『ペルソナ4』第14話「A Stormy Summer Vacation 2/2(嵐の夏休み・その2)」の感想

 恒例のテレビアニメ『ペルソナ4』を観ての感想文、今回は第14話「A Stormy Summer Vacation 2/2(嵐の夏休み・その2)」の感想を書きたい。菜々子目線から観た前回の展開を、主人公の立場から描いて疑問点やその他隠された真相を明らかにする、いわば解決編。原作に無い展開が息つく暇なく展開し、原作厨にも目が離せない面白さを感じさせてくれた、素晴らしい回だった。



 今後のストーリーの根幹に関わる大きなネタバレは避けていますが、少しのネタバレも観たくない方は、閲覧にご注意下さい。


  • 前回の

『ペルソナ4』第13話「A Stormy Summer Vacation 1/2(嵐の夏休み・その1)」の感想
 はこちらから。今回の前に観る事を推奨します。


【原作ゲームを含む関連記事】

 主人公・鳴上悠(なるかみ ゆう CV:浪川大輔)が夢の中で訪れる意識下の空間、ベルベットルーム。またも主(あるじ)のイゴール(CV:田の中勇)は不在で、助手のマーガレット(CV:大原さやか)が悠を迎える。

 マーガレットは次に悠が絆を結ぶ可能性があるアルカナを提示する。驚くべきことに、それは一度期に5枚というこれまでに無く多数のカード枚数だった。



 左から「隠者(ハーミット)」「死神(ザ・デス)」「節制(テンパランス)」「悪魔(デビル)」の4枚。画面からはけてしまっているが、一番右の一枚が「塔(タワー)」。


 これほどまでに一気に絆を結ぶということは確かにすごいが、何故か我が事のように興奮するマーガレット。彼女はイゴールがいないとなぜか口調やしぐさが色っぽくなる。


 「やはりあなたは私が思っていた通りの人なのかもしれない❤」



  オープニング



 前回のラストシーンで夏休み中の謎の行動を、いとこの堂島菜々子(どうじま ななこ CV:神田朱未)から問われた悠の記憶は、夏休み始めの頃の8月6日(土)の雨の日に遡る。これからの回想シーンのナレーターは、何故か悠の親友、花村陽介(はなむら ようすけ CV:森久保祥太郎)が務める。


 雨の降りしきるその日。自室で「漢、それはエターナル」という漢気溢れる本を読んでいた悠。そこに菜々子が帰宅して来る。菜々子がくしゃみするのを聞き、慌てて出迎えに行くと、菜々子はびっしょりと濡れ鼠となっていた。



 菜々子のお気に入りの「魔女探偵ラブリーン」の傘をさして出かける様を見ていたのだろう、悠は傘をどうしたのか聞いてみた。悠にタオルで拭かれながら、菜々子はバツが悪そうに失くしてしまったことを告げる。この真相は前回語られたが、雨に濡れて哀れなキツネ(隠者コミュ)に傘を渡すという菜々子の優しい心づかいから生じたものだ。

 菜々子から貰った傘はキツネを雨から護っていたが、一陣の風が吹き、飛ばされてしまう。落ちたところは運悪く車道で、車に踏みつぶされて無残に骨を晒す菜々子の傘。菜々子の名前が書かれた可愛い名札が、痛々しく雨ざらしになっていた。無表情にその成り行きを見つめるキツネだったが、彼(?)はこの恩を忘れた訳では無かった。


 翌、8月7日(日)。ラブリーンの傘を失くした可愛い妹のために、傘を買いに商店街の雑貨屋さんを訪れる悠だったが、8000円という、高校生の彼にとっては意外な高値に戦慄する。財布と相談するがそこには野口英世がたった1人……。悠は高校生が収入を得るまっとうな道、バイトを決意する。

 やや失意の状態のまま神社前にさしかかる悠の前に、神社の主となった件のキツネが現れる。よく見ると何やら絵馬を口にくわえている。

 絵馬には、「僕を見て」という意味深な言葉と「中島秀」という名前が書かれていた。キツネの意図は、その絵馬に書かれた願いを悠に叶えて欲しいというものだった。どこの誰だか分からない人物相手に当惑する悠だったが、キツネはすぐ横に設置された掲示板を指し示す。そこには家庭教師募集の張り紙があり、その名前は「中島」。書かれた連絡先に電話する悠。あっさりと家庭教師を引き受けることとなった。

 キツネのここまでの一連の動作が、まるで人間の言葉(絵馬や張り紙の文字まで)を全て理解しているとしか思えないものだったことに、いまさらながら驚き感心する悠。その言葉にも、満足そうに一声吼えるキツネ。やはり人語を解するとしか思えない。とにかく悠は、幸先よくアルバイトの口を確保した。


 家庭教師先の少年は問題児だった。メガネを掛けて利発でおとなしそうな少年だったが、問題はそういった部分ではなく、彼が悠のことを教師として認めていないということだった。悠の採用理由を「すぐに来れる人員が悠だけだった」と偉そうに能書きを垂れる少年、秀(CV:市来光弘・塔コミュ)。

 バイト開始のせいで帰宅が遅くなった悠。すでに堂島家では夕食の時間だった。叔父の遼太郎(りょうたろう CV:石塚運昇)から声を掛けられても、詳しい説明なしで自室に戻る悠。おそらくバイトのことを菜々子に悟られないようにという配慮だろう。傘をプレゼントする時は、サプライズにしたいという悠の考えあっての態度だと思う。だけど皮肉なことに、この行為が菜々子を逆に不安にさせることとなる(前回参照)。


 8月10日(水)。悠はバイトを増やすことにした。学童保育のアルバイトだ。



 意外にハマっている悠の保父さん。エプロン姿が似合ってるのだ。


 だがこのバイト掛け持ちが悠に災難をもたらす。少年2人が喧嘩を始める。仲裁に乗り出す先生役の悠。喧嘩の原因は金持ちそうな少年の持ち物のおもちゃ「ネオフェザーマンロボ」を、もう一方の少年・南勇太(CV:安西英美)が壊した、壊さないの口論だった。

 激しく「ネオフェザーマンロボ」を奪い合う両者、暴力に発展することを恐れた悠が引き離そうとするが、その加勢した力のせいで(?)、「ネオフェザーマンロボ」は完全に壊れてしまう。

 壊したと非難された勇太の母・南絵里(CV:伊藤美紀・節制コミュ)が頭を下げて金持ち少年の母親に謝る。被害者ぶって勝ち誇ったような金持ち親子は、おもちゃの弁償を求める。責められる母子が哀れに思ったのか、それともやはり責任を感じていたのか、悠が代わって弁済に応じる事を申し出る。

 最近読んでいた書、「漢、それはエターナル」の影響だろうか。実に男らしくカッコ良い態度だったが、電卓ではじき出された6万8千円という目の玉の飛び出る高額な費用を見せられ、悠は冷静な表情のまま一瞬意識を失う。


 帰宅する悠を、元気に迎える菜々子。バイトの疲れと、おカネを貯めるためのバイト掛け持ちが却って借金になってしまった落胆からか、元気なく自室に引き揚げる悠に、事情を知らない菜々子も残念そう。

 階段の途上で悠は菜々子に質問する。


 悠「菜々子、ネオフェザーマンって知ってる?」


 学童保育の子供たちと年齢が近い菜々子なら、ネオフェザーマンのことも詳しいと思っての質問だった。みんな大好きという菜々子の返答を聞き、是が非でも弁償しないと済まなくなったと気が重くなる悠。ネオフェザーマン、侮れない。


 ラブリーンとネオフェザーマンという2つの子供のヒーロー・ヒロインのためにアルバイトに精進する悠。だが働けど働けど、生活は楽にならざりけり。暗い自室で給料袋を覗き込みつつ、その全てを奪ってしまう高額なネオフェザーマンに対し、呪いの言葉を吐く悠。



 「おのれ、ネオフェザーマン!!」


 8月13日(土)、堂島の部下の足立透(あだち とおる CV:真殿光昭)と共に寿司で夕食を取る悠。酒の酔いが回った叔父から最近の帰宅が遅い理由を問われた悠は、正直にキツネの頼みを受けてバイトを始めたことを明かす。おカネの使い道を話す訳ではないし、その瞬間、菜々子が席を外していたから発言したのだろう。

 だが叔父と足立の返答は、悠に対する嘲り混じりの爆笑だった。まぁキツネに頼まれたと聞けば、ジョークだと思うのも無理は無い。本当なんだけどね。

 その後自室で読書する悠。「弱虫先生」に書かれた「そんなことを言ったってどうせ笑われるだけだよ」という一文に、さっきの経験則から妙に納得する悠。悠の知識が上がった。


 8月16日(火)。学童保育のバイト中、竹トンボを使って子供たちと遊ぶ悠。そこでネオフェザーマンロボで喧嘩した2人の少年が、またも争っていた。原因を聞くと、勇太が街中でラブリーンを見たという発言を巡ってのことらしい。

 実は前日に勇太が目撃したのは、ラブリーンのコスプレ姿で悠を尾行する菜々子の姿だった(前回参照)。菜々子のコスプレが決まり過ぎていたことと、ラブリーンに尾行される様な挙動不審行為を繰り返していた悠自身に原因があるということは、もちろん悠には知りようはずもない。

 周囲の女の子にまでラブリーンの存在を否定された勇太は怒って手にしていた竹トンボを投げつける。頭にぶつけられた女の子も竹トンボを投げ返すが、それは勇太と言い争っていた金持ちボンボンに誤爆する。おそらく誤爆誤爆を呼んだのだろう、そこからは子供たちが竹トンボを投げつけ合って争う修羅場が訪れる。

 引率の女性の先生たちがオロオロする中、悠は子供たちの暴走を収める名案を思い付く。それは子供の興味を別の、例えば可愛いものに惹きつけるというやり方だった。




 クマ(CV:山口勝平)の着ぐるみを一瞬にして調達した悠は、その中に入って子供たちを惹きつける。作戦は大成功。争いは収まったが、その暴力の矛先は当然の如くクマ(悠)に向かう。乱暴狼藉を身体を張って引き受ける悠の涙ぐましい努力。

 子供たちの夢を壊しちゃいけないと、別れ際にもその着ぐるみを脱がずにお別れする。ふらつきながらバスにもその姿のまま。他の乗客の注目の的だ。



 くたびれた姿で横たわるように座るクマ(悠)。表情とのギャップが笑える。


 そして目的地の稲葉商店街前に到着し、バスを降りるクマ(悠)だったが、そこでまたも彼を待ち受けるハプニングが。ラブリーンの格好をした菜々子を始め、学友にしてペルソナ仲間の一行がそこで待ち受けていたのだ(待っていたように見えたのは結果論だが)。

 陽介に声を掛けられ、そのことに気付くクマ(悠)。中の人物が自分だと気取られてはならじと、怪しまれつつも何とかその場はごまかして逃げることに成功する悠だった。クマの着ぐるみが及ぼす子供の暴力性と、着ぐるみを着たままのダッシュがどれだけ大変なことなのかを実感した悠は、しみじみとつぶやく。


 悠「クマも大変だクマ……」


 翌8月17日(水)。神社でキツネを横に黄昏(たそがれ)る悠。日ごろの激務に、テレビの中に入り浸っても元気だったタフな彼にも疲れが出ていた。そこに悲鳴と共に、助けを求める声が響く。

 神社前に駆けつける悠。そこには黒の喪服に身を包んだ老婆が倒れていた。ひったくりに遭い、地面に頭を打ち付けたらしい。悠の手配で病院に運ばれる老婆。幸いなことに、大事には至らなかったらしい。

 老婆を担当した看護師は、口もとのホクロが色っぽいナースさんだった。職務もそこそこに悠に興味を抱き、モーションを掛けて来る看護師・上原小夜子(CV:桑谷夏子・悪魔コミュ)。



 だが次のバイト(家庭教師)のために小夜子の誘いをものすごく淡白に断る悠。年上には興味がないのかもしれない。

 病院を辞して自宅に連絡する悠。帰宅が遅れる事を菜々子に告げる。バイトのためにと言わないのは、やはり菜々子に配慮しているのだろう。

 そして秀の家庭教師の時間。勉強の合間に秀は悩みを打ち明ける。学校が楽しくないと言う彼。勉強が出来る彼は周囲を見下し、尊大な態度を取るので誰も寄りつかないのだ。秀の悩みの原因が、友人が出来ないというところにあるのは明白だ。悠は机に貼られた秀の誕生日祝いの写真を見やる。3年前のその写真、日付は8月20日となっていた。もうほんの数日後だ。


 翌、8月18日(木)。悠は花束を持ってバス停の前でバスを待っていた。入院した老婆を見舞いに行くつもりだったのだ。そこにバスから降りて来る、仕事帰りの看護師の小夜子。自らの美貌に自信過剰な彼女は、悠が自分に会いに来たと判断する。老婆の見舞いだという悠の説明を聞きもせず、花束も自分宛てだと解釈して喜ぶ小夜子。悠の腕を取り、どこかに引っ張って行こうとする。前回菜々子が目撃して失望したシーンは、こんな真相が隠されていたのだった。

 悠が連れて行かれた先は、ムードもへったくれも無い中華料理店、シリーズおなじみの愛家だった。3杯目のジョッキビールを飲み干しつつ悠に対してクダを巻く小夜子。職場の不満を聞いてくれる可愛い男性に飢えていたのだろう。

 不満を収めようと努める優しい悠に、次の夏祭りに相伴しようと誘いかける小夜子。なし崩し的に携帯の番号を押し付けられてしまう。



 他のメンバーの中でも光るのが「エビ」と書かれた海老原あい(えびはら あい CV:伊藤かな恵)だろう。第5話での腐れ縁設定が引き継がれている。着信音はまだツィゴイネルワイゼンなのだろうか?


 小夜子から解放され、改めて老婆の見舞いにのためにバス停でバスを待つ悠。ちなみにここで待ち合わせるバスの横に表示されている広告部分、先ほどはラブリーン、今回はネオフェザーマンと、芸が細かい。今度バスから降りて来たのは、学童保育で知り合った絵里だった。絵里から話しかけられ、またも見舞いに行くタイミングを逸する悠。

 公園で今度は絵里の悩みを聞かされる。彼女の息子と思っていた勇太は、実は彼女の実の息子では無かった。再婚した勇太の父親の連れ子だったのだ。継子である勇太との付き合い方、距離感に悩む絵里。勇太を疎ましく思うような言葉を口にする絵里の悩みは深そうだ。一介の高校生である悠には荷が重いかもしれない。


 日も暮れかけた頃、再々度、バスを待つ悠。今度のバス広告は「ざんねんにんじゃ じっけんくん」。そしてバスからは、見舞いに行こうと思っていた当の相手、老婆が降りて来た。悠の見立てよりも傷は軽かったらしく、もう退院して来たのだ。小夜子ももしかしたら知っていたかもしれない話なので、教えてくれても良かったのにねぇ。まぁ彼女は悠が自分に会いに来たと思い込んでいたみたいだから仕方ないかもしれないけど。

 川沿いの公園に向かう悠と老婆・黒田ひさ乃(CV:谷育子・死神コミュ)。川を見つめながら、彼女はもうすぐこの地を去ると告げる。この地は死んだつれあいとの思い出が多すぎて、堪えられないという。彼女の喪服姿には、そういった理由があったらしい。美しい日本櫛を悠に示し、亡き夫との思い出を語るひさ乃。



 大事なはずのその形見を、躊躇いなく川の流れに投げ捨てるひさ乃。驚く悠だったが、長く続いた彼女の夫婦生活の最期、彼女の夫への愛情は冷めきっていたと語る。その最期を思うと、形見など偽りの存在でしか無いと彼女には思えるのだろう。だがその姿の裏に秘められた寂しげな思いに、悠は気付かずにはいられなかった。若き日の、彼女の好きだった頃の夫に似ていると言われた悠は、櫛が投げ捨てられた川を見つめる。

 その瞬間、川からものすごく大きな魚が飛び跳ねる。巷で有名な、この鮫川の主と言われる魚に間違いなかった。主の胸びれに引っかかった櫛を見た悠は、一つの決意を期する。

 その夜のテレビ、通販で知られる「時価ネットたなか」にて、伝説の釣り竿、爆釣セットが販売されているのを観た悠は、これだ! とばかりに叫ぶ。


 翌8月19日(金)。早くも届いた通販品。自信なさそうな声の運送会社の人から受け取った爆釣セットに身を包み、勇躍主に挑みに向かう悠。その気合いは、菜々子が声を掛けるのも憚られるほどに迫力あるものであった。その動機を思えば、無理からぬものがあったと今なら分かる。



 −−−CMアイキャッチは前回と同じなので略−−−



 そして8月20日(土)。夏祭りに友人一行と訪れた悠。日頃の激務が祟ったのか、彼の眼の下の隈(くま)は凄まじいものになっていた。後ろではクマが屋台のかき氷を物色しているシーンがあったので、前回のかき氷売り切れ事件は、やはりクマが犯人らしい。

 陽介と巽完二(たつみ かんじ CV:関智一)と話している最中、境内に繋がる路上脇のベンチに腰掛けるひさ乃を見かけた悠。寂しげな彼女に大事な用がある悠は、中座してそちらに向かう。

 そして彼女に、彼女が一旦決別したはずの想い出、櫛を手渡す。鮫川の主に付着していたこの櫛を取り戻すため、悠は徹夜で釣りに打ち込んでいたのだ。眼の下の隈の真相はこれが原因だった。掛けんでもいいメガネを掛け、ペルソナを発動させるという反則行為を犯してではあったが、見事に主を釣りあげ、櫛を奪還したのだった。

 櫛を投げた後のひさ乃の寂しい心情をやはり悠は感じ取っていたのだ。彼女の大事な想い出を、若き日の夫に似た笑顔で手渡して来る悠。その優しさに、逡巡しながらも手を差し延ばすひさ乃。若き日の、この同じ神社で行われた祭りのシーンの想い出が蘇る。愛する人から櫛を受け取ったのも、この祭りの時だったのだ。原作に無いこの演出には正直感動した。観ていて涙があふれた。



 50〜60年ほど前のひさ乃。屋台の売り物にも、時代が反映していて設定が細かい。


 長き時を経て、櫛を受け取った時の喜びの涙が、今再び櫛の上で弾けた。櫛を抱きしめ涙を流すひさ乃。櫛という形の彼女の想い出、生き様を抱(いだ)いているのだ。涙を流すのも当然だと思う。彼女の想いの一端に触れ、淡い感慨に包まれる悠。

 その目の端に、何かを持って思いつめたような表情で走る秀の姿が映る。ただならぬ雰囲気に、後を追う悠。秀を呼び止めて持っているものを確認するが、それはこの祭りのクライマックスで打ち上げる予定の打ち上げ花火の玉だった。

 秀は思い詰めていた。花火を一緒に見るとクラスメイト間で交わされていた話が、彼にだけは誰からも回って来ず惨めな気分に陥り、花火そのものを無くしてしまおうと短絡的に考えたのだ。泣きながら自分を理解してくれない周囲を呪う秀。

 彼にとって今日が誕生日、それなのにこの不遇を呪う気持ちは分からないでもない。悠は粋な配慮で秀のその態度を諌める。

 家族間以外では唯一、秀の誕生日を知っているであろう悠は、誕生日プレゼントにリバーシ(オセロゲーム)を手渡す。なぜ悠が自分の誕生日を知っていたのかと驚く秀。悠は写真を見て気付いたことを告げ、さらにそのプレゼントの意味を明かす。対人ゲームであるリバーシは、一人では遊べないものだ。これをしようと話しかけるきっかけを作り、秀に友人を作らせようという配慮だった。秀が持っている危険な花火玉と交換にするようにプレゼントを手渡す。

 まだ周囲をバカにして見下す態度が残る秀だったが、みんなでバカなことをするのも楽しいものだと諭す悠。秀が本心は友達が欲しいというのに仲間に溶け込めず、その寂しい心の裏返しで周囲をバカにしているということも、おそらく悠はお見通しなのだろう。そして罪悪感を取り戻した秀に、花火を返しに行こうと告げる。


 その頃夜店方面では、勇太と金持ちボンボンがまたも喧嘩していた。勇太を止めようとする絵里だったが、継母という絵里の素情を知ってか知らずか、これみよがしに非難する金持ち母。絵里は図星を突かれたという思いでいたたまれなくなってしまう。

 だがそこで思わぬ事態が起こる。自分を嫌っていると思っていた勇太が、その言葉に激昂したのだ。あたかも実の母をバカにされたように怒る勇太は、金持ち母に体当たりする。怒った金持ち母がハンドバッグで一撃を加えようとするが、今度は絵里が勇太の思いに応える番だった。

 勇太を庇い、身代わりに頭を殴られた絵里は悲鳴を上げて倒れる。打ちあげ時間に間に合うように花火玉を返還しようと駆けていた悠は、慌ててそちらを見やる。屋台前で頭から血を流して倒れる絵里を見て、そちらに駆け寄る。途中で邪魔になりそうな花火玉を、りんご飴屋に置きながら。

 金持ち母子が逃げ去る中、勇太の泣き顔を見て何とかしようと思う悠。本当の母に対する思いと寸分の差も無い勇太の思いは悠を動かし、こういう場合の専門家に連絡する。以前タイミング良く電話番号を押しつけて来ていた、小夜子だ。

 デートの誘いと思って電話に出た小夜子に、力を貸して欲しいと告げる悠。電話口の向こうの悠の真剣な言葉に看護師の職責を思い出した小夜子は、応急手当の方法を伝える。

 長い布で傷口を縛れという方法を聞き、周囲を見渡す悠。ちょうどそこにご都合主義的に、サマーマフラーを巻いたエビちゃんこと、あいが姿を見せる。



 悠 「エビ! これ、貸してくれ!!」

 エビ「ハアッ!!?」


 半ば強引にマフラーを奪い取り、傷口を縛る悠。次は傷口を冷やすことだが、氷はクマのせいで売り切れだった。だがそこにタイミング良く、長瀬大輔(ながせ だいすけ CV:杉田智和)と一条康(いちじょう こう CV:小野大輔)が出前を頼んでいた氷が届く(前回参照)。



 どこでも何でもお届けするのがモットーの愛家の岡持ちガール・中村あいか(CV:悠木碧)。今回はTPOをわきまえたのか、それとも本人も祭りを楽しんでいる最中だったのか、浴衣姿で配達にやって来る。


 ご都合主義的に揃った応急処置の物品のおかげで、絵里は意識を取り戻す。心配顔で見つめていた勇太は、意識を取り戻した絵里をお母さんと呼び、抱きついて喜びの涙を流す。自分を心配してくれた勇太を愛おしく思った絵里は、その肩を抱き寄せる。この2人はハプニングを経て、本当の母子になれたのかもしれない。抱き合う母子を暖かく見つめる悠たち。



 禍(わざわい)転じて福。母と子の情を得た2人。どうでもいいが、長瀬はやっぱりジャージ。


 さて、悠の仕事はまだ終わらない。りんご飴屋に置いていた花火玉を回収し、打ち上げ場に走る悠。その甲斐あったらしく、悠は境内前で再会した菜々子と手をつないで花火を見物することが出来た(前回参照)。

 そこに「先生」と声を掛けて来る人物。前回も言ったがクマではない。家庭教師の教え子、秀だ。花火を無事に返した悠に感謝して、泣きだしてしまう秀。自分のために一所懸命になってくれた人は、悠が初めてだったのだ。自分を見ていてくれる人がいた。それが嬉しかったのだ。絵馬に書かれた「僕を見て」というのは、家庭教師として勉強を見て欲しいというのではなく、生身の自分自身を見て欲しいという秀の心の叫びだったのだろう。


 事態は全てが良い方向に収れんしていく。ラブリーンの格好をした菜々子を紹介され、ラブリーンが本当にいたことを目を丸くして認める金持ちボンボンと、得意げな勇太。この2人も勇太が嘘を吐いていなかったということをきっかけに、きっと仲が良くなることだろう。悠を触媒に親子の絆を得た絵里は、心からの感謝を悠に伝える。

 仲良く家路に着く母子を見送る悠に、今度は小夜子が声を掛ける。絵里を手当てして大事に至らせなかった悠と、そしてその悠に指示を与えた自らの行動を省み、看護師という職業の崇高さを思い返した彼女は、辞めようと思っていた過去の自分を反省する。悠のおかげでその単純にして大事な気持ちを思い出した小夜子は、悠に感謝する。

 そして神社の鳥居前で、同じく悠に感謝の言葉を告げるひさ乃。悠に取り戻して貰った想い出を、今度こそ手放さずに大事にすると笑う。


 全ての人たちを見送った悠の元に、天城雪子(あまぎ ゆきこ CV:小清水亜美)から連絡が入る。菜々子に何か告げることがあるらしい。雪子のその連絡に菜々子の笑顔がはじける。



 浴衣姿に着替えた菜々子(中央)。おそらく雪子の着付けで、おさがりの浴衣を借りた(貰った?)のではないかと思われる。堂島が買ったものだと、カモノハシとかの柄になりそうだし。


 境内前で待っていた男性陣と合流する女子陣+悠。そこに部下の足立に仕事を押し付けて駆けつける堂島。もともと遅れた理由も足立なのでこれは正当な行為だろう。堂島は菜々子を見て貰っていたことをみんなに感謝する。

 父の登場は、やはり菜々子には嬉しいものだったのだろう。一緒に射的をしようと言われ、満面の笑みで賛同する。



 堂島親子が夜店の喧騒に消え、残された男女7人。クマは男女カップルで行動するべきと提案し、悠狙いの久慈川りせ(くじかわ りせ CV:釘宮理恵)が真っ先に賛成する。ただ男4人女3人なので、この案通りだと男1人はあぶれちゃうんだけどね。

 クマは勝手にカップルを発表してしまう。里中千枝(さとなか ちえ CV:堀江由衣)、雪子、りせ全部クマのモノという強引ハーレム展開に怒る完二と陽介。

 だが何故か反発も無くこの案が通ったらしく(当惑はしていたが)、美女3人を連れて去って行くクマ。



 キレイどころを余さず連れ去られてしまった、残された男3匹。何やら敗北感が漂う。


 陽介「負けじゃネ? 俺ら、負けじゃネ!?」



 これが悠の夏休みの全思い出の、最後の記憶であった。



  エンディング



 エンディングでは今回悠と絆を築いたキャラたちのその後の姿が描かれていた。秀は友人とリバーシで遊ぶ姿が、絵里と勇太は金持ち母子と仲直りの握手をするシーンが、小夜子は患者の命を救うべく、懸命に職務に励む様子が、ひさ乃はあの想い出の櫛を髪に飾り、縁側で寛ぐという形で。

 ネオフェザーマンロボをようやく購入した悠を労うように膝を撫でるキツネ。賽銭箱の下から小銭を取り出す。それを足してなのかな? ラブリーンの傘を買いに向かう悠。


 8月25日(木)。雨の日。傘が無いので雨宿りする菜々子。そこにキツネがやって来る。その口には、あのピンク色のラブリーンの傘がくわえられていた。傘を菜々子の前に置いて駆け去るキツネ。その傘には、菜々子の名札が付けられていた。



 キツネに感謝の言葉を送り、雨なのにウキウキした足取りで去って行く菜々子を陰から見送る悠とキツネ。悠もキツネに感謝の意を込めて、頭を撫でてあげた。そのキツネがくわえている、傘のオマケに付いていたステッキ型虫眼鏡がきらりと光る。


 虫眼鏡(CV:茶風林)「キラッと解決!!」



 以下、次回!



 今回は上記したけど、本当にストーリーが良い回だった。前回と同じ日常を描いたものなのだが、視点を替えるだけでこんなに話に幅が出来るものなのだと改めて感心させられる。前回の伏線も全部納得のいく形で語られていたし、最初からこういう形式で夏休みを描こうという考えで企画、製作されたのだろう。

 しかもバイトを中心としたコミュ5つを一気に解消するという力技。これだけでも大変な作業になるだろうと予想していたのに、2話形式でこれほどまでに鮮やかにやられてしまうとは……。原作に無い話の作りで、これほどまでに感動させられるとは思わなかった。中でもひさ乃の話は良かった。彼女が若い頃からこの祭りがあったという描写で歴史を感じさせ、さらに現代も変わらぬものがあると思わせる演出は、そこいらのちょっとした感動モノアニメに負けないものがあった。

 ペルソナスタッフはかねてより優秀だと思っていたけど、今回を観てさらにその意を強くさせられてしまう。今後も素晴らしいストーリー展開になると思われる。楽しみでならない。


 さて次回は林間学校に続く学生の一大イベント、修学旅行の回。原作ゲームでも面白かった部分だが、どう描かれるのか。事件は解決したという体なので日常イベントが続き、ペルソナという悪魔召喚戦闘アニメという本作の基本設定を知らない視聴者もいるかもしれない。まぁ面白いからいいか。ちびっこ……もとい少年探偵も再登場するよ。



 次回「The Long-Awaited School Trip(待ちに待った修学旅行)」に続く。



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