしい顔ぶれが揃っていた。ファラム・オービアス紫天王たちの姿だった。
惑星サンドリアス編で力任せのゴリラプレーでアースイレブンを苦しめたバルガ・ザックス(CV:岩崎了)。
惑星サザナーラ編で九坂のチンコ切った(ウソ)ヒラリ・フレイル(CV:小林ゆう)と惑星ガードン編で物理的にアースイレブンを潰そうとしたロダン・ガスグス(CV:藤村歩)の2人。この2人、キツイ表情と可愛い外見が相まって姉弟のような印象。
ヒラリは剣城がチームのキャプテンを務めることに不満げだった。女王であるララヤの命令には紫天王として逆らえないとはいえ、その不満を隠さないところはさすがヒラリちゃん。
剣城は文句は言わせないと強気の姿勢で、自身の力でファラム・オービアスを勝利に導くと息巻く。
アースイレブンの控え室では例によって天馬がキャプテンの重責と向き合っていた。キャプテンマークを握り締め、振り向いた先で彼は仲間たちの視線と向き合うことになる。
そう、彼らは天馬の苦悩を共有し、共に戦うという意思を天馬に先駆けて明らかにしていたのだ。みんなの心遣いに、天馬は胸が熱くなるのを感じていた。
その時、控え室の壁面に設置されていたモニターがノイズを響かせながら点灯する。映し出されたのはオズロックだった。
その画像はスタジアムの電光掲示板にも映し出されていた。彼はその場からファラム・オービアスが自身の占領下になったことを宣言する。さっきの画像の乱れはこの場を占拠するオズロックの攻撃だったのだろう。
ファラム・オービアスの中枢管理センターはすでにオズロックの手に落ちたらしい。星から脱出するための宇宙艇及びそれが置かれている空港もオズロックの支配下だ。つまりこの星にいる人間の生殺与奪(せいさつよだつ)は完全にオズロックの手の内にあると言ってよい状況だということだ。
オズロックはその状態を知らしめ、ここに独立国家【イクサルフリート】の建国を宣言する。
「イクサル」という単語に反応したのはミネルだった。それが「復讐」という言葉に結びつくものらしい。オズロックが何かを復讐するためにこの計画を建てたというのだろうか?
それはオズロックの回想で明らかとなる。彼の故郷、イクサルは遥か昔、ファラム・オービアスによって滅ぼされたという過去があった。国家の再建を託された184名の生き残りは滅び行く惑星イクサルを脱出し、復讐の機会を待つ永き眠りにつく。
永き眠りを経て、彼らは目覚めた。だが目覚めることが出来たのは、オズロックを含めてわずか11名のみだった。生き延びたオズロックは故郷の再建とファラム・オービアスへの復讐を誓う。これ以上ないほどに強く結びついた10名の同胞たちと共に。
コールドスリープの様子。余談だが11名という数字が彼らの計画をグランドセレスタ・ギャラクシーというサッカー対決に向かわせたのだろうか?
かつてファラム・オービアスがオズロックの故郷を滅ぼしたという話は、平和主義のララヤを驚かせる。ミネルはそれを200年昔の話ながら事実であると告げる。その頃のファラム・オービアスは侵略戦争を繰り返す帝国主義の国家だったらしい。
その体制を変革したのが、他ならぬララヤの父、アクロウスなのだった。今は可愛らしい黒ピクシーに身をやつしながらも、やっぱり名君だったんだねアクロウス。
オズロックの独壇場は続く。ファラム・オービアス側が敗れれば星外脱出用の宇宙艇はすべて自動的に爆破されるという。
絶望を突きつけ、その中に一筋の光明を残すところがゲスいのだが、地球代表(アースイレブン)に勝てば脱出用の宇宙艇だけは返してやるとオズロックは告げ、映像は途絶える。ファラム・オービアスが滅ぼした星々の運命を思いながら恐怖に怯えるが良いと突き放して。
これはファラム・オービアス側にさらに負けるわけにはいかないという思いを喚起させることとなる。剣城は現状に飲まれた様子のチームメイトを鼓舞するため、挑発的に語る。
剣城「まさか怖じ気づいているわけじゃないよな?」
自分たちの故郷を命懸けで守る、それは当然のことであり、その当然のことを異星人である剣城に言い聞かされる屈辱はメンバーを怒りに駆り立てる。
キーパーのアルゴ・バージェス(CV:佐藤健輔)を筆頭にファラム・オービアスの戦士たちの意識に火が灯(とも)る。この人心掌握の妙、剣城のキャプテンシーはこの一面を見ても大成功と言える。天馬がいなければ雷門中のキャプテンは彼でもおかしくないぐらい。
アースイレブン控え室でももちろんオズロックの演説は聞こえていた。銀河連邦評議会の一員の顔で近付いて来たオズロックの本当の正体を知り、激情的な井吹は怒りで拳(こぶし)を掌(てのひら)に叩きつける。
他のメンバーも沈痛な表情を浮かべる中、誰かが控え室に入って来る。ピクシーに導かれるようにして現れたその人物は、天馬がビジョンでしか会ったことの無かったカトラであった。
ようやく出会えた本物のカトラに、天馬は今置かれている状況も忘れて笑顔で迎える。カトラは優しく涼やかな表情で天馬たちのこれまでの戦いを労(ねぎら)う。
天馬はカトラから託された希望の欠片を失ってしまった事実を明かす。だがカトラはそれが自分の元に届いていると笑う。それがオズロック経由であることを明かさなかったのは今後の戦いに影響を及ぼさないためであろうか?
宇宙を救う最後の条件は、この試合に勝利することだとカトラはゲームマスターのようなことを言う。勝利すれば宇宙が救われることを請け合いつつ、この戦いがかつて無いほど過酷なものとなるであろうことをカトラは宣告する。
天馬たちにすら命の危険が及ぶ可能性に触れるカトラは、命を賭けて戦えるかどうかを天馬に問いかける。天馬はその厳しい問いかけに笑顔で答える。
これまでに天馬たちが戦って来たすべての星のチームが命懸けで自分の故郷を守るために立ちはだかって来た。その姿を見届け、それを乗り越えてきたアースイレブンがここで命を惜しむわけが無かった。
笑顔で全力を、それこそ命を賭けてでも戦うと明言する天馬を見て、カトラの心も決まった。この少年たちに宇宙のすべてを託す思いを胸に、カトラはピクシーを伴(ともな)い控え室を後にする。
扉が閉まった瞬間、ピクシーに姿を変えていたサージェスがその姿を元に戻す。サージェスから天馬に宇宙の命運を託す理由を問われたカトラは、天馬の心の力を感じたのだと確信に満ちた表情で語る。
そしていよいよ試合開始の時を迎える。実況のダクスガン・バービュー(CV:勝杏里)はこの星に留(とど)まる限り自分自身の命も危ないのにそんなことはおクビにも出さず、ノリノリのDJ風実況を送信する。
ファラム・オービアスの女王様と同様にVIP席を用意されたキエルの王女様。カトラとポトムリがオズロックから解放されたかという点から、コズミックプラズマ光子砲が概念的に完成したことが暗示される(あと必要なのはこの戦いの過程で作り出されるライフエナジーだ)。さらにこの星に閉じ込めている限り逃げ出せないという意味で、牢獄の範囲が広まっただけにしか過ぎないとも言える。いずれにせよ、オズロックはファラム・オービアスの住人もカトラたちも生かしておく気はないと思われる。
スタジアムの喧騒をよそに、オズロックは完成なった(と思われる)コズミックプラズマ光子砲の前に立ち、満足そうな笑みを見せる。
そしてスタジアム。フィールドに向かう天馬は、前を行く忘れようのない後ろ姿を見て大いに驚く。そのトンガリ頭は、剣城のものだったからだ。
親友の息災(そくさい)な姿に瞳を潤(うる)ませて喜ぶ天馬。マネージャーの空野葵(CV:北原沙弥香)も同じく嬉しそうだが、彼らよりは冷静な他のメンバーは剣城の様子がどこかおかしいことに気付いている様子。
大喜びで駆け寄る天馬に対し、剣城は振り返りもせずそのマントに隠されたユニフォームを見せるという行為で返答とする。そこにはファラム・オービアスのチーム、ファラム・ディーテのユニフォームに身を包み、あまつさえキャプテンマークを付けた背番号10番の背中があった!!
振り向いた剣城は、大胆かつ不敵に笑って見せる。天馬は親友が敵として最後の試練に立ちはだかるさまを信じられないものを見る思いで見つめていた。
次回に続く。
エンディング
更新が大幅に遅れている。追いつくためにダイジェストで感想を書こうかと思ったのだが、書いてみるとやっぱり手抜きできない自分がいた。
相変わらずものすごく忙しい現在、次回更新がいつになるかも明言できない。これでは1話進めるにも時間がかかりすぎて辛い。というわけでこの感想文後の総括を短くするという形でちょっとでも手抜きさせて欲しい。
本題。ラストの天馬くん、前作『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』でフェイ・ルーン(CV:木村亜希子)が裏切って敵に回ったシーンがデジャブしたんじゃなかろうか。剣城との真剣対決は無印『イナズマイレブンGO』の初期の頃以来でもある。
雷門の、というか地球の二大実力者の両名が今の時点で戦うのはある意味興味深い。友情とか宇宙の運命とかを考慮せずにサッカーファン目線で言わせてもらえば一番見てみたい対決と言えるかもしれない。
紫天王たちの再登場も私の予測通りで嬉しい。どいつも憎たらしい相手だったけどそれぞれの決着という意味では不完全燃焼な状態だったからね。再登場アリだと思っていた。この作品中最高のギャグメーカーであるバラン兄弟が今回はセリフ無しだったけど、きっと次回は出番もあるのだろう。
ではでは今回はこの辺で。時期は未定ながら次回は出来るだけ早く更新したいと思います。
次回「決戦!ファラム・ディーテ!!」に続く。
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