「東京都青少年健全育成条例改正案」と都知事選挙(その1)

 東京都知事選は現職の石原慎太郎氏が4選を目指して出馬するのか、しないのかの去就が注目されている。功罪いろいろ言われてきた人だったけど、新銀行東京での大失点や2016年東京オリンピック誘致失敗(誘致活動そのものが既に失態の上、失敗という最悪な結果)など、これまでの3期12年の任期の後半だけを見ると、石原節を贔屓目に見ている向きの方も、お世辞にもよい都知事だったとは言えないのではないだろうか。


 特に当方の様なサブカルチャー的なものを嗜好する立場からすると、あの「東京都青少年健全育成条例改正案」に対する石原知事のゴリ押しともいえる強硬な態度はどうしても首肯する事ができない。この条例の問題点はググってもらえれば多数ヒットすると思うので、興味がおありならぜひ調べてみて欲しい。というか、漫画、アニメ、ゲームなどがお好きなら、この条例そのものにも興味を持って欲しいと思う(ゲームは今のところハッキリと明記されてはいないのだが、8条1項2号で画像全体を規制する旨が明記されている訳で、範囲内と考えて良いと思う。仮に除外されたとしても、マンガやアニメと混合的に影響を与え合い進歩してきたカルチャーであるゲームに影響が出ないとは思えない)。

 賛成意見・反対意見の別なく目を通し、どちらの意見が正しいと思うかをじっくり考えてみるのは意義のある事だと思う。


 参照で、ウィキペディアの記事。賛成派、反対派それぞれの動きが淡々と描かれていて、中立的目線で問題を把握する事ができる。


 賛成派が石原知事を始めとする右派勢力が中心で、反対派の立場は共産党など左翼勢力が多いというのがなんとも言えない(それぞれ、例外あり)のだが、当方はこの条例は大反対。この条例は規制側が恣意的に範囲を決める事ができる分、どこまでも安全圏は無いものと思うべきなのだ。「恣意的には決めない」と都側は何度も言うが、そのエクスキューズ自体が「やろうと思えばできる」という上からの言い分の裏返しであり、問題の危うさを裏付けている。マンガやアニメ、ゲーム等に興味が無いという人も、決して他人事ではないというお気持ちでいて欲しい。

 この問題に関する本はいろいろ読んだけど、個人的には、あの名作「サルまんサルでも描けるまんが教室)」のタイトルと体裁を模してこの騒動や問題点を揶揄しまくっている漫画「サルでもわかる都条例対策」が面白かった。問題の解決には余りなりそうにない内容なのだが、この期に及んでも笑いの精神で現実に皮肉を効かせる作風が気に入った。世紀末救世主伝説的某漫画に出て来る世紀末覇王的都知事の仁王立ちは感涙モノ(笑い過ぎて)。この本に込められた皮肉やユーモアは、条例反対派だけでなく、賛成派も笑うと思う。賛否に関わらず、機会があれば読んでみて欲しい。


 とにかくこの条例は既に東京都に於いて昨年12月に成立している。石原氏がもし次の都知事選挙に不出馬だとしたら、えらい置き土産を残してくれたものだと思うのだけど、条例は条例。次期都知事(と都議会)次第で再改正される事に期待をかける事ができる。つまり、石原氏が次に出るかどうかも含めて、この条例が本格始動するか再改正されるかは、次の都知事選挙にかかっていると言えるのだ。

 そんな中、石原氏の不出馬の噂と相前後して本命候補の様に現れたのが、松沢成文神奈川県知事だ。

 「神奈川県知事を続行せず都知事選挙に出る整合性はどうなっているのだろうか? 神奈川でやるべき事をやった上で、都知事になろうとしているのか? 神奈川県はもう見捨てるのか?」 という根本的な疑問に対する説得力のある説明がまず為されないといけない訳だが、当方がこの人を石原氏の後継者とみなすのは、何も出馬表明のタイミングという外面的な要因だけでは無い。松沢氏もマンガ・アニメ規制条例に大賛成の立場で、思想的な面に於いても石原氏の後継者そのものであるからだ。無知なくせに出しゃばってゲームにまで関心を持っている分、石原氏より性質が悪いと言っても良い。

 松沢氏は3月1日の出馬記者会見に於いても、都条例に賛成の意志を表明している。

 (リンク先のさらに先は、会見時の動画)



 またゲームに関してもこの様な態度を取った人間である。


 以前拙ブログにも感想文を掲載した『グランド・セフト・オート3(GTA3)』を神奈川県知事時代に有害指定したのも松沢氏だった。

憎むべきは科学的裏付けも無いままの誤ったゲーム批判、ゲーム叩きなのだが、そういった誤った風潮を世間に広めているのが新聞、テレビなどマスコミだ(「ゲーム脳」といったトンデモ説、未だに信じている人が少なからず存在する)。


 拙ブログの該当エントリー最後の方で書いたこの部分、まさに森昭雄というトンデモ教授が根拠無く唱えた「ゲーム脳」なるものを盲信するのが、このトンデモ政治家の松沢氏なのである。


 表現と、それに対する規制の問題点に対する考え方、その一点ではあるが、当方はこんな人が次の都知事になって欲しくない。東京都民は次の選挙で未来の都知事に何を託して票を投じるのか、人それぞれだとは思うが、マンガ・アニメ、そしてゲームが好きな人は、この問題を考慮に入れた上で、その貴重な一票を行使して欲しい。都知事候補の誰が何を言い、どんな意見を持っているのかを見極めて欲しい。


 東京都民では無い当方も、この問題に関しては強い関心を持って見つめているのだが、ある意味、この問題一点で投票権を行使できる都民の人たちが羨ましい気もする。この問題についてはまだいろいろと書き足りないので、選挙前にまた書きたいと思う。


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