『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第29話「時代をつくる男たち」の感想 【感動の幕末完結編!】

 毎週水曜日夜7時からテレビ東京系列で放映されている超次元おもしろアニメ『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』の恒例の感想文。今回はその第29話「時代をつくる男たち」を観ての感想を書く。1時間スペシャルの後編にして幕末編の完結編の今回、明治維新という日本の転換点を太く短く駆け抜けた2人の英雄が雷門に力を貸す!



 当ブログは、『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第28話「サッカー対決!坂本VS沖田!!」の感想 【2話構成の前編】
 をご覧ください。

 で、一覧表示されます。

 で、一覧表示されます。

 時空最強イレブンの能力を持つ坂本龍馬(CV:千葉進歩)と沖田総司(CV:梶裕貴)に会うために幕末の1867年の京の街にやって来た松風天馬(CV:寺崎裕香)たち雷門の一行は、二条城で大政奉還を賭けてザナーク・アバロニク(CV:小西克幸)率いるザナーク・ドメインとサッカーバトルで勝負することとなる。

 ザナークサイドで前半戦を戦った沖田は持病の労咳(ろうがい)を悪化させ、苦悶(くもん)の表情を浮かべる。その命をかけて忠義を尽くした将軍・徳川慶喜(CV:不明)やザナークに見捨てられた彼に協力を要請したのは、剣城京介(CV:大原崇)だった。

 だが新選組という立場が沖田の心を頑(かたく)なにする。大政奉還を目指す龍馬、そして雷門に協力するなど、佐幕派の沖田にはやはり考えられない行為なのだった……。



 そして後半戦が開始されようとしていた。



 後半戦開始直前のザナーク・ドメインの布陣。沖田の入っていた位置には前半戦で控えに回った9番・シュラ(CV:奈良徹)が入る。他の変更は無し。11人+沖田だったのだから当然だが。雷門のメンバーチェンジも無し。

 前半を終えて0−2と雷門には苦しい展開だ。だが協力を要請し、心を打ち解け和解を望む沖田が敵チームを離脱したことは大きい。彼の病状の悪化がその状況をもたらしたというのは皮肉ではあるのだが……。

 余裕を見せるザナークは「どこからでもかかって来い」と挑発し、サッカーに強く思い入れる錦龍馬(CV:岩崎了)を激怒させる。


 錦「ワシが本当のサッカーを教えてやるぜよ!」

 ザナーク「ヘッ、そう言うと思ったぜ!」


 ザナークは口癖である決めゼリフで返し、錦を一層怒らせる。そんな中、天馬はキャプテンらしく、まずは1点を返すこととザナークの挑発には乗らずに冷静な指示を出す。そんな天馬のキャプテンシーを頼もしげに見つめた剣城は、次に味方ベンチを見やる。そこにはザナークから戦力外通告を受け、所在なげに鎮座する沖田の姿があった。



 梶裕貴ボイスのキャラはベンチが似合う」の法則発動。



   オープニング



 審判兼実況役の矢嶋陽介(CV:佐藤健輔)の吹く法螺貝(ほらがい)が後半戦の開始を告げる。雷門のキックオフ。フェイ・ルーン(CV:木村亜希子)から天馬にパスが渡る。雨宮太陽(CV:江口拓也)を経由して、龍馬へと細かいパスがつながる。

 龍馬はこの試合の勝敗が大政奉還に直結していることを意識し、気合が入る。だがやはり才あれといえどもまだサッカーを始めたばかりの初心者、ヤシャ(CV:佐々木日菜子)に簡単にボールを奪われてしまう。

 一瞬にして攻守は入れ替わる。ザナーク・ドメインは前半にも見せた素早いパス回しで、ヤシャからメイズ(CV:吉野裕行)、ゴブリス(CV:ゆりん)へとパスが跳ぶ。

 ゴブリスの突進に立ちはだかった狩屋マサキ(CV:泰勇気)が必殺技「ハンターズネット」の網を張る。しかしゴブリスはニヤリと笑うと、そのまま突進を継続し、狩屋の網を何事もなかったかのように突き破ってしまう。



 化身の使い手すら阻止した狩屋の「ハンターズネット」が意図もあっさりと破られた! シュートではなく、個人の突進で「ハンターズネット」が破られたのはこれが初だ。ちびっこいゴブリスとはいえ、さすがはザナーク・ドメインの一員と言ったところだろうか?


 止まらないザナーク・ドメインの攻勢、パスを受けたエンギル(CV:江口拓也)も神童拓人(CV:斎賀みつき)のマークを外して前進、パスを継続してシンジャミ(CV:斎賀みつき)、メイズらも縦横無尽(じゅうおうむじん)に雷門陣を駆け巡(めぐ)る。

 メイズに挑発的なヒールパスを通され、剣城は不快感をあらわに怒りを現出する。明らかに雷門は翻弄(ほんろう)され、ザナーク・ドメインのプレーについていけていない。

 ベンチでもその様子を見て、瀬戸水鳥(CV:美名)がこのままでは勝負にならないことを見て取る。クラーク・ワンダバット(CV:吉野裕行)は現状のザナーク・ドメインに勝つためには、龍馬と沖田の2人の力が必要だと判断する。

 だが龍馬のオーラは錦の心の広さが不足している(?)せいでミキシマックスの試みは失敗していた。さらに沖田の場合は、その沖田自身に剣城に協力するという意思がないわけで、ミキシマックス以前の問題なのだった。下手したらワンダバ、斬られかねないしね。


 フィールドでは錦が簡単にメイズに振り切られる場面が繰り広げられる。ザナークは余裕の表情で「『本当のサッカーを教える』んじゃなかったのか?」と、錦が試合開始前に言った言葉を引用してバカにする。

 悔しがる錦を尻目に、ザナークはラセツ(CV:金野潤)にラストパスを送る。ラセツに3点目を奪わせて勝負の趨勢(すうせい)を決し、その後はラフプレーで雷門の選手を痛めつけて心身ともに敗北の淵(ふち)に追いやるというのがザナークの意図だった。悪い奴っちゃなぁ。

 その意図の腹黒さはともかく、ここで3点目を奪われてしまえば本当に雷門の勝利の可能性は消滅してしまうだろう。それは雷門ゴールを守るキーパー、西園信助(CV:戸松遥)にもよく分かっていた。

 だがその意識が強すぎ、信助の身体に力が入り過ぎていることを見抜いた太陽。おそらく力んだ信助ではラセツのシュートは止められない!


 万事休すかと思われたその場面を救ったのは、何とFWの剣城の戻りだった。ラセツの前に走り込んでパスをカットしたのだ。



 最前線から自陣ゴール前まで戻ってきてピンチを凌(しの)いだ剣城のそのプレーは、ザナークを、そして沖田を驚かせる。ザナークは敵ながら剣城の頑張りを感心し、そのプレーに応えるべくシンジャミ、ゴブリスを向かわせる。可愛い顔してラフプレーに長けた2人は剣城に強引にぶつかって進撃を妨(さまた)げる。

 わざとぶつかるという、あからさまな故意のプレーに錦が抗議の声を上げるが、ザナークはこれが自分のやり方だと言って取り合わない。錦もザナークじゃなく、審判役の矢嶋に抗議しないと意味がないぜよ。

 だが驚きは剣城のその後のプレーだった。素早く起き上がった彼は敵の反則に抗議するでもなく、脇目もふらずにシンジャミの保持するボールに向かったのだ。



 ボールを奪い返す剣城。しかもさっきのお返しとばかりに反則行為でやり返すのではなく、正当なスライディングタックルで奪い返すところに彼の矜持(きょうじ)が見受けられる。


 ラフプレーで痛い目に遭(あ)わせたはずの剣城の頑張りをさらに見せつけられた思いのザナークは、なおも手加減無用とばかりにヤシャ、オーグ(CV:岩崎了)を剣城の進む先に充(あ)てる。オーグの巨体にはじき飛ばされ、ヤシャのしなやかな脚でボールを蹴りつけられ、激しく宙を舞い、そして地に叩きつけられる剣城。助けに入ろうとする天馬や太陽も他の選手に阻(はば)まれて思うように行かない。

 だが剣城のサッカーへの思いはそんなものでは挫(くじ)けない。相当身体を痛めつけられているはずなのに、転がってくるボールを見るや何事もなかったかのようにそれを拾ってドリブルで前進を再開し、ザナーク・ドメインたちに立ち向かって行く。

 剣城のがむしゃらなまでの執念は、ベンチで見つめる沖田の心を強く捉(とら)える。サッカーを守りたいという剣城の心の琴線(きんせん)に触れた思いの沖田の心境は、意見を異(こと)にしていたはずの剣城に強く惹かれていく。

 そして自分たちの運命が懸かった戦いだというのに、自らは戦わず、安穏(あんのん)と笑い合う慶喜とその側近の姿を沖田は見てしまう。それら幕府の人間と剣城との対比は、沖田の目にはどう映ったのだろうか?


 フィールドでは剣城が無残に蹴り飛ばされ、地に這(は)いつくばる。いかにサッカーを守ろうという思いが強くとも、このままのプレーを続行しては剣城の身体が持たない。

 剣城は地面に爪を立て、沖田に助力を請(こ)う。自分の思いに沖田の力が応えてくれれば、剣城たちが守らなければならないものを守ることが可能になる!



 その魂の慟哭(どうこく)のような眼差しを受け、沖田はもはやそのひたむきな思いから目を背(そむ)け続けることが出来なかった……



 「俺の力を使えっ!!」
 「それで君の大切なものが救えるならっ!!」


 新選組の任務=幕府を守ること=大政奉還を防ぐこと=ザナーク・ドメインが勝利すること。剣城に協力するということは、この法則に反することになる。だが剣城のひたむきな思いは、沖田の頑なな理念をも衝(つ)き動かし、その意志を曲げさせたのだ!

 そしてその瞬間こそ、2人の思いが一致した瞬間であり、ミキシマックスするには最適のタイミングなのである。円堂大介(CV:藤本譲)の号令のもと、ワンダバは両者にミキシマックス・ガンを向け、一気にトリガーを引き絞る。




 ミキシマックス完了! 沖田の髪型とその色が主に特徴に出ている。肌の色も沖田譲りかな。錦の時と違って一発で成功したということは、器としては剣城は沖田のオーラを受け継ぐにふさわしい大きさをすでに備えていたと言えるようだ。


 剣城「沖田さん、あなたの力、使わせてもらいます!」


 沖田が力をくれたその意図するものを理解した剣城は、100万もの援軍を得た心境で、敵に対峙(たいじ)する。そしてさっきまでは常にはじき返されていた敵たちの陣営をものともせず、翻弄しながら一気に突き抜けていく。その光速であるかのような動きは、まさに沖田を得ての第6の力「稲妻のように鋭く切り込む疾さ、電光石火のスピードストライカー」の体現であることは明白だ。

 一気に敵陣を切り裂いたその稲妻はゴール前に迫る。キーパー、シュテン(CV:佐藤健輔)がその威容に怯(ひる)みつつ構える中、剣城は必殺シュート「菊一文字」の気を練り、一気に解き放つ!




 剣城のミキシマックス必殺シュート「菊一文字」。まさに沖田の愛刀の名を冠(かん)した切れ味鋭い必殺シュートだ。菊の花を咲かせて散らせる、この技のエフェクトは本当にカッコ良い。何回見返してみても、ボールを蹴っているようには見えないのだが……。


 そのシュートの威力の前に、シュテンは何も出来なかった。剣城、そして沖田の思いがこもったシュートはドメインゴールを貫き、これで1−2と雷門が追い上げる。


 剣城のシュートを見届け、沖田はその胸に去来する気持ちを素直な思いで受け止めていた。本当に守るべきものが何なのかを知った沖田は、残り少ないおのれの命をそれに捧げることを、愛刀「菊一文字」に誓う。

 そして沖田のその決心を知った龍馬も笑顔でそれを見つめる。



 1点を失ったものの、ザナークはまだ余裕の笑みを浮かべる。そして試合再開、今度は失点したザナーク・ドメインボールのキックオフだ。ゴブリスの突進を迎え撃つのはさっきの再現のように狩屋だった。

 だがさっきと違うのは、彼の張る網の性能だった。進化した「ハンターズネットV2」の網が、ゴブリスを見事に捕らえる。



  そして太陽、天馬とパスが渡り、一気に雷門が攻勢を築く。剣城のミキシマックスからの得点という流れがチーム全体に良い効果として波及しているのだ。

 剣城のプレーが雷門に力を与えるという結果になったことを、ザナークは今さらのように知って驚愕する。ということはザナークの指示で剣城を痛めつけた一連のプレーはすべて逆効果だったということになる。

 ドリブルで上がる天馬を、勝気なヤシャが必殺技「スクリュードライバー」で蹴散らす。



 ヤシャの必殺ブロック技「スクリュードライバー」。どう見ても火属性技だろう。前回はミキシトランス・ティラノ状態のフェイを止めたし、この技は結構強そう。


 反転攻勢に出るザナーク・ドメイン。シュラを経由してFWのラセツがボールを持って雷門ゴール前へ迫る。3点目を狙うラセツは容赦なく2点目を奪った必殺シュート「オーガブレード」の牙を剥(む)く。



 だが剣城のプレーに触発されているのは何も攻撃陣だけではない。信助は雷門のゴールは守ってみせると化身「護星神タイタニアス」を召喚し、素早くアームドし、そのシュートを見事にキャッチしてみせる。



 「オーガブレード」に対して化身アームドで対抗するのは、2失点目を喫したシーンと同じ。だがやはり信助も剣城のプレーに勇気をもらったのだろう、狩屋がゴブリスを止めたように、信助もラセツのシュートを阻止することに成功する。


 ラセツのシュートまで止められ、雷門のチームとしての力の向上に目を見張る思いのザナーク。直後にこれまで彼を悩ませてきた力の暴走の発作が起こる。

 だが一瞬で我に返ったザナークは、信助から天馬へと送られたボールを空中でカットする。そして自ら前進を開始して、明らかに押され始めたこの試合の主導権を取り戻そうと懸命の努力を試みる。

 フェイがザナークを阻止すべく、ミキシトランス・ティラノで立ち向かうが、簡単に蹴散らされてしまう。



 ミキシトランスしても通用しなくなってきたフェイのミキシトランス・ティラノ。そろそろ彼の技の進化系が舞台に登場する可能性がありそうだ。


 霧野蘭丸(CV:小林ゆう)と龍馬がカバーに入るが、やはり通用しない。無人の荒野を駆けるがごとく、ザナークのその力強い前進は止まらない。ゴールでは化身アームドしたままの信助が身構えるが、その前に立ちはだかったのは、後半戦前にザナークに本当のサッカーを教えてやると豪語した、錦だった。

 力と力の真っ向勝負を挑みかかる錦だったが、ザナークのゴリラっぷりは半端なく、錦でさえその突進は止められなかった。ミキシトランスしたフェイですら止められないんだから、素の状態の人類が止められるわけがないんだよね。ゴリラなんだもの。



 これこそ文字通りの「ゴリ押し」。ブレーキの壊れたダンプカーぶりを発揮するザナーク。


 いよいよゴールを守るのは信助ただ一人となってしまう。その怖い形相をさらに歪(ゆが)めて笑うザナーク。だが3点目を奪う気マンマンのそのザナークに、またもアクシデント! あの暴走の発作が襲いかかる。

 苦痛に顔を歪ませながらも、ザナークはシュートを放つ。だが力の入らないそのシュートは信助があっさりとキャッチする。その怖い顔とは裏腹の拍子抜けのシュートに、信助は敵であるザナークに何か異変が起こっていることに気付く。


 ザナークはまたも全身からどす黒いオーラを発して苦悶の叫び声を上げる。孔明の園で力が暴走し、爆発したシーンの再現だ。敵味方問わずに緊張が走る中、今回はさらにザナークの背後から、鎖につながれた彼の化身が現出する。



 フィールド外の石灯篭(いしどうろう)の影では、ザナークにその暴走の因を示唆した謎の老人(CV:家中宏)がその様子をじっと見ていた。



 ザナークの苦悶は続く。仲間であるドメインのラセツやゴウズ(CV:奈良徹)もどうすることも出来ない。敵味方が呆然と見守るその中、最初に我に返って行動したのは錦だった。

 錦は何を思ったのか、化身「戦国武神ムサシ」を召喚し、ザナークに助けてやると声を掛ける。敵であるザナークを無我夢中で助けようとするその姿は、龍馬に大きな衝撃を与える。


 ムサシの持つ刀で化身をがんじがらめにしていた鎖を断ち切り、ザナークの化身を解放する錦。同時にザナークの苦悶の表情もみるみる消え失せ、その所作が効果的であったことを示す。



 錦の意外な行為に敵味方問わずに驚きの表情。ただ菜花黄名子(右上 CV:悠木碧)だけは錦の真意に気づいたのか、笑顔を見せる。黄名子は基本的にKYだと思うんだけど、たまにこういうふうに飲み込みが早いときがあるよね。


 倒れ込んだザナークは、なおも自分を気遣う錦に向かって、聞かずにはいられなかった。


 ザナーク「なぜ俺を助けた!?」

 錦「決まってるぜよ。おまんと最後まで戦うためぜよ!」


 「あくまでもサッカーで勝負だ!」と何の悪意もなく、屈託のない表情で錦はそう言い放つ。敵を前にしてのその寛容さは、日本一心が広いと思われていた龍馬をして驚かせしめる。この瞬間、両者の器に差異はなくなっていた。今こそがミキシマックスのチャンス! 龍馬ですら認めた錦の心の広さがあれば、きっと今度こそミキシマックスは成功する!




 ミキシマックス、完了! 坂本龍馬の特徴はやはり髪型と髪の色に出ている。体格に出なくて良かったぜよ! 青い髪の錦というのも新鮮だ。ユニフォームの青と色が被ってるけどな。


 相次ぐミキシマックスの成功に、ベンチのムードも大盛り上りだ。空野葵(CV:北原沙弥香)が歓声を上げてこのミキシマックスを喜ぶ。水鳥ももしかしたら錦のカッコ良さに惚れ直したかもしれない。


 ザナークは錦の新たな力を前にして、我が意を得たりとばかりに受けて立つ。自分を助けた錦に感謝の意を評しつつ、それを力で打ち砕くのがザナークなりの礼儀の払い方なのだろう。ミキシマックスにはミキシマックスと、彼は以前入手した曹操のオーラの力を借りる。



 「ミキシトランス・曹操!」


 錦とザナークの決着をつけさせるかのように、信助が錦にボールを送る。ボールを受けた錦は敢然とザナークに向かう。ザナークももちろんその挑戦を受けて立つ。


 「クロシオライド!!」

 錦のミキシマックス技はシュートではなくドリブル技らしい。土佐の海を悠然と揺蕩(たゆた)う黒潮に乗るという、まさに龍馬のオーラを受け継いだにふさわしい技だ。


 錦の「クロシオライド」はザナークを飲み込み、そして土佐の荒波が岸壁を洗い流すかのように吹き飛ばしてしまう。力と力の2人の対決、第2戦は錦の完勝に終わる。

 次に向かってくるメイズにはその力を使うまでもなく、足さばきのテクニックだけで軽くかわして前進する錦。ザナークへと向けた力対決をするまでもないと見越したのだろう。そして前線の神童にパスを送る。

 ここまでまったく目立つことなくほとんど空気と化していた神童は、ここで存在感を一気に取り戻すべく、ミキシトランス・信長の能力を駆使し、一気に必殺シュート「刹那ブースト」をドメインゴールめがけてぶちかます




 ザルの三国太一(CV:佐藤健輔)から化身アームド状態のベータ(CV:伊瀬茉莉也)ちゃんまで、未だ何者にも阻止されたことがない神童の必殺シュート「刹那ブースト」が豪快にゴールをこじ開け、試合は2−2の同点、振り出しに戻った。お互いの為すべきことを果たした神童と錦、2人の男はうなづき合い、その能力を解除する。


 こうなると試合の流れは追いついた雷門のペースになるのは必然……かに思われた。だがそうはならない理由がザナークに、そしてザナーク・ドメインにはあった。

 ザナークはエルドラドのためではなく、自身のプライドのために負けるわけにはいかないとその拳を握り締める。その言葉に強く同意するザナーク・ドメインの選手たち。彼らはエルドラドの配下などではなく、自分たちのプライドのために戦っているということがここで強く表出される。

 つまり彼らは手柄をたてたいわけでも、任務失敗後の懲罰(ちょうばつ)を恐れているわけでもなく、純粋に負けたくないというプライドのみによって雷門と戦っているというわけだ。そこには不利になった時の怯(おび)えも動揺も気後れもない。



 試合再開。プライドにかけて3点目(両チームの総力戦の様相を勘案しても、事実上3点目を挙げた側がイコール勝利チームだろう)を取りに行くザナーク・ドメイン。ボールを受けたメイズは必殺技「バンジースラスト」で文字通りフェイを煙(けむ)に巻く。



 その進撃を阻止したのは、黄名子の最強のおちょくり技「もちもち黄粉餅」だった。負けられない雷門とザナーク・ドメイン、お互いのプライドが強烈にぶつかり合い、試合は一進一退の好ゲームとなる(プライドがぶつかり合う割には、今のところ大笑い必殺技の「もちもち黄粉餅」がモノを言っているのだが)


 フェイのミキシトランス必殺シュート「古代の牙」はシュテンがキーパー技「サンドカッター」で阻止する。そしてラセツの「オーガブレード」はお返しとばかりに信助のミキシトランス・劉備が制する。本当に一進一退の素晴らしい試合。これが二条城の限られた観客の前だけで繰り広げられるのが惜しいほどの好勝負だった。……余談だが、この戦いの間、BGMで流れていた“T-Pistonz+KMC”の「僕らのゴォール!(無印『イナズマイレブン』最後のOPテーマ曲)」がまた素晴らしくこの戦いにマッチしていた。CDを持っている人は聴きながらこの辺を読んで欲しい。




 懐かしい! あまりに名曲過ぎて涙が出そうになる。CDが無い方はこの動画で聴いてください。




 お互いにミキシマックスせず、その肉体のみで勝負する錦とザナーク。2人はこの戦いを通じ、お互いを好敵手と認め合う関係になったのかもしれない。


 この試合の素晴らしさは、サッカーを知らない監督の中岡慎太郎(CV:泰勇気)をも熱狂させる。そしてその感動は沖田も共有していた。彼は剣城が必死で守ろうとしていたサッカーというものがこれほど心を震わせるものだということを知り、瞳を輝かせる。



 沖田「これがサッカーなのか……っ!!」


 そして同点のまま、残り時間はあとわずか。天馬が未だ不敗の必殺技「ワンダートラップ」でヤシャからボールを奪う。パスを受けたフェイがミキシトランス。古代白亜紀の暴君竜のパワーをボールに乗せて、今一度「古代の牙」を放つ。



 シュテンはやはり先ほど同様「サンドカッター」で迎撃する。拮抗(きっこう)するパワーのぶつかり合い、シュートはまたも止められたが、ボールは抑えられることなくルーズする。そして転がった先は錦の足元だった。偶然転がったボールが錦のところに転がってきたのだ。まさにこの試合は剣城と錦の2人に運命づけられていたと思える。

 これを決めようとゴール前に持ち込む錦の前には、やはりこの男、ザナークが立ちはだかる。そして先ほど錦によって解き放たれた化身「魔界王ゾディアク」を召喚し、すかさずアームドして錦を迎え撃つ。

 錦も対抗して化身「戦国武神ムサシ」を呼び出し、そしてアームドの掛け声を上げる。これまでその思いを聞き入れてくれなかったムサシだったが、ミキシマックスを果たして能力がアップしている今の錦の思いには応える気になったのだろうか、その姿を光に変えて錦の全身にまといつく。



 ミキシマックスに続いて化身アームドまで一気に成功させる錦。想像した通り、和風の戦国武将の鎧のようないでたち。


 1勝1敗で迎えた両者の力対決は、最終章として化身アームド同士での戦いとなる。シュートする錦にそれを迎え撃つザナーク。果たして勝つのはどっちだ!?



 両者の雄叫びが交錯する中、ザナークが止めていたボールがじわりとゴールに向かう。そして耐え切れなくなったザナークの足を振り切り、錦のシュートはドメインゴールに吸い込まれ、ネットを激しく揺さぶった!


 ゴール!! これでついに雷門が3−2と逆転することに成功する。力負けして呆然とゴールを見つめるザナークに、容赦なく試合終了の法螺貝の音が鳴り響く。試合終了、前半2失点の雷門が後半3得点という巻き返しで、見事に逆転勝利を収めた。

 勝利に湧き立つ雷門ベンチ、そしてフィールドの選手たち。勝利したものの肩で息をする龍馬に、狩屋が声を掛ける。


 龍馬「ああ、ちょっと息が切れただけぜよ」

 狩屋「ぜよ?」


 ザナークは敗北を素直に認め、今日のところは認めてやると錦に向けて捨てゼリフを残す。だがそれは錦の読み筋だったのだろう。ニヤリと笑って


 錦「そういうと思ったぜ(よ)!」


 と、ザナークのお株を奪い、皮肉っぽく返す。ザナークも自らの口癖を取られたことに苦々しげに、それでいてどこか嬉しそうに笑う。スフィアデバイスのムーブモードで仲間たちを転送し、ザナーク・ドメインの選手ではザナーク一人がその場に残された。

 そのザナークに、サッカー禁止令を解除することと、囚(とら)われた円堂守(CV:竹内順子)前監督を返すよう求める雷門。ザナークはポケットをまさぐり、変則の六角形の石を取り出す。それはクロノ・ストーンにされた円堂の変わり果てた姿だった。



 その事実に驚く天馬たちに、ザナークはまったく無頓着に円堂=クロノ・ストーンを投げてよこす。その態度は彼自身がクロノ・ストーンというものにまったく執着心などないという証明でもあった。

 だがそのクロノ・ストーンを途中でインターセプトしたローブの男。それはあの謎の老人だった。その登場にはザナークも驚く。謎の老人はクロノ・ストーンをまばゆく光らせ、一同の目を眩(くら)ませてその場から姿を消す。すべては一瞬の隙をついて始まり、そして終わった。


 ふと気づくとザナークも赤いエアバイクに乗り、この場から逃げていく。ザナークが逃げた影響だろうか? 新選組屯所には囚われていた近藤勇(CV;井上優)が自動的に姿を現す。



 今回は完全に蚊帳の外に置かれた形の新選組局長・近藤。沖田が心を変えてしまったことなんかは知らない方が良いのかもしれない。近藤は以後も信念を変えず、幕府への忠誠を誓い続けて明治政府軍と戦い、死んでいくことになるのだから。


 戦いに勝利したものの、天馬たちはサッカー禁止令解除も、そして円堂奪還も果たせなかった……。フェイは半ばこうなることが分かっていたかのように達観した口調で、ザナーク・ドメインがエルドラドの正式なチームではないことを語り始める。ただフェイはどうしてそのことを知っているんだろうね? 誰からもツッコミは入らなかったけど、やはり彼は怪しい……。

 どうすれば良いのかを天馬に問われ、フェイは未来に乗り込んで戦うという意見を述べる。その大胆な意見は天馬たちを動揺させる。これまでに一度未来に行ったけど、あれは覇者の聖典を盗みに……借りに行っただけだったもんねぇ。


 だがこの戦いで天馬たちの獲得できたものこそ無かったものの、戦果が皆無だったというわけではない。龍馬は試合前の約束、大政奉還を果たすよう慶喜に詰め寄る。

 慶喜はあっさりとそれを受け入れ、席を立つ。負けて受け入れざるを得なかったとは思えないほどあっさりとした態度に、信助は拍子抜けする。

 実はそれは慶喜の計画通りだった。側近と謀(はか)っていた慶喜は、大政奉還は最初から既定路線だったと語り、権力を返還した後の幕府と自身の生き残りを計画していたのだ。


 だが慶喜がどう策をこらそうと、徳川幕府の滅亡までもが歴史で動かすことの出来ない既定路線だ。フェイの言葉を受け、幕府側に一定のシンパシーを抱いていた水鳥がしみじみと「悲しい幕府の末路」と語る。だがその進路こそ今の日本へと向かっていくことになると、神童はその既定路線に肯定的だ。

 大政奉還こそが新しい日本の夜明けにつながると信じている龍馬は、すでに新生日本を夢見ていた。



 そしてこれまで隠してきた土佐弁バリバリの口調で錦に握手を求める。土佐弁をいきなり使い出した龍馬に違和感ある狩屋が理由を尋ねると、京に来てから恥ずかしくて方言を隠していたと龍馬は語る。暗殺を恐れて土佐人であることを隠していたわけじゃなかったのね……。

 だが同じように「ぜよ」「ぜよ」言う錦を見て、そんなことはちっぽけな話だということが分かったと言い、錦の肩に手を置いてその度量の広さを褒め称える。



 憧れの坂本龍馬に褒められて、錦も嬉しそうだ。なぜかそれを見守る山菜茜(CV:ゆりん)ちゃんがシケヅラなんだけど、なんでだろうね?


 そして龍馬はもう一つ決めたことがあると語り出す。


 龍馬「毎日サッカーして痩せるぜよ!」


  そして右手を懐(ふところ)に突っ込んでポーズをとる。それは天馬たちがこの世界に来るために使用したアーティファクト坂本龍馬の写真」に写る龍馬の姿だった。



 これで痩せていればちょっとは似るのかもしれない。


 この写真が未来に残る自分の姿だとしたら、未来の人間の期待を裏切るわけにはいかないと破顔する。錦もこの姿とのギャップに落胆していたもんねぇ……。ただ龍馬はこの1ヶ月後には近江屋で暗殺されるわけで、おそらくそのダイエットは間に合いそうにない。もちろんこの場でそのことを教えるわけにも行かないのだけど……。


 その龍馬の様子を微苦笑(びくしょう)で見ていた沖田のもとに、剣城がやって来る。意を曲げて自分に力を貸してくれた沖田に礼を言わずにはいられなかったのだろう。

 沖田の力を得て、今後もサッカーのために戦うことが出来ると頭を下げる剣城に、実は沖田の方も感謝したい気持ちでいっぱいだった。もう長く生きられない自分の力を使ってサッカーを守る戦いを続けてくれるということは、その戦いの中で自らの意志は生き続けることとなる。

 沖田から見ても、今の幕府が腐敗しきっているということは理解していた。だが自分が生きたという証を残すために、おのれの心を偽ってまで幕府に仕えようとした行為を「焦っていた」と自省する。

 そして自分が生きた証を残すことより、いま自分が生きていることを実感すること、それの方が大切なことと気づいたと沖田は語る。



 「君たちのおかげで、俺は生きていると感じられた」


 そう言って、剣城に頭を下げて感謝する沖田。2人の間を舞う紅葉(もみじ)の葉だけが、その清々(すがすが)しい別れの会話を聞いていた。



 同じ頃、同じように紅葉の葉が舞い落ちる山中ではザナークの怒声が響いていた。ザナークが詰問(きつもん)する相手は件(くだん)の謎の老人だった。ザナークはクロノ・ストーンを勝手に持ち去った老人に怒りをぶつける。彼としては雷門にクロノ・ストーンを返還することがプライドにかけて負けた彼が為すべき行為、仁義だったのだろう。それを邪魔されたことを怒っているのだ。

 老人はクロノ・ストーンを提示しながら、これは必要なものであり、ザナークはこの石の本当の価値を知らないとダメ出しする。そしてそこで聞きなれない少年の声が響く。

 老人の時もそうだったが、ザナークの力のことを知っているかのような口ぶりのその謎の少年(CV:岡本信彦)は、ザナークを自分たちと同じ才能を持つ者と評する。



 「それはフェーダの一員となる資格……」


 フェーダ……それはセカンドステージチルドレンが200年後の権力機関「エルドラド」に取って変わろうとする組織の名前だ。老人とこの少年の正体はフェーダなのか? そしてザナークもセカンドステージチルドレンの一員なのか? 彼らの思惑とは? 様々な新しい謎を秘め、物語は新たな展開を迎えようとしていた。



 次回に続く



  エンディング



 幕末編、ここに完結。更新が遅くなってしまってごめんなさい。今回は内容があまりに濃すぎで、感想文を書くのに前回の1.5倍ぐらい時間がかかったやんね。


 龍馬や沖田との正式な別れのシーンは描かれなかった。だが天馬たちがここで為すべきことはすべて終わった。残された大政奉還明治維新など歴史上の史実はこの時代の人間に任せる話だ。

 だが上記した通り、龍馬と中岡はこの1ヶ月後に近江屋で刺客に襲われて命を落とす。そして沖田は翌年、彼を苦しめ続けた結核によってその短い生涯を終える。沖田の命は儚(はかな)いながらもその意志は剣城の身体に宿ることだろう。そして龍馬の広く先見性あるおおらかな心は、錦がきっと受け継ぐはずだ。

 沖田が剣城を見て悟った「本当に守るべきもの」とは、幕府という目先の体制なのではなく、日本というもっと大事なものだったのだろう。



 龍馬はこの写真のようになるためにダイエットすると宣言していたが、この写真は実は大政奉還の2年前、1866年に撮影されたもの。やはり2年の間に激太りしたという説を採用すべきだろう。命を狙われ続けるストレスで太っちゃったのかな?


【龍馬語録】

  • 「命運は天が決める。殺されればそれまでのことだ」
  • 「自分はどこにも属さず、藩からのお金も求めない。だから苦労するのは覚悟の上である」
  • 「命さえ捨てれば、天下の政治に関わるのは誠に面白い」


 龍馬は常にここまで自分を犠牲にして日本という国のことを考えて行動していたのだ。龍馬の遺した言葉は今の政治家に百万遍ぐらい聞かせてやりたい。



 次回は映画を前にして、1時間の「イナダン秋の爆熱合体スペシャル!!」が放映される。イナクロの方は円堂守という人物を改めて振り返るという総集編になるようだ。「円堂守伝説!」というタイトルからして、ニンテンドー3DSで発売されるゲーム「円堂守伝説!」とのタイアップ的な内容になるのかもしれない。残念ながらゲームの方は発売延期になったそうだけど。

 今回のスペシャルは2話分感想を書かないといけなくって本当に大変だった。だけど次回の総集編はこれはこれで書くことが無くってブロガー泣かせの内容になりそう。レベルファイブめ……。


  次回「円堂守伝説!」に続く。



人気ブログランキングへ
 ↑ 最後まで読んでくれてありがとう。「大切なのはクリックしたら順位が上がると実感することだ」(今日の格言・沖田総司風)という訳で、記事が面白かったと思われましたら、クリックして頂けると私が沖田のように生きているという実感を感じられます。



竜馬がゆく〈1〉 (文春文庫)
司馬 遼太郎
文藝春秋
売り上げランキング: 4555

新選組全隊士徹底ガイド (河出文庫)
前田 政記
河出書房新社
売り上げランキング: 31416

サカモト (新潮文庫)
サカモト (新潮文庫)
posted with amazlet at 12.11.02
山科 けいすけ
新潮社
売り上げランキング: 218849