『零』 恐怖の和風ホラーゲームの感想

 今年も押し迫って来た。今年の印象を省みてみたけど、あまり良い事が無かったというのが2010年の印象。2009年の国民の選択が間違っていたのだから仕方が無い。甘んじて受けるしかない。

 サッカーワールドカップ日本代表の活躍は良かったけど、逆に考えれば良かった探しで見つかる事がスポーツしか無い訳で……。ワールドカップ日本代表に関しては、期待していなかった分、喜びも大きかったのだろう。そう考えると、政権交替で日本が良くなると期待させていた分、期待ハズレの民主党政権の失政は、自民党政権のそれより、より罪深いのではないか。毛バリの公約で釣られた国民も問題だったかもしれないけどさ。



 さて、当ブログの本筋、ゲーム感想文の紹介。今年は過去の【ゲームクエスト】投稿作のみの紹介になってしまった。ゲーム感想文は日々の日記の様に軽く書けないので、なかなか紹介出来ないのが歯がゆく思っているのだけれど、来年は新規に書きおろした感想文の方もどんどん挙げて行きたいと思っている。宜しければ、来年も見に来て下さると有り難く思います。『スーパーマリオコレクション』の感想が年を越すとは思わなかった。大誤算

 今回は、前回掲載した感想文『零 〜刺青の聲〜』の前々編に当たる、シリーズ第一作の無印『零』の感想文だ。相変わらず恐怖ゲームの感想を挙げるのに、これ以上不適格な季節は無いのだが、感想文の紹介の都合上、ご容赦頂きたいと思う。書いた本人的には、ばれても良いと思える範囲のネタバレの感想文だと思っていたのだが、当ブログ開始時にコメントを下さった「元閲覧者」さんから、「浜村淳並みのネタバレ」とのご指摘を戴いたので、ギリギリアウトどころか、相当アウトの内容になっていると思われる(浜村淳だもんね……。全バレとのご指摘かもしれない)。

 浜村淳にネタばらしされても平気で映画が観れる方は、是非全文を読んで下さい。浜村は困るという方で、これからプレイしようとお考えの方は、エンディングやストーリーの根幹に言及している部分(赤文字で表示させておきます)は読まないで下さい。では、心底暑かった今年の真夏を思い出しながら、どうぞ。



 シリーズ第3作目である『零 〜刺青の聲〜』の感想文は、こちら。
 シリーズ第4作目の『零 〜月蝕の仮面〜』の感想文は、こちら。



甘茶さん の「零 〜zero〜」 (プレイステーション2)
事前予測をはるかに超える怖さ
 ホラーゲームの進化は演出力の進化だと思います。映画によって蓄積された技術をきちんとゲームに変換出来てるシリーズは強いですよね。

甘茶
事前予測をはるかに超える怖さ(2009.08.03)
 今年の夏も本格的に暑くなって来た。夏といえば怪談。夏といえば怖いゲーム。

 ……という訳で、今回のホラーゲーム祭りは恐怖ゲームの中でも当方が一番怖いと思っている『零』シリーズの原点、元祖、無印『零』の感想だ。例によってこの感想文執筆前にリプレイしている。ただ今回は幸運なことに以前のクリアデータが容易に見つかったので、開始直後から最強の態勢で臨ませて貰っている。『バイオハザード』で言うところの、「ロケットランチャー標準装備」「グリーンハーブ99個持ち(実際そんなに持てないけど、アイテムBOX込み込みで)」状態というヤツだ。このプレイング、及び感想に因り、恐怖の本質というものはプレイヤーサイドの準備のみでは測れないものであるとの証明にもなり得ると確信する。……などと、同シリーズ『零 〜刺青の聲〜』の時の感想とは正反対の意見を吐いて平然とするのもまた、恐怖ゲーム感想家として必要な資質なのでは無いだろうか? だって、初期装備だと怖いし……(漏れる本音)。また時間的制約もあること故、ご容赦願いたい。言い訳まみれの出だしだが、実際久しぶりのプレイで細部を忘れている立場でのリプレイでは緊張しまくり、記憶に残る範囲での事前予測をはるかに超える怖さの余り叫び声を上げてしまったことを正直に明かしておく。万全の強化態勢で臨んでも尚、怖い物は怖いのである。


 幼いころから「見えてはならない、この世ならざるもの」が見えてしまうという、主人公の少女「雛咲深紅(ひなさきみく CV:わくさわりか)」。その類い稀(まれ)なる能力を持つが故に周囲に疎外感を持つ彼女が唯一、気を置ける人物、それが同じ能力を持つ兄「雛咲真冬(ひなさきまふゆ CV:金丸淳一)」であった。その兄が廃墟と化した広大な日本家屋で失踪したミステリー作家「高峰準星(たかみねじゅんせい CV:小林清志)」一行の捜索中、同様に行方不明となってしまう。連絡が途絶えた兄を心配した深紅は、彼らが消えた廃墟「氷室邸」の前に立ち、不気味な扉を敢然と開く。全ては大切な兄を探し出すために……。


 銃やナイフなどで物理的に敵を攻撃することを戦闘ルールの前提とする、他の同タイプのホラーゲームと『零』シリーズとの最大の違いは、射影機という、霊を映し込む能力を持ったカメラを使い、この世ならざる怨霊と闘うシステムであろう。霊を撮影することによってダメージを与え、遂には撃退するという戦闘システムは、写真を撮ると魂が抜かれるという古い、しかし根強い迷信も相まって、ゲーム性に於いて一定の説得力を持ち得ていると言って良い、面白いシステムだと思う。また写真の中央に大写しにする程、敵に与えるダメージが増し、射影機強化時に使用するポイントも多量に獲得出来るという設定がまた心憎い。恐ろしくておぞましくて、本来遠目にも見たくない敵を正面に見据え、出来れば目の前まで引きつけて撮影する事が、本作シリーズの望ましいプレイングなのである。実に秀逸だが、正直許せない気もする。誰だ、こんな非人間的な酷いことを考えたプランナーは?(褒め言葉である、念のため)

 シリーズ第1弾ということもあり、グラフィック面において以降の作品と比較して若干作り込みが弱いと見受けられる部分もあるが、シリーズものである以上、ある意味やむを得ない進化の過程であると弁護したい。そうは言っても本作は、当時の同ハードにおける同タイプのゲームの中では、かなり美麗でリアリティーあふれるグラフィックであったと思う。ビジュアルというものが恐怖心喚起の主要因であるのは事実である訳で、おどろおどろしい怨霊の姿から背景の汚れた壁や血の飛び散った障子の絵に至るまでリアルに描かれている。中庭での竹藪の揺れる様を見ていると、廃墟に流れる冷たい風まで感じられてしまうほど、臨場感を感じる。

 恐怖心を喚起するもう一つの主要因は、声、エフェクトを含めた音の表現であることは言わずもがなであろう。怨霊の発する恨みのこもった声や、廃虚の何処かから聞こえてくる、そこに居ないはずの子供たちの「かごめかごめ」の歌声などの演出が怖いのは当然として、何事も無い通常時の行動で聞こえてくる音にまでビクビクと敏感に反応させられてしまうのが、本作の秀逸な点だ。ゲーム展開としては素中の素(すーちゅうのすー:関西弁)であるはずの、朽ちかけた木造の廊下を走る時のギシギシ音ですら怖いと感じさせる手法は、まさに見事の一言。いつもとちょっと違う音がする度に「ヒッ!?」と小声の悲鳴を挙げて画面をスクロールさせる。これは怖くて辺りをキョロキョロ見回す、某怖がりプレイヤー(当方)の生々しい姿だが、このゲームをプレイ中は誰もがそうなるはずだと当方は思う。


 兄を探す過程で入手するキーアイテムや手帳の走り書きなどのメモ、屋敷に残された古文書などから、この異変の原因が徐々に明らかになって行く。巫女である女性に凄惨(せいさん)な犠牲を強(し)いながらも、この世の人々を救うために避けて通れない氷室家の「儀式」。最後の巫女となる「霧絵」という女性の淡く儚い恋心。霧絵が今生の世に残した執着が儀式の失敗を招き、氷室邸が成仏出来なくなった霊たちの溜まる異形の地となり果ててしまった下り。道中、深紅を助ける着物姿の謎の少女霊の悲しき正体。霧絵が恋した想い人が兄、真冬に似ていると知った深紅の心中。

 ……様々な事象から抱かざるを得ない心の機微をプレイヤーに付与しながら、物語はクライマックスへと突入して行く。4章に渡るストーリーは、次作以降のシリーズと比べると短く説明不足に感じる向きもあるが、十分に楽しめたし、恐怖も堪能出来た。サブシナリオ的な部分で工夫が凝らされていて、物語全体に深みを感じるシリーズ続編と、シンプルにストーリー本題を追える本作のどちらを気に入るかは、プレイヤー次第といったところであろうか?


 エンディングは2種類あるが、残念ながら後日に受け継がれるストーリーは悲劇的な展開をする方である。その展開が物語的に必然性のある事を、続編をプレイして知っている現在の立場では十全に納得しているので問題は無い。それより、エンディング後のスタッフロールがあっさりし過ぎている事に、軽い不満を抱いてしまう。次作以降の定番となる、天野月子のエンディングテーマ曲が、これ程まで零の世界観にマッチして不可欠であったかと言うことを、今さらながらに思い知らされた気がする。


 概要は上記したが、本作は『零・三部作』の第1弾で『零 〜紅い蝶〜』及び『零 〜刺青の聲〜』にストーリー内容で強く関連する、序章をも兼ねた作品となっている(こんなに怖いのに、序章クラスなのがまた驚愕)。特に『〜刺青の聲〜』では本作主人公、雛咲深紅が重要な登場人物として再出演し、プレイヤーキャラを務める事にもなる。続編をプレイする上で、本作は必須の要素と言えるのだ。この茹だる様な暑さの中、「暑気払いに、何か怖いゲームを」とお考えの方は、是非この機会に本作をプレイして頂きたい。恐怖ゲームを多数やり込んだ当方が紛れの余地無くイチオシするのは、この『零』シリーズなのである。


 自分のブログだと、色を変えて警告できるのは便利だ。チートプレイの言い訳にしている「時間の制約」とは、【ゲームクエスト】に感想文を送るに当たっての制限時間の事。夏の暑い間に送らないといけないという枷もあったので、やむを得なかったという訳だ。殆ど誰も乗ってくれなかった「夏のホラーゲーム祭り」の為という、自縄自縛に陥っていたのよね。




 前回も紹介したビビりの外人さん連中の『零』プレイの動画。あの、「四つん這いの女」を見て部屋から逃げ出したブラッドさんのご尊顔が拝める。この場面、プレイヤーなのかどうか分からないけど(コントローラー握ってるのかな?)、この叫び声は怖がり過ぎ。

 前回同様、動画は究極のネタバレなので、ご注意。



 これも外人さんプレイ。何かが起こりそうなのを予見して、怖々と探索しているのが笑える。こっちはコントローラー握っているのが確認できる。自縛霊を見つけてビビって座布団で顔を覆うのが見どころ(1分59秒辺り)。その直後の絶叫は理解不能

 霊との戦闘中、「F●●k!!」「F●●k!!」と4文字言葉を言い過ぎ。ただ絶叫しながらも、その後のプレイングがなかなか上手く(偶然上手く行っているのかもしれないが)、その辺は残念でつまらない。こっちはもっとうろたえてくれるのを期待してるんだから……(酷い感想)。


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