大正浪漫が妙に心地よい 『デビルサマナー 葛葉ライドウ対超力兵団』の感想

 相変わらず新しいゲームはプレイできていない。正確には、プレイし始めてはいるのだが、クリアできていないというべきか。手元にあるゲームのタイプが、何だか時間のかかるタイプのゲームばかりなのが原因かもしれない。さらっとクリアできる、アクションゲームなんかがあれば良いのだけれど。


 そういう訳で、今回も過去の【ゲームクエスト】投稿作からの再録。今回はアトラスのゲーム大好きの当方的には楽しい思い出になる『デビルサマナー 葛葉ライドウ対超力兵団』の感想文。これもありがたい事に、月間賞を頂いた感想文だ。続編の『デビルサマナー 葛葉ライドウ対アバドン王』の感想も送っているので、いずれこちらも紹介したい。

 今回は登場人物の紹介はあえて避け、次回作『アバドン王』の感想で逆に濃く書いた。理由は特に無いのだが、月間賞を獲れた理由の一つがその辺にあったのかもしれない。ちなみに『アバドン王』では最終選考にすらかすりもせず。確かに今回の方が感想文としての出来は良かったとは思うが。



 メガテン繋がりという事で、

 『ペルソナ4』の感想文は、こちら(1回目)
               と 、こちら(2回目)


 アトラス繋がりでは、

 『世界樹の迷宮』の感想文は、こちら


甘茶さん の「デビルサマナー 葛葉ライドウ対超力兵団」 (プレイステーション2)
想像していたよりは面白く、良作
甘茶さんは、続編の制作も発表された「デビルサマナー 葛葉ライドウ対超力兵団」の感想です。同じくメガテンファンの私でしたが、本作は未経験。でも大いに興味をそそられました。続編もでるし今からでも遊んでみようかな?

甘茶
想像していたよりは面白く、良作(2008.10.10)
 アトラスが『真・女神転生3ノクターン』にて完成させた、同社に於ける最高のRPGプレイシステム(……と、当方は思っている)、「プレスターン・バトル」を流用せず、敢えてアクションタイプのRPGに仕立てた大胆な転換策たる本作。その大胆さは『魔剣X』以来と言うべきか……。安易に過去の遺産を「いつまでも」使い回し続けない姿勢は評価したい(『デジタル・デビル・サーガ』二部作で使い回していたが)。

 ただその評判はというと、物凄く悪い評判は聞かないが、かといって絶賛された意見はそれこそ当方は寡聞にして知らない、という状況で、評判の方も『魔剣X』並なのを鑑みると、失礼ながら続編が出るなどとは思いもしなかった。だが続編である『葛葉ライドウ対アバドン王』が発売されるとの事。同梱されるおまけ『ノクターンマニアクス クロニクルエディション』が第一の目当てであったとはいえ、購入予約した記念として、前編である本作を振り返ってみたいと思う。


 メガテンでアクション〜!? それって面白くなるの?」というのが、本作の内容が発表された時のメガテンシリーズファンの大方の反応だったと思われる。名作『ぺルソナ』『ソウルハッカーズ』がメガテン初(ぞ)めである当方もまさにこの例に漏れず、懐疑的であった。で、プレイしてみての感想だが、最初に想像していたよりは面白く、良作だと思った。メガテンシリーズの一角という肩書きが無ければ、世間の評価はもっと高かったろう。


 正確には、『デビルサマナー』シリーズの第3弾という肩書きの本作。デビルサマナーといえば、人間たる召還師が悪魔を使役するというクールな設定がウリである(主人公は悪魔では無く、飽くまでも人間。←シャレではない、念のため)。本作でも、その設定は縦横に発揮されている。主人公が探偵(見習いとの肩書きだが、どう見ても主人公しか探偵していない)という立場で、悪魔の特性を使って事件の捜査をするというシステムは秀逸だ。

 火系の魔法を使う悪魔(紅蓮属)は「発火」という捜査スキルを持ち、捜査対象の人間の気持ちを燃え上がらせて状況を進展させたり、力の強い悪魔(蛮力属)は「力まかせ」で物体を動かして犯人の逃げ道を塞ぐ壁を作ったり、精神攻撃が得意な悪魔(外法属)は「読心術」で捜査対象が心中考えている事を読み取ったりと、戦闘時以外でもいろいろな悪魔達の見せ場というか、存在感を与えているのだ。

 例示すると、「ここで空を飛べる悪魔に調べさせたいのだけど、手持ちの悪魔に『飛行』持ちがいねぇよ。……弱いけど手近にいて、『飛行』を持ってる【ジャックランタン】をハントするか」といった感じだ。これにより、プレイ進行に回り道を要される事もあるが、実はこの「【ジャックランタン】をハントする」過程が妙に楽しかったりする。手間を掛けさせられているというより、このゲーム特有の幅というか、そこらに転がる手掛かりの欠片(かけら)を取捨選択してパズルを解くといった風合いの遊びを感じるのだ。悪魔を使役しているというサマナー気分がいや増すこのシステムには実に感心させられた。


 戦闘はアクションタイプで、リアルタイムに敵を攻撃したり(剣で斬ったり、銃で撃ったり)、仲魔を召喚したり、別の仲魔を召喚し直したり、仲魔に攻撃手段を命令したりと大変忙しい。だが、魔法のエフェクト一つ取って見ても、実に楽しいのだ。体力半減+金縛り効果の魔法スキル「ムド」を敵が撃って来た時は、「ヒエーッ」とか叫びながら必死に逃げ回り、仲魔が放った「竜巻」はこんな感じに三方向に飛ぶんだ、と感心したり……。

 これまで三次元的な動きの無い画面でプレイしていたメガテンのキャラ達の実際の戦いぶりを生身で体感したかの様な気分になれたのは、本作をプレイしての意外な収穫であった。「たたり生唾」を吐いて来る【ミシャグジさま】は、どう見ても女性プレイヤーに対するセクハラだよなー、とか目で見て実感するのもまた楽し。女性の方は必見だ(セクハラ)。


 また、『サクラ大戦』ファンの当方としては、大正時代という時代設定も嬉しかった。近世モダンでレトロな雰囲気が大好きな当方にとって、帝都の町並みを愛でながら歩き回れるのは感涙ものであった(『サクラ大戦』でも、そこまでは出来なかったし)。

 しかも一体だけとはいえ、お気に入りの悪魔を後ろに引き連れて歩けるのも良かった。物欲が強い当方は、大抵アイテムゲットの「ヒロ右衛門」か、お金ゲットの「ゼニ・ガットメン」のスキルを持った悪魔を連れていたけれど。

 他にも「あちきは〜でありんす」といった花魁(おいらん)言葉を喋る女悪魔がいたり(お馴染みの悪魔である【ネコマタ】や【リャナンシー】が花魁言葉なのは違和感あったけど、笑える意味で面白かったし、慣れて来ると妙に愛着が湧いてきたりした)、ミルクホールでソーダ水飲んだり、銀座に路面電車が走っていたりと、大正の帝都の雰囲気を感じるのが個人的には堪らなかった。これにより当方の本作に対する評価はちょっと甘くなっているのかも知れない。

 
 という訳で、本作をプレイしての不満点にも言及しておこう。アクションタイプに転換した事により感じられる違和感。これは世間一般のマイナス評価の対象であろうが、当方はそれ程マイナスとは思わなかったので(プラス面すら実感した)、ここではその点以外でのマイナス面を考察しようと思う。


 まず、全体のボリュームが不足していた。ストーリー仕立てで、全12話もあるのだが、それぞれが薄くて1話がすぐに終わってしまう印象なのだ。そのせいで上記で評価した悪魔達の捜査時の見せ場も非常に限定的で、折角の良い部分があまり活かされていないのが残念であった。もともと本作は携帯ハード向けに開発されたゲームだという。それは別にいい。ただ、プレステ2で頒布すると決まったのなら、そのハード性能に合わせた内容のボトムアップが必要だったのではないか。

 説得で仲魔を集めるというシステムが無いのも不満だけど、アクションタイプの本作ではその辺を組み込むのは難しそうで、やむを得ない改変点でもあるだろう。それより気になったのは、ボリューム不足に附随する感想なのだが、仲魔になる悪魔の数がちょっとばかり少なかったのではないだろうか。

 悪魔合体を繰り返して「あーでもない」「こーでもない」と、思考と素材をこねくり回して悩み楽しむのがデビ・サマシリーズの醍醐味の一つでもある訳で、素材たる悪魔が少ないというのは正直、味気なく思えた。

 あと戦闘時、戦いに仲魔を一体しか召還出来ないのも、どうにかならなかっただろうか。せめて二体を戦闘に参加出来る様にして貰いたかった。複数に指示を出すのは確かに煩雑でややこしいが、一体は指示通り動かせ、もう一体は特別な操作をしない限りは自動AIで制御するといった具合にするのは不可能事ではあるまい。

 ここで攻撃役と回復役を同時に呼び出せたら……、と思う場面が結構あったので言及しておく(この場合は、キャンプ時に回復役に予め回復魔法のみ使う事を設定しておいて、戦闘中はAI任せにすれば良い。体力が半減するとか、毒など状態異常を起こすとかの事態でない限り、魔法は使わない程度の頭の良さがAIには必要だろうと思うが)。大体、ミニゲームの麻雀の時に二体召喚出来ているのに、戦闘時に二体召喚出来ないというのは何事か。……麻雀は面白く、出来が良かったので許すけどね。


 かつてのメガテンシリーズのファンには異端に見られがちな本作であるが、デビ・サマシリーズ通しての悪魔合体の施設、業魔殿の主である「Dr.ヴィクトル」が若き日の姿で登場していたり、おきゃんで可愛い少女悪魔【アリス】とそれを補佐する二体の悪魔【ネビロス】と【ベリアル】との関係など、旧シリーズを知っていると楽しみが増す演出も施されていて、アクションを含めた本編の意外な程の出来の良さと合わせて見ても、メガテンファンならプレイせずに済ますのは勿体無いと思える作品だ(勿論、上記の通り不満点も少なくない数あるのだが)。

 食わず嫌いだという理由で、本作を未プレイのメガテンファンは、一度試してみて貰いたい。また、メガテンシリーズ未経験の方には、拘りが無い分本作をより楽しめると思えるので、それはそれでプレイをお勧めしたい。冒頭触れたが続編も出る訳だし、難易度もそれ程高くないと思うので、本作をメガテンシリーズの入り口と見なして、世界観の一端を味わって貰えれば、ファンの一人として幸いだ。



 主人公、十四代目葛葉ライドウ。



 壁紙。ライドウの横の女学生は、依頼人にして本作ヒロインにしてキーパーソンの大道寺伽耶。大正時代の美男美女の学生さんの図。キャラクターデザインは、メガテンシリーズではおなじみの金子一馬氏。



 アクションは慣れるまで結構大変だけど、慣れると面白く感じられる出来。共に戦ってくれる仲魔が頼もしく思える。仲魔が魅了で敵に操られると、この上なくウザいだけでなく、一気に命まで落としかねないけど。

 このシリーズはあなたが思っている以上に面白い。いやホントに。『アバドン王』の続編も出たら、ぜひプレイしたいと思っている。




 「アカギ」「カイジ」を始めとする福本伸行マンガキャラ多数登場の面白動画。鷲巣が赤木から逃げているのが、如何にもそれっぽい。音楽とキャラの動き、舞台背景は本作オープニングと同じなのだが、逆に言えば、そこ以外は全て福本マンガの世界観。キャラが濃過ぎ。



 見比べてもらうための、本物のオープニング。本末転倒。



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綾村 切人 (原作)金子 一馬(株式会社アトラス) (脚本)真壁 太陽・原田 庵十(RA-SEN)
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