『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』第3話「灯火管制」の感想

 遅くなってしまったが、5月最初のブログ更新。


 読み手の皆さん的にも恒例になっているといいなぁと思うアニメ感想文『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』、今回はその第3話「灯火管制」の感想だ。前回の最後に登場した人物の持っていたペンダントをもとに、物語は奇妙な方向に転換していく。



  • 前回のアニメ『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』の感想は、

『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』第2話「嵐の日」の感想
 をご覧ください。

  • 前々回の感想は

『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』第1話「ル・クールへようこそ」の感想
 をご覧ください。

 またも未明、もはやこの構図で物語がスタートするのがデフォのようになってしまった感があるが、リック(CV:神谷浩史)が住居とする帆船の寝室に、彼を起こしに来たアミル (CV:伊藤かな恵)の姿があった。

 寝ぼけまなこのリックが起き上がるが、全裸状態だったせいでアミルは赤面してそちらを見ることができない。あまりにもあけすけ且つナチュラルなセクハラに怒りつつ、アミルは寝ているのを邪魔してまでリックを呼び出しに来た理由を説明できないまま、彼を連れ出す。

 アミルに連れ出されたのはすぐ傍の海岸。そこには多くの海鳥に取り囲まれながら倒れる女性の姿があった。リックは彼女の脈を取る。どうやら命は大丈夫なようだ。アミルはこの件を知らせに走る。リックはこの女性が自分と同様、嵐に巻き込まれてこの島に流れ着いたと想像する。だが彼はこの女性を見て、何か不思議な心境になる。気を失ったままの少女。その胸には、月明かりを反射してだろうか、ペンダントが青く光って存在感を示していた。



 アミルから聞きつけてだろう、ネリス(CV:相沢舞)とエアリィ(CV:三上枝織)が砂浜に駆けてくる。アミルは診療所に向かい、医師のロン(CV:麻生智久)を連れてくるという。


 すっかり日も上り、明るくなった海岸で少女の容態を測るロン。だが彼もその胸に光るペンダントに関心を惹かれる。その呑気な態度にネリスが不満を述べるが、ロンの見立てでは少女の命に別状ないようだ。彼の診療所に運び、様子を見ることとする。


 診療所のベッドに寝かせ、改めて容態を確認する。命に別状ないが、意識が戻らない。しばらくは目覚めない可能性が高いことを看護師のイーリア(CV:高山ゆうこ)に告げられ、リックたちは彼らの仕事に戻ることとする。


 パン工房への道中、リックは自らもあの少女のように流れ着いていたという頃のことを尋ねる。彼はここに流れ着く前の記憶を失っていた。アミルが語るリックは、鎧を着ていたという。今はパン職人のリックだが、ここに来る前は剣士、もしくは騎士など戦闘が本業の人間だったのかもしれない。

 今の自分とのギャップを思うリックだったが、アミルたち3人はパンを早く焼かないと今日の業務に支障が出ると、リックを引っ張って急かすのだった。今日は漂着者というハプニングのせいで、パン作りがいつもより遅くなってることは確かだ。明るい表情で工房まで走る4人は、これまで通りの日常に戻っていく。



 彼らのパン工房「ル・クール」に到着し、アミルたち3人はリックがこの島に流れ着いた時のことを思い返していた。



 今回の少女と同じようなアングルで流れ着いたリック。


 リックが鎧をつけていたことを、おおよそちぐはぐだと笑い合うアミルたち。彼女たちにとって、リックはエプロン以外は似合わない、牧歌的な青年という認識だった。そこに工房からリックが顔を出す。かまどの様子がおかしいという。外から煙突を確認したところ、嵐の日に飛んだ大きな木の枝が、煙突の排煙部をスッポリと塞いでいた。



 枝を抜けばなんとかなりそうと思っていた矢先、大きな爆発音と共に噴煙が巻き起こる。慌てて工房に駆け戻るアミルたちだったが、そこではかまどが完全に壊れてしまっていた。

 原因は枝づまりだけではなかった。前からかまどにはひびが入り、そこに嵐の日の雨水が浸透し、かまどの強度が脆くなっていたらしい。その上で不完全燃焼のまま火を起こした無理が祟ったのだろう。無残に壊れてしまったかまどを修復しない限り、パンを焼くという彼らの仕事はあがったりだ。今日焼く予定だったパン種を廃棄し、彼らは善後策を尋ねるために、パン職人の師匠、マデラ(CV:江森浩子)のもとへ向かう。


 マデラに対し、街の鍛冶屋は嵐の影響で仕事が増え、パン工房のかまどの修理に手が回らないと告げられたとアミルは語る。マデラは彼らに良い鍛冶屋がいると、山奥に住むドワーフのハンク(CV:佐藤正治)を紹介する。エルフと同じく、ドワーフも簡単に人間に心を開く種族ではないのだが、背に腹は代えられない。信頼するマデラの推薦ということもあり、リックたちは馬車を借りて山奥に向かうこととする。


 ハンクの工房。そこには女性型の人形が天井から吊るされていた。それをじっと見つめるヒゲを蓄え、身体中に傷跡を付けた屈強そうな男。それがおそらくドワーフのハンクなのだろう。何かを為そうとし、それが叶わないのだろうか、彼は一つ大きなため息をつく。


 そこに訪問を告げる声が聞こえる。リックたちが訪れたのだ。

 厳しい視線を不躾にぶつけてくるハンク。左手が異様な義手になってるのを見て、アミルの言葉が一瞬詰まる。代わりに話しかけるネリスも気圧され気味だ。かまどの修理を依頼されたハンクは、無言のままメモに何かを書き付けてリックに手渡す。



 ドワーフの鍛冶屋・ハンク。ドワーフは見た目によらず、細かい作業が得意。鍛冶屋や金細工職人などがファンタジー世界での彼らの仕事。


 それは修理代金が書かれていたのだろう。だがその法外な高額に、アミルとエアリィは思わず頓狂な声を上げてしまう。前払いを要求するハンクに対し、今は持ち合わせがないこと、そして一度かまどの状態を見て欲しいと告げるアミル。見て確認することもなく、見積もりを取らずに代金を請求するハンクの態度はどうみても感心しないものであったのだろう。

 だがハンクは気難しそうにその要請を断る。初めての客であり、さらにまだ子供といえる年齢の彼らを信用していないと憚ることなく言うハンクには、取り付く島もない。リックは早々に頭を下げ、その場を辞することにする。アミルたちも戸惑いながらも後に続く。


 馬車に乗っての帰途、アミルはリックに、ハンクともう少し交渉して欲しかった旨を述べる。だがおカネが無かったことは事実だし、前金を要求したハンクの言い分ももっともだったとリックは言う。

 かまどの修理交渉が不調に終わり、彼らは今後どうするかを考えなければならない。パンを焼いて売ることができないと、かまどを修理する費用も捻出できない。これは前後が矛盾した難問だ。これまでの蓄えがないと解決するのは困難に思える。せめて後払いが効きさえすれば……。


 マデラのもとに帰ってきたリックたちは、城付きの兵士たちと入れ違いとなった。兵士たちは、海賊船が島に接近しているので、夜間は明かりを点けないよう要請に来ていたのだとマデラは語る。やって来る船の様子から、本格的に悪い海賊が向かって来ていると想定されているらしい。灯火管制によって彼らの目を逸らそうというのが、この島を治める王国の狙いだ。

 その灯火管制のお触れは街の広場にも立て札で住民に知らされていた。夜間は外出禁止などの令が出される。嵐が去ってもまたやって来る一難に、住民たちも準備に勤しむ。王国の兵士たちも海岸線の防備に駆り出され、島は物々しい様相を呈し始める。


 明かりが出せないということは、食事のために火を起こすことも禁じられるということだ。そこで役立つのは、既に加工された食品。この世界では、リックのパンという訳だ。多くの人たちがリックのパンを待っていた。彼らのパン工房「ル・クール」が使用できないため、リックはマデラのパン屋でパン作りに励む。そしてアミルたちは、そのパンを外出が可能な日暮れまでに配達に向かう。





 パンの配達の仕方まで、何だかコケティッシュな3人娘。


 城の後ろに高くそびえる山上からは、ハンクが街のこの情勢をじっと見つめていた。


 夜間になり、アミルとリックはようやく最後の配達地である診療所を訪れていた。イーリアに感謝されているところに、ロンがあの少女が目を覚ましたことを告げにやってくる。



 CMアイキャッチ。本作のCMアイキャッチはいつも絵画的で美しい。


 意識が戻った少女、質問にはうろ返事だったが、その場に立ち込めるパンの匂いには反応する。そこで改めて名前を問うと、彼女は熟考ののち、カグヤ(CV:桑島法子)と名乗る。アミルは少女の名が分かり喜ぶが、カグヤはそこで力尽きたようにアクビを一つし、またも眠りに落ちてしまう。

 パンの匂いに反応したということは、食欲が出たということで、生きる気力も湧いて来ていると思われる。朗報に喜んだアミルは、カグヤが元気になるまでパンを届けに来ると言い出す。リックにももちろん依存はない。

 だがそこで奇妙な現象が起こる。眠りに落ちたカグヤの胸元が突如輝き出したのだ。



 あまりの輝きに、リックたちはそれを直視できない。そしてハンクの工房に吊るされていた人型が、カグヤの輝きに呼応するかのように輝き始める。そこから放たれた幾条もの光の線は、まるで何かを探すかのように工房内を照らす。驚くハンクを尻目に、その光線は扉に集結して、そして外に向けて飛び出してしまう。

 光線は外に飛び出しても、相変わらず何かを探し続ける。そして海の中で輝いている何かに引きつけられ、その動きを止める。光は急速に消えていく。その模様の一部始終を見ていたハンクは、この現象が何なのか分からずにいた。問わず語りに、天井にいる人型に向けて問いかける。


 一方、カグヤの方で起こった現象。それは彼女がつけていたペンダントの輝きだった。



 その不可解な現象に、リックたちは言葉もなく成り行きを見つめていた。だがそのものすごい輝きは、診療所の外からも容易に確認できた。灯火管制に抵触するとして、見回っていた兵士たちが激しい剣幕で診療所の扉を叩く。

 慌ててカーテンを閉めるのだが、そんなことぐらいではこの輝きが漏れることを抑えきれない。ドアを破ろうとする兵士の剣幕に、仕方なくリックが兵士を屋内に招き入れる。

 そしてリックの制止も聞かずに、明かりの発している部屋に向かう兵士たち。そこではペンダントが自ら光る光景を呆然と見つめるロンやイリアの姿があった。どう見ても普通の明かりではないのだが、兵士はこの明かりを消せと命令する。

 もう一人の兵士が手を伸ばし、ペンダントを掴もうとするが、何か不思議な力で近づくことができず、吹き飛ばされてしまう。


 その頃、例の海賊船は群れをなしてこの島に向かって来ていた。海岸線で防衛の任に就いていた兵士は合図の鳥を放ち、海賊船襲来を街に告げる。海賊船の一隻が大砲を撃つ。その攻撃は大爆発を起こし、その威力の強さを防衛部隊に知らしめる。


 一方の診療所。この輝きを抑えないと、今度はここが攻撃対象になりかねない。兵士は剣を抜いて事に当たろうとする。それがペンダントの持ち主と思われるカグヤへの攻撃を意図するものと悟ったリックは、さっき吹き飛ばされた兵士が持っていた剣を拾い上げ、その兵士を制止しようとする。剣を取り、兵士と対峙するリックの姿を見て、アミルは不安が胸を支配するのを感じていた。


 ハンクの工房では、人型が再び光を放ち始める。光を止めようとするハンクだったが、先ほどペンダントを取ろうとした兵士と同様に跳ね飛ばされる。この両者の光は、何か共通したものがあるようだ。



 人型。もしかしたら生身の人間かもしれない。


 再び診療所。剣を持って戦おうとするリックを、叫び声を上げて止めるアミル。その懸命な訴えは、我を忘れていたリックに記憶を取り戻すきっかけとを与えた。ハッとなるリック。彼はどこか、ここに来る前、カグヤと出会っていたことを思い出す。

 その隙を突いて、兵士がカグヤに斬りかかる。輝きが変則的になったかと思うと、またもその現象に呼応するかのように、ハンクの工房の人型が輝き出す。そして放たれた光線は、一直線に海上の海賊船に向かう。光線の直撃を受けた海賊船は友船を巻き込んで大爆発を起こし、一瞬で海上から消え去ってしまう。

 その現象を終えたあと、ペンダントは何事も無かったかのように光を失い、カグヤの胸元に落ちてくる。兵士の攻撃がカグヤを直撃する前に、事が行われ、そして終わっていた。その場が無事に収まったことを感じ、アミルは安堵のあまり床に座り込んでしまう。

 心配そうにアミルのその様を見ていたリックだったが、彼の手に握られた剣の感触、それが彼にとって懐かしさを感じるものでもあることに、彼は思いが至っていた。刀身に映る己の姿を見つめ、リックは何を思うのだろうか?


 その頃ハンクの工房でも、人型が何事も無かったかのように目を閉じ、機能を停止していた。ハンクは光線が向けられた扉の向こうを見やる。日の出を迎えた海は、海賊船など最初から無かったかのように穏やかに日の出の光を映し出していた。だがハンクは、前日光線が収束した位置、その海の中に何かがあることを気付く。


 不思議な体験をしたリックとアミルは、ル・クールに向けて帰る。2人とも何も語らない。アミルはリックの後ろ姿を見ながら、彼がこの島に流れ着いた時のことを再び思い返していた。ネリスとエアリィと共にリックを発見した時、彼は鎧を着用し、その傍らにはキラリと光る剣が寄り添うように置かれていた。

 今回の事件で剣を構えたリックが、自分の知っているリックではないことに、アミルはショックを受けていた。この島に流れ着く以前のリックは、誰かをその剣で傷つけたこともあったのだろうか……?


 昨晩の喧騒を何も知らずに眠るカグヤ。その枕元では、今回の混迷を引き出したペンダントが静かに輝きを保っていた。




 次回に続く。



 エンディング



 物語が大きく動き出しそうな雰囲気を持った第3話。これまでのほほんとパンを焼いていただけの牧歌的なリックの過去、同じ様に漂着した謎の少女・カグヤとかつて出会っていたという。共通の過去を持っていたということか? またカグヤの持っていたペンダントと、ハンクの工房に吊るされていた人型との共通点は? そして海の中にあるという秘密とは……? ちなみにハンクの工房の女性型の超兵器が、次回のサブタイトルになっていると思われる。

 徐々に謎を明かしつつ、それでいてまた新たな伏線がスタックされている状況で先行きは不明だが、面白くなって行きそうな展開だ。リックの記憶がわずかに戻り、さらにカグヤとも面識があるということは、リックもあのペンダントや超兵器に何か連関を持つ存在なのかもしれない。


 次回はおカネ大好きのネリスの主導であの海の中の何かを探る展開になるようだ。1話目で顔出ししていた、あのやたら萌え要素一杯のキャラ・シャオメイ(CV:斎藤千和)も再登場するよ。



 次回「機械人形」に続く。



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