『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第26話「坂本龍馬!登場!!」の感想 【幕末編スタート!】

 毎週水曜日夜7時からテレビ東京系列で放映されている超次元おもしろアニメ『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』の恒例の感想文。今回はその第26話「坂本龍馬!登場!!」を観ての感想を書く。幕末編のスタート。開国派からは坂本龍馬中岡慎太郎、かたや敵対する新選組からは沖田総司近藤勇といった史実の人物が続々登場する。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第25話「炸裂!孔明の力!!」の感想 【三国志編ここに完結!】
 をご覧ください。

 で、一覧表示されます。

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 時空最強のイレブンの能力を獲得するため、三国志時代の中国にタイムジャンプした松風天馬(CV:寺崎裕香)たちチーム雷門の一行は、人を惹きつけてやまない人望と決して諦めない不屈の意志を持った劉備玄徳(CV:平田広明)と、その劉備のもとで史上最高の軍師として今に知られる頭脳を持った諸葛亮孔明(CV:沢海陽子)両名のオーラを受け継ぐことに成功した。


 一方、おのれの力の暴走によってサッカーバトルの中断を余儀なくされ、雷門打倒が叶わなかったザナーク・アバロニク(CV:小西克幸)は、竹林内で謎の老人(CV:家中宏)に出会う。老人はザナークを導く者と名乗り、姿を消す。



   オープニング



 織田信長(CV:千葉一伸)、ジャンヌ・ダルク(CV:寿美菜子)に続く第3、第4の力を獲得した天馬たちは、夕暮れ迫る現代の雷門中に帰還した。

 彼らを待っていた仲間たちの中でも、持ち帰った土産話(みやげばなし)に一番食いついたのは、やはり三国志フリークの速水鶴正(CV:吉野裕行)だった。



 孔明が実は女性だったことを聞き、メガネがブチ割れんばかりに驚く速水。続いて速水の憧れの人である劉備のことを聞かれ、空野葵(CV:北原沙弥香)、瀬戸水鳥(CV:美名)、山菜茜(CV:ゆりん)の女子マネたちは顔を見合わせて口ごもる。しょうもない親父ギャグを連発するオッサンだったと正直に告げ、速水が失望するのを見たくなかったのだろう。

 代わりに劉備を「素晴らしい人」と評したのは、そのオーラを引き継いで凱旋した西園信助(CV:戸松遥)だった。信助が劉備ミキシマックスに成功したと聞いて、まず信助に声を掛けたのはやはりキーパーとして彼を気づかい続けてきた三国太一(CV:佐藤健輔)だった。

 三国は信助を褒め、信助はそれに嬉しそうに応える。いずれ雷門中を去ることになる先輩とその次代を担う後輩との引継ぎは、うまく行くことになるだろう。


 それにしても三国志クラスタの速水は実際にその時代に行けなかったことが残念でならない。せめてもの要望として、狩屋マサキ(CV:泰勇気)に頼んでおいた英雄たちのサインも、あっさりと忘れられるという始末。



 メガネがずり落ちんばかりに落ち込む速水と悪びれない狩屋。ちゅーか、何でこういうことを無頓着そうな狩屋に頼むんだよ? しっかりした性格の神童拓人(CV:斎賀みつき)や霧野蘭丸(CV:小林ゆう)に頼めばよかったのに……。彼らは「公私混同するな!」とか厳しいこと言いそうだから、速水も頼めなかったのかな? 剣城京介(CV:大原崇)も厳しそうだし、後輩の中では狩屋が一番頼れそうだったかな〜。



 翌日、雷門サッカー部のミーティングルームに緊張が走る。緊急の要件で部員一同が召集されたのだ。呼び出した顧問の音無春奈(CV:佐々木日菜子)は胸ポケットから1枚の写真を取り出す。



 それは円堂大介(CV:藤本譲)の要請で豪炎寺修也(CV:野島裕史)が入手してきた「坂本龍馬の写真」だった。坂本龍馬の名を聞いて、同じく土佐出身の錦龍馬(CV:岩崎了)の表情が変わる。

 その写真が次の時空最強イレブンの候補の時代に向かうためのアーティファクトというわけだ。つまり次の目的地は幕末ということになる。大介が想定している時空最強イレブン5の力「海のように広い心で攻守をつなぐ架け橋となる、スーパートリッキーミッドフィルダーという条件に適(かな)う人物として、坂本龍馬が確かにその候補としてふさわしい。

 錦はもうすっかり自分が坂本龍馬ミキシマックスするつもりでいた。その役割は譲れんと言い切る錦に大介も感じいったのだろう、錦をその立場として次の構成メンバーに選び、5の力を錦に委(ゆだ)ねることを告げる。

 そして大介は、その同時代にもうひとり候補がいると語る。それは天才剣士として名を馳せた、新選組沖田総司だ。沖田総司の名を聞いて、今度は時代劇クラスタの水鳥の瞳が輝く。

 6の力「稲妻のように素早く切り込む疾(はや)さ、電光石火のスピードストライカー」という条件は、まさに沖田総司にこそバッチリ適うと水鳥は拳を握る。



 姐(ねえ)さん、変なスイッチ入った!


 だが錦は百年越しの仇(かたき)を見るような目で水鳥を見つめ、龍馬の敵であった新選組とそのエースの沖田総司をこき下ろす。時代の波に揉まれ、滅んでいく江戸幕府とそれに殉(じゅん)じた新選組に男の美学を感じる水鳥はそれが聞き捨てならない。お互いは激しくいがみ合うことになる。

 その喧騒を横目で眺めつつ、茜は「の使い手」と「の街」という言葉の並びから、沖田総司のオーラを受け継ぐであろう候補者に思いが至る。



 話の展開について行けず、きょとんとした表情の剣城。むしろ茜の視線をちゃんと感じた菜花黄名子(CV:悠木碧)の表情が可愛い。



 その間もいがみ合う錦と水鳥を見て、春奈はやや気圧(けお)されながらも歴史に造詣が深い両者に感心する。確かにあまりお利口さんに見えない2人が坂本龍馬新選組に詳しいのは意外な気がする。

 錦は胸を張って「詳しいのは龍馬だけぜよ!」と返答する。その口調からそうだとは思ってました。水鳥は新選組以外にも水戸黄門大岡越前の名を得意げに挙げるが、それは全部時代劇でお馴染みのメンツであり、同僚の葵や茜を呆れさせる。お互い歴史に詳しいというわけではなく、好きな人物やジャンルにピンポイントに詳しいというだけのことなのだろう。


 坂本龍馬沖田総司が敵同士だったと聞き、天馬は春奈にそのことを質問する。春奈は幕末が動乱の時期であり、その後の日本という国家をどうやって運営していくかの瀬戸際にあったことを語る。現代から比べると意見が違うだけで斬り合いになるという野蛮な時代ではあるが、胎動する時代性が感じられて血わき肉踊る時代であったことも間違いないだろう。その時代に向かうことになったと聞き、ワクワク感が止まらない天馬と信助、男の子たち(メンバー発表、まだなのに選ばれた気になってる)。


 そして今回の遠征メンバーが大介によって発表される。



 フェイ・ルーン(CV:木村亜希子)、錦、天馬、神童、蘭丸、信助、狩屋、影山輝(CV:藤村歩)、黄名子、剣城、そして雨宮太陽(CV:江口拓也)の11名。前回の三国志編と比較して、倉間典人(CV:高垣彩陽)の部分が輝に変わっただけという……ほぼ固定メンバーになっちゃったのかなぁ? 私の期待の浜野海士(CV:金野潤)も名を呼ばれず、わずかにあった龍馬と浜野がミキシマックスするという可能性も消えた。残念無念(~_~;)


 11名と3マネ、そして操縦者のクラーク・ワンダバット(CV:吉野裕行)を乗せ、キャラバンは幕末に向けて出発する。そしてキャラバンは1867年の、美しい紅葉の時期を迎えた京都に到着する。



 歴女スイッチ入りっぱなしの姐さん。


 この時代に来てみたものの、最初に考慮しないといけないのはお目当ての人物がどこにいるのかということだ。沖田総司新選組の屯所(とんしょ)にいるはずだと自信満々に告げる水鳥、さすがはフリークだけのことはある。

 坂本龍馬沖田総司と一緒にいれば良いのにという、軽い感じで言った信助の一言を、水鳥はすごい剣幕で否定する。意見の合わない両者では斬り合いになることは必定だからだ。そこに龍馬ファンの錦が沖田総司には負けないと混ぜっかえして挑発し、またも両者の間は険悪になる。



 新選組と龍馬の仲の悪さをここに持ち込んでどうする?


 限られた時間内、ここは二手に分かれてそれぞれを捜索しようとワンダバが提案する。当然の如く、錦は坂本龍馬担当に、水鳥は沖田総司担当に立候補する。まぁ動機がなんであれ、仲が険悪な両者が別々に行動するのは望ましいと思われる。

 ワンダバは気圧されながらも坂本龍馬班と沖田総司班にメンバーを分割する。



 坂本班。バランス良さそうに見えて、実はしっかり者が神童しかいない。基本的におバカ系ボケ担当ばっかり。



 こっちが沖田班。こっちは逆に黄名子以外はしっかり者が勢ぞろい。


 そして幕末の京の街を2班に分かれての捜索が開始される。道中、水鳥は沖田総司の魅力を語りまくる。この時代に来てから彼女、テンションが上がりっぱなしでおかしい。沖田総司が若くして胸の病を患(わずら)い、薄幸なまま亡くなったということがなおさら水鳥の琴線(きんせん)に触れるのだろう。短い生涯を送った美剣士への思いを募らせる。

 だがここで皮肉屋の血が騒いだのだろう、狩屋が沖田総司は実はそれほど美形ではなかったという噂があることを告げる。水鳥に怒鳴られて、むしろ嬉しそうに笑う狩屋が意地悪い。



 一方の坂本班。自信ありげに他のメンバーを導く錦だったが、龍馬の場所が分かるのかと輝に問われ、これまた自信満々に「分からん!」と答え、仲間をずっこけさせる。

 そこに叫び声とともに、何かが坂の上から転がり落ちてくる。それを追って何人かの剣士の姿も見える。それが何かも分からないまま、錦はそれを受け止めようとする。


 大激突! 土煙の中から現れたのは、いかにもよく転がりそうな丸々と太った変な男だった。自身の境遇をメリケンのボウリングに例える男だったが、その巨体に押しつぶされた錦は苦しげに退(ど)くよう告げる。

 申し訳なさそうに頭を掻いて詫びるデブの男。その男を「才谷屋」と呼びながら追いついてくる別の男を「中岡」と呼び、錦たちに向き直って怪我がなかったかを尋ねる。だがそこにさらにその2人を追ってきたであろう男たちに取り囲まれる。全員が抜刀状態で、先の2人の男を斬ろうという気に満ちていた。その着物の裾のギザギザ模様は、彼らが新選組の構成員であることを示唆していた。

 だが才谷屋は余裕の表情で、掛かってくる男たちをその突き出た腹で突き飛ばしまくり、撃退してしまう。


 茜「お腹が武器……?」


 改めて挑みかかろうとする抜き身の剣士たちだったが、そこで横の畦道(あぜみち)から声が掛かる。それは、天馬たちとは因縁の深いザナーク・ドメインのメンバーだった。

 その中でもリーダー格のシュラ(CV:不明)が割って入り、抜き身の剣士たちを苛立たせる。そこに森の中から様子を窺っていたザナークの放ったスフィアデバイスが襲いかかり、剣士たちを倒してしまう。いつの間にか、ザナークとドメインの連中はまた合流していたらしい。シュラは邪魔者がいなくなったことを踏まえ、天馬たちにサッカーバトルを挑む。



 ザナーク・ドメインのメンバー。孔明の館ではザナークのそばにいたシュラが今度は一軍を率いる感じで挑みかかる。左から2人目のシンジャミ(CV:不明)が本業ではないにも関わらず、なぜかキーパーとして参戦している。


 スフィアデバイスのフィールドメークモードによって近くの広場に設けられたサッカー場で対峙する両者。デブの男、才谷屋はサッカーというものはよく分からないものの、この戦いに興味津々の様子だ。

 5対5のミニバトルの常として、1点先取のサドンデスルールであることをシュラは告げる。分かったと答える天馬くんだが、これに負けても別にペナルティ無いんじゃないの? 何ら条件とか出てなかったよね?


 天馬に確認を取った後、自分たちのボールで勝手に試合をスタートさせるザナーク・ドメインの皆さん。足だけでボールを器用に操るその巧みな球さばきに、才谷屋は敵の動きながら感心する。

 ゴール前に持ち込んだシュラは一気にゴールを狙うが、そこはパワーアップを果たした信助、その能力を駆使して立ちはだかる。



 「ミキシトランス・劉備!」


 ガッチリとシュートをキャッチする信助に、観戦する才谷屋も歓声を上げて試合を満喫する。相変わらず森の中から試合展開をモニターするザナークは雷門にミキシマックス出来る選手が増えたことに言及するが、その口調はその状態をもってしてなお、なぜか余裕が感じられた。



 天馬たちがザナーク・ドメインの襲撃に遭っている頃、水鳥たち沖田班は新選組の屯所を探して聞き込みをしていた。だが京の住人たちは新選組を恐れ、正確な情報を教えてくれようとはしなかった。

 当時の新選組は京都の街の治安維持を務める存在だったが、略奪行為や裁判なしで容疑者を切り殺すなどの蛮行も目立ち、まともな人たちからも忌み嫌われていたのだ。



 天馬たちとザナーク・ドメインとの戦いに場面は移る。天馬から神童、錦へとパスがつながり、雷門はチャンスを迎えていた。自分が決めると意気込む錦だったが、ヤシャ(CV:不明)と目隠し選手にブロックされ阻まれてしまう。

 ルーズボールを拾った天馬の前に小兵のゴブリス(CV:不明)が立ちはだかるが、天馬はすかさず右に開いた輝にボールを送る。輝は久々の仕事に張り切ったのか、彼の最強の必殺シュート「エクステンドゾーン」を撃つ。




 シンジャミが足で止めようとするが、やはり本職のキーパーではないからか、あっさりと押し切られゴールを割ってしまう。サドンデスルールにより、このバトルは雷門の勝利だ!


 「ワシらの勝ちぜよ〜っ!!」


 才谷屋は大喜びで雷門の勝利を喜ぶが、なぜか口から出た土佐弁を慎み、標準語っぽく言い直す。なんだか怪しい。


 ピッチでは敗れたくせに偉そうに雷門のサッカーを貶(おとし)めるシュラの姿があった。自分たちの目的は果たせたと口を歪め、彼らはスフィアデバイスのムーブモードで去っていく。どう見ても負け惜しみっぽいのだが、ザナークの存在も含め、やはり彼らは偵察がメインで本気の試合ではなかったのだろう。シンジャミがキーパーだったし。


 戦いが一段落し、改めて才谷屋とその連れの中岡に相対する天馬たち。才谷屋が新選組に追われていたことから、彼が幕府の敵であることが想像された。彼のこの時代の立場を見極めようとする葵たちだったが、才谷屋はこちらのそんな気持ちを考えすぎだと言わんばかりに呑気(のんき)に腹の虫を鳴らせる。



 一方、そんなことなど知りもしない沖田班はなおも新選組の屯所を探していた。


 黄名子「分からなければ聞けばイイやんね!」


 言うが早いが駆け出した黄名子は、よりによってそいつらに聞くかという相手に話しかけてしまう。それはまさに探している新選組の構成員そのものだった。



 あわてて口を塞ぎにかかる水鳥。泣く子も黙ると恐れられている今の新選組は、下手をすると何をされるか分からない、無頼の集団とみなして掛かるべきなのだ。それにしても黄名子ちゃんは怖いもの知らずというか、やっぱりKYというか……。


 だが水鳥の手を振りほどき、黄名子は「沖田総司に会いたいやんね」とさらにKYなことを口走る。構成員たちは当然ながら一行を怪しい連中だと思い込む。当時敵対していた薩摩や長州の回し者だとみなされれば、斬り殺されてもおかしくはない。

 構成員が刀を抜こうとしたその時、それを止める声が掛かる。見るとものすごい強面(こわもて)の男がこちらに向かってきていた。構成員が刀に手をかけた時よりもビビった表情でその場に倒れ込んでしまう狩屋と水鳥。


 その男を局長と呼んでかしこまる構成員たち。男はどう見ても人畜無害そうな子供たちを敵として脅しつけていた構成員を叱りつけ、屯所で謹慎を命じる。

 そして一転、優しい口調で水鳥たちに部下の非礼を詫びる。



 狩屋「(一番怖いのはあなたですけど……ニヤリ)」


 新選組に詳しい水鳥はこの男が新選組局長の近藤勇であることに気付く。



 近藤勇(CV:井上優)。新選組局長として隊員200名を束ねる存在。常に幕府のために行動し、京の街の治安維持に務める。倒幕運動につながる行動や志士たちを徹底弾圧し、恐れられた。明治維新後も幕府軍として抵抗するが、最期は捕らえられ斬首され、京の街で晒し首にされた。享年33。銘刀・虎徹を愛用し、「今宵の虎徹は血に飢えている」という彼の言葉は有名。


 水鳥は憧れの存在である近藤勇を目前にして、そのはっちゃけぶりにターボがかかってしまう。ものすごい勢いで会えたことを喜び出し、さしもの近藤勇をしてたじろがせてしまう。

 そんな様子を屋根の上からザナークが見ていた。


 清々(すがすが)しい思いで近藤と分かれる一行だったが、そこであることに気付く。近藤に頼んで沖田総司に面会を求めれば良いということに。あわてて後を追う一行だったが、路地に入り込んだ近藤を見失ってしまう。


 一行が見失った件(くだん)の近藤の前にはザナークが立ちはだかり、スフィアデバイスの封印モードを駆使して、近藤をその中に封じ込めてしまう。そして自らはその近藤のいでたちになって不敵に笑う。ザナークの意図するものは一体……?




 一方、天馬たちと才谷屋は街の飯屋に入って昼食中だった。才谷屋の設けた場らしく、食事代も彼の奢(おご)りのようだ。腹が減ってお腹を鳴らせただけあって、才谷屋はすごい勢いで飯をかき込む。そのデブ特有のがっつきながらの食事風景は天馬たちを唖然(あぜん)とさせる。


 茜「見てるだけでお腹いっぱい」


 そんな中、ただひとり才谷屋と同じように飯をかき込む男、それが錦だった。自分と同じような態度をとる錦にシンパシーを感じたのか、才谷屋は親しげに語りかける。サッカーの試合ではいいところなしだったと皮肉まで利かせて。

 神童が、なぜ才谷屋たちが新選組に襲撃されていたのかを問いただす。意見の相違が原因だと中岡、そして才谷屋が返答する。意見が違うというだけで殺し合いに発展してしまうという情勢が天馬には理解できない。だが、それこそ時代の違いということに帰する問題でもある。国のあり方を変えるという行動は命懸けであったという時代の方がむしろ長かったのだ(選挙制度や民主主義は近代の産物)。

 そんな状態が怖くはないのかとさらに問う葵だったが、才谷屋は笑顔で死を恐れていては世直しは出来ないと答える。同志である中岡はそれを聞いて渋い顔で、少しは怖がって警戒しないと命がいくつあっても足りないと苦言を呈する。

 夢があるうちは襲われても平気だと才谷屋は取り合わない。そしてまた茶碗の飯と格闘しながら、日本を世界に通用する国に自分がするのだと豪語してみせる。

 良いことを言っているのだけど、その言葉と実際にやっていること、そしてそのデブく緊張感のない外見がその説得力を著(いちじるし)しく減退させていた。



 他方、ここは新選組の屯所。試し斬り用の藁苞(わらづと)を見事に一刀両断した男。だがその直後、胸を押さえて激しく咳き込んでしまう。それはもうひとりの最強イレブンの能力保持者、沖田総司その人であった。



 沖田総司(CV:梶裕貴)。新選組一番隊隊長。一番隊は最重要な任務を帯びる役職で、その隊長ということから沖田の腕前も推察される。若くして将来を嘱望されたが、肺結核を患(わずら)う。当時、結核は死の病であり、治療法は無かった(維新派高杉晋作も同病で命を落とす)。1867年以後は療養生活を送る。奇(く)しくも局長の近藤と同年の1868年、死去。生年不詳のため正確な享年は分からないが、亡くなったのは22歳〜24歳ぐらいだったと思われる。愛刀は菊一文字


 その頃、近藤を見失ったものの何とか屯所にたどり着いた水鳥たち沖田班はその門前にまで歩を進めていた。その場を前にして動こうとしない水鳥に、黄名子がなぜ入らないのかを尋ねる。新選組の危険性を街の人たちから聞き、さらに先ほど実体験したからこそ動けないわけだが、すっかりKYになっちゃった黄名子は大丈夫と太鼓判を押す。三文判レベルの根拠無き言い分なのだが、黄名子のその態度に勇気を得たのか、それとも新選組への憧れが恐怖に勝(まさ)ったのか、水鳥もノリ気になる。

 そこに誰かが近づいてくる。さっきまでの決意はどこへやら、物陰に隠れる一同。現れたのは、なぜか近藤の格好をしているザナークだった!

 天馬たちと同様、ザナーク・ドメインがこの時代に来ていることを知った沖田班。我がもののように悠然と屯所に入っていくザナークを見送りながら、フェイはその敵の思惑を測りきれずにいた。


 屯所の中ではさっき近藤局長に怒られた構成員を含め、5〜6人の構成員がいた。彼らにとっての最重要監視対象である坂本龍馬倒幕派の薩摩や長州と連絡を取り合うという状況に、新選組内部もピリピリしていた。



 そこに入ってくるザナーク。見知らぬ者が、こともあろうに局長の格好をして入ってきたのだ。ただでさえ気が立っている構成員たちは剣の束(つか)を手に近藤の名を騙(かた)るザナークを取り囲む。

 だが余裕のザナークはまたもスフィアデバイスを取り出し、構成員たちをマインドコントロールしてしまう。新選組の構成員たちを操り、ザナークは何をしようとしているのだろうか?


 屯所の一角では、病に倒れた沖田が病床にあった。だが彼はまるで生き急ぐかのように休息を取ろうとしない。そばに控えていた同僚が止めようとするが、沖田は坂本龍馬が日本をひっくり返そうとしている現状を憂い、何とかしなければならないという使命感に突き動かされていたのだ。

 土佐藩を脱藩した、たったひとりのしがない浪人ごときにそんなことが出来るのか、同僚は懐疑的(かいぎてき)だったが、非凡であるからこそ同じく非凡の才を見抜く眼力があるのだろう、沖田は龍馬の能力に気がついていた。あの男ならば、やると。




 飯屋では、まるで自分のことを噂されたかのように才谷屋が大きくくしゃみしてしまい、大量に頬張っていたご飯粒を隣にいた錦にぶちまけてしまう。



 お茶を飲んでひと心地ついた才谷屋は、一室の隅(すみ)に転がっていたサッカーボールに目を向ける。ボール一つで見る者を熱くしたサッカーという競技に興味を抱いた才谷屋は、その競技がメリケンのものなのか、それともエゲレスのものなのかを天馬たちに尋ねる。エゲレスというその読み、正解です。

 あまり未来のことを話すわけにも行かない天馬たちは笑ってごまかすが、才谷屋は物事を気にしないおおらかな性格らしく、それ以上追求はしなかった。


 飯屋の外では、あのギザギザ模様に水色の着物という例の姿の剣士たちが集結していた。あの、坂道で才谷屋を襲撃した新選組の連中だ。


 ボールを指先でクルクル回し、それを地球儀に模した才谷屋は、地球全体における日本の小ささを説き、そして世界に目を向けて行動しないと日本はジリ貧となり、世界に押しつぶされてしまうと言う。この時代、欧米列強が世界中を植民地にしており、10数年前には日本にもペリーが黒船でやって来た時代(1853年、日米和親条約。翌1854年には、日米通称修好条約が締結される。日本にとっての不平等条約)でもある。才谷屋の心配はまったく杞憂(きゆう)などではなかった。

 天馬にボールを預け、日本のために世界に目を向けると明るい表情で語る彼の熱弁は、その場にいた皆の気持ちを惹きつけるものがあった。本心で語っているからであろう。

 だがその時、障子を荒々しく開けて新選組が乱入してくる。彼らは今にも切りつけんばかりの形相で迫り、その場にいるはずの坂本龍馬の名を呼ぶ。

 それに応えたのは、なんとデブの才谷屋だった。彼の正体は、天馬たちがその能力を求めてやって来た、坂本龍馬その人だったのだ!!(まぁオープニングに登場していることからして視聴者的にはバレバレだったけど)



 坂本龍馬(CV:千葉進歩)。土佐藩の下級武士の家に生まれる。剣は北辰一刀流免許皆伝の腕前。当初は勤皇攘夷派(外国勢力を日本から追放する立場)だったが、開国派の勝海舟に出会いその考えを改める。隣の大国・清がイギリスに敗れるのを知って国を変えようと志し、倒幕派でありながら犬猿の仲だった薩摩藩西郷隆盛大久保利通など)と長州藩桂小五郎高杉晋作など)に働きかけ薩長同盟を実現、明治維新を実現する下準備を果たす。だが龍馬自身は1867年12月10日、大政奉還の1ヶ月後に刺客に暗殺される(近江屋事件新選組の犯行との疑いが強い)。享年31。彼の墓石に揮毫(きごう)したのは桂小五郎海援隊を結社したり、日本人で最初に新婚旅行をしたり、靴を履いたりとハイカラで物珍しいことが好きという、維新に関わらない分野においても前例にとらわれない先進的な気質の持ち主だった。ちなみにだが、本物の坂本龍馬は身長175cm超と当時の日本人の中では大柄で、もちろんデブではなかった。もちろん腹で攻撃したりしない。


 新選組の襲撃にも動じずに泰然(たいぜん)と構える坂本龍馬に、先ほどまでのお調子者の印象は感じられない。その変わり身の早さも相まって、天馬たちはこの人物が坂本龍馬だとはどうしても信じられず、その思いを言葉に表出せざるを得ない。


 全員「うっそぉ〜〜!!??」


 アーティファクトの写真と似ても似つかんしね……。



 次回に続く



  エンディング



 幕末編、スタート!

 坂本龍馬沖田総司近藤勇といった実在の人物が場面を彩る。坂本龍馬と行動を共にしていたのは、同じ土佐藩出身の中岡慎太郎(CV:不明)だろう。

 中岡は龍馬とともに土佐藩を脱退し、薩長同盟を締結させるために尽力した男だ。近江屋で龍馬とともに襲撃され、2日後に絶命。享年30。最後まで龍馬とともに行動したとして、京都・円山公園には2人の像が設置されている。

 ちなみに才谷屋と呼ばれていた龍馬の偽名、史実では「才谷梅太郎(さいだにうめたろう)」として知られる。龍馬が偽名を使っていたのに、中岡はそのままの名前だったのはどういうことだろう? 同じく命を狙われていたハズなんだけど? 史実では中岡は「石川誠之介(いしかわせいのすけ)」の偽名を名乗っていたらしい。


 現代の視線から見れば坂本龍馬たち開国派の意見が正しく、旧体制である幕府を守ろうとした新選組が間違っていたことは誰もが知っている事実だ。だがそれは時代を経て歴史に学ぶ現代人だからこそ分かるわけで、その時代に直面する人たちにはそんなことは分からない。

 今の我々だって、ここで何をすれば正解なのか、確証は何もないはずだ。現代の視線を持って過去の人の行為を断罪するのは許されることではない。それが許されるのは神の視座を持った者だけであり、そんな存在はこの世に存在しない。

 そう思うと新選組のなした行為を頭から否定する気にはなれないんだよね。彼らだって良かれと思って、龍馬と同様、命を賭けて生きていたことに変わりはなかったわけで。



 次回は沖田総司や龍馬がサッカーバトルにそのまま加わる展開になるらしい。



 カッコイイ沖田の姿も次回予告では見受けられる。ただ敵のザナーク・ドメインのユニフォームを着ているのが気になる。あとアンタ病気じゃなかったのか? 太陽以上に激しい運動は無理がある身体なのに。


 新選組の副長として「燃えよ剣」の主人公としても有名な土方歳三とか、薩摩の西郷隆盛などといった有名人たちも出てくるのだろうか? ちょっと期待してしまう。

 あと沖田は実はそんなにかっこよくなかったと言って水鳥を怒らせた狩屋だけど、その発言が本当なのかどうかは皆さんのお気持ちに委(ゆだ)ねたい。





 沖田総司像。



 ちなみに私のバイブル・山科けいすけの「サカモト」に描かれている沖田総司。左後方が近藤勇。ナンセンスギャグ満載だけど、歴史的流れは結構正確。人物像も割と正しいので笑う。



  次回「幕末の剣士!沖田総司!!」に続く。



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