『デビルサマー葛葉ライドウ対アバドン王』の感想 【大正浪漫から金田一耕助的世界観の続編】

 今回は久しぶりにゲーム感想文。今年に入ってのゲームプレイは一応進めてはいるのだけど、まだ感想を書くというところまで行けていないので、今回は過去に【ゲームクエスト】に投稿した『デビルサマー葛葉ライドウ対アバドン王』の感想を再録したい。以前紹介した『デビルサマナー 葛葉ライドウ対超力兵団』の続編だ。


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 前作のテイストをそのままに、より遊びやすく改善された内容で楽しめた記憶がある。2008年10月発売のゲームなので、もう4年以上前の作品になるが今遊んでも遜色なく遊べる作品だと思う。ゲームの詳細などは以下感想文に譲るが、本体機器であるプレステ2の生産が終了となった現在、いつかは遊べなくなる作品という寂寥感とともにここに掲載する。


甘茶さん の「デビルサマー葛葉ライドウ対アバドン王」 (プレイステーション2)
高かった潜在能力 メガテンシリーズの入門編にもってこい
 甘茶さんは、おまけにつられて購入したけれど、ゲームの中身は「抜群に面白かった」という「デビルサマー葛葉ライドウ対アバドン王」の感想です。前作の不満点をきちんと解消し、ゲームの潜在能力が見事に花開いたようですね。描きためた感想の件は本当に残念ですが、悲劇を乗り越えて、さらなる投稿をお待ちしております。

甘茶
高かった潜在能力 メガテンシリーズの入門編にもってこい(2009.02.02)
 今回は昨年10月に投稿させて頂いた作品、『デビルサマナー 葛葉ライドウ対超力兵団』の続編、『デビルサマナー 葛葉ライドウ対アバドン王』の感想だ。前回の感想に於いて、本作購入の理由として、「同梱されるおまけ『ノクターンマニアクス クロニクルエディション』が第一の目当てであった」などと明記したが、プレイ後の所感として、この動機については慎んでメーカーであるアトラスさんにお詫び申し上げたい。本作は大変に面白いのだ。おまけに釣られて……などと失礼な意見を述べた事が申し訳なくなるほどに。


 以下、あらすじと基本的な設定などを……。

 プレイヤーは超国家機関ヤタガラスの命を受け、帝都の安寧を悪魔などの怪異から守る十四代目「葛葉ライドウ」として、探偵業という表の生業に身を窶(やつ)し情報収集を行い、帝都に害を成す勢力に対しては戦闘・懲罰・殲滅の任務を務める事となる。
 
 人々の運・不運に纏わる信憑性の疑わしい噂が帝都でまことしやかに囁かれる中、表情に深い思惑を秘めた女性・成田茜(なりた あかね)がライドウ所属の「鳴海探偵社」を訪れ、ひとりの男の捜索を依頼した。

 秘密めいた彼女の態度から依頼に不穏なものを感じたライドウたちだが、果たして捜査は帝都を飛び越え、山陰地方の寒村、及びその地を担当する別の葛葉、十七代目葛葉ゲイリンまでをも巻き込む、一大事件へと発展していく。

 前作の“超力兵団”の脅威から帝都を救ったライドウは、指南役(?)の黒猫・業斗童子(ごうとどうじ)を供に連れ、前作とは比べ物にならない程に働き者として活躍する事になる上司の鳴海(なるみ)や、帝都新報の新聞記者・朝倉タヱの協力と、なにより悪魔召喚師として使役する「仲魔」たちの能力(ちから)を借りて、新たな事件の収拾に乗り出す事になる。



 ゲーム内容を改めて見返したところ、新たな“遊び”が感じられる点は思ったほど多くはなかった。前作で感じられた不満点がほぼ解消されたという点が好印象の要因と思われる。話数を減らして、その分一話あたりのボリュームを増やしたり、これまでのデビルサマナーシリーズの文法に忠実に「会話」で悪魔を仲魔に加える事が出来る様になったり、仲魔に出来る悪魔が前作の二倍以上に増えていたり、戦闘時に同時に仲魔二体を召喚する事が出来る様になったりと、まるで当方の要望を全て聞き入れてくれたかの様で、プレイ中は身震いするほど嬉しかった(勿論前作の感想を当方が書いた時点で、既に本作は完成されていた事は承知の上。おそらく同様の感想を抱いたユーザーが多かったのであろう)。

 マイナス部分の解消が主でこれだけ満足度が増すのであるから、もともとのゲームとしての潜在的地力は高かったのだろう。今回の出来はひとえにシステムとしての練り込みが進歩した結果だと言えると思う。

 個人的に特に良く感じられたのは、ストーリーの重厚度が増した点。12話あった前作では、話数は多くても一話あたりのストーリーが薄く、興が削がれる事が少なからずあり残念に思えたのだが、本作は話数こそ7話と前作に劣るが、一話毎の重みが段違いに重く、大変やり応えのある内容になっている。なまじ前作を知っているだけに、「へぇ〜、まだこの話は続くんだ」と感心混じりに思わされる事もしばしばあった。

 
 他に目に付く変更点として、悪魔の使用するマジック・ポイント(作中ではマグネタイト、MAG)が個々別でなく、一括でライドウが財布の紐を握る形式になった事。作中出現する悪魔には大抵、火炎魔法に弱いなどの属性弱点が設けられていて、弱点を突かれた悪魔は硬直し、その間攻撃を当て続ければMAGがどんどん回復するというしくみに改変された(MAGスケジューリングバトル)。

 敵悪魔の弱点を突く戦法が前作とは違う意味で重要になったのだ(前作では弱点硬直中に管に封印して仲魔にするという、ポケモンタイプのシステムが採用されていた)。この新システム、やってみるとメチャクチャ楽しい。上手く立ち回れば、魔法を使い放題に使って爽快に勝利する事も可能だ。

 
 前作との変更点(ほぼ改良点と表記するに等しいが)の説明を、もう暫く続けよう。

 若さ故か、後のデビルサマナーシリーズでの落ち着きがウソの様にはっちゃけた性格の業魔殿の主、Dr.ヴィクトルに頼める仕事も増え、やり込み度も一段とアップした。

 これまでのデビ・サマシリーズでお馴染みの“錬剣術”が可能になったのだ。錬剣術とは、悪魔との戦闘や仲魔からの贈り物、悪魔との会話などで入手する“魔晶”という特殊なアイテムとライドウの剣を、悪魔合体と同様の要領で合体させて新たな剣を作り出す行為を言う(強力な剣を作り出すには希少な魔晶が必要になるので、やり込み度は上がる)。

 錬剣術により、ライドウの武器は攻撃力の向上にとどまらず、「即死無効」や「道具高揚(アイテムの効果アップ)」など、様々な特性を持つようになり、適宜その武器を手にすることによって、戦闘を有利に進める事が出来る様になるのだ。注意すべきは、武器のタイプも変化し(剣、槍、斧)、その都度使い勝手さえもまるで変わってしまう点だろう。当方は剣タイプが圧倒的に使い易かったので、最後まで剣タイプで臨んだのだが……(つまり、このシステムを十全に使いこなしたとは言えない)。



 上記したが、今回からは他のメガテンシリーズ同様、会話で悪魔を仲間(仲魔)にするシステムに変更された。悪魔の興味を引く会話をして、お金やMAG、アイテムなどを与えて協力を求めるのだ。

 仲魔にならない場合でも貴重な魔晶をくれる事もあるし、自陣の消耗が激しい時には戦闘を回避する手段にもなり得るので、悪魔会話は物語進行上、極めて重要な要素だ。

 仲魔にした悪魔たちもそれぞれ話術を所持していて、それを使って会話を有利に進める事も可能だ。前作の感想で話題にした【ミシャグジさま】に、さらにセクハラ度に磨きがかかった【マーラ】の両悪魔が女悪魔に有効な話術「フェロモンボイス」を持っているというのは狙い過ぎの感があるが、相変わらず女性は必見モノだ。

 
 あと一点、本作はライドウ、即ちプレイヤーの選んだ“選択肢”というものが重要なファクターとなる。選択肢次第でライドウの性格が変わるシステムなのだが、それにより仲間に出来る悪魔が変化したり(飽くまで一部の条件付き悪魔に限られるが)、果てはシナリオの分岐に至るまで、様々な影響を及ぼす事になる。

 これまた従来のメガテンシリーズではお馴染みのパターンだが、前作には無かったシステムなので注意が必要だろう。全ての展開を満遍なく見るには、都合三回のリプレイが必要となる。

 
 勿論、前作で抜群に面白かった悪魔を使役しての探偵捜査も健在で「この能力を持った仲魔が欲しいけど、次に合体で作りたかった悪魔は持っていないな。別の悪魔をハントしてくるか、それとも予定変更して、弱いけど必要な能力を持った悪魔に合体するべきか……どうしよう?」といった本作シリーズ特有の楽しい(?)悩みに浸ったり、今回の新システムの悪魔会話との相乗効果で「こいつは戦闘で使えないけど、使える話術を持っているから合体させずに残しておこう」といった、“敢えて合体させない”というプレイングも適宜考慮に入れるという、深みのある展開がプレイしていて実に楽しい。


 
 ただ本作は、前作と違って捜査する事件が大きな一本に絞られているので、細かい感覚での悪魔捜査はなおざりになっている感は否めない。

 前作の感想で書いた「発火」や「力まかせ」の存在感、意味合いが著しく低下しているのである。捜査対象の気持ちを燃え上がらせて状況に変化をもたらせたり、犯人の逃げ道を塞いだりという楽しい捜査は残念ながら無くなり「力まかせ」などはただ障害物の排除に使用されるのみとなってしまった。

 これはその特技を持つ悪魔そのものの存在意義をも低下させる理由となるので、可能であれば配慮が欲しかったところだ。仲魔は全て忠誠度マックスまで行動を共にする事に拘(こだわ)る当方は、悪魔リストを埋める為だけに悪魔を合体作成する様な事はしなかったのだが、あまり活躍の機会を与えられないまま別れを迎えた仲魔には、一抹の疾(やま)しさを感じてしまったり……。

 
 まあ、前作と比較して不満に思ったというか、物足りなかったのはこの程度なくらいで、あとは全てがプレイして楽しく、嬉しく、面白くなっている。

 個人的に細かい事挙げていけば、【スカアハ】や【パールヴァティ】、【リリス】が、おばちゃん口調で喋らなくなっただけでも嬉しい(ラスボス戦まで連れて行くぐらい好きな悪魔たちなので……前作のあの、大阪のおばちゃん口調は心底萎える)。

 前作をプレイして、本作を未プレイの方がもしまだいるのであれば、一刻も早くプレイする事を勧めたい。前作クリアデータがあれば、序盤の進行がやや有利という恩恵もある。前作の感触で本作のプレイに二の足を踏んでいる方は、むしろチャンスである。本作をプレイして、前作との違いを実感していく内に、満足感を覚えながら作品世界に没頭する事が出来るだろう。

 前作も本作も未プレイの方には注文を付け難いが、前作の感想で明記した様に、難易度自体は高くない=敷居の高くない本シリーズをメガテンシリーズの入門編として捉えて挑戦して貰えると、メガテンのファンとしては、とてもとても嬉しい事なのであるが。

 
 なお付則事項的余談だが、『ノクターンマニアクス クロニクルエディション』には『デビルメイクライ』シリーズの「ダンテ」の代わりに、ライドウが難敵として主人公の前に立ちはだかる(版権の関係と思われる)。ライドウって、敵に回すとこんなに手強いヤツだったのね、と実感するに最適の体験となると思われるので、興味ある方は是非『クロニクルエディション』同梱版の購入をお勧めしたい。

 【ゲームクエスト】に投稿したゲーム感想文には、冒頭に時節のことを書くことが多かった。今回はあまりに時期はずれで内容に合わなかったので削っておいた(ちなみに高城剛沢尻エリカの結婚話だった。調べてみて分かったんだけどあの2人、まだ正式に離婚してなかったんだね)。

 本作は上記した通り、舞台が帝都に留まらず、田舎の寒村が主要な冒険の地となる。そういう意味で大正浪漫的な部分は多くはないのだけど、大正時代の地方の風俗的な面が色濃く描かれ、それがまた興味深い内容になっている。金田一耕助シリーズが好きならハマる世界観だと思う。あと【ミシャグジさま】と【マーラ】の両悪魔の姿に興味があればググッてみたら良いかと思う(掲載は出来ませんでした)


 前作の感想のあと、すぐに本作の感想文もブログに載せたかったのだけど、ある事情があってしばらく断念していた。それは本作には地震という自然現象が頻発するという理由。東日本大震災の影響があり、個人的に当分の間は掲載を自粛しようと思っての措置だったことをここで明かす。まだ被災地を無視して良いとは思わないが、このゲームの紹介をすることを許していただきたい。




 本作PV。プロデューサー及びキャラクターデザインは金子一馬、ディレクターは山井一千という黄金コンビ。



 前作のものだが、帝都主要キャラの壁紙。ライドウの左2名が右から探偵所長の成海(フルネーム不明)、そして新聞記者の朝倉タヱ。タヱは同時代の先進的女性である平塚雷鳥に憧れて「朝倉葵鳥」という筆名(ペンネーム)を使う。



 本作のキャラクター相関図。17代目葛葉ゲイリンの隣にいる凪(なぎ)はゲイリンの弟子で18代目ゲイリンを目指す健気な女性。次回作があれば登場するはずだが。



 次回作が待ち遠しいシリーズなので、ぜひ続編を期待したい。



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