『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』第11話「決戦」の感想 【こんなの絶対パンアニメじゃねえ】

 恒例のアニメ感想文『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』、今回はその第11話「決戦」の感想を書く。前回から唐突にまとめに入った感のある本作、ほのぼのパンアニメがどういう収束を迎えるのか、最後まで見守って行きたいと思う。


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『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』第10話「異世界からの使者」の感想 【こんなのパンアニメじゃねえ】
 をご覧ください。

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 異次元の世界からカグヤ (CV:桑島法子)を、そして彼女の持つ精霊石を求めて異形の爬虫類人間たちが乗り込んだ武装船団がウィンダリア島に襲来した。島の住人たちを救うため、カグヤは彼女の忠実な下僕である機械人形のクイーン(CV:橘田いずみ)と共に武装船団に向かう。両者の戦火が沖合にたなびくように浮かぶさまを、リック(CV:神谷浩史)たちは呆然と見つめる。



 武装船団の砲撃をかわし、カグヤとクイーンはその中央の要塞に降り立つ。巨大な要塞の威容に圧倒されながらもカグヤは迷うことなく歩を進める。人影は全く見えない。

 だが前進するカグヤに語りかけてくる謎の声(CV:安元洋貴)が。と同時に今まで見えていなかった人影……いや、人とは思えない異形の存在が多数、甲板に姿を現す。それは爬虫類を思わせる、相手を威圧する形相に満ちた危険な雰囲気を漂わせるものであった。



 たじろぐカグヤに、守護するべき立場のクイーンが警戒を告げ、カグヤの前に出る。カグヤをサクヤという名で呼ぶ謎の声はその間も続く。黒い楕円状の物体が浮かび上がる。どうやら声はその物体が発しているらしい。カグヤは勇気を出して、自分が彼らの元に降(くだ)るので、島の人たちには手を出さないでと声を張り上げる。

 だがその謎の声は納得しない。彼らはカグヤだけでなく、彼女が持っていた精霊石をも求めているからだ。周りの爬虫類人たちも騒ぎ出す。カグヤのペンダント=精霊石はクイーンの機転で、地下牢で出会ったシャオメイ(CV:斎藤千和)に手渡されていた。相手側のあからさまな敵意から、交渉は決裂に終わったことをクイーンは覚悟する。



 一方、マデラ(CV:江森浩子)のパン屋に集合したリックたち。リックは赤い月と嵐、そしてこの島に流れ着く漂流人(さすらいびと)の関係を語る。カグヤも、自分自身も、そしてアミル (CV:伊藤かな恵)もネリス(CV:相沢舞)もエアリィ(CV:三上枝織)も、何処かからこの島に流されて来た漂流人だった。

 リックは根源的な悩みであった、漂流人とは何なのかという問いかけをする。知りたいが、知るのが怖くてみんなあえて考えないようにしていた命題だ。だがカグヤがいなくなり、武装船団が攻め寄せてくるという事態に及び、もはや現実から目を背け逃げている訳にはいかないとリックは判断したのだろう。

 その意気を受け、マデラは今こそ漂流人、そして赤い月の真の意味を彼らに語り始める。漂流人はこの世界の外、異世界からやってくる者たちの総称で、カグヤもそういった一人だと語る。カグヤは元いた世界では戦闘を行うのに強大な能力を持っていたらしく、その能力を求めて武装船団はカグヤを追ってやって来たらしい。そして彼女の持つ精霊石がその能力を発揮するキーパーツなのではないかとマデラは推察する。



 灯火管制が引かれた折、正体不明の海賊船がこの島を襲来したことがあったが、その時意識を失っていたはずのカグヤを覚醒させるため、精霊石は光って反応したのだろう。あの時やって来た海賊船も今回のように異世界からカグヤを求めてやって来たのだとすれば、その能力は持ち主である彼女を救うためのものだという可能性がある。精霊石の輝きに反応したクイーンの存在がその何よりの証明だ。


 そこまで聞き、リックはさらなる懸念を口にする。カグヤ同様に外の世界から来たと考えられるリックは剣士の格好をしてこの島に流れ着いた。マデラはその姿通り、リックも別世界で戦いの毎日を過ごしていたと推察する。カグヤもリックも、そしてアミルたちも、絶え間無い戦いの世界で心と身体を傷つき、疲弊した末にこの世界にやってきたのかもしれないと、マデラは語る。彼らは戦いの世界が嫌になり、この世界に逃げてきたという推測だ。

 リックたちの心にほんのわずかに残る記憶の残像、それがマデラの言葉を肯定するものであることが分かった。


 言葉を失ってしまうリックたち。だがそこで何者かが扉を叩いて来訪を告げる。出てみると、王国兵が馬車に乗ってやって来ていた。王子・ラグナス (CV:緑川光)がリックを呼んでいるとのことを告げ、同行を求める。



 一方、要塞の上では爬虫類人たちが怒りの形相で押し寄せる。精霊石が無ければ、カグヤには価値がないらしい。精霊石の所在を問う謎の声。ここに至り、クイーンは交渉の余地なしと言い切り、カグヤを連れて離脱しようとする。

 だが要塞そのものが意思を持つかのようにカグヤの足に黒い触手を絡ませる。そしてその触手は、どす黒い思念そのままにカグヤを飲み込み、カグヤは囚われの身となってしまう。



 そして爬虫類たちが一斉に襲いかかる。クイーンは不覚にもカグヤの手を離してしまう。空中に舞い上がりながら反撃し、マスター救出に燃えるクイーン。武装船団からの砲撃が彼女を襲う。



 さしものクイーンもカグヤが囚われてしまっては手が出せない。空から反撃の機を窺う。



 そしてウィンダリア城。謁見の間では戦況報告が行われていた。武装船団の動き、そしてカグヤとクイーンの動向も逐一報告されているようだ。報告と入れ違いにそこに入ってくるのは、ラグナス直々に招請したリックたちだった。

 カグヤが島の人たちを救うため、自らの意思で要塞に乗り込んだということを聞かされ、リックは驚く。そこに宝物荒らしのかどで捕らえられていたシャオメイとドワーフ族のハンク (CV:佐藤正治)が連れて来られる。



 ラグナスは彼らからカグヤの考えたことを聞き出したと、暗に語る。カグヤから精霊石を託された経緯から、島の住人の安全のために犠牲になろうというカグヤの意志まで。

 カグヤの行為次第で、武装船団はこの島に害をなさずに立ち去っていくかもしれない、とラグナスは言う。しかし、彼はこの島に流れ着いた人間を黙って見捨てる行為は本意ではない、と付け加える。



 カグヤを出来れば救いたいと吐露するラグナス。彼が実はイイ奴であることがここで判明する。今まで散々「黒幕はコイツだ」とか言って来てすまんかった。


 そして王子の指示であろう、4人の兵士が鎖で厳重に封印された細長い匣を持ってくる。その中央には、リックがこの島に流れ着いた時に傍らにあった剣が固定されている。その剣に見覚えのあるリック、そしてアミルたちはその剣が運ばれてくるのを絶句して見守る。

 今まで取り上げてきたその剣をリックに返還する、ラグナスのその真意とは……?


 それはリックにもおおよその想像は付いていた。その剣を取り、異世界武装船団を相手取ってカグヤを奪い返せということだ。ラグナスは強制はしない。あくまで依頼という形でリックに詰め寄る。


 ラグナスの気持ちでは、絶対に受けてもらえると思っていた。CMをまたいでの長い沈黙の後、リックが下した判断は「否」であった。


 リック「俺には出来ません!!」


 ラグナスはくじけず、魔術の心得のある妹・ルフィーナ(CV:堀江由衣)にも協力させると食い下がるが、リックはパン職人の自分には戦うことなど出来ないと、再度拒否する。

 シャオメイを見つめながら、リックが怪盗ブラックテールと互角に戦ったことを賞賛するラグナス。その時はパン窯を修理するための褒美が欲しくて頑張った結果だと苦し紛れに言い訳するリックだったが、ラグナスは今のリックが悩みからまともなパンを作ることが出来ないということまでお見通しだった(ラグナスの傍らに立つローナ(CV:広橋涼)の姿が映り、彼女からの情報であることが暗示される)。

 リックが生粋のパン職人ではないこと、そして剣士の姿こそが本当のリックの過去であると強い口調で語るラグナス。どうしてもカグヤ救出を引き受けてもらいたいという気持ちからの口調だったのだろうが、リックは怒りに顔を引きつらせて場を辞する。この世界での自身の行為を全否定されたようで悔しかったのだろう。



 失礼します!



 その間も、クイーンと武装船団との戦いは続いていた。ものすごい弾幕でクイーンを攻撃する武装船団。そんな喧騒をよそに、リックはパン工房「ル・クール」に戻り、黙々とパン作りに打ち込む。カグヤのことも、そして漂流人のことも忘れ、一心にパン作りに打ち込みさえすれば、自身の未来は拓かれるとでも思い込むかのように……。

 パン種を仕込み、屋上テラスへと登ってきたリックはそこで、未だ空を赤く染める艦砲射撃と、それに見入るアミルたち3人娘の姿を認める。振り返ってリックを見つめるアミルたちのその目は、まるで何かを訴えかけるかのようだった。



 その目に心を射られたかのように思ったリック。


 アミルはリックがパンがうまく焼けずに悩んでいたことを知らなかったことを詫びる。エアリィはリックが失ってしまった過去の記憶に対する不安を気づけなかったことを反省する。そしてネリスはそれを受け、過去がどうであったとしても今のリックこそがリックなのだと現在のリックを肯定する。



 アミル「あなたの素直な気持ちのままでいいよ」


 エアリィ「無理はしないで」


 ネリス「いつもと変わらないままのリックでいいんだから」


 どう考えても、『早く剣を持って、無理してでもカグヤを助けに行かんかい!』オーラを発散させてリックを見つめるアミルたち。自分たちはル・クールでパンを作っているから……と言ってその場を後にする。これはつまり、「待ってるから早く行ってね♡」というダメ押しだろう。

 爆発音が響くテラスに残されたリック。心の奥に押し込めた、カグヤを助けなければという思いが今、リックの心に沸々と湧き上がってくるのであった。……決してアミルたちの冷たい視線に押された訳ではない……はずだ……と思う。



 未明の森を、ウィンダリア城に向けて全力で走るリックの姿があった。その先では、まるでリックがそうしてやってくるのが分かっていたかのように、ルフィーナがじっと佇んでいた。



 「お待ちしていました」


 用意していた馬車の中で、剣士の衣装に着替えるリックを背に、馭者台に座るルフィーナは、ラグナスが漂流人たちを救うことができないことをいつも嘆いていたという話をする。あの一癖ありそうな王子様が実はそういう考えを持っていてくれていたことに、漂流人の一人であるリックは感動する。

 そしてラグナスは剣士の姿の漂流人の漂着をことのほか喜んだらしい。その人物ならば、その剣の力で島の人間を守ってくれる力を持っているであろうからと……。ラグナスがリックのことを話すときは、いつも楽しそうだったという。

 そしてそんな兄の思いに応えたいと、ルフィーナはリックに協力を申し出る。王族の身分でありながら決して高慢ぶらないその態度はリックの気持ちをさらに前向きにするのだった。



 港では、武装船団との戦いを機械人形だけに任せていられないと、ディラン(CV:中井和哉)が自らの船を駆って出港する。一度剣を交えた経験を買われたか、ラグナスから気前良く船を修理してもらい、気合十分で戦場に臨む。



 そしてウィンダリア城の城壁には、もはやおなじみとなった垂れ下がったロープが……。再々度の脱走を果たしたシャオメイとハンクの凸凹コンビが今回の事態を受け、ハンクの考案を実行するべくある場所へと急行していた。



 海が見渡せる断崖に降り立ったリックとルフィーナ。いよいよ戦いの場に臨もうとする彼らのもとに、可愛らしい応援団がやって来る。それは酒場の女主人・フローラ(CV:大浦冬華)とシュウ(CV:大浦冬華)の母子だった。



 リックのために、アミルたちが一所懸命焼き上げたパンを持って来てくれたのだ。リックも島のみんなも幸せになれるパンと聞かされ、リックは愛おしそうにそのパンを一口頬張る。

 そのパンは、今のリックにとっては何よりの贈り物だった。届けてくれたことを感謝し、シュウの頭を撫でるリックのその表情に、もう迷いはなかった。


 いよいよ戦場へと向かう儀式だ。カグヤと精霊石を同時に手中に収めることで、異世界の海賊たちは絶大な力を持ってしまう。そうさせないために、クイーンは精霊石を残していったのだ。その精霊石のペンダントをリックに付け、ルフィーナはその精霊石をカグヤに返してあげて欲しいと語る。


 城ではリックの成功を祈り、ラグナスが竪琴を爪弾く。


 ルフィーナは続けてあの封印されし剣をリックに手渡す。気合を込めて一閃されたその剣は、激しい衝撃波を起こして地面に亀裂を走らせる。この威力は、リックに備わった能力なのだろうか? それとも精霊石の相乗効果なのか?


 そしてルフィーナは、古(いにしえ)より代々王国に伝わる秘術の書を紐解き、リックにその加護を与える。次の瞬間、リックを光条が包み、何と背中から物理的に天使のような羽根が生える。



 ルフィーナが要塞にリックを送る手助けできるって、こういうことだったんだね……。この辺、展開があまりに唐突だが、話についていかなければならない。


 その羽根で空高く舞い上がったリックは一気に武装船団の砲火のもとに達し、クイーンの見守る中、剣のひと振りで巨大な船を屠る。次々と撃沈する海賊船。ディランの船も巨大要塞に挑むが、反撃を受けそうになる。そのピンチにリックが現れ、砲台をその剣の能力でなぎ払う。



 同じ頃、工房にたどり着いたハンクとシャオメイ。ハンクの指示で床下に隠された何かを出現させる役を引き受けさせられたシャオメイが愚痴る。床下の格納庫にあったのは、ハンクが製造したであろう、超兵器だった。この島のために戦うことを、2人も決意したのであった。




 最後に見せ場があって良かった2人。シャオメイは特に、3人娘以外の人気投票第1位だったしね〜。



 危機を救われたディランは、その立役者がかつて酒場で悩みを打ち明けていたパン屋の青年だったことに気づき、驚きと共に喜色を満面に浮かべてリックの参戦を歓迎する。相変わらずの減らず口というか、負けず嫌いなシニカルな態度ではあったが。



 「悩める若人の看板は降ろしたのかよ……?」


 飛び去ったリックは、ついにカグヤが囚われている、要塞の上に降り立つ。そこでいわくありげな魔法陣が甲板に描かれていることに気づく。だが油断したのかリックに狙いを付けて動く砲台の攻撃に気づかず、その砲撃を受けてしまった!! ……かに思われたが、その直撃を代わりに受けてくれた人物がいた。



 それはクイーンだった。クイーンは力尽きたかのようにゆっくりと倒れる。彼女のマスター・カグヤの救出を託され、リックは決意も新たに甲板に描かれた魔法陣に飛び込む。魔法陣はものすごい閃光を発し、リックをその中に飲み込んでしまう。果たしてリックはカグヤを救い出し、ル・クールに、みんなのもとに戻ってくることが出来るのだろうか?



  次回、最終回に続く!



  エンディング



 残念ながらこの物語も次回で最終回のようだ。面白かったのでとても悲しく思う。物語全般の最終的な総括は次回の感想時に書きたいと思う。

 今回のブッ飛んだ展開はさすがに驚いた。1クールで終わらせる場合は張り巡らせた伏線の回収に大変なことになるとは想像していたんだけど、その想像を超える展開だった。ラグナス王子、黒幕とか疑って本当に申し訳ない。あんたええ人や。リックが超絶な能力を持っていることも驚いたが、これは精霊石との相乗効果だと思いたい。一介のパン職人があまりにも強すぎる展開だったし。

 アミルたちがリックを見送るシーンはやや違和感。カグヤを救うためとはいえ、あれだけリックに剣を持って戦って欲しくないと言っていたアミルがあの態度はどうなんだろう? ただこれもリックが戦いに向かわなければ話として成り立たない訳で、許容範囲なのではないだろうか?

 やっぱり1クールで描くのは無理があったんじゃないかなぁ(原作知らないんだけど)。もうちょっと長くやってくれても全然良かったんだけどね。ていうか、セカンドシーズンを希望。このメンバーで物語をもっと見たいよ。

 最初の方で出てきて以後森の空気となり果てたエルフの兄妹アルヴィン (CV:神谷浩史)とラナ(CV:広橋涼)とか、5話で出てきたメルティ(CV:釘宮理恵)とソルベエ(CV:金田朋子)なんかももっと見たいし〜。ローナも今回は全然活躍しなかったしねぇ。パン作りの日常回ももっとあっても良いし。


 あと本編と関係ないけど、主要キャラ以外の人気投票の結果が発表された。私の予想ではメルティ1位だったんだけど、出演話数が少なかったのが災いしてか、残念ながら3位以内にも入れなかった模様。シャオメイは安定の1位。可愛かったし、物語でも大活躍してたしね。ディランとかラグナスとか、男キャラがかすりもしなかったのはやはりそういうアニメだったということだろうか。ディランは結構好きだったんだけどね。ロロノア・ゾロを思い出して。


 最終回は総決算的な話になって欲しいので、上記のキャラ達も顔出しぐらいは出てくれるものだと思ってるけど、やはり続編を見たい。本作はそれだけ終わるのが残念な名作だと思う。




 次回「幸せのパン」に続く。




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