『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第15話「尾張の国の大特訓!」の感想 【健気なお勝ちゃんにもらい泣き】

 前回に引き続き、今回分もお待たせでした。超次元おもしろアニメ『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』の恒例の感想文、今回はその第15話「尾張の国の大特訓!」を観ての感想を書く。戦国時代編も結構な長さになりそうだけど、これだけの尺を取るために旧雷門のメンバーの辺りは軽く流されてしまったのかもねぇ。


 当ブログは、『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』第14話「潜入!踊り子大作戦!!」の感想 【錦のアホパワー炸裂回ぜよ!】
 をご覧ください。

 で、一覧表示されます。

 で、一覧表示されます。

 織田信長(CV:千葉一伸)のオーラを頂戴(ちょうだい)するため女装までして「花見の宴」に潜入した松風天馬(CV:寺崎裕香)たちチーム雷門の一行は、先にその宴席に侵入していた宿敵・ベータ(CV:伊瀬茉莉也)の罠にはまり、信長に害を為そうとするものとして捕らえられてしまう。



 その証拠としてクラーク・ワンダバット(CV:吉野裕行)が所持していた火縄銃に似た形状のミキシマックスガンを信長に提示する狡猾(こうかつ)なベータ。


 ベータの存在に気づいたフェイ・ルーン(CV:木村亜希子)の気持ちを逆なでするかの如く、ベータはニッコリと笑顔を向けてくる。果たしてチーム雷門の運命やいかに?



   オープニング(情熱で胸アツ!)



 華やかな宴の場が一転して、捕らえられた天馬たちを裁くお白洲の場となってしまう。信長は天馬たちを自らのライバル・今川義元の送り込んだ間者(スパイ)だと見当を付ける。天馬たちと親交の深かった太助(CV:折笠富美子)とお勝(CV:高垣彩陽)の姉弟もこの展開に顔色を失う。特に一行の神童拓人(CV:斎賀みつき)を心憎からず慕うお勝にとっては、話の如何(いかん)によっては神童が手討ちにされてしまうことを思い、深く憂える。

 暗殺に来たのかという信長自らの問いかけに一言も返せない神童。耐え兼ねて天馬が代わりにその言葉を否定するが、状況証拠が揃いすぎている現状、何の考えもなく否定してもそれは逆効果になるだけであった。



 案の定、信長の厳しい質問を受け、返答に窮(きゅう)する考えなしの天馬くん。空野葵(左 CV:北原沙弥香)や瀬戸水鳥(右 CV:美名)の心配していた通りの結果に終わる。


 信長の疑念が確信に変わりつつある状況を肌で感じるベータは役人の群れに紛れつつ含み笑いを浮かべる。このまま有罪となれば、天馬たちはこの時代の露と消え、歴史上に存在しないものとなってしまう。サッカーの存在自体も終わり、彼女が忠誠を誓うエルドラドの思い通りの結果に終わってしまう。


 だがここでついに神童が弁解に立つ。



 神童「俺たちは時を越えてやって来ました!」


 それは可能な限り隠しておかねばならない真実だったはず。だが事ここに至り、信長という男の目を欺(あざむ)くことの不可能さを神童は気づいたのだろう。正直に自分たちが数百年後の未来から来たということを告げる。


 その言葉の意外さは信長をして驚かせるに十分だったが、お勝と太助にとっても驚愕すべき話であった。お勝は神童が以前語っていた「違うところから来た」という言葉の本当の意味をここで初めて知る。

 その話の荒唐無稽(こうとうむけい)さにこの時代の常識人はついて行くことが出来なくとも無理はない。信長の家臣の一人、林秀貞(CV:田尻浩章)が神童を厳しく叱責し、一行を裁き抜きで死罪にすることを信長に提案する。さすがにその言葉には一行も驚愕と緊張の色を隠しきれない。

 だが信長はむしろその釈明の荒唐無稽さを楽しんでいた。秀貞を制し、神童にさらなる詳細の説明を求める。さすがは旧来の制度に囚われず、キリスト教の承認や楽市楽座など柔軟な発想で戦国時代をリードした信長らしい豪胆(ごうたん)な態度だ。

 神童はここが自分たちが死罪となるか赦免(しゃめん)されるかの瀬戸際だということを心得ていた。彼はいくら非常識で荒唐無稽に聞こえようと、すべて正直に話すことがこの場では最重要と見定め、自分たちが来た「未来の世界」という概念を語り始める。

 この時代から数百年後のずっと進歩した平和な時代の日本からやって来たという神童の言を受け、信長は面白そうに「未来から来たと言うなら、これから起こることも分かるのか?」と問いただす。神童は己の言葉に責任を持つため、肯定せざるを得ない。


 「では聞こう。儂(わし)は、織田信長は天下を獲れるのか?」


 これは核心を突いた質問だ。これを肯定しては嘘をつくことになってしまうし、否定しては天下獲りを目指している信長の怒りを買うことになりかねない。どちらの返答を以(もっ)てしてもこの場を収めるには角(かど)が立ちそうな質問だった。

 一同が沈黙する中、神童は返答する。しかしそれは正直に、信長は天下を獲ることが出来ないという史実通りの回答だった。どちらかというと天下を獲れると言ってごまかしておいたほうが助かる可能性が高いと思っていた仲間たちは大いに驚く。天馬たちと共に行動したとはいえ、この時代の人間で、しかも信長に心酔している木下藤吉郎(CV:古島清孝)もまた別の意味で神童の言葉にショックを受ける(おめーだよ、おめーが天下を獲るんだよ)


 信長の家臣の反応は想像していた通りだった。秀貞は今にも切りかからんばかりに刀に手を伸ばす。だが当の本人である信長は、至って冷静にその言葉を受け止め、天下を獲れないのは残念であると答える。

 その目は真っ直ぐに無礼とも言える発言をした神童に向けられる。神童もその鋭い眼光をまんじりともせずに見つめ返す。お互いの心に何の曇りもないということを、確認し合っているかのようだ。事態の推移について行けない葵や西園信助(CV:戸松遥)がキョトンとする中、裁きの場は急速に天馬たちのお咎(とが)めなしの方向に弛緩していく。

 その空気を目ざとく感じたベータは、そういう時のために予定していた次の作戦に移行する。別の場に待機させていたエイナム(CV:野島裕史)たちプロトコル・オメガ2.0の部下に指令を発する。



 兵士に変装していたからというのもあるが、彼らの和装姿もなかなか似合っていて良い。事態はそんなこと言ってる場合じゃなく緊迫しているのだけれど。


 ベータの命令を受けたエイナムたちは信長の兵士たちを蹴散らしながら舞台に乱入してくる。彼らは敵対する今川義元の幟(のぼり)を掲げ、今川方の家臣を名乗り、織田方に決闘の申し込みにやって来たと告げる。そしてレイザ(CV:藤村歩)が義元が書いたと思しき書状を読み上げる。それは蹴鞠戦(けまりいくさ)という名のサッカーによる対決を示唆するものだった。



 「麿(まろ)」とか「おじゃる」というおじゃる丸みたいな公家(くげ)言葉を連呼するレイザ。今川義元は実際に公家趣味に走っていた傾向があり、この口調のようであってもおかしくはない(プリンも大好きだったかもしれない)。ただ「東海一の弓取り」という異名も持っており、単に軟弱な貴族意識の塊だった訳でもない。実際武田信玄北条氏康といった歴戦の勇者と互角の戦いを繰り広げ、この時点では天下統一に一番近い男と言われていた訳だし。ちなみに息子の今川氏真は戦国武将としてのあらゆる素質がない人物だったが、蹴鞠の腕前だけは超一流で、その特技のおかげで徳川時代まで生き延びる。蹴鞠が上手かった訳だし、氏真を敵役で出しても面白かったかもしれない。この1554年には16歳と年齢的にもちょうど良いし。


 蹴鞠戦で勝負というその言葉に、今川方というよりプロトコル・オメガ2.0の意図を感じた神童はベータを見やる。ベータはその考えが正解であると告げるかのように、妖艶に笑いかけてくる。

 戦国時代の趣味人として名を馳せる義元は、戦しか能がない信長軍を田舎者扱いして挑発する(レイザの読む書面上で)。神童は未来人の歴史への干渉に対抗するのは自分たちの役割だと言わんばかりに、この勝負に自分たちを起用して欲しいと直訴(じきそ)する。

 そしてその指揮は自分に任せて欲しいと、信長に自分を売り込むチャンスとみた藤吉郎が同じく直訴する。秀貞はそれらの意見を一蹴するが、藤吉郎の真剣な眼差しを見た信長は、その直訴を受け入れる。憧れの信長に名を問われた藤吉郎は、満面の笑みで名を名乗る。



 信長と秀吉という2人の天才武将が出会ったシーン。本当の歴史とちょっとどころかかなり違う出会いだが、藤吉郎がこの年、1554年に仕官して信長の家臣になるということは史実だから、細かい部分は歴史が自動修復するのだろう。「蹴鞠戦で戦功があった藤吉郎を家臣に迎える」とか歴史教科書に載るようなことになったら拙(まず)そうだけどな。


 蹴鞠戦の試合は1週間後「うつけ祭り」の時と告げて、エイナムたちは姿を消す。ベータのスフィアデバイスの操作により、物理的に本当に姿を消したのでこの時代の人間は大いに驚く。こんなに未来の概念を見せちゃって大丈夫なのか? タイムパラドックス崩壊とか起こしたりしない?



 そして忙しかったその日も暮れ、夜を迎える。信長の配下として今川方のプロトコル・オメガ2.0と蹴鞠戦で戦う許可を得たチーム雷門はひとまず許されたのか、いつもの古寺に戻って夕食時を迎えていた。

 豆腐屋の娘、お勝特製の湯豆腐を見て歓声を上げる信助。その親切に感謝する神童だったが、お勝はその顔を見ようとはしない。神童はお勝のその態度に思い当たるフシがあった。未来から来たという神童の本当の事情を聞き、お勝が悲しんでいるということに考えが至ったのだ。


 そういった神童、そしてお勝の心境をまったく知る由もないお子ちゃまの天馬たちは、無邪気に湯豆腐の美味しさに舌鼓を打っていた。錦龍馬(CV:岩崎了)と水鳥は、神童が信長に「天下を獲れない」と正直に語ったことに驚いた旨を告げる。神童は信長の何もかも見抜いてしまうかのような眼光の前では、小手先の嘘は逆効果になることに気づいていたと返答する。

 ミキシマックスの成功には、その対象である信長の気持ちを理解して同調する必要がある。神童のこの信長への理解度の高まりを見て、錦は次のミキシマックスは成功するのではないかと楽観的だ。だが錦ほど能天気ではない神童は、まだまだ自分の器は信長には及ばないと自覚していた。


 そこで太助が、神童の話していた未来から来たという話に言及する。聞いてはいけない空気を察した姉の静止も構わず、聞きたがる好奇心旺盛な太助。役人にベータが紛れていたことにも気づいていた太助の言葉を受け、フェイは今後のためにもお勝と太助の2人には本当のことを知ってもらっておいた方が良いかもしれないと、覚悟を決める。

 天馬が話し役を引き受けるが、お勝は用事を思いついたかのようにして席を立つ。おそらく彼女は本当の話を聞きたくはないのだろう。神童が未来から来て、いつかは未来に帰ってしまうという現実を受け入れたくはないのだろう。


 天馬は太助一人に、改めて話し始める。自分たちが数百年後の世界から来たこと、その時代のサッカーは自分たちに夢を与えてくれる素晴らしいものであること、その素晴らしいサッカーを奪い取ろうとする勢力が現れ、それが昼間見た今川の家臣を名乗っていたプロトコル・オメガ2.0であるということ……



 悪そうな想像図。特にドリムとオルカは凶悪すぎる。


 そして彼らに打ち勝つには、自分たちがもっと強くならなければならないと告げ、そのためには織田信長のパワーを受け取らなければならないのだと語る。ミキシマックスの話とかせずにパワーをもらうとか言っても分からないだろうに。大体、パワーって英語だからこの時代の人間には通じないと思う。

 だがあの悪い想像図を見せられたせいか、太助はあっさりと天馬の説明を信じる。太助は少年らしい柔軟さで天馬の説明を受け入れ、未来から来た天馬たちを憧れの視線で見つめる。そして太助は自分も天馬たちの助けになりたいと言い出す。太助だけにね。

 サッカーの素晴らしさに目覚めた太助は、サッカーを守りたいと思い、そしてそのためには協力を惜しまないつもりでいた。その意志はもちろん天馬たちにとっても何よりも代え難い援護となる。天馬、そしてフェイの同意を得て、太助も嬉しそうに気合を入れ直し、豆腐への格闘を再開する。その明るい様は、天馬たちにも笑いをもたらす。



 そして翌日、1週間後の戦いに向け、各自の特訓が開始される。新入りの太助に指示を出すワンダバが異様に張り切っている。監督として久々に誰からも邪魔されずに行動できる状況に浮かれているようだ。

 だがそこにやって来る藤吉郎。白鹿組との戦いでワンダバから監督の座をナチュラルに奪い取ってしまった彼の登場で、またもワンダバ政権に暗雲が立ち込める。藤吉郎はメンバーの不備をも考慮に入れ、太助の友人たちをこの場に連れてきていた。



 白鹿組との戦いを経て、彼らもサッカーの素晴らしさに目覚めた。獅子丸(右から2人目 CV:不明)なんか結構痛い目に遭わされていたけど、それ以上にサッカーが楽しかったのだろう。


 藤吉郎はそこで口調を変え、信長が天下を獲れないと言った神童の言葉にクレームを付け始める。信長命の彼らしい怒りの発露だったが、信長でなければ誰が天下を獲るんだと問われた天馬たちはキョトンとしてしまう。未来の天下人・豊臣秀吉にこんな質問を受けるのも、歴史のいたずらだろうか。



 ここで「おめーだよ、おめー!」と言い出さなかったのは大人。これは歴史的に大事な話で、未だ織田軍に士官すらしていない藤吉郎に本当のことを言ってはいけない場面だからだ。だが神童の表情を見ると、気まずさが顔に出ている。神童は単に嘘をつくのが下手なだけなのかもしれない。信長じゃなくても見破れそうだもんな。


 結局一番ごまかされたくせにそれに気づいていない藤吉郎を見て、女子マネ3人娘たちも思わず苦笑いを浮かべてしまう。


 とにかく場の空気を作ってしまうところは、さすが藤吉郎と思わせる。彼の掛け声で特訓が開始されてしまうという展開になり、まさにワンダバが恐れていた通り、指導者の座をナチュラルに奪ってしまう。またもその場の空気に成り下がるワンダバさん……。



 藤吉郎の指導のもと、急造のサッカーグラウンドで特訓に励む一同。剣城京介(CV:大原崇)と天馬の1対1の競り合いなど、部員同士ではレベルの高い場面が見受けられる。だが太助は剣城のパスをまともに顔面に受けてしまい、倒れてしまう(顔に来た場合はヘディングか、ジャンプして胸トラップ)。藤吉郎から叱責の言葉が飛ぶ。

 他のメンバーも五十歩百歩で、天馬たちのレベルについて行けない点では同じだった。これでは白鹿組よりも桁違いに強力なプロトコル・オメガ2.0に対抗するのは難しそうだ。さしもの藤吉郎も良策が浮かばず、頭を抱える。


 その頃、清洲城天守閣では秀貞が今川との蹴鞠戦について藤吉郎と天馬たちに委任してしまったことに対する不満を述べていた。だが信長は自らが天下を獲れないという神童の言葉を半ば楽しみつつ、彼らの為そうとしていることに賭けてみるつもりでいた。




 グラウンドでは特訓が続く。神童は化身「奏者マエストロ」を発動させ、化身アームドを試みる。マエストロは数条の光となって神童の身体に纏(まと)いつく。だが惜しいところで、その試みは失敗に終わってしまう。まだ何かが足りないらしい。

 神童は挫(くじ)けずに再度の化身アームドを試みるが、やはり失敗に終わる。



 鬼気迫る形相で、必死にアームドを成功させようとする神童の姿を、物陰から見つめるお勝。彼女は、恋焦がれ慕う相手のために一念発起(いちねんほっき)する。神童が未来から来たという現実と向き合うこと、それが彼女の神童への想いを行動に昇華させる。


 特訓が終わり、疲れて帰還してきた彼らを迎えたもの、それは美味しい湯豆腐と、暖かく優しいお勝の笑顔だった。みんなのために食事の用意をしていたお勝は、神童にも笑顔で語りかける。神童がいつかこの場を去ってしまうことを従容(しょうよう)として受け入れ、それでいて彼の大事なものであるサッカーを取り戻すための戦いに協力する。彼女はその一心でここで料理を作って皆の、そして神童の帰りを待っていたのだ。

 その心遣いは、朴念仁(ぼくねんじん)の神童にも痛いほど伝わっていた。神童はお勝のその想いに忠実に、言葉に表さずに感謝する。お互いに想いあったとしても、それは許されるものでは無いということをお互いが理解していたからである。



 お勝の物心両面に渡る心尽くしにより、雷門は毎日の特訓にも全力でぶつかることが出来るようになる。それは本当に心強い援軍だった。



 翌日も厳しい特訓は繰り広げられる。とはいえやはり雷門レギュラー陣と太助たち新参のレベル差は容易に埋まらず、藤吉郎ばかりか3人娘までため息をつかずにはいられないような状況。だが2日が経ち、3日が経つ頃にはそれぞれが思っていた以上に急速な進歩を遂げ始める。

 日中は共に特訓に励んで汗を流し、夜はみんなで楽しく鍋をつつく。この生活のサイクルにより、互いの心に強力な仲間意識が起こらなければ逆におかしい。同じ釜の飯を食うという例えがあるが、あれはまさにこのような連帯感を示す言葉なのだ。よく運動部では合宿という行為が行われるが、それもこの連帯感の醸成と無縁ではない。




 どさくさでこの2人もいい感じだ。山菜茜(CV:ゆりん)ちゃんが嫉妬しそうだけど、今この時だけしか共に居られないこの2人に、あと少しだけ夢を見る時間を与えてあげて欲しい。



 サッカーというものは他の競技以上に団結心、連帯感というものが重視されるスポーツだ。共に特訓し、共に同じ鍋をつつくという生活を送るうち、それ以外では成し得ないほど急速にチームとしての精度が増し、パスがつながり、ドリブルが続き始める。太助たちはもはやチームの重要な要素となりつつあり、お荷物だった頃の面影(おもかげ)はいつしかなくなっていた。そしてその自信がまた選手個々のプレーにフィードバックして、相乗効果でチーム力も上がる。サッカーとはつくづく不思議なものだ。

 上達した太助たちを見て葵と水鳥もこれなら行けそうと手応えを感じるが、ワンダバの後を襲って監督の座に就いた藤吉郎にはまだ何か物足りない要素があるらしい。難しい顔をして太助たちを見つめる。



 特訓の終了直前、太助はフェイにボールを奪われ、シュートに持ち込まれてしまう。信助のナイスセーブで失点には繋がらなかったプレーだったのだが、太助にはそれが悔しかった。藤吉郎からの練習終了の宣告を受けても、ただひとりグラウンドに立ち尽くしていた。

 そして日没だというのにひとりボールを使ってリフティングに励む太助。サッカーが好きでもっともっと上手くなりたいという彼の気持ちは本物だろう。もしかしたら太助も姉のように、いつか別れなければならない天馬たちとのサッカーを最高のものにしたいという気持ちがあったのかもしれない。

 そんな太助に声がかかる。太助がひとりその場に残って練習していることに気づいていた天馬が練習に付き合うためやって来たのだ。天馬の厳しい指導にもガッツで立ち向かう太助。2人の熱い居残り特訓は続けられた。


 満点の星空の下、草むらに寝転がる天馬と太助。マンツーマンの指導で改めて天馬との実力差を知った太助は腐るが、天馬は太助がかなり上達していると素直に褒める。だが試合を目前に控える太助は気が気ではない。自分のせいで足を引っ張ることになることを恐れていたのだ。



 だが天馬は「太助の蹴るボールが笑ってる」という理由で大丈夫だと太鼓判を押す。訳の分からない天馬の不思議ちゃん的な言い分にさすがの太助も引き気味だ。だが次の天馬の言葉は太助の心に深い感慨を抱かせる。


 天馬「サッカーが好きなら、サッカーは必ず応えてくれる!」


 最初からそう言えばいいのにね。ただ「何とかなるさ」という天馬の得意のフレーズとその真っ直ぐな視線に勇気を与えられ、太助は天馬の横に寝転んで、そのフレーズを反復する。口にすると本当にそう思えてくるから不思議だ。


 太助「何とかなる、よね!?」



 そして翌日、試合の日を明日に控えた状況で、藤吉郎は太助たちに合体必殺技を身につけろとかなりのむちゃぶりをする。太助たちのレベルが上がっていることを認めつつ、それでも現状で敵の攻撃を防ぎ切ることは困難だと藤吉郎は分析する。

 明日という切迫した段階での提案に難色を示す錦だったが、藤吉郎は持論でそれを退(しりぞ)ける。彼の発想は一夜にして城を造ってみせるというぐらいの気概に満ちていた。この藤吉郎のセリフは、この12年後に美濃の斎藤氏を攻める時に藤吉郎が一夜にして城を建てた史実、墨俣一夜城をイメージしてのものであることは論を待たない。

 事実藤吉郎は太助、獅子丸、五郎太の3人を指名し、藤吉郎考案の合体必殺技「一夜城」を習得するよう厳命する。必殺技にその後の史実が詰まっているという面白い展開だ。葵たちもそのことに気づくが、あまりその辺の話をしてはタイムパラドックス崩壊が気になるので、大きな声では言えない。

 まぁそれはさて置き、太助は藤吉郎の意を受け、必ずその技を会得すると誓う。



 太陽は深く西に傾いていた。その頃になるまで必死の特訓が繰り返されていたことは、太助たちの身体についた傷や汚れを見れば想像がつく。だがそれでもなお、「一夜城」は完成してはいなかった。

 フェイの強力なシュートが3人の後ろのゴール目がけて蹴られる。太助たちは合体必殺技でそれを阻止しなければならない。だが掛け声も虚しく、シュートは3人を吹き飛ばしてしまう。「一夜城」はまたも失敗だ。



 何十回失敗に終わったのだろう、疲労困憊(ひろうこんぱい)の太助たち。太助は悔しさに地面を叩くが、そんな彼の前に天馬が立つ。何も語らず、笑顔で見つめる天馬を見て太助の顔にも笑みが浮かぶ。その無言の笑顔は、どんな声援よりも太助の心を強く励ましたのだ。諦めずに立ち上がった太助は獅子丸と五郎太に指示を出す。天馬から引き継いだ太助のその笑顔は、獅子丸と五郎太をも再び立ち上がる勇気を与えた。


 そしてもう一度、フェイのシュートに挑む3人。向かってくるボールを前に、太助は頭を真っ白にして、ただ前日、天馬から聞いた言葉を思い返していた。


 「サッカーが好きなら、必ずサッカーは応えてくれる!」



 一夜城!!


 藤吉郎が見つめる中、閃光が走った。ボールは見事に弾かれ、太助たちはゴールを守ることに成功した。「一夜城」がついに完成したのだ! 相変わらずその技の形は試合本番まで見せないらしいが……。

 その完成を、チームメイトみんなが喜び、祝福する。これで彼らは今度こそ足でまといなどではない、チーム雷門のレギュラーになったのだ。特訓の間中、太助たちに厳しい視線を送り続けてきた藤吉郎もこの頑張りには深くうなづき、満足そうに笑う。傍(かたわ)らには、さらにその存在意義を失ったワンダバさんがアホのように呆(ほう)けていた。



 そして、いよいよ「うつけ祭り」の日がやって来た。夜店などが出て賑(にぎ)やかな城下では、広場に設けられたナイター設備(ちょうちん)完備のグラウンドで行われるという織田と今川の蹴鞠戦の話題で持ちきりだった。国同士の本当の戦争の代理戦争という側面は現代サッカーにも受け継がれているが、まさにそんな感じで見物に訪れているのだろう。

 グラウンド中央で対峙する両チーム。今川方であるプロトコル・オメガ2.0は怖い顔で11人勢揃いだ。ベータが太助たち現地人をメンバーに加えている雷門の布陣を侮(あなど)って馬鹿にする。




 白鹿組との戦いで見せたお荷物ぶりを揶揄しているのだろうが、今の太助たちは特訓の成果を得てこの試合に臨んでいる。「男子三日会わざれば、刮目して見よ」の故事成語の通り、慢心していてはベータたちは痛い目に遭うだろう。ただ……



 太助たちは馬鹿にされて怒り出すが、それを本性を現したベータに一喝されてシュンとなってしまう。ベータちゃん、子供相手にこの怖い顔は本気でトラウマになるからやめなさい。


 ベータは怒りの余勢を駆って、天馬たちを含め、全員が二度とサッカー出来ないように潰してやると宣言する。怖い、怖すぎる……。天馬はもちろんそんなことをさせないとやり返す。特訓の成果を今こそ見せる時が訪れた。だが神童の化身アームド、そしてミキシマックスが不完全な中、万全の状態のプロトコル・オメガ2.0に勝利することが出来るのだろうか?



 戦国の世に、今サッカーの命運を賭けた戦いが繰り広げられようとしていた!



 次回に続く



  エンディング



 特訓パートを経て、いよいよ次回から試合になる。久しぶりの全開のプロトコル・オメガ2.0との戦いだ。蹴鞠戦という名のサッカー対決ということで、信長と義元の代理戦争という側面も合わせ、楽しみな展開となってきた。義元の外見が次回予告で描かれていたけど、これはさすがに狡猾キャラすぎるでしょ↓



  
 ちなみにこっちが今川義元肖像画


 あと太助たち3人は合体必殺技で活躍の場がありそうなんだけど、余りの2人が本格的に使えない奴になりそうな予感がする。プロトコル・オメガ2.0を相手に、しろうとが通用してしまうのもマズいと思うし。


 補足で、墨俣一夜城は本当に一夜で建てられた訳ではないので誤解の無きよう。また文中で使用した故事成語「男子三日会わざれば、刮目して見よ」の原典は三国志演義の武将・呂蒙の逸話から。「男の子というのは3日も会わないと、その間に思わぬぐらい成長しているものだ」→「侮らず、その本質を見極めなさい」という意味合い。このブログ、勉強になるね(自分で言う)。

 また今回やたら目立っていた信長の家臣の林秀貞。私はこの男を柴田勝家だと思っていたんだけど、エンディングで確認したところ、違ったらしい。秀貞は織田家の筆頭家老という重職にあったが、この物語の2年後に信長を裏切って弟の信行に付くという反逆行為を犯す。一度は許されるが、その24年後に突如そのことを思い出した信長の勘気を買って追放される。同じく信行に付いて信長を裏切った勝家は最後まで許されていた訳だから、何か別の理由があった可能性もある。

 ちなみに秀貞の横にいた無口の男は同じく重臣佐久間信盛(CV:奈良徹)。この信盛も同じく後に追放される(こっちは戦でヘタを打ったせい)。信長は偉大な先見性のある男だったが、怒らせると家臣に対しても容赦しないところがあり、それが明智光秀の裏切りを招いてしまったとも言える。このブログ、勉強になるね(もう一回自分で言う)。


 最初にも書いたけど、戦国時代編がかなり長引きそうな印象だ。おそらく次回でも終わらず、次々回辺りまで行くと思われる。その後の展開がどうなるのかまだ分からないんだけど、今回は最初の過去世界だし、神童の恋バナでもある訳だし、ちょっと長いのもやむを得ないのかもしれない。

 原作というか、歴史上実在していないキャラクター編もある訳だし、そこは端折(はしょ)る可能性もありそう。



  次回「うつけ祭りの決戦!」に続く。



人気ブログランキングへ
 ↑ 最後まで読んでくれてありがとう。「このブログを好きなら(皆さんは)必ずクリックしてくれる!」(今日の格言・天馬風)という訳で、記事が面白かったと思われましたら、クリックして頂けるとありがたいです



感動共有!(初回限定盤)
T-Pistonz+KMC
アップフロントワークス (2012-07-04)
売り上げランキング: 1994

夏がやってくる(初回限定盤)(DVD付)
空野葵(北原沙弥香)
FRAME (2012-06-13)
売り上げランキング: 9624

イナズマイレブンGO ダーク
レベルファイブ (2011-12-15)
売り上げランキング: 146

イナズマイレブンGO シャイン
レベルファイブ (2011-12-15)
売り上げランキング: 117