『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』第7話「それぞれのココロ」の感想 【パンアニメ確定おめでとう】

 恒例のアニメ感想文『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』、今回はその第7話「それぞれのココロ」の感想だ。前回の顛末でシャオメイ(CV:斎藤千和)が怪盗ブラックテールであることに気づいたリック(CV:神谷浩史)。彼の思いは? そして彼が取った行動とは? そして怪盗行為を働いていたシャオメイの目的とは?


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『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』第6話「王子からの依頼」の感想
 をご覧ください。

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 未だ療養中の漂着者・カグヤ (CV:桑島法子)を見舞うリックとエアリィ(CV:三上枝織)だったが、カグヤはパンを食べようとしない。彼女の好みに合わないらしいが、それを作ったリックの心も晴れない。そんなリックは療養所を訪れていたシャオメイに気付くが、彼女は何も告げることなく出て行ってしまう。

 リックの心が晴れない理由。それは前回の泥棒騒動の折、撃退した盗賊ブラックテールの姿を見ていたからだった。その盗賊の姿こそ、シャオメイその人であった。まったく知らない仲ではないシャオメイがどうして犯罪行為に手を染めていたのかを思い、且つそれを誰にも明かすつもりにもなれないリックは一人思い悩む。


 その頃、パン工房「ル・クール」ではドワーフ族のハンク (CV:佐藤正治)がパン窯の修理を行なっていた。おそらく前回の盗賊退治の褒美を使って招請したのだろう。アミル (CV:伊藤かな恵)がお茶を持参して、休息を取るよう促す。

 一息つきつつ、ハンクはいつもの仏頂面でマデラ(CV:江森浩子)の知り合いであることを初対面時に告げなかったアミルを非難する。マデラとは旧知の彼のこと、そうだと分かっていれば法外な修理費を要求して遠まわしに仕事の依頼を断ることは無かったという。

 ハンクの不機嫌そうな顔つきで、それを上手く伝えることが出来なかったのだとアミルは釈明する。マデラとの義理を欠く訳にはいかないらしく、修理費はハンクにしては相当安く抑えてくれたらしい。浮いたお金で店舗の方にも改修費を回せたことに礼を言うアミル。

 アミルは興味本位からマデラとの過去の縁を訪ねるが、ハンクはただ一言「昔はあんな奴ではなかった」とだけ答える。そして後はマデラ本人から聞けとはぐらかし、取り合わない。何か過去に因縁がありそうなのだが、あまり話したくない思い出なのかもしれない。



 ハンクは話題を変える。アミルもエアリィも、そしてネリス(CV:相沢舞)も、何処かからこの島に流されて来た「漂流人(さすらいびと)」であるらしい。何だ、リックとカグヤだけでなく、パン屋の3人娘たちも全員、漂流人だったんだ? これは意外。

 それだけを確認すると、ハンクは作業に戻るべく、工房の中へ去ってしまう。相変わらずの仏頂面のまま。


 リックはパン作りの師匠であるマデラの元を訪れ、自分の焼いたパンの味見をしてもらっていた。マデラは盗賊退治以後、リックのパンの出来が悪くなっていることを指摘する。昏睡状態のカグヤがリックのパンを喜んで食べなかったのも、ここに原因がありそうだ。

 駄目出しされたリックは改めてパン作りに精を出すが、どうにも心機一転という訳にはいかないようだ。心の中では、シャオメイとのこれまでの経緯(いきさつ)が思い浮かび、集中できない。

 その様子をじっと見ていたマデラは、シャオメイの元にパンの配達に行くよう指示する。リックの悩み、そしてその原因にシャオメイが関わってるということを何故かマデラは見抜いていたのだ。本人に聞けばよいと促すマデラに、自身の思いを見透かされた感のあるリックは思わず鼻の頭を掻く。

 だがリックは答えてくれるのかどうかを心配する。答えようと答えまいと、その態度に真実のかけらがあると再度マデラから告げられ、リックはシャオメイの元へと向かう。

 エアリィはリックを見送りながら、盗賊退治をリックと共にしたネリスに、城で何かあったのかを尋ねる。ネリスはリックが盗賊の正体に気づいていること、そしてその正体が何者であるかも気づいていたようだ。


 リックはシャオメイの骨董屋を訪れる。

 予想に反し、シャオメイは笑顔でリックを迎える。そしてリックが切り出す前に、何か言いたそうな様子を察して屋内に迎え入れる。その一連の様子には一切の屈託がないように見えた。



 骨董屋らしく、骨董的な調度品が並ぶ応接室に通されたリック。お茶の用意をしていたシャオメイがやって来る。優雅にお茶を飲むシャオメイの左腕には包帯が巻かれており、それは城内での戦闘で盗賊がリックに受けた傷と同じように見えた。彼女が療養所を訪れていた理由も、この怪我の治療のためだったのだろう。

 依然話を切り出しにくそうなリックに対し、シャオメイはあっけらかんと自分がその疑心に違わぬ存在であることを認める。ある程度はシャオメイの方も、リックに正体を知られたことを覚悟していたのだろう。

 正体を知られたことをリックに告げられ、なぜ泥棒をするのかと問われたシャオメイは驚く。なぜと聞かれるよりも、罪を認めて自首するよう勧められると思っていたからだ。

 泥棒行為を失敗して手ぶらで帰ったのは前回が初めてだったと語るシャオメイ。助っ人として参列していたリックの剣の腕前を褒める。昔使っていたのかと問われたリックだったが、彼はこの島に漂着する前の記憶がまだ戻っていない。盗賊退治もたまたま城に使いに行った折、王子のラグナス(CV:緑川光)の勧めがあったから受けただけだったのだ。

 それを聞き、王子はリックを試したと意味深なことをいうシャオメイ。ラグナスはリックのことを本人よりもずっと詳しく知っているらしい。



 リックの持参したパンを頬張るシャオメイ。また彼女の好物の魚パンだったが、それにしては浮かない表情。おそらくこれまで同様、リックの悩みがパンの味に出ているのだろう。


 リックの悩みはシャオメイに向けてのものだけでなく、自らの失われた記憶にも起因していた。盗賊騒ぎで知った自分のもう一つの能力。思った以上に上手く剣を扱える自分の存在が何なのか、その出自にも言いしれぬ不安があったのだ。それを茶化して語るシャオメイに対し笑みを浮かべながらも、本質を突いたその言葉にリックは超然とする。

 そしてその態度にやや憤ったリックは、「なんでも知ってる泥棒の言うことなら正しいんじゃない?」と彼に似合わない厳しい皮肉を言う。そして義賊といえども、他人のものを奪う泥棒であると決め付ける。それにはさすがに気色ばんだシャオメイは、机を叩いて反論する。

 睨み合った両者は、お互い分かり合えないということを理解したかの如く、社交辞令的な挨拶を交わし、別れる。残されたシャオメイは、リックのパンを見つめて何かを思う。



 一方、ル・クールでは窯の修理をほぼ終えたハンクが、海からの引き揚げ物を城に横取りされた時のことを思っていた。そこに帰ってくるリック、煙突から上がる煙を見て、窯の修理が終わったことに気づいてやって来たのだ。

 リックはハンクに対し、今の仕事を選んだ理由を問う。パン屋と剣士の間で揺れる自己のアイデンティティを確立したいという思いからの質問だろう。ハンクは、リックがパンを焼く仕事をしている方が不思議だと変わらぬ無愛想な口調で返す。


 却って分からなくなるようなことを言われ、リックは夕暮れの海を訪れて、一人佇む。



 長時間そうして黄昏(たそがれ)ていると、後ろから陽気な声が掛かる。この悩みの元凶の大元である、シャオメイだった。彼女は何かで一杯になった袋を持っていた。そしてなぜ泥棒をしているのかとさっき問われた回答を用意していた。

 「明日食べるパンを確保してる連中は、今日できることを後回しにする」とやや比喩的に答えるシャオメイ。それはおそらく恵まれた王族を揶揄し、彼らが後回しにしている貧困層への富の再分配を、彼女が代わってやっているということの暗喩となっているのだろう。危険を冒して城に忍び込み、泥棒行為をする彼女のそれが免罪符となっている訳だ。

 そういった周りへの視点を持つシャオメイに対し、自分のことで精一杯だとリックは卑下するが、それは違うとシャオメイは諭す。逆に周りが見えてきたからこそ、リックは不安になって来ているのではないかと言うのだ。

 そしてシャオメイは、今こそそれを見せる時だとばかりに、リックをある場所に誘う。彼女が泥棒をする理由が今明かされる。


 彼女がリックを連れてきたのは、あの篤志家のおかげで修繕できたあの教会だった。そこに住まう孤児たちに「お姉ちゃん」と慕われる彼女は、持っていた袋を開いて子供たちに示す。そこには子供たちが目の色を変えて喜ぶ、おもちゃが満載されていた。それは孤児の子供たちには望んでも届かない、素晴らしく嬉しい贈り物だった。



 笑顔で子供たちに応じるシャオメイに差し出されるぬいぐるみ。深刻な表情でそれを差し出す少女にも、シャオメイは優しく修繕して持ってくることを告げる。彼女は壊れたおもちゃの修理も請け負っていたのだ。シャオメイのその言葉を聞き、少女は泣き出しそうだった表情を笑顔に変え、心から安堵の表情を浮かべる。



 そしてそれを見守っていた教会の神父(CV:荒井聡太)が会釈する。いつも子供たちが世話になってるシャオメイに対するお礼の気持ちだったのだろう。さらには大口の寄付をしてくれた篤志家がシャオメイであることをも、彼は知ってるのかもしれない。


 教会からの帰り道、おどけながら自らの手の内を全て晒したと語るシャオメイは、突然リックに向き直って自分と一緒に仕事をしないかと誘う。つまり、泥棒行為への勧誘だ。前回の戦場のウィンダリア城を示しながら、朗らかに、何か落ちている石を拾いに川原にでも出かけるかのような軽さでお宝を盗みに行こうと誘うシャオメイ。

 今のところリックが乗り気ではないということも見透かし、シャオメイは去っていく。笑顔を浮かべ、いつかは協力してくれることを期待しつつ。


 そして夜、まだ居候しているマデラのパン屋に戻ったリックは、アミルたちに対して、意を決したかのように、話があると告げる。ただならぬ雰囲気を感じ、アミルはリックが剣士の道を選んでしまったのではないかと項垂(うなだ)れ、気落ちする。

 マデラも交え、5人で卓を囲んでリックの話が始まる。リックが以前にもカグヤを助けるために剣を振るったことを話し、そして今回、盗賊退治の時にも剣を持ち、自分の想像以上に剣を上手く扱えたことを話す。そこから自分の失われた過去に思いが及ぶことになったと素直に語るリック。パン職人としての自分は、もしかしたら偽りの存在なのではないかと思い至ったという。

 自分たちもおなじく漂流人の立場として、リックの気持ちは理解できるとネリスは言う。エアリィも同様にうなづく。アミルはここでマデラに問いかける。マデラは以前は人助けをするような性格ではなかったらしいが、何度も漂流人を助けてきたらしい。言及されなかったが、アミル、ネリス、エアリィの3人も過去にマデラに助けられたのだろう。

 マデラは過去の自らの性格を認め、それでも漂流人を世話していくうちに、それが自らの天職だと思うようになったと語る。そして大事なのは、それを当人が認めるということだと言い、リックにその覚悟を問い質す。パン屋の職人であることを天職であると認めるかどうかを問うたのだ。

 リックの返答次第では、これまでのような生活を送ることが不可能となりかねない。不安そうにリックを見つめる、エアリィ、ネリス、そしてアミル。長い沈黙の後、リックは今の自分に課せられた使命は、パンを焼き、それをみんなに届けることだとキッパリと宣言する。

 聞きたかった言葉を聞き、アミルたちの表情に笑顔が浮かぶ。マデラも喜び、その考えに徹するよう言う。そして戒めるように、もう一つ忠言する。秀でた力には善きにつけ悪しきにつけ人を惹き付ける力があるが、善き力がいつの間にか悪しきものに変わってしまうことがある。それを糺すのも、集まった人の為すべきことであると。これはリックの力を言うのか、それとも王国のことを示唆しているのか、今のところ分からない。

 ただ今夜はリックの迷いが晴れ、それによってアミルたちの不安も晴れたといえる、全員が笑顔になった良き宵闇であった。

 アミルはハンクが修理費用を大きく下げてくれたおかげで、店舗にも手を入れることが出来たとマデラに報告する。マデラの顔効きがあればこそだから、この感謝も当然だろう。

 アミルたちは相談の上、店舗内にパンを食べるスペースを作ったらしい。よくある喫茶店兼用ベーカリーという感じだろう。ハンクの頑張りにより、明日からル・クールでの経営が再開できるという。迷いを捨て、パン職人として頑張ることを決めたリックとハンクの修理した窯なら、今後の経営にも何の不安もないだろう。笑顔で明日の再開を楽しみにするリックたちル・クールの従業員たち。


 一方、ル・クールでの仕事を終え、彼の工房に戻ったハンクは、工房の天井から吊り下がる機械人形と再会していた。そして怪盗ブラックテールは、その日もウィンダリア城にその姿を見せていた。彼らも彼らの心に決めた仕事を遂行していたのだ。


 翌日未明、いつものようにリックを起こしに来たアミルは、すでに目覚めていたリックに出会う。いつも目覚ましに来てくれていることを感謝され、アミルは嬉しくなってしまう。

 ル・クールへの道中、アミルはこれまで抱いていた不安を打ち明ける。いつか記憶を取り戻したリックが、アミルたちのいるル・クールから居なくなってしまうのではないかという不安な気持ち。だが昨日のリックの決意を聞いたればこその、この吐露なのも間違いないだろう。リックが何処にもいかないと聞いたアミルは、その嬉しさを押し隠せないかのようにリックの手を引き、懐かしき仕事場へと駆け出す。


 早速新しい窯で焼けたロールパンの出来に歓声を上げるネリスとエアリィ。それに釣られて、リックとアミルも笑顔となる。





 久々のル・クールという訳で、この無茶な客引きも再開される。マデラのパン屋に居候していた時にやらなかったのは何故だろう?


 開店早々、窯の故障前と変わらぬ盛況ぶりで、ル・クールは大繁盛だ。そして店舗の横にオープンした飲食スペースも好評の様子。

 お昼時、療養所を訪れたリックとアミルはカグヤにパンを届ける。リックのパンの美味しさが元に戻ったのだろう。前回の訪問時と違い、カグヤは起き上がって自分でパンを食べ始める。



 美味しいパンの時はちゃっかり起きてきてパンを食べるカグヤ。可愛いんだけど、食っちゃ寝キャラの上に「ちゃっかり現金キャラ」という属性が追加されそう。


 そのさまを喜ぶ一同。医師のロン(CV:麻生智久)からは、今後もカグヤのためにリックのパンを届けて欲しいと頼まれる。苦笑するリックだったが、病室内にはみんなの笑顔と共に、暖かで穏やかな雰囲気に満ちていた。


 一方、夜の闇に紛れるように海上に浮かぶ怪しげな船。また海賊船だろうか? その船上は騒然となっていた。船長と呼ばれた男が船倉から現れ、部下たちの指し示す方を見やる。



 船長のディラン(CV:中井和哉)。


 そこには彼らの乗る帆船などとは比べ物にならない程大きな鋼鉄製の船がそびえ、その船が破壊したであろう船の炎が周囲を赤く彩っていた。



 ディランは緊急退避を手下たちに命ずる。その鋭い眼には恐怖の色が浮かんでいた。




 次回に続く。



 エンディング



 シャオメイは意外なほどあっさりと怪盗ブラックテールであることを認めた。日の出の窓際で振り向いたという段階で、リックに見られていたことは覚悟していたのだろう。そして自分を告発しないということも。するのなら、王子から褒美を貰う時に言っていただろうから。あと一緒に行動していたネリスも結局気づいていたようだった。リックの悩みに思いが至っていた点は、そうとしか説明がつかない。


 それよりも今回驚いたのは、アミル、ネリス、エアリィの3人もこの島に流れ着いた漂流人であったということ。リック(とカグヤ)だけじゃなかったんだね。どれだけ漂流してくる場所なんだ、このウィンダリア島は? 3人ともリックのようにマデラに住居や職業を世話されたのだろう。


 次回はハンク以来、久々に男らしいキャラ、今回のストーリーの最後を飾った海賊(?)のディランがストーリーに絡んでくるらしい。以前作中で触れられていたが、海賊にも良い海賊と悪い海賊がいるらしいので、ディランは良い海賊であることを期待する。製作サイドが狙ったのかどうか、声優が「ONEPIECE」のロロノア・ゾロ役の中井和哉さんだから、きっとイイもんのはず。

 パン職人に生きることを決めたリックとどう絡むのかは観てのお楽しみというところだろうか。今回はパンアニメ確定の回だったようで、アミルたちは嬉しそうだったけど、視聴者的にはどうなるのか心配だったりする。カグヤと機械人形、それと一癖ありそうな王子の思惑など、まだ伏線も多いことだし、これは2クール行くのかな?



 次回「漂流人(さすらいびと)」に続く。



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