『イナズマイレブンGOギャラクシー』第7話「楽しいサッカーをしよう!」の感想 【瞬木に必殺シュート誕生!未来のストライカーの風格!】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第7話「楽しいサッカーをしよう!」を観ての感想を書く。両親との過去の葛藤に悩む野咲さくら(CV:遠藤綾)が他の仲間たちに触発され、当初は目立つための道具にしか思っていなかったサッカーをいつしか本当に好きになって行く過程が描かれる。ついでにオーストラリア編最後の戦い。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第6話「チームの中の敵!」の感想 【神童さん唖然、井吹に待望の必殺技誕生!】
 をご覧ください。

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 少年サッカー世界大会「フットボールフロンティアインターナショナル(通称FFIV2)」アジア予選2回戦で松風天馬(CV:寺崎裕香)たち新生【イナズマジャパン】は強豪オーストラリア代表【ビッグウェイブス】と激突する。

 試合前に猛練習を積んだものの、まだ素人の域を越えないイナズマジャパンはビッグウェイブスの前に大苦戦。さらにさくらの個人的な思惑がチームに不協和音を奏(かな)でる。彼女は両親からの期待に応えようと、ことさらに目立つことを使命とし、結果他のメンバーの不信を買うという結果を招いていた。

 不動のエースストライカー、剣城京介(CV:大原崇)の新必殺シュート「バイシクルソード」で先制点を奪ったものの、敵キャプテンのコール・ラルーゼ(CV:岩崎了)の反撃に遭いたちまちの2失点で逆転を許す。

 だがイナズマジャパンには悲報ばかりではなかった。3点目を狙ったラルーゼの三度目の必殺シュート「メガロドン」を、キーパーの井吹宗正(CV:鈴木達央)が試合中に編み出した新必殺キーパー技「ワイルドダンク」で止めてみせたのだ!

 キーパーという守りの要の選手が覚醒し、チームは俄然(がぜん)勢い付いてくる。大会前はバスケの選手でサッカーは素人だった井吹の、必殺技という形での努力の結実は同じく素人のストライカー、瞬木隼人(CV:石川界人)を刺激する。

 ただ、この試合を見つめる両親の視線をのみ心にかけるさくらにとって、自身よりも活躍し自身よりも目立ってしまう井吹の活躍は目の上のたんこぶのように疎(うと)ましいものに思われた。


さくら「結果を出さなきゃ……」


 拳を握って決意するさくらの様子に気づいた天馬は心配そうにそれを見つめる。



   オープニング



 井吹の活躍で失点を免(まぬが)れたイナズマジャパン。だが神童拓人(CV:斎賀みつき)はゲーム再開を前にして、またもゴール前に陣取る。頑ななまでにゴールを守ると決めた彼は、井吹が必殺キーパー技を会得したというのにその意思を変えようとしない。



 井吹の前を離れようとしない神童。これは井吹を信用してはいないという意思表示以外の何物でもない。気の短い井吹はこれでまた激怒するんだけど、それにしても神童さんは挑発が上手い。


 思えばこれまでの井吹は、神童に良いところを見せつけ、彼に認めてもらうことのみを考えてサッカーに打ち込んで来たところがあった。必殺技でシュートを止めるという最高の形での彼の意地も、認めてもらうどころか「キーパーならそれぐらい出来て当たり前だ」と言われてしまったわけだから、その落胆と怒りは察するに余りある。


井吹『まだ認めないというのか!?』


 必殺技を会得してもなお自身を認めようとしない神童に、井吹のフラストレーションは増加していく。



 そんな中、井吹のセービングを絶賛するちびっこたち。よく見ると瞬木の弟の雄太(左 CV:小林ゆう)と瞬(右 CV:戸松遥)だ。彼らは兄以外の人間には心を許さない兄ちゃん真理教だったんだけど、さすがにこの場面では井吹を称える。日本代表が負けたら兄の活躍も台無しだもんね。


 そんな裏のない声援すらさくらにとっては面白くない。さくらにとって自分自身よりも目立つ存在は味方であろうが許せない存在だったのだ。


 井吹の心境を顧(かえり)みることなく淡々と靴紐を直す神童の元に天馬が駆けてくる。彼の指し示す先に目を向けた神童は、そこでやる気に目覚めだした仲間たちの姿を見る(さくらは除く)。素人であることを良しとせず、その立場を脱却しようと心に期したとき、それはもうすでに素人の集団ではなくなる。

 井吹という、彼らとは初心者の同僚の頑張りにより、彼らのハートにも火が点(つ)いたのだ。これならこの試合に展望が開けると考える天馬に、神童は自身の必殺タクティクス「神のタクト」が封じられていることを挙げ、この局面での天馬の方針を尋ねる。天馬のキャプテンの素養を信頼する神童の思惑がそこには垣間見える。

 そしてそれに対する天馬の回答は明快だった。


天馬「攻めていくべきです!!」


 「神のタクト」は無くとも、自分たち雷門中出身者や瞬木を中心に攻めることで活路は見いだせると天馬は熱く語る。神童もその意見に同意する。


 天馬はその意思をチーム全体に浸透させるべく、大きな声でフィールドの仲間たちに檄を飛ばす。



 井吹のゴールキックにより試合再開。井吹はなぜか対立関係にある神童にボールを送る。ナイスパスと仲間を褒めてやる気を引き出す天馬に対し、空中でパスを受けた神童は「まだまだだ」と相変わらず井吹に厳しく容赦がない。この関係性、井吹にとって天馬はアメで神童はムチと言えるかもしれない。

 神童は攻撃重視という天馬の作戦を採用した手前、井吹への嫌がらせのように張り付いていたゴール前を離れて前線に向かう。そのドリブルを止めようとするのはビッグウェイブス6番のサメ顔(本名ではありません)だった。



 これまで何度も右サイドでさくらを潰して来たサメ顔を相手に、神童はこれも久々の必殺技「プレストターンV2」で抜き去る。この技、全然使ってなかったのに、なにげにレベルアップしてる。


 神童はその勢いで天馬にパスを送るが、それを間に走り込んださくらがインターセプトしてしまう。さくらはこの攻撃のシナリオ構想に含まれてはいない。またも両親の前で目立とうとする彼女の独断専行であった。

 他の誰よりも結果を出すという考えに支配されたさくらは遮二無二(しゃにむに)突進を開始するが、その前に立ちはだかるのはマーシャ・アーク(CV:北原沙弥香)だった。今こそ必殺技を出して彼女をかわし目立つ機会だ! 井吹や、先ほどの神童のように!

 そう考えたさくらだったが、必殺技は出る気配もなくまったくの不発に終わり、ボールはあっさりとマーシャに奪われてしまう。



 さくらのミスをカバーするのは前回に続いて今回も神童だった。ボールをサイドラインに押し出し、敵の攻勢の芽を摘(つ)む。このシリーズに入ってからは日常茶飯事の感があるけど、守備も出来る神童さんは相変わらずカッコ良い。



 そしていつもの仁王立ち説教タイム。


 勝手な行動をとってチームに迷惑をかけるさくらを厳しく叱責する神童。活躍しようと焦(あせ)るさくらの思いは空回りしていた。鉄角真(CV:泰勇気)や真名部陣一郎(CV:野島裕史)もさくらのやり方に不満の声を上げる。

 本格的な仲間批判につながりそうな雰囲気をいち早く察した天馬はそれを止めさせ、試合に集中するよう促(うなが)す。そして心配して見つめたさくらの姿……


 彼女はピッチに座り込んだまま、茫然自失(ぼうぜんじしつ)の表情で観客席を見上げていた。そこではさくらの両親があからさまに不機嫌そうな表情を浮かべて試合を見ていた。苦悩する娘の姿を気遣う様子は窺(うかが)えず、ただただ思い通りに動かない娘への苛立(いらだ)ちと失望のみがそこにはあった。その両親の態度は、かつてさくらが味わった苦い経験を思い起こさせる……


さくら「あの時と……同じ!」


 それはかつて新体操競技で2位になった時、表彰台の上で感じた両親の視線と同じ意味を持っていた。両親だけでなく、苦楽を共にしたはずの同僚の新体操部員たちも無表情に見つめる中、2位の銀メダルを首にかけられたさくらの表情は、浮かないものであった。

 表彰式の後の両親の失望と怒りを想像するさくらにとって、その場は死刑執行台のように、首にかけられた銀のメダルは絞首刑のロープのように思えたかもしれない。そしてその横で優勝の金メダルを受ける選手の歓喜の声と彼女を称える拍手がさくらを責め苛(さいな)む。いたたまれなくなったさくらは思わず目を伏せてしまう。



 そのシーンはさくらにとって二度と経験したくない人生最悪のものだった。それが今、再現されつつあるのだ。立ち上がったさくらの辛そうな後ろ姿を見つめ、天馬はハーフタイム中、苦しそうにサッカーをするさくらを問いただした場面を思い起こす。あの時は笑ってごまかしたさくらだったが、やはり何か深刻な心の闇を押し隠していたということを天馬は察する。


 心の悩みを隠したまま、さくらはプレーを続行する。だがやはりその焦る思いは敵にとっては格好の攻撃材料だ。攻撃に出てはスライディングでボールを奪われ、守りに入れば良いところ無くかわされてしまう。

 さくらのそのプレーには、観客たちもブーイングを持って応じる。仲間を踏み台にして目立っていた前半ではさくらのプレーに歓声を送っていた同じ観客が、である。さくらは膝をついてなぜ上手く行かないのかを自問する。



天馬「焦っちゃダメだ!」


 天馬から落ち着いてプレーするよう諭されるが、さくらはどうして良いかが分からない。悲しげに顔を伏せてしまう。さくらの様子がおかしいことはベンチで見ている空野葵(CV:北原沙弥香)たちにも察せられた。

 コーチの船木宏正(CV:金野潤)はさくらにこのまま続行させることの愚を説くが、監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)は返答をしない。まぁ11人カツカツでやっている現状、さくらを下げようと思っても代わりの選手がいないわけで、黒岩のシカトも分からないでもない。


 フィールドの選手たち、観客たち、そしてベンチの面々もすべてがさくらの能力に疑問符を抱いていた。これ以上みっともない姿を見せるわけには行かないと、さくらは立ち上がる。だがその後に不穏(ふおん)な決意を抱いていることに気づく者はいなかった。


 再開された試合、剣城がドリブルで切れ上がるがサメ顔、マーシャの強力な守備陣に行く手を阻まれる。剣城は森村好葉(CV:悠木碧)を名指ししてヒールでバックパスを送る。弱気ながらも前向きになった好葉がボールに向かうが、先ほど不穏な決意をしたさくらがそこに迫る!



「きゃあああああぁぁっ!!」


 またも勝手な行動をとったさくらと好葉が激突してしまい、ボールはラインを割ってしまう。みすみす好機を逃したも同然のプレーだった。そのプレーをテレビで見ていた大海原中学新体操部のメンバーはまたもさくらの悪癖が出たとばかりに眉をひそめる。



 かつてのさくらの同僚として彼女の性格をよく知る大海原中学新体操部の皆さん。どうでもいいけど、君たちいつ見てもテレビ見てるね。練習してるの?


 そう、さくらのプレーはわざと好葉にぶつかるというものだった。駆けつけた葵からスプレーによるアイシングを受けるさくらは、「大丈夫?」という問いかけにゆっくりと首を振る。足を痛めて試合続行困難ということにしたいらしいが、それに対して理論派の真名部が疑問を呈する。


真名部「おかしいですねぇ? 今の角度からは足を痛めるはずはないのに」


 さらにぶつかられた側の好葉がおずおずと意見しようとするのだが、こちらをものすごい形相で睨みつけてくるさくらの視線に気づいて言い淀(よど)んでしまう。



 そして好葉の口を封じておいて、自らはちゃっかりと悲劇のヒロインに収まろうと画策する策士のさくらちゃん。「策ら」と名乗ったほうが良さそうな気がする。さくらの決意は信じられないほど後ろ向きなものなのだった。怪我をしたとすれば万全なプレーの続行は不可能だし、『怪我さえしなければ活躍出来たはずなのに』という試合後の言い訳も出来るというわけだ。


 さくらは試合中めまいを感じていたことを明かし(ウソだが)、プレーが上手く行かなかったことを詫びる。だが額面(がくめん)通りにさくらの言い分を受け取れば事態は困ったことになる。先ほども触れたが、イナズマジャパンには控え選手がいないのだ。さくらの体調不良と足の負傷を認めたとしても交代の選手がいない。剣城はポジションチェンジを提案し、天馬もそれを受け入れる。

 神童はやはり控え選手を招請(しょうせい)し、ベンチに入れておくべきだったことを訴え、その提案を監督権限で握りつぶした張本人の黒岩を睨む。



 一方、さくらを苦しめる元凶の両親。父(左 CV:奈良徹)と母(右 CV:美名)は娘がろくに活躍もしないまま負傷してしまったこと(ウソだが)を不愉快に思っていた。サッカーなどさせるべきではなかった、と……。負傷した(ウソだが)娘を心配する素振りすら見せない彼らはやはり親としてどこかが壊れている。


 そんな両親を見つめ、さくらは心の中で謝罪する。

 またもあの最悪の日の回想。獲得した銀メダルを飾らない理由として、母はそれを飾ると自分より上の存在がいるとさくら自身が認めてしまうことになると言う。父もその意見に同調し、さくらに優勝以外を求めてはいないことを告げる。輝きを放つことすら許されない銀のメダルは引き出しの奥にしまい込まれてしまう。さくらはその成り行きに何も言えず、ただただ悲しそうに見つめていた。

 母はさくらはもっと出来る子だと諭すように語り、その実力にふさわしい結果を得るべく、さらなる努力を課す。それはさくらにとっては酷な要求だったが、両親の期待に応えることが何よりも大事と考えるさくらは無理に笑ってその要求を応諾(おうだく)するのだった……



 さくらが何かを隠し、苦しんでいるという確信を持っていた天馬は出し抜けに彼女に質問する。


天馬「新体操で演技をしている時、楽しかった?」


 戸惑いながらも「当たり前で、とても楽しかった」と返答するさくら。天馬はその時の気持ちを思い出して欲しいと笑顔で告げる。サッカーを心から楽しんではいないという天馬の言葉はさくらの心に引っかかる。

 まもなく試合が再開されることを神童が語気強く告げてくる。天馬はそれを受け話を切り上げるのだが、最後に一言、さくらに語りかける。


天馬「今できることを精一杯やってみようよ!」




 さくら負傷治療のインジュアリータイム終了に伴い、守備位置を変更するイナズマジャパン。負傷した(ウソだが)さくらをDFに下げ、鉄角を前に回す方針。フォーメーション自体は変わらず。


 天馬は守備位置を変えた鉄角にエールを送って士気を鼓舞する。だがその後ろではさくらが不気味なブラック顔を浮かべて虎視眈々(こしたんたん)と何かを狙っていた。


『何が「サッカーを楽しんでない」、よ……』

 アップも怖いブラックさくらちゃん。天馬にこれだけ説得されてなお性格を変えないところはすごい。普通なら改心してる頃なんだけど、それだけ彼女の心の闇は深いということだろう。あと今回は天馬の説得の仕方が良くなかったかも。両親から強制される新体操をも彼女は本当は愛していなかったに違いない。「サッカーも新体操のように楽しんで欲しい」という天馬の言い方はさくらを嫌悪させるに十分な言い方であった可能性が高い。


 スポーツは結果がすべてであり、そこに楽しむという余地など無いと考えるさくらは天馬の説得に真っ向から反発するつもりでいた。



 試合は天馬がボールを持って上がり、瞬木にパスを送る。それを見たビッグウェイブス監督、ニース・ドルフィン(CV:佐藤健輔)はイナズマジャパンが10人で戦っているも同然だと檄を飛ばし、絶対なる勝利を収めるようメンバーに命じる。

 監督の檄に力強く応じたラルーゼたちは4人がかりで瞬木を取り囲む。またも彼らの得意の必殺タクティクス「サックアウト」を狙っての行動だ。




 そしてまたも「サックアウト」に絡め取られてしまう瞬木。天馬はパスで逃れることも出来たけど、今の瞬木の実力ではこうなってしまうのも仕方ない。


 ラルーゼはここで驚くべき命令を発する。なんとキーパー以外の全選手を攻撃に参加させるというのだ。これは普通は試合終了間際に負けている側のチームが選択する戦法だ。何といっても得点しなければ敗北するという場面では失点を恐れる必要もなく攻撃しなければならないからあり得る戦法なのだが、今のビッグウェイブスは1点リードしている上に試合はまだ後半戦が始まって間もない。何重の理由をもってしてもこの全員攻撃は信じられない戦法なのだった。

 「絶対なる勝利」という監督の命令に忠実に従うように一斉に攻撃を開始するビッグウェイブスイレブン。イナズマジャパンは防戦一方に追い込まれてしまう! 一試合平均7点以上の攻撃力を誇るビッグウェイブスがついにその本性を表したのだろうか!?


 攻撃は最大の防御とはよく言ったのもので、攻められているイナズマジャパンはビッグウェイブスの猛攻を持ちこたえることに精一杯で攻勢に転じることが出来ない。打開を図る神童はもう得意になってしまった感のあるディフェンスでボールをクリアするが、それを拾うのはまたもビッグウェイブスの選手であった。


 苦戦する仲間を尻目にさくらはフォローにも回らず、失点を覚悟する。


さくら『ま、私が輝けない試合だし、仕方ないよね』


 背番号10のエースナンバーを付けた敵選手がシュートを放つ。



 厭世的(えんせいてき)な笑みを浮かべ、すっかり勝負を投げてしまったさくらの態度とは反対に、井吹は勝負を諦めない。必死の形相でそのシュート阻止に向かう。


 井吹は必死のパンチングでゴールマウスからシュートを押し出すことに成功する! セーブ後ゴールポストに激突することも厭(いと)わずに飛びついてゴールを守りきった井吹のそのひたむきなプレーは失点を覚悟していたさくらに強い衝撃を与える(神童もほんの0.1ミリぐらい井吹を見直したご様子)

 ワイルドな笑みを浮かべてゴールポストに直撃した肩の痛みをこらえる井吹の表情が一気に締まる。パンチングで転がったボールを押さえたのは、ビッグウェイブスのもう一人のストライカー、オクタ・パースン(CV:奈良徹)だったからだ。

 キャプテンのラルーゼが今度こそ決めるよう指示を出す。パースンもそこは心得ている。オーストラリア代表に受け継がれてきた必殺シュート「メガロドン」がゴールめがけて襲いかかってくる。獰猛な古代のサメの威容をまとったシュートを前に、井吹はこれが決まると自分たちが為してきた、そしてこれから為すべきことがすべて終わってしまうことを一瞬に理解した。


井吹「終わらせてたまるか!!」


 チームの思いを代弁するように一声吼えた井吹。その言葉の強さに決意の強さをそのまま感じ取ったさくらはまたもハッとなって井吹を見つめる。



 チームの命運をこの瞬間背負った井吹が取るべき行動はこれしかない。必殺キーパー技「ワイルドダンク」の再発動だ!!


 井吹の強い思いが大地を抉(えぐ)る。再度敵の必殺シュートを阻止してみせた井吹の必殺キーパー技「ワイルドダンク」の安定感は抜群だ!(今のところ)


 そしてその信頼感は仲間であるメンバー一同にも共有されていく。『井吹がゴールを守ってくれるから安心だ』……キーパーとして仲間にそう思わせることが出来れば大成する第一条件はクリアだ。まず仲間に認められること、それはかつてイナズマ世界を盛り上げた先人の偉大なキーパーたちが皆そうであったことからも明らかだ。

 そしてそんな井吹の姿は、あたかもさくらが目指していたそれでもあった。さくらは自らのアプローチの誤謬(ごびゅう)に気づいたかもしれない。井吹のようにチームのことを考え、チームのために貢献すること。それがイコール自身のチーム内での存在意義を高め、結果みんなから認められる存在になれるということなのだということに……。


 当の井吹はさくらのことなど考えてはいなかったであろう。だがその愚直なまでの行動が結果的にさくらを目覚めさせる要因になったのかもしれない。唐変木(とうへんぼく)の井吹らしいといえばらしいが。

 必殺技のタイミングをつかみつつあった井吹はボールの感触を確かめ、しばし思いに耽(ふけ)る。だがそんなモタモタした行動を神童は見逃さない。


神童「モタモタするな!!」


 相変わらず井吹には容赦ない神童は、殊勲(しゅくん)の井吹を褒めることすらせずにそのまんまなツッコミで怒鳴りつける。井吹は珍しくその言葉に反発することなく我に返る。

 だがふと見渡すとパスを出す隙がない。全員が前掛かりに攻めてきているビッグウェイブスは攻撃後もイナズマジャパン陣内に多数が存在し、そのまま味方選手個々をマンマークしていたのだ。

 どこを見ても青のジャパンブルーのユニフォームに黄色いワラビーズカラーのユニフォームが絡む中、ただひとりフリーになっている選手がいた。それは敵からも戦力外と見なされていた、さくらであった。

 井吹は迷わずにさくらにボールをフィードする。そして駆け上がる剣城がパスを要求し、さくらはそちらにダイレクトにパスを送る。そのパスはつながり、一転してイナズマジャパンがカウンター攻撃の大チャンスの機会を得る。

 剣城は前方に大きくボールを蹴り出すが、そこは誰も存在しない前線だった。ラルーゼは剣城が凡ミスを犯したと思って鼻で笑うが、どっこい今のイナズマジャパンにはアジアきってのスピードある選手がいた。

 瞬木が驚異の走りを見せて、そのボールに追いついてみせた。この走力は今後のイナズマジャパンの大きな武器となるだろう。ラルーゼは自身の誤算に気づくが、もう遅い。

 走る瞬木は、前に立ちふさがるDF2名を前に、勇躍トリッキーな挙動でボールをコントロールし飛び上がる。


瞬木「俺も負けるか〜っ!!」



 ついに誕生した瞬木の必殺シュート「パルクールアタック」がジュード・ゴードン(CV:不明)の手をかすめ、ゴールに突き刺さる! ちなみにパルクールとはフランス発祥の走ったり跳んだりして街中などを駆け巡る近代的かつスリリングな表現スポーツのこと。英語で言うフリーランニング。




 【参考資料】パルクールの動画。カッコ良いけど危険なスポーツだよね。日々の鍛錬があってこその表現なので、ちびっこは安易に真似しちゃダメだぞ。



 瞬木のシュートでついにイナズマジャパンは同点に追いつく。彼の言った「俺も負けるか」の言葉は先に必殺技を会得した井吹に対しての気持ちの発露だったのだろう。井吹の必殺技が良い形で仲間の思いに刺激を与え、伝播(でんぱ)したという印象だ。

 瞬木自身も驚きの必殺シュートの誕生に、兄貴が絶対の存在である2人の弟も歓喜を持って祝福する。瞬木には一定の評価を与えつつもなおも素人と侮(あなど)る気持ちも依然持っていた神童は、必殺技でゴールを決めた瞬木を驚きをもって迎える。

 瞬木の成長、それは誤算ではあるが、嬉しい誤算には違いない。瞬木の必殺技誕生を我がことのように喜ぶのは、やっぱりいい人の天馬だった。駆けつけた瞬木の胸を拳で叩いて祝福するのは鉄角だ。その手荒い祝福は瞬木の実力を称えるだけでなく、必殺技の獲得で先を越されたというちょっとした嫉妬心もその中には含まれていたのかもしれない。

 九坂隆二(CV:岡林史泰)、真名部、皆帆和人(CV:代永翼)といった普段はちょっと皮肉屋な面々も、瞬木のシュートを手放しで褒める。真名部なんてチーム結成直後は瞬木を財布泥棒扱いしていたくせに、大した変わりようだ(もちろんこれは良い変化)。

 瞬木の活躍でチームの結束は強まり、個々のレベルアップだけに留まらず、チームとしての完成度も上昇している。良いムードなのだが、新たなヒーローの誕生を羨望(せんぼう)と嫉妬の混じった瞳で見ている選手が一人だけいた。言うまでもない、誰よりもこの試合での活躍を渇望(かつぼう)するさくらだった。

 
 さくらはこの試合で輝いた井吹の心の叫びを思い返していた。さくらが諦めた場面でも井吹は諦めなかった。井吹がさくらと同じメンタルだったら、瞬木の同点ゴールも生まれずにあそこでイナズマジャパンは敗北が確定していただろう。諦めたら、ゲームはそこで終わるのだ(ヒゲの太っちょ監督の名言)。



『何もかも……終わる……か』


 井吹は伝説のバスケ漫画SLAM DUNK」の読者だったに違いない。



 そんなさくらに天馬が駆け寄り、語りかけてくる。先ほどのプレーで剣城に良いパスを出したさくらのアシストを褒める天馬の言葉にさくらは驚く。自分は何も活躍してはいないと思い込んでいるさくらにとって、単なる途中のパスを褒められるとは思ってもみなかったのだ。

 だが天馬はそのパスがあったからこそ、最終的に瞬木のシュートにつながったことを強調し、さくらにもこのチームプレーの結実を共に喜んで欲しいと熱く語る。



天馬「さくらとみんなで取った得点なんだから!」


 さくらは天馬に言われ、改めて瞬木とそれを称えるチームメイトを見る。普通なら今度こそ天馬の深イイ話に改心するのだけど、彼女は改心したかと思いきや……


さくら『私だってまだまだ良いとこ見せなきゃ!』

 ……とあくまでもギラギラとした野心を覗かせ、自身が主役になろうという気持ちは変わらない。天馬のチームワークの話を聞いて、未だにこういう考えに至るところは前作のラスボス並みに聞き分けがないぞ、この娘。


 さくらは猫なで声で、足の怪我が良くなったと白々しい言葉を告げ、前線への復帰をアピールする。足の怪我は最初からウソなのだから、さくらが元気なのは間違いない。ただ今のタイミングで言い出すところに彼女が一筋縄ではいかない性格が表れているような気がする。



 そして試合はビッグウェイブスのキックオフで再開される。2−2と振り出しに戻った試合展開、残り時間を考えると次の1点が決勝点となりそうだ。

 パースンの持つボールに鉄角がスライディングタックルで挑みかかる。気合いを込めてのそのプレーは井吹や瞬木の活躍に触発されたのだろう。彼らの行為がチーム全体の士気を上げていた。残念ながら鉄角のアタックはかわされてしまうが、そのプレーを瞬木が褒めて鼓舞する。鉄角は意外な人物からの声援にやや戸惑いつつも嬉しそうに笑顔を返す。

 そしてチームを包む良い雰囲気は、仲間を励ますその行為まで伝播する。真名部の防御もはねのけられてしまうのだが、次は行けると声援を送るのは先ほどは瞬木に応援された鉄角だった。



 鉄角の声援を受け、まんざらでもなさそうにメガネに触れる真名部くん。


 声を掛け合うことでチーム内の融和が図られ、とりもなおさずイナズマジャパンは本当の意味でのチームになろうとしていた。もう一人のマネージャーである水川みのり(CV:高垣彩陽)はその変化を黒岩に報告する。


黒岩「些細なことだが大きな変化だな……」


 チームに対して滅多に吐かない肯定的な意見を吐いた黒岩を、船木は意外な表情で見る。明日は雨が降るかもしれない、と(ウソ)。



 その変化のせいだろう、流れがイナズマジャパンの方に向いて来た。敵のパスを剣城がカットする。剣城はすかさずさくらにパスを送る。活躍しようと心に期していたとしても、いざそのタイミングが来ると誰しも戸惑うものである。さくらは一瞬の逡巡(しゅんじゅん)を見せた後、観客席の両親のいる方向を見つめる。

 誰よりも自分を認めて欲しい両親の視線を感じ、さくらは気持ちを吹っ切る。


さくら「やっぱり一番にならなきゃ!!」


 さくらのその叫びを聞いて天馬はその言葉の意味を探る。「さっきまでの俺の話を聞いていなかったのかなぁ?」という気分だったかもしれない。ビッグウェイブスは勝負どころで能力を十全に発揮すべく、一度は戦力外と判断していたさくらに対して必殺タクティクス「サックアウト」の牙を差し向ける。



 さくらはこれまで破られたことのない最強の必殺タクティクスに周りを取り囲まれてしまう。さくらは渦に巻き込まれながら、諦めずにこの技を破る方法を模索する。

 そして考えが結論に至ったさくらは、渦の中から神童に向けて必殺タクティクス「神のタクト」を要求する。神童はこれまで複数回に渡って「サックアウト」に敗れて来た「神のタクト」が通用するはずがないとその意見に否定的見解を示すが、さくらには考えがあった。


さくら「前よりも高く! 絶対に越えてみせます!」


 その言葉に秘められたさくらの決意を感じた天馬は、神童に「神のタクト」発動を要請する。何度も自分の技が破られるのはプライドの高い神童にとっては出来れば避けたい屈辱であったろう。だが座してさくらとマイボールを見捨てる訳にはいかない。ここに至って神童も腹を決める。これまでよりも高い軌道で「神のタクト」を紡ぎ出す。

 さくらは渦の中からその軌跡に向けて跳び上がる。行ける! ……と思われたその時、「サックアウト」の大波がビッグウェイブスのその名の通り、一段と大きな波となってさくらを飲み込んでしまう!



 さくらの脱出劇は失敗に終わる! 恐るべし「サックアウト」


 天馬はさくらを気遣いながらも、マーシャのボールをラインに押し出して敵の攻勢を阻止する。プレーが途切れ、フィールドには一瞬の小休止が訪れる。さくらはまたも膝を付いて苦しそうに肩で息をする。怪我こそしていないものの、さくらの体力は著しく失われていることに変わりはなかった。

 ましてや彼女にはもっとも厳しい視線を向ける両親という存在もあるのだ。大きなプレッシャーであろう、自らの試みが失敗に終わったという精神的な疲労も大きい。

 落ち込むさくらを神童が厳しく叱責する。さくらは神童の指示した高さより高く跳ぼうとして結果、失敗したことがここで明らかとなる。これも神童を踏み台にして自分が目立ちたい、自分の力で打開したいというさくらの独善的な行為が招いたものだ。さくらは神童に返す言葉もなく瞳を潤(うる)ませる。


天馬「惜しかったね!」


 しかし天馬はそんなさくらを救うべく、明るい口調でさくらのプレーを肯定的に言及する。さくらは褒められる意味が分からない。さくらにとっては失敗した自分に厳しい言葉を投げかける神童の言葉こそしっくり来るものだった。

 だが天馬は頭を掻いて、失敗は自分にもあることだと笑う。


天馬「失敗するから成功した時が嬉しいんじゃないか!」


 その言葉はさくらにとって福音とも呼べる、発想のパラダイムシフトだった。天馬の言葉は成功しか許されない思考に囚われていたさくらの心に一筋の光明を与える。彼はキャプテンとして失敗したさくらを激励するために言っているのだが、実はさくらの人生観すら変えてしまうほどの一言だったに違いない。

 さくらを導く天馬のキャプテンシーを見て、神童はこの後輩にキャプテンの座を譲ったことが間違いでなかったことを確信して笑う。



神童「ふっ……天馬らしいな(´<_` )」  残り時間がわずかとなる中、試合はビッグウェイブスのスローインで再開する。このタイミングでの残り時間の減少は攻めているビッグウェイブスが圧倒的に優位と言えるだろう。  投入されたスローインを瞬木が抜群の瞬発力で飛びついてインターセプトする。そして間髪入れずにさくらにパス。それを見たラルーゼはまたも必殺タクティクス「サックアウト」を指示する。お前ら何回必殺タクティクス出せるんだよ? TTPポイント無限か?

 さくらを中心にまたも渦が巻き起こる。先ほどの再現をさせてはならない!

 さくらは再度、神童に「神のタクト」を要求する。神童が考える前に天馬が「さくらなら今度こそ大丈夫」とGOサインを出す。神童はさくらよりむしろ天馬のその言葉を信じて、今度は「神のタクトFI(ファイアイリュージョン)」の軌跡を描く。




「失敗を、恐れない!!」


 今度こそと炎の軌跡に向けて飛び上がるさくら。ベンチで見守る葵も、そしてフィールドのメンバーも一丸となってさくらの成功を祈る。さくらは空中でボールを足に挟み、回転しつつ見事に「神のタクト」の流れに乗ることに成功する!!



 無敵にも思えた「サックアウト」を初めて破ったのは、「神のタクトFI」の加護を得たさくらであった!



 さくらの両親もこの試合が始まって以来一番のええ顔でさくらの大活躍を見ていた。興奮した面持ちで娘に声援を送る両親の姿は、ようやく我が子を思う親のスタンダードの姿を見せていた。特にいつも仏頂面(ぶっちょうづら)だったおかん、こんな素敵な顔で笑うことが出来たんだ。


 さくらはその勢いで一気に敵ゴール前まで走る。シュートにまで持ち込めるか!? だがその前に背番号3番の屈強なイメージの大型の選手が立ちふさがる。周囲を見渡しても仲間の誰もが敵選手のマークを受けており、パスを送る先がなかなか見つからない。しかしさくらの広い視野はフリーで駆け上がる真名部の姿を認める。

 サッカーというチームプレーを説く天馬の言葉がさくらの脳内でリフレインされる。さくらのパスから始まった攻勢が2得点目につながったと語る天馬の言葉は、今のこの状況にもきっと当てはまる。さくらはそう確信して真名部に向けてパスを送る。

 真名部はいつもの人差し指と親指を組み合わせたアングルでボールを受け、シュートに向かう。待ち受けるゴードンも雄叫びを上げてどんなシュートが来ても止める気マンマンの様相だ。

 だがここでシュートする選手が一流のサッカー選手ならあり得ないことが起こる。どうひいきめに見ても一流ではない真名部の肝心のシュートがまだドリブルの過程中に中途半端な強さで前に飛んでしまったのだ!!



 シュートする側も待ち受ける側も、この予想外の出来事に意表を突かれた表情。そしてたたらを踏むようにタイミングを外されたゴードンの横をあざ笑うかのようにふわっと浮いたボールがゴールに静かに吸い込まれていく……。


 き、驚異のダサダサシュートが決まってしまったぁ!! だがしかし、どんなゴールでもゴールはゴールだ。これで3−2とイナズマジャパンが再逆転に成功する。

 唖然とする真名部は天馬から過分なまでの褒め言葉を受け、これが計算づくであったと罪のないウソをつく。そして天馬はラストパスを送ったさくらに対してもナイスプレーだったと声を掛けることを忘れない。

 さくらは戸惑いつつもその祝福を今度こそ嬉しそうに受ける。


 しかし青春する娘の気持ちなどどこへやら、観客席のさくらの父はさくらがシュートを決めなかったことに不満の様子だった。観客席を見つめるさくらに対し、剣城は誰か知り合いがいるのかと問いかける。さくらは両親が見ていたことを明かし、その両親がこの試合でのさくらのパフォーマンスを喜んでくれていないことを悲しそうな笑みを浮かべて語る。

 自分のプレーを卑下するさくらに、剣城はそんなことはないと言う。瞬木の2点目も真名部の3点目のラッキーゴールも、さくらのパスがなければ成り立たないプレーだったのだ。そう言われてさくらはまた嬉しそうな表情を見せた。

 そして剣城は今は理解してくれない両親も、サッカーを見る目が肥えてくればさくらのプレーの大事さを分かってくれるはずだと慰める。それにはさくらがサッカーを楽しむことが大事だと念を押す剣城の言葉に、さくらは満面の笑みでうなづく。



 さくらの気力も復活し、これでチームの穴は無くなった。リードを奪って有利な戦いを展開するという要素もあり、イナズマジャパンは見違えるような動きでビッグウェイブスの反撃を許さない。



 天馬や剣城の言葉に勇気をもらい、水を得た魚のように躍動するさくら。いや、この絵ヅラだと得ているのは水ではなく炎なんだけど。なんかサトシに操られる炎系ポケモン発動の図に見えないこともない。とにかく今の彼女はあらゆるくびきから解き放たれ、サッカーを心から楽しんでいるはずだ。


 さくらの生き生きとした姿は、彼女を心配していた天馬にも安心を与える。さくらの父はこの試合を見る価値もないと唾棄(だき)するが、さくらの母は娘に起こったある変化に気づく。さくらの屈託(くったく)のない笑顔がこれまで一度も見せたことが無いものであることを。



 そして試合終了のホイッスルが鳴る。試合はそのまま3−2でイナズマジャパンの勝利で終わることになった。敗れたビッグウェイブスのメンバーはその場で抱き合ったりフィールドに膝をついたりと悔しさを表していた。



 そんな中でイケメンキャプテンのラルーゼも悔しがるのだが、その身体には異変の兆(きざ)しが見えていた。腕の血管が異様に盛り上がり、明らかに通常ではない。やはり彼も韓国チームのようにこの後、溶けて消えてしまうのだろうか? そして彼らが負けられないと語っていた理由もこのことと関係あるのだろうか?



 対照的に勝利に沸くイナズマジャパンのメンバーたちの図。井吹と剣城、さくらと鉄角などそれぞれの関係性が表れていて面白い。中でも見どころはまぐれゴールのくせに大イバリの真名部くんの表情。名探偵の皆帆は彼がウソをついていることを見抜くべき。


 韓国に続いてオーストラリアをも撃破したのだ。奇跡は二度は続かない。神童は2回戦までも勝ち上がったこのチームが本当にすごい能力を秘めたチームであることを感じ始めていた。そしてこのチームを編成した張本人の黒岩に目を向ける。

 同じく黒岩に反感を抱く船木も、こうして結果を出し続ける黒岩の監督としての能力にケチを付けるわけにも行かない。そんな彼らの気持ちを知ってか知らずか、黒岩は相変わらず黙して語らずの態度のまま、ベンチを後にする。ある種、他の追随を許さないその後ろ姿に続くのは、彼の秘書然とした立場を貫くみのりだけであった。


 試合を終えて鉄角とにこやかに会話するさくらを見つめながら、天馬は試合中に彼女が叫んだ言葉の意味を反芻(はんすう)する。「一番になること」へのこだわりがあまりにも強いさくらの態度にはやはり違和感を抱かざるを得ない。

 天馬は意を決して「一人で一番になろうとせず、みんなで一番になれば良いのではないか」と語りかける。個人種目である新体操を続けて来たさくらにとって、その発想は思いもよらないものであった。

 だがさくらはその気持ちを表に出さず、天馬の意見は当たり前だと笑って答える。天馬はそれを聞いてようやく安堵の表情を見せる。神童に呼ばれてその場を去った天馬を見送り、さくらは試合結果を表すスコアボードを見返す。後半の部分には、自らが協力して獲得した2得点が燦然(さんぜん)と輝いていた!

 得点を挙げたのは瞬木であり真名部であったが、いずれの場合もさくらがプレーに参加しなければ奪うことが出来なかった得点である。


「みんなで一番、か……」


 さくらはまた天馬に言われた言葉を思い返す。サッカーという集団競技に対しての面白さに目覚め始めたさくらは、みんなで目的に向けて頑張るということが思っていたよりも心地よいことに気がつく。



「ま、それもありかな!」



 試合後のスタジアムの一室では、例によってポトムリ(CV:三木眞一郎)が黒岩に向けて語りかけていた。ポトムリは黒岩のチームが徐々にその真の力を発揮し始めていることを称える。だがイナズマジャパンが今後戦う相手はこんなものではないと釘を刺すかのようにポトムリは続ける。ポトムリはどうして今後の予定を知っているのだろうか?

 この戦い方では今後の敵にとってはウォーミングアップにもならないと言うポトムリに、黒岩はイナズマジャパンの側も今のところはウォーミングアップなのだと返答する。彼らはまだ真の力を十全に出しているわけではないと嘯(うそぶ)く。



 久々登場のポトムリ。彼が黒岩と相対している時、いつも傍にいるはずのみのりの姿が見えない。このことからポトムリ=みのり説があるらしいけど、美少女の正体がこんなへちゃむくれだとしたら酷すぎる。


 ポトムリは黒岩の言葉を根拠のない自信と切り捨てるのだが、黒岩にとってはその言葉はむしろ褒め言葉に受け取ったようだ。暗闇の中に黒岩の白い歯が浮かぶ。



 次回に続く。



  エンディング




 今回は早く感想を上げると誓いつつ、またも次の話が放映された後の更新で本当に申し訳ありません。次回こそはもっと早く完成にこぎつけたいと思っています。ちなみにこれを書いている現在、次の話をまだ見ていません。ネタバレしないよう要請するもの申し訳なく思いますが、よろしくお願いします。



 今回はビッグウェイブス戦終了までの展開だったのだけど、敵の選手たちはほとんど目立たず、味方チーム内の葛藤が主に描かれている内容だった。「チームの中の敵」というサブタイトルは今回の方がふさわしかった気もする。さくらが好葉ちゃんをいじめるシーンとかね。


 承認欲求という言葉がある。誰かに自分のことを認めてもらいたいという欲求で、これは社会生活を営む人間なら誰もが持っている欲求である。さくらは両親のせいも大いにあると思うのだけど、承認欲求が異様に強い少女だということが前回と今回を見れば伝わってくる。

 今回の話でさくらと両親の間の齟齬(そご)が解消したわけではないが、母親の方はさくらにサッカーが必要なものであるということが伝わったのではないかと思える。サッカーを楽しむという感覚をさくら自身が持ち始めたという点も大きい。それをもって両親というくびきからは一旦解き放たれたという印象を受ける。

 近いうちにさくらも必殺技を会得して真の仲間になる時が来ると思われる。少なくとも今回のエピソードでのデレは無しということで。新体操とサッカーの選択という話もいつか見られるのだろうか? 鉄角と違って彼女は怪我で前のスポーツを諦めたわけでは無いから。



 あとビッグウェイブスのメンバーがこの後どうなるかがまったく描かれなかったけど、やはり溶けちゃったのかなぁ? 試合後のラルーゼの様子は只事では無かったし。この辺は何とも言えない。また韓国、オーストラリアとアジアの強豪国を破ったわけで、次の対戦相手が気になるところでもある。次回を見れば判明しているかもしれない話なので、この辺の文章は変更や削除もあるかも。



 さて次回は特訓パートになりそうだが、今度は九坂が主役を張る回になるようだ。これまで豹変した時のラフプレー以外ではあまり目立って来なかった彼の秘密が色々と描かれるのだろう。謎多きキャラなのでベタに楽しみである。情報だと九坂は3年生という話なんだけど、天馬は彼をずっと呼び捨てで行く方針なんだろうか? 真名部や皆帆も2年生ということで、天馬や剣城からすると先輩なんだけど、モロ呼び捨て&タメ口だったりするんだよね。



  次回「九坂の二つの顔」に続く。



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