『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第17話「夢の天下(てんが)」の感想 【お勝ちゃんとの別れにただ涙、涙】

 毎週水曜日夜7時からテレビ東京系列で放映されている超次元おもしろアニメ『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』の恒例の感想文。今回はその第17話「夢の天下(てんが)」を観ての感想を書く。戦国時代編を締めくくるに相応しい大団円の感動回、感想も気合を入れて書きたい。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第16話「うつけ祭りの決戦!」の感想 【祝・ネイラちゃん女の子確定回】
 をご覧ください。

 で、一覧表示されます。

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 戦国の世、織田信長(CV:千葉一伸)と今川義元というライバル同士の蹴鞠戦(けまりいくさ)という舞台を借りて進行中の、サッカーの命運を賭けた一戦。サッカーを守る立場の松風天馬(CV:寺崎裕香)たちチーム雷門(織田軍)と、サッカーを消滅させることが使命のベータ(CV:伊瀬茉莉也)たちプロトコル・オメガ2.0(今川軍)の戦いは、ベータの豪快なゴールによって1−2と再び今川軍が突き放す展開となった。

 フィールドではベータのゴーストミキシマックスによる圧倒的な力を見せつけられ、絶対の自信をもって望んでいた必殺ディフェンス技の「一夜城」が打ち破られ、自信を失う太助(CV:折笠富美子)たち5人の現地人。同じく現地人として織田軍の総大将(監督)を買って出た木下藤吉郎(CV:古島清孝)は、敵の力もさることながら、自信を失いつつある自軍勢力の現状を心配する。総崩れとなった味方の恐怖は伝染し、さらに敵を勢いづかせることになりかねないからだ。



   オープニング(情熱で胸アツ!)



 失点した織田軍のキックオフで試合は再開される。ドリブルで進むフェイ・ルーン(CV:木村亜希子)の前に、クオース(CV:大原崇)とドリム(CV:泰勇気)が立ちふさがる。通常時でも2人がかりはきついのに、今の彼らはゴーストミキシマックスで強化中とあって、いかにフェイといえども突破は困難だ。

 サイドを駆け上がる神童拓人(CV:斎賀みつき)が声をかけ、フェイのパスを受ける。神童に挑むのはオルカ(CV:ゆりん)だったが、神童は力押しで強引に突破する。



 前進する神童だったが、藤吉郎の思惑からすればそれは個人技に頼ったスタンドプレーに映る。突出を諌める藤吉郎だったが、それまでほぼベンチのマスコットぬいぐるみ(野球場でホームラン打った時に出てくる奴)の座に甘んじていたクラーク・ワンダバット(CV:吉野裕行)がその指示を打ち消すかのように、神童の行動にエールを送る。

 ベンチでの不協和音を知ってか知らずか、前進を続ける神童。だが新種のデブのウォード(CV:不明)と変な髪型のメダム(CV:金野潤)というガタイの良いディフェンス陣に前を阻まれ、シュートコースも塞がれてしまう。


 「神童先輩!!」


 右を駆け抜けながら神童に声をかけたのは剣城京介(CV:大原崇)だ。定法通りここはパスするべきと指示を出す藤吉郎に、またも逆らうかのように自力でシュートに持ち込めと正反対の指示を出すワンダバ。相次ぐ勝手な指示に、さしもの藤吉郎も色をなしてワンダバに苦言を呈(てい)する。

 神童の選択は、ここでもゴリ押しだった。彼は化身「奏者マエストロ」を召喚し、化身アームドでこの状況を乗り切ろうとする。チームプレーを無視したその態度は、パスを要求した剣城と、キャプテンの天馬を驚かせる。

 だがやはり化身アームドは失敗に終わり、みすみすボールを相手に奪われてしまう。



 ボールを奪取する変な髪型のメダム。前回のネイラ(CV:佐々木日菜子)とともに、アルファ派でもベータ派でもない存在。どちらの派閥でもない彼らが目立ち始めたこの件は、第3のリーダーの物語への降臨が近いことを示唆していると思われる。


 一連の神童の所作は、ベータをして「必死」「無様」と嘲笑の対象となり、また神童を注視していた信長の信頼を大いに裏切る結果となってしまう。不満を表出するかのように手にした扇子をパチパチ鳴らし始めた信長を見て、彼の気性をよく知る丹羽長秀(CV:泰勇気)と前田利家(CV:金野潤)が試合の中止を提言する。

 信長はやにわ立ち上がると、神童の名をつぶやきながら意を決したかのように行動する。まさか部下の提言を容れて試合を中止するつもりは無いと思われるのだが、彼の真意は何なのか?


 その間もフィールドでは今川軍がチャンスを迎えていた。向かってくるエイナム(CV:野島裕史)を前に、すっかり自信を失った太助たちは慌てふためく。天馬から「一夜城」を指示され、太助はやるしかないと腹をくくり、仲間の獅子丸(CV:美名)と五郎太(CV:不明)とともに合体技「一夜城」を繰り出す。



 おっかなびっくり出したものの、「一夜城」は見事にエイナムの突進をストップさせる。化身アームドのベータが反則級に強かっただけで、一般のルートエージェントには通用するんだね。まだまだこの技も捨てたもんじゃない。

 銃後で守る西園信助(CV:戸松遥)に褒められ、笑顔を浮かべる太助たち。これで失われていた自信を取り戻したか?

 だが敵のボールを奪ったわけではない。エイナムはすかさずボスのベータにパスを出す。それが通ってしまえば2失点目の再現シーンが見せつけられ、太助たちに芽生えた自信も再び刈り取られてしまうだろう。

 だがそうはさせじと頑張ったのが天馬だった。太助たちに指示を出しに戻って来ていた彼はそのまま後退をやめず、このパスも読んでいたのだろう。



 ピンチを萌芽(ほうが)する前に摘み取った天馬は、前線の剣城にフィードする。剣城はさらに神童にパス。神童にボールが渡ったところで、彼のこれまでの行動に焦りを感じていた藤吉郎がすかさずパスを指示する。だがその行為を無にするかのように、またもワンダバが神童に個人プレーを煽(あお)る。

 再三に渡る指示のぶつかり合いに、たまらず藤吉郎がワンダバに理由を問いかける。ワンダバは、何も考えなしにこのようなスタンドプレーをけしかけていたわけではない。神童が信長のパワーを受け継ぐだけの器を得なければならないということを説明する。ミキシマックスという概念を知らない藤吉郎にその説明はどれほど伝わったかは定かではない。ただここでワンダバが、そして神童が無茶とも言える暴走を是(ぜ)としている本意がいくばくかは伝わったようだ。

 だがその行為には個人のチームからの突出という事態を招かないわけにはいかない。神童はボールを持ったまま、周囲を5人のプロトコル・オメガ2.0の選手たちに囲まれてしまう。

 その状況を自力で克服できてこそ信長に相応しい器と考える神童にとっては望むところであった。今度こそ成功させるとばかりに化身アームドに挑む。だが、思いとは裏腹にその試みはまたも失敗に終わる。

 労せずしてボールを奪ったオルカの目に、フリーで雷門ゴール前に走り込むベータの姿が映る。事態はかなり絶望的だ。ベンチでその様子を見ていたマネージャーの空野葵(CV:北原沙弥香)、瀬戸水鳥(CV:美名)、山菜茜(CV:ゆりん)も悲鳴を上げる。

 オルカは当然の如く、ベータに向けて正確なロングパスを送る。これが通ればベータの能力を考えても致命的な失点につながることは火を見るより明らかだろう。だが太助がベータへのパスコースに走り込み、必死の顔面ディフェンス。身体を張ってそのパスをカットしてみせる。



 顔面を強打し、背中から地面に落ちるという代償を払って失点を阻止した太助の気迫のプレーはチームを勇気づける。



 身体を張って殊勲の太助。その顔には激しいプレーに対する勲章であるかのように、ボールの跡がくっきりとついていた。


 ピンチをしのいでホッとしたのも束の間、プレーが中断したというのに新たな嵐がフィールドを襲う。それは櫓(やぐら)を降りてきて織田軍ベンチに迫り来る、鬼の形相の信長その人であった。


 信長「神童拓人、これへ参れ!!」


 信長は愛刀をグラウンドに打ち付けて、神童の名を呼ぶ。怒りの信長と手にした刀、そこから不穏な空気を感じないわけにはいかないだろう。神童を誰よりも慕うお勝(CV:高垣彩陽)は不安から思わずその顔が蒼白になる。


 信長に呼ばれてやってきた神童を前に、改めて声を荒げる信長。その剣幕は横で成り行きを見守っていた藤吉郎が思わず腰を引いてしまうほど苛烈(かれつ)なものであった。

 信長は自軍が不利な状況はすべて神童に責任があるとして、ベンチに下がれと強く叱責する。この場面でおそらく最怖の人間(次点がベータちゃん)の怒りを受け、さしもの神童もうつむくしかなかった。藤吉郎は信長を畏(おそ)れ、かつ尊敬してはいるが、神童が一所懸命に自分のなすべきことをしようとしていることも理解できている(先ほどのワンダバの説明を経て)。歴史的に見ても調整型の能力にも秀でていた彼は、ここで神童を弁護すべく恐れながらも信長にとりなしの意見を言おうとする。

 だがそこにエクストリーム土下座をする勢いで駆け込んでくるお勝が藤吉郎の弁を遮(さえぎ)る。彼女の神童を救おうという気持ちは、藤吉郎のそれよりもずっと大きく純粋だったからだと思うが、弁明の場は完全にお勝に奪われてしまう。




 神童がこの世界で為そうとするサッカーへの思いを守るため、お勝は鬼よりも恐ろしいと言われる信長に直談判(じかだんぱん)したのだ。下手をすれば自らの命もない。足袋(たび)がグラウンドの土で汚れるのも厭(いと)わずに神童のために馳せてきたお勝の心からの陳情は信長の心をも動かしたに違いない。

 信長は笑みを浮かべる。それはお勝の意気に触れ、彼の中から怒りが消えたことを示唆する。彼は神童にベンチに下がれと言ったことは撤回するつもりでいたが、神童に対して告げたかったことは告げるつもりでいた。

 信長は神童に大事な心構えを説く。神童は動く必要のない場面でも動いているということを喝破し、神童に戦術とはなんたるかを伝授する。



 「静と動の使い分けこそ、戦術の極意!」


 信長は神童の役割を、攻めと守りの間にいて用兵を考慮する要(かなめ)の役どころではないのかと問いかける。サッカーを見るのはこれが初めてのはずなのに、FWとDFの間で戦術を組み立てるゲームメーカーとしてのMFの役割を見事に言い当てるなど、さすがは信長だ。

 そして戦術として神童の行動が読まれやすく、そこを相手に突かれているというところまで指摘する。信長のその物事の本質を見抜く能力の凄まじさをまざまざと見せられ、神童は改めて信長の器のデカさに感嘆(かんたん)する。


 そこに、かつて最強のイレブンを語った円堂大介(CV:藤本譲)の言葉が不意に思い起こされる。それは今まさに信長が目の前で見せた、第1のプレーヤーの条件、であった。



 「人を見抜き大局を見抜く、静と動を合わせ持つ真実のゲームメーカー」


 この世に大介の唱えた第1のプレーヤーの条件に適(かな)う人物はこの人を置いて他にはいない。目の前の信長を見ながらそう確信した神童は、信長からの言葉を金言として受け止め、この試合において自らの糧とすることを誓う。



 そして試合が再開される。一斉に攻め上がるメンバーを尻目に、神童は試合再開直前に藤吉郎から受けた作戦を思い返していた。藤吉郎は神童にボールに触れることを禁ずる。前半に言い放った「攻めるな」に次ぐ意表をつく指示だ。

 神童が信長のオーラを受け継ぐ器にならなければ意味が無いということも藤吉郎は織り込み済みでの発言だ。ボールに触れるなという指示には「ときが来るまで……」という注釈がついていた。


 神童が後方で試合に参加しない素振りを示すのを見て、ベータは諦めたかとほくそ笑む。


 藤吉郎は織田軍の前衛に攻勢に出るよう指示を出す。ここでボールを奪い、ダメ押し点を奪って反撃の意思を抉(くじ)くのが目的のベータも自軍後衛に敵の攻勢を阻止するよう、豪快に指示を出す。




 両チームの戦術がぶつかり合い、互角の様相を呈する。その間、試合に参加していない神童。戦場の只中から乖離(かいり)する彼を気にかけている者は誰もいなかった。そしてその時こそが、藤吉郎の言っていたタイミングなのであった。勇躍、それでいて敵の耳目(じもく)を集めないよう細心の注意を払いながら、今神童が静から動に転じる。


 フィールド中央では、ボールをキープしつつも周囲を敵に囲まれた仲間たちの姿があった。だが神童と同時に藤吉郎から策を授けられていたフェイは、このタイミングが分かっていた。敵の隙間から誰もいない空間にパス。

 そこにはいつの間にか走り込んでいた神童の姿があった。新種のデブのウォードが慌ててそちらに走り寄るが、神童は信長の教えに忠実にここで動から静にスイッチする。



 そのスイッチの切り替えについて行けないウォードは赤子の手を捻るかの如く、軽く振り切られてしまう。スイーパーポジションのウォードを超えれば後の障害はゴールキーパーのみ。神童はここでスイッチを動に切り替え、この試合での3度目の正直となる化身アームドに挑む。



 アームド!!


 長き雌伏の時を経て、ついに成功した神童の化身アームド姿。見慣れてないからといって、笑ってはいけない!


 同じく神童のアームドを心待ちにしていた天馬たちは歓喜の笑顔を浮かべる。神童は喜ぶ間もなく、同点ゴールを狙って宙に飛び上がり、渾身の化身アームドシュートを撃つ! 迎え撃つのは、ザノウ(CV:岩崎了)の最強必殺技「キーパーコマンド03(ドーンシャウト)」だ!(安心の得点確定タイムの到来)




 予定調和で、こう。そりゃようやくお披露目なった神童の化身アームドシュートがザノウさんの見飽きた技で止められるわけが無いぜよ。いつものゴールシーンの絵を使い回ししないだけマシだったぜよ。


 神童のシュートが豪快にネットを揺さぶり、これで試合は再び織田軍が追いつくという展開に。



 この展開にベンチの女の子たちも大喜び。特に神童の活躍ということで、お勝の顔にも安堵を交えた笑顔が浮かぶ。


 神童が化身アームドを成し遂げたことで、今ならミキシマックスが可能と見たワンダバは、その旨を信長に進言する。信長はもちろん未来のテクノロジーなど理解できようはずもなく、不思議そうな表情でミキシマックスガンを手にする。



 原理の分からぬまま、戯(たわむ)れに近習にガンを向ける信長様とそれにビビる長秀と利家。信長だと実弾が入っているとしても撃ちそうだもんな。


 だが神童に信長の力を送り、合体させるというワンダバの話に興味を抱いた信長は、面白いとその進言を受け入れる。これは生来の新しいもの好きで珍しいもの好きの信長の好奇心旺盛な面も大いに貢献したのではないかと思われる。



 一方その頃、ベンチサイドのそんな悪だくみ(?)を露とも知らない神童は、剣城と爽やかにハイタッチしていた。この爽やかさが後に台無しに……



 銃の形をしたもので自らを撃つことを許可した信長に、当然の如く近習たちは反対する。だが信長は彼らの目を見て、嘘を言ってはいないということを見抜いていた。ワンダバにガンを託し、言外にミキシマックスとやらの許可を与える。


 フィールドでは残り時間が迫る中、織田軍と今川軍が睨(にら)み合っていた。ここまで思い通りに試合が運ばずにフラストレーションが溜まるベータは、仲間を女の子にあるまじき乱暴な言葉で鼓舞して雷門打倒を図る。

 剣城をかわしたエイナムがレイザ(CV:藤村歩)にパス、しかしそのレイザから神童がボールを奪う。神童がフリーになった瞬間、そのチャンスをワンダバは逃さない。ミキシマックスガンの一方を信長に、もう一方を神童に向け、トリガーを引く。




 ワイルドな神童、爆誕。……あのぉ、これは成功なの??


 ベンチでも大喜びなので、成功のようだ。茜は神童がベースだったらなんでも喜びそうなのは分かるが、お勝ちゃんも喜びますか? お勝ちゃんはこれで神童に対する100年の恋も冷めたら、この後の展開が楽になれたかもしれないのに。


 茜「シン様、ワイルド……♥♥♥」


 まぁワイルドだろうがスギちゃんだろうが、とにかく神童はついに信長のオーラを受け入れ、ミキシマックスに成功した(らしい)。信長も自分のオーラが混じった神童を良い面構えだとまんざらでもない。

 天馬の時はミキシマックスが化身アームドへの布石となったが、神童の場合はそれが逆、化身アームドがミキシマックスへとつながる必要条件だったことが面白い。


 ともかく敵としては捨て置ける局面ではない。一斉にスギちゃん……もとい神童に襲いかかるプロトコル・オメガ2.0の選手たちだったが、信長の絶大なるオーラを身につけた神童にとって、彼らなどものの数ではない。信じられないステップを切り、一気に3人をごぼう抜きに抜き去る。

 そして無人の野を行くかのように敵陣を疾駆する。巨漢のガウラ(CV:佐藤健輔)、メダムも存在しないかのようにすり抜け、その突進はとどまるところを知らない。一気にキーパーと1対1の局面に持ち込んでしまう。

 そして神童は、ここでも驚異の身体能力を見せ、空中で蹴ったボールを反対側に回り込んでさらに蹴るという加速動作を三度に渡って繰り返し、ボールに十分な勢いを付け、超絶にカッコ良い必殺シュート「刹那ブースト」を放つ。



 超絶シュート「刹那ブースト」。文字の形も合わせて手裏剣が飛び交いまくりのエフェクトだ。


 このシュート、「刹那ブースト」を説明するのに要したこの長く説明的な文章を見ても分かる通り、ザルウさんの噛ませキーパー技でこれが止められるわけもなく……。


 ……ということがさすがにベータさんも分かっていらっしゃる。お前の相手は俺だと、ザルウを制して自ら化身アームドして神童の「刹那ブースト」に立ち向かう。



 だがミキシマックスした神童の超絶度は、化身アームドしたベータですら対抗できないものであった。閃光に包まれながら、ベータの表情が苦悶に歪(ゆが)む。そして閃光に包まれきったところでゴールに押し込まれてしまう。



 力勝負に敗れ、むくれるベータちゃん。受けたダメージは部下のザノウがほとんど肩代わりしたようだ。


 ついに試合は3−2と織田軍がリードする展開になる。ミキシマックス状態を解いた神童の顔にようやく笑みが浮かぶ。苦労の果てに、化身アームドと信長のオーラを受け継ぐという2つの懸念事項を同時に解決してみせたのだ。しかも2ゴールを挙げて試合にも貢献したということで、責任感の強い彼をしてようやく笑顔を浮かべることが出来たのだ。


 そしてそこで試合終了の法螺貝の音が鳴り響く。織田軍は勝利を収めて織田家の面目を保ち、チーム雷門は初めて本気のプロトコル・オメガ2.0を打ち倒した。歓喜に湧く雷門イレブン。

 それを呆然と見つめるベータの前に、フェイがやって来て、以前の約束、「雷門の選手たちの洗脳を解く」を果たすよう告げる。ベータはむくれながらも、一切の抵抗、抗弁もせずにそれを受け入れる。戦いという正規の手続きさえ経ていれば、一度交わした約束を果たすという意外なまでの潔(いさぎよ)さを見せる。



 マインドコントロール波を解除するベータ。


 ルートエージェントたちは、かつてエイナムたちチームA5たちが襲撃してきた時は交わした約束を反故(ほご)にした過去があったので、今回のベータの素直さは意外だった。エイナム以上に邪悪そうなのにね。


 ベータの素直さはさておき、これで雷門の他のメンバーもまたサッカーを守る戦いに復帰するフラグが立った。神童は同じくベータがスフィアデバイスの中に連れ去った円堂守(CV:竹内順子)監督のことを問いただすが、ベータはもうここにはいないと告げ、スフィアデバイスをフェイに託す。フェイが調べてみたところ、確かにベータの言う通り、すでに円堂のデータは残されていなかった。


 その様子をエルドラド本部の円卓から見ていた議員たちは、円堂を取り戻されるという事態にならなかったことに安堵していた。円堂のデータ移送を実行したであろう男、議長のトウドウヘイキチ(CV:相沢まさき)はシニカルな笑みを浮かべつつ、ベータの能力ですら信用していなかったことを明かす。部下といえども信用しきらずに消耗品として扱い、いざとなれば懲罰的にムゲンロウゴク送りにするこの男にとって、敗北はある意味、計算のうちなのだ。

 そして手にしていた石に向かって、協力してもらうとまるで人間に向かって語りかけるような口調で話す。



 そう、その石はクロノ・ストーンだった。そしてそのクロノ・ストーンこそ、円堂守その人だった。どういう経緯かは分からないが、彼は祖父の大介と同様にクロノ・ストーンにされてしまったようだ。クロノ・ストーンは魂の力を増幅させ、さらに他の強い魂を惹きつけるということに気づいているエルドラド上層部は、円堂のクロノ・ストーンを利用して、雷門の目指す最強のイレブン作りに同様の干渉をしようとしていると想像される。

 つまり分かりやすく言うと、雷門と同じように最強イレブンのオーラを受け継ぎ、最強の選手を横取りしようという発想だろう。今後出てくる最強イレブンの素養の持ち主のオーラは、雷門とエルドラドとで奪い合い、先に取ったものがオーラとミキシマックスする、早いもの勝ちという形になっていくのではないかと思われる。


 そして戦いの終わった「花吹雪スタジアム」上空にプロトコル・オメガの移動手段であるUFOが現れる。だがそこから降りてきた人物は、ベータにとっても意外な人物だった。



 その男、「ガンマ」は一見魅力的な、それでいて怜悧(れいり)な笑みを浮かべながら任務に失敗したベータをこき下ろす。彼はプロトコル・オメガ2.0の終焉を一方的に宣言する。そう、おそらく彼はベータをお払い箱にした後釜に座るため、ここで一同に顔見せに来たのだ。

 マスターがお呼びだと声をかけ、ガンマはベータたちとともにUFOに乗り去っていく。



 その夜、敗れた義元は怒りのあまり、次は本当の戦で信長を打ち破ろうと息巻く。それを果たそうとして返り討ちに遭う桶狭間の戦いは今から6年後、1560年のこと。それを暗示するかのように、義元を乗せた輿が帰りの道中であぜ道に落下する様が可笑しい。


 一方、蹴鞠戦で織田軍の役どころを務め、見事に勝利を収めた藤吉郎以下雷門の全員は、信長の居城・那古野城での勝利の宴に招待されていた。

 質素ながらこの時代では相当に豪勢な食事を前に舌鼓を打つ一行。神童は上座の信長から、心して精進するよう命じられる。何といっても自身の力を貸しているのだから、信長も他人事(ひとごと)とは思えないのだろう。



 そこで信長は、神童が「信長には天下が取れない」と言ったことを再び取り上げる。信長は神童たちが語ることをすべて事実とみなしていた。やはり信長はあの裁きの場で「天下が取れない」と言い放った神童の目から真実を見抜いていたのだ。

 天下人を目指し、天下統一が夢である信長にとっては「天下が取れない」という言葉は一番耳にしたくない言葉だろう。だが話す人物を見抜いてそれが真実を告げていると認めれば、それを受け入れる。この器の大きさも、信長という人間の大きさに通低したものであろう。

 だがやはりそれでは未練なのだろうか、信長は最後にもう一つ質問する。


 信長「歴史は変えられるのか?」


 これも厳しい質問だ。変えられると希望を持たせるのは良いかもしれないが、未来からの干渉がない限り、歴史というものは絶対に変えられない、これが真実だ。多少変わったと思われても、歴史の自己修復力の範囲内ならばまた元の鞘(さや)に戻ってしまうものでもあるからだ。神童は正直に分からない、と返答する。明らかに落胆の色を顔に浮かべる信長。

 だがここから神童は何の確証もない担保、つまり優しい嘘をつく。信長は歴史を大きく動かすことになる、その信長にならば、人の運命を変える力をも持つのかもしれない、と。

 信長はその言葉を是とし、天下人への夢をしばし見続けると宣言する。そして戦いを最後まで諦めなかった雷門イレブンを心から褒め称える。その姿は、大介が想定していた究極のイレブンの第1の力・真実のゲームメーカーそのものの姿だった。




 宴も終わり、信長は近習たちと未来から来たと語っていた少年たちに思いを馳せていた。傍らには、この後の信長の沙汰(さた)を待つ藤吉郎の姿があった。月明かりの中、信長から声をかけられる藤吉郎。信長は藤吉郎の蹴鞠戦での見事な采配を褒め、以後、自分に仕(つか)えるよう命ずる。憧れの信長への士官が叶い、藤吉郎は心の底から平伏して喜びを表現する。



 そして一夜が明け、天馬たちと太助たちとの別れの時が来た。太助は涙を浮かべる。それはもちろん惜別(せきべつ)の意味がこもった涙だったが、それ以上に天馬たちとともにサッカーが出来たということに対する感謝の涙であった。



 500年の時を経て、サッカーという素晴らしい球技を触媒に培(つちか)った友情、その結晶が太助の涙と言えるかもしれない。


 太助はこの後、旅に出ると告げて天馬たちを驚かせる。天馬たちとの出会いが彼にとって知らないことを知りたいという気持ちを起こさせたらしい。そして見聞を深めた上で豆腐屋になりたいと思ったら、きっと天下一の豆腐屋になれる気がすると太助は語る。


 一行から少し離れたしだれ桜の下では、神童がお勝と最後の別れの言葉を交わしていた。覚悟していたとはいえ、これが最後の会話となる。お勝は神童を慕っていたこと、そしてその思いが決して叶わぬ夢であることも分かっていたと語る。神童はハッとなり、そして消え入るような小さな声で「ゴメン」と謝る。

 お勝は努めて笑顔で包みを差し出す。それは彼女の思いが詰まった、最後の贈りものであった。神童が去ろうとしたとき、お勝はついに平静を装うことが出来ずに叫ぶ。



 お勝「私もっ……!!」


 何と続けたかったのだろう? 何と叫びたかったのだろう? 

 「私も一緒に行きたい!」と言いたかったのだろう。だがそれは一度諦めたはずの、叶わぬ夢なのだ。振り向いた神童を困らせてはならないと、なんでもないと頭(かぶり)を振るお勝ちゃんが健気だ。

 神童は笑顔で、失ってはならない大切なものをきっと取り戻すと誓う。それがお互いにできる最大限の相手への思いやりであった。2人の心に合わせるように、桜の花びらが静かに舞う。



 様々な思いを残し、ワンダバの操縦するキャラバンはこの地を発(た)つ。空に浮かび、一瞬にして消え去ったキャラバンを見送る太助、そしてお勝。ただお勝は泣きじゃくり、その最後の姿が見えたかどうかは定かではない。悲しむ姉の裾を掴み、元気づけるように握り締める太助の姿が印象的だった。


 ワームホールを通過中のキャラバン内では、藤吉郎がいずれ信長の後を継ぎ、天下人になるという話で持ちきりだった。天馬は違う視点から、今回の出来事を語る。天馬は戦国時代の人々にもサッカーの楽しさが伝わったということを喜んでいた。その気持ちをすべての時代の人間が共有することが出来れば、サッカーはきっと消えることはないと断言し、信助や錦龍馬(CV:岩崎了)の賛同を買う。

 そういった喧騒からひとり離れ、神童はお勝から受け取った最後の贈り物を開けていた。それはいつも神童を励ましたお勝からの豆腐弁当だった。この心づくしは神童の胸を激しく打つ。新章に入って強くなっていた彼の涙腺(るいせん)がみるみる緩んでしまうほどに……。



 こぼれ落ちる神童の涙に合わせるように、包みにでも付着していたのだろうか、一片の桜の花びらが豆腐の上に舞い落ちた。それは、お勝のこぼした涙の最後のひとしずくだったのかもしれない……



 次回に続く



  エンディング



 戦国時代編、大団円で終了。とてもうまくまとめられていて、30分とは思えない盛りだくさんの内容だった。信長と義元との代理戦争決着、神童の化身アームド、ミキシマックス、新たな敵・ガンマの登場、神童とお勝の涙の別れなどなど。

 特に神童とお勝の別れのシーンは泣けた。とても悲しい別れだったが、歴史の流れを考えるとどうしようもない悲恋だったと言うよりない。これでお勝が髪の毛ワカメの男以外愛せなくなったりして、歴史が変わってしまう可能性もあるかもしれない。歴史への介入というものはつくづく恐ろしいものだ。


 ちなみに1554年といえば、まだ尾張国内すら統一されておらず、織田家同士で家督兼を争っていた頃でもある。この後2年をかけて、信長はいとこや弟を排し(殺したということ)、ようやく尾張の統一を果たす。6年後には、今回の蹴鞠戦をしつこく逆恨みしていた義元に攻め込まれるが、桶狭間で休息中の義元に奇襲を仕掛け、逆転勝利を果たしたということは歴史に名高い。信長がそのとき舞ったのがその後の彼の人生を言い当てているように思われる能「敦盛」である(信長は48歳を目前にして明智光秀の謀反により夢半ばにして死す)。



 桶狭間で義元を迎え撃つ直前に「敦盛」を舞う信長の図。


 戦国時代は歴史ものを何冊も読み、ゲーム『信長の野望』シリーズの大ファンでもある私的には大好きなシリーズだったのだが、これで終わりとすると残念である。三国志編になるとまたちょっとうるさくなるかもしれないが。



 次回はタイムパラドックスが思わぬ副産物を産んだという結果オーライキャラが登場する。しかもそれは味方サイドではイナGO以降初の女性サッカープレーヤーというから大歓迎というか何というか。まだ後ろ姿しか公開していないけど、私はすでに彼女のツイッターのフォロワーになっている。名前などすべて分かってはいるのだが、このブログの特性上、あえて書かないで次週の登場で改めて紹介しよう。相当インパクトのありそうなキャラらしいから、楽しみ。

 あと何と言っても懐かしき旧雷門の選手たちが舞台に帰ってくる。浜ちゃんとか浜ちゃんとか浜ちゃんとかスーさんとか(これは嘘)鬼太郎とかメガネとか脳筋とか攻め担当の男の娘とか単なるデブとか頭に人参刺した奴とか特徴レスとかデビルマンとかブロッコリーとかナスビとかにまた会える。

 いや、懐かしいしとにかく嬉しい。外伝的な展開も楽しかったとはいえ、彼らがいない間はやはりあくまでも「番外編」なんだよね。彼らの何人が歴史上の伝説のイレブンのオーラを受け継ぐことが出来るのだろうか?

 以前「錦=坂本龍馬」説を唱えたが、海の人物ということで、浜野海士(CV:金野潤)がミキシマックスする可能性も本当にありそうな。浜ちゃんはそこらの昆布とミキシマックスしてもパワーアップしそうだけどね。で、三国太一(CV:佐藤健輔)はカリフラワーパセリと、車田剛一(CV:野島裕史)はチョコボール向井なかやまきんに君ミキシマックスさせるの。


 また次章の話もしておこう。次は中世フランスが舞台ということで、ジャンヌ・ダルク編スタートになりそうかな。ベータちゃんがどうやら主導権を失って、今度の主敵はガンマになるようだ。ベータちゃんはやはりムゲンロウゴク送りなのかな?



 ガンマの後ろに見慣れない顔がある。これも新規参入のプロトコル・オメガ3.0の一員のようなので、ベータ以外も誰かは確実にムゲンロウゴク送りにされそう。エイナムたちチームA5のメンツかな?


 ジャンヌ・ダルクの周囲にも小説「青ひげ」のモデルとなった殺人鬼ジル・ド・レイや、ジャンヌをさんざん利用して最後は敵のイギリス軍にジャンヌを始末させたシャルル7世など歴史上実在した因業(いんごう)なキャラクターが出てくる可能性が高いので、今から楽しみだ。良い子のアニメ、イナクロではそんな黒い部分は見せないだろうと思うけどね。



  次回「みんなが帰ってきた!」に続く。



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