玄人好みのRPG 『世界樹の迷宮』の感想 (素人さんにも楽しいよ♪……厳しいけど)

 今日は1月10日、大阪では恵比寿祭りの中日だ。あまり私情を交えたくは無いが、実は今日は当方の誕生日でもある。えべっさんのお祭りに行った後、ささやかながらお祝いがある様なので、ちょっとだけ楽しみにしている。もう誕生日、それ自体を楽しめる様な年齢でも無いんですけどね。


 さて今年に入っての2度目のゲーム感想文。今回はニンテンドーDSの本格的RPGの『世界樹の迷宮』の感想文を紹介する。特に理由も無かったのだけど、『世界樹の迷宮3』も発売されて暫く経ち、そろそろ購入しても良いかなと考えているからというのも理由の一つ。RPGの感想文はストーリー性を重視する当方的に、あまり得意では無いのだけれど、本作では内容に殆ど触れない方式で感想を書いている。まぁ『ウィザードリィ』をダシに字数稼ぎをしている印象だけど、本作の面白さを実感した上で書いたのは事実で、その辺が上手く伝わってくれると嬉しいのだが……。


甘茶さん の「世界樹の迷宮」 (ニンテンドーDS)
DSゲームと思えぬ硬派な設定 寝食を忘れさせる麻薬性持つ
 甘茶さんは、ゲームファンから絶賛を受けたRPG世界樹の迷宮」の長文感想です。ダンジョンをマッピングするなどRPGウィザードリィ」の苦労をした人ならではの意見の比較が面白い。ゲーム中の5人パーティーの理由にも触れています。

甘茶
DSゲームと思えぬ硬派な設定 寝食を忘れさせる麻薬性持つ(2008.09.29)
 『ウィザードリィ』など過去の、「ヌルくない」「初心者に優しくない」タイプの3DダンジョンRPGをプレイした人ならば、プレイ中味わう楽しさや苦しみなどを含めたプレイングのキモが、マップ作成にあるという事は承知している事だろう。踏破した領域をマップという記録として残す事で、未知の世界を徐々に征服して行くという感覚は好奇心的観点からも、また達成感といった観点からも楽しい、嬉しいと感じられる感覚だ。またそれとは別の視点として、マップ作成を怠る事により「街への帰り道が分からない→回復、セーブが出来ない→パーティー全滅→やり直し」というペナルティを課せられる面もある訳で、否応なくマッピングを迫られるという苦行的側面もある。つまり、やり直しの苦行よりマッピングの苦行の方がまだマシという、ネガティブに前向きな動機だ。

 当方『ウィザードリィ』は初期1〜5(正道でない4は除く)をプレイしているのだけれど、昔ながらの、所謂「本格派3DダンジョンRPG」は、どちらかと言うとマッピング=苦行の図式で、ゲームクリアの為にやむを得ず行う行為という側面が強かった様に思う。それはそれで大いにやり甲斐があるのだが、敷居の高さを強く感じさせるその仕様は「一見さんお断り」の京都辺りによくある偏屈な料亭を思わせ、拡がりを欠いた、あまり望ましくないイメージではある。
 
 こういった認識の中、ニンテンドーDSというライトなユーザー層が主流の、しかも携帯タイプであるゲームハードで「本格派3DダンジョンRPG」の後継者としての資格十分の本作が頒布された事は、最初はちょっと意外だった。ただプレイしてみて理由はあっさり理解出来た。偏(ひとえ)にタッチペンによりマッピングが手軽に出来るという事が、プラットフォームとしてニンテンドーDSが選ばれた理由に他ならないと。

 タッチペンでマッピングするのは非常に良かった。『ウィザードリィ』の頃は方眼紙に鉛筆でちまちま線を引いていたのだが、『世界樹の迷宮』はDS本体だけで自己完結している。書くのも消すのも簡単で、仰々しく無い。このお手軽さが良い。またそれだけでなく、マッピング作業そのものも不思議と楽しく感じられる。マッピングが苦行では無いのだ。思えば、自分が今どっちの方角を向いているのかすら気付かない時がある『ウィザードリィ』は、延々書き続けた末に九分通り完成していたマップが間違っていた、なんて事はざらであった。『世界樹の迷宮』ではそんな事は起こり得ない。長時間の成果が無駄になる、ならないの差は印象に大きく作用する。……あ、当方としては勿論、古き「悪しき」システムである『ウィザードリィ』のシステムの味も捨て難いと思っているのだけれどね。
 
 さて、ゲーム中の主人公たるキャラクター関連についても言及しておきたい。

 キャラメイキングでの職業選択は悩み所であるが、プレイヤーが自らを投影して冒険する分身を作るという意味で、とても楽しい作業でもある。RPGでの多人数パーティーの楽しい所は役割分担の妙味にあると思うのだが、本作でもどういったパーティーを組むかでゲームの進行から展開から、果ては難易度まで変わってしまう所があり、工夫のし甲斐がある。本作では実際主力回復役であるメディックを除いて、どんな職業でも一軍投入の余地はあるし、またベンチウォーマーにもなり得る。思わず他人のプレイデータを見たくなってしまう、プレイヤーの個性が如実に出るシステムと言えるだろう。
 
 キャラメイクだけでなく、キャラ育成時にも考えなければならない点がある。レベルアップ毎にスキルポイントを1ポイント獲得するのだが、それをどう割り振るかでキャラの性能が変わってしまうので、大いに悩むのである。上限レベルが70という本作仕様の為、割り振れるスキルポイントも有限で、割り振り方次第で全く使えないキャラとなってしまう事があるのだ。回復役で例示すれば、個別回復スキルを伸ばして一回の回復量をアップさせるべきか、それとも全体回復スキルを早めに獲得するかといった、今後の冒険展開を見越しての駆け引きめいた育成が必要となるのだ(攻撃役や補助役も同様)。
 
 上記した『世界樹』のキャラ関連の、言わば定跡を全て把握した上で、採取、伐採、採掘にパラメーター全振りしたレンジャー5人衆(通称「ゴレンジャー」)で金儲けやレアアイテム作成、ギルド仕事解決などに奔走し始めるのは、本作中級者への入り口といったところであろうか。「役割分担の妙味」といった美辞麗句は、本作を有利にプレイする上で必要とされる搾取近世型資本主義的思考の前には取り敢えず置いておくという、ロマンに欠けた割り切りが「中級者」たる所以であるのだが。
 
 実際本作は、ポリシーを捨ててでも偏ったプレイングをしないと結構大変な難易度だったりもして、ニンテンドーDSの持つライトなイメージとは裏腹に硬派な造りのゲームになっている。ただ当方が『世界樹』プレイ中に抱いた数少ない不満点は、この難易度調整の為の押し付けがましい仕様にある。一つはパーティーメンバーの上限が5人であるという点。製作者の「容量的に6人でも可能だったが、難易度を上げる為、敢えて5人パーティーの仕様にした」という主旨の言葉を聞いた記憶がある。おいおい、そりゃ違うんじゃないかい、ってのが当方の感触。パーティーメンバーを減らすという、製作サイドにとって最も簡単で後ろ向きで、プレイヤーにとってはおよそ望ましいとは思えない調整法で「難しいでしょう?」なんて言われても……。「そんなとこで、敢えて『ウィザードリィ』との見た目の差別化を計らなくていいですよ」とシニカルに答えざるを得ない。不満の二点目は、レベルの上限がある事だ。スキルポイントとの絡みがあるのは理解出来る。ただそれなら得られるスキルポイントの上限を決めた上で、レベルの方は無制限にして欲しかった。度々比較して申し訳ないのだが『ウィザードリィ』はレベル上限が無く、最終的には強敵をも初回ターンで倒すという、所謂「王様プレイ」状態になるのだが、それは苦労してキャラを育てたプレイヤーのみが享受する事が出来る「ご褒美」の様なものであって、マイナスのイメージは抱かなかったものだ。大抵は飽きてしまうものではあるが、RPGをプレイする上での一つの醍醐味でもあると思うのだ、「王様プレイ」ってヤツも。やり込み派はレベル上げが本質的に好きだし。多くのライトユーザーはそこまでやり込まないので、ゲーム性の崩れを重大視する必要は無いと思うし。

 『ウィザードリィ』との差別化は大事な課題であったと思うし、それは多くの面で報われていると思えるのだが、その上で違和感やストレスを感じさせない難易度調整が施されていれば、当方の『世界樹』評価は更に高いものであったのだが……。

 
 いろいろ言ったが、本作は近来稀に見る「旧システムの現代への持ち込みの成功例」である。先にも述べたが、タッチペンを使ってマッピングの煩わしさを解消し、楽しく思える部分のみを引き出して味わわせてくれた点は高く評価したい。ゲームとしての完成度も良好で、プレイ中、寝食を忘れさせる程の麻薬性を持った実に面白いゲームであると断言する。続編である『世界樹の迷宮2』の方も購入済みであるので(暇が無く未プレイであるが)、いずれそちらの感想も送らせて頂こうと思っている。


 ……と言いつつ『世界樹の迷宮2』は未だプレイできていない。友人がシリーズに興味を持った上、いきなり『世界樹の迷宮2』の方をプレイしたいと言うので貸したのだが、そのままになっている。今も頻繁に会うので、いつでも返してもらえるのではあるが、なんとなくそのまんまになっている。通常版で購入してるのは勿体ねぇっす。ベスト版が出てから買っても全然良かったのにね。コスト面を無視していては、西田君に何を言われるか分かったもんじゃない。

 プレイしたくない訳では全く無い。当方の個人的な事由であるのだが、本格的なRPGをプレイする前には、それなりの意気込みが要されるのである。プレイし始めると、それこそ寝食を忘れてのプレイが必定だからねぇ。生活を歪める事がどれだけ許容されるかという問題は、難問である。子どもの頃なら考えるまでも無く、ゲームに没頭だったろうけどね。

 最近はRPGをプレイする機会も減っている。時間との折り合いというものは、なかなか大変な気がする。厄介だけど、それも含めて「ロールプレイングゲーム」というものの魅力と言えるのかもしれない。


 余談だけど、本作は株式会社アトラスのゲーム。以前の『ペルソナ4』と同じ会社のゲームとは思えないゲームなんだよね。製作スタッフが違えば、ここまで違う作風になるって事なんだろうけどね。【ゲームクエスト】投稿時には『葛葉ライドウ』のシリーズの感想文も書いてたし、自覚は無かったけど、相当アトラス贔屓な投稿者だったんだね、当方って……。


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