『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』第9話「怪盗再び」の感想

 恒例のアニメ感想文『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』、今回はその第9話「怪盗再び」の感想だ。怪盗ブラックテールとしてウィンダリア王家に反目する義賊・シャオメイ(CV:斎藤千和)がパートナーを引き連れ、再度王家のベールの裏側に持ち去られたお宝奪回に挑む。


  • 前回のアニメ『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』の感想は、

『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』第8話「漂流人(さすらいびと)」の感想
 をご覧ください。

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 療養所から続く小道を歩くカグヤ (CV:桑島法子)。この島に流れ着く前の記憶を失ってしまった彼女にとっては何もかもが珍しさに溢れてるようだ。道端の花の先にいたテントウムシを見つけ、無邪気な子供のような面持ちで手を伸ばすが、当然の如く逃げられてしまう。

 飛び去るテントウムシの進路の先、山の中腹に、煙突から煙を上げる小屋が見えた。それはドワーフ族のハンク (CV:佐藤正治)の工房だったのだが、カグヤは初めて見るその建物を何か感慨深げに見つめる。あそこには、カグヤのペンダントと連動するように動き、海賊船を沈めた機械人形があるはずだが……。



 一方、パン工房「ル・クール」のカフェブースでは、王家の料理人兼お庭番のローナ(CV:広橋涼)が、ネリス(CV:相沢舞)の給仕によってパンと紅茶のもてなしを受けていた。

 王家からの客人という立場を越え、もはや普通の友人となった両者、ネリスはル・クールの職人たちでカグヤの全快祝いとこの島の案内、そして食材探しをも兼ねたピクニックにローナを誘う。ローナは部外者であることを恐縮しつつも、喜んでこの誘いを受ける。



 夜のウィンダリア城。兵士たちの警備をかいくぐり、怪しげな影が2つ、素早い動きで紛れ込んでいた。

 それは怪盗ブラックテールの2つ名を持つシャオメイと、彼女の元を訪れ協力を依頼したハンクだった。柱の影に身を潜め、シャオメイは今回の仕事に誘ってくれたハンクに感謝する。



 海中から引き揚げたお宝を王家に横取りされた彼女はそれを取り返すという名分を持って過去に幾度か侵入を果たしていたが、前回はリック(CV:神谷浩史)というイレギュラーかつ優秀な剣士に邪魔をされ、仕事は失敗に終わっていた。そのリベンジに燃えるシャオメイはハンクから泥棒の協力を求められ、喜んでそれを受けたという訳だ。

 シャオメイはまた、ハンクの狙いが引き揚げたお宝の中にあった光る小箱であることもお見通しのようだ。足さえ引っ張ってくれなければ良いと先輩風を吹きさらすシャオメイだったが、その直後、仕掛けられたトラップに足を引っ掛けてしまう。

 トラップは城の鐘を鳴らすシステムに連動していたらしく、鐘は騒々しく音を鳴らして賊の侵入を告げる。足を引っ張ったのはシャオメイだったという笑えないオチ。

 一斉に警戒態勢を取り、侵入した賊の捜索が開始される。お庭番として城内の安寧を図ることが義務であるローナの元にも呼び出しが掛かるが、そこで些かのハプニング。基本のんびり屋のローナは着替えの最中だった!



 呼び出しに駆け込んだ兵士は詫びて扉を閉じるが、やはりその役得感は隠しきれない。思わずにやける彼を、体裁を整えて戦闘モードに入ったローナが容赦する訳もなく……。



 一度ブラックテールに辛酸を舐めさせられているローナは、今度こそ捕らえると気合を込めて現場へと馳せ参じる。だがシャオメイとハンクは、その駆けていく廊下の上層の空調部分に入り込み、ダクト内を通って兵士たちの裏をかいていた。

 宝物は温度や湿度の管理が必要で、必ず換気口がそこまで繋がっていると見越していたハンクのアイデアで、しかも宝物庫まで邪魔が入らないという理想的なルートだった。これまで考えなしで挑んでいたじゃじゃ馬ぶりを揶揄され、シャオメイは一声不機嫌そうに吼える。この時のシャオメイの声はとても可愛いので一聴の価値あり(本当に可愛い)。



 「みぎゃ〜おっ!!」


 ハンクの狙い通り宝物庫にたどり着いた2人。シャオメイは手近な宝箱を開け、その輝くばかりのお宝に歓声を上げるが、ハンクはそんなものには目もくれない。やはり彼の狙いはあの輝く小箱、機械人形のパーツと思われるあの小箱の中身だけが目当てのようだ。

 そして宝石の山の中、ハンクはその小箱を発見する。お互い相手の狙うものに価値を見出せない中、価値観の違いを感じつつも盗賊の凸凹コンビは目的を果たそうとする。


 だが追っ手の手が迫っていた。狙いが宝物庫にあることが明白な訳で、賊の姿を見失った場合はそちらに向かうのがセオリーだ。ローナは兵士を引き連れて宝物庫にやって来る。そこで中から不審な音を聞きつける。警戒するローナたち。

 だが中から飛び出してきたのは、ローナたちの予測を越えるスピードの物体だった。ハンクがここまで背負ってきた思わせぶりな大理石の柱状の物体、それは高速移動できる3輪バギーの車輪部分だったのだ。

 ローナたちを軽々と飛び越え、ブラックテールとその一味は逃げ去っていく。


 その後も兵士たちを蹴散らして進むバギー。だがどうやって先回りしたのか、ローナがその前に立ちはだかる。そして彼女の得意技、クナイで搭乗者に狙いをつける。それを迎え撃つのはシャオメイの役割だ。ブラックテールのカードを投げ返し、的確にクナイを相殺して打ち落とす。

 その隙を突き、ハンクはバギーをドリフトさせ、脇道に進路を変え追跡を逃れる。ただその脇道は地下迷宮に続く進路だったらしく、ある意味袋小路に追い詰められた感がある。


 案の定、行き止まりと思える場所に追い詰められてしまう。ハンクは壁に描かれた魔法陣のようなものに目を付ける。さっきまでバギーの車輪だった部位をそのままハンマーに変え、ハンクはその魔法陣が描かれた壁を思いっきり叩き壊す。追い詰められた逃亡劇とはいえ、ハンクも結局は荒っぽいやり方に訴えるタイプのようだ。

 ドワーフの力技は一撃でその壁を破壊する。すると、その壁の穴の奥から赤く発光した何物かがこちらに近づいてくる。シャオメイが事態に驚いている間も、ハンクは至って落ち着いた調子でウィンチワイヤーが仕込まれた義手を天井に打ち込み、それを巻き取りつつゆっくりと上昇を始める。置いて行かれると危惧したシャオメイが慌ててその足にしがみつく。



 迷宮に封印されていたモンスター・ゴーレム。


 穴から這い出てきた赤い眼の物体、その正体は迷宮に封じられていたモンスターだった。そこにローナたちも駆けつけてくる。普通に考えれば絶体絶命の状況だが、ハンクには策があった。

 天井に開けた穴から上層階に抜け、さらに義手を放ち、ゴーレムの視線をローナたち追っ手の方に向ける。新たな侵入者としてローナたちを視線に捉えたゴーレムは、対象をそちらに変更して追跡を開始する。ゴーレムに追われ、命からがら逃げ出すローナたちを見送り、ハンクとシャオメイは追っ手を撒くことに成功してしまう。


 突如現れたゴーレムにパニックになってるウィンダリア城を苦もなく抜け出した2人。城の裏にそびえる山上からそのさまを見ながら、シャオメイは今後も一緒に盗賊として協力しないかと軽口を叩く。だがハンクはすげなく断る。彼にとっては今回入手した機械人形のパーツさえ手に入れば、他に欲しいものも無いのだろう。

 バギーを駆って走り去るハンクを、やや残念そうにシャオメイは見送る。


 工房に戻ったハンクを、彼をして泥棒行為を行わせてまでその存在を完全なものと成したいと思わせた機械人形が迎える。



 ハンクは小箱を開き、中で輝くパーツを見つめる。それを機械人形に付設すれば、彼の抱いてきた念願は叶う。だがそれをした結果、この機械人形が何をもたらすのか、それが分からずハンクはしばし逡巡する。人型をしていようと、その正体は島に押し寄せた海賊船を一瞬にして沈めてしまう火力を持つ超兵器である。何かが始まるのか、それとも何もかもが終わってしまうのか……



 ハンクの葛藤から来るつぶやきにも、機械人形からの返答は無かった。



 一夜明け、ル・クールの面々はピクニックに出発する。楽しい行程のはずなのだが、前夜怪盗ブラックテールを逃し、またも失態を演じてしまったローナはしょんぼりと気落ちしていた。

 悲しむローナをアミル(CV:伊藤かな恵)たちが慰めるが、ブラックテールの正体を知るリックはやや複雑な表情。どちらも顔見知りだからなぁ。

 仕事のことは忘れ、今日は楽しもうと話題を変えようとするネリスだったが、ローナの気は晴れない。だがそんな空気など全く読まないカグヤがその場の雰囲気を一変させる。鼻を鳴らし、良い匂いがすることに最初に気づいたのだ。砂糖露草(さとうつゆくさ)の群生する場所に向かっていることを告げ、エアリィ(CV:三上枝織)はカグヤのその天真爛漫さと鼻の効きの良さに笑顔になる。ローナにも食材探しの腕前に期待しているとアミルたちは話をふり、ローナはようやく悩みを忘れた笑顔を見せる。





 そして楽しい食材探し。たくさんの野草や果実を集め、病床明けのカグヤも大喜びだ。


 そしてここからは遊びの時間だ。馬車の後ろに積んでいたボートを湖に運ぶ。男手がリックだけなので大変そうだが、みんなで力を合わせ、何とか浮かべることに成功した。

 パンの仕込みなど手が離せない仕事があるのだろうか、リックはそこで馬車で先に帰宅する。見送るみんなの表情は笑顔だったが、ただ一人、アミルだけがなんとも言えない不安そうな表情を浮かべていた。

 滝が流れ落ちるこの湖は、おそらくお使いで牧場へ向かう途中にあった、あの水遊びの湖だろう。リックが抜け、男性の視線を気にする必要がなくなったアミルたちは大胆な水着姿で水遊びを満喫する。




 今週のサービスカットのコーナー。水の掛け合いっこをするアミルとローナ。


 彼女たちを照らしていた太陽が一瞬雲間に隠れた。再び顔を出した太陽を見つめていたカグヤだったが、そのお腹がぐうと鳴る。太陽の眩しさでくしゃみが出るというのはよく聞くが、お腹が鳴るというのはさすが食いしん坊キャラのカグヤらしい。さすがに恥ずかしかったのか、カグヤは顔を赤らめる。


 そしてこれも楽しい昼食タイム。美味しそうなパンを見て、ローナのお腹も鳴ってしまう。幸せな笑い声に包まれる一同。カグヤとローナは勧められ、早速パンを食べ始める。アミルの作ったクロワッサンのあまりの美味しさに、「城を辞めてル・クールに就職する?」というエアリィの軽口にも本気で悩み出すローナが可愛い。

 カグヤの方も返事する時間も惜しいと言わんばかりにパンを貪る。食べ終わるや、もう一つお代わりを要求するその食いしん坊っぷりに、アミルたちはやはり破顔一笑してしまう。その無邪気な姿がいじらしく滑稽だというのもあるだろうけど、自分たちの作ったパンを喜んで食べてくれるのが嬉しいという気持ちもあっただろう。



 今日という楽しい一日は、記憶を失い、これから思い出を作っていく立場であるカグヤにとっては何よりも素晴らしく、かけがえのない経験であったことだろう。


 穏やかで、楽しいひと時が過ぎていく。



 そして夕暮れ。湖から繋がる川を下ってそのまま街の方に戻ってくるアミルたち一行。なるほど、こういう帰路があるからリックが馬車で先に帰ってしまっても大丈夫だった訳だ。

 川から望める夕日の素晴らしい美しさに歓声を上げるカグヤ。カグヤが喜ぶ様が、自分たちのことのように嬉しいエアリィとローナ。そんな中、櫂をこぐアミルだけは、先ほどと同じように一人、憂い顔を浮かべていた。



 深夜のル・クール。パン種を棚に並べたリックは仕事を終え、帰宅しようとする。だが扉を開けたところで寝間着姿のアミルが眠ることなく立っているのを見かける。何か思うところがあり、眠ることが出来ないのかと悟ったリックは、ル・クール屋上にアミルを誘い、話を聞くことにする。



 屋上のテラス。今日は赤くない普通の月明かりが照らす中、アミルはリックに聞きたかったことを問い質す。リックを傷つけないよう、たどたどしく言葉を選びながら、リックがまだ悩みを抱いていることを心配している旨を告げる。

 リックはしばらくアミルの顔を見つめ、おもむろに語り始める。その視線を受け、思わず「ハイッ」と敬語で返してしまうアミル。リックは剣士ではなくパン職人として生きることを決めたとしても、失われた記憶があるということに変わりはない。それによって迷いが生じていたことも認めたうえで、リックは明るく「もう大丈夫だ」と告げる。

 もう迷いはないこと、そしてアミルたちみんなと過ごすこの今の人生が最も大事な、かけがえのないものであることに気づいたということを話す。だから心配しないで、と伝えようとしたリックの言葉にアミルの瞳が潤む。

 月が雲に覆われ、影が差す。

 リックはなおも、ここで培ったアミルたちとの思い出が自分を支えるから、どんな過去を自分が送っていたとしても、今の自分を見失うことはないと断言する。

 リックを心配していたことが一人相撲だったことをごまかすかのように、アミルは不機嫌な口調でリックを責める。だが彼女の心を一番占めていたのは、きっと安堵であっただろう。アミルは涙を浮かべ、リックへの思いが杞憂であったことを心から喜ぶ。アミル自身だけでなく、ネリスやエアリィの気持ちも代弁して、自分たちもリックと同じでみんなが居るから大丈夫なのだと返す。



 アミルたち3人娘も、リックと同じ漂流人(さすらいびと)として過去を失ったうえでこの地で生きている。心を許しあった仲間とのこの地での思い出が彼女たちを支えている。それはリックの思いと寸分の差もないもののはずだ。


 アミルはリックに改めて自分たちと一緒に居てくれることを感謝する。笑顔でそれを受けるリック。雲間から姿を現した月がくっきりと2人のその姿を映し出し、黒い影をテラスに落としていた。


 同時刻、シャオメイの骨董屋。眠っていたシャオメイの耳が何かを聞きつけ、立ち上がる。窓から外の様子を窺うと、王国の兵士たちが隊列を組み、建物を包囲している様子が見えた。怪盗ブラックテールの正体がバレたとみるのが正解だろう。

 今そこにある危機に対し、シャオメイは不敵な笑顔を浮かべる。彼女にこの状況を打開する手段が残されているのだろうか?




 さらに同時刻、機械人形の前で未だ態度を決めかねていたハンク。その決断を促すかのように、機械人形から激しい光条が湧き出す。そこに扉を破ってやって来る王国兵。王国の手入れはハンクの工房にも迫っていたのだ。

 ハンクを連行しようとするヒゲの隊長(CV:山本兼平)だったが、機械人形から飛び出した光条はハンクの腕に絡みつき、その手からパーツの入った小箱を強奪する。

 パーツは一瞬にして体内に取り込まれ、機械人形……クイーン(CV:橘田いずみ)の目が開く。怯える王国兵、そして驚愕に目を奪われるハンクの前で、ついに彼女は完全体となったのだ。




 さらにさらに同時刻。療養所の寝台脇の窓から外を見つめるカグヤ。おそらくは異変の起こるハンクの工房方面を見ているのだろう。その胸にかけられたペンダントが、怪しく輝き始める。機械人形が動き、海賊船を屠ったあの時のように。




 次回に続く。



 エンディング



 前半は緊迫の怪盗パート、後半はほのぼの日常パート……と思いきや、ラスト数分はかなりの事態の急変がやって来て戸惑った。ハンクの奪回したパーツがクイーンを覚醒させるキーパーツとなることは想像していたが、シャオメイとハンクに王国の追求の手が伸びるという展開は予想外だった。物語は一体どうなるのだろう?


 リックの側はむしろ過去とは吹っ切れ、パン職人として楽しい生活になりそうなのだが、前回接近を匂わしていた謎の要塞を含め、戦闘ムードが高まってきている。リックの迷いを解き放ったのも前回の登場人物たちであり、その辺は話が上手く継続しているという印象。

 カグヤのペンダントとクイーンとは完全に連動しているようだし、彼女たちにはこの地に流れ着く前に何らかの関わりがあったことは確実だろう。無垢の象徴であるカグヤと、戦闘能力がおそらく作品中最も高いクイーンが、この後どうストーリーに絡んでくるのかが大きな見どころとなりそう。


 次回はそのカグヤが姿を消すという。シャオメイたちの立場と共に、物語は佳境に差し掛かったような印象を受ける。やっぱり1クールで終わってしまうのかなぁ? キャラは魅力的だし、ストーリーも面白いだけに、もしそうだったとしたら残念な気がする。とりあえずシャオメイとハンクが無事でいて欲しいと願うのは、やはり正しい視聴者の姿だと思う。



 次回「異世界からの使者」に続く。



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