『イナズマイレブンGOギャラクシー』第16話「信頼し結束する力!」の感想 【井吹と神童の和解回】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第16話「信頼し結束する力!」を観ての感想を書く。アジア予選最終戦で苦戦するチーム事情、その意外な処方箋(しょほうせん)はチームプレーをするチームには本来必須なものであった。いがみ合うキーパーと司令塔との間にわだかまっている思いの解消がその重要な鍵となる。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第15話「激闘!世界への挑戦!!」の感想 【アジア予選決勝戦スタート!】
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 少年サッカー世界大会「フットボールフロンティアインターナショナル(通称FFIV2)」アジア予選において松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【イナズマジャパン】は決勝戦でまったくノーマークだったダークホース、ウズベキスタン代表【ストームウルフ】と激突する。

 ある意味大会前は両チームともにここまで来るとは思われていなかったチーム同士の対決なのだが、やはりストームウルフは強敵だった。試合開始のホイッスルが鳴るやいなや攻勢をかけ、マクシム・アドロフ(CV:不明)の必殺シュート「ゴールドフィーバー」であっという間に先制ゴールを奪ってしまう。

 試合開始前は「1点もやらん!」と豪語していたキーパーの井吹宗正(CV:鈴木達央)は茫然自失。必死の特訓を積み重ね、自信をもって臨んだ九坂隆二(CV:岡林史泰)や皆帆和人(CV:代永翼)、真名部陣一郎(CV:野島裕史)といった選手たちもその自信を散々に打ち砕かれて意気消沈する。

 真名部は攻勢に入ってからわずか3.2秒でシュートまで持ち込んだストームウルフのスピードを驚嘆(きょうたん)の思いを込めて語る。


 だがブラックルームであれだけの特訓を積んできた思いを抱く彼らはこの展開にも目は死んでいなかった。鉄角真(CV:泰勇気)が拳を握れば、野咲さくら(CV:遠藤綾)は失点をすぐに取り戻すと井吹に慰めの言葉をかける。



 だがその仲間の言葉は孤高の男、井吹にとっては耐え難い屈辱であった。ゴールポストを拳で激しく叩く音が響き、井吹の怒りの大きさを知ったさくらたちは思わず言葉を飲む。


 自らの必殺技「ワイルドダンク」を打ち破られての失点だ。その心理的ダメージは大きかっただろう。そんな井吹の後ろ姿を、思惑ありげな表情で神童拓人(CV:斎賀みつき)がじっと見つめていた。


「やっぱアイツさえ抑えればキーパーはザル♪」

 一方、その神童を見ながらそう語るのはストームウルフの司令塔のルスラン・カシモフ(左 CV:斎藤壮馬)。公式も容赦なくキーパーのことをザル扱いし始めたな。だがキャプテンのドミトリー・ソビロフ(CV:佐藤健輔)は油断は禁物だとルスランの楽観論を嗜(たしな)める。中の人があの伝説のカリフラザルキーパー、三国太一(CV:佐藤健輔)と同じ人だからちょっと気を使ったのかもしれない。


 失点はしたものの、井吹は今度こその思いを胸にゴール前の定位置につく。そして靴紐(くつひも)の緩(ゆる)みを直していた神童も当然のごとく、ゴール前ペナルティエリア内に陣取る。



   オープニング




 失点して気落ちするメンバーの士気を高めるのはキャプテンの仕事だ。檄を飛ばし、仲間の気持ちを再び盛り立てる天馬とそれに呼応するメンバーたち。イナズマジャパンとしては早いうちに同点に追いつきたいところであろう。


 もちろん迎え撃つストームウルフの面々もそうはさせじと気合いを入れて待ち受ける。


 試合は失点を喫したイナズマジャパンのキックオフで再開される。剣城京介(CV:大原崇)から瞬木隼人(CV:石川界人)にボールが渡るのは試合開始直後と同じ展開だ。だがこの後まで同じ展開にするわけにはいかない。

 天馬がパスを要求しそれをノートラップでさくらに送る。敵のスピードに対抗するにはこちらもスピードだとばかりに素早いパスで攻めに転じるイナズマジャパン。

 だがそれを黙って見逃すストームウルフではなかった。ルスランの指示のもと、背番号6番の美少年、ロラン・ラザレフ(CV:不明)がさくらに向かう。

 だがさくらはバランスの取れたドリブルでロランをかわし、前進を続ける。そのプレーには天馬や鉄角はおろか、ベンチで見つめるマネージャーの空野葵(CV:北原沙弥香)までが喜ぶ。


葵「いいよさくらちゃん、その調子!!」


 自信満々にドリブルを続けるさくら。その自信はブラックルームで血の出るような思いをして繰り返された鉄骨落下の特訓を乗り越えてきたという思いが支えていた。落ちてくる大量の鉄骨をかわし続けてきたさくらにとって、一人のデイフェンスなどかわして当然という思いがあった。

 そしてさらに彼女を強くしたもの、それは決勝前に戦ったレジスタンスジャパンに完敗した記憶であった。その時の屈辱を雪(すす)ぐために頑張ってきた彼女にとって、どんな相手であろうと負ける気がしないのだった。


 一気にゴール前まで持ち込んださくらに、背番号2番の年齢詐称疑惑のヒゲ男、セルゲイ・チェルノフ(CV:不明)と背番号3番の美男子、ミーチャ・エレミン(CV:不明)の2人が必殺技で迎え撃つ。



 2人がかりの必殺技「ローリングカッター」でさくらを吹き飛ばす。いくら身体能力が高くとも、必殺技には敵(かな)わない。さくらにはこの技を上回るドリブル技が求められる。


 激しく吹き飛ばされ、悲鳴を上げるさくらからボールを奪う。ミーチャはその長髪をかきあげてさくらを見下し、司令塔のルスランにボールを送る。

 ルスランはロランに指示を出し、的確にそこにパスを出す。サッカーの試合というものは司令塔がどれだけ十全に活躍できるかでその優劣もかなりの精度で出てしまう競技だ。ルスランは現在このフィールド上でもっともボールに触れる機会が多い。つまりルスランが目立つ展開になればそれだけストームウルフが優位に試合を進めているいというバロメーターとなるわけだ。

 ロランの攻勢を阻止しに動くのは真名部だ。彼は空間にアインシュタイン相対性理論を描く。惜しげも無く必殺技「ディフェンス方程式」を駆使してボールを奪い返す。



 お互いにディフェンスが良いところを見せ、試合展開は一進一退の好試合となる。さすがは決勝戦まで残ってきた両チーム、アジアのナンバーワンを決めるにふさわしい試合展開だ。

 シニカルさと達観さでは本作中1番のマネージャー、水川みのり(CV:高垣彩陽)でさえ認めるイナズマジャパンの特訓の成果がここでは活かされている。



 敵の能力分析にかけては天下一品の皆帆は必殺技を使うことなくボールを奪取してしまう。皆帆の人間観察力と事前のデータ分析の勝利だ。


 失点後のイナズマジャパンのチームの結束力にはストームウルフキャプテンのドミトリーも舌を巻く。ただ慎重なドミトリーと違い、ルスランはイナズマジャパンの思った以上の健闘ぶりを面白そうに感じていた。


ルスラン「……とは言っても俺たちとは比べ物にならないけどねぇ」


 その言葉に同意するのかそれとも反駁(はんばく)するのか、ドミトリーは目を細めるのみだった。


 一方のイナズマジャパンを率いる天馬にも、この試合に感じる違和感がその思いを暗くしていた。その違和感とは、果たして何なのだろうか……?



 試合は瞬木がドリブルで攻め上がる。司令塔のルスランはさくらを阻止したセルゲイとミーチャの両名に先ほどの再現を指示する。それを察した天馬が左からパスを要求する。だがなぜか瞬木はそれを無視してギアをトップに入れて先へ進んでしまう。



 そしてやはり必殺技「ローリングカッター」ではじき飛ばされる瞬木。


 瞬木の弟の雄太(CV:小林ゆう)と瞬(CV:戸松遥)が心配する中、ルスランはミーチャに矢継ぎ早に次の指示を出す。前線のエースストライカー、ドミトリーへのパスである。ロングパス一本で、一気に自陣ゴール前のドミトリーにパスが渡る。チャンスが一転してピンチへ。これは天馬の指示を無視した瞬木の責任ではある。

 エースがボールを持った瞬間、神童はこれはまずいと詰め寄る。だがまたもその前にザウル・メレフ(CV:泰勇気)が立ちふさがり、ドミトリーのその後の行動が神童に見えないように計らう。

 ドミトリーは先制した時と同様にラストパスをマキシムに送る。フリーのマキシムを、今度こそ止めると井吹は意気込んで待ち受ける。

 マキシムは足でボールを挟んで飛び上がる。これは彼の必殺シュート「ゴールドフィーバー」を再度放つという意思表示だ! 井吹も「ワイルドダンク」で迎え撃つのだが、これが悲しいほどに最初の失点の状況をなぞるかのように突き破られてしまう。


 ゴール!! 再現フィルムを見ているかのような失点で、これで0−2とワンプレーでは追いつけない点差をつけられてしまう。


 今度は地表を叩いて悔しがる井吹を、ルスランは笑って見下す。井吹をザルと表現した通りの展開に蔑(さげす)みの意思を持っていることは明らかだ。


ルスラン「当然だろ? 実力が違うんだから〜」


 その言葉に怒りを抱いた井吹は地表につけたままの拳を強く握り締め、自問する。あれだけの特訓を繰り返しながら、なぜ止めることが出来ないのか、と。



 ベンチではコーチの船木宏正(CV:金野潤)が例によってこの展開を嘆(なげ)くが、監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)も例によってシカトで返す。

 ただ現実問題、キーパーが敵のシュートに対して無防備であれば、この試合は勝てない。井吹が前回に神童が意図した言葉の意味を理解できなければこの試合は負けるであろう。


天馬「まずは1点、取り返していくぞ!!」


 天馬は再度、仲間の奮起を鼓舞するために声を張り上げる。



 試合は三度(みたび)、イナズマジャパンボールのキックオフで再開されることとなる。観客席の瞬はイナズマジャパンが、さらに言えば兄が負けてしまうことを心配するが、雄太はそれを力強い口調で否定する。

 鉄角は心の中で井吹に悪いと思いつつ、彼に対する期待をここで捨てることを決意する。シュートされるよりも前の段階で敵の攻撃を阻止すること、それがDFである自身の役目であることを鉄角は強く意識する。


鉄角「ストームウルフの攻撃は、この俺が食い止める!」


 方や皆帆と真名部の頭脳コンビは、この苦戦する状況に対処できるのは自分たちだという思いを抱いていた。彼らもDFとして井吹に頼らずにゴールを守るという使命感に燃えていた。


真名部「次の1点を入れられたら、どんな公式に当てはめても答えは一つ……僕たちの負けです!」


 攻撃に優れるMF陣であるさくらと九坂が得点を挙げることを心に期す。2点のビハインドが、逆にそれぞれの役割を強く意識させる効果をもたらす。ただその気持ちが空回りしなければ良いのだが……。



 そして試合再開。またも一人で進んでいく瞬木に、今度はさくらと九坂が同時にパスを要求する。瞬木はどちらに出せば良いのかを逡巡(しゅんじゅん)してしまう。その隙をドミトリーが突く。



 またも再開して5秒と経たずにボールのコントロールはストームウルフのものへ。さくらと九坂の前向きな気持ちが逆効果となってしまう。事前にどちらかが主軸になることを決めていれば避けられたのだが、明らかに初歩的な意思疎通を欠いたミスだ。

 ルスランはその稚拙(ちせつ)なプレーに呆れたように失笑する。そしてロランに上がるよう命じる。その先にはドミトリーが待ち受け、それはまさにストームウルフの攻撃パターンである。

 ロランに詰め寄せるのは鉄角だ。だがロランは無理をしない。併走するマキシムにパスを送る。ここまで2得点のマキシムがボールを持ち、イナズマジャパンに緊張が走る。

 その阻止に張り切るのは真名部だった。皆帆との連携でマキシムを止めることを策する真名部は、その後のマキシムの行動を数学的に予測してその通りに行動するよう皆帆に求める。

 だが皆帆はその意見に真っ向反論する。敵の動向から真名部の指示とは逆に、自分が主体的に行動し、真名部がフォローに回るよう言い返す。

 つまりどちらも自分の考えのみで行動したのだ。お互いがフォローしなければならない隙間を、まさにマキシムに突かれてしまう。まったく邪魔を受けずにゴール前まで駆け込んできたマキシムはそのヒゲ面を歓喜に歪(ゆが)めて3点目のゴールを狙う。



 そのピンチを救ったのは神童だった。案の定、その思いが空回りした他のDF陣をフォローするかのような冷静沈着な態度はさすが大黒柱を思わせる。多分、この段階でマキシムに「ゴールドフィーバー」を撃たれていたら井吹は為す術(すべ)が無かっただろう。


 大きなピンチは凌いだものの、噛み合わない攻守の課題はそのまま残され、ここからはストームウルフの時間となる。イナズマジャパンは防戦一方の状況に追い込まれていく。リードを許しているだけに、この展開はまずい。

 みんなの動きがおかしいことに天馬も気付く。ベンチでも船木が善後策をしきりに問うのだが、黒岩はやはりシカトして動こうとはしない。


 攻勢をかけるストームウルフ、攻め上がるロランにゴール前まで戻ったさくらが立ちはだかる。ロランはここで必殺ドリブル技「シルクロード」を披露する。



 東西貿易の十字路だったウズベキスタン。その大地にふさわしい名の必殺技「シルクロード」だ。砂漠に沈む夕陽の眩(まばゆ)さで相手選手を幻惑するという美少年のロランらしい鮮やかな必殺技。


 必殺技を持たないさくらはまったく対応することも出来ずに抜き去られてしまう。ロランはゴール前に向かう。特訓の時の成果が出せずボールを止められないことに悩む井吹は苦悶したまま、またも敵のシュートに晒(さら)されてしまうのか!?



 それを救うのは、今度は九坂であった。彼はサッカー未経験の初登場時から、なぜかスライディングが上手い。彼の得意技のケンカにこんな技術があったのかな? それにしてもロランカッコ良い。溶けちゃうとしたら残念なキャラ。


 本来はMFであるさくらの、そして九坂の必死の防御を見て、井吹と天馬は彼らがなぜ動きがおかしくなったのかを理解する。彼らは井吹のカバーをするためにいつも以上に力を出そうとしていたのだ(そして空回りしていた)。

 素人だったころには見られない、なまじ他者を気づかうだけの力が付いてしまったがためのチーム内のちぐはぐさに剣城は事態の皮肉さを感じる。どうするべきなのかを剣城に問われ、天馬は思慮に沈む。


 一方、自分が他の選手たちのお荷物になってしまっていることに気付いて呆然とする井吹を、神童が見つめていた。彼は井吹の傍(そば)には常に自身がいること、そして井吹の指示通りに動く存在であることを心の中で訴える。



 そう、彼は井吹から指示があればそれに従うつもりで、これまでずっとゴール前に詰めていた。守りの選手を指揮し、自分自身がゴールを守りやすくするというのはキーパーの大事な仕事でありスキルだ。ただしそれを神童から教わっても井吹の性格的に受け入れようとはしないだろう。あくまで自力で気づいてもらうため、神童はずっとその瞬間を待っている。


神童『お前自身が気付かない限り、本当のプレーは出来ないぞ!』



 試合はロランからボールを奪った九坂がそのまま持ち上がっていた。セルゲイが立ちはだかる中、九坂は天馬のパスの指示も聞かずに突進する。だがこれではストームウルフ側の思う壺だ。これまでさくら、瞬木を粉砕した必殺の「ローリングカッター」が九坂を切り裂く。



 こぼれたボールに食らいつき、何とかサイドライン外に押し出した天馬の機転でカウンター攻撃を喫することは避けられた。


 井吹は仲間の指示を聞き入れずに猪突猛進(ちょとつもうしん)した九坂のプレーを見て、かつての自身を思い出していた……



 屋根のある体育館内、バスケットシューズが床と擦(こす)れ合って悲鳴を上げる競技の中心に井吹の姿はあった。月山国光中のバスケ部のユニフォームに身を包んだ井吹は一心に敵ゴールを目指す。仲間からパスの指示を受けた井吹だったが、俺が俺がと逸(はや)る井吹はそれを受け入れない。

 だが一直線に進む猪武者(いのししむしゃ)は予測が容易だ。敵選手2名にドリブルを阻止され、むざむざとボールを奪われ、せっかくのチャンスをふいにしてしまう……


 その回想に、前回神童から問われた謎掛けの言葉が脳裏に蘇る。


神童『井吹、お前にとっての良いプレーとはその手でボールを取ることなのか?』



 井吹はその言葉に含意(がんい)された真の意味をようやく理解した。そして見つめる神童の背中……それは今の井吹にとって何よりもデカく偉大なものに見えたはずだ!!



 CMをまたいで、ここから伊吹の苦い回想シーンが続く。月山国光中に入学してバスケを始めた井吹には、その素質があるということにすぐに気付く。防御も攻撃も思いのままのプレーが出来た彼が自分は天才だと自惚(うぬぼ)れたのも無理はない。



 実際に彼の活躍で月山国光中はあらゆる大会で優勝する。しかし井吹のワンマンぶりをチームメイトが面白くないという表情で見ているのが印象的だ。


 事実、チームは井吹の慢心(まんしん)から崩壊に向かうこととなる。放課後の帰宅時にチームメイトに談判された井吹は、ボールを回せというチームメイトからの不満を突っぱねる。誰にも頼らず自分ひとりの力でやるという井吹の思想はおおよそチームプレーを基(もと)にするあらゆるスポーツで同様の衝突をもたらすであろう。

 そして井吹は、言ってはならない言葉を口にする。



井吹「お前ら、誰のおかげで勝てると思ってるんだ?」


 自分についてくるのが残された凡人の役目だと嘲(あざけ)る井吹の放った言葉により、以後月山国光中バスケ部はこれまでの快進撃が嘘のように勝てなくなってしまう。

 しかし井吹はそれが自身の態度のせいだとは思わない。彼らのような凡人と一緒にバスケをやってはいられないと考えた井吹は、有名海外チームへの留学を果たすために黒岩監督の要請を受け入れ、サッカー日本代表入りを果たすのだった。



 しかし今、翻(ひるがえ)ってみて井吹は自身の考えが間違いであったことに気付いた。月山国光中バスケ部で慢心していたのと同じ態度でサッカーに臨んでいたこれまでの自らの瑕疵(かし)を痛いほどに思い知った井吹は、今さらながらその慢心を悔やむ。



 試合は天馬が押し出したボールをストームウルフがスローインするところから再開される。ロランからセルゲイ、そしてまたも司令塔のルスランにボールが渡る……かに見えた。一連の決まりごとのような流れの一瞬の隙を突き、さくらがパスをカットする!



 素晴らしい反応だ。だがその後が頂けない。瞬木にパスを出すよう指示する天馬の言葉を無視してさくらは自身が決めようといきり立つ。その姿はやはりかつての慢心していた井吹の姿に重なる。そうなるともはや定番の、「ローリングカッター」に絡め取られてしまうところまでお決まりごとだ(さくらは二度目。学習すれ)

 ミーチャは例によってルスランにパス。ゲームを組み立てるルスランはここでとどめを刺すべく、自身がボールを持ち込むことにする。それを見てムキになるのは鉄角だった。自分が止めるとルスランに挑みかかるが、ルスランは余裕の笑みを浮かべたままヒールでボールをコントロールして鉄角を抜き去る。ここでも選手の「俺が俺が」が裏目に出る。

 鉄角を置き去りにしたルスランはここでこの試合で全得点を挙げているマキシムにパスを送る。空中でボールを受けたマキシムは誰の妨害も受けることなく、三度目の必殺シュート「ゴールドフィーバー」を放つ! これが決まればイナズマジャパンにとってトドメであることは誰の目にも明らかだ。実況の角馬王将(CV:稲田徹)もこれが決まれば試合は終わりだと事実上認める発言をする。

 井吹は勇躍飛び上がる。彼の持ち技「ワイルドダンク」はここまで2戦2敗であり、「ゴールドフィーバー」を止めることは不可能に思われる! だが彼にはこれしかない。「ワイルドダンク」で阻止にかかるが、井吹はその勢いに押され、地面に落ちてしまう! すわ決定的な3失点目か!?

 誰もがそう思ったが、ボールはゴールラインを割らずにゴール横に落ちる。そう、完全阻止こそならなかったものの、何とかゴールされることだけは防いだのだ!!


 ベンチの葵は失点を防いだことに喜ぶが、ボールはまだ生きている。今度こそトドメとルスランが駆け込んでくる。井吹はまだ立ち上がれず、ゴール前は無人に等しい。このままシュートされてしまえば決まるのは決定的だ!!


 「ゴールドフィーバー」を止めたことで肩を痛めた井吹が振り向いた先に、ボールに駆け込んでくるルスランの姿が見える。井吹はその瞬間、起こっている事態に自分が対処できないことを悟る。

 天馬や剣城が駆け込むが、位置的に間に合わない。ここで井吹が取った選択は……!?



「神童!! 頼むっ!!」


  その言葉をずっと待っていた神童は、始めて井吹に笑みを見せ、ボールに向けて走り出す。どうでもいいけどこの場面、井吹が気付くことを重視して失点してたらどうしてたんだろう。多分負けてたよな。

 ルスランがシュートを放つ。その前に敢然と走り込んだ神童は今シリーズでの彼の代名詞となりつつある必殺ブロック技(シュートブロック技でもあるはず)「アインザッツ」で迎撃する。



 弾いたボールはラインを割り、失点の危機はとりあえず去った。



 ベンチでは葵が大喜び。あのポーカーフェイスのみのりでさえタジタジとなるほどに喜びを爆発させる。このシーンははしゃぐ葵もされるがままのみのりも、どちらも可愛くて好きだ。


 トドメを刺すことに失敗したルスランは大はしゃぎする敵チームのマネージャーたち(実質、騒いでいるのは葵だけだが)に呆れながらも負け惜しみを口にする。だが慎重なドミトリーはここでイナズマジャパンに引導を渡せなかったことを悔いるように顔を下に向ける。


 そして井吹である。試合中の咄嗟(とっさ)の判断だったとはいえ、始めて神童に頼った井吹……。


神童「ようやく分かったようだな」


 神童は井吹のもとにやって来て、キーパーが為すべきなのは一人でゴールを守ろうとすることではなく、何を用いてでもゴールを守り通すことなのだとその極意を説く。

 神童はフィールド全体をよく見るよう井吹に語る。井吹が目を向けた先には、仲間たちが視線をこちらに向けていた。つまり頼るべき存在がそこにはいて、それを忘れてはならないということを神童は伝えようとしたのだろう。

 仲間の存在に気付いて笑う井吹に向け、神童は今度こそ井吹の力を認め、ゴールを任せると語る。それは井吹が熱望してやまなかった、神童という存在が自らを認めてくれた瞬間であった。



 そしてゴールを井吹に任せることが本気であることを証明するかのように、神童は以後は前線に出て攻撃に参加すると天馬に語りかける。それを聞いた井吹の嬉しい気持ちは察するに余りある。天馬や剣城もそのことは思いが至る。嬉しそうに笑みを浮かべる彼らの思いは、以後雷門中時代の三位一体(さんみいったい)の攻撃がこれからは可能になるという喜びも内包していたかもしれない。



 あの頑(かたく)なだった井吹が神童に助力を乞(こ)い、それに見事に応えた神童の姿……それはこれまで空回りしていた他のメンバーにも大きな意識改革を与えるきっかけとなる。

 鉄角が、さくらが、九坂が、皆帆が、真名部がそれぞれここまでの自身の行動を省(かえり)みる。井吹の気付きを自らの反省の糧(かて)にする仲間たちをただひとり冷笑する人物がいた。それは瞬木だった。彼は他者を信頼することを否定し、その論拠として信じていた者に裏切られた時の失望感の大きさを上げる。つまり瞬木は誰かにそのような目に遭(あ)わされた過去があるということなんだろうね……。



 試合はまたもストームウルフのスローインで再開される。ロランのスローインの先を読んだ神童がそのボールをカットする。そこには早速攻撃に参加しようという神童の意欲が窺(うかが)える。

 あわてて走り寄るミーチャ、セルゲイを巧みな足さばきでかわし、神童は九坂にパスを出す。九坂がドリブルで敵陣を切れ上がる。これまでローリングカッターコンビの影で目立たなかった背番号4番のユーリ・アヴェリン(CV:不明)と背番号5番のゲンナジー・ゴリバフ(CV:不明)が止めにかかるが、九坂は両者を引きつけつつ併走する天馬にパス。

 先ほどまで天馬の指示を無視してきた九坂が素直にパスをしたこと、これも井吹の気付きに対する副次的効果だ。仲間を信頼して戦うという意識がチーム全体に浸透しつつあった。

 そこからは見違えるようにイナズマジャパンのパスが繋がっていく。鉄角からさくら、そして神童、瞬木へと。



 守備に関しても意識改革は成された。まなみな名コンビも復活。皆帆の指示に数学的合理性をはじき出しつつ協調する真名部。本気を出したこの2人にかかればどんな選手でも突破は困難だ。



 やっと目立てたユーリも森村好葉(CV:悠木碧)の必殺技「このはロール」にしてやられる。実は好葉ちゃん自体もここまで完全に空気だったのだけど。


 この流れにチームの一体感を感じる天馬は、これならいけると拳を握り締める。試合前からずっと感じていた何かが足りないという天馬の懸念はここに解消されることと相成(あいな)った。



 すごい一体感を感じる天馬。



 突如変わり始めたイナズマジャパンの姿に、何が起こったのかと動揺するルスラン。それに対しドミトリーは達観したように彼らが何も変わってはおらず、これまでちぐはぐだった歯車が噛み合いだしただけだと言う。卓見(たっけん)に意見するのは口幅(くちはば)ったいが、それが「変わった」ということではないのか? さて置きそれを受けルスランは、やっとまともな相手と戦えると強がる。



 潮目(しおめ)が変わったとはいえ、ストームウルフもただのチームではない。ゲンナジーが九坂を吹っ飛ばす。力勝負で九坂が負けるのを見るのは滅多にない。ゲンナジー・ゴリバフ、さすがは名前がゴリラっぽいだけのことはある。


 両チームの戦力はまたも拮抗し、またも両者一歩も譲らない好勝負の展開となる。前半戦は残りわずか。このままイナズマジャパンが2点のリードを許したままハーフタイムに突入するのか?


 葵の祈りも虚しく、ここでチャンスを掴んだのはストームウルフだった。2得点を挙げているマキシムがボールを持ってゴール前に迫る。守るのは、キーパーの使命に開眼なった井吹だ!

 彼はひとりで止めようとする愚は二度と繰り返さない。真名部と皆帆に指示を出し、シュートコースを絞り込む。マキシムは中央突破でしかゴールに迫れない体制を築き上げる。遮二無二(しゃにむに)突進するマキシムは井吹の想定通り、中央突破して来る。

 マキシムはハットトリックを狙って4度目の「ゴールドフィーバー」を撃つ。迎撃する井吹の拳が真っ赤に燃える。これはこれまでの「ワイルドダンク」ではない!!



 ここで井吹に新必殺技!! 「ライジングスラッシュ」の炎の壁が見事にマキシムのシュートを阻止した!! キャッチ技ではなくパンチング技のようだ。三国さんで言うところの「フェンス・オブ・ガイア」。


 「爆熱ゴッドフィンガー」……もとい「レイジングストーム」……もとい「ライジングスラッシュ」の威力でマキシムのシュートを止め、イナズマジャパンのムードは俄然活気づく。

 神童は真名部と皆帆に的確な指示を出し、さらには新必殺技で敵の追加点を阻止してみせた井吹が精神的に成長を遂げたことを見届け、微笑みを持って歓迎する。



 神童の視線を感じた井吹が無言でガッツポーズを見せるのを、穏やかな表情でうなづいて受け止める。その優しい表情がやっと井吹に向けられる時が来たんだと感無量の感がある。


 そしてその井吹が止めたボールを、きっと得点に結びつけると決意した神童は天馬とさくらに進撃の合図を出し、左サイドを駆け上がるさくらにパスを送る。ダイレクトで中央に折り返したさくらのパスは天馬に渡る。

 ルスランの指示で天馬に相対するユーリを、久々の必殺ドリブル技「Zスラッシュ」で抜き去り、天馬の進撃は止まらない。そしてチームのエースストライカー、剣城にラストパス。

 剣城もここでこれまで無敗の必殺シュート「バイシクルソード」を抜き放つ。ストームウルフのキーパー、アレクセイ・カルノフ(CV:不明)にとっては初仕事がこのシュートである。何も出来ないまま、シュートはゴールに突き刺さる!!




 前半終了前に1点を返したことは大きい。ストームウルフ側はこの失点に悔しさを隠しきれなかった。



 その後も両者は譲らず、互角の試合を展開する。そしてそこで前半戦終了のホイッスルが鳴る。試合は1−2で後半戦に持ち越される。まだストームウルフがリードしてはいるが、終了間際にイナズマジャパンが1点返したことで両チームの選手に及ぼす心理的効果が大きい。



 ベンチで選手たちを迎える葵の表情も明るい。最後に得点したシュートを葵に褒められて、ほんの少し相好(そうごう)を崩した剣城がちょっと可愛かった。


 そして葵の賞賛は新必殺技を獲得した井吹にも向けられる。井吹は含羞(はにか)んだ様な表情を浮かべる。他のメンバーにも新必殺技の話を振られるが、彼にとってはキーパーとして仲間を信頼する重要性に気付くことが出来たことが何よりの収穫だった。敵のゴール阻止の手柄も皆帆と真名部に譲る。

 その態度には皆が意外そうな表情を浮かべる。井吹は真名部と皆帆の2人がシュートコースを限定してくれたから集中してシュートに向かうことが出来たと明かす。集中さえ出来ればあんなシュートを止めることなどわけは無いと豪語しながら……。



 それが井吹の口から出てくる「感謝」なのか、それとも単なる「自慢」なのか、真名部と皆帆は割り切れない面持ちを浮かべる。おそらく井吹の性格的にどちらも含まれていたのだろうが、それを自覚していない井吹の様子が滑稽(こっけい)で、皆は笑い出す。


 チームは間違いなく良い雰囲気になっている。天馬はキャプテンとしての使命感とともに、後半戦でこの試合に逆転することを誓う。もちろん良い雰囲気の仲間たちもそれに同意する。


 2失点を喫した時点ではあれだけ不利な情勢だったというのに、いつの間にかこうしてチームが一丸となってまとまってしまう。黒岩の選出によるこのチームの図太いまでの強(したた)かさに、船木は改めて黒岩の表情を窺う。黒岩が船木自身が思い描いているよりもずっとすごい手腕の監督なのかもしれないということを確認するかのように。



 そしてイナズマジャパンの強かさを敵として実感するストームウルフ。ルスランは相変わらずイナズマジャパンを見下したような態度を崩さないが、やはり対照的にドミトリーは最後の1点が試合の流れを変えてしまいかねないと語る。ドミトリーはここまで慎重さが目立つが、もちろん彼はペシミスト悲観主義者)ではない。そのような展開にならぬよう、後半戦は全力でかかるとその表情を引き締める。



「イナズマジャパン、勝つのは俺たちだ!!」



 次回へ続く。



  エンディング




 更新がべらぼうに遅れてしまっているが、ようやく16話の感想をお届けします。運命の18話ももう放映されちゃってるし、この遅れは残念でならない。テレビ東京もこんな時に「いい旅夢気分スペシャル」とか特番やってくれても良いんだけどなぁ。



 とにかく今回の寸評。完全に試合回というハードな内容。井吹と神童が遂に和解するというか、お互いの理解が至るという内容だった。井吹の指示に従うというのが神童の本意だったというのは面白い。「どけ!」と言われた時はどかなかったクセにねぇ(笑)。

 これで井吹には新必殺技も誕生したし、しばらくはイナズマジャパンゴールも安泰(あんたい)なのかもしれない。井吹がゴールを奪われた時の神童のあの冷たい視線が見れなくなったのはちょっと残念なんだけど。神童に助けを求めた素直な井吹くんにはちょっと萌えた。


 月山国光中バスケ部の頃の井吹は鼻持ちならない慢心野郎で、仲間である部員たちから疎(うと)まれていたという過去を持っていた。これは自分だけが目立ちたいという発想で同じく仲間に嫌われていたさくらちゃんと似たような過去だ。両親の期待という要素が無い分、井吹の方がまだマシだとは思うが(というか井吹の性格だけに帰する問題と言えよう)。




 次回はそのさくらにも待望の必殺技が産まれるようだ。フープ状のものを高速回転させるという元新体操の選手だったさくらにふさわしい技の様子。



 さらには鉄角にも必殺技のような動きが! ボクシングの防御法の一つであるスウェーバックかウィービングのような挙動。これが本当に必殺技ならば、イナズマジャパンの全選手が必殺技を最低一つは持つという状態になる。



 あと次回タイトル「戦いの終わりと始まり」にはどうしても不穏なものを感じる。アジア予選は次回で終わるのだろうが、始まるのは果たして何なのか……18話まで見た人はもう知ってる話なんでしょうけどね。



  次回「戦いの終わりと始まり」に続く。



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