『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第48話「SARUの力!」の感想 【最強にして最凶の敵登場】

 毎週水曜日夜7時からテレビ東京系列で放映されている超次元おもしろアニメ『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』の恒例の感想文。今回はその第48話「SARUの力!」を観ての感想を書く。ついに物語の最強最後の敵と雌雄を決する時が来た。時空最強イレブンを結成した真の意義がここで問われることとなる!!



 当ブログは、『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第47話「集結!時空最強イレブン!!」の感想 【すべてが収斂していく感動回!】
 をご覧ください。

 で、一覧表示されます。

 で、一覧表示されます。

 セカンドステージチルドレンの組織【フェーダ】とエルドラドのサッカー対決「ラグナロク」は1勝1敗1引き分けと互角の展開の中、追加の最終決戦が執り行われる運びとなった。


 エルドラドサイドには一つの朗報があった。クロスワード・アルノ(CV:楠見尚己)博士考案の装置を使ってフェイ・ルーン(CV:木村亜希子)がフェーダから持ち帰ったクロノ・ストーンの呪縛を解き、ついに円堂守(CV:竹内順子)を蘇らせたのだ。

 空野葵(CV:北原沙弥香)は実験の成功を見て同じくクロノ・ストーンの状態にある円堂大介(CV:藤本譲)に対し、元の姿に戻れると笑顔で語りかける。だが大介は余命幾ばくもない老体に戻るよりも石の状態のままの方が動きやすいからと乗り気ではない。



 空も飛べるクロノ・ストーン状態の大介。なるほどジジイの時より動きは軽快だろう。この方が葵ちゃんの懐(ふところ)にも潜り込めるしな。第一、円堂復活の際、アルノ博士の装置は壊れてしまったわけで、人間の姿に戻りたくともすぐには戻れなさそうだし。なお装置を破壊した真犯人は瀬戸水鳥(CV:美名)。


 歓迎ムード一色の雷門の選手たちの中にあって、ザナーク・アバロニク(CV:小西克幸)は彼らとは別の感慨を抱く。時空最強の能力を求めて超大型台風「クララジェーン」に挑んだ彼は、その時クロノ・ストーンから掛けられた声の持ち主が目の前にいる男のものと同一であることに気がつく。


ザナーク「おお! あの時の声は円堂守だったのか!!」



   オープニング



 「あの時」という言葉の意味がにわかに分からなかった松風天馬(CV:寺崎裕香)たちに言い聞かせるように、ザナークは往時を振り返る。クララジェーンとミキシマックスしようとその胎内に飛び込んだ時、ザナークの心に「もっと強くなれる!」と訴えかけた声……それが円堂のものだったというのだ。

 円堂もその時のことをよく覚えていた。ザナークの力量を認め、お前なら出来ると思ったと述べ、今度は実戦でその実力を見せてもらうと爽やかに語る。


ザナーク「フッ、楽しみにしてな!」( ´,_ゝ`)


 ザナーク、そこは「そう言うと思ったぜ」じゃないんだ……。


 そんな中、なぜかやたら張り切るクラーク・ワンダバット(CV:吉野裕行)がそろそろスタジアムに入場する時間だと一同に告げる。そのオーバーアクションは脅かされ始めた自身の監督就任の座を何とか取り戻そうとするため注目を集めようという彼の涙ぐましい努力だった。


 監督の名乗りを挙げようとしたワンダバを華麗にスルーして、天馬たちは円堂に最終決戦の監督に就くことを要請する。



 最後まで報われないワンダバ。空中に吹っ飛び、最後はアルノ博士の装置よりも大爆発するワンダバだったが、それでも一同はスルー。ワンダバいじめもここまで徹底すると立派だ。


 最後の試合は円堂監督に指揮してもらいたいと、天馬はチームを代表して要請する。そして円堂の旧友であり監督候補でもある鬼道有人(CV:吉野裕行)や豪炎寺修也(CV:野島裕史)も天馬たちの意思を尊重して円堂に【クロノ・ストーム】監督に就くよう促(うなが)す。



 エルドラドチーム【01】と【03】を指揮した豪炎寺(左)と鬼道(右)。どうでもいいけど、ワンダバと同じ声で監督就任を説く鬼道さんがやたらカッコ良い。とても中の人が同じとは思えない。


 最後はこの試合に賭ける思いの強い方が勝つ、と述べる豪炎寺の言葉……クロノ・ストーム監督としてそれを引き出すことが出来るのは、今は円堂以外に考えられない。衆目(しゅうもく)の意見は一致していた。

 そして神童拓人(CV:斎賀みつき)の音頭の下、雷門の全員が頭を下げて監督になって欲しいと懇願する。そこまで言われて引き受けないなど男がすたる。円堂はまたトレードマークの人ったらしのハニカミ笑顔を浮かべて、その要請を受諾(じゅだく)する。


円堂「サッカーやろうぜ!!!」
一同「オオッ!!!」


 チームとしてのクロノ・ストームの意思が円堂という核を得て、ここに一つに結晶する。人類の取り得る最善のフォーメーションがここに現出したのだ! あとは泣いても笑っても、このチームに命運を託すしかない。



 そしてラグナロクスタジアム。両チームはすでにベンチ前にその姿を現していた。試合開始には実況&審判が欠かせない。というわけで夕暮れを迎えた沖縄の海の家にまたもスフィアデバイスの魔の手が迫る。カレーを混ぜる店主、矢嶋陽介(CV:佐藤健輔)はスフィアデバイスの光に包まれ、その場から消え去る。様子を見に来た嫁の成海(CV:佐々木日菜子)はまたも消えた旦那に怒り心頭だったが、残されたカレーを味見して、そのあまりの美味に相好(そうごう)を崩す。嫁の怒りを忘れさせてしまうほど、矢嶋のカレーは美味しいらしい。



 カレーを混ぜるお玉を持つ手のままにマイクを持ってラグナロクスタジアムに現れた矢嶋。いつものように洗脳されノリノリで実況を開始するが、おそらくこれが彼にとって最後のご奉公となるのだろう。無料でコキ使われ続けてきた彼だが、これが最後だと思うと感慨深い。この長い物語の様々な時代に拉致されて来た矢嶋だけど、海の家の様相に時差が感じられるところから、すべてがとある1日の間に起こった事象だと想像される。お疲れ様。



 SARUことサリュー・エヴァン(CV:岡本信彦)が率いるチーム【ザ・ラグーン】



 VIP席ではエルドラド議長のトウドウヘイキチ(CV:相沢まさき)と参謀のサカマキトグロウ(CV:石井康嗣)、そして観客席ではアルファ(CV:谷山紀章)、ベータ(CV:伊瀬茉莉也)、ガンマ(CV:泰勇気)をはじめとするルートエージェントたちや時空最強イレブンの能力が無いばかりにベンチにも入れなかった雷門の面々が見つめる。

 そして愛する妻と息子に大事な試合を託すアスレイ・ルーン(CV:家中宏)も、決戦が始まる直前のフィールドをじっと凝視するのだった。妻と息子が同じ年齢で同じチームに所属しているという状態は彼にとってどういう感覚なのかちょっと聞いてみたい気もする。


 フィールドでは人類の命運がかかった戦いだというのに、神童は試合が始まるのを待ちきれないような笑顔で天馬に語りかける。天馬はその先輩の心境に同調するかのようにウキウキした表情で返答する。

 霧野蘭丸(CV:小林ゆう)は人類の運命をかけて戦うという境遇が未だに信じられないと、言葉とは裏腹に同じく笑顔で語る。いつもはニヒル剣城京介(CV:大原崇)もここまで来たら負けるわけには行かないと興奮気味に話す。西園信助(CV:戸松遥)、雨宮太陽(CV:江口拓也)も時空最強イレブンは絶対に負けないと強敵に立ち向かうことを誓う。



 「言葉遣いにクセがあるーズ」の姿。興奮して武者震いする錦龍馬(CV:岩崎了)の言を受け、野生児のトーブ(CV:ゆきじ)も「ウホウホすっぞ!」と言葉の意味はよくわからんが、とにかくすごい自信を示す。菜花黄名子(CV:悠木碧)も独特の方言で精一杯戦うことを宣言する。


 ザナークは彼らを尻目に、自分がいれば負けるはずがないと、こっちは言葉通りにすごい自信を示す。ラグナロク当初の3試合において、ザナークの所属したチームは2勝1分けと負け知らずだったのだからその過剰なまでの自信も分からないでもない。


 みんなこの試合が持つ大きな使命を分かった上でも悲壮感はない。まるで楽しい試合に臨むかのように、全員が笑顔だった。それはラグナロクという試合形式の意図そのものよりも、サッカーという彼らが愛するスポーツをするという根源的な喜びの方が大きいという証左なのかもしれない。しかもそれを率いるのは彼らが求めてやまなかった、円堂だ。


 そんな仲間たちを頼もしげに見つめるのは、フェイだ。だがふと視線を感じてそちらを見やると、昨日まで仲間だったSARUがじっとこちらを見つめていた。



 キャプテンマークを付けたSARUはかすかな声でフェイの名を呼ぶ。何気に後方右端にどこかで見たメガネ男子の姿が……。



 そして試合開始直前、クロノ・ストームはベンチ前で円陣を組んで円堂の最後の指示を受ける。円堂は手のひらに拳を当てるポーズを取り、例の人ったらしの笑みを浮かべて一言……


「思いっきりやって来い!」


 それは指示とも呼べない檄(げき)だった。強敵を相手にするときの雷門独特の伝統のようなその檄なのだが、天馬たちにはそれで十分だった。天馬はこの試合に必ず勝って、SARUたちセカンドステージチルドレンにもサッカーの素晴らしさを分かってもらうと意気込む。アルファたちを心から改心させ、フェイを取り戻す原動力となったサッカーの魅力がSARUたちにも伝わらないはずはない。そう信じる天馬は試合を通じてSARUたちを説得するつもりでいた。

 そしてその思いは他のメンバーも共通して持っていた。天馬の掛け声に合わせ、メンバーは勝利のために一斉に拳を突き上げる。



 この手がそれぞれ誰なのかを想像してみる。全部で10本ということは誰か一人は手を挙げていない。手を挙げていないのは誰だろう? 剣城かな? グローブ付けているのは信助。左の色黒の手は錦。右の、足みたいにごっつい手はザナークだろう。ザナークの左はトーブかな。右上の小さな手は黄名子っぽい。信助と黄名子の間の一番伸びてる手は天馬と推測。黄名子の右は位置的にフェイかな? 後は太陽と神童と蘭丸だけど、どれがどれやらさっぱり分からん。


 クロノ・ストームメンバーに気合が入ったところで両チーム、フィールドに入りポジションにつく。




 ここで恒例の両チームの布陣。クロノ・ストームは典型的な3−5−2のオーソドックスなスタイル。本来FW役の太陽がMFポジションということからも攻撃的な印象が強い。

 一方のザ・ラグーンも3−5−2だが、両翼のどっかで見た2人が1.5列という形でより攻撃的。SARUは最前列からクロノ・ストームゴールを窺(うかが)う。4番と6番の選手は女の子かな?



 メンバー表を発表してもう隠す必要が無くなったからだろうか? そこで突如、場面が甘甘しいラブコメムードに包まれる。



「今日はまた一段と美しいね、メイア」


「あなただってよく似合っててよ、そのユニフォーム」


 どっかで見た2人。あの奇跡のバカップル、メイア(CV:佐々木日菜子)とギリス(CV:江口拓也)の2人が再登場! 前回SARUに対して本戦出場を志願した行為は報われたらしい。空気を読まずにお互いの美貌を褒め合うバカっぷりは、仲間であるザ・ラグーンのメンバーからもやや引かれながら繰り広げられる。


 本戦で唯一敗北を喫した【チーム・ギル】の主要メンバーであったメイアとギリスが加わったことに、葵やワンダバは警戒心を募らせる。一見バカップルにしか見えない彼らにとってこの戦いは復讐戦を意味するであろうからだ。



 とにかくこれで役者は揃った。あとは試合開始を待つばかり……だったのだが、ここでVIP席のサカマキが動く。前日に用意していた、エルドラド側の敗北に備えた催眠ガス狙撃部隊の進捗(しんちょく)を確認するため、隊長に連絡を取ったのだ。

 試合会場を一望できる高層ビルの屋上では、一斉に並んだ銃口がギラリと不気味な光を反射する。彼らの構える銃口はSARUをはじめとするザ・ラグーンの選手たちにピタリと照準が合っていた。


 この命令を下したトウドウは、どんな手段を使ってもSARUたちに世界の実権を渡してはならないという大義を持っていた。だがトウドウたちはフェーダを甘く見ていた。SARUほどの少年にその程度の計画が見破れないはずがなかったのだ!

 彼はスタジアムの周囲に配置させていた仲間【チーム・ザン】、【チーム・ギル】、【チーム・ガル】のメンバーたちに何かを指示する。彼らは一斉にその手のひらをフィールドに向ける。発し始めた彼らのオーラはスタジアム全体に異変を起こす!



 突如激しく揺れだしたスタジアムの異変は、天馬たちはもとより観客席を埋め尽くす群集たちをも驚愕させる。何が起こっているのか分からない状況の中、当のSARUは澄ました表情で成り行きを見守る。

 次の瞬間、スタジアム全体が地表から浮き上がり始める。エルドラド狙撃部隊が恐慌(きょうこう)に陥るなか、スタジアムはぐんぐん浮上していく。


天馬「何をする気だ!?」


 そう問い詰める天馬の言葉を無視して、SARUは取り出したアンプルガンを上空に向け、発射する。



 その弾道は空を穿(うが)ち、開いた穴のような空間にスタジアムは飲み込まれていく。地上から見つめる狙撃部隊の視線からはSARUどころか、スタジアム自体が空の中に姿を消してしまったのだ!


 どこに連れ込まれたのか心配する信助の言葉に問わず語りに返答するワンダバ。それによるとここはワームホールの中だという。SARUはアンプルガンでワームホールを造り出し、その中にスタジアムごと引きずり込んだのだ。

 その超越的な能力に剣城は改めて驚愕するが、エルドラド本部を破壊してラグナロクスタジアムを創出したセカンドステージチルドレンの力ならばこういう芸当も可能なのだろう。



SARU「残念だったね、オジサンたち」


 SARUはVIP席のトウドウとサカマキを小馬鹿にしたような口調で語りかける。クロノ・ストームが敗北した際はSARUたちフェーダのメンバーをガスで眠らせワクチンを投与するというトウドウの計画をSARUは事前に見破り、そのような外部からの干渉(かんしょう)を防ぐためにこのような大掛かりな行為をしたとその理由を語る。

 その計画を聞き、計画を何も聞かされていなかったクロノ・ストーム側にも動揺が走る。おおよそ正しき義を持つ側の行為とは思えないトウドウの卑怯な策略に錦が怒りの表情を浮かべる。それだけでなく、クロノ・ストームが負けるという可能性を考慮したその行動自体が自分たちを信用していないということの証左であり、そこにカチンと来たのかもしれない。

 策を見透かされていた上、それをバラされてしまったトウドウは極力冷静に振舞うが、不機嫌そうに椅子の肘掛を指で叩くところに動揺の色が窺(うかが)えた。

 彼は自らの策がSARUの策略返しによって完全に無為に帰したことを悟り、この試合に勝つより他に人類を救う手段がなくなったことを知る。



 両首脳のこのような虚々実々(きょきょじつじつ)の駆け引きにより、最終決戦はワームホールの中という、あまりに特殊な状況で行われることとなった。だがザナークはむしろその状況を楽しんでいるようだった。

 天馬は試合開始に当たり、戦いの舞台をスタジアムごと移動させるというSARUの演出した場の雰囲気に飲まれないよう、彼らの全力を最初からぶつけるべくキャプテンとしての指示を出す。


「行くよ、みんな! ミキシマックスだ!!」


 そして自ら範(はん)を示すようにアーサー王(CV:星野充昭)のオーラを身にまとい、ミキシマックスして見せた。仲間たちもすかさずリーダーの行動に追随(ついずい)する。
.


「ミキシトランス、アーサー!!」



 第1、第2、第5、第6の力。思えばこの頃は実在の人物とミキシマックスしていたなぁ。



 第3、第4、第7、第10の力。三国志はともかく恐竜とドラゴンは当初の予測をはるかに超えたすごい展開。この頃からストーリーはぶっ飛び始めた。



 そして問題のミキシトランス「スーパーザナーク」。台風とミキシマックスするというだけで破天荒なのだが、彼だけはミキシトランスした姿でクララジェーンの名前を呼ばないのはなぜだろう?



 そして最後にビッグ(CV:悠木碧)とミキシトランスするフェイ。母親との数奇な邂逅(かいこう)を果たした今のフェイにとっては、ビッグの能力は母の愛に包まれた者同士、一層の信頼を持って使える能力だと思われる。


 いきなり11人全員がミキシマックスして試合に臨むという夢展開。これがゲームだったら剣城あたりから「すでに3人ミキシマックスしています」と注意されて実現不可能な体制だ!


鬼道「これが時空最強イレブン、クロノ・ストーム!」


 円堂大介が提唱した時空最強イレブンの真の姿が眼前で展開され、いつもは冷静な鬼道もさすがに興奮を隠しきれない。そして円堂は穏やかな表情で弟子たちのたくましく成長した姿を確認し、笑みを浮かべる。


 その天馬たちを見つめるSARUの表情はいささかも曇ることはない。時空最強の敵を前にして、さらに自信を崩さないザ・ラグーンの面々の実力のほどとは……?



 SARUはいきなりの全力の姿勢を見せるクロノ・ストームに対してむしろ歓迎の意を表して笑う。それに対しザナークは絶対の自信でSARUたちを潰してやると意気込む。互いの好戦的な性格が火花を散らす中、試合開始の笛が待ち遠しく思われる。そしてSARUはいよいよ人類の命運を決する最終決戦の開幕を告げる。


 矢嶋の吹くホイッスルが鳴り響き、試合開始! ザ・ラグーンのキックオフで最終決戦はスタートする。SARUからパスを受けたイムス(CV:不明)に挑みかかるのはやはりこの男、ザナークだった。だがミキシマックスしてフィジカル的には抜群の状態のザナークをイムスはあっさりと抜き去ってしまう。イムスは7番MFの小柄なオム(CV:美名)にパスを送る。空中でトラップしたオムはそのまま5番MFのピグ(CV:野島裕史)にパス。

 ピグはマークするフェイをスピードでぶっちぎって寄せ付けない。その展開の速さには観客席で見守る狩屋マサキ(CV:泰勇気)たち雷門イレブンも目を見張る。

 ピグの上がりに対応するのは蘭丸だった。ここから先にはいかせないと立ちはだかり、見事なヒール使いでボールを奪い取る!



 技を駆使したわけではないが、このシーンは地味にカッコ良かった。


 蘭丸のディフェンスが冴えたのを見て天馬にも三国たちにも笑顔が浮かぶ。それは最強の敵であるザ・ラグーンがまったく対処できない相手ではないと、味方側に印象づけるシーンだったからだ。

 蘭丸は前線の神童にボールを送る。受けた神童の前に立ちふさがるのは6番MFのニケ(CV:戸松遥)。神童は負けるわけにはいかないとの思いも強く、ニケをかわして前進を続ける。



 神童はさらに最前線の剣城にフィードする。だがそこはさすがはザ・ラグーン、4番DFのシープ(CV:不明)が剣城の目前でカットする。しかしチャンスを自覚する太陽が強引にボールを奪いにかかる。スライディングタックルでシープからボールを奪還し、チャンスを維持する。

 その後も両チームのレベルの高い素晴らしい攻防が繰り広げられ、観客もこの試合が人類の未来がかかった試合ということをもしばし忘れ歓声を送る。

 時空最強イレブンの能力を秘めたクロノ・ストームが互角の勝負をしていることはベンチで見守る葵たちマネージャーや観客席で見つめる三国太一(CV:佐藤健輔)たち雷門イレブンを勇気づける。同じく見つめるアルファたちルートエージェントもこの展開を楽観的に見ていた。


 フィールドでは天馬が切り返しからシープを抜き去り、前線に駆け込んでくる。それを一瞥(いちべつ)したSARUは不敵な笑みを浮かべる。一瞬後、風のような速さで何者かが天馬からボールを奪い取ってしまう。それはSARUだった。天馬から遠く離れていたはずのSARUの一瞬のプレー。それはフィールド上に居た誰もが予想できないほどのスピードだった。

 奪ったボールに足を置き、天馬たちに背を向けたままSARUは何かをつぶやく。キックオフを除いてここまで彼は一切のプレーに参加していなかった。それはミキシマックスしたクロノ・ストームのメンバーの能力を見定めていたからだ。そしてそれが終わり、彼は行動を開始した。SARUの判定したクロノ・ストームの実力、それは……


SARU「がっかりだね……!」


 自分たちの実力をあまりに低く評価され、天馬や錦は表情を変えて気色(けしき)ばむ。SARUはその言葉を証明するには行動だと言わんばかりに、宙高くボールを蹴り上げ、ダイレクトボレーの要領でイムスにパスを送る。

 おそらくSARUが動くこと自体がチーム全体への合図だったのだろう。イムスは力を込め、ドリブルで前進する。そのスピードは到底人間業とは思えないほどのものだった。

 三国は驚きつつも、ここまでのザ・ラグーンが本気を出していなかったと推測する。そしてその見立ては残念ながら正解であった。まず神童が苦もなく抜かれてしまう。さらにディフェンスが本業の蘭丸と黄名子が2人がかりで止めに向かうが、やはりイムスは目にもつかないスピードで巧みにかわしてしまう。ここまで互角に見えたのは、あくまで相手側の演出だったことに気づかされ、クロノ・ストームに動揺の色が浮かぶ。

 イムスは満を持して、ゴール前に上がったSARUにボールをパスする。SARUはそのボールをスピンを掛けるように踏みつける。それが彼の必殺シュート「シェルビットバースト」への布石であった。




 そのシュートに信助は何もすることが出来ず、ゴールを奪われてしまう。最終決戦の先制点は人類支配を目論(もくろ)むザ・ラグーンが挙げる。

 SARUの圧倒的な威力のシュートには一同が驚愕させられる。悠然と自陣に歩いていくSARUを横目に、天馬は改めてフェーダ最強のチームに対する恐ろしさを感じるのだった。



 そして今度はクロノ・ストームボールのキックオフで試合が再開される。ボールを持ったザナークがオラオラ状態で駆け上がるが、メッシュ髪がザナークと共通するオムが落ちている小石を拾うが如くの安易さでザナークからボールをかっさらう。



 本気モードにチェンジしたザ・ラグーンはさっきまでの互角の戦いが幻想であったかのように攻守でクロノ・ストームを圧倒し始める。クロノ・ストームはボールに触れることさえ出来なくなってしまう!

 チーム力の差から気持ちが守りに入ってしまうことを不安視した車田剛一(CV:野島裕史)と三国が懸命に声援を送る。そう言われなくとも1点のビハインドのあるクロノ・ストームは攻めるしかない。ボールを持つニケに立ち向かうのは太陽だ。ニケはボールを足で挟んでアクロバティックなトンボ返りで太陽を抜き去る。それはまるで実力差をあえて見せつけるかのようなおちょくったプレーだった。



 ミキシマックスしていてなおその力が通用しないことに、太陽は怒り半分、驚き半分の心境でニケを追う。一部始終を見ていた剣城はその強大な身体能力に、セカンドステージチルドレンたちが本当に同じ人間なのかと疑いを持つ。

 だが天馬は明快に「人間だよ!」と言い切って剣城の迷いを断ち切ろうとする。そして天馬はその言葉を実証するためニケからボールを奪おうと挑みかかる。

 ニケは余裕の表情でそれをかわし、前線で張るメイアにボールを送る。メイアは進化したギリスとの合体必殺技「デッドフューチャーG2」をクロノ・ストームゴールめがけてシュートする。しかしこれは進化したとはいえ一度は目にした技だ。信助はタイミングを見計らい、必殺キーパー技「大国謳歌」で迎撃する。



 だがダメだった〜!! あのメカ円堂(CV:竹内順子)を破壊したメイアとギリスの必殺技に一層の進化を加えた「デッドフューチャーG2」は止めることが出来なかった。これで試合は0−2と、人類の未来がさらにフェーダの手に委(ゆだ)ねられる瞬間が近づく。やはりこの2人は単なるバカップルではない。

 思っていた以上の苦戦に表情を歪める天馬に、SARUは諭すように自分たちと天馬たちの実力差が歴然としていることを告げる。フェーダこそが新しい人間の形であり、彼らを怪物扱いして排除しようとしたエルドラドは旧(ふる)いタイプの人間だと切り捨てる。旧い人間は淘汰されるべきだと恐ろしいことを笑顔でサラリと言ってのけるSARUを、当のトウドウは忌々(いまいま)しげに睨みつける。

 SARUは自分こそが世界に新しい秩序をもたらす存在であると言い、自分たちの世界を作るのだと宣言する。そしてその彼らの未来を勝ち取るために、この試合は容赦はしないと天馬に言い放つ。SARUのその考えは超人的な力を得たが故に虐(しいた)げられた人間の意識が作り上げた、歪んだ妄想であった。ただその妄想はこのまま行けば実現してしまう!

 そしてSARUはかつての共鳴者であるフェイに向き直り、これが最後の呼びかけとばかりに翻意(ほんい)を促す。セカンドステージチルドレンの同志として、SARUはフェイに戻ってくるよう声を掛けたのだ。だが……


フェイ「SARU……戻らないよ。僕は天馬たちと戦うと決めたんだ」


 静かに、しかし断固とした態度で拒否を表明するフェイ。これほどの劣勢でも両親と友人の愛に目覚めたフェイにはSARUの甘言(かんげん)に耳を貸す余地など残されてはいなかった。立ち去るフェイに、SARUは驚きと落胆、そして自分を残して人間としての幸せを実感するフェイへの嫉妬にも似た怒りの表情が隠しきれずに表出する。


 観客席では一方的な試合展開に、速水鶴正(CV:吉野裕行)がいつもの弱気の虫を見せていた。セカンドステージチルドレンに勝つことは無理なのかと肩を落とす速水を、試合はまだ分からないと車田、狩屋が叱咤する。


 ただ実際にSARUたちと戦っている天馬はその実力差を身体で感じている。簡単に逆転することは難しいと思い悩む天馬の後ろ姿を、ザナークが思惑ありげに見つめていた。

 ザナークは何かを心に秘める。


ザナーク『……行くしかないか』




 再びクロノ・ストームのキックオフ。だがその前に天馬が「まずは1点!」と仲間に声を掛ける。落ち込む仲間をフォローするのもキャプテンの大事な仕事だ。英邁(えいまい)で偉大な王であるアーサー王のオーラをまとう天馬ならこの心配りも理解できよう。まぁ言われるまでもなくサッカーは一度に1点しか取れないスポーツだけどな。


 そしてキックオフ。ボールを持ったザナークは先ほどの再現のようにオラオラ状態で駆け上がる。このままではこの後の展開も先ほどと同じように軽く奪い取られてしまうのではないか!?

 イムスはザナークを、かつて短期間ではあるがフェーダに在籍していたことを責め、ザナークを「裏切り者」と罵(ののし)りながら挑みかかる。

 だが今度のザナークはさっきと違うところをここから見せる。イムスを突破したザナークは、彼をしてフェーダに属した能力を自らも秘めているということを周囲に思い知らせる。


ザナーク「特別な力を持っているのはお前らだけじゃねぇんだよ!!」


 爆走するザナークはピグとオムをも吹き飛ばし、前進を続ける。セカンドステージチルドレンの素養を持つザナークならば相手の動きに遜色(そんしょく)なく動けるのも道理だ。そしてその横を併走するのは、同じくセカンドステージチルドレンの裏切り者、フェイだった。

 目と目を合わせただけでお互いの心境を共有したフェイとザナーク。その眼差しからフェイの覚悟を見てとったザナークはパスを送る。フェイはSARUを救うという試合前の考えを実現させるためにも負けられないと強く心に期し、ウサギのステップを思わせる素早いドリブルで敵陣を切り裂いていく。

 そしてノーマークのままゴール前に上がるザナークにボールを返す。ザナークは与えられた機会を無駄にしない。即座に彼の持つ最強の必殺シュート「グレートマックスなオレ」をぶちかます



 しかし相手は名にし負うフェーダ最強のチームのキーパーだ。そう簡単にゴールを割るとは思えない。件(くだん)のキーパー、ホス(CV:不明)は余裕の感じられる挙動で必殺キーパー技「リバースワールド」を出して迎撃態勢に入る。




 ……と思わせておいて実はザルだったホスさん。意外に弱かったと思えたのだけど、チェットの化身キーパー技「シキガミラインズ」でさえぶち抜いた「グレートマックスなオレ」が強すぎると言ったほうが正しいかもしれない。「グレートマックスなオレ」は未だ不敗。何度見ても技の名前だとは思えないんだけどな。


 ザナーク、そしてフェイの活躍によって、ついに1点を返したクロノ・ストーム。これで1−2と試合展開は俄然分からなくなってきた。

 ゴールを決めたザナークとドリブルでディフェンス網を切り裂いたフェイ。2人の身体能力がザ・ラグーン相手でも通用するということが証明されたことを合わせ、この試合はまだまだ分からない。

 天馬もこの2人にボールを集めることを神童に提案し、神童もその案に同意する。セカンドステージチルドレンの能力を持つフェイとザナークを攻撃の核にするというその発想は、神童を介してメンバー全員の意思に徹底される。


 だが失点した側であるSARUの顔からは相変わらず余裕の笑みが消えない。まさか彼らにはまだ隠された能力があるというのだろうか?

 そのまさかだった。SARUはなにか黄色いアンプルを取り出し、それをベルトの側面に挿入する。すると一瞬、何やら黄色いオーラがSARUの身を包み込む。他のメンバーも同様にアンプルをベルトに挿し入れ、SARUと同じような変化を見せる。その変化を見て太陽が眉をひそめ、怪訝(けげん)な表情を浮かべる。だが現段階ではそれが何なのか、まだ分からない。


 ところが試合が再開されたとたん、その意味するところが即座に発覚する。イムスはまたもドリブルで突進するのだが、その速さがさっきよりもさらにさらに速く、まったく考えられないほどのスピードで突進し始めたのだ!

 抜かれた天馬がイムスが通り過ぎ、そのソニックブームを感じたところでようやく振り向くというぐらいだったから、その速度が如何にすごいものだったのかの想像がつく。

 彼らのスピードが上がった理由を、同じセカンドステージチルドレンであるフェイだけは気付いていた。フェーダの連中はアンプルに力を保存しておいて、好きなタイミングで取り出すことによって能力を上げることが出来るらしい。言わば自前のドーピングだが、もちろんこの行為が反則だというルールはない。「セカンドステージチルドレンの能力を使わない」という原則から考えるとほぼ反則だと思うんだけどね。

 神童はそれを聞いて守りを固めるよう指示を出す。号令一下、的確にマークが付き、防衛ラインも整備され、ディフェンス網は完璧に整備された。それによりボールを持つイムスが孤立することとなる。

 そしてその状態で蘭丸、黄名子、トーブがラインを上げてボールを奪いにかかる。しかしここで予想もしない事態が起こる。2番DFのダク(CV:奈良徹)が自陣からはるばるクロノ・ストームの前線にまで上がってきたのだ。

 イムスは蘭丸たちを十分に引きつけておいて、ダグにパスする。フリーのダグは受けたボールを必殺シュート「スプリングアロー」でゴールめがけて撃つ。まさかDFの選手がシュートを撃つとは思っていなかったクロノ・ストームの選手たちは混乱する。



 ゴール前には信助しかいない。信助はこれ以上の失点を防ぐべく、ミキシマックスを解いてもう一つの能力、化身アームドに賭ける。化身「護星神タイタニアス」を召喚し、アームドしてそのシュートを止めにかかる! 



 だが止められない〜!! ドーピング状態とはいえ、DFでしかもデブのシュートがこれほどの威力を誇るとは、まったく恐ろしい集団だ。ていうか信助なんでミキシマックス解除したの? ミキシ+アームドはまだ出来ないと言うのだろうか?


 与えてはいけない追加点が決まってしまった!

 痛い失点。これで試合は1−3と、またもワンチャンスでは追いつけない点差になってしまう。ミキシマックスのみならず、化身アームドしても敵のシュートに対抗できなかったという事実はクロノ・ストームのメンバーの意気を消沈させる。しかもそれは点を取ることが専門のFWのものではなく、DFのシュートなのだ(しかもデブ)。黄名子の声が恐怖に震える。

 追いついたかと思えばまたもその能力の一端を見せつけてまたも差を実感させる。SARUのそのやり方に天馬は激しく怒りを抱く。だがSARUはやはりあの飄々(ひょうひょう)とした余裕の態度を崩さない。


 底知れない強敵の存在を前に、天馬たちはなおも負けられない戦いを続けなければならない。果たしてこの彼我の実力差を覆(くつがえ)し、天馬たちは勝利することが出来るのだろうか?




 緊迫の次回に続く!!



  エンディング



 ついにSARUがフィールドプレーヤーとして天馬たちの前に立ちはだかった。予想通りの強敵だが、これでもまだその実力を十全に発揮しているわけではなさそうだ。メイアとギリスの2人も再登場して嬉しいのだけど、やっぱりちょっとは手加減して欲しかったりしてね。



 次回予告では、SARUが異様に膨らんでいる姿が……!? 一体何が起ころうとしているのだろうか? 単にチームにデブが増えるだけならば良いのだけど……(んなわけねぇ)。



 そしてこの白い猿を思わせるキャラは? おそらく化身だろう。とすれば、誰の化身なのかは言うまでもないだろう。


 信助がミキシマックス状態を解いてから化身アームドしたのも気にかかる。やっぱりまだミキシマックスと化身アームドは同時に出来ないという状態なのだろうか? 今のところフェイはそれが出来るんだけどね。この後の展開で可能になるのだろうか? 両方やらないとドーピングフェーダの力に対抗できそうにないから。特に信助。


 この戦いは人類の命運をかけたものであるということは作中でもこの感想文中でも何度も触れた。だがこの戦いの意義にはもう一つ大きなテーマがある。それはサッカーを守るために開始した時空最強イレブンを結集するという行動の真の意義が問われる戦いでもある、ということだ。

 敵がエルドラドであろうとセカンドステージチルドレンであろうと、サッカーを守り、サッカーの素晴らしさを伝導するというその役割は変わらないからだ。SARUたちに勝利してSARUたちを改心させる、それがそのまま人類とサッカーの未来を守ることにつながるわけで、そういった意味でも天馬たちは負けるわけにはいかない。



 第1期の47話を越えてイナクロはもう少し続くようだ。50話+総集編という感じだろうか? 残り少ないということを実感するが、最後まで観続けようと思う。最近は更新が遅れがちで申し訳なく思っているが、良ければもう少しお付き合いください。



  次回「猛攻!セカンドステージチルドレン!!」に続く。



人気ブログランキングへ
 ↑ 最後まで読んでくれてありがとう。「相手は同じブロガーだ、だから絶対勝てる!」(今日の格言・天馬くん風)というわけで記事が面白かったと思われましたら、毎日クリックして頂けると嬉しく思います。



僕たちの城 (数量限定生産)
イナズマイレブンGOオールスターズ「松風天馬(CV:寺崎裕香)&剣城京介(CV:大原崇)&神童拓人(CV:斎賀みつき)&西園信助(CV:戸松遥)&霧野蘭丸(CV:小林ゆう)」
FRAME (2013-02-06)
売り上げランキング: 462

青春おでん
青春おでん
posted with amazlet at 13.02.09
FRAME (2013-02-06)
売り上げランキング: 678