『イナズマイレブンGOギャラクシー』第6話「チームの中の敵!」の感想 【神童さん唖然、井吹に待望の必殺技誕生!】

 更新が遅くなってしまって申し訳ない。

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第6話「チームの中の敵!」を観ての感想を書く。チーム内で身勝手に思える行動を取る野咲さくら(CV:遠藤綾)の過去、そしてその心の葛藤が描かれる。タイトルの「チームの中の敵」……それは彼女の過去の記憶が大きく絡むこととなる。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第5話「イナズマジャパン脱退試験!」の感想 【まさか鉄角が最初にデレるとは……】
 をご覧ください。

  • それ以外の感想は、

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 少年サッカー世界大会「フットボールフロンティアインターナショナル(通称FFIV2)」アジア予選に臨む新生【イナズマジャパン】は松風天馬(CV:寺崎裕香)たち雷門中出身者を除けば全員がサッカー経験の無い素人集団の寄せ集めだった。

 彼らはそれぞれが何らかの報酬を約束されてサッカーをしていたに過ぎなかった。真面目に練習にすら参加しなくなった彼らを、天馬は懸命にサッカーに向き合わせようとする。だがそれも実を結ぶことなく徒労に終わる。素人たちを日本代表の座に選出した代表監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)は、彼らに脱退試験を受けさせることを条件に、不合格の際は本格的な特訓に参加することを命じる。

 「無人のゴールに向けてPKを5本外せば合格」というあまりに簡単な餌(えさ)に釣られた彼らは、そこで黒岩の罠にはまったことに気づく。彼らの試験はあたかも公開練習の場のように彩(いろど)られ、お膳立(ぜんだ)てされた舞台には多数のファンやマスコミが駆けつけたのだ。

 その雰囲気の中で5本連続でシュートを外すことはナイロンザイル並みの神経の太さを要求される。最初に試験に志願した鉄角真(CV:泰勇気)はそんなナイロンザイル神経の持ち主であった。だが彼を応援する少年少女の声援を聞き、ボクサーだった頃の苦い記憶、そしてサッカーに向き合った時に感じた爽快感(そうかいかん)を思い出す。

 逃げずにサッカーに向き合わせようとする天馬の態度と、鉄角の尊敬するボクシングの師匠であり叔父でもあるトレーナーの徹さん(CV:間宮康弘)の姿とが重なる。それを自覚した鉄角が放った5本目のシュートは豪快にゴールネットを揺らす!

 それは鉄角がサッカーを新たな人生の帯同者(たいどうしゃ)とすることを決意した瞬間であった。

 鉄角の決意のゴールはまるで静寂な湖に投じた石塊が作り出す波紋(はもん)のように他の素人集団にまで伝播(でんぱ)する。イナズマジャパンを応援するファンの後押しもあり、全員がPKを決め、脱退試験を不合格になる。



 試験前の約束通り、日本代表のチームにふさわしい本格的な特訓が課せられるイナズマジャパンメンバー。まだまだ発展途上ながら、そもそも練習に真剣に向き合うという機会それ自体が新鮮だ。彼らとこのような関係性を築こうと考えていた天馬は笑顔で彼らを見守る。



 チームの中でももっとも後ろ向きな態度を見せていた小兵(こひょう)の森村好葉(CV:悠木碧)にドリブル指導する天馬。まだまだボールを操ることすらおぼつかない様子だが、好葉ちゃんがとにもかくにも前向きになっているのはそれだけで大進歩。


 だが一見良い方向に動き始めたチームの様子を不愉快そうに見つめる男がチームには存在した。神童拓人(CV:斎賀みつき)だ。

 無印『イナズマイレブンGO』の時以来の激しいピアノの旋律(せんりつ)による効果音をバックに、厳しい表情で素人たちを見回す。神童はもともと彼らの存在に否定的だし、脱退試験を経てまともなチームに転生することを望んでいたのだからその気持ちはさもありなんなのだが。

 神童は自身ともっともそりが合わない人物を見る。ゴール前ではキーパーの井吹宗正(CV:鈴木達央)が瞬木隼人(CV:石川界人)と剣城京介(CV:大原崇)という新生イナズマジャパンの新旧ストライカーからのシュートを阻止する練習に打ち込んでいた。



 かなり進歩した井吹のセービング。マシンや剣城を相手にした特訓は無駄ではなかったようだ。必殺技さえ覚えれば三国太一(CV:佐藤健輔)さんに追いつく日もそう遠くはないかもしれない。先輩を先輩と思わない無頼な性格だし「無頼ハンド」とか覚えて欲しい。


 井吹の弾いたボールはその神童の前に転がって止まる。ボール越しに仁王立ちする神童の醒めた視線を感じた井吹は、神童とは協調する気はないと言い放つ。


井吹「お前の助けは要らないぞ!」
神童「俺は勝つためにできる限りのことをするだけだ……」


 彼らを駆逐(くちく)するという目的が遠のいた神童はそれだけを返し、グラウンドを去っていく。まるで井吹の言う「お前の助けは要らない」という言葉を逆に態度で全メンバーに示しているかのように。

 波乱の脱退試験を経てようやく良い方向に向かいつつあったチーム事情だが、「チームの和」という難問がまだ控えていることに天馬は頭を悩ませる。


???「気にしない気にしない!」


 そう言って天馬にドリンクを差し入れするのはさくらだった。彼女も脱退試験を不合格になることを自ら選んでこのチームへの残留を決めた一人だ。さくらのちょっと裏のありそうな励ましを受け、天馬は苦笑しつつもうなづく。



   オープニング



 タブレットを操作してミーティングルームの大スクリーンに次の対戦相手・オーストラリア代表【ビッグウェイブス】のデータを表示する真名部陣一郎(CV:野島裕史)。理系の彼はコンピュータ関連も造詣(ぞうけい)が深く、こういうのを操作する役割もお手の物だ。

 データによるとビッグウェイブスは一試合平均で7点以上を挙げるという、形容詞的に超が5つ付くぐらい攻撃的なチームのようだ。圧倒的な攻撃力を誇るチームが対戦相手……それはすなわちゴールを守るキーパーの能力がもっとも重要な試合になるということと同義だ。井吹は気を引き締めてその話を聞く。

 どうやって守るのかが課題の相手なのだが、他人を観察して推理する能力に自信を持つ皆帆和人(CV:代永翼)はデータはあくまでも数値であり、実際に戦えば自分が敵の弱点を見抜いてみせると鷹揚(おうよう)に構える。

 神童はイライラを努めて押し殺しながらも、それでは間に合わないと告げる。確かに戦ってから敵チームを分析するというのは実戦では遅きに失する。近代戦において事前情報の入手、そして分析が重要なのはそれが理由なのだから。


 真名部が報告を続けようとしたとき、扉が開いて合宿所の寮母さん的役割を果たす管理人の蒲田静音(CV:くじら)がさくらに面会人が来たことを告げる。さくらの両親が合宿所にやって来たというのだ。



 レストルームで両親と再会するさくら。両親はさくらが心配になって駆けつけたようだが……。



 さくらの両親(父 CV:奈良徹)(母 CV:美名)。外貌を母から、髪の毛の色を父から受け継いだのがよく分かる。イナズマイレブンGOの世界では神童でさえ両親が画像付きで舞台に登場したことがないわけで、これは結構な優遇。


 話によると、両親はさくらがサッカーに転向した理由(本格的な新体操を学ぶため、海外の名門学校に留学するという本当のさくらの目的)を聞かされていなかったらしい。

 健気に笑顔を見せるさくらに対し、両親はあくまで義務的に次の試合をスタンドで応援することを告げ、帰っていく。『世界の注目を浴びる舞台で娘が活躍すること……』。両親の関心はそれだけであり、それには新体操であろうがサッカーであろうが関係ないと言わんばかりのその態度は娘に対する愛情というものが、おおよそ感じられないものであった。

 両親の後ろ姿を見送るさくらの笑顔がさみしげに曇る。



 そして翌日、ホーリーロードスタジアムでFFIV2アジア予選の2回戦が開催される。日本代表イナズマジャパンとオーストラリア代表ビッグウェイブスの対戦は晴天に恵まれた環境で行われる。



 観客席では瞬木の弟である瞬(右 CV:戸松遥)と雄太(左 CV:小林ゆう)が試合開始を心待ちにしていた。彼らの兄が前回の試合で活躍したことを彼らは誇りに思っていたのだ。ただ今回はさくらの主役回になりそうだから君たちの兄ちゃんは脇役ね。


 さくらの両親も昨日の言葉通り、観客席に姿を見せる。フィールドでは先着したイナズマジャパンがパス練習など、試合開始前の最後の調整を行っていた。瞬木から帰ってきたボールの強さに天馬は一瞬驚く。瞬木は笑顔で、もっと強いボールをパスするよう要求する。
 その態度に積極性を感じた天馬は喜んで強いパスを出す。瞬木もその期待に応え、見事にそのボールに飛びつく。その反応の速さは陸上選手の特性と、日々上達するサッカー技術が合わさったものであり、天馬は声を弾ませて瞬木のそのプレーを褒める。


 さくらとパス交換する好葉は上手くトラップ出来ず、その非を詫びる。さくらは気にしないで良いと口では告げるが、聞こえないようにボソリと本音をつぶやく。



「ふぅ……使えない子」


 やはり素人の寄せ集めであるという姿は他でも垣間見られた。九坂隆二(CV:岡林史泰)が勢い込んで撃とうとしたシュートはミートせず、ファウルチップのように横にいた鉄角へのパスとなってしまう。その鉄角も突然とはいえそのボテボテのボールをトラップすることが出来ない。

 真名部は親指と人差し指でアングルを作るいつものポーズで皆帆の姿を納めるが、数学的に指示を出すその態度に皆帆は不満を感じる。



真名部「皆帆くん、上下角25度です」
皆帆「僕は分度器じゃないよ!!」


 そんな、可愛いながらも選手としてはイマイチ決まらない2人の様子に、なぜかさくらはあのブラックな笑みを浮かべて何かを企(たくら)む。


さくら「こっちは使えそうね……」


 そしてゴール前では剣城が井吹に向けて豪快なシュートを放つ。井吹は気合一閃、そのシュートを両手でがっちり阻止してみせる。自信を深めた井吹はガッツポーズでその上達ぶりを誇示するが、神童は実際の試合ではこうはいかないと、にべもない。

 前回の韓国戦では敵のシュートのほとんどは神童がカットしてみせた。それが不満で厳しい練習に耐えてきた井吹は、今度こそイナズマジャパンのゴールは自分に任せてもらうと神童に大向(おおむこ)うを切る。

 神童は一瞥(いちべつ)しただけで何も言わずに立ち去る。その態度から彼が井吹をまったく信用していないのは明らかだった。



 方や、ビッグウェイブスはゴール前で円陣を組んで監督の指示を受けていた。監督は南半球からはるばる太平洋を越えて日本にまでやって来た意義を語り、必ず勝利することを選手たちに誓わせる。



 ビッグウェイブスのキャプテンのコール・ラルーゼ(右 CV:岩崎了)。カッコ良い長髪と長身痩躯(ちょうしんそうく)が特徴。中の人は懐かしの錦龍馬(CV:岩崎了)の人だ。韓国代表のように彼らも負けたら溶けちゃうのかなぁ?


 ラルーゼはこの試合に自分たちの未来がかかっていると謎の決意を述べ、眼光鋭くイナズマジャパンを睨みつける。




 恒例の試合開始直前の両チームの布陣。ビッグウェイブスは4−4−2の布陣で、中央に司令塔を置かないという変則的かつ大胆なポジショニング。その名の通り、敵選手をチームの波で包み込もうという発想だろうか? キャプテンのラルーゼの背番号は天馬と同じ8番でMFポジション。今のところ名前が分かっている選手としてはラルーゼ以外に1番GKのジュード・ゴードン(CV:不明)、4番DFのハーマン・ボーモント(CV:不明)、7番MFで女の子のマーシャ・アーク(CV:北原沙弥香)、11番FWのオクタ・パースン(CV:奈良徹)の計5名。


 一方のイナズマジャパンは今までのままの布陣。ゲームだと敵チームからフォーメーションを奪ったり出来るのだけど、運が悪いのかまだ初期設定のままだ。注目は敵が超攻撃的チームということでGKの井吹、そしてDF陣の奮起だろうか。あとやはり家族フラグが立っているさくらちゃんが気になる。あと皆帆がどんな分度器ぶりを発揮するのかも注目。



 そして試合開始のホイッスルが鳴る。イナズマジャパンのキックオフで試合開始。剣城と天馬が攻撃に向かう中、ゴール前にはやはり神童がやって来る。まるで井吹の神経を逆なでするかのようにゆっくりとゴール前に歩を進める神童は、下がりすぎだと抗議する井吹の声をどこ吹く風で無視する。


神童「ここでいい」


 一方、攻め上がる天馬は早速ラルーゼのマークを受ける。早くも両チームのキャプテン同士の激突だ! 激しいボールの奪い合いの中、ラルーゼはイナズマジャパンの戦力をすでに掌握していると自信満々に言い切る。おそらくは韓国戦でのデータを徹底的に分析しているのだろう。

 ラルーゼは言葉に嘘がないことを証明するかのように天馬からボールを奪い取る。天馬のことをも詳細に分析しているというというだけでなく、それを実証する優れた能力がないと出来ないプレーだ。



 ラルーゼのプレーを頼もしげに見つめるビッグウェイブス監督。この碧眼(へきがん)と金髪、そして浅黒い肌からして、11年前のチームキャプテンニース・ドルフィン(CV:佐藤健輔)その人だろうか? 韓国も元キャプテンのチャンスウ(CV:奈良徹)が監督だったしねぇ。ただこのモミアゲは只者じゃねぇ。ニースだとしたら何があった?


 さすがはアジア最強と謳(うた)われるオーストラリア代表チームだけのことはある。監督の黒岩との約束を守るために本気で特訓を受けた(本当の意味での)【新生】イナズマジャパンも押されてしまう。

 さくらの保持したボールも6番の選手によってサイドラインに押し出されてしまう。観客席で観戦するさくらの両親はそれを厳しい表情で見つめる。

 イナズマジャパンボールのスローイン。ボールを持つのは件(くだん)のさくらだ。ボールを持ってパスを出す先を窺(うかが)う彼女に、突如昔の記憶がフラッシュバックする。



 それは体育館。新体操のボールを受け止めた幼い姿の少女。それは昔のさくらだった。さくらは背中でコントロールすべきボールを落としてしまい、コーチ役の女性に厳しく叱責(しっせき)されてしまう。

 だだっ広い空間に取り残されたような状態で彼女は泣きじゃくる。コーチの指示通りに出来ないとむずがるさくらを突き放すコーチ、それはさくらの母であった。



 本来は悲しくて泣いている自分を優しく庇護(ひご)してくれるはずの母から問答無用で新体操の世界一の選手になることを強要される。さくらは悲しげに床に落ちたボールに目を向ける。そこには逃げ場所を失って絶望する少女の姿が映し出されていた……。


 自身が映し出されたボールとサッカーボールがダブり、そのような悲しい過去を思い出してしまったさくらは、母から課せられた「世界一」を強く意識せざるを得ない。

 そんな中、マンマークを受けていた鉄角がパスを受けるためにボクシング時代のフットワークを駆使してステップを切り、敵選手を翻弄(ほんろう)する。精神が極限にまで研ぎ澄まされていたさくらは反射的にそこにボールを送り、スローインは狙い通り鉄角に渡る。

 そしてさくらは積極的にパスを返すよう要請して走り出す。鉄角はそれに応じてパスを送るのだが、さくらは突如ブラックな笑みを浮かべて走るのを止めてしまう。

 パスミスかと思われたそのプレー、だがさくらは新体操の床運動さながらのアクロバティックな動きを見せ、敵選手よりも先にボールに追いつく。

 そのプレーには天馬はおろか、会場のすべての観客を魅了させる。さくらは大いに自己顕示欲(じこけんじよく)を満喫させ、またも黒い笑みを浮かべる。鉄角のパスをわざと見逃したのはこれを観衆に見せつけたいがための彼女の演技だったのだろう。



 娘のそのやや歪んだプレーを見届け、観客席の両親はむしろ満足そうにうなづき合う。「子は親の鏡」だと言うが、両親にとってさくらは彼らの自己顕示欲を満たすための道具なのだと思わせる描写だ。


 ベンチではマネージャーの水川みのり(CV:高垣彩陽)が、チームとして押される展開を無感情に述べるが、もう一人の前向きマネージャーである空野葵(CV:北原沙弥香)がさくらを始めとするメンバーの上達ぶりを称える。


黒岩「そうだと良いがな……」


 葵の意見を楽観論だと突き放すかのような黒岩のその不気味な発言は、コーチの船木宏正(CV:金野潤)を不安にさせる。


 試合展開はイナズマジャパンが反撃機を迎えていた。神童は素人である彼らを使いこなすことで活路を見出そうと考え、珍しく攻撃側に参加する。

 天馬に指示を出してパスを受けた神童は、エキシビジョンマッチで披露して無駄に終わった新必殺タクティクス「神のタクトFI(ファイアイリュージョン)」ではなく、進化する前の素(す)の「神のタクト」をさくらに向けて射出する。

 戸惑うさくらに、その軌道に乗って走れと指示する神童。あわてて駆け出すさくらを見届け、神童は今度は九坂に向けてタクトを振るう。近隣を束(たば)ねるごっつい不良として恐れられている彼も神童の気迫に押されたか、「ウッス」と子分調の言い回しで逆らわずに「神のタクト」の軌道に乗る。

 走り込む位置に放たれたパスをさくらが蹴り返し、九坂がヘッドでそれをつなげる。そして神童のタクトは瞬木に振られ、いつの間にか「神のタクト」の指示を受けて来た天馬を介して剣城にラストパスが送られる。

 ワンチャンスで自陣から敵陣最奥部まで一気に攻め込ませた神童の「神のタクト」はさすがと言わざるを得ない。剣城もここで決めるべく、ついに新必殺シュート「バイシクルソード」を抜き放つ。




 その豪快なシュートにはキーパーのゴードンも反応が出来ない。イナズマジャパンに待望の先制点が入る! エキシビジョンマッチ、韓国戦とこれまでは先制点を奪われる展開だったイナズマジャパンだが、今回は先に点を奪うことに成功する。こりゃあ、もしかしたら楽勝?


 自分にも黙って新必殺技を開発していた剣城に驚きつつも祝福する天馬くん。剣城はいつものニヒルな表情でその祝福を受ける。やはりイナズマジャパンのエースストライカーは剣城だと思わせるシーンだ。



 だけど雄太と瞬にとっては兄ちゃんのパスがゴールにつながったと相変わらずの兄ちゃん真理教ぶりを発揮する。それ言うならさくらや九坂も褒めろよ。


 だが瞬木のパスにしろ、ラストまでつながったのは神童の「神のタクト」が効果を発揮したからであることは間違いない。素人たちを信頼してタクトを振るった神童もまた功労者である。

 得点に絡んだ瞬木、さくら、九坂は自信を深め、これなら勝てると拳を握り締める。ベンチでは葵も待望の先制点を喜んでいた。だがみのりと黒岩は相変わらずのポーカーフェイスで、喜びを表出させない。

 ビッグウェイブスベンチでも、監督が不敵に笑う。そこからは先制された動揺はまったくと言って良いほど窺えない。



 そして試合は失点したビッグウェイブスのキックオフで再開される。

 10番の選手がさくらをかわしてイナズマジャパン陣内を駆け抜ける。そうはさせじと、天馬は必殺ブロック技の「ワンダートラップ」でボールを奪い取る。



 ボールを奪った天馬はすかさず司令塔の神童にパスを送る。神童は1点目の再現とばかりに「神のタクト」を駆使して仲間に指示を送る。だが九坂が軌道に乗りながらボールを胸トラップした瞬間、ビッグウェイブス監督が号令をかける。

 その瞬間を待っていたラルーゼは自らのチームも必殺タクティクスを使用する。



 ビッグウェイブスの必殺タクティクス「サックアウト」。4人で対象を取り囲み、渦(うず)を巻くように絡め取ってしまう。九坂に送られていた「神のタクト」の軌跡も切り取られてしまう。ちなみにサックアウト(Suck Out)とは「吸い出す」「吸収する」という意味。


 「サックアウト」の渦は九坂から見事にボールを奪い取る。まさに必殺タクティクスで必殺タクティクスを破るというビッグウェイブス側の策略だった。敵に的確な対策を取られたことは神童が先に手の内を見せたせいだと、黒岩はみのりに向けて冷徹に語る。


 ビッグウェイブスはどう見てもオクトパス(タコ)が名前のモチーフのはずのオクタ・パースンが攻め上がる。皆帆と好葉が阻止しようとするが未だに素人の域を越えられない彼らにその突進は止められない。ゴール前にやって来る敵FWを見て井吹の気合が入る。だがその井吹の出番を失わせるのは味方である神童であった。



 守りの固い神童さん、カッコ良いな。ゲームではDFも出来る選手という扱いになるのかも。


 自分を信用しない神童に不満たらたらの井吹に構わず、神童はまたもオーケストラのタクトを振るう。さくらから瞬木へとパスは通るが、ビッグウェイブスはその対策法を持っている。必殺タクティクス「サックアウト」が炸裂し、瞬木は悲鳴を上げてグラウンドに叩き伏せられてしまう。


マーシャ「ふっ、何度やっても同じよん♡」

 倒れる瞬木を女王様のようなポーズで見下すドSなマーシャちゃん。中の人は葵ちゃんと同じというから驚き。北原沙弥香さん、本当に演技が上手くなったなぁ。


 二度までもこちらの必殺タクティクスが破られ、この戦法はもはや通用しないということを思い知らされる天馬たち。得点はリードを奪っているが、試合展開的には手詰まり感が漂う。天馬たちイナズマジャパンは如何にしてこの閉塞感(へいそくかん)を打破するのだろうか?




 「神のタクト」を二度までも破られながらも、神童はまたもその必殺タクティクスに頼る。天馬にパスを送り、剣城にパスを送るよう指示を出す。だがその軌道を描く前に、ビッグウェイブスの吸い出し攻撃が天馬を襲う。

 三度目の「サックアウト」。天馬は渦に飲まれる前にボールを蹴り出して難を逃れようとする。だがラルーゼはそれに反応し、波に乗ったサーファーのような挙動でそのボールに飛びつく。



 ラルーゼにカットされたボールはサイドラインを割る。試合が途切れたタイミングを見て天馬と神童、剣城の雷門三銃士が集まり作戦会議を開く。天馬は敵の必殺タクティクスの強力さに舌を巻き、剣城もまるで何をも飲み込む海と戦っているようだと率直な感想を述べる。

 だが神童には引っかかることがあった。ビッグウェイブスの事前のデータによると、彼らは圧倒的な攻撃力で勝ち上がってきたチームだったはずだ。それなのに彼らの必殺タクティクスは強力とはいえディフェンシブな技である。

 その矛盾に天馬も何かがおかしいと気がつく。剣城はデータが間違っていたことを訝(いぶか)るが、真相は不明だ。分かっていることは神童の「神のタクト」はもはや通用しないということだけだ。



 攻守を替え、今度はビッグウェイブスが攻め上がる。マーシャの突進に立ち向かうのは真名部だが、あっさりと横パスを許し、キャプテンのラルーゼにボールが渡ってしまう。その前はゴールまでがら空きだった。

 例によっておせっかい神童くんがゴール前に駆けつけ、井吹に対する無関心を装った過保護っぷりを発揮しようとする。だが井吹にとってそれは自分を認めようとしない神童に対する怒りにしかならない。

 神童は攻撃面では他の素人たちを信頼して「神のタクト」の構成員に選んでいた。だが相変わらずゴールマウスを守る役割を、井吹には与えようとしない。それは井吹にとっては侮辱そのものであっただろう。


井吹「退け神童! 俺の視界をふさぐな!」


 井吹の怒声に釣られて一瞬目を離した神童。その隙にラルーゼは神童をかわしてシュート体勢に入る。ついにゴールを守るのは本当に井吹一人になってしまった!

 ラルーゼはオーストラリア代表チームのストライカーが持つ標準必殺シュート「メガロドン」を撃つ。ちなみにメガロドンとは恐竜時代に実存した超巨大なサメのこと。



 迎え撃つ井吹は無謀にも必殺技なしでそのシュートに立ち向かう。まぁ井吹には必殺技がまだ無いんだからそれも止むなしなんだけど……やっぱり止められるハズもなく。


 ラルーゼのシュートはイナズマジャパンゴールネットを激しく揺さぶり、試合を振り出しに戻す。得点を上げたラルーゼはガッツポーズ、そして阻止できなかった神童は悔しそうな表情を浮かべ、その明暗を分ける。


 だが一番悔しかったのはこの男だろう。強烈なシュートを技なしで止めようとした井吹はその全身を襲う痛みと、そして力及ばなかった悔しさに身を打ち震わせて立ち上がることも出来ずにいた。

 そんな井吹の心に引導を渡すかのように仁王立ちして睨みつけるのは、神童だった。



神童「分かったか? 練習と試合は違うんだ!」


 完全に自らを見下してそう告げる神童に、何も言い返すことが出来ない井吹。神童の言葉は苛烈なまでに辛辣(しんらつ)だったが、この場で実証された真実でもあったからだ。


 1−1と振り出しに戻ってしまった試合展開、前半は残りわずかとなる。さくらは観客席を見上げ、そこで観戦する両親の姿を見つける。両親は厳しい表情を向けており、さくらのプレーを満足して見ているわけではないことが伝わってくる。さくらは何かを決意するかのように、前を見据える。


 試合は同点に追いつかれたイナズマジャパンのキックオフで再開される。ドリブルで駆け上がる皆帆に向け、真名部がパスを指示する。相変わらずの分度器扱いの細かい指示に閉口した皆帆はぞんざいにパスを送るが、それは真名部の位置からそれてしまう。やむを得ずボールを取りに向かう真名部の前にさくらが割り込んでくる。

 さくらの死角に隠れてしまったボールを見失い、真名部はボールを取り損なってしまう。そこに張り切るのは味方でありながら真名部を妨害したさくら自身だった。先ほどの鉄角とのプレーで見せた「仲間のミスを自分の活躍で取り戻してみせる(実はマッチポンプ)」作戦だ。

 さくらは華麗なアクロバティックでまたもボールに追いつきキープする。目立つ活躍が出来たさくらは得意げに観客席を仰ぎ見る。両親もそんなさくらを誇らしげに見つめていた。


 パースンのドリブルにスライディングタックルで挑むのは九坂だった。サッカー経験がないとは何度見ても思えない九坂の見事なスライディングはパースンからボールを奪取する。

 だが転がったボールの先には、この試合でも消極性が目立つ好葉であった。九坂に名を呼ばれ、おっかなびっくりボールに向かう好葉の足を引っ掛け、ボールを掠め取ったのは、これも味方のはずのさくらだった!

 さくらは大袈裟に好葉を気遣うふりをして笑顔を見せるが、その笑顔の裏に秘めた邪心を好葉は敏感に感じ取り、脅(おび)える。



 そらこんな表情で謝られたら好葉ちゃんじゃなくってもビビるわ。


 そしてさくらは好葉のプレーを横取りするようにマイボールにしてしまう。TVモニタに映し出されたそんなさくらの姿に、かつてのチームメイトであった大海原中学新体操部のメンバーが一斉に眉をひそめる。



 彼女たちがさくらと同僚だった時代を忌(い)み嫌っていた理由が何となく分かってきた。仲間を踏み台にして自身がカバーすることによって能力が高いと周囲にアピールし、目立とうとするその性格が嫌われていたのだろう。その態度は同僚だった頃からまったく変わっていないと彼女たちは吐き捨てるように言う。



 ここで前半戦終了のホイッスルが鳴る。前半は同点のまま、勝負の趨勢(すうせい)は後半戦に持ち越された。ただイナズマジャパン側には神童の必殺タクティクスが封じられたこと、そしてさくらの独善的なプレーがチームワークに暗い影を落とすことなど、不安材料が芽生えていた。

 さらに良くないこととして、さくらはこれが自身にとって正しい行為だと思い込んでいることだった。


さくら『これでみんなが評価してくれる!』


 ベンチに引き上げるさくらが心の中でそう確信する姿を、皆帆が顎(あご)に手を当てるという、彼が推理するとき特有のポーズで見送る。皆帆は直接さくらの独善プレーの犠牲になったわけではないが、何かおかしいことに気づいている様子だ。

 さくらをジッと見つめる皆帆の様子が気になった天馬が問いかけると、皆帆はさくらの能力ならもっと余裕があるプレーが出来るはずなのに、いつもギリギリのプレーになっていることを俎上(そじょう)に上げて疑問を呈する。


 ベンチ前では前半最後のプレーで足を痛めた好葉に、葵がアイシングをして治療を施(ほどこ)していた。そこに足を引っ掛けた当の本人がやって来る。屈託のない表情でさくらが再度謝罪にやって来たのだ。

 だがさくらのその謝罪が本心からのものではないと気づいている好葉は視線をそらしてその言葉を受け入れようとはしない。好葉にとっては足の痛みよりも仲間と思っていたさくらに裏切られたという心の痛みの方が強かったに違いない。

 好葉のその態度を見た九坂は、「もしかしたら」という前提詞を付けつつも、さくらのさっきのプレーがわざとではないのかと疑義を呈する。


さくら「馬鹿なこと言わないでよ!」


 さくらはムキになってその言葉を否定するが、その空気は周囲にも蔓延(まんえん)していた。同じようにダシにされ、さくらが目立つ機会を演出する役回りにされた鉄角、瞬木、真名部たちがさくらのプレーに疑心の目を向け始める。

 さくらはチームのために結果を出したいだけだと釈明するが、そのあと心の中でつぶやいた言葉こそが、さくらの本心であっただろう。



『そうしないと……また、悲しい思いをしなくちゃならなくなるから……』


 彼女の心を縛っているもの、それは何なのだろうか? 両親の期待に応えることが彼女にとっての「正義」なのだろうか? その束縛によって本当の意味でのチームプレーが出来ないとしたら……それは仲間だけでなく彼女にとっても大いなる悲劇であろう。

 彼女の心の葛藤(かっとう)は、胸を押さえて苦しげな素振りを見れば誰にでも分かる。さしものミスターKYキャプテンの天馬も、彼女に秘められた思いがあることに気づく。だがその思いの昇華は、さくら自身にしか為(な)すことは出来ないのだ。



 ギクシャクした関係は解消されることなく、そのまま後半戦に持ち越されることとなる。ビッグウェイブスのキックオフで後半戦が開始される。

 マーシャのドリブルを神童が奪い取り、前方にフィードする。攻守の切り替えがなった瞬間、観客席で見ていたさくらの両親が声を張り上げて娘の活躍を期待する。それは家族の普通の応援というレベルを越えた「強要」「命令」と呼んで良いレベルのものであった。

 そしてその「命令」を受けたさくらに、逆らう術(すべ)はないのだった。両親の期待に応え、両親から認められること……それがさくらにとってのレゾンデートル(存在意義)であるかのように、さくらは駆け出す。

 神童から天馬、そして瞬木と前線へのパスが順調に渡ろうとしたその時、それをカットするのはさくらだった!



 これまでは極力不自然ではないように演じてきたさくらだったが、ハーフタイムでメンバーから疑われたこと、さらに両親の過度の期待が彼女の背中を後押ししたのだろう、露骨に味方同士のパスをカットしてしまった!


 味方同士のパスに割って入るという行為は単に無駄であるだけでなく、仲間同士の連携を断ち切る行為でありリズムを崩す。さらにその瞬間自身に与えられたポジションを放ったらかしにするわけで、明確にチームに対する迷惑行為、背信行為である。

 だが今のさくらには(両親に)良いところを見せることしか頭になかった。カットしたボールを一人で持ち込もうとするが、当然のことながらそれはビッグウェイブスには通用しない。6番のサメ顔の選手にボールを奪われてしまう。



 さくらの独善的な単独行動はビッグウェイブスにカウンター攻撃の余地を与えてしまう。一転ピンチに陥るチームを救ったのは神童の守備であった。サイドラインにボールを押し出し、何とか速攻を受けることを逃れる。

 功を焦ったさくらはそこで神童から厳しい叱責を受けることになる。



 今回の神童さん、やたら仁王立ちになって説教するモードだな。


 自分のポジションを放棄し勝手な行動を取るさくらは批判されてもやむを得ない立場だ。だがさくらは気落ちしつつも、両親から認めてもらうための行為を止めようとは考えなかった。


 試合はイナズマジャパンボールのスローイン。好葉が全力で投じたボールはほんの1メートルほど先の九坂に渡る。九坂はパスを送るべく攻撃陣を見渡すが、剣城は3人からのマークを受け、天馬も敵チーム最高の実力者であろうラルーゼのマンマークを受けていた。そして神童にも2人のマークが付き、頼れる雷門三銃士にパスを送るのはリスクが高すぎた。

 誰にパスを送れば良いのか悩む九坂の目に、完全フリーで前線に張るさくらの姿が飛び込んでくる。九坂はさくらへの不信感など忘れ、そちらにロングパスを放り込む。

 さくらは喜んでボールに向かうが、そこに神童をマークしていたはずの6番のサメ顔とマーシャの2人が詰める。彼らは最初からさくらにパスが送られるよう、わざとさくらをフリーにしていたのだ!

 あわてて神童にパスを送るさくらだったが、それは神童をマークしていた彼らと同じ方向へのパスとなるわけで、マーシャは苦もなくそのボールをカットしてしまう。敵にパスをしてしまったのと同様の最悪のボーンヘッドだった。

 マーシャに挑みかかる神童の横を、天馬をマークしていたラルーゼが走り抜ける。阿吽(あうん)の呼吸でそちらにパスを送るマーシャ。このプレーもさくらをフリーにしていた時から計画済みの流れなのだろう。神童をしてあっさりと術中にハマってしまうぐらいなのだから。

 一気にゴール前、ラルーゼは同点弾の再現とばかりに再度必殺シュート「メガロドン」を放つ。太古のサメの威をまとい、シュートはイナズマジャパンゴールに襲いかかる。必殺技を持たない井吹にこのシュートが止められるとは思えない!



 井吹は必殺技も無いまま、ド根性だけでそのシュートを止めようとする。だがやはり気力だけではどうにもならない。弾き飛ばされて地に落ちる井吹の後方でゴールネットが激しく揺れる。

 ゴール! これでついにビッグウェイブスがイナズマジャパンを逆転する。


 自身の活躍どころか、自らのプレーを発端にこの逆転劇を演じるアシスト役を果たしてしまったさくらは茫然自失(ぼうぜんじしつ)の様相でそのシーンを見ていた。

 そして仲間から浴びせられる叱責が彼女を一層混乱させる。鉄角から「敵と味方を間違えているんじゃないか?」と問われ、さくらは言葉を失う。

 ふと見ると、他のメンバーもさくらを厳しい視線で見つめていた。さくらは仲間たちを踏み台にしていたツケを払わされ責められる立場に立たされてしまったのだ。


天馬「どうしたの?」


 そんなさくらに別視点から語りかけるのは天馬だった。サッカーは楽しいものなのに、今のさくらが苦しそうだと核心を付く。天馬はKYなのにたまに鋭い。心の葛藤を言い当てられた気がして、さくらは一瞬驚くが、天馬の言葉を否定してとぼけようと試みる。きっと心の弱みを見せたくなかったのだろう。

 天馬はさくらが自分から話してくれることを待つと言いたげに、その言葉を肯定的に受け止める。さくらは心の闇を語ることなくその葛藤を閉じ込めてしまった……



 記憶に残る新体操の表彰式……そこには2位の表彰台に立ち、銀メダルをかけられたさくらの姿があった。本来なら誇らしい成績なはずだ。だが台上のさくらの表情に笑顔はない。

 その理由は観客席で見つめる、2つの冷たい視線だ。さくらの両親が娘の2位という成績にはまったく満足していないということがその冷厳な視線から伝わってくる。


 自宅に居並ぶこれまでの数々のトロフィーを前にして、父はさくらに今日の演技の説教を始める。母は2位に甘んじた銀のメダルはこのトロフィー群と同様には飾らないと言う。頑張った結果をメダルの色でしか判断しない両親の態度が、どんなにさくらの心を痛め、歪めてきたのだろう……?



 そんな悲しい記憶を胸に秘めたまま、さくらは現在この試合に臨んでいる。彼女が天馬の言葉を否定すればするほど、心の葛藤に苦しんでいるということが真実であることを思わせた。

 ドリブルしながらも天馬の言葉を否定することに躍起になっていれば、その挙動がおざなりになるのは当然だろう。試合中に考え事をするなというのは鉄則だ。さくらは隙を突かれ、またも6番のサメ顔にボールを奪われる。

 再びさくらを基点としてピンチが訪れてしまう。マーシャから例によってラルーゼにボールが送られる。ここでラルーゼに3点目を決められてしまえば勝機は遠のく。その思いで神童が懸命に食らいついていく。

 ラルーゼは華麗なステップで神童をかわし、ゴールに迫る。ラルーゼは天馬や神童をものともしないテクニシャンだと、敵ながら少し感心。

 だが感心している場合ではない。ラルーゼの必殺シュートは必殺技を持たない井吹では止められそうにない。神童は抜かれた後も諦めずにラルーゼに食い下がる。神童のその頑張りも、自身の不甲斐なさのせいだと自覚する井吹は顔を悔しげに歪める。


 だが神童の頑張りも虚しく、3度目の必殺シュート「メガロドン」が解き放たれてしまう!


井吹「今度は俺が守る!!」


 井吹はそう叫ぶとボールに向かって飛び出していく。そして空中から掌底(しょうてい)を撃つようにボールに手のひらを向ける。それはまるでバスケットボールの最高に豪快でエキサイティングなシュート、ダンクシュートを連想させる。彼の必殺技「ワイルドダンク」誕生の瞬間であった!!



 新必殺技「ワイルドダンク」がここに爆誕する! ダンクシュートの威力を敵シュートの阻止に向けるというバスケ部出身の井吹らしいワイルドなキーパー技だ。



 ついにキーパー技を身につけた井吹の成長に、素直な天馬や特訓に付き合ってきた剣城は大いに喜ぶ。神童は期待していなかった三下(さんした)が意外な成長を見せたことに未だに真実味を感じていない様子。


 だが誰よりもこのキープを喜んだのは、井吹自身だっただろう。ガッツポーズを見せて喜色満面の彼は、普段の不機嫌そうな表情がまるで嘘のようだ。

 それのそのはず、井吹が最初に発した言葉はこれだったのだから。


井吹「どうだ! 見たか神童!?」


 彼にとって一番見返したかった神童の目の前で敵エースストライカーのシュートを止め、井吹がゴキゲンにならないわけが無かった。神童は「キーパーなら当然だ」とつれない返答をして井吹をさらに怒らせるが、それを補って余りある賞賛が仲間たちから井吹に送られる。

 鉄角、真名部、皆帆といったこれまで井吹とはあまり交流を見せなかったメンバーがゴール前に集まって井吹を賞賛し出したのだ。彼らは井吹の成長をもって仲間としての意識が上がったのかもしれない。またそれにまんざらでもない表情を浮かべる井吹がお調子者で良い。

 そしてチームのキャプテンの一言が井吹をさらに奮い立たせる。



天馬「井吹! ゴールは任せたよ、キーパー!」


 井吹は神童への私怨(しえん)以外に、ここでサッカーを続けるための理由を得たという気がする。仲間たちから信頼され、大事なゴールを守るという役割を信任された彼は大いなるやりがいを得たはずだ。立場はその人物を成長させるが、成長はなおその人物をその立場にふさわしいものとするのだ。

 井吹は天馬の要求を、心からの笑顔で受け止めた。


 井吹の必殺技を瞬木は別の視点から見ていた。それは自身も必殺技を持ってチームの支柱として活躍することを誓わせる触媒として、であった。それは極めて前向きな動機であり、ストライカーとしての瞬木の成長を予感させるものであった。

 そしてさくらはまたそれらとは別の視点で……。ただ彼女だけはネガティブな意識をもって井吹の活躍を見ざるを得なかった。誰よりも活躍して勝利に貢献することが(両親から)彼女に課せられた使命である。井吹の活躍は彼女に焦燥感を持たせてしまうことにしかならなかった……



 次回に続く。



  エンディング



 更新が大変遅れてすみません(2回目)。もうこの次の話が放映されているわけで、個人的にはこの遅れは残念の至りです。今週は本業が殺人的に忙しく、休みが取れなかったことが原因です。さらに学校の方も重なって、本気で死ぬかと思ったぐらいでした。ただイナギャラの感想文は絶対に更新し続けるつもりでいますので、遅れていたとしても寛容な目で見てくださると嬉しく思います。



 さて本題。今回はさくらの過去、そして心の闇が描かれていた。彼女の独善的な目立ちたい精神は両親からの過度の期待、それに応えようとする彼女の生きてきた軌跡をそのままなぞる処世術だったと言えるのではないだろうか。さくらの過去を知る上で両親が登場するということは、さくらは両親から十分な愛情を受けていなかったことを暗示する。

 両親の期待に応えることこそがすべてであり、そこに新体操の別もサッカーの別も無い。だから大海原中の元同僚たちから嫌われ、今イナズマジャパンでも仲間の信頼を損ねているのだろう。

 2位という結果にも褒められずに叱られる彼女の気持ちは心に深い傷を与えたはずだ。両親のくびきから解き放たれた時、その時こそ彼女が本当のありのままの「野咲さくら」になれる時なのだろう。それには本人がやりたい通りすること、そしてやっていることを心から楽しめる状況が求められる。天馬たち仲間の力でさくらを心の闇から解き放つ展開にしてあげて欲しい。憎たらしく見えることもあったけど、実は彼女も被害者なのだ。

 次回タイトルはまさにそれを暗示するものなので期待している(これ書いている段階でまだ見ていません)。



 あと逆に明るいニュースとしては、井吹に待望のキーパー技が誕生したこと。まぁキーパーがザルだと今後の戦いが非常に辛いものになるはずだから、新キャラ最初の必殺技獲得はやむを得ないところだろう。神童さんには悪いけど。


 ビッグウェイブスのメンバーは韓国チームよりもよくしゃべるし喜怒哀楽も表出している。これでもスライムが化けているものなのかなぁ? 監督が「わざわざ遠くから来た」と言っていたけど、それが別の星からやって来たと解釈すれば敵=宇宙人説の裏付けにもなりそうだけど、今のところ不明。

 次の話はまだ見ていないから何とも言えないんだけど、ラルーゼが試合前に言っていた「我々にとって大事な試合」という言葉も気になっている。超攻撃的なチームのはずなのに、ディフェンシブな姿が目立つのも気になるよね〜。まぁその辺は次回のお楽しみということで(もう放映されてるけど)。



 とりあえず次回感想は早い機会に上げようと思ってます。それでは〜。



  次回「楽しいサッカーをしよう!」に続く。



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