『イナズマイレブンGOギャラクシー』第25話「瞬木隼人の闇!」の感想 【ポワイちゃんとヒラリちゃんサイドを応援してしまうという】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第25話「瞬木隼人の闇!」を観ての感想を書く。本作から登場した物語の副主人公の過去が明かされる。彼のそのブラックな人格形成に、一体何が影響したのか? それは彼が信頼していた友たちとの心理的決別にあった。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第24話「水の星の戦士たち!」の感想 【ララヤちゃんファザコン説】
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 松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】は星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の本戦2回戦の舞台、【惑星サザナーラ】へと降り立った。


 早速サッカーバトルを挑まれ、敵地からの洗礼を受けるアースイレブン。だが彼らが自信を持つ攻撃パターンがことごとく封じられ、アースイレブンはその戦いに敗れてしまう。

 まるでこちらの行動を読めるかと思うようなサザナーラ人たちの秘める「厄介(やっかい)な能力」とは? 本戦の前哨戦(ぜんしょうせん)に完敗してしまったアースイレブンはその不気味な能力を打ち破らねばならない。



 一方、ファラム・オービアスの女王ララヤ・オビエス(CV:高垣彩陽)の要望で誘拐され仲間たちから引き離された剣城京介(CV:大原崇)は、その地でララヤの善政を目の当たりにする。

 民たちに慕われ、尊敬を集めるララヤの姿は剣城にも好意的に映る。ララヤはこの国をまとめ、人々を正しき道に導いてくれる王の存在を待望していた。その王の姿を、今は亡き父の姿と酷似している剣城に見い出したララヤは自身と婚姻し、ファラム・オービアスを共同統治することを望む。



 真剣な眼差しで剣城を見つめるララヤ。彼女がファラム・オービアスの行く末を心配しているのはもちろんだが、やはり剣城その人自身にも一目惚れに似た感情があったことは間違いないだろう。揺れる瞳にその乙女の緊張感が垣間見れる。



   オープニング



 サザナーラステーションに停留中の【ギャラクシーノーツ】号内のミーティングルームでは、アースイレブンがサッカーバトルにあえなく敗れた原因を突き止めようとしていた。特に考えられないほどの絶妙さでフェイントシュートを決められたキーパーの井吹宗正(CV:鈴木達央)は怒りが収まらない。


井吹「どうして負けたんだ!?」


 サッカー技術や身体能力では特に目立ったところも無かったサザナーラ人たち。しかし試合展開は完全に向こうにペースを握られてしまっていた。

 試合に参加せず、外から試合を見ていた神童拓人(CV:斎賀みつき)は天馬たちの動きが悪かったわけではないと語る。天馬たちが劣っていたわけではなく相手の動きに因があったことを神童は諭(さと)したのだ。

 それを受け、チーム1の分析力を買われて試合に参加した皆帆和人(CV:代永翼)も自説を述べる。敵はこちらのパスコースに必ず割り込み、先回りしていたという実感を語った。それも一度や二度ではない、すべてのプレーでそうだったのだ。

 すべてのパスがカットされては試合にならない。だがそれを実行するには、こちらの動きを完全に読む必要がある。本当にそんなことが出来るのだろうか? 天馬はこういう時に相談相手になれる、長年の付き合いの剣城に話を振る。


天馬「剣城はどう思う?」
剣偽「あ、ああ……」

 本物の剣城はファラム・オービアスにいる。ここにいるのはビットウェイ・オズロック(CV:津田健次郎)が送り込んだニセモノ、スパイだ。出来るだけボロが出ないようにするためだろうか、気の無い生返事で返す剣偽。中身が半分異星人の水川みのり(CV:高垣彩陽)は早くも不信の目を向けているようだが。剣偽にも自分と同様の「におい」を嗅ぎつけているのかもしれない。


 そこまでの状況証拠を積み重ね、真名部陣一郎(CV:野島裕史)はある仮説を立てる。サザナーラ人は未来の動きを予測することが出来るのだとぶち上げる真名部に、鉄角真(CV:泰勇気)は懐疑的に声を上げる。皆帆は未来が見えるなら試合の結果も承知済みなのではないかと疑義を呈する。

 そこに、サザナーラ人の持つ「厄介な能力」の正体を知るみのりが、(真名部の)その推理はハズレだと割って入ってくる。そしてサザナーラ人は相手の心を目で見ることが出来るのだと本当のところを解説する。



 その言葉を聞いて瞬木隼人(CV:石川界人)が驚く。確かに彼には心当たりがあった。試合に敗れたあと、サザナーラ人に「孤独なやつ」と言われたその理由をみのりの解説から知ったのだ。彼はサザナーラ人に心を覗かれていたことに驚愕し嫌悪する。


 心が読めるのではなく、心そのものを目で見ることが出来るというのが真相という。信じられない能力だが、それを持っている相手と戦うことの困難さも思い知らされる。それはこちらのパスがことごとくカットされたことを思えば想像も容易(たやす)い。


さくら「嫌だ、なんか気持ち悪い……」


 野咲さくら(CV:遠藤綾)は心を見透かされるということに対する不気味さを率直に口にする。他の選手たちも様々な感慨を抱くが、自身の孤独さをすでに見られてしまっている瞬木だけは心ここにあらずといった表情で狼狽(ろうばい)する。

 瞬木が試合直後に話しかけられていたことを思い出した真名部に顛末(てんまつ)を尋ねられ、瞬木はさらに動揺する。


「『お前たちは弱い』……とか、そういうイヤミだよ」

 協調しているフリをしつつ、その実(じつ)心の中では誰のことも信用してはいなかった瞬木の本音。それは彼の心の闇と呼べる部分だった。それを敵対するサザナーラ人にいみじくも指摘されたという本当のことを天馬たちに正直に言えるわけがない(ここで言えるなら最初から協調できてる)。瞬木は罪悪感に顔を歪めつつ、ウソをつく。


 瞬木のとっさについたウソで、話題は元のサザナーラ人の厄介な能力そのものの問題に戻る。心を読むとまではいかないまでも、心を見通して先の行動が読めてしまう能力が事実なら、これはサッカーに限らず、ほぼあらゆる勝負ごとに関して圧倒的に有利な能力である。そんな相手を前に勝負になるのかと鉄角は悲観的に語る。

 だが逆に楽観的なのが皆帆だった。彼は当初からサザナーラ人の能力に興味津々だっただけに、先を見越して行動する敵の裏をかくにはどうすれば良いのかを考えることが楽しみだと笑顔で語る。


 そこで皆帆の楽観論を戒(いまし)めるのが、子孫とは比べ物にならないほど冷静で思慮深い性格を見せる市川座名九郎(CV:小西克幸)だった。

 座名九郎は「こちらが裏をかこうと考えていること自体も相手には知られてしまう」という皆帆説にとっての盲点を適切に指摘する。つまり「裏の裏をかかれてしまいかねない」という懸念だ。

 勝たなければならない試合にあたり、考えないで戦うことなどはおおよそ不可能である。真名部はこの難問の解を求めようと脳細胞をフル回転させるが、チーム1の頭脳派である彼をもってしてもこの難問を解くことは難しいであろう。


 先行きを心配するアースイレブンメンバーにあって、瞬木だけは他のメンバーとまったく別の心配事に心を揺らしていた。



 一方、惑星サザナーラを代表する【チーム・サザナーラ】のメンバーひしめく一室では、可愛らしい少女が自分の預かり知らない場でサッカーバトルが行われたという報告に憤慨(ふんがい)していた。



 チーム・サザナーラのキャプテン、ポワイ・ピチョリ(CV:折笠富美子)。背番号5番。キャプテンマークを付けていることから、彼女がこのチームの柱なのであろう。見た目と違って勝気な性格らしい。明るく猫っかぶりなイメージは前作イナクロのベータ(CV:伊瀬茉莉也)ちゃんを彷彿(ほうふつ)とさせる。


 ゴールキーパーでありポワイの側近であろうと思われるヴァン・タレル(CV:不明)の「ポワイ様を慕う住人」という言葉にやや気をよくした彼女は、自分たちの能力で地球人たちがさぞ驚いたであろうことを面白そうに想像する。

 さらにヴァンは対戦した地球人の中に、極めて恐ろしい【アズル】の持ち主が存在していたことを伝える。アズルとは彼らの言葉で「心のかたち」と訳すべきであろうか? その対象としてモニターに映し出されたのは、やはり瞬木だった。

 ヴァンは暗く、醜く、歪(いびつ)なアズルを持っていると瞬木を紹介し、警戒を要する存在として瞬木を扱うのだが、ポワイはやはり楽しそうに興味を抱く。どんなアズルの持ち主であろうと、地球人など恐るるに足らずというのが彼女の感覚なのであろう。


???「その話、私にも聞かせて」


 圧搾空気(あっさくくうき)の音を響かせ、室内に入って来たのは片目をアイパッチで覆った長髪の美女だった。頭上に耳が無いその姿はサザナーラ人では無いということを端的に示していた。



 それはファラム・オービアスより送り込まれたアースイレブンへの刺客(しかく)、紫天王のヒラリ・フレイル(CV:小林ゆう)だった。怜悧(れいり)な印象を受ける美女だが、やはりそのアイパッチが特徴的。弱点は絵を描くこと(中の人的に)。サザナーラはキャプテンも紫天王も女の子ということで、今回のメンバー編成は実に華やかだ。


 予期せざる訪問だったのか、ヴァンはやや畏(かしこ)まって慇懃(いんぎん)に対応する。ヒラリは情報を共有すべきだと正論を述べ、仲良くしたいと表層だけの笑顔を見せる。それが本意では無いことを、アズルを見ることが出来るサザナーラ人が見抜けないわけがない。ポワイはそれがウソであることを皮肉たっぷりに指摘する。

 だがヒラリは自分の心を見透かされて黙っているほど甘い性格では無かった。不気味に顔を歪め、その長髪を一閃(いっせん)すると彼女の髪は意思を持った触手のようにポワイに巻き付き、さらに電撃状に光が迸(ほとばし)りポワイを苦しめる!



 不用意に自身の心を読んだ行為を懲罰(ちょうばつ)したことを示し、ヒラリは椅子に腰掛ける。彼女の髪には相手の生気を吸い取る能力があるらしい。

 リーダーであるポワイを痛めつけられ、チーム・サザナーラはヒラリに敵意を抱くが、ヒラリはそんなことなどお構いなしに瞬木の情報を提供するよう言いつける。前回の【チーム・サンドリアス】のときと同様、あるいはそれ以上に紫天王とチームとの仲は悪いようだ。強敵ではあるが、この辺にアースイレブンのつけこむ隙があるかもしれない。



 それはそれとして、瞬木の映像を見て舌なめずりをする肉食系女子のヒラリちゃんがエロカッコ良い。中の人は瞬木の弟の雄太(CV:小林ゆう)と同じ人なのだが……。冗談はさておき、ファラム・オービアス紫天王にして瞬木のアズルに興味を示す彼女の思惑とは一体なんなのだろうか?



 自分の映像を見た肉食系女子に舌なめずりされていることなど露ほども知らない瞬木は、ギャラクシーノーツ号の通路で皆帆に話しかけられる。他のメンバーは強敵との戦いを前にブラックルームで特訓に打ち込んでいる。

 それなのにブラックルームに向かおうとしない瞬木に、皆帆は違和感があったのだ。おそらくミーティングルームでの瞬木の弁解のときから皆帆は何かを感じていたかもしれない。いや、アースイレブンの中で唯一、瞬木の心の闇を垣間見た存在である皆帆は確信を持っていたに違いない。


皆帆「その態度、サザナーラ人にはそういう時の君の心がどんな風に見えているのか、僕も見てみたいな」


 瞬木の気持ちを逆なでするような挑発混じりの皆帆の質問は続く。そこに天馬がやって来たのを見て瞬木は反論を控え、その場を立ち去る。2人の間に不穏な空気を感じた天馬は、残された皆帆に経緯を尋ねる。皆帆はサザナーラという星の特殊性を考え、今まで秘密にしていた瞬木の心の闇を語り始める。



 一方、皆帆の追求から逃れた瞬木はサザナーラ人から言われた「孤独なやつ」という蔑称を何度も反芻(はんすう)していた。そしてそれを強く打ち消そうと試みる。その思いが強ければ強いほど、心の奥底ではその言葉を肯定していることに繋がることも考えずに……。



 彼はいつしか過去のことを思い出していた。瞬木が今よりも小さかった頃……彼はおもちゃ屋の窓にくっつくようにして何かを見つめていた。それは楽しそうにレーシングカーのミニチュアで遊ぶ子供たちの群れだった。

 お父さんと手をつなぎ、楽しそうにおもちゃを持って帰る自分と同じ年頃の少年を見つめ、瞬木は何を思うのか?


 そこに同級生2人がやって来る。彼らもいま大流行のレーシングカーの模型【ビュンカート】を遊ぶためにこのおもちゃ屋にやって来たのだ。

 2人のうち、瞬木の事情を知らない同級生が嬉しそうにビュンカートのコツを語る。だが瞬木の実家が貧しくおもちゃなど買えないという事情を知るもう一人の同級生がそれを無駄だと諌(いさ)める。


 瞬木は「今度買ってもらう」と言って体裁(ていさい)を繕(つくろ)う。2人はそんな瞬木を置いて店内に去っていく。それをまた店の外から見つめるしかない瞬木の思いは如何ばかりであったろう……。

 瞬木は財布の中を確認する。子供の立場としては頑張って集めたと思われるお金が入っていた。だが瞬木はその財布をポケットにしまい込み、淡々とその場を去るのであった。


 しょんぼりとした表情での帰り道、瞬木は親しい友人の後ろ姿を見て嬉しくなって駆け寄る。友人は塾へ向かう途上だったらしい。友人は瞬木を土曜日の自宅での集まりに誘う。瞬木は家庭の事情で弟の世話をしなければならないという理由をもってそれを断る。だが友人は弟も連れて来ても良いと優しく言葉を返す。

 友人の優しさに感謝しつつも、瞬木はやはりまだ幼い弟が何か迷惑をかけてしまっては大変だと再度その申し出を断る。友人は無理強(むりじ)いをするわけにも行かないという表情で、それを受け入れる。


 瞬木は病院に母を見舞う。瞬木の母(CV:悠木碧)は身体を壊して入院しているらしい。父親は彼らを捨てて蒸発してしまったことは以前語られた。

 病弱な母を心配させないよう、瞬木は気丈に笑顔を見せる。母の向かいの入院患者の見舞いに来ていた少年が嬉しそうに見せびらかしていたおもちゃ、それはいま瞬木が一番欲しいと渇望するビュンカートであった。母はやはり可愛い息子の気持ちが分かるのだろう、毎日のやりくりでお金が余れば買っても良いと瞬木に語りかける。



 しかし瞬木はそれは無駄遣いだと言って欲しい感情を表に出さない。見舞いを終え外に出たとき、瞬木は改めて財布の中を覗く。このお金があればビュンカートを買うことは不可能ではないだろう。だがそれをしてしまうと弟たちのことを任された母の思いへの背任であることも瞬木は理解していた。大切な母を、そして弟たちを裏切るわけにはいかない。


 瞬木は弟たちにたくさんのお菓子をお土産(みやげ)に帰宅する。財布の中身はこのお菓子に化けたのだろう。嬉しそうにお菓子を頬張る生まれたての瞬(CV:戸松遥)とややお兄ちゃんの雄太の笑顔がその日一日の瞬木のストレスを一気に解消させる。



 弟たちの笑顔に力を得た思いの瞬木は、土曜日の友人の誘いに応じて弟たちを連れて友人宅にお邪魔することを決意するのであった。



 ……
 そこで一旦、瞬木の思い出が途切れる。そのあとの出来事を思い出すことが苦痛でならないのだろうか、ギャラクシーノーツ号私室ベッドに横たわる瞬木の顔が苦悶に歪む。



 その頃、談話室で皆帆に瞬木の話を聞いた天馬は、実は彼も瞬木の態度に思うところがあったことを述べる。天馬は決勝戦の前に彼の弟たちから聞かされた言葉が気にかかっていたのだ。



 瞬木の回想が再開される。小学校のクラスでは相変わらずビュンカートの話題で持ちきりだった。そんな同級生たちを横目で見ながら、瞬木は昨日自分を誘ってくれた友人に声をかける。

 昨日の弟たちも連れて来いという友人の優しい言葉を信じて語りかけた瞬木だったが、友人は土曜日の予定が変わったことを打ち明ける。塾の仲間たちとビュンカートで遊ぶということになってしまったらしい。

 瞬木はビュンカートを持っていないから来ないだろう……という友人の思惑は外れた。放課後のクラス、瞬木が来ると返答したことを、友人は憮然とした表情で他のクラスメイトたちに語る。

 ビュンカートを持っていないくせに来てどうするつもりなんだと仲間内では非難が飛び交う。もちろんその場に瞬木がいないことで彼らの陰口はヒートアップするわけなのだが……



 残酷なことにその陰口を瞬木が聞いていた……。ビュンカートで遊ぶというのも瞬木兄弟が訪問することを断るための言い訳だった。信頼していた友人の口から紡(つむ)ぎ出される自身への非難の言葉は幼い瞬木の心に大きな傷を残したことだろう。


 夕暮れの純情商店街をとぼとぼと歩く瞬木の前に、一枚の福引券が落ちていた。見ると近くの福引所にて使用できる券らしい。落ちていた券で福引をする瞬木は、見事三等賞を引き当てる。

 三等の賞品の中に、ビュンカートを見つけた時の瞬木の表情が喜色(きしょく)に弾ける。この気持ちはよく分かる。大喜びでビュンカートを指定した瞬木は勇躍帰宅して、弟たちの前で誇らしげに組み立てるのだった。



 そして完成させた黄色と黒の鮮やかな機体は、これまで彼にとって進入禁止だったおもちゃ屋の店内でクラスメイトたちの羨望(せんぼう)の眼差しを持って迎えられた。自分をバカにしていた彼らが手のひらを返したように近寄ってくる。



 走らせてみても瞬木のビュンカートが1番早かった。だが友人たちは瞬木をそっちのけにして、彼のビュンカートにのみ興味を示すのだった。そのとき瞬木はすべてを悟る。彼らは「瞬木の存在」を求めているのではなく、「ビュンカートを持つ瞬木」を求めているのだということを……。


 夕陽が辺りを黄金色に染める川辺で、瞬木はあれほど心を焦がして欲しがっていたビュンカートを川に投げ入れる。それは偽りの友情を交わして来たクラスメイトたちへの決別でもあり、そして友情というものを二度と信じはしないという彼自身の人間的な感情への決別でもあった。急速に水中奥深くの闇に沈んでいくビュンカートは、心を閉ざして闇に沈んでいく瞬木自身の思いを暗示するかのようであった。



「友達……そんなの嘘っぱちだ。人間なんてこういうものなんだ。他人を信じちゃダメなんだ。頼ってもいけないんだ……!」


 その日以来、瞬木は現在に至るまで家族以外の誰にも心を開かなかった。



 心の一番触れたくない部分だったのだろう、瞬木はベッドで身をよじらせてこうつぶやく。


「くだらないことを、思い出したな……」



 そこに来訪を示すチャイム音が響く。訪れたのは信助だった。練習に同行しようという誘いだった。瞬木がドアを開くと、そこには九坂隆二(CV:岡林史泰)の姿もあった。

 心が見えるという強敵を相手に効果的なフォーメーションを組むにはどうすれば良いかを考えるには、先発選手全員の意思疎通が必要だ。つまりそれにはFWの瞬木の存在も欠かせないと語るアースイレブンきっての凸凹コンビ(身長的に)に、瞬木は笑顔で同意する。さっきまでの回想を含め、当然ながらこの笑顔も彼の本心ではないことが分かる。



 練習に向かう道中も、瞬木の脳裏にはサザナーラ人から向けられた「孤独」という言葉が渦巻く。だが瞬木は大人の対応で周囲と波風立てずになあなあで行かせる行為こそが「上手くやっている」ということだと思い込み、孤独というレッテルを打ち消す。

 今もその大人の対応で信助たちに付き合っていることがよく分かるシーンだ。実はこういう感覚それ自体が「孤独」なのだけど、精神の歪んだ今の瞬木にはそれが見えていない。

 先にグラウンドに来ていた天馬は皆帆と語り合っていた件(くだん)の人物、瞬木がやって来たことに気を引き締める。



 練習開始、皆帆から真名部を介し、瞬木が剣城へとラストパスを出す。だがそのパスが最後で繋がらず、剣城のシュートは不発に終わる。

 剣城のらしくないプレーにその場の全員が意外そうな表情を浮かべる。中でも森村好葉(CV:悠木碧)はいつもと違う剣城の様子に不信感を深める。



 剣城との付き合いが誰よりも長い天馬も目の前の剣偽に違和感を隠すことなくぶつける。それもそのはず、この剣城は剣偽なのだから。


 休憩時間、好葉はさくらに剣偽の違和感を告げる。剣偽がタオルを使ってゴシゴシ顔をこする姿を見て、これまでの剣城はそんな使い方はしなかったと意外にも観察眼の鋭さを示す。

 好葉は実はメンバーの癖(くせ)を覚えており、いつもと違う行動をとった場合はすぐに気づいてしまうらしい。さくらが15分も鏡の前から動かないという癖も好葉は目ざとく覚えていた。



 地獄耳の剣偽は疑われ始めていることに気づき、修正の必要性を感じる。彼が耳たぶを触ることで何らかのデータがダウンロードされる。


 剣偽は「何か用か?」と自分の方から語りかけ、サザナーラ人とどう戦うかを気にかけるあまりプレーがおろそかになったのだと先ほどのプレー失敗のエクスキューズを印象づけようと試みる。

 さくらはまんまとそれに騙され、その様子を見た剣偽は満足そうに去っていく。好葉の鋭い視線から見ても今の態度はこれまでの剣城と同じように見えた。とはいえ好葉はそれでも疑念を完全に取り払うつもりは無かったのだが。



 宿舎であるギャラクシーノーツ号の自室にて、剣偽はオズロックからの通信を受けていた。天馬に疑われたことを軽率と認めつつ、剣偽は問題は解消されたと強気だった。彼が語るには、あの耳たぶいじりは本物から抽出された記憶データを自分の記憶にインプット、トレースする行為だったらしい。それによって剣偽はサッカー能力を含め、あらゆる能力が本物と同様になるという。

 え、じゃあその技術を使えば全員同じ選手でイレブン作れたり出来るの? 円堂守(CV:竹内順子)イレブンとか菜花黄名子(CV:悠木碧)イレブンとかザナーク・アバロニク(CV:小西克幸)イレブンとか、ゲームで再現できたら良いなぁ。夢は膨らむ。ザナークイレブンだけは一人だけ座名九郎を混ぜたりしてね。



 同じ頃、船内の監督室を神童が訪れていた。心を見るというどうしようもない強敵を相手にどうやって戦えば良いのかを、百戦錬磨の黒岩流星(CV:佐々木誠二)から作戦を引き出したいという神童の思いだった。



 だが黒岩は自身のアドバイスが無ければ勝てないほどお前たちは無能なのかと神童の自尊心を傷つける形で挑発する。神童はその言葉に無言で引き下がるのだが、私だったら「監督の責任を果たせ」と一言どころか5万言ぐらい言い返すけどな。「あなたにも回答が分からないのか?」と挑発し返す行為もありかも。



 サザナーラステーションの一角に瞬木を呼び出した天馬は、そこで気がかりだったアジア地区決勝戦を前にしての瞬木の「優勝は無理だ」という言葉の意味を尋ねる。



 瞬木は天馬に見えないほど一瞬の表情の変化を見せる。だがその心の動きを勘付かせないように彼は努めて笑顔で、弟からの伝聞であることを理由に誤解があると語り出す。そのにこやかな表情は天馬を安心させるが、彼の本心を知る視聴者の目からはまたもその場しのぎの詭弁(きべん)を弄(ろう)していることは明白だった。

 彼は「『チームが一丸にならないと』優勝は無理だ」と言ったのだと弁解し、弟たちの発言が言葉足らずだったことを詫(わ)びる。


 天馬はその弁解をすっかり信じ、笑顔を見せる。そして心が見えるというサザナーラ人の能力について、自分はそんな能力は要らないとキッパリと告げる。


天馬「人間て良い顔も悪い顔も、いろんな顔があるから人間だと思うんだ」


 サッカーもお互いの心理の読み合いで成り立つゲームであり、そこが面白さの真髄であるのに心が見えてしまえばその面白さも一気に減退してしまうというのがサッカー馬鹿(褒め言葉)の天馬の理屈だった。

 そして天馬は翌日の試合で、心を見られようが気にせずに全力を尽くすことを宣言する。「俺のサッカーをするだけだ!」という彼の信念はいささかも揺るぎが無い。

 瞬木はその言葉が自分にも向けられていることを意識し、分かったと受け合う。だがその言葉はやはり表面上、相手と上手く付き合うためだけの瞬木の処世術なのであった。瞬木は天馬のことも、他の誰のことも未だに信頼してはいなかった。


 天馬は伝えたいことを伝え、瞬木が帰って行くのを見送る。思いの丈(たけ)を伝えることが出来たかと大きく息をつく天馬の前に、唐突にピクシー(CV:北原沙弥香)が現れる。

 自分の気持ちが瞬木に伝わったかどうかを心配する天馬を励ますかのように、ピクシーは髪の毛を引っ張ってじゃれついてくる。



 この無邪気さが可愛い。果たしてこれが天馬を励ましてるのかどうかはともかく。



 実戦練習を続けているグラウンドでは、鉄角が猪突猛進の体(てい)で剣偽のボールに挑みかかる。だが心を見られるという現象をことさらに意識する鉄角は無意識に行こうと無意識すぎる突進を繰り出し、軽くかわされてしまう。激しく地面を転がった鉄角は身体をしたたかに打ち付ける。



 怪我の治療をされて染みたのだろう。そのあまりの痛みに顔をしかめる鉄角。肉体的には痛い目にあった彼だが、ここでは女の子たちに囲まれて精神的には報われたかもしれない。今のところ、ここが鉄角のモテ期の絶頂。


 心を見るまでもないと思われた鉄角のそのザル作戦だったが、天馬は声を出すという作戦が意外と使えるのではないかと語る。さくらはその意図を、天馬の名を呼びつつ剣城にパスを出すという風にして裏をかくつもりだと解釈する。

 だがその流れにまたも水を差すのは座名九郎だった。「本当にコイツの子孫は『グレートマックスなオレ!』の彼なのか?」と思えるぐらい冷静に、いくら声で惑わそうともパスを出すときは意識はその対象に向けられるはずで、そこを読まれないとは思えないとこの作戦の成果に疑義を呈する。



 冷静に言われてみれば確かにその通り。じゃあどうすれば良いのと駄々っ子のように身をくねらせるさくらちゃんが無駄に可愛い。敵に可愛い女子キャラが増えたのを意識しているのだろうか?(この時点では知らんはずだが)


 この地味ながら最強の能力に手こずり、解決策が思いつかないのは彼ら凡人組だけではなかった。事態の打開に関しては天才的素質を持つと思われる真名部、皆帆のコンビも未だ打開策は思いつかない。


 彼らの視線の先には、シュートを止める特訓を繰り返す井吹の姿があった。神童のフェイントをかけたシュートに翻弄される井吹の調子では、常に彼の思惑を外され逆方向にシュートされてしまうに違いない。



 明日の試合を前に依然止められないことを焦る井吹に、神童は行き当たりばったりではダメだと釘を刺す。


神童「相手の気持ちになってどう来るかを予測するんだ!」


 その言葉を聞いて何か天啓(てんけい)が舞い降りたか、皆帆は興味深いものを見た時の彼の癖、耳をピクピクと動かして思案に耽(ふけ)る。そして意を決したように隣に控える真名部に向け、こう語るのであった。


皆帆「『行き当たりばったり』『相手の気持ちになる』これは大きなヒントになるかもしれない……」



 次回に続く。



  エンディング




 更新が遅れていて申し訳ない。またも例年の11月頃にひく風邪にやられてしまって、更新が滞(とどこお)ってしまったのです。いい加減、11月になったら厚着しろ自分。



 今回はこれまで一部しか明かされなかった瞬木の過去が詳(つまび)らかにされた回だった。見ていて悲しくなってくるぐらい、瞬木のつらく悲しい気持ちが伝わってくる内容だった。

 物語当初に見せたお金に執着する彼の態度を卑しいものだと思っていたけど、この過去ならやむを得ないという気もしてしまう。彼の心が闇に支配されている本当の理由を知り、何とか友情というものの本質を見つめ直して欲しいという気がする。天馬たちならこの完全に凍てついた瞬木の心を融(と)かすことも不可能ではないと思える。

 彼らを繋ぐ触媒(しょくばい)は、遊び手を選ぶビュンカートではなく、サッカーという共通の言語を持つものであるわけだしね。




 話は変わって国民投票、今回はゴールキーパー部門の結果発表があった。予想通り、シリーズ最初の主人公、円堂守が1位の栄冠に輝いた! 現役の信助や井吹がダメだったのは残念だけど、レジェンド相手だしこの結果は仕方がないか。




 次回はいよいよ試合パート。心を見るという強敵なんだけど、そうとは思えないふわふわした連中に見えるのはなぜだろう? ポワイちゃんをはじめとしたサザナーラ人たちは可愛い娘が揃ってるな。サザナーラ人は全員が長髪で耳が見えないことから、頭上の猫耳っぽい部分が彼らの耳と考えて良いのかもしれない。



  次回「目覚めよ!俺のダークサイド!!」に続く。



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