『ペルソナ4』第4話「Somewhere not here(ここではない、どこか)」の感想
そろそろ恒例になりつつあるテレビアニメ『ペルソナ4』を観ての感想を書く。今回は第4話「Somewhere not here(ここではない、どこか)」。『ペルソナ4』は2クール予定のアニメで、おそらく最後まで感想を書き続けると思うので、今回から新たに『ペルソナ4』というカテゴリーを設けようと思う。
はてなダイアリーは相変わらずカテゴリーから一覧に行けないので、一覧に繋がるリンクも設けます。
今後のストーリーの根幹に関わる大きなネタバレは避けていますが、少しのネタバレも観たくない方は、閲覧にご注意下さい。
はこちらから。
- それ以外の感想文はこちらで一覧表示されます。
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物語はベルベットルームより。前回クラスメイトの里中千枝(さとなか ちえ CV:堀江由衣)を助け、その心の闇と向き合う勇気を与えた主人公・鳴上悠(なるかみ ゆう CV:浪川大輔)。千枝との絆を構築したことにより、千枝のペルソナと同じ、戦車のアルカナを入手したことをマーガレット(CV:大原さやか)から告げられる。
その前の花村陽介(はなむら ようすけ CV:森久保祥太郎)の時と同様、新たな力を得た悠。マーガレットは悠がどのような運命を紡いでいくのかを見守ると言い残し、主・イゴール(CV:田の中勇)と共に悠の意識下より去っていく。
オープニング
テレビの中の世界に消えた天城雪子(あまぎ ゆきこ CV:小清水亜美)を救うため、戦う悠たち3人。特に千枝は親友の命を救うため、前回手に入れた自らの力、ペルソナを駆使してシャドウが跋扈する怪しげな城内を急ぐ。
次の雨の日が雪子救出のタイムリミットであることを知り、逸(はや)る千枝。だが体調も万全では無く、さらに戦闘に慣れていない彼女を気づかう悠と陽介。千枝の力強い戦闘(そして容赦ない殲滅っぷり)を観る限り、その心配は杞憂なのかもしれないが。
先行する千枝を追う男性2人。階段のある広い空間に辿りつく。周囲の明かりが消え、一変する雰囲気に慌てるナビゲーターのクマ(CV:山口勝平)。スポットライトに照らされて現れたのは、救出する対象の雪子。いや、姿こそ本人そのままだが、その実態は本物の雪子が心に押し込めて来た影・シャドウ雪子であった。
前回自らのシャドウと向き合った経験を持つ千枝。眼前の雪子が本物では無いことを見破り、強い口調で雪子の所在を問うが、シャドウ・雪子は意に介さず、さらに奥に進んで行ってしまう。後を追おうとする3人だったが、大量に湧き出したシャドウがその行く手を阻む。
舌を出した丸い方は毎回ヤラレ役としておなじみとなった「失言のアブルリー」。カンテラを持った鳥の様なシャドウの名前は「ブラックレイヴン」。
シャドウ雪子を追う悠たち。マヨナカテレビに映った雪子の様子がおかしかったことに思いを致す陽介。その時に口走った「逆ナン」という言葉に妙に興味を抱くクマ。この当たりの陽介とクマのやり取りは、原作ゲームそのまんまで面白い。この「逆ナン」という言葉は後々まで雪子に付き纏うので、覚えておくと楽しいよ。
その頃本物の雪子は、城内最奥部で夢を見ていた。男子生徒に付き合いを強要されそうになっている自分を助けてくれた千枝の記憶。困っているところを助けられ、感謝する雪子。困っているお姫様の私をいつも助けてくれた千枝は、素敵な王子様。
自分を助けてくれるほど優しく、自分に出来ないことまでも出来る千枝のその性格が羨ましかった自分……。
目覚めた雪子の前に、その心の闇を象徴する鳥かごが落ちて来る。
その鳥かごは、自らが拾って育てた小鳥の住んでいた鳥かご。そしてそれはそのまま自らの境遇を暗示するモノでもあった。旅館の跡取り娘として、生まれながらにして未来が決定づけられ、それでいてその決定事項に逆らえない雪子は、その意識下で自らをかごの中の鳥と同じ存在と見立てていたのだ。
旅館の若女将として家業を一所懸命に手伝う雪子。友人の千枝の遊びの誘いも断り、他の生徒たちが満喫しているクラブやバイトなども諦め、それでいて学業では素晴らしい成績を修める雪子。自分のやりたいこと、やりたかったことを全て犠牲にして生きる彼女のその疲れを一瞬でも忘れさせてくれるペットとして、小鳥は存在していた。
だが、生まれたばかりの頃から愛情を込めて可愛がっていたというのに、かごの鍵を閉め忘れたある日、小鳥は逃げ出す。衣食住に何不自由することのない安住の地である鳥かごから逃げ出した小鳥は、自分が望みながら到達することの出来ない世界に行ってしまった。自己を投影していた小鳥に逃げられたことで、しがらみに囚われ、すべてを犠牲にして自由から目を背け続けていた自分に思いが至る。それは彼女が信じていた観念に裏切られた一度目の瞬間だった。
そしてその直後、いつものように遊びの誘いを断った千枝から聞かされた「雪子は旅館の跡取りで、しょうがないこと」という言葉に強い衝撃を受ける。それは、自分をかごから救い出してくれると思っていた、「何でも出来る千枝」から下された終身刑宣告に等しかった。それは引き続き二度目の、彼女が信じていた観念に裏切られた瞬間であった。千枝の発言に悪気があった訳ではなく、誰も責められるものでは無い。だがそれだけに、雪子の絶望感は強く強く、彼女を絶望の淵へと追いやったのだ。
そんな雪子の心の襞を、容赦なく指摘する声が響いて来る。声の主を探す雪子は、そこに自分と同じ顔をした人物、シャドウ雪子を見出す。
ここで恒例のCMアイキャッチ。勇気の上がり方が早い。これは勇気が無いとコミュを開始できないムーンコミュのフラグなのかも知れない。これ以上の詳細は秘すけど。あと気になるのは、伝達力なさ過ぎ。今のままでは叔父さんや菜々子といった家族間のコミュに支障を来たしそう。
シャドウは本人が抑圧して来た意識の一部。他人を意識する人間社会では誰もが本当の気持ちを押し隠して仮面(ペルソナ)を付けている。テレビの中の世界では、その抑圧された影の部分がシャドウとなって人を襲うのだ。
つまり逆ナンや自分をどこかに連れ出してくれる王子様といったフレーズも、抑圧された雪子の感情の内なる意識の一部なのだ。
シャドウと雪子のいる最奥部に駆けつける3人。王子様が3人現れたというシャドウ雪子の言葉を聞き、3人目は千枝なのかクマのことなのかでひと悶着。雪子のこれまでの感情から、3人目は千枝だろう。クマの目は無いと一蹴する陽介。
シャドウ雪子は自分を裏切った千枝を制裁しようと、頭上にあったシャンデリアを千枝に落とす。それを救ったのは、悠だった。千枝と築いた絆により発動可能となった戦車のペルソナ「アラミタマ」を召喚し、シャンデリアの落下を阻止する。
アラミタマさん。メガテンシリーズでの御霊(みたま)系は他の悪魔のステータスアップアイテム的存在で、なかなか使用される機会が無い(本作ではその扱いでは無いが)。まさかアニメで出てくるとは思わなかった。初期戦車ペルソナでは「ナタタイシ」辺りを期待していたんだけど。
身体を張って千枝を救ったものの、ペルソナの受けたダメージは本体にも通るという効果(別名「JOJOのスタンド」効果)のせいで、痛みに堪えかねて膝をつく悠。
なおもシャドウ雪子の攻撃は続く。シャンデリアの直撃を受け、陽介のペルソナ「ジライヤ」が壁に挟まれて動けなくなってしまう。ペルソナ解除を指示する悠だったが、遠距離では操作できないことを示唆する陽介(別名「JOJOのスタンド」効果その2)。
相棒のピンチに、悠はアラミタマを解除し、「イザナギ」を呼び出してジライヤ救出に向かう。
シャドウ雪子はその間も思いのたけをぶちまける。しがらみに囚われている自分を強硬に否定し、暴走気味に辺りを業火の渦に包みこむ。シャドウが操るカーペットに巻き込まれ、千枝は身動きが取れなくなる。また悠と陽介も、シャンデリアから発生したロウに足を固められ、同じく動けなくなってしまう。
「勇気の無い自分は、いつか王子様が来て、自分を連れ出してくれるのを待っているの! ここじゃないどこかへ!!」
自らの心の闇、押し隠し続けて来た本音を見せつけられた雪子は、力なく座りこむ。そして悠たちの忠告も聞き入れないままに「あなたは私」と問いかけるシャドウを否定してしまう。
「アンタなんか、私じゃない!!」
自分の本心と向き合うことを拒否するその態度は、これまでと同じく、「本体が認めないなら自分がそれになり変わる」というシャドウの意思に力を与える行為となってしまうのだ。
高らかに笑うシャドウ雪子は、上空高く飛び立ち、しばらくして落ちて来た鳥かご状のシャンデリアからその異形の姿を現す。
そして本物の雪子を鳥かごに幽閉してしまう「雪子の影」。千枝のペルソナ「トモエ」がカーペットに抑えられていた千枝を救出する。雪子の気持ちを知った千枝は、親友としてその感情を受け止めることを誓う。
「雪子の影」は怒りの業火を上げる攻撃を持って、千枝に対する返答とする。千枝は所持ペルソナの特性上、火炎攻撃が弱点となる。足をロウで固められていた悠と陽介は、皮肉にもその火炎でロウが溶け、行動が可能となる。
ジライヤとイザナギも戦線に合流し、悠たちの反撃が始まる。しかしシャンデリアの鳥かご状部分に籠る「雪子の影」に、攻撃は通らない。
囚われの雪子を助けようとする千枝だったが、「雪子の影」のシャンデリアに激突され、吹き飛ばされてしまう。千枝を見て、感情が抑えられなくなる「雪子の影」。猛烈な炎が千枝に襲いかかる。
悠はそこでペルソナチェンジで「ジャックランタン」を呼び出す。ジャックランタンは、「雪子の影」の起こした炎を全て吸い取ってしまう。この辺は原作ゲームで火炎吸収のスキルを持つジャックランタンの特性を生かした描写で、原作ファンを喜ばせる演出だ。
千枝に対するものすごい恨みを解消すべく、悠は「雪子の影」を説得する。
「里中が王子様でなかったとしても、それがなんだ?」
雪子を助けようとしてここまでやって来た千枝の気持ちに嘘は無いと言い聞かせる悠。しかし迷いが生じつつも聞く耳を持たない「雪子の影」は、先ほどよりも凄まじい業火を吹きつける。さすがのジャックランタンですら、吸収し切れない。
一面が火の海になる中、それでも逃げずに雪子を助け出そうと前に向かう千枝。
伝えたかった思いを伝えるために、千枝は逃げない。
「アタシね、雪子がずっと羨ましかったんだ……」
成績が優秀で男子生徒からも人気がある雪子は、千枝の欲するものを全て落ち合わせていた。雪子を助ける行為も、そんな雪子に対するコンプレックスの裏返しであったことを告白する千枝。
しかし雪子が本当は強い意志の持ち主であることにも気付いていた千枝は、閉じ込められている鳥かごを壊して羽ばたくように、本物の雪子に向かって強い口調で語りかける。
雪子はそうではないと答える。小鳥が逃げてしまった時の落胆も、寂しかったからではなく、自分が出来なかった決断をいとも容易に成し遂げた小鳥に対する悔しさが起因だったと明かす。
お互いが理想だけではなく、最低な心も持っているということを吐露し合う千枝と雪子。大切な友達だから、そばにいたいと語りかける千枝に激昂する「雪子の影」。最大限の火力で周囲を焼き尽くしかねない勢いを見せる。
だが、すでに雪子は千枝から友情と、己の本心と向き合えるだけの勇気をもらっていた。雪子は自らの意思で、自らを閉じ込めている鳥かごを力強くこじ開ける。千枝と抱き合った雪子は、勇気をくれた千枝に感謝の言葉を告げる。
雪子がその心の影と向き合う決心をしたことにより、「雪子の影」はその力の源を失う。その隙を突き、悠と陽介が「雪子の影」を攻撃する。落ちて来た「雪子の影」に、全てのけりを付けるべく、トモエのキックで止めを刺す千枝。
すべては終わった。雪子の悩みに思いが至らなかったことを詫びる千枝。雪子の方も、逃げることしか考えなかったことを反省する。そしてシャドウ雪子の手を取り、優しく抱きしめ、その存在を従容と受け入れる。
「あなたは、私だね……」
その言葉に満足げにうなづいて、シャドウ雪子はその真の姿を現す。
雪子がその心と向き合うことによって手に入れた新たな力、ペルソナ「コノハナサクヤ」。モデルは古事記や日本書紀に登場する木花咲耶姫。神話では天皇陛下のご先祖様。アルカナはハイプリーステス(女教皇)。得意技は火炎魔法と回復魔法。苦手相性は氷結属性。得意と苦手が、千枝のトモエとは全く逆の性能。こういった相性の方が、親友としては上手く行くのかも知れない。
ペルソナを受け入れた雪子だったが、その直後、倒れてしまう。千枝の時と同様、かよわい女性にはテレビの中の世界での過酷な体験は、やはり精神的、肉体的負担が大きかったようだ。
改めて助けに来てくれた皆に礼を述べる雪子。クマの姿を見て驚く。そう言えば、初期にクマに出会ったのは雪子を除く3人だった。それに雪子は自らの意思でテレビの中にやって来た訳でもない。
雪子の体調が心配な一同は、クマを置き去りにしたまま現実世界に戻ることにする。寂しがるクマだが、雪子に優しく撫でられて、すっかりその機嫌を直す。ここでは嬉しい時に出る心象風景・花が再現されていて、面白かった。
雪子の優しさに嬉しくなったクマは、プレゼントを渡す。それは、雪子のツボにピタリと当て嵌まる鼻メガネであった。
千枝にも鼻メガネを無理矢理かけさせて、天性のゲラの才能を発揮させ大笑いする雪子。今まで千枝にしか見せなかったその素の部分を見せたということは、悠や陽介を、地を見せて憚らない親友とみなしたということなのだろう。屈託なく笑う雪子を見て、呆れながらも安堵の笑顔を浮かべる悠。雪子と千枝の友情に変わりが無いことを確認する悠のその表情もまた穏やかだった。
エンディング
今回は雪子の葛藤が非常に上手く描写されていた。救出に向かう悠たちの姿の合間合間に、旅館業で滅私しながら働く雪子や、小鳥を可愛がる雪子、そして小鳥を失ってしまった雪子の姿が微に入り細に渡って描かれていて、ゲームでは分かりづらかった彼女の心理描写に強烈に説得力を与えていた。今回の脚本は本当に素晴らしい。
旅館女将アニメ「花咲くいろは」並みに旅館の女将業の大変さが描かれ、時間をじっくり取って雪子の心の闇の大きさを視聴者に伝えていた。回を追うごとに完成度が増すアニメ版『ペルソナ4』だが、今回は特に素晴らしい内容だったと思う。もちろん今後の展開も一層楽しみになる。
ただ今回は新規参入キャラがいなかったのが少し寂しい。雪子の心理描写の掘り下げのため、今回は丸ごと雪子救出・雪子覚醒編だったからやむを得ないけど。
ところでお気づきであろうか? エンディングで主人公の頭上からタロットカードが降って来るのだが、物語の進行上、コミュを築いたタロットにはアルカナの絵が描かれていて、未結成のコミュは白紙のままなことに。
この場合、戦車(千枝)と魔術師(陽介)は描かれているが、他は白紙。他に埋まっているのは主人公のアルカナである愚者。雪子が学校生活に復帰して主人公とコミュを築けば女教皇の絵も埋まるはず(今回の救出劇ではまだコミュ構築までには至っていない)。こういうところに注目すれば、エンディングも楽しめる。
このエンディングの絵柄を全て揃えるためにも、全コミュの絆が描かれるのではないかと密かに期待している。
次回「Would you love me?(私を愛してくれる?)」に続く。
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