『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第20話「炎の中のサッカー!」の感想 【意外と気さくなシャルルさん】

 毎週水曜日夜7時からテレビ東京系列で放映されている超次元おもしろアニメ『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』の恒例の感想文。今回はその第20話「炎の中のサッカー!」を観ての感想を書く。シャルル王太子やラ・イール、ジル・ド・レなど史実に登場するジャンヌ・ダルク周辺の人物が登場し、面白くなってきた印象。歴史が好きな私にとって「イナズマ+歴史」というこの展開は本当に感涙ものだったりする。ご褒美以外の何ものでもない。イナクロ万歳!



 当ブログは、『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第19話「鎧の少女」の感想 【新オープニング・エンディング!】
 をご覧ください。

 で、一覧表示されます。

 で、一覧表示されます。

 時空最強イレブンのオーラを求め、中世フランスにやって来た松風天馬(CV:寺崎裕香)たちチーム雷門の一行は、そのオーラの持ち主・ジャンヌ・ダルク(CV:寿美菜子)に出会うことが出来た。

 だが歴史に名を残した彼女のその能力は、天馬たちと出会ったその段階では未だ目覚めてはいなかった。ミキシマックスでオーラを受け継ごうとした最初の試みは失敗に終わる。

 そんな折、一行はジャンヌから、オルレアンを救うために援助を求める旅に同行して欲しいと要請を受ける。ジャンヌの力を借りに来た彼らに、その要請を断ることなど出来ない。選ばれた6名がジャンヌの護衛としてイングランド軍が猛威を振るう敵の占領下を馬車で行く。


 旅程中、戦禍(せんか)のあまりの凄まじさに言葉を失う天馬たち。平和な時代に生まれた彼らにとって、中世の戦争のひどさは想像を超えるものがあった。ジャンヌは慣れているのだろう、あまり感情を表に出さない。それもそのはず、この戦争はジャンヌが生まれるよりずっと以前から始まり、1427年現在ですでに90年も続いているものなのだから(英仏百年戦争と言われるが、本当はもっと長く、1337年〜1453年の116年間に及ぶ)。

 ジャンヌはその長き戦いに終止符を打つべく、神から授かった啓示を信じて立ち上がった。だがその話を、これから援助を願い出る立場のシャルル王太子が信じてくれるのかどうか。歴史ではこの会見は成功裡に終わるはずなのだが、フェイ・ルーン(CV:木村亜希子)が言うには、現段階の歴史は不安定となっていて、史実通りに話が進むとは限らないという。

 その言葉は、当事者であるジャンヌ自身をも不安に陥(おとしい)れる。そんなジャンヌをまたも元気づけるのは、隣に座る霧野蘭丸(CV:小林ゆう)だった。



 「俺たちがついてる」


 こういうものは理屈ではない。自信満々で自らを肯定してくれる人がいれば、それだけで勇気を得られるものなのだ。ジャンヌは笑顔で蘭丸に感謝の言葉を告げる。

 やがてシャルルの居城、シノン城が見えてくる。ジャンヌはこの会見をなんとしても成功させるべく、胸の十字架を手に再び神に祈りを捧げる。



   オープニング



 シノン城の門扉(もんぴ)の前に立つジャンヌたち。その人数は偶然なのだろうか、史実と同じ7名だ(ジャンヌと6人の従者)。シャルルがこの門の向こうに待っている。ジャンヌと会うも会わないも、この人物の胸三寸(むねさんずん)で決められる。つまりオルレアンへの援軍が得られるかどうかも、シャルルの心次第なのだ。

 ここでオルレアンがイングランド軍に落とされれば、いくらジャンヌが奇跡の少女であろうと再逆転は不可能だろう。その使命の重大さを鑑(かんが)み、またも萎縮してしまうジャンヌだったが、今度は同性の菜花黄名子(CV:悠木碧)が「当たって砕けろ、やんね」と励ます。


 一方、城内ではジャンヌの訪問が城主であるシャルルに報告されていた。奇跡の少女などという噂を端(はな)から信じていない側近の一人、ラ・イール(CV:野島裕史)が追い返すよう主人に進言する。だが同じく側近であるジル・ド・レ(CV:不明)は「ジャンヌは神の使い」という意見が兵士たちの間に根強いことを告げる。

 シャルルはそれら進言を聞き、笑みを浮かべる。彼にはジャンヌが本物の聖女であるかどうかを見分ける、良いアイデアが思い浮かんだようだった。



 この邪悪そうな笑みを見れば、このアイデアがあまり誠実なものではないということが想像できる。有名な意地悪な芝居のシーンだけど、その結果は見てのお楽しみ。


 ジャンヌと天馬たちは、周囲をフランス兵に取り囲まれた中庭に通される。即時の面会が叶わず、疑われていることを心配するジャンヌ。だが黄名子、蘭丸、フェイたちがジャンヌを励ます。黄名子のおちゃらけた態度にジャンヌは思わず笑い出し、目先の懸念をしばし忘れる。ムードメーカーは大事だと思わされるシーン。

 そこに使いの者がやって来て、ようやくシャルルから呼び出しがあったことを告げられる。当たり前のようにジャンヌの後に続こうとする天馬くんだったが、それを使いの者は制する。シャルルに会えるのはあくまでもジャンヌただひとりというのだ。

 不安そうにこちらを振り向くジャンヌの姿に保護使命をかき立てられたか、蘭丸が従者として共についていくと名乗り出る。



 蘭丸の鬼気迫る真剣な眼差しに気圧(けお)された使いの者は、一人だけならとルールを曲げる。このシーン、使いの者がちょっとツンデレぽくて怪しい雰囲気を感じたのは私だけだろうか?

 黄名子の明るい声援をその背に受け、ジャンヌと蘭丸の2人は扉の向こうに消えていく。


 ジャンヌを待ち受けていたのは、ラ・イールの刺すような視線と威圧するかのような大声であった。



 ラ・イール。ラ・イールとはフランス古語で「憤怒(ふんぬ)」という意味。怒りっぽい彼に相応(ふさわ)しいあだ名と言えよう。本名はエティエンヌ・ド・ヴィニョルという舌を噛みそうな名前。そらあだ名で呼ばれるわ。ジャンヌを最初はまったく信用しなかったのだが、オルレアン解放戦を経てジャンヌの神の威光を受けているとしか思えない戦いぶりに感服し、やがてジャンヌの忠実な戦友となる。ジャンヌが捕縛されたときは、自らの命も顧(かえり)みずに救出に向かったほど(救出には失敗し、自らも捕虜となる)。今のこの姿からは想像がつかないけどね。ちなみにトランプのハートのジャックは彼がモデルであることは有名な話。


 ラ・イールの意地悪な口調に消沈するジャンヌ。シャルルに対し、話したいことがあるのではないかとジル・ド・レが問いかける。ジャンヌの前で家来たちが威圧的な態度に出ているこの状態は、暗に自分たちを通してシャルルと会話しろという圧力を掛けているのだ。

 それを察するジャンヌは、恐怖に震えながらも、シャルル以外の人間には話せないと決然と拒絶するが、当然ながら怒りの形相のラ・イールに一喝される。ラ・イールよりはジャンヌに好意的に見えるジル・ド・レが道を譲り、シャルルと直接会話するよう促(うなが)す。



 ジル・ド・レ。この時点では彼もジャンヌを奇跡の少女とは信じていない。彼もラ・イール同様、ジャンヌの奇跡に触れるうちに彼女の忠実な戦友となっていく。退役した後、数百人もの少年を拉致、殺害したとされ、後にペローの小説「青ひげ」で凶悪な殺人鬼のモデルとして描かれる彼だが、それもジャンヌが理不尽に処刑されたことを儚(はかな)んで厭世的(えんせいてき)になったせいだという説もある。ジャンヌのもとで戦っていた頃は「救国の英雄」と呼ばれ、とても愛国的な騎士だったからだ。


 だがその親切に見えた行動は、シャルルの立てた筋書き通りのものだった。ジャンヌと蘭丸の前に現れた男はシャルルと名乗る。だが一目見て、ジャンヌはその男がシャルルではないことに気付く。田舎の農家の生まれのジャンヌは、もちろんこの時がシャルルに会う初めての機会だ。本物の顔を知っているはずはないのだが、ジャンヌはそれがシャルルではないことを見抜く。

 ラ・イールからまたも恫喝(どうかつ)され、困ったような表情を浮かべるジャンヌ。付き従っていた蘭丸から思った通りに話すべきだと言われ、勇気を振り絞って宣言する。



 「このお方はシャルル様ではありません!!」


 周囲は驚くが、蘭丸が純粋に驚いたのに対し、ラ・イールとジル・ド・レは、彼らとシャルルが謀(はか)った悪事を見事に見抜いたこの少女の人智を超えた眼力に驚いたのだ。

 ジャンヌはシャルルがこの場にいないと告げ、辺りを見渡す。



 中庭でジャンヌと蘭丸を待つ残されたメンバーたち。シャルルは同胞であるフランス貴族の中にも敵が多数いることもあり、猜疑心(さいぎしん)が強く人を信じないところがあった。ここでその辺りの事情を語った剣城京介(CV:大原崇)には驚かされる。まだ中学1年生なのに、意外と歴史に詳しい。学校の成績も良さそうだしな〜。


 「待ってる間、サッカーしようよ!」


 剣城と違ってちょっとアホの子の天馬は持ってきていた袋から、サッカーボールを取り出す。シャルルの居城で周囲を兵士が取り囲んでいるというのに、こんな切迫した場でサッカーなんかしても大丈夫なのかいな?

 だが意外と誰からの反対意見もなく、全員が乗り気になる。そして天馬のキックオフでサッカーが始まる。鎧に身を包んだままのサッカーはかなり勝手が違うようだが、サッカーが彼らを楽しく元気にさせることに変わりはない。むしろ良いトレーニングになるとプラス思考だ。


 中庭を囲む回廊(かいろう)を、一人の男が通りがかる。

 楽しそうにボールを操る黄名子は、試合をしようと提案する。回廊のアーチ状の部分をゴールに指定し、二手に分かれて試合をすることになる。だが残されたメンバーは5人で、3人対3人の形式で分けることが出来ない。



 だったら一人足せばいいやんね、と、軽く請け合う黄名子。辺りを見回し、先刻ここを通りがかった男に目をつける。「ち〜っす!」といつもの人懐っこい調子で語りかけるその相手は、一介の兵士と名乗る割には偉そうな口調が気になる、ちょっと変な男だった。



 黄名子は口八丁にその男をサッカーに誘う。男は本音は誘われて嬉しそうだったが、「暇だからやっても良い」とツンデレ口調でしぶしぶ同意したように振る舞う。


 天馬たちは男に簡単にサッカーのルールを教え、試合に参加させる。初心者の男を気遣い、後ろで様子を見るように言う黄名子だったが、男は激しく反発し、騎士たるものは城攻め(この場合はゴールのこと)に遅れをとってはいかんと言って譲らない。

 やむなく男を前衛に配する剣城・黄名子チーム。だったが、男はサッカーのセオリーを知らないものにありがちな、いきなりシュートという愚策をとってしまう。

 もちろん軽く西園信助(CV:戸松遥)にクリアされ、ボールを奪われてしまった。サッカーはチームワークで攻撃するものだと教えられる男。

 攻守が変わって、今度は天馬・信助・フェイチームの攻勢だ。天馬からのパスを空中で受けようとしたフェイに飛びつき、先にボールを掠(かす)め取る剣城。



 剣城はインターセプトしたボールを黄名子にパス。天馬がマークにつく中、黄名子はゴール前に駆け上がる男にパスして後事を託す。男のヘディングシュートは惜しくも信助に阻止されてしまうが、この流れは悪くない。プレーを黄名子に褒められ、すっかりその気になる男。サッカーそれ自体の楽しさにも目覚め始めているのかもしれない。

 男も混じえ、高度な試合形式の戦いは続く。サッカーのその魅力は、監視として周囲を取り囲んでいたフランス兵たちも思わず職務を忘れ、見入ってしまうほどのものであった。


 男は相変わらずの偉そうな口調で敵である信助にボールを渡すよう命令する。だが当然信助は敵である男の言い分など聞く耳を持たない。

 男はおそらく普段はどんな命令でも周りが従うほどに高貴な身分なのだろう。だが男は命令を聞かない天馬たち、そして自分の意思で御することが出来ないこのサッカーというスポーツに新鮮な感覚を味わっていた。本来は命令する立場であろうはずなのに、仲間である剣城の「下がれ!」という命令にも素直に従う。

 フェイに渡ったボールをまたも剣城がスライディングタックルで奪い取る。今日のフェイ対剣城は、剣城の圧勝だ。そしてその奪ったボールは男の前に転がってくる。

 自陣ゴール前からではシュートしても入るものではない。冒頭のプレーの二の舞になることを恐れた黄名子の忠告も無視して、男は自信満々にシュートする。


 男「余に不可能はない!」


 ……と蹴ったボールは早速あさっての方向に飛んで行く。だがそのボールは傍(かたわ)らで見ていた兵士の頭を直撃し、その跳ね返りが回廊の壁に当たり、まるでビリヤードの球かエアホッケーのパックのような予測不能なバウンドで天馬チームのゴールを割ってしまう! ゴールだ!! これをビギナーズラック(初心者のバカづき)と言わずしてなんと言う!?


 男は大いばりでその実力を自画自賛する。これが本当に跳ね返りを狙ってのシュートだったのならすごいのだけど……。とにかく決勝点を挙げた喜びもあるのだろう、男は初めてプレーしたサッカーが面白くて仕方がないといった風情で褒め称え、破顔一笑(はがんいっしょう)する。どう見てもビギナーズラックで試合のイイとこを持って行かれた感のある天馬たちは、呆れ顔だったが……。



 上機嫌な男の引率で城内を行く天馬たち。勝手な行動をとってしまって大丈夫なのかを心配するが、男が言うには自分が許可すれば大丈夫らしい。男が一介の兵士という割にはいばっていることに、フェイは不信の念を持つ。

 男が、ジャンヌたちが消えた扉の方に向かうのを認め、さすがに拙(まず)いと感じた天馬は止めようとするが、男は気にする素振りも見せない。

 扉の向こうには、シャルルへの面会が叶わず落ち込むジャンヌの姿があった。だが天馬たちを伴って入ってきた男を見た瞬間、ジャンヌはその顔を刹那(せつな)の色に染めて駆け寄る。



 ジャンヌは男の前で膝まづき、男のことをシャルルと呼ぶ。そう、天馬たちとサッカーに興じたこの男こそ、本物のシャルル王太子その人であった。シャルルはさすがに自分の仕掛けた芝居を見抜いたこの少女に驚きの表情を浮かべる。

 後ろでは、男をシャルルだとは思わずにサッカーした天馬たちが別の意味で驚いていた。何か無礼なことをしでかしていたら、とか胸がヒヤリとしていたかもしれない。



 シャルル王太子(CV:鳥海浩輔)。戦場で没した前王シャルル6世の嫡子でありながら、イングランドの侵略を受け、王位を継承できずにいた(つまり現状、フランスには正式な王が不在という非常事態)。ジャンヌの活躍でオルレアンにてイングランド軍を打ち破り、ついにランスで戴冠(たいかん)しシャルル7世となる。だがその後はジャンヌを疎ましく思うようになり、敵に捕らえられたジャンヌを積極的に助けようともせず、事実上見殺しにする。身代金を惜しんだとも、自分より尊敬を集めるジャンヌに嫉妬したとも言われる。そういう心情を見るに非情で小心で身勝手な男なのだが、天馬たちとサッカーする姿はイイ人にも見えた……。


 シャルルは芝居を打ったことなどおクビにも出さず、ここまでやって来たジャンヌを労(ねぎら)う。シャルルの偽物を見破っただけでなく、本物のシャルルをひと目で見抜いたジャンヌを前に、先程までジャンヌを嘲(あざけ)っていたラ・イールとジル・ド・レも目を見張る。この少女は本当に神の啓示を受けた奇跡の少女なのかもしれないと思い始めたのだろう。




 改めて王太子としてジャンヌに引見するシャルル。ジャンヌは奇跡の続きを語るかの様に、シャルルはランスの大聖堂(ランス・ノートルダム大聖堂のこと)で戴冠し、フランス王として即位するだろうと告げる。

 だが現在はイングランド軍に押されまくるフランス軍。ランスも敵の占領下にある。そんな状況でシャルルを即位させるという意見は、どう考えても荒唐無稽(こうとうむけい)なものとしか思えなかった。

 だがジャンヌは、傍にいる蘭丸の存在に勇気を貰いながら、自分の意見を続ける。現在フランスはパリを始め、多くの拠点をイングランドに占領されている。だがそれは逆に考えれば敵の戦線が伸び、拠点一つ一つには十分な戦力が無いことの裏返しでもある。こちらの戦力を集中させ、各個撃破していけば勝算は十分にあることをジャンヌは説く。

 ただその前提として、味方の最後の重要拠点と思われるオルレアンが落ちてしまえば、それも不可能になると告げ、改めてオルレアン救出のための軍勢の拠出を求める。

 シャルルは、難問に突き当たった時の癖なのだろう、爪を噛んで沈思黙考(ちんしもっこう)する。ジャンヌの、そして6人の従者たちの懸命な視線を受け、シャルルはついに決断する。ラ・イールとジル・ド・レに、手勢を率いてオルレアンに向かうよう命令する。それはジャンヌの依頼を受け入れたということに他ならない。

 シャルルの決断に、ジャンヌは涙を流して感謝する。彼女はオルレアンを救うという大事な任務を半分成功させたのだ。もしかしたらシャルルは天馬たちと遊んだサッカーに好感を抱き、この作戦に賛同したのかもしれない。だとしたら思わぬ大収穫だったと言える。サッカーボールを持って来ていた天馬と、王太子とも知らずに声をかけた黄名子の2人は、ちょっとアホながらものすごいお手柄だ。きっと何も考えてなかったのだろうけど。



 ヴォークルールでは、空野葵(CV:北原沙弥香)たちが彼らの帰りを待っていた。



 無事帰還した天馬たちを迎える仲間たち。敵中を横断するという危険な旅程だったはずなんだけど、心配していたような物理的な危機には結局遭わなかった。まぁその方が幸いなんだけどね。


 ジャンヌの従者を無事にやり遂げた蘭丸を、親友の神童拓人(CV:斎賀みつき)が称える。一方、浜野海士(CV:金野潤)たちはジャンヌが引き連れてきた軍勢の多さに目を見張っていた(史実ではこの時ジャンヌが率いることになったフランス軍は1万2千人)。



 そしてオルレアンに入城するジャンヌたち。半年間に渡る長き包囲に苦しんできたオルレアンの住人たちは大歓迎で神の使いであるジャンヌの到着を喜ぶ。

 籠城(ろうじょう)の厳しさは住人の掲げる、汚れやせ衰えた手を見ればよく分かる。やつれた住人たちを哀れに思う山菜茜(CV:ゆりん)と瀬戸水鳥(CV:美名)。ジャンヌが心配したとおり、オルレアンは陥落するギリギリの段階に来ていたのだ。


 ジャンヌに援軍を依頼したオルレアンの騎士が出迎える。ジャンヌは到着が遅れ、籠城の苦労を長引かせてしまったことを、騎士の手を取って詫びる。




 自分の味わって来た苦労を一言も漏らさず、ただ他人を思いやるジャンヌの姿に感激する蘭丸。彼女の持つ優しさを蘭丸も感じることが出来たのではないだろうか? ミキシマックスする上でその人物をよく知らなければならないのは信長の時と同様だ(この段階で自分がミキシマックス候補だとは、蘭丸自身も思ってはいないだろうけど)。


 そしてジャンヌは決然と、この戦いを終わらせるため、間を置かず総攻撃するよう檄を飛ばす。オルレアンへのフランス軍の入城により、包囲するイングランド軍は浮き足立っていた。自軍の士気が上がり、敵が動揺している時こそ攻撃のチャンスであることをジャンヌは知っている。だから唐突に思える総攻撃の指示を出したのだ。

 だがシャルルの命を受け、ジャンヌに付き従ってきたラ・イールとジル・ド・レがその作戦に待ったをかける。彼らは旅の疲れを癒すべきだと主張して譲らない。反論するジャンヌに対し、自分たちはジャンヌの指示では動かないと暗に仄(ほの)めかし、彼らはジャンヌの指示にサボタージュを決め込む。



 オルレアンの城壁にある砦の屋上に登る蘭丸。そこには自信を失い、悲観にくれるジャンヌが膝を抱えて座り込んでいた。



 オルレアンへのフランス軍の入城はすでに敵の知るところとなっているのは間違いなく、各地に分散しているイングランド軍が集結して来る恐れがある(史実でもイングランド軍は実際にオルレアンに向かって動き出していた)。

 だが肝心のシャルルから借りた援軍が彼女の意思で動かすことが出来ない。ジャンヌは自分の力の至らなさを憂え、落胆していたのだ。


 蘭丸「……怖くないのかい?」


 蘭丸は胸間城壁の間から外を見ながらジャンヌに尋ねる。砦のすぐ向こうには、イングランド軍がその不気味な姿を見せていた。イングランド軍はオルレアンのすぐ外、ロワール川の向こう岸に堅牢な城塞を築き、ずっとこの街を包囲してきていたのだ。

 ジャンヌは、自分が逃げればフランスの人々の苦しみは終わらないと語る。彼女は神に選ばれた立場として、逃げるわけには行かないと決意していた。だが先程のように騎士たちが協力してくれないとそれも叶わない。

 自信を失っていたジャンヌに、蘭丸はジャンヌになら出来ると、その弱気を打ち消そうとばかりに強い口調で答える。シャルルの心を動かしてここまで軍勢を連れて来た彼女の手腕を褒め、そしてジャンヌにしか出来ないことがあるのだと語りかける。


 蘭丸「君には、君にしか出来ないことがある」



 2人の心が強く結びつくそんな会話を、階段の陰で黄名子が聞いていた。少し寂しげなその表情は何を意味するのか? おそらく黄名子はこの時、自分以上にジャンヌの能力を受け継ぐに相応しい存在がいるということに気づいたのではないだろうか?



 城内ではラ・イールが、腹ごしらえとばかりに豪勢な食事を摂(と)っていた。長い包囲戦で、貴重となっていた食料を惜しげもなく食すその態度は、ジャンヌの心境を慮(おもんばか)っていた蘭丸には堪えられない態度だった。

 ラ・イールのその態度は騎士のそれではないと、皮肉たっぷりに告げる。激しやすい性格のラ・イールはまたも怒り出すが、蘭丸は一歩も引かない。そんな蘭丸に黄名子も同調してラ・イールを挑発する。

 言い争う両者の中、変事を告げる連絡が入る。ジャンヌが少数の手勢を率いて、イングランドの砦に攻め込んだというのだ。



 ジャンヌは軍勢の先頭に立って敵陣に突撃する。それは蘭丸から聞かされた「自分に出来ること」を模索した末の行動だった。自分の突撃に皆が後に続いてくれることを望み、先行して独断での行動だった。ジャンヌはフランスの人々のために、自分を犠牲にしてでも戦うことを決意していた。

 ジャンヌの決意は自分が余計なことを言ったからだと蘭丸は激しく後悔する。そして神童の静止も聞かずにジャンヌの後を追う。ジャンヌにもしものことがあれば、すでに彼女に特別の感情を抱き始めていると思われる蘭丸は、その責任の重さに耐えられないだろう。

 蘭丸と共に後を追った雷門の一同は、イングランドの砦から沸き起こる煙に目を奪われる。そこで炎が上がるほどの激しい戦いが巻き起こっていることの証左だからだ。

 ジャンヌは持ち慣れぬ剣を掲げ、フランス軍に檄を飛ばす。そこにイングランド兵が突進してくる。フランス兵が危うくその突進を阻止するが、ジャンヌは自分の命すら危ないという状況に、怖気(おじけ)づいてしまう。



 無理もない。ジャンヌはまだ15歳の少女なのだ。人を殺すという行為でしか解決できない戦争の場に恐れを抱くのは当然だろう。

 ジャンヌの危機に橋を渡ろうとする蘭丸たちだったが、その前に立ちはだかる影が一つ……。それはイングランド軍ではなかった。男は自らをザナーク・アバロニク(CV:小西克幸)と名乗る。



 「俺はザナーク・アバロニク。名も無き小市民だ」


 浜野「ちゅーか、名前あるじゃん」


 誰もが思う浜野のナイスツッコミは軽く流されて、フェイはザナークがここに来た理由を問う。彼らはこれが初顔合わせだが、ザナークはどう見ても未来から送り込まれた敵、エルドラドの手の者だろう。



 一方、オルレアン城内ではジャンヌの独断専行(どくだんせんこう)にラ・イールとジル・ド・レが憤(いきどお)っていた。そこに、フードを被った男が声を掛ける。それは身分を偽(いつわ)って軍に帯同していたシャルルであった。シャルルは彼らを叱責し、ジャンヌに続いて攻撃に出るよう命令する。



 こうして見ると、シャルルの方がラ・イールたちより善人に見えるな……。


 シャルルの号令一過、この場に存在するフランス騎士はその名誉にかけて、ジャンヌを助けることがその使命となる。



 一方、砦へと続く橋の上ではザナークと天馬たちが睨み合っていた。一刻も早くジャンヌのもとに駆けつけたい蘭丸は構わずに駆け出そうとするが、ザナークの後ろに11人の人間が突如現れる。それはガンマ(CV:泰勇気)たち、プロトコル・オメガ3.0だった。

 向こう岸に向かうには、サッカーで自分たちに勝つか、それとも(ロワール川を)泳いで渡るかの二択だとザナークは告げる。そこに遅れてシャルルたちフランス軍が駆けつけて来る。

 ザナークの操るスフィアデバイス(フィールドメイクモード)により、サッカーフィールドが橋上に現出する。さらに両チームの周囲を結界が取り囲み、天馬たちは閉じ込められてしまう(ついでとばかりに、フランス軍の先頭を走っていたシャルルまでもが)。



 ザナークは、試合が終わるまではここから出られないと告げる。もはや戦って勝利して、この場を切り抜けるしか方策はない。チーム雷門の大監督を自認するクラーク・ワンダバット(CV:吉野裕行)がしゃしゃり出て、勝手に闘志満々に挑発する。

 そのさまを見ていたシャルルは、傍にいた茜に「監督とは何か?」と尋ねる。チームで一番偉い人という説明を受けたシャルルは、当然のように自分が監督を務めるとさらに前にしゃしゃり出る。ワンダバはまたもその役どころを奪われる始末。



 試合となると実況、そして審判の存在は必須だ。それにはもう定番となったこの男が召喚される。沖縄の海の家から呼び出された矢嶋陽介(CV:佐藤健輔)は、またもそのTPOに合わせた服装で現れる。これってザナークさんがコーディネートしたの?


 いつもの如く持っているマイクにブレインジャックされた矢嶋はノリノリで実況を開始する。監督がシャルル王太子やザナークというのもすぐにインプットされたようで、その語り口には澱(よど)みがない。




 試合開始直前の両チームの布陣。プロトコル・オメガ3.0としては初陣(ういじん)となる。ガンマはやはりセンターフォワードで、アルファ(CV:谷山紀章)、ベータ(CV:伊瀬茉莉也)たちの上位互換を印象づける。新規キャラである4番、5番、8番が中央に配され、重要な役どころっぽい(洗脳前のプレーを見たかったのだが……)。3番の新種のデブはあまり外見が変わってない。いきなりシュッと痩せたりしたら分かりやすいんだけどな……。ホントに洗脳されてるのか?

 一方の雷門は旧メンバー復帰後初の試合。守備要員が少ないせいか、新規参加の黄名子はディフェンダーとして初陣に臨む。背番号が78番と、大きい数字なのが気にかかるが。本来はミッドフィルダーポジションの浜野、速水鶴正(CV:吉野裕行)もディフェンダー担当だ。DFは置いてきた3年生たちのポジションだもんなぁ。あと変更点としては、フェイがミッドフィルダーに回り、影山輝(CV:藤村歩)が剣城と2トップを組む。



 これまでのプロトコル・オメガに所属していた選手たちまでもが雰囲気を一変させていることに、目ざとい剣城やフェイは即座に気付く。ガンマがザナークとミキシマックスしたと得意げに語るのを聞き及び、雷門サイドに衝撃が走る。やはりザナークのアレは、ゴーストミキシマックスの一種だったようだ。



 ザナークのアレ。

 そして試合開始のサイレンが鳴る(どうでもいいが、この音、矢嶋が出してるのか? 法螺貝(ほらがい)とかは彼が吹いていたけど、今回はどうやって……?)。ガンマのキックオフを受けたレイザ(CV:藤村歩)がドリブルで駆け上がる。迎え撃つ雷門選手たち。そこで監督であるシャルルからの指示が飛ぶが、なんとここで「全員防御」という常軌を逸した指示を出す。

 サッカーのセオリーをまったく知らないシャルルの戯言(ざれごと)とみなした選手たちは、その指示に従わない。



 シャルルの命令を無視して前進する天馬くんたち。こっちを見つつ、何となく馬鹿にしているかのような絵ヅラでワロタ。


 レイザは新顔のバハムス(CV:不明)にパスを出す。錦龍馬(CV:岩崎了)と黄名子が対応しようとするが、バハムスは見た目のゴツさに似合わず、トリッキーにバックパスを出す。

 受けたのはガンマ。彼は洗脳されていても「スマート!」という口癖で現状を表現する。ガンマのその自信に危機を感じた神童は剣城と2人がかりで立ち向かうが、ガンマは想定の範囲内とばかりにあっさりと抜き去ってしまう。



 次にガンマに立ちはだかるのは蘭丸、そして浜野だった。だがガンマはここで彼の秘められた能力を初披露する。化身「迅狼リュカオン」を召喚し、シュートを放つ。

 


 ちなみにリュカオンはギリシャ神話に出てくる狼。ベータの化身「虚空の女神アテナ」に続いてギリシャ神話がベースの化身。


 シュートは蘭丸と浜野をはじき飛ばし、信助が反応する間もなくゴールに突き刺さってしまう。化身アームドをすることなく、それでいてこの絶大な威力である。ザナークの力をミキシマックスしたガンマの圧倒的なパワーがもたらした先制点だ。


 想像を上回る敵のパワーを前にして、雷門ベンチも静まり返る。ただひとり、この事態を想定していたのかどうか分からないものの、全員防御を命じていたシャルルが指示を無視したイレブンに立腹していた。



 その間も砦ではジャンヌが率いたフランス軍イングランド軍の戦いが続いていた。目の前で繰り広げられる殺し合いにジャンヌは狼狽(ろうばい)し、どうしてよいのやら善後策を見失っていた。

 城壁に背を付けて戦場を恐れるジャンヌの姿は、フィールド上にいる蘭丸にもよく見えていた。ジャンヌを心配する蘭丸には、気が気ではない状態だ。だが今は目の前の敵を打ち破り、この試合を終わらせることが最重要だ。親友である神童からそう諭され、蘭丸は我に返る。果たして蘭丸は、この強大な敵を倒して震えるジャンヌのもとに駆けつけることが出来るのだろうか?




 次回に続く



  エンディング




 前回の戦国時代編が長かった分、このジャンヌ・ダルク編は結構展開が早い気がする。オルレアン解放戦は史実でもたしかに展開が早いのだが、それでも1週間余りかかっている。ジャンヌ入城が4月29日、解放されたのが5月8日。オルレアンでは今でも毎年5月8日はジャンヌの解放を感謝する祭りが行われている。

 オルレアン住民のジャンヌに対する感謝はものすごく、ジャンヌが囚われの身になった際は住民たちが身代金を建て替えようとした。ちなみに集まった寄付金を横取りしたのはシャルル7世。やはり彼は善人とは思えない気がする。

 シャルルは猜疑心深い男として描かれていたが、それは史実でもある。身内であるフランス貴族からも敵視されていたのだから無理はないのかもしれないが……。彼と敵対していたという貴族、これがいわゆるブルゴーニュ派。百年戦争終盤、ブルゴーニュ公爵フィリップはイングランド王ヘンリー5世と手を組み、シャルルの王位継承を認めなかった。フランス東方に一大勢力を築き、シャルル王太子に対抗して戦う。ジャンヌ・ダルクを捕らえたのも彼ら。



 これがシャルル7世の肖像画。神経質そうなイメージで、アニメの彼の姿はその辺の雰囲気をよく捉えていて結構似ている印象だ。私を含めジャンヌファンには評判が良くないが、百年戦争後のフランスを善く治めた有能な王であったことは事実。評価は分かれるが、ジャンヌが聖女としての物語として語り継がれるうちに彼を悪役にしたという面はあると思う。あとフランスは1789年のフランス革命以降、王政が廃止され、王という概念に対して否定的な印象があるのも影響しているだろう。



 昔の記事を見てみたら、映画「ジャンヌ・ダルク」を見ての感想を少しだけど書いている記事を見つけた。ジャンヌの歴史に興味のある方は一読して頂ければ幸いです。主演女優のミラ・ジョヴォヴィッチに関連付けた内容で、あまり詳しく語ってはいませんが……。


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 次回はミキシマックス成功のシーンが見られそう。ジャンヌが戦場の中で真の力に目覚め、それを受け取る瞬間が訪れるのだろう。相手は気心を通じ合わせた、あの男しかいないはず。


 話の展開としては、あと1〜2話でジャンヌ編は終了かな? シャルルの戴冠という、ジャンヌが人生で一番幸せだった頃までが描かれるのかなぁと想像している。ジャンヌが火刑に処される場面などは出来れば見たくないし。

 ジャンヌに感情移入した蘭丸が歴史を受け入れることが出来るのかどうかにも注目したい。ジャンヌを助けたい、でも歴史を変えるわけにはいかないというジレンマが描かれたりしたら、私なんかは泣ける。悲恋展開が続くのは悲しいが、これまで異性を意識しないことが多かった雷門イレブンに思春期が訪れたような印象もあって、甘酸っぱく見守りたいという気もしたりして……。



  次回「誓いはこの旗のもとに」に続く。



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