【トルコ大地震】 親日国トルコを助けるべき理由 【エルトゥールル号遭難事件に秘められた友好国】

 タイで起こった大洪水、そしてトルコで起きたマグニチュード7.2の大きな地震。どちらも親日の国で起きた災害で、日本政府には可能な限りの支援を望みたい。特に東日本大震災という史上稀にみる大災害を経験し、その傷も未だ癒えない日本としては、それら災害の大変さを身を持って体験した訳で、決して他人事ではないと思う。


 そういう訳で今回はトルコの話題。日頃から遠く離れた日本に対し、並々ならぬ親日ぶりを示してくれているトルコ。その理由は何なのか? トルコの小学校の教科書にも載っているという、120年前に起こったある事件がトルコの親日に繋がっているということを歴史的観点から語ってみたいと思う。トルコの片思いにさせておきたくない、日本人にとっても知っておきたい良いお話だと思う。



 その前にまずは現状の震災の被害状況の再確認から。


 今回の震災の被害は甚大で死者数は1000人を越えると予測されている。生き埋めになった方を救うタイムリミットである72時間が迫る中、現地では救出作業が行われているそうだ。

死者366人に 救出難航、募る焦りと疲労
2011.10.25 19:31

 【ワン(トルコ東部)=大内清】トルコ東部を襲った大地震で、トルコ政府は25日、これまでに366人の死亡を確認したと発表した。負傷者は約1300人に上った。被害が集中するワンやエルジシュでは、なおも多数の住民が行方不明となっており、24日夜から25日にかけ、徹夜の救出作業が続いた。損傷を受けた建物は少なくとも2200棟、大地震発生後の余震は200回を超した。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/111025/mds11102519200008-n1.htm


 現在のところ、トルコ政府はイランとアゼルバイジャン以外の国の支援を受け入れておらず、他国に救援の要請はしていないとのこと。イスラエル政府が提案した救援協力をトルコ政府は断ったそうだ。

 両国は昨年のイスラエル軍パレスチナ支援船攻撃によりトルコ人に犠牲者が出た事件以来、関係が悪化しているので、それもあって支援を断ったという見方がある。トルコ政府が支援を断る理由に、ハッキリとそれを理由として挙げた訳ではないのだが、それだけに他の国に対しても支援要請しにくい環境を作り上げている可能性もあり、懸念される。



 さておき、直接の救援行為とは別に出来ることもある。それが義援金の募金行為だ。それに関して興味深い記事を見つけたので、ここで紹介したい。

トルコ地震で募金箱設置 串本町「人ごとでない」

 トルコと親交の深い和歌山県串本町は24日、トルコ東部マグニチュード7・2の大地震が発生したことを受けて、町役場本庁舎(同町串本)と古座分庁舎(西向)、トルコ記念館(樫野)に義援金の募金箱を設置した。

 地震は23日に発生し、建物が倒壊するなどして260人以上の死亡が確認されている。

 田嶋勝正町長は24日朝、駐日トルコ大使館に見舞いの電報を送り、電話で連絡を取ったが、情報が交錯して詳しい状況は分からなかった。現時点でトルコ政府は義援金を受け付けていないが、受け付けが開始されればホームページなどで知らせるという。

 1890年、同町樫野の沖でトルコ軍艦エルトゥールル号が遭難し、587人が亡くなった。生き残った乗組員69人は地元住民から献身的な看護を受け、本国に送られたことから日本とトルコの交流が始まった。同町は昨年日ト友好120周年記念式典が開かれるなどトルコと親交が深く、南部のメルシン、北部のヤカケントと姉妹都市提携を結んでいる。

 1999年にトルコ北西部で発生した大地震では約1万7千人が死亡した。その時、大島小学校の児童が送った絵は、現地の仮設住宅の表札代わりに使われたという。

 エ号の事故から始まった日本とトルコの交流を題材にした映画化の構想もある。今月17日から映画監督の田中光敏さんらがトルコに滞在していたといい、田嶋町長は安否を気遣っている。

 田嶋町長は「地震で犠牲になられた方に哀悼の意を表したい。地震は町にとっても人ごとではなく、トルコとは121年前から大変深い絆で結ばれている。少しでも義援金を集めたい」と話している。1カ月後ぐらいには義援金を送りたいという。

(2011年10月25日更新)

http://www.agara.co.jp/modules/dailynews/article.php?storyid=219984

 トルコと日本とが仲が良い理由は幾つか考えられる。遠く離れた国であるだけに利害関係が起こらず、敵対する間柄では無かったこと。日本は(少なくとも対外的には)仏教国で、キリスト教国家と違いイスラムのトルコと宗教的摩擦も無いこと。ただこれらはトルコに限らず他の中東諸国とも同様で、トルコの親日の直接の説明にはならない。


 オスマン朝時代、トルコは15世紀にビザンティン(東ローマ)帝国を滅ぼしヨーロッパ深くまで侵攻したが、17世紀末の第2次ウィーン包囲失敗後、その領土を次々と失い弱体化して行く(カルロヴィッツ講和条約)。その後、後退する一方のトルコが最もいじめられた相手がロシアだった。19世紀には南下政策を取るロシアの格好の標的となり、クリミア戦争露土戦争と立て続けに酷い目に遭わされている(そのせいで今でもトルコ人はロシアが大嫌い。朝鮮戦争出兵やNATO加盟も「反ソ連」が国是だったから)。

 そんな中、20世紀初頭にトルコ人同様、非白人の身でありながら憎きロシアを打ち破った国があった。それが日露戦争における大日本帝国だった。


 この辺の対ロシア感が、感情的にトルコが日本に好意を持ってくれている理由だと推察するが、やはり上記引用記事の「エルトゥールル号」遭難事件こそ、トルコが日本を愛してくれている最大の理由だと思う。

9月16日22時ごろに、折からの台風による強風にあおられ紀伊大島の樫野崎に連なる岩礁に激突、座礁したエルトゥールル号は、機関部に浸水して水蒸気爆発を起こし沈没した。これにより、司令官オスマン・パシャをはじめとする587名が死亡または行方不明になる大惨事となった。

樫野埼灯台下に流れ着いた生存者が数十メートルの断崖を這い登って灯台守に遭難を知らせ、灯台守の通報を受けた大島村(現在の串本町樫野)の住民たちは、総出で救助と生存者の介抱に当たった。この時、台風により出漁できず食料の蓄えもわずかだったにもかかわらず、住民は浴衣などの衣類、卵やサツマイモ、それに非常用のニワトリすら供出するなど献身的に生存者たちの救護に努めた。この結果、樫野の寺、学校、灯台に収容された69名が救出され生還することができた。

エルトゥールル号の遭難はオスマン帝国内に大きな衝撃を呼んだが、アブデュルハミト2世のもとでは人災としての側面は覆い隠され、天災による殉難と位置付けられ新聞で大きく報道されるとともに、遺族への弔慰金が集められた。またこのとき新聞を通じて大島村民による救助活動や日本政府の尽力が伝えられ、当時のトルコの人々は遠い異国である日本と日本人に対して好印象を抱いたといわれている。


 トルコの人たちはこの時受けた恩を忘れなかった。約100年後の1985年、イラン・イラク戦争の折、イランに取り残された215人の日本人を救出するにあたり、トルコが2機の航空機を派遣することを決めてくれたのだ。しかもイラン国内にまだトルコ国民も残っていたというのに、日本人を優先して救出してくれたのだ。

 イラクのサダム・フセインが設けた無差別撃墜宣言のタイムリミットまであと3時間という、撃墜されてもおかしくないというタイミングの中、日本人救出に尽力してくれたトルコの客室乗務員13人に、日本政府は勲章を授与することで報いている。




 関西ローカル番組「ビーバップハイヒール」より。この番組は最近も八田與一の話を放映してくれた、良心的番組。イラン・イラク戦争時のトルコの恩返し、さらにその元となるエルトゥールル号遭難事件の顛末が簡潔にまとめられている。在日トルコ人の話も聞けるよ。




【その他に見受けられる日本とトルコの友好関係】


 1988年、イスタンブールに日本企業の石川島播磨重工(IHI)と三菱重工業が政府開発援助によって第2ボスフォラス大橋を建設しているが、その功績はトルコの切手になっている。文字通り、両国の友好を繋ぐ架け橋となっている。



 日本人にフレンドリーなトルコ人。日本語を学ぶ学生も多いらしい。当方の中高時代の友人もトルコ旅行をした時に、カラテのポーズを取りながら日本語で話しかけて来たフレンドリーなトルコ人がいたという。



 上の動画の続き。エルトゥールル号遭難事件で民間人でありながら義援金を集め、トルコまで持参した山田寅次郎の話もトルコの子どもたちは学んでくれている。



 トルコはイスラム国家で唯一、政教分離も行われている。それは明治維新を成し遂げた日本の政治体系を模範としたという点も影響しているという。日露戦争の日本勝利の立役者、日本海海戦東郷平八郎や旅順203高地で有名な乃木希典の名前を冠した「トーゴー通り」「ノギ通り」がアンカライスタンブールにはあるという。またトーゴーという名は当時誕生した男の子に付ける名前として流行したという。

 台湾における八田與一の話の時にも言ったが、日本はこういう先人(山田寅次郎)に対するトルコからの恩返しに、さらに恩返しを考えて良いと思う。120年ずっと日本を愛してくれている国に援助の手を差し伸べたくなるのは、人情として当然だと思う。


 反日の上、幾ら援助しても恩をあだで返す国に700億ドルものスワップをするぐらいなら、トルコとタイ、そして自国の復興に回せと言いたい。



 どじょう首相に聞く耳があるとは思えないけどね。



【おまけ】


 日本人ならどこかで必ず聴いたことがあるはずの、なじみの深いクラシック曲を紹介。モーツァルト作曲のピアノソナタ第11番第3楽章「トルコ行進曲」の初音ミクバージョン。オワタの時のミクがやたら可愛い動画なのですが、一か所だけ目が笑ってないミクがいます。探してみましょう。

 この動画、大好き。 \(^o^)/ オワタ。



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