世界一売れたゲーム『グランド・セフト・オート バイスシティ』の感想

 相変わらず過去投稿の再録で恐縮だが、久々にゲーム感想文。前回が『グランド・セフト・オート3』の感想だったので、続編である本作を再掲したい。当方の【ゲームクエスト】投稿作中、おそらく最長文の感想(4500文字程度)なので、余計な口上は無しで感想文のみをどうぞ。

甘茶さん の「グランド・セフト・オート バイスシティ」 (プレイステーション2)
ストレス解消 ゲーム中のみ心を黒く染めてみては?
 久々の投稿になる甘茶さんは、世界的大ヒットゲーム「グランド・セフト・オート」シリーズのロング感想です。残虐ゲームを踏まえながら遊ぶのも一興とのこと。いろいろ言われる作品ですが、自由度やゲームそのものの面白さがあることが分かりますね。

甘茶
ストレス解消 ゲーム中のみ心を黒く染めてみては?(2008.10.27)
 またぞろ、ファンキーでクレイジースペシャルなエンドルフィン出まくりゲームのシリーズ、『グランド・セフト・オート バイスシティ(以下GTA:VC)』の感想を書かせて頂く。そのゲーム性、やり込み度、システムの深度、グラフィック、爽快感、残虐度といった、プレイして楽しいと感じられる様々な感覚で、当方がベタ褒めした前作『グランド・セフト・オート3(以下GTA3)』を全ての面で上回る、素晴らしい出来の作品だ。伊達に世界で一番売れたゲームとして、ギネスブックに載っている訳では無いという事だ。……とはいえ、相変わらず原哲夫の作画に武論尊の原案が加わったクラスの、物凄い残虐性溢れるゲームなので(例えが古くて恐縮だが)、万人に向かない内容ではある。この感想文は、本作のそういった「負の側面」をも含めて、ほぼ全面的に絶賛調の褒めまくる内容となるので、お気に召されない向きの方は、面白くてためになる、他の方の感想をお読みになる事をお勧めする(注:【ゲームクエスト】掲載時のまま)。
 
 【感想に入る前のおことわり】
 『GTA3』の感想の中で、『グランド・セフト・オート』を『偉大なる自動車泥棒』と訳したのだが、これは所謂「よくある誤訳」らしい。正確には『重自動車窃盗罪』という事である。堂々と誤訳を書いて申し訳ない。偉そうに知ったかぶりするなら、事前にウィキペディアぐらいは目を通しておくべきだったと深く反省。
 
 『GTA:VC』は、前作『GTA3』から遡る事15年、1980年代のアメリ東海岸の架空の街「バイスシティ」(名前からしても、南国を思わせるゲーム中の印象からしても、フロリダ州マイアミ近辺が舞台であるのはほぼ間違い無い)を舞台に、所属する組織から厄介者扱いされ続けた主人公「Tommy Vercetti(トミー・ベルセッティ)」がライバル組織との抗争の末にのし上がり、やがてはかつてのボスをも倒し、バイスシティの支配者となる犯罪サクセスストーリーゲームだ。『GTA3』と同様、ゲーム開始直後からの自由度の高さが特徴で、例の如くタクシードライバーとなって小銭を稼ぐ事に現(うつつ)を抜かしても良いし、街のちょっとした傾斜や階段を利用してクレイジーなジャンプを決めて、誰だか分からない奴から褒められた上、クレイジースタントボーナスなる小銭を受け取っても良い。救急ミッションや消防ミッションは健在だし、何ならピザの宅配のアルバイトをして小銭を稼ぐ事まで可能だ。

 やたら小銭小銭と五月蝿いが、実は小銭を稼ぐ事は本作では重要だ。武器を買うくらいしか遣い道の無かった『GTA3』と違い、今回は街のお店、物件を購入し、しかも経営をする事が出来る様になったのだ(車は相変わらず盗むのでタダだぞ)。タクシー営業所を購入して、ライバル社のタクシー達をぶっ潰して自社の経営を助けたり、印刷工場を手に入れてニセ札作りで大儲けしたり、自動車販売店のオーナーになって、客のニーズに求められるまま(?)、街中の車を盗みまくって収集したり、アイスクリーム工場を買い占めて、何故か警察に追い回される怪しげなアイスクリーム(ヤク入り?)をワゴン車で売り回ったり、映画会社を買収して、スピルバーグ似の三流映画監督(映画シーンに、やたらと人喰いザメを使いたがるところが如何にも80年代のスピルバーグっぽく見えて笑える【注:スピルバーグの映画『ジョーズ』は1975年公開】)に命じて、美女2人を使ったピンク映画を作らせたり……。何だか全部犯罪絡みの様だが、これら経営(物件ミッション)がとても楽しくて、本筋とは関係無い寄り道部分として、ゲームの中盤をダレる事無く遊ばせてくれる。

 特に楽しく、特筆したいのが上記した映画撮影の一連のミッション。金欠でコスチュームの布地を大幅に減らしたワンダーウーマンみたいな格好のお色気女優「Candy Suxxx(キャンディ・サックス)」(街中でも平気でその破廉恥スタイルで闊歩していて爆笑モノ)と、仕事をくれるスポンサー「Cortez(コルテス)大佐」の娘の美女「Mercedes Cortez(メルセデス・コルテス)」をピンク映画に出演させるのだが、残念ながら、誠に遺憾ながら、本当に悔やまれる事に、肝心のシーンは声だけで観る事が出来ない。「カメラさん、スピルバーグもどきは映さんでいーから、熱演中の美女達を画面にパンせぇっちゅーねん!!」と世の青少年に成り代わって数百回はツッコミを入れたものだが、その後の映画のプロモーションというか、宣伝に奔走するミッションがまた、楽しかったので多少ながらも報われる。水上飛行機からビラをばら撒いたり、バイクでビル群をジャンプしまくって、ビルの壁面に無断で映画の広告を映し出したり(海外版は色っぽい映像らしい)と、手段を選ばずやりたい放題に映画をPRするくだりは興行主として涙ぐましいまでの努力ながらも、とっても楽しかった。美女熱演の規制はやっぱり恨めしいけど、ねぇ……。
 
 物件以外にも前作『GTA3』からの変更点は多々ある。ビジュアル的に分かり易い点として、乗れる乗り物が増えたという事。ヘリや水上飛行機も凄いと思ったが、一番嬉しかったのはバイクに乗れる様になった事。種類は6種と、ちと物足りないが、ピザ宅配のスクーターからバリバリの大型バイクまで、乗り心地は全部違っていて特徴が良く出ている。バイクで街中を疾走するのは、車と違った趣があって良かった。秀逸だと思ったのはバイクでカースタントにチャレンジする時。そこで体重の前後への移動によって着地を上手く決めるといった制動をプレイヤーに求められる時があるのだが、現実世界ではジャンプ時の姿勢でほぼ着地時の体勢も決まってしまうものだ。だがリアリティを求めてそのままの難易度をプレイヤーに押し付けられ、着地に失敗してイライラさせられる様な事は無く、体重移動で上手く着地出来るといった「快適にプレイさせる上でのゲームがプレイヤーに吐く『良い意味でのウソ』」が相変わらず健在で、この辺の気配りはなかなかだ。バイクの制御は車以上に難しいが、慣れると車以上にエンドルフィン出っ放しの、実に楽しい乗り物になる。

 舞台が変わったのだから当然の事なのだが、街並も変わった。南国のリゾート地が舞台という事で、広大なビーチ有り、水着の女がローラースケートで路地を走り回る姿有りと、南国ムードに溢れているところも前作の寒々とした街とのギャップを、良い意味で感じる。夕方にパトカーに追われている時に西方向に逃げると、南国特有の強烈な西日で前が見えなくなってしまうのは困りものだったが……。壁や車に激突してしまい、何度警察に逮捕された事か……。

 個人的に最も印象深く感じた前作からの変更点は、主人公がやたらおしゃべりになった事だ。『GTA3』の主人公は、主人公=プレイヤーの観点を大事にして、一切言葉を発しなかった。本作の主人公Tommyは仲間の弁護士をからかったり、対立するギャングに罵声を浴びせたり、映画ミッション以外でもいろいろ出番のあるMercedesに甘い言葉を囁いたり……、と非常に饒舌だ。主人公が勝手に話す事に違和感を感じたプレイヤーも多く、概ね不評の様だ。ただ、この変更点は当方は諒としたい。大抵はこちらの思っている事をそのまま代弁してくれていて個人的には違和感無いし、そもそもカッコイイからね。こういうゲームをプレイする間ぐらいはマッチョな男を演じたいものだし。

 『GTA3』との相違点をつらつらと述べたが、前作を知っているとニヤリと出来る世界観のつながりというものも垣間見られる。前作で武器関係で協力してくれた「Phil(フィル)」が若き日の姿で出ていたり(ヤツの片腕が無い理由が本作で分かる)、前作で街の名士であり大悪党であった「Donald Love(ドナルド・ラブ)」が別の悪党の秘書役で下っ端としてペコペコしていたりと、15年前の人間像が窺われて楽しい。
 
 本作をプレイしていて、スタートからクリアまで常に心に抱いた感慨がある。それは、「この雰囲気って、まんま『マイアミ・バイス』だぁ、なっつかしぃ〜!!」というものだ。本作は80年代のアメリカ映画『スカーフェイス』と、同じく80年代のアメリカTVドラマ『マイアミ・バイス』に対するリスペクト、及びパロディが溢れた内容になっているらしい。『スカーフェイス』の方は残念ながら当方は未見なのだが(残虐表現が放送コードに引っ掛かるらしく、TV放映出来ないとの事)、『マイアミ・バイス』の方は深夜番組で見た経験があった。その記憶が、ゲーム冒頭の如何にも南国っぽいピンク掛かったネオンのホテルに宿泊するシーンや、南国の椰子の木の横をピッカピカのアメ車で走り抜ける風景なんかにフィードバックして来て、何とも言えぬ懐かしさが込み上げて来たのだ。懐かしくって面白い、というと懐古趣味の様で恐縮だが、『GTA:VC』にはまるで『マイアミ・バイス』の登場人物になって自由に行動出来るという擬似的楽しみ方もあるという事を強調して言っておきたい。「Lance Vance(ランス・ヴァンス)」という、「Rico(リコ)」と比較してはちょっとばかり頼りないながらも相棒もいるので、気分はすっかり「Sonny(ソニー)」捜査官だ!(潜入捜査官という「体制側」の立場であり、正義の『マイアミ・バイス』とは逆に『GTA:VC』は「反体制」の犯罪者であるのはご愛敬。ちなみにSonnyの名は、最終的に倒す事になるかつてのボスに使われている)
 
 洋ゲーの常として、本作も非常にクリアが難しい類のゲームである。当方はクリアまでに40回以上死に、同じく40回以上逮捕されてしまった。特にラストのミッションは厳しく、何十回と地獄を見せられた。体力満タンでも数秒で死んでしまう敵の機銃掃射の威力は如何なものか。いい加減死に過ぎて不機嫌になった当方は、大人気なくも生身の敵勢力にロケットランチャーを20連射くらいして殲滅させたのだが、痛快感を大いに感じつつも、いささか引け目を感じる終わらせ方ではあった。まあ卑怯と言われようと、勝てば官軍。これでこそ犯罪界のキングとして君臨する資格が有るというものだと、良いふうに物語を脳内解釈する事でわだかまりは無理矢理自己解決しておく。クリアしてもまだまだやり込み要素の方は残されているので、自分のモノとなったこの街を、支配者気分で闊歩するのも悪く無い。こんな素晴らしく面白いゲーム、飽きたりなんかするものか!! ……とGTA原理主義者ばりの強がりを言っては見たものの『そのうち飽きちゃうんだろうな〜』とも薄々は気付いているので、速めの100%やり込みが「GTA勝ち組」に至る勝利の鍵だと思っている。
 
 書きたい事はまだまだ尽きないのだが、いささか長くなり過ぎてしまった様なので、今回はこの辺にしておこうと思う。本作はとにかく面白ゲームなので、気が向かれたら悪の帝国建設を目指してプレイしてみて頂きたい。残虐ゲームに批判的な向きの方。気持ちは分かるが、やってみて理解(わか)る面白さというものがあるのだから、やらずに批判する事の無き様、前作感想に引き続き、重ねてお願いしたい。「ゲーム中のみ」心を黒く染めてみるのも、ストレス解消に悪くありませんぜ。


 本文中でも触れたが、自由度が高いこのゲーム、面白いのだが飽きが来る。個人差はあるだろうけど、このタイプのゲームの宿命なのかも知れない。そのタイミングを遅らせてくれる、様々なやり込み要素は前作『GTA3』よりも多くあり、製作側の気づかいが感じられた。

 友人なんかとバカ騒ぎして遊ぶには良いゲームなんじゃ無いかな、とは思う。ただ輸入版程の残虐シーンは無いとはいえ、基本的に18禁の残虐ゲーだという事は忘れない方が良いと思う。故に万人に向いた接待ゲームで無いのは明らかだけど。




 地獄の最終ミッション動画が見つからなかったので、誰が観ても楽しいスタント動画を。ホントに観てるだけで楽しい。BGMも笑える。プレイング自体はスゴイ技術なんだけどね。こんな事も出来るのかという自由度を確認して欲しい。勿論ヌルゲーマーの当方はこんなの出来ないよ(笑)。



 ちなみに『グランド・セフト・オート・4』のカースタント(車だけでは無いが)。流石PS3の描画力。プレイヤーも上手すぎて、感心するより前に笑ってしまう。ヘリから飛び降りてプールに飛び込むところは、相当計算しないと無理だと思う(3回目は失敗してるし)。編集の高度さ、BGMの選曲のセンスも相まって、そのまま環境ビデオにしても良いぐらいの出来の動画。スゴ過ぎ。画面の赤い表示が邪魔に感じたら、右下▲印をクリックしてお好みで消そう(次の動画も同様)。



 上の動画投稿者の最新版。今度は殆どバイクスタント。こんな事出来て羨ましい……。ここまでされたら、もはや別のゲームをプレイしている様に見えてしまう。これだったら遊んでいて飽きないだろうな。


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