『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第19話「鎧の少女」の感想 【新オープニング・エンディング!】

 毎週水曜日夜7時からテレビ東京系列で放映されている超次元おもしろアニメ『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』の恒例の感想文。今回はその第19話「鎧の少女」を観ての感想を書く。新章突入に遅れること1回、オープニングとエンディングの方も新規なものとなった。これで本当に新しい展開になったという印象がいや増してくる。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第18話「みんなが帰ってきた!」の感想 【菜花黄名子ちゃん初登場】
 をご覧ください。

 で、一覧表示されます。

 で、一覧表示されます。

 時空最強イレブンの力を手に入れるため、1427年の中世フランスにやって来た松風天馬(CV:寺崎裕香)一行は、その地でイングランド軍と戦うフランス軍の姿を認める。

 後に英仏百年戦争と呼ばれるその戦いにおける最終盤でのキーマン(キーウーマン?)、ジャンヌ・ダルク(CV:寿美菜子)のオーラを手に入れること、それが今回この地を訪れた天馬たちチーム雷門の目的だ。


 戦いに傷つき、倒れゆく同志の姿を痛ましく思いながら、ジャンヌは祖国フランスを守護してもらえるよう、神に祈りを捧げる。その祈りに応えるように、彼女が見つめる空に一筋の光明が見えた。ジャンヌはその光に、おのれの信ずる大いなるものの意思の存在を感じるのであった。




   オープニング


 新オープニングでは、天馬のライバル・雨宮太陽(CV:江口拓也)の姿が見える。映画でも登場するらしいし、こちらにも登場して新風を吹き込む役を演じるのだろう。今からその活躍が楽しみだ。他にもオープニングにはこの後登場する歴史上の偉人が姿を見せていた。登場順にそれら過去の世界に向かうことになるのだろうか。



 兵士たちが去り、無人となったフランスの名も無き集落。戦火に焼かれた戦場を、一陣の風が虚しく吹き抜ける。映画でもドラマでもない、作り物ではない本物の戦場の生々しさに戦慄(せんりつ)する天馬たち。ゲームの世界に例えることで、西園信助(CV:戸松遥)や浜野海士(CV:金野潤)は、あえてそのリアルな恐怖心から逃れようとする。

 この混沌(こんとん)とした状態で、どうやって目的であるジャンヌを探せば良いのかをクラーク・ワンダバット(CV:吉野裕行)に尋ねるフェイ・ルーン(CV:木村亜希子)。ワンダバは、ジャンヌがヴォークルールという名の街にいるということまでは見当を付けていた。史実ではこの年にジャンヌがヴォークルールを訪れ、シャルル王太子(のちのシャルル7世)に会うための便宜(べんぎ)を図るよう守衛官に計らってもらうことになっている。

 だがそこに森林の奥に逃れていたフランス軍の斥候(せっこう)がやって来て、天馬たちを発見してしまう。

 神童拓人(CV:斎賀みつき)が機転を利かせて道に迷った旅人のフリをする。すでにワンダバスイッチでこの時代の衣装にチェンジしていた一行だが、基本的に東洋人の顔つきをしているわけで、フランス人から見れば一発で異国人であることはバレてしまう。



 斥候の兵士に詰問され、神童は返答に窮(きゅう)してしまう。織田信長(CV:千葉一伸)の時は通じた神童の言い訳大作戦も、人種が違ってしまうとやはりごまかしきれるものではないらしい。

 いつの間にか周囲を取り囲むかのように現れた殺気立つフランス兵たち。先程までイングランド軍相手に戦いを続けていたフランス兵の敵を見るような視線を前に、一行はピンチに陥る。

 さらに神童が告げた「ヴォークルールに行きたい」という言い訳がフランス兵の疑心に拍車をかける。一行の目的が、まさにジャンヌ・ダルクにあるということを言ったも同然であるからだ。天馬たちはジャンヌの命を狙うイングランド軍のスパイという疑念を持たれてしまう。


 「ええっと、どうでしょうねぇ〜」


 その場の緊張感を一気に緩和してしまうような場違いなのんびりした口調で、兵士たちの後ろから女性が現れた。その女性をジャンヌと呼ぶ兵士の言葉を聞き、天馬たちの間に先程までとは別の緊張感が走る。その能力を求め、どうやって探そうかと思っていたお目当ての相手がこうもあっさりと登場してきたことに対する驚きもその中には含まれていた。



 ジャンヌ・ダルク。1412年生まれなので、この時点では満15歳ということになる。神の啓示を受け、戦争に参戦。この後オルレアンを解放し、フランス救国の勇士となる。だがイングランド軍を撃退したあとは利用価値なしとみなしたシャルル7世に遠ざけられ、孤立を深めた後、国内の反対派(ブルゴーニュ派)に捕らえられる。最後は敵であるイングランドに引き渡されて異端の判決を受け処刑される。享年19。彼女がローマ教皇から祝福され名誉回復を受けるのは、その死から500年近く後の20世紀初頭まで待たなければならない。


 ジャンヌの名を思わずつぶやいた神童の言葉は、逆にジャンヌを驚かせる。そのオドオドした挙動は後の世に伝わる勇ましい戦う乙女・ジャンヌ・ダルク像とはおおよそかけ離れていて、イメージとのギャップに空野葵(CV:北原沙弥香)たちは戸惑う。一番違和感ある「ジャンヌがメガネっ娘」である点を指摘した山菜茜(CV:ゆりん)が一番視聴者の目線に近かったと思うが。

 そのジャンヌの前に立ち、得意の決めポーズであいさつをするのは、新参の菜花黄名子(CV:悠木碧)だ。このタイミングでジャンヌに近づいてフレンドリーに語りかけるとは、さすがは天馬を超えるKYと言われるだけのことはある(言っているのは私だが)

 黄名子は親しげに握手を求め、手を差し出す。だがその行為はジャンヌを守る立場であるフランス兵の怒りを買わずにはいかなかった。ジャンヌと黄名子の間に割り入って黄名子に剣を突きつける。黄名子の手に武器さえあればジャンヌを殺害してしまうことも可能な距離である。兵士の反応は決して大げさではない。

 兵士は完全に天馬たちをジャンヌの命を狙うイングランドのスパイと決め付けていた。まぁそう考えればジャンヌの名前を知っていた理由も合点が行くわけで。

 だがそれは誤解である。このままでは危険が危ないと判断した神童は、「自分たちは未来から来た」と正直に語る。だがたとえ本当のことであっても、そんな超次元的な言葉がこの時代の人たちに通用するわけもない。神童は言ってしまってから、そのことに思いが至り、ハッとなってしまう。信長は正直に話せば信じてくれたんだけどねぇ。これも異人種間では難しいのかもしれない。

 ただジャンヌだけはその言葉に関心を持ち、護衛の兵を退けながら神童のもとへ歩み寄る。ジャンヌはヤブにらみの視線で、しきりにかけているメガネを目から離したり近づけたりを繰り返す。これはメガネの度が合わず、前が見えにくい状態を意味している。同じメガネ同士、速水鶴正(CV:吉野裕行)はそのことにすぐに気付く。

 ジャンヌは神童と、その隣に立っていた霧野蘭丸(CV:小林ゆう)の顔を交互に見ながら、最終的に蘭丸に向けて、さっきの未来という言葉の意味を尋ねる。未来について言及したのは神童なのに……。



 完全に相手を間違えて質問するジャンヌ。これはジャンヌが相当に近眼で、そのメガネも伊達(だて)メガネではないということを示唆している。ジャンヌのキャラ設定をした人は、メガネっ娘は伊達メガネでは駄目で、本当に視力が弱くないといけないという萌え要素をよく理解している。やはり小野寺浩二のマンガの読者か?


 ジャンヌの、間違ってるのに迫力のある気迫に気圧(けお)される蘭丸。タイムジャンプのことを正直に話せば良いと、天馬を超えるキングオブKYの逸材(いつざい)の黄名子は言うが、この時代の人間が時空を超えるという現象を理解することは期待できないだろう。

 むしろ超次元的な現象は神ならぬ者=悪魔の仕業と決めつけられていた時代でもある。うかつにタイムジャンプの話をすれば、裁判にかけられて全員死罪の目に遭うことも考えられた。これはこの後、イングランド軍を相手に奇跡的な勝利を収めたジャンヌが裁判で処刑された史実を考えるとまったく大げさな話ではなかった(ジャンヌは魔女ではなく、異端として処刑されたのだが)。

 だがどうやって釈明すれば良いのかも思いつかない。しびれを切らせたフランス兵士が抜刀した状態で迫ろうとする。もはや完全に彼らは天馬たちをスパイとして処断しようとしていた。

 あわててそれを制したのは、ジャンヌだった。止める理由を聞かれ、ジャンヌも困った顔になる。だが直後に何か名案を思いついたように笑顔になる。彼女は帯刀していた剣の下にくくられていた革袋から何かを取り出す。

 そしてそれを蘭丸の前に差し出す。それはどう見ても、色紙に包まれた単なるキャンディだった。



 これが何の釈明になるのやら、わけが分からずに混乱する蘭丸に、なおもキャンディを食べるようジャンヌは勧める。やむを得ず受け取って口に入れる。ジャンヌの求められるままの行動で、決して本意ではなかった蘭丸だったが、そのキャンディの美味しさに思わず顔がほころぶ。

 美味しいという言葉を聞いて喜ぶジャンヌだったが、そんな美味しいものへの関心を、このキングオブKYが示さないはずもない。黄名子がものすごく物欲しそうな子犬のような視線でジャンヌの革袋を見つめていた。その愛くるしい表情を見てはジャンヌも上げないわけにはいかないだろう。黄名子はまんまとキャンディをせしめる。



 「うう〜ん、美味しいやんねっ!!」


 ジャンヌは最初からそのつもりだったのだろう、それ以外のメンバーにもそのキャンディをお勧めする。食べた2人の笑顔を見て、残りの皆も関心しきりでジャンヌのキャンディを受け取りに行く。ただひとり無関心を装うニヒル剣城京介(CV:大原崇)にも、気を利かせた黄名子が持って行く。剣城ですら口に含んでその表情を変えるほどのものだったのだから、その美味しさは本物だろう。

 アメちゃんをあげてニコニコと笑顔を浮かべるジャンヌのその姿に大阪のおばちゃん……もとい普通の女の子を感じた葵たち女子マネ3人娘。たしかにどう見ても普通の女の子にしか見えない。その身にまとう鎧も不釣り合いに思えてしまうほどに。

 だが疑いの目を向けるフランス兵たちは収まらない(当たり前だと思うが)。ジャンヌはこれは心配りだと言う。これには神童が否定的な見解をつぶやくが、ジャンヌはめげずに、こうして相手を理解するために交流することが大切なのだと語る。現代の感覚ではこのヒューマニズムあふれる精神は尊重されるべきだと思うが、ここは15世紀の、しかも戦場なわけで、ジャンヌの人を信じ過ぎる態度は問題かもしれない。

 フランス兵たちは結局それでは納得せず、天馬たちの処遇をどうするのか、ジャンヌにその裁定を求める。ジャンヌは天馬たちを放ってはおけないとして、ヴォークルールに連れて行くことを宣言する。



 一方、人が足を踏み入れぬような森の奥深くでは、新生・プロトコル・オメガ3.0の新たなリーダーとなったザナーク(CV:小西克幸)が部下たちの実力を測るデモンストレーションを行わせていた。シュートの一撃で大木をへし折ったガンマ(CV:泰勇気)の姿を満足げに見つめるザナーク。

 そしてほかの選手たちにも次々とボールを蹴らせ、ザナークが与えた新たな能力を確認する。彼らが蹴るボールは轟音(ごうおん)を上げて飛び交い、地面にソニックブームの溝を掘り、硬い岩をも打ち砕く。全員が恐るべき強さになっており、その能力はとても人間業(にんげんわざ)とは思えない。

 ひととおりその能力を堪能(たんのう)したザナークは満足げに笑い、その力を与えたのは自分であることを告げる。他者に能力を分け与えるという能力、これはかつてベータ(CV:伊瀬茉莉也)が見せた「ゴーストミキシマックス」の強化版の可能性がありそうだ。ザナークの発した緑の光線は洗脳効果もあるようなので、その効果はリーダーからすれば理想的な能力でもある(洗脳が解けない限り、裏切りや命令違反を心配しなくとも良いから)。



 ザナークのしもべとなり果てたプロトコル・オメガ3.0の選手たち。自我が強く、自信満々に任務に失敗した前任者のベータを蔑(さげす)んでいたガンマですらザナークに絶対服従状態で、その瞳は共通して赤く、そして髪の色は水色がかる。


 ザナークはその能力をもってして、雷門を打倒するよう命じる。エイナム(CV:野島裕史)が果たしていた腰ぎんちゃく的な役どころになった旧リーダー・ガンマがその言葉に素直に応じるのを見て、ザナークは再度満足そうな笑みを浮かべる。



 ヴォークルールの城塞(じょうさい)に到着したジャンヌは、神に祈りを捧げる。かたや連れてこられた天馬たちは中庭に軟禁状態だ。出口には武装した兵士が立ちはだかり勝手に外に出ることも叶わない。

 この戦争に戦力として駆り出されるのではないかと影山輝(CV:藤村歩)は不安になるが、彼よりももっとネガティブ思考の速水鶴正(CV:吉野裕行)はさらに悲観的だ。



 彼はスパイの嫌疑が晴れず、このまま処刑されてしまうのではないかと気が気ではない様子。普段から楽観的な浜野も、その言葉にはさすがに顔色をなくす。

 ジャンヌに会うという第一の目的こそ果たせたが、この状況では不安にならざるを得ない。フェイは一刻も早くミキシマックスするタイミングを見計らい、早々に脱出することを告げる。

 だが黄名子は懐疑的(かいぎてき)だった。あまりに普通の女の子だったジャンヌのオーラを受け継いでも、それでパワーアップ出来るとは思えなかったからだ。皆も同じ印象を受けていたようで、心配そうに顔を曇らせる。命懸けでここまで来ておいて、無駄足に終わることが懸念された。

 そんなみんなの不安を打ち消すかのように、天馬は荷物からサッカーボールを取り出し、練習しようと提案する。たしかに現状、天馬たちの生殺与奪(せいさつよだつ)はジャンヌやフランス兵に握られているも同然で、あれこれ悩んでもどうしようもない。何とかなるという天馬の意見はメンバーの気持ちをいい感じに弛緩(しかん)させる。



 そして最初に天馬の意見に同意したのは、やはり黄名子だった。このポーズも度々繰り返され、黄名子のキメポーズっぽい。


 ユニフォームに着替え、早速中庭で練習を開始する。シューズの紐を結ぶ剣城のもとに歩み寄り、挑発的な口調で勝負を挑む黄名子。自分の能力に絶対の自信を持つ剣城はもちろん二つ返事で受けて立つ。自分がいない間にストライカー対決で敗れたという黄名子から聞かされた話を、ここでひっくり返してやりたいという意識が働いたのかもしれない。

 そして剣城が攻撃側、黄名子が防御側を担当し、1対1で競う。剣城の鋭い切り返しに黄名子は確実に対応し、その自信が実力に裏打ちされたものであることを証明する。



 拮抗(きっこう)する両者のルーズボールが宙に浮く。剣城はここが決めどきとボールを追って空中でボレーしようとする。だが驚く程の身体能力をもってして剣城のあとにジャンプした黄名子がそのシュートを阻止する。



 この勝負、防御側の黄名子の勝ちだ。ストライカー対決で勝ったという彼女の言葉も、あながち嘘とは思えなくなってきた。黄名子のディフェンス能力に驚きつつも褒める剣城に対し、黄名子はこれまた驚くべき発言で返す。


 黄名子「ウチ、ポジションいろいろ出来るやんね!」


 黄名子はFWだけでなく、オールラウンドに活躍できる選手らしい。今回はカリスマDFの能力をジャンヌから受け継ぐための旅だが、どのポジションでもこなせる黄名子が、自分をジャンヌの能力を受ける立場だと思い込むのも無理はない。

 それを見ていた天馬も黄名子の器用さを褒めるが、「菜花さん」と他人行儀に呼ばれたことが黄名子にはくすぐったいらしい。タイムパラドックス特異点のせいなのだが、別次元では天馬は黄名子のことを呼び捨てで呼ぶぐらいには親しくなっていたんだろうなぁ。輝の時もそうだったけど、すぐに名前(しかも呼び捨て)で呼ぶことになると思うけどね。

 タイムパラドックスが原因であることは天馬もフェイも理解していた。ただこれは歓迎せざる事態であることはフェイの厳しい表情から窺(うかが)える。これ以上本来の歴史と違う状態が現れてしまえば、時間軸は崩壊を起こしかねない。


 さておき、黄名子のプレーに触発されたのだろうか、フェイが珍しく天馬に提案してくる。


 フェイ「僕たちの必殺技を考えてみない?」「前から天馬とやりたいと思ってたんだ(合体を)」


 フェイの提案に、天馬も乗り気になる。これは久々に2人合体技のフラグのようだ。早速その練習を開始する2人を、城塞の上にいたジャンヌが偶然見かける。彼女にとって初めて見るサッカーは、何とも不思議なものに見えた。

 ジャンヌは何をしているのかと思わず尋ねる。天馬は屈託(くったく)なく、これはサッカーというものであり、自分たちにとって一番大切なものなのだと説明する。そして神童がその後を受け、このサッカーを守るためにここにやって来たのだと続ける。

 ただ時空を越えたと言おうとした天馬の言葉は、神童が遮(さえぎ)る。この時代の人間に、タイムジャンプの概念が理解されるとは思えなかったからだ。ただサッカーを守るためにはジャンヌの力が必要であるということだけは正直に告げる。

 サッカーの素晴らしさがジャンヌにイマイチ伝わっていないと感じた天馬は、リフティングを始める。サッカーというものが分からなくとも、手以外の部分を使ってボールを器用に扱う姿は見る側に感銘を与える。これは信長の時代を訪れた時に経験済みだ。

 実際ジャンヌもリフティングを見た途端に思いっきり食いつき始める。



 天馬がリフティングする前のジャンヌ(イメージ)。



 天馬リフティング中のジャンヌ(イメージ)。


 そして天馬はジャンヌの関心を惹(ひ)いたまま、横にいたフェイにボールを預ける。意図を察したフェイもリフティングしたまま輝にパス。ボールを地面に落とさずに続けられる見事な球さばきに、ジャンヌは感嘆の声を上げる。



 ジャンヌ「サッカーって、面白そう!!」



 その後も雷門の熱のこもった練習は続けられた。だが直訴(じきそ)してまでこの世界に来たというのに、神童との差に悩み続ける蘭丸だけは心ここにあらずといった雰囲気で、神童から注意を受ける(オメーだよ、オメーが原因なんだよ)

 もうアクティブになった外人並みにすっかりサッカーに興味を持ったジャンヌは中庭のマネージャー席に腰掛けて、雷門の練習を見ていた。度の合わないメガネを動かしながら。


 練習が一段落したとき、ジャンヌは革袋いっぱいのキャンディを差し出す。疲れには甘いものが一番であることは古今東西を問わない。粋(いき)な計らいに、瀬戸水鳥(CV:美名)が馴れ馴れしく肩を叩いてジャンヌを褒める。



 後に「ラ・ピュセル(聖女)」と呼ばれるジャンヌに対してこの馴れ馴れしさ、さすがは恐れを知らないスケバン。


 ジャンヌの態度にすっかり心を許した葵は、良い友達になれそうだと笑顔で語りかける。その言葉にジャンヌも大喜びだ。だが過去の世界に培(つちか)った友情は、いつか必ず訪れる別れを辛く苦しいものにするのだが……。特にジャンヌの場合、まだこんなにうら若いというのに、わずか4年後に逃れられぬ死の運命が待っている……。


 仲間とジャンヌが仲良く語らうこの機会を、虎視眈々(こしたんたん)と狙っていたのは、ワンダバだ。彼はこれがミキシマックスするチャンスと判断し、ミキシマックスガンをジャンヌ、そして黄名子に向ける。

 だが的中と思われたその光線は、両者の直前でいずれも弾かれたように消え去り、ミキシマックスすることが出来ない。違和感に振り向いたジャンヌに、ガンを向けている姿を見られるわけにはいかない。あわてて天馬、そして3マネたちがワンダバを取り押さえる。



 天馬はともかく、3マネも素早いな。

 
 葵の服の中から出てきたクロノ・ストーン状態の円堂大介(CV:藤本譲)が、ジャンヌからオーラを奪取することが出来なかった理由を説明する。それによると、あのジャンヌは彼らの知る後世に残るジャンヌではないと言う。まだその力は秘められていて、目覚めてはいないらしい。

 信長の時の強大すぎるオーラが手に負えなかった時とちょうど逆の現象で、オーラがまだジャンヌの中に存在していないということらしい。無いものは取ることが出来ないのは当然だ。来る時代をもうちょっと後にしたら、能力に目覚めたジャンヌと出会うことも出来たんじゃ……? 物語が崩壊するツッコミは水鳥の鉄拳並みに禁止か?


 何の自覚もないままに、きょとんとするジャンヌの足元にボールが転がってくる。それは黄名子の仕業だった。サッカーを気に入ったのかを尋ねる黄名子に、ジャンヌは面白そうだけど、まだよく分からないと曖昧(あいまい)な笑顔で答える。

 分かりやすく説明するため、黄名子はサッカーを戦いに例える。ボールを奪われないように、もしくは奪うために、みんながひとつになって守ったり攻めたりする競技であることを説明する。その「みんながひとつに」なるという言葉に強く反応したジャンヌは、どうすればひとつになれるのかを問いかける。

 それにはまずはパスだと言う黄名子は、ジャンヌに実際にやってみるよう提言する。黄名子とジャンヌのボールの交換、パスが行われる。生まれて初めてボールを蹴るジャンヌはおっかなびっくりだが、パスを黄名子が上手に受けてくれたことに感激し、サッカーの面白さを実感する。


 そんな2人の様子を見ていた神童と蘭丸。神童は親友の蘭丸が一緒に行動しているということを心強く思っていた。だが悩む蘭丸は、その言葉ですらプレッシャーに感じられる。自分は神童に対して本当に頼りにされるほど、大きな存在なのだろうか、と。


 そこにボールが転がってくる。ジャンヌのトラップミスしたボールがここまで転がってきたらしい。ボールを手にした蘭丸は、サッカーが面白いかをジャンヌに尋ねる。ジャンヌはちょっと頬を赤らめ、楽しいと返答する。パスすることで相手の気持ちが伝わってくると言う。ボールで会話するというのは、まさにこんな感じなのだが、ジャンヌはそれを実地体験していると言えよう。

 ジャンヌが楽しんでいると聞き、蘭丸の顔にも笑顔が浮かぶ。想像だが、「サッカーが面白い?」と訪ねた蘭丸は無意識だったのだと思うが、その命題の解(かい)を蘭丸自身も模索(もさく)しているのではないだろうか? 悩みに沈む今の蘭丸は、どう見てもサッカーを楽しんでいるとは思えないからだ。



 ジャンヌは見張りの兵士たちに、天馬たちを自由の身にするよう告げる。天馬たちを敵のスパイではないと言い切るジャンヌに、兵士たちは納得しない。だがジャンヌは空に不思議な光を目撃し、その後に現れた天馬たちを神が遣わした救いの手ではないかと語る。神の声を聞いて軍に馳せ参じたジャンヌの言葉を覆(くつがえ)すことは、ジャンヌの言葉の向こうにいる神を信じているこの兵士たちには出来ない。説得は成(な)ったのだ。



 城外の森の木のたもとに咲く一輪の花を愛でるジャンヌのもとに、そのジャンヌの口添えで自由を回復した神童と蘭丸がやって来る。



 彼らはジャンヌに嘘をついたままでいることが我慢できなかったのだ。ジャンヌが神の遣いと勘違いした空の光はたしかに彼らが乗ってきたキャラバンのものだが、それは神の意思などではなく、あくまで彼ら自身の意思でやって来たのだと、神童は正直に告げる。

 そしてサッカーを守りたいということは本当で、それにはジャンヌの協力が必要なのだと強く語りかける。その力があると神童に告げられたジャンヌは、なぜか心細そうに肩を抱いて座り込んでしまう。

 ジャンヌは自分に大きな力があるとは思えなかったのだ。イングランド軍に国土を蹂躙(じゅうりん)され、戦争という暴力に怯(おび)えるただの15歳の少女の横顔を見せる。

 蘭丸はそのジャンヌに歩み寄り、怖いのになぜみんなを導いて戦いに挑むのかを問う。ジャンヌは当然のように「神の声を聞いたから」だと答える。神がジャンヌにオルレアンを救い、フランスを守るよう命じたと言う。

 この時代の信仰心を持ち合わせてはいない蘭丸はその言葉を信じられないといった感じで再度問うのだが、それはジャンヌにしてみれば、自分の信仰を疑う行為でしかない。珍しく怒りに声を荒げて本当だと抗弁(こうべん)するジャンヌ。

 神の意思を心から信じるジャンヌは、どんなに恐ろしくとも、告げられたその意思に従って戦うしかないのだった。苦しみながらも前に進もうとするジャンヌの姿を見て、蘭丸は何を思ったのだろうか?




 夕刻、天馬たちが宿泊施設としてあてがわれた中庭の家を、ジャンヌが訪れる。ジャンヌは明日、イングランド軍に包囲されたオルレアンを救うため、シャルル王子(王太子)に援軍を頼みに行くという。

 そして話しにくそうに、護衛として自分と一緒に来て欲しいと要請する。天馬たちの語っていたサッカーの戦術が、敵中を突破してシャルル王子の元に向かうのに有効らしい。

 敵中を横断するということを聞き、メンバー一同に緊張が走る。それは取りも直さず、この行軍が命懸けであるということを暗示しているからだ。ジャンヌが護衛を頼むにあたって言いにくそうにしていたのも、まさにそれが理由だろう。

 水鳥から危険だと非難の声が上がるが、ジャンヌは一歩も引かない。無事援軍を引き連れてオルレアンを解放することが出来れば、今度は天馬たちのために力を尽くすと約束する。これはあからさまな条件闘争だが、ジャンヌの力を借りたいのなら、ジャンヌに力を貸すことはむしろ当然と言える。またこの大役を成し遂げたとき、ジャンヌは人間的に成長し、時空最強イレブンに見合うだけのオーラを手にするかもしれないのだ。

 ジャンヌの提案に賛同し、決を出したのは以外にもここまで悩みに沈んでいた蘭丸であった。ジャンヌの力を必要とする自分たちは、自分たちの力を必要とするジャンヌを助けるべきだと強い口調で仲間に話す蘭丸に、みんなも異議はなかった。

 協力を引き受けてくれた雷門のみんなに感謝するジャンヌ。みんなで行くぜよと錦龍馬(CV:岩崎了)が言うが、ジャンヌによると、自分以外は6人しか馬車に乗れないという。ここでまたジャンヌと同行する者、この地に居残る者と二分されることとなる。

 ここでジャンヌに同行する6人という数。実はこれは6人の従者を従えてシャルルの居城、シノン城に向かったというジャンヌの史実にピタリと当てはまる。


 ジャンヌに付き従って同行するメンバーは、フェイ、信助、天馬、剣城、黄名子、そして蘭丸の6名と決まる。それ以外のメンバーはここに居残りだ。サイズの合わない鎧を着ようと悪戦苦闘する信助だが、そもそも信助に合うサイズの鎧なんかあるのか?



 重い鎧や剣に戸惑う同行メンバーだが、ジャンヌも剣を上手く扱えないと言う。彼女は神の啓示を受けてこの戦いに臨むまではただの農家の娘であり、剣など持った経験もない。だがそれでも、どんなに恐ろしくとも戦わなければならないと悲しい顔をしながらも、気丈に話す。

 その横顔を見つめる蘭丸。実はこのメンバー選定にあたって、蘭丸は神童に対して同行メンバーの方に回してもらえるよう、またも直訴していたのだ。



 蘭丸の真剣な表情を見た神童は、何も聞かずにその直訴を受け入れる。どうでもいいが、メンバー選定はキャプテンの天馬が決定するんじゃないのか? 


 危険な旅程(りょてい)だ。本来なら信長とミキシマックスして、現在最強の選手である神童が行くのが道理だろう。だが神童はその座を蘭丸に譲ったのだ。ここに来る前に狩屋マサキ(CV:泰勇気)にその座を譲ってもらい、今度は神童に……。そのことを思い出す蘭丸の横顔を、今度はジャンヌが見ていた。蘭丸の篭手(こて)を持ったまま話しかけようとして言葉を選ぶジャンヌに、蘭丸は自分の名を告げる。


 霧野蘭丸だ……」


 2人の絆が深く強まるような、暖かな会話だった。



 そして翌日早朝、同行メンバー中、唯一の上級生の蘭丸が暫定リーダーとして残りの5人に指示を出す(フェイの年齢が分からないんだけど、雰囲気的に天馬と同齢だよね?)。

 遅れてその場に現れたジャンヌ。鎧に身を包んだ天馬たちは敵中横断という危険な旅に出ることとなる。馬車に乗ったジャンヌの傍(かたわ)らには、この世界に来る時のアーティファクトであるあの「勇気の兜」が置かれていた。敬虔(けいけん)深いジャンヌは馬車の中にあっても神への祈りを欠かさない。



 落ち着かせるように、蘭丸が優しくジャンヌに話しかける。果たしてジャンヌたちは無事にシャルル王子の元にたどり着くことが出来るのだろうか? そしてシャルル王子はオルレアン解放のために援軍を出してくれるのだろうか? そして、ザナーク率いるプロトコル・オメガ3.0はいつ雷門の前に立ちはだかるのか?



 次回に続く



  エンディング




 今回なんと言ってもまず触れないといけないのは、オープニングとエンディングが新しいものになったということだろう。エンディングはこれまでと違い、葵、天馬、そしてなんと剣城の3人が歌うというマッチアップ。剣城が天馬たちと仲良く歌うなんて、イナGO開始時には想像もつかない超次元展開だよなぁ。

 あとエンディングでは狩屋がキーパーのユニフォームを来ていたのが気になる。ひょっとして最新の雷門は、キーパー3人体勢になるのかな? 化身アームドが使える信助を過去に向かうメンバーから外すというのは考え難いけど、今回のように二手に分かれた時にキーパーが出来るキャラがいないとダメだから。


 黄名子との出会い自体が特異点ということは、いつかはそれを解消するという展開になってしまうのだろうか? つまり、すべてが終わったとき、剣城の兄・優一(CV:前野智昭)の時のような悲しい別れがあったり……? イナクロの物語が終わる頃には、黄名子が消えてしまうということに対する涙の葛藤(かっとう)物語が繰り広げられたりして……。

 パラレルも長期間に及ぶとその流れが定着するという話を信じて、黄名子は歴史に残り続けるという展開が個人的には望ましいのだけど。お互いの存在を忘れた黄名子と天馬が雷門の校内ですれ違ったりするエンディングまで私の脳内には出来ていたりする。「時をかける少女」ぽくて印象深そうじゃない? 出来れば私の脳内だけの話にして欲しいけど。


 次回はシャルル王太子が登場する回になりそう。史上に名高い、ジャンヌの奇跡が行われるシーンだ。神の声を聞いたというジャンヌの噂を疑い、シャルルは家来の来ていた服と交換してジャンヌと会うことにした。王子の格好をしている男は実は家臣で、ジャンヌに神の加護があるなら見抜けるはずというシャルルの意地悪だった。

 だが初対面のはずなのにジャンヌは家来の格好をしているシャルルを見抜き、それを受けてシャルルもジャンヌが奇跡の少女であることを認めるという、ジャンヌの物語の中でも有名なシーン。私もこのエピソードは好きなので、楽しみ。シャルルは最終的にジャンヌを見捨てる人物なので、あまり良い人には描かれないと思われるけど。

 あと今回ジャンヌはたった一日でシャルルの元に向かっているけど、実際はヴォークルールの守衛官や民衆を説得してシャルルに会うまでに2年かかっている(シャルルと会えたのは1429年)。史実を出来るだけ取り入れ、それでいてストーリーに齟齬(そご)がないようにするのは難しいやんね〜(黄名子風)。


 次回タイトルが、火刑に処されたジャンヌの運命を暗示しているようで、ちょっと欝(うつ)。なんだかんだ言っても、ジャンヌ、可愛くて好きなキャラなので。



  次回「炎の中のサッカー!」に続く。



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