TPPとはそもそも何なのかを今さらながら考えてみる 【TPPについて(その1)】

 今日から11月。……というのがウソと思えるほど気温が高めですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか? 当方は暑いので、伸びた髪を切って心機一転して望む気満々です(ブログでやることは、これまでと何ら変わりませんが)。



 さて今回は最近話題となりながらも、よく分からないTPPについて考察してみます。

 民主党野田政権はどうやらこのTPPに参加するらしいですが、日本がそれに参加することによって起こり得る弊害が多数指摘されています。またテレビや新聞といった既存メディアはこぞって「今参加しなければ有利な条件で参加できなくなる」と、思考停止してでも取りあえず交渉だけでも参加しとけと大々的にTPP推しを宣伝しています。

 これって「今買わないと機会を逸しますよ」と押し売って来ておいて、大損害を与える仕手株の取引に似ていません? 当方、TPPについて調べれば調べるほど、これは国民を思考停止させて日本経済を、そして日本という国家そのものを破滅に導くモノに思えてならないのです。

 忘れてはならないのは、民主党政権と既存マスメディアがこぞって推して来るモノが日本国民にとって良かったという前例が無いということです。参加することによって国民は得するのか損するのか、その辺を総合的に伝えようとしない状況を、まずは疑い、警戒してかからなければならないと思います。



 そもそも、「TPPとは何ぞや?」という基本的なことすら知らされていないままに参加議論が強まったとは思いませんか? 

 TPPの正式名称は「Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement」といい、環太平洋戦略的経済連携協定もしくは「環太平洋パートナーシップ協定」と訳されています。具体的に何をしようとしているのかというと、参加国の間では関税(輸入する時に自国の産業を保護するためにかける税金)を廃止し、さらに知的財産権、労働規制、金融、医療サービスなどに至るまで、全ての非関税障壁を撤廃し自由化するという協定です。

 これって最初は日本やアメリカといった大きな国が参加していた訳ではありません。シンガポールブルネイ、チリ、ニュージーランドという、太平洋地域でも経済的に決して大きいとは言えない小国が4カ国集まって交渉が始まったものなのです。そこにアメリカやオーストラリアなどが参加を表明し、現在は9カ国。日本は今月、ハワイで行われるAPECアジア太平洋経済協力会議)で参加するのかどうかを表明する予定となっています。

 当初の4つの小さい国同士だからこそ様々な分野で交渉が可能であった訳で、その内容は24もの分野に渡る、とても幅広いモノです。日本では関税の話、中でも農業の問題に矮小化して話す政治家やマスコミが多く、関税撤廃で外国産の農作物が安くなり、日本の得意分野である自動車や電化製品が関税なく外国に輸出できるという議論が主流ですが、実は農業はその1分野に過ぎないものなのです。


 驚くべきことに、現在9カ国で行われている交渉とやら、全く外部に情報が出てこない、いわゆる秘密協定なのです。詳しく知りたかったら交渉段階から参加しろというのがあちらさん側の意見らしいですが、その態度が参加表明国中、圧倒的に力を持つアメリカの意向であることは論を待たないでしょう。


 「交渉だけでも参加して、もし日本にとって不利になるものだったら撤退すれば良い」というのが、TPP推進派の言い分です。現実にTPPを猛烈に推進する前原誠司民主党政調会長がそのような発言をしています。一見、説得力のある意見に思えますね。それが可能なのかどうか、もう一方の当事者であるアメリカのバーバラ・ワイゼル首席交渉官の発言を見てみましょう。

  • 読売新聞より引用

米首席交渉官、日本のTPP「離脱論」けん制

読売新聞 10月29日(土)10時47分配信
 【リマ=浜砂雅一】ペルーの首都リマで開かれていた米豪など9か国による環太平洋経済連携協定(TPP)の第9回交渉会合が28日、終了した。

 米国のバーバラ・ワイゼル首席交渉官は終了後、一部記者団に対し「参加の決断は前もってなされるべきだ。真剣な意志を持たない国には来てもらいたくない」と述べた。

 これは交渉参加を検討中の日本政府・与党内にある、国益に合わなければ交渉途中で撤退すればいいとの「離脱論」をけん制し、政府の意思統一を図った上で参加を表明するよう促した発言だ。

 一方、ペルーのエドガー・バスケス首席交渉官は閉幕後の記者会見で、「すべての分野で進展があったが、交渉終了に至らなかった」と述べ、11月にハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での大枠合意に向け、詰めの協議が必要との認識を示した。バスケス氏は、知的財産権などの分野で交渉が遅れ気味だと説明した。

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20111029-OYT1T00287.htm


 つまりこういうことです。「政府内で意思統一してから参加しろや。その上で参加したからには反対したり逃げ出したりすることはまかりならん」と仰っている訳です。

 アメリカはすでにこの問題で専門の首席交渉官まで置いてやる気満々なのです。何も知らないだけでなく、いざとなったら撤退すればいいとか思ってる民主党の馬鹿な政治家どもなど、赤子の手をひねるほど簡単な交渉相手でしょう。民主党内ですら意見が割れている問題を勉強不足のまま、議論不足のまま、のこのこと出て行ってこんなタフ・ネゴシエイターを相手に交渉で勝てる訳がありません。むしろ交渉の場に出ていけば最後、アメリカ側が提示する条件に全て同意するまで席を立つことを許してはくれないでしょう。

 八ツ場ダム問題で民主党政権が意見を二転三転させる元を作り、在日韓国人から献金を受け韓国の利益代弁者を務めた前原誠司など全く信用に足りません。ウソ吐いて日本を不利な状況に導く亡国政治家としか言いようがありません。ものすごく贔屓目に見ても、何も知らない無知な坊ちゃん政治家という評価で、どちらにせよこの問題に口出しする資格はありません。


 バーバラ・ワイゼルという名前からも分かる通り、アメリカの首席交渉官は女性です。



 バーバラ・ワイゼル首席交渉官ご近影。


 日本の馬鹿な政治家や官僚を見るにつけ、この様な自国の利益にどん欲な能吏のいるアメリカが羨ましくなります。日本が参加表明する前にあらかじめ「参加の決断は前もってなされるべきだ。真剣な意志を持たない国には来てもらいたくない」と釘を刺すかの如く言い募ったのだから(それも五寸釘レベルのぶっとさで)、実際の交渉時に日本が交渉の場から抜けたくなるような要求をして来ることは火を見るより明らかでしょう。満ち溢れる自信から来るのか、大変お美しいワイゼル首席交渉官ですが、ひとたびTPP交渉に参加しようものなら日本にとって最悪の交渉相手となるでしょう。その顔が悪鬼の如く見えるようになるのかも知れません。


 大体、来年に大統領選挙があるアメリカが、自国に得にならない協定にここまで躍起になるはずがありません。自国よりも他国の利益を重視する政治家がいる国など、世界広しと言えども日本だけです。

 アメリカやオバマ大統領はお人よしでは無いのです。自国の利益を最上の命題として望んで来るのは明らかです。そうしないと次の選挙で落選させられるからです。オバマは黒人で、民主党で、よき世界人で、ノーベル平和賞受賞者である前にアメリカ大統領なのです。


 東日本大震災の時、アメリカは「トモダチ作戦」と呼ばれるオペレーションを敢行し、東北の被災された方々を献身的に助けてくれました。被災した日本に対し、心からの援助をしてくれたことに疑いはありません。

 ただ日本に対し、いつか返してもらう「貸し」を作ったとは思っていたでしょう。同時に史上稀に見るアホ首相だった管直人・前首相が震災の2か月前の年頭所感に「平成の開国」などとアホ丸出しの発言と共にTPPに参加する意向を示していたことをずっと覚えていたはずです。

 今月のAPECで、良い機会だから貸しを返してもらおうとアメリカが思ったとしてもおかしくありません。来年は大統領選挙ですし、その前に大きな実績を上げておきたいとオバマが思うのはむしろ当然でしょう。TPPに参加すれば、震災の時に東北の人たちを救ったアメリカが、今度は東北の農産業を壊滅に追いやる存在になってしまうのです。



 長くなりそうなので続きますが、この問題は「日本という国家がどうなってしまうのか?」という喫緊のヤバい問題として、注視していかなければならないと思います。

 次回はアメリカがどれだけ交渉が上手なのかを示してくれた、米韓FTAの件について触れたいと思います。これは韓国という国が愚かなこともありますが、それ以上にアメリカのしたたかさが伝わって来る件なので、TPPに日本が参加した場合の格好の比較対象となるでしょう。


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 何しろ今の日本の命運を握るのは、その愚かで国力も劣る韓国に対してすら土下座外交を展開し、相手の言いなりのままスワップを拡大した野田政権です。アメリカのパワーの前にはゾウの前のアリンコでしょう。アメリカの意向に逆らえる訳がありません。史上稀に見るアホ首相が3代続く日本はもう終わりなのかもしれません。



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