『イナズマイレブンGOギャラクシー』第30話「強烈!シュートカウンター!!」の感想 【鉄角が主役回。ヒロインは信助】

 あけましておめでとうございます。本年もこのブログは同じように推移していくと思います。よろしければ今後もご愛顧ください。



 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第30話「強烈!シュートカウンター!!」を観ての感想を書く。正規メンバーを欠いたチームの底力を示すには控えの選手の頑張りが物を言う。その意味において控えゴールキーパーの頑張りは今回特筆に値する。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第29話「翼を捨てた戦士たち」の感想 【神童と井吹のソウル発動!】
 をご覧ください。

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 星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の本戦3回戦にて松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】と【惑星ガードン】との戦いが始まる。


 有翼の人類の進化の可能性を見せるガードン人はその思想をめぐって東と西の2つの種族に分かれていた。翼を捨てて文明を築き、工業化を推進する西の種族と自然を重視し、ありのままの生態を是(ぜ)とする東の種族だ。

 グランドセレスタ・ギャラクシーに出場する西の種族と対立する東の種族に危ないところを救われた神童拓人(CV:斎賀みつき)と井吹宗正(CV:鈴木達央)は、その地を統(す)べる族長のログロス・ゴードン(CV:園部啓一)の薫陶(くんとう)を受けその身体に眠る能力、ソウルの力に目覚める。


 だが2人がソウルを目覚めさせるための過酷な特訓をしていたその頃、アースイレブンとチーム・ガードンとの試合は今まさに始まろうとしていた。監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)は2人を除いた11人で先発メンバーを構成する。

 井吹の控えキーパーに甘んじていた西園信助(CV:戸松遥)にとっては初の先発メンバー選出だ。控えメンバーが奮起することがそのチームの本当の底力を見せる機会でもある。天馬に、そして兄貴分の鉄角真(CV:泰勇気)に激励され、信助はその小さな身体に大きな気合いを込める。

 神童と井吹の帰還を信じる天馬たちは、彼らが帰ってくるまで自分たちで頑張ることを誓い合う。



 試合開始のホイッスルが鳴る。ガードンのボールでキックオフ。早速ボールを持ったのは小柄で可愛らしい外貌(がいぼう)に似合わぬ能力と残虐性(ざんぎゃくせい)を持ち合わせるファラム・オービアスよりの刺客、紫天王のロダン・ガスグス(CV:藤村歩)だった。

 市川座名九郎(CV:小西克幸)のタックルを巧みにかわしたロダンは6番女の子のタカ、エトゥナ・ホルク(CV:不明)にパスを出す。アースイレブンのマークをかわして次々とパスがつながるチーム・ガードン。



 その流れを断ち切ったのは戦前、信助を叱咤(しった)して自身もソウルを目覚めさせると張り切っていた鉄角だった。FWのセキセイインコ、コヨパク・ジャリガー(CV:不明)にパスが渡っていれば危なかっただろう。どうでも良いが、前作では機会あるごとに信助をいじめていた狩屋マサキ(CV:泰勇気)と中の人が同じとは思えない。


 鉄角は一気に前線に走る瞬木隼人(CV:石川界人)にフィードする。瞬木は2番フクロウの女の子、ミスティ・オール(CV:不明)をかわして座名九郎にパス。座名九郎は子孫がアレとは思えないさわやかな声でキャプテン、天馬にパスを送る。まさに両チームとも見事なパス回しで実況役のダクスガン・バービュー(CV:勝杏里)も両チームのプレーを絶賛する。

 座名九郎からのパスはラストパスだった。天馬は訪れたシュートチャンスを逃すまいと必殺シュート「真マッハウィンド」を放つ。迎え撃つのはチームのキャプテンにして西の種族族長、アルベガ・ゴードン(CV:高口公介)である。果たしてこの最初のキャプテン対決の勝者は!?



   オープニング




 天馬の渾身(こんしん)のシュートを、アルベガは右目に帯びたスコープで冷静に分析し、それを阻止する最善策を採(と)る。それは必殺技を出さずにその腕の力だけでシュートを阻止するという恐るべき手段だった!


 アルベガの誇りの原点といえる機械の腕。そのパワーをまざまざと見せつけたアルベガは自信を深め、こう言い放つ。



アルベガ「見たか! この腕が俺の新たな翼だ!」


 必殺技を腕の力だけで止められ、天馬は悔しそうに引き下がる。この腕の力は機械の力だから厳密に言えば反則っぽいんだけど、これこそがアルベガを始め機械文明を推し進めた彼らの心の拠り所なのだからやむを得ないのかもしれない。実際アルベガ以外はその恩恵を受ける機会はほとんどないしね。サッカーは基本的に足でするスポーツだから。

 だがシュートを受け止めた後、その腕の震えを感じたアルベガに対してロダンが訳知り顔に意見する。試合前からロダンの尊大な態度に対してはフラストレーションが溜まっていたアルベガは彼を怒鳴りつけ、指示に従うよう要請する。

 アルベガの目指すサッカーとはやはり信奉(しんぽう)する機械文明を肯定し、その力を見せつけつつ勝利するという面にあった。彼にとっての真の敵とはアースイレブンではなく、東の種族であり、その象徴である父、ログロスなのだ。


ロダン「ま、お手並み拝見と行きますか……」

 アルベガの意地など、ロダンにとっては興味の範疇(はんちゅう)の外だ。この跳ねっ返りキャラがおとなしく指示に従い続けるとも思えないのだが。これまでの紫天王の行動を見てもそれは100%ありえないだろう。


 そんなチームの支柱と、強力な助っ人ながらチームの和を乱す紫天王との対立を見つめ、チーム・ガードン監督のカルデラ(CV:不明)は表情を曇らせる。



 一方その頃、ソウル獲得の試練を終えた神童と井吹はマグマだまりの灼熱地獄の道程(どうてい)をてくてくと徒歩で試合会場へと向かっていた。東の種族の連中はどうして会場まで運んでくれなかったのだろうね?

 時間的に試合開始を過ぎていることを懸念する両者は歩を急がせるが、不安定なでこぼこ道に足を取られて井吹がよろめく。それを救うのは、またも神童であった。



 このあと、無事を確認して笑みを浮かべて歩き始める神童。恩着せがましさを一切見せない神童はカッコ良い。



 再び試合会場。



 座名九郎の能力を分析し、チームに適切なディフェンスシフトを命じるアルベガ。よく考えるとこのスコープもものすごく反則っぽいが、機械文明を以下略。


 部下たちも忠実にアルベガの指示に従い、座名九郎からボールを奪って危機の芽を摘み取る。あのバランス感覚に優れた座名九郎がなすすべなくボールを奪われるのは彼らのキャプテンを信じる思いがなさしめたプレーだ。

 2番、ワタリガラスの女の子、マヨン・クレステ(CV:不明)からボールはFWミミズクのヴェス・ホーネ(CV:岡林史泰)に渡る。

 ヴェスもアルベガの指示通り、コヨパクにパスを送る。しかしそれはアースイレブンの頭脳、真名部陣一郎(CV:野島裕史)には読み筋であった。すかさずそちらに詰める真名部はコヨパクからボールを奪う。


 ルーズボールは天馬のもとへ。自身のスコープでの分析をも裏切る真名部、そしてアースイレブンの能力の高さに、アルベガはむしろ好敵手を得たという思いで顔を喜色に染める。


みのり「あのキーパー、全員の動きを瞬時に計算している」


 ベンチではマネージャーの水川みのり(CV:高垣彩陽)がアルベガの能力を見破っていた。その言葉は同じくマネージャーの空野葵(CV:北原沙弥香)を驚かせる。そう、いかにスコープが高性能であっても全員の能力を一瞬で見通し、それに対して的確な指示を出せるのはアルベガ個人の能力なのだ。みのりはその恐ろしいまでの能力を警戒する。


みのり「手ごわいわよ!」

 敵であれ味方であれ、みのりがここまで選手を評価し、警戒するのは珍しい。みのりの目を介してアルベガの強さというものが暗示的に示されている。


 みのりの態度にただならぬ状況を感じた葵は、彼女に出来る最善の策である声援を送って仲間を鼓舞する。



 さくらから天馬がパスを受けた瞬間、アルベガからの指示が飛ぶ。天馬は後ろから来る瞬木の瞬発力に賭けてそこにパス。瞬木はその思い通りに5番、コンドルのネバド・コンダルム(CV:不明)を抜き去る。だが、アルベガの指示は今度はアースイレブンの行動力を上回る!

 

 瞬木が抜いたと思われた時、アルベガからはさらに二の矢が放たれていた。11番キジのニーラ・フェズン(CV:田尻浩章)が瞬木のボールをカットする。この場面でFWの選手をガードに向けるというアルベガの策は誰もが予測不能の素晴らしい鬼手だった。


 こぼれたボールを保持したコンダルムに九坂隆二(CV:岡林史泰)が挑みかかる。コンダルムは頼れるキャプテンに指示を仰(あお)ぐ。アルベガは一瞬の思考の後、足元の地熱のゆらぎを感じてそれに基づいた驚くべき指示を出す。

 コンダルムはその作戦に自身すら意表を突かれて驚くが、彼のアルベガに対する思いは絶大だ。その指示に従ってボールをあさっての方角へと蹴り出す。そのままではボールはサイドラインを割ってしまう。

 ところがその瞬間、フィールド周囲に設置されている噴出孔から熱風が吹き出し、ボールをインラインに押し戻す。それは灼熱の惑星での試合、スタジアム地下の高熱排気システムが機能したからに他ならない。スタジアム特有のギミック(仕掛け)の発動が近いことを体感で感じ取ったアルベガのファインプレー的作戦だった。


九坂「そんなのありかよ!?」


 苦もなく九坂のマークを外したボールは7番ハシビロコウのプロモ・シュービル(CV:不明)を経て先ほどディフェンスで活躍したニーラへ。

 だが今度はもう一人の頭脳派、皆帆和人(CV:代永翼)がそのパスをカットする。ボールはそのままサイドラインを割り、一旦プレーが途切れる。



 その隙に給水する野咲さくら(CV:遠藤綾)。繰り返すがここは灼熱の惑星。その場での戦いはこの気候に慣れていない地球人にとっては不利に働く。ここまでは互角の戦いだが、体力の消耗の度合いではアースイレブンが苦しい展開だと思われる。


 地球人は全員がドリンクタイムだ。さくらと森村好葉(CV:悠木碧)はその暑さに耐えられずがぶ飲みするが、飲み過ぎればさらなるスタミナロスの恐れがある。真名部が一度に飲むのは250ミリリットルに留めるよう指示を出す。

 このフィールド自体が熱排気孔で囲まれているわけで、いわば蒸し風呂の中でサッカーをしているようなものなのだ。敵はチーム・ガードンだけでない。



 試合再開。張り切る天馬は必殺ドリブル技「Zスラッシュ」でエトゥナを抜き去り、瞬木にパスを送る。瞬木の前にはマヨンが迫る。だが瞬木はその身体能力でマヨンを飛び越え、その挙動のまま地面に転がり込む。それは彼の必殺シュート「パルクールアタック」への布石であった。

 そのシュート力をスコープで分析するアルベガ。出した結論は、天馬の時と同じく必殺技なしでの対応だった。衝撃でその腕からは煙が噴出するが、やはりそのシュートは阻止されてしまう。


 アルベガはマヨンを名指しして反撃に移らせる。そこからはチーム・ガードンの反撃だ。鉄角がエトゥナに向かうが、エトゥナはニヤリと笑って必殺ドリブル技「マグマカーペット」で足止めしてしまう。



 マグマの惑星ガードンで出すにふさわしい必殺技「マグマカーペット」。鳥の顔してるけどエトゥナも可愛いな。


 エトゥナはコヨパクにラストパス。その前には信助が守るゴールがあった。フリー状態のコヨパクはシュートを放つ。



 信助のイナギャラ公式戦初プレーはパンチング。フリーで撃たれたとはいえ、ノーマルシュートをむざむざと許すわけにはいかないだろう。またこのプレーは抜かれた鉄角の失敗を自身で補(おぎな)うという信助の矜持(きょうじ)の表れだったのかもしれない。


 天馬からプレーを絶賛され、信助は嬉しそうに応える。


信助「任せて! ゴールは僕が守り抜くよ!」


 信助の姿は、鉄角をも勇気づけるものであった。鼻の下をこすりつつ、信助のその成長した姿を称える。


鉄角「小さいけど、でっかい奴だぜ!」



 そして今度は一転してアースイレブンの逆襲。天馬から剣城京介(CV:大原崇)にボールが送られる。ここまで何をしていたんだと問い詰めたくなる剣城もとい剣偽、やはりというか3番ヘビクイワシのメラピル・セクレタ(CV:不明)のアタックを受けてボールを失ってしまった……


 かに見えた。だがここでまたも定期の熱風噴出のタイミングが訪れ、メラピルの押し出したボールが跳ね返って剣偽の足元に転がってくる。先ほどと違って今度はアースイレブンにラッキーなギミック発動だった。

 呆然とする剣偽に、天馬からシュートの指示が届く。剣偽は角度の無い場所からシュートするが、アルベガはスコープでそれを分析し、簡単にボールを弾き返してしまう。



 アルベガにアースイレブンのストライカーはたいしたことないと罵倒され、怒り出す剣偽。アルベガは剣偽の能力がデータ通りの動きで実戦中に他の選手たちが見せたような未知の領域が無いことを喝破する。それはまさに剣偽が本物ではなくコピーであることを示すものである。本物の剣城だったらこんな侮辱は受けなかったかもねぇ。



 その頃、神童と井吹は未だ山中を走っていた。井吹は自分たち抜きで試合に臨んでいる仲間を心配する。神童はここへ向かう前、ログロスから気がかりな助言を得ていた。

 それは『ガードンが全員で攻撃してきた時、攻めるな』というものだった。井吹はその言葉を適当なものであるとあまり信用していない様子だが、神童はログロスの見せた目に、何かを伝えようとしていた真実性を見い出すのだった。

 井吹はそんなことより自分の代わりにゴールを守る信助のことが心配された。神童は信助との付き合いが長い分、彼を信頼していると余裕を持って笑う。

 それを聞いた井吹は、改まって神童に質問しようとする。だがそこで火山が噴火を起こし、地表を激しく揺さぶる。このままでいては危険だ。2人は会話を中断し、物陰に隠れる。


 揺れが収まって見たところ、進路を大きな岩が塞(ふさ)いでいた。おそらく今の噴火で排出され、不運なことにこの場に落ちて来たのだろう。道を塞がれ、彼らの取るべき行動は側面の岩壁を登ることしかない。



 神童のその提案は相変わらず落ちれば命がないという局面に直面させられることとなる。すでにこの地で何度も死にかけている井吹は顔をこわばらせつつも神童の手前、わざと強がる言葉を吐く。


井吹「いいねぇ……」


 その顔は蒼白で、顔には脂汗(あぶらあせ)が噴き出していたことは言うまでもない。



 またまた試合会場にカメラは移る。相変わらずアルベガという絶対の司令塔を擁するチーム・ガードンが攻勢をかける。ミスティからパスを受けたヴェス(フクロウラインだ)。真名部の防御を振り切ったヴェスはやおらボールを踏みつけ、必殺技「カザンガン」を撃つ。



 必殺シュート「カザンガン」。一度地面に埋め込む動作があって、それが火山爆発で飛び出したように勢いをつけてゴールに向かう。これはさっき神童たちの邪魔をした火山岩を偶然にもトレースしている。どう見ても触るとやけどする系の技。



 信助はまともに受けたらやけどすると考えたか、必殺キーパー技「ぶっとびパンチ」で迎撃する。


 何とかゴールは阻止したが、衝撃で信助はゴールポストに激突してしまう。心配して駆け寄る皆帆を制して、信助はゴールを死守する気概を見せる。皆帆には見せなかったが、信助はこのプレーで右肩を痛めてしまっていた。




 その間もプレーは続く。プロモの持つボールを好葉が必殺技「このはロール」で奪い取る。だがその顔は上気して赤らみ、明らかに熱によって弱っている印象だ。好葉はこの直後に倒れてしまう。


 天馬が好葉を気遣う中、せっかく奪ったボールをニーラに奪い返されてしまう。ボールはまたもヴェスのもとへ。ヴェスは先ほどの必殺シュート「カザンガン」をもう一度アースイレブンゴールに撃ち込む。同じ技には同じ技と、信助は必殺キーパー技「ぶっとびジャンプ」で対抗する。ここまではすべて先ほどと同じ展開だが、一つだけ違っているのはこの時点で信助の右肩が怪我をしているという点だ。




 その右腕でシュートにパンチをかます信助だったが、やはり止めることは出来なかった。先制のシュートがアースイレブンゴールネットを揺さぶり、ついに試合の均衡が破れた。


 地面に顔から落ちた信助は、腕の痛みよりもシュートを止められなかった心の痛みにその顔を歪(ゆが)めていた。



 ゴール後のインターバルで補水するアースイレブン。倒れてしまった好葉もようやくその表情に生気が戻る。好葉は自身がバテてしまったプレーから失点につながってしまったことを仲間に詫びる。

 天馬は努めて明るく、試合はまだこれからと好葉を勇気づける。だが好葉に限らず仲間たちは暑さのせいで著(いちじるし)しく体力が低下している。



 そして試合は失点を喫したアースイレブンのキックオフで再開される。信助は痛めた右肩を気にしつつ、キーパーの替わりは今のアースイレブンには存在しないことを思い、怪我のことは誰にも話さず胸に秘めていた。しかしそんな信助の様子を兄貴分の鉄角が見逃すはずがない。信助が悲愴な決意を持って試合を続けていることを、鉄角はどんな思いで見ていたのだろうか?


 剣偽から瞬木へのパスが早速ミスティにカットされてしまう。即座にアルベガからの指示が飛ぶ。その指示は、これまで彼がその存在を無視して来たロダンを混じえての作戦決行を意味していた。



 ロダンのデータもアルベガは把握している。心の内では大っ嫌いなんだろうけど。


 なかなか指示通りに動かないロダンを叱責して尻を叩くアルベガ。ロダンは渋々といったように走り出す。そこにプロモからのパスが届く。皆帆が阻止に向かうが、ロダンは簡単に突破する。

 信助の負担を減らすためにもここでライン突破を許すわけには行かない。鉄角は舌打ちしつつロダンの方に向かってダッシュする。

 だが間に合わない。ロダンのシュートが放たれる。その状態で信助を守るには、身体を張るしかない!



 ロダンの重いシュートを顔面でセーブする鉄角。彼はここまでして信助の肉体を守り、そして信助の思いをも守ろうとしたのだ。


 鉄角の頑張りで勢いを失ったシュートは簡単に収められた。しかし鉄角の受けたダメージは相当なものだろう。信助は痛みなど見せずに自分に笑いかける鉄角を見て、彼が自らの怪我のことを知った上で守ってくれたことに気づく。




 一方その頃、神童と井吹はどこで見つけたのだろうか。トロッコに乗って前進を再開していた。歩くよりは楽で速いだろうが絵ヅラがのんきだ。トロッコは翼のある人間には荷物を運搬する行為以外では無用の長物だから、この移動手段の変化は西の種族の支配範囲に入ったことを暗示している。ゴールは近い(はず)。


神童「……聞きたいことって何だ?」


 場が改まり、落ち着いたタイミングで神童はさっきの話の続きを促(うなが)す。井吹は、機械の鳥(スパイバード)に襲われた時、なぜ神童が逃げずに戻って来たのかを問う。

 井吹は自身では機械の鳥を追っ払えないと神童が思ったのかを続けて問う。神童は冗談めかしてそれを肯定する。2人の間に緩和的な笑いがこぼれる。

 そうしている間にトロッコは終点にたどり着く。そこは別のトロッコが存在し、それを乗り継いで行けば目的のスタジアムにも行き着けそうだ。

 先に降りようとした神童だったが、足場の不安定さにぐらつく。その手を掴んで助けたのは、彼我のところを変えた井吹、であった。



神童「あ……ありがとう」
井吹「ふっ、こっちこそ!」


 感謝の礼を述べる神童に対し、井吹はどこか吹っ切れたような表情でそう応える。その意味が分からずに問い返す神童に対し、井吹は適当にごまかす。先を急ごうと歩き出す神童を見つめ、井吹は頭を掻いて照れたように笑って後を追う。

 ……この辺の描写、お互いがお互いを意識している感じはどう見ても男女間にある心理的描写にしか見えないんだけどな。井吹×神童の薄い本にネタを提供しているというか。



 そんなBLな展開が繰り広げられる中、そんなこととは無関係に試合は続いていた。エトゥナが突進する前に立ちはだかるのはまたも鉄角。エトゥナはさっき鉄角を翻弄した必殺ドリブル技の「マグマカーペット」を再び披露する。




 しかし今度は鉄角もただやられてはいない。ドリブル技に対抗するにはブロック技と、必殺技「フットワークドロウ」で見事にボールを奪取する。


 鉄角はその後も一貫して堅い壁としてゴール前に陣取り、チーム・ガードンの進撃を阻み続ける。スタミナの多い鉄角といえども、この高温多湿の状況で頑張り続けることはあまりに過酷だ。肩で息をして頑張り続けるが、その限界も遠くはないだろう。

 埒(らち)があかないと判断した鉄角は、ここである試みを試してみる気になる。


 コンダルムが九坂のマークをかわしてヴェスにパスを送る。先制点を挙げているヴェスはそこで3度目となる必殺シュート「カザンガン」を撃つ。右腕を痛めている信助では果たして止められるかどうか?

 気負いこむ信助の前に鉄角が回り込み、ボクサーのファイティングポーズをとる。バックが彼のかつての主戦場、リング上のように見え、そこで彼は新必殺技「デッドストレート」を出してみせた!



 鉄角が試したかったことは最高のプレーとして体現した。ボクシングのリングが舞台とはいえ、彼が振るうのは拳ではなく足だ。サッカー選手の武器は足である。


 必殺技「デッドストレート」は「カザンガン」を弾き返すのみには留まらなかった。ボクシングで言うところの必殺の返し技「クロスカウンター」のように一気にガードンゴールめがけて飛んで行く。



 アルベガがその威力をサーチしようとするが、その新必殺技のデータはもちろん無い。虚しくエラー表示されたスコープを覗いたまま、アルベガはゴールを許してしまう。



 クロスカウンター炸裂!! 鉄角の公式戦初ゴールが決まり、これで試合は1−1の五分の展開に引き戻される。そのゴールには、かつて剣城も認めた鉄角のキック力に加えて、カウンターで撃った分、ヴェスのシュート力も加味されていたものと思われる。



 信助を救うという思いが同点シュートにまでつながったことに鉄角は満足していた。信助が歩み寄り、その必殺技を褒め称える。鉄角はクセなのだろう、またも鼻の下をこすりながら照れたようにその祝福に応じる。後ろからは、まなみなも祝福にやって来とるな。


 ボクシングのカウンターパンチを応用したと得意げに語る鉄角の言葉に真名部は納得の様子。この技が待ち受けている限り、ガードン側もうかつにシュートを撃っては来れないだろうと皆帆もこの状況を歓迎する。


 この良い雰囲気を一時のものにせず、全員を乗せるのがキャプテンの役割だ。天馬は流れがこちらに来ていると語り、一気に逆転するようチームを鼓舞する。


 試合再開に向け、それぞれの守備位置に戻る中、信助は鉄角を呼び止める。信助は彼にだけは隠しても無駄と言わんばかりに痛めている右肩を押さえながら、ありがとうと感謝する。鉄角はやはり鼻の下をこする例の動作でその言葉に応える。2人の信頼感があればお互いの意思疎通はそれだけで十分だった。



 方や、ものすごいシュートを決められたチーム・ガードンは作戦会議。皆帆の見通したとおり、鉄角のカウンター技がある状況にうかつには攻められないと戸惑っている様子だ。アルベガだけは一度見たシュートを新たな鉄角のデータに蓄積し、自信を持ったようだけど。



 そしてこれも敵方、ただし競技外から試合を見つめる紫天王のリュゲル・バラン(CV:ランズベリー・アーサー)とガンダレス・バラン(CV:興津和幸)のバラン兄弟。ここで初めて公式に紹介される。彼らは2人で一つの紫天王という扱いらしい。ただ彼らは仲間であるロダンのことよりも雑談に夢中にあるあたり、あまり真剣味がなさそうな感じだ。こういうおちゃらけた奴らの方が強かったりするんで厄介なんだけど。眠れない弟にホットミルクを飲めとアドバイスする兄だが……


リュゲル「ホットなだけにホッとするんだ」
ガンダレス「やっぱりリュゲル兄は物知りだな!」


 しょうもないダジャレを言う兄も兄だがそれを間に受けて納得する弟も弟だ。だがアホだけにその信頼関係は強い絆で結ばれていそう。往年のドリフのバカ兄弟を見ているようだ。




【参考資料】ドリフのバカ兄弟



 バラン兄弟はさておき、試合展開は同点となったその状態のまま、膠着状態(こうちゃくじょうたい)を迎える。



 座名九郎のシュートを片手で止めるアルベガ。不意打ち的な鉄角のシュートには苦杯をなめた彼だがまともな状態だとすごく守りが堅い。必殺技を出さないんだもんな。


 そんな中、パスを受けたニーラがゴールに迫る。豪快に蹴られたシュートの前に出るのはまたも鉄角。だが今度は必殺技「デッドストレート」を出す間も無かったのだろうか。鉄角は腹でそのシュートをまともに受ける。



 鉄角の犠牲により、信助はまたも負担なくそのシュートを押さえることが出来た。しかしその際に左腕一本でボールをキャッチする姿を目ざといロダンに見られていた。ロダンは邪悪に笑い、自分だけの気づきを手柄に変え独り占めしようと画策する。



 アルベガの指示が飛ぶ中、ヴェスへと送られたパスを強引に横取りするのはロダンだった。指示に従わないロダンを怒鳴りつけるアルベガだったが、ロダンは手柄さえ挙げれば文句も引っ込められるとばかりにその叱責を無視する。

 ロダンは独断プレーで突き進み、真名部をかわしてゴール前に迫る。ロダンの行為にキーパーを潰すという意図を感じた鉄角はそうはさせじとロダンの前に回る。

 ロダンは構わず必殺シュート「カザンライ」を撃つ。標的はゴールマウスではなく、信助自身だ!




 満身創痍(まんしんそうい)の2人ではその強烈なシュートには翻弄されるより他なかった。シュートが2人を攻撃し、そしてゴールに吸い込まれる。ロダンのゴールで試合は1−2と、再びアースイレブンが追う展開となってしまう。


 ゴール前に倒れ込む信助と鉄角を気遣って天馬たちが駆けてくる。鉄角は身体を張って信助を守ろうとしたのに守りきれなかった不甲斐なさを詫びる。

 信助がいつまでも右腕を動かさないことに天馬が気づく。怪我していることを見破られ信助はあわてるが、それを諌めるのは座名九郎だった。

 信助が仲間に不安を与えないよう頑張っていたこと、そして鉄角もそれに気づいて信助を懸命にカバーしていたことを座名九郎は喝破する。

 隠し事をしながら無理を押してプレーしていたことを信助は謝る。それに気づきながら黙っていた鉄角もすまなさそうに項垂(うなだ)れる。


 だがその2人の気持ちは天馬にもよく分かる。これからはみんなでカバーしようとキャプテン令を発する。まぁ代わりの選手がまだ到着していないからどうしようもないんだけどね。



 天馬と、そして仲間たちの優しさに触れた鉄角は、そんな仲間をも救いたいと自らのソウル発動を待ち焦がれる。握り締めた拳に、彼の深奥に眠る力はいつ応えてくれるのだろうか。



 その態度に焦(あせ)りを感じたのだろう、控えめな口調ながら座名九郎が忠告する。座名九郎自身も歌舞伎の演目「獅子王」の演技に悩んでいた時、心の奥から湧き上がる叫びを聞いたという。それが荒ぶる獅子の目覚めだったことを座名九郎は告げる。


座名九郎「真正面から向き合ってみてはどうですか? あなた自身の心と」


 ソウルの力の先達(せんだつ)である座名九郎からのその忠告に熱心に聞き入る鉄角。その言葉の伝えようとする真意を鉄角は模索する。



 一方、勝ち越したチーム・ガードンの側も不穏な状況下にあった。殊勲のゴールを挙げたロダンだが、それはアルベガの命令に逆らった明白な違反行為の末の得点だった。

 アルベガからの猛烈な叱責を受けてもロダンは悪びれることなく「点を取ってやっただろ?」と語る。お茶目にウィンクしながらのその態度はまったく反省の色は見えない。


 またも不協和音を奏でるアルベガとロダンの様子を、監督のカルデラは苦々しげに見ていた。



 そして神童と井吹の2人は、ようやくこのスタジアムを眼下に収められる丘陵にまで達していた。チームは君らの到着を待ってる。疲れてるだろうけど急げ。



 試合は長かった前半戦も残りわずかとなる。アルベガの指示は変わることなく的確で、攻撃をかけるのはチーム・ガードンだった。

 またもロダンにパスが渡る。フィールドにいる敵の中で最強の存在であろう彼に向かうのは鉄角だった。鉄角は以前、剣城(本物)に言われたサッカーに対する心得を思い返していた。鉄角にとってそれこそが座名九郎に受けた忠告「自分自身の心と向き合う」ということと同義だったからだ。


 ロダンがとどめとばかりに再度の「カザンライ」を撃つ。それをさせてはならじと立ち向かう鉄角の身体を輝くオーラが包み込む!!



鉄角「見せてやるぜ! 俺の中の『サッカー』という野獣の姿をっ!!」



 次回に続く。



  エンディング



 いやぁ、今回は鉄角が男っとこ前だったよね。信助をかばって肉弾防御するところはすごかった。ボクサーとして打たれ強い部分はあれど、顔面セーブは勇気がいるし。上でも書いたけど信助をいじめていた狩屋マサキと中の人が同じとは何度聞いても思えない。

 信助も鉄角の期待に応えてよく頑張った。井吹がソウルパワーに目覚めた今、この機会を逃すとまた出番が無くなりそうなのではあるが。信助がソウルパワーに目覚める機会もあるのかな? 電撃ネズミのソウル。


 あと、神童と井吹の到着遅すぎ。彼ら待ちのせいで前半戦がこんなに長かったんだろうと推察する。これも上で書いたんだけど、どうして東の種族はスタジアムまで送ってくれなかったんだろうか? ちゃんと家に帰るまでがソウル獲得のための修行だったのかなぁ? 遠足じゃないんだから。


 残された紫天王であるバラン兄弟のことも徐々に明らかになって来た。おバカ兄弟ということで人気が出そうなキャラ設定だ。ロダンよりも実は残虐だったりしそうで気が抜けないが。バランというと寿司のネタを分けるあの緑のギザギザを思い出してしまう。


 あとファラム・オービアス本星に囚われの身の剣城(本物)はどうしてるんだろう? ララヤ・オビエス(CV:高垣彩陽)も出番がないので気になっている。そのうち出てくると思うんだけどね。



 前回に明かされた新アニメ企画情報。まだ細部はよく分からないけど、楽しみではある。黄名子とベータの戦いなんて夢の対決やんね!




 次回はようやく合流する神童と井吹、双方がソウルを発動させるという燃える展開になりそう。ただ今回のラストで鉄角がソウルを出そうとしてたよね? トリプルソウルと言ってあげないと、鉄角さんの立場が……。もしかして発動失敗とか? 話数またぎで失敗とか本当にやったらすごい鉄角Disなんだけど。



  次回「ダブルソウル!井吹と神童!!」に続く。



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『イナズマイレブンGOギャラクシー』第29話「翼を捨てた戦士たち」の感想 【神童と井吹のソウル発動!】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第29話「翼を捨てた戦士たち」を観ての感想を書く。タイトルとは逆に、翼を捨てずに残し続けた戦士の姿こそ描かれている印象が深い内容の本編。彼らとの出会いにより2人の地球の戦士が新たな力に目覚める。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第28話「灼熱の惑星ガードン!」の感想 【新しい紫天王は不動似のショタっ子】
 をご覧ください。

  • それ以外の感想は、

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 松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】は星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の本戦3回戦の舞台【惑星ガードン】に乗り込む。そこは灼熱(しゃくねつ)のマグマ惑星だった。


 その星を支配するガードン人たちは鳥類の進化系であり、そこには理念の違いから翼を機械の腕に持ち替えて文明を興(おこ)した西の種族と、種族の伝統たる翼を捨てなかった東の種族の二つの派閥に分かれていた。


 その地でカトラ・ペイジ(CV:上田麗奈)から託された「希望のカケラ」の一片である赤い石を探すことにした天馬たちは3つの班に分かれ、東の山に住むという東の種族の元へと向かう。

 だがファラム・オービアスからガードンに送り込まれていた紫天王のロダン・ガスグス(CV:藤村歩)の卑怯な罠にハマり、神童拓人(CV:斎賀みつき)と井吹宗正(CV:鈴木達央)の両名が崖から落ちてしまう!

 崖下はこの惑星の熱気を象徴するマグマだまりだ。そこに落ちれば万が一にも助かる可能性は無いだろう……



 だが2人は運が良かった。マグマを目前にする最下層に張り出した足場に落下し、ターミネーター状態だけは避けられたのだ。



ターミネーター状態」の図。


 お互いの無事を確認し、立ち上がった両名だが、上に戻る足場は無い。……善後策は仲間の救援を待つことだろう。2人は先に逃がした皆帆和人(CV:代永翼)と森村好葉(CV:悠木碧)が仲間を呼んで戻ってくることに期待する。



   オープニング



 ガードンに設けられた練習グラウンドでは3班の天馬たちのグループと2班の西園信助(CV:戸松遥)たちのグループが戻って来ていた。いずれの班もロダンの卑劣な作戦によって前進を阻(はば)まれ、ここに帰って来ていたのだ。

 東の種族に会うという目的を果たせず落ち込む天馬たちは、まだ戻って来ていない神童たちのグループが良い知らせを持って帰って来ることに期待する。


 だがそこに息を切らせて走って来た皆帆と好葉から神童と井吹と離ればなれになったことを聞き、2人に異変が起こったことを天馬たちは理解した。



 その頃、神童と井吹は崖下から脱出しようと急勾配(きゅうこうばい)を泥まみれになりつつ登っていた。しかしろくに足場も無いその勾配を登る行為はかなりの難事だ。神童が足を滑らせて一気に最下層の足場まで逆戻りしてしまう。

 それに気を取られた井吹の掴んでいた石も崖から剥離(はくり)し、井吹も落ちてしまう。勢いがついた井吹の身体は足場で止まらず、マグマのところまで飛ばされてしまう!



 井吹のターミネーター状態をすんでのところで救うのは神童だった。


 今回は何とか無事に済んだが、2人はこの崖を登る行為はそのまま命懸けであることを否応なく理解する。絶望的な状況をしばし忘れようとするかのように、井吹は天馬が語っていたカトラに関する話を、神童は信じているのかを問いかける。

 神童は小考し、天馬がどんな局面でも諦めない性格の後輩であることを語り始める。


神童「あいつはなんとかなると信じてみんなを引っ張って行った。そんなあいつを俺は信じてやりたいと思っている……」


 多くの葛藤(かっとう)を乗り越え、神童をある種の敬意を込めて見ている井吹にとってその言葉は重く感じられた。井吹はこの神童が全幅の信頼を置いているキャプテン、天馬のことを信じることがチームの、そして自分のためになると確信するに至る。



井吹「俺もキャプテンを信じてみるか!」


 そして井吹は立ち上がり、2人の信じるキャプテンの元に早く戻ろうと告げるのだった。


 その2人を後方の岩場に降り立った老人が見つめていた。その挙動、老人は翼を持たない者には絶対に不可能な物理法則でその場に存在していた。この星で翼を持っているガードン人、それは彼らが探し求めていた存在に違いない。


神童「……東の、種族!?」




 数刻後、神童と井吹は東の山頂に建立(こんりゅう)された東の種族の村の客人として迎え入れられていた。危ういところを救われ、神童と井吹は先ほどの老人に感謝の言葉を述べる。

 老人はその翼を腕のように動かして長く立派なヒゲを触りつつ、この一帯が自分たちの縄張りであり、地球人がどうしてやって来たのかを問いただす。

 神童はここで天馬に聞いた、この星にあるという赤い石のことを尋ねるためにやって来たと理由を明かす。その言葉を聞いたガードン人たちは一斉に動揺し、落ち着きを失う。



 長老にして東の種族の族長、ログロス・ゴードン(CV:園部啓一)は重ねて、地球人が赤い石を求める理由を尋ねる。この名前、西の種族の族長であるアルベガ・ゴードン(CV:高口公介)と苗字が同じだ。おそらくこの両名は親子であろう。ログロスもアルベガもワシのような顔を持っているし。


 神童は自分自身も確信が持てないからか、やや口ごもりながらも、それを求めることが「宇宙を救う」ことになるからだと答える。

 神童は新たに問われるよりも前に、星の存続をサッカーの勝負で決めるグランドセレスタ・ギャラクシーの意義の誤謬性(ごびゅうせい)を持ちかけ、赤い石を含む希望のカケラさえあれば宇宙の危機を救うことが出来るのだと熱弁を振るう。

 その根拠を問うログロスに対し、神童はカトラの話を持ち出し、彼女の言う4つのカケラを揃(そろ)えて彼女のもとにたどり着くことが出来れば、すべての星を救うことが出来るという話を告げる。これは神童自身も直接聞いたわけではなく、天馬しか会ったことがない少女の話なのだが……。

 だが神童はカトラがこの星で赤い石を探せと言及したことに触れる。先ほどのガードン人たちの反応を見て、この星の人間が赤い石を知っていることを確信したに違いない。そして本当に赤い石があるということは、イコールとしてカトラの言葉自体の信憑性(しんぴょうせい)を高めることに繋がる。


 神童の熱弁にもログロスは心を動かさない。安易な言い分だと一蹴(いっしゅう)する。不遜(ふそん)な態度だが、相手は危機を救われた恩人であり教えを乞(こ)うべき相手だ。神童は重ねて赤い石について教えて欲しいと懇願(こんがん)する。

 ログロスからの返答は何も知らないとにべもない。その状況に我慢できなくなった井吹は立ち上がり、しらばっくれずに教えてくれと叫ぶ。

 ログロスは宇宙を救うという話の担保、すなわち信憑性を求める。神童はその話を持ちかけた少女(カトラ)と交信するのは自身の仲間(天馬)であり、神童自身は仲間を、天馬を信じたいと語る。


 ログロスは熟考する時のクセなのだろう、またもそのヒゲをしごいて思いに浸る。そして彼は問いかけの形態を変える。

 翼を捨て、機械の腕を選んだ西の種族について、ログロスは批判する。彼らの行為は文明を発展することがすべてであり、ありのままの自分を受け入ない彼らは自然を象徴するソウルをも否定すると、その状態を嘆かわしく思っていることをログロスは隠そうとしない。

 その嘆きの一番大きな部位を占めることとして、彼はその西の種族を統(す)べるリーダーが自身の息子であるアルベガであることを明かす(やっぱりそうだった)。

 その言葉は神童と井吹を驚かせる。アースイレブンの練習に乱入し、無礼にもシュートを放って宣戦布告をしたあのアルベガの名を聞き、井吹はその瞳に敵愾心(てきがいしん)をみなぎらせる。

 その井吹の態度を見て、ログロスは地球人がすでにアルベガと出会っていたことに気づく。親であるだけあって、ログロスはアルベガが何を考えているのかを手に取るように理解していた。




 グランドセレスタ・ギャラクシーに参戦する上で、アルベガは自分たち西の種族がガードンを代表して出場することを会談の場でログロスに告げる。それによって機械の腕を選んだ自分たちの選択が正解であったことを旧世代である父親に見せつけたいという思いが彼の原動力となっていた。いわゆる一種のエディプスコンプレックス。


 そんなアルベガに対し、ログロスはアルベガの父であるより前に東の種族の代表として振舞う。アルベガのグランドセレスタ・ギャラクシーへの出場を許可し(といっても突き放したような態度であるが)、この問題とは関わりを持たないということを明言する。

 自分たちの星を自分たちで守ろうとしない父に向け、腰抜けと面罵(めんば)するアルベガに対し、自然の動静を重視するログロスは滅びさることもまた自然の摂理なのだと滔々(とうとう)と解く。

 その言葉を、滅び行く年寄りの戯言(たわごと)とみなすアルベガはついて行けないと決別宣言し、ログロスと縁を切ったことをむしろ誇らしげに語る。



 ログロスが語った息子との確執、それはそのまま東と西の種族の見解の相違に直結していた。ログロスは息子の考えこそが愚かな誤(あやま)りであることを自覚させるためにも、アースイレブンとの戦いでは息子よりも地球代表たる神童たちを応援することを明言する。

 もちろん全力で戦うと返す神童と井吹に対し、ログロスはアルベガの強さも誰よりも知っていた。


グロス「今のお前たちで果たして勝てるかどうかだがな」


 そう言ってダメ出ししたログロスだったが、その直後、神童たちを見て興味深げにその目を細める。


グロス「ほぉ、『七色の翼』に『巨大な牙』か……」

 これは一体……? ログロスはこの2人のソウルを見ることが出来るのだろうか? 自然を重視する彼の能力なら自然のパワーの発露であるソウルの力は見えてもおかしくはないが……。彼以外にソウルが見えるというアースイレブン監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)も実は自然大好きのエコロジー爺いなのかもしれない。


 2人に俄然興味を示しだしたログロスは2人にしばらくこの場に留まるよう告げる。これはアースイレブンを勝利に導くために、特訓でもしてくれるのであろうか?



 一方、神童と井吹がそんな状態になっていることなど知りようもない天馬たちは2人が落下した崖の上にやって来ていた。だが当然のごとく彼らは神童と井吹の姿を見い出すことが出来ない。


さくら「もしかしてここに落ちたんじゃ……?」

 野咲さくら(CV:遠藤綾)は眼下に広がるマグマだまりを見て思わず不吉な想像を口にする。それを聞いた鉄角真(CV:泰勇気)は縁起でもないと烈火のごとく怒り出す。誰もが心の片隅に抱く不安感をあっさりと口にしたさくらちゃんハンパねぇ。


 だが2人の行方(ゆくえ)は杳(よう)としてしれない。最悪の事態は考えられないとしても、間もなく太陽が沈んでしまう。迷子の経験からこの星の太陽周期を計算したインテリ真名部陣一郎(CV:野島裕史)が言うように日没後の暗闇での捜索作業はかなりの難事だし、自分たちも遭難しかねないという二次被害の恐れが広がる。

 暗に本日の捜索を打ち切ろうという真名部の意見にハッキリ言う性格になった瞬木隼人(CV:石川界人)は同調する。九坂隆二(CV:岡林史泰)は最終決断をキャプテンである天馬に託す。考え込む天馬。


???「探しましたよ、アースイレブンの皆さん」


 上空から声が響く。上を見ると、翼を持った山伏(やまぶし)のような出で立ちのガードン人が降下してくる。彼は東の種族の使者(CV:田尻浩章)を名乗り、長老(ログロス)の使いでメッセージを届けるためにやって来たと語る。

 あれだけ会いたかった東の種族の人間が自ら会いに来た。それ自体は僥倖(ぎょうこう)と言えるが、今は神童たちの安否が気になる。

 ただ東の種族の使者の言うには、神童と井吹はその長老のもとにいるという。東の種族のガードン人に危ういところを保護されたことを聞き、天馬たちは安堵(あんど)の息をつく。



 特に神童と井吹と共に行動していた皆帆と好葉はその安堵感もひとしおだっただろう。神童たちは彼らを助けるために犠牲になった側面もあり、皆帆と好葉は2人の失踪に大きな責任を感じていたはずだから。


 神童たちの無事を改めて確認する天馬。東の種族の使者はそれを肯定しつつも、訳あって彼らが帰還できないことを告げる。しかし明日の試合には必ず返すという長老からの伝言も同時に伝える。



 それだけを告げると東の種族の使者は、東の種族の特徴である翼を広げて空に舞い上がる。これこそがこの星の人間の本来の姿であるのだが。


 だが天馬たちはまだ聞きたいことが残っていた。何といってもガードン人は明日の試合に負ければ滅亡の危機なのだ。東と西の諍(いさか)いはあれど、自分たちの星の存続のためには共通の敵がアースイレブンであるはずなのだ。

 神童と井吹を本当に返してくれるのか? その確証が取れなかったことに天馬や鉄角は納得が行かず大声で呼び止めようとするが、メッセンジャーは振り返ることもなく飛び去ってしまう。こうなると翼のない人間はどうしようもない。



 東の種族の村、長老ログロスの館では夕餉(ゆうげ)の時を迎えていた。神童と井吹もその席に相伴(しょうばん)していた。ログロスは生きとし生ける物は自然によって生かされており、そのことを意識し、自然に感謝して食べるよう2人に言い渡す。



 グロスに、そして隣席の男に促(うなが)され、神童は団子状の物を頬張る。そしてそのあまりの美味に相好(そうごう)を崩す。


神童「美味しいです!!」


 その言葉にログロスは満足げにうなづく。



 敵に施(ほどこ)しを受けるのは気が引けるのか、井吹は試合中にバテたくないと言い訳をしながら一口齧るが、そのあまりの美味しさに口に運ぶ箸(はし)が止まらなくなる。



 あっという間に完食してしまう井吹。地球人が旺盛(おうせい)な食欲で自分たちの郷土的な料理を食べたことは他のガードン人たちも嬉しかったらしい。にこやかに井吹を見つめ、もっと食えとばかりに自分たちの分を与えてくる。


 その接待攻勢に井吹は困惑しまくるが、その微笑ましい様子に地球人とガードン人との友情を見る思いの神童は笑ってそれを見ていた。

 そしてログロスに向き直り、ガードンの料理が地球の料理と味が似ていることを打ち明ける。ログロスは地球の話に興味を抱き、何か話して欲しいと神童に要請する。

 神童は地球が自然豊かな星であることを告げる。緑あふるる大地と生命を育む海、そして青い空が広がっていると地球の特徴を説明する。

 ガードン人たちはその中でも特に「青い空」という部分に心を動かす。湿度が高いガードンの曇った空しか知らない彼らにとっては飛んでみたい憧れに思えたのかもしれない。

 地球にも空を飛ぶ生物がいて、その青い空を飛び回っていることを神童は語る。自分たち人間は空を飛べないが、青い空は心を落ち着かせたり明るい気持ちにさせてくれる、なくてはならない存在であることを率直に話す。

 地球人が自分たち東の種族と同様に、自然と共生して生きていることを聞き、ログロスは引き締めていた表情を弛緩(しかん)させる。

 ガードン人も地球人と同様であったことを語り、そして一つ息をつくような間を置き、息子も同じだったとしみじみと語る。


 ログロスは何かを決心したような表情で、神童と井吹に伝えたいことがあると語る。それはもしかしたら本来は愛する息子に伝えたかったことなのかも知れない。



 その頃、天馬たち残されたアースイレブンの面々も夕食時を迎えていた。あれから天馬たちは結局メッセンジャーの言ったことを信じて彼らの宿舎である【ギャラクシーノーツ】号に戻って来ていたのだ。



蒲田「今日はチキンだよ〜チキン! チキンを食べてチキンに勝つ! だよ」


 何と鳥人間であるチーム・ガードンに勝つためにチキンカツをおかずにした寮母の蒲田静音(CV:くじら)。これをログロスたち東の種族が見たら怒りと恐怖のあまり発狂するんじゃなかろうか?

 蒲田さんのその語呂合わせにその気になった鉄角や九坂がチキンカツを噛み締めて、明日の試合への闘志を燃やす。チキンの匂いをさせて試合に臨めば、ガードン人たちはビビるかも知れないしな。


 男子たちのアホな饗宴(きょうえん)にさくらが呆れる。マネージャーの空野葵(CV:北原沙弥香)は神童たちがどうして明日まで帰れないのかと疑問を天馬に尋ねる。もちろん天馬にもその真意は分からない。だが天馬の神童に対する信頼は絶対だ。大丈夫だと請け合う。


瞬木「機械の身体に改造されてたりしてな♪」



 そうやってビビらせるブラック瞬木のイジワルに乗せられて震え出す好葉ちゃん。そこに助け舟を出すのが皆帆だった。東の種族は機械文明を否定する立場であることを覚えている皆帆には瞬木のブラック攻撃は通用しない。


 そう聞いて、心配になっていた天馬や信助もホッと息をつく。瞬木は悪びれつつ、チキンカツを頬張って帰って来ない2人の境遇を不審がる。その気持ちだけは天馬も同意するのであった。心配のあまり、美味しいはずのチキンカツを食べる天馬の顔色は晴れない。



 そしてその心配される神童と井吹は客人のまま寝床に身体を横たえていた。神童は自分たちをこの場に留めたログロスが何を考えているのかを思い、眠れぬ夜を過ごしていた。

 ログロスの老獪(ろうかい)な思慮を考えれば、その思惑は思っているよりずっと深いものなのかもしれない。彼の息子であるアルベガや惑星ガードンにとっても為になることを考えている可能性がある……



井吹「神童」


 寝ていると思われた井吹に名を呼ばれハッとなる神童。井吹は大事な試合を控えているのにこんなところでのんびり過ごしている場合ではないと神童に語る。確かに夕食後にギャラクシーノーツ号に戻っていれば深夜までブラックルームで特訓が出来たはずだ。

 しかし神童は今はログロスの言うとおりしてみようと返す。まだログロスの真意を見定めていないことが神童をしてそう言わしめる理由だが、井吹はなお明日の試合を控えて気が気ではない様子。

 だが神童の気持ちを翻意(ほんい)させることが出来ないと判断した井吹は、舌打ちしつつも素直に現状に甘んじることを覚悟する。


井吹「チッしょーがねぇな……」
神童「……おやすみ」

 枕を並べ眠る2人。イナギャラが始まった当初はこんな関係になるなんて思えなかった犬猿の仲の2人。このシーン、井吹はジャージを枕の上に置いている。これは神童の返答次第ではこの場をすぐに抜け出してチームの元へと帰れるようにしていたのだと思われる。



 そして翌日、目を覚ました井吹は隣で寝ていた神童がすでにいないことに気づく。あわてて着替えを終えた井吹は室外で目付け的に存在した見張り役の男の隙をついて外に出る。


 神童は朝日を浴びながら館の正面に立ち、何かを見つめていた。そして駆けつけた井吹にその見ていたものを指し示す。そこには空を舞うガードン人。神童が見ていたのは長老ログロスが優雅に空を飛んでいる姿であった。



 朝もやの中、泰然自若(たいぜんじじゃく)に飛ぶログロスの姿。それは幻想的な美しさに満ちていた。鳥居のような石碑の前で、2人はしばしその光景に釘付けとなる。


 ログロスは2人に気づいたのか、その前に着地する。神童はその神々しい姿に見入っていたと正直に述べる。


グロス「求めていたのだ……!」


 思いがけない言葉が返って来て、神童と井吹は驚く。ログロスは自身の翼が空を求め、空もまたこの翼で飛ばれることを求めていたのだとその言葉の意味を説明する。


神童「それは本能ということですか?」


 その質問にログロスはうなづく。本能の赴(おもむ)くままに風を感じていたと述べ、そして意味ありげに振り向く。

 ログロスが神童と井吹にも「風を感じてもらう」と告げると、2人の上空を複数の翼を持ったガードン人たちが飛び始める。



 何が始まるのかと警戒する2人の身体を、2人のガードン人が足で掴んで上空に連れて飛び上がる。驚愕し抵抗する2人だが、抵抗しすぎて地面に落とされてしまえば待っているのは死だ。2人は何をされるのかという恐怖を感じつつも、なすがままにされるよりない。

 そしてログロスを始めとする他のガードン人たちも一斉に飛び上がる。彼らは何をしようというのだろうか?



 2人を連れたまま、東の種族の一行は雲を突いて東の山からどんどん先へ進む。やがてかつて見たマグマの溜まる山岳地帯に行き着く。神童はもしかしたらここから自分たちを突き落とすつもりなのではないかと緊張しながら井吹に告げる。

 その直後、彼らを抱えるガードン人は急降下、悲鳴を上げる2人を掴んだまま地表スレスレで方向を変えて彼らを翻弄(ほんろう)する。

 そして今度は両者向き合って猛スピードで相対する!



 すわ激突かと思われた瞬間、両者はギリギリかすめるようにすれ違う。繰り返される危険な行為、だがそれを地上から見つめるログロスの表情は真剣そのものだった。

 この行為にログロスの意図を感じる神童は、なぜこのようなことをするのかという疑問が湧く。だがログロスも他のガードン人たちも、誰もその疑問を晴らしてはくれない。



 神童と井吹がそのような試練を迎えていることなど天馬たちは知る由(よし)も無かった。ギャラクシーノーツ号の前で2人の帰還を待ち続けるアースイレブン。



 瞬木が本当に2人を返すのかと疑念を表明する。敵対していたとしても同じ星の人間だし、負けたら滅びるのだからと私と同じ読みを見せる。ブラック瞬木と同じ考えだということに個人的にはやや凹む。


 皆帆は例によって耳をピクピク動かして、彼なりの推理を披露する。2人を返すつもりがないのなら、わざわざあの場面で地球人に話しかけてくるだろうかという彼の推理は的(まと)を射ている。

 それに反論するのは真名部だった。あそこで話しかけたのは地球人を油断させ、陥れるための罠だった可能性に触れる。


 その可能性もあるが、鉄角の言う通りいちいち疑い出してはキリがない。ここは東の種族の信義にかけるより他は無い。天馬は東の種族の長老の約束だけにそれを履行しないはずはないと、信じて待つことを一同に告げる。


 ただ試合開始の時間が迫っている。コーディネーターのイシガシ・ゴーラム(CV:遠藤綾)はどうするのかと決断を促す。現状のアースイレブンは2人欠けても11人いるわけで、一応試合に臨むことは不可能ではない。

 そこでギャラクシーノーツ号の乗降ドアが開き、黒岩が水川みのり(CV:高垣彩陽)を伴(ともな)って降りてくる。彼は2人の欠員のことなど眼中に無いかのように試合会場への移動を命じる。

 イシガシはそれを受け、一同を試合会場へと案内し始める。


 天馬たちは釈然としない表情のまま、イシガシの後に続く。井吹の欠員で一気に先発出場が濃厚となった信助に、市川座名九郎(CV:小西克幸)が歌舞伎の舞台になぞらえてその心得を説く。



座名九郎「舞台袖にいる時も気持ちを高めて出番を待ちます。いつお呼びが掛かってもいいように準備しておきましょう」



 これまではベンチで出番を待つことの方が多かった両者だ。信助は座名九郎から受けた言葉に勇気を得て、顔を平手で叩いて気合いを入れる。



 その間も神童と井吹に与えられる試練は続いていた。今度は今にも噴火しそうな火山口に向けて運ばれる両者。まさかそこに放り込まれるのではないかと神童は恐れる。

 そしてまたも火口直前で方向を変え、急激に上昇していく。降下から上昇へという変化に体感するGの衝撃は相当なものだろう。神童と井吹はうめき声を上げるぐらいしか出来ることは無い。


 そしてついに恐れていた行為に及ぶ。上昇したガードン人は2人をその場で解放したのだ。それはつまり飛べない地球人にとっては落下するより他ない状況を指す。



 すがるものの無い今度こそ絶望的な悲鳴を上げて落下する2人。そのまま加速を付け一直線に火口に向けて落ちて行く。助ける能力のあるガードン人たちは見つめるだけで動こうとはしない。



 絶望的に思われたその状況。だが落下する2人の身体を輝くオーラが包み込む。雄叫びを上げる2人。それはあたかも絶望に抗(あらが)うことでおのれの潜在能力のすべてを利用し尽くし生き延びようとする野生の行為のように思われた!!


 ログロスたちが見守る中、火口内に落ちた神童と井吹。その姿が没した直後、ものすごい轟音と衝撃波が周囲の空気を震わせる。



 火口縁(かこうぶち)の岩棚に悠然と着地した神童と、それとは逆にワイルドに穴を穿(うが)ちつつも無傷な状態の井吹の両者の姿があった。2人ともその身に何が起こったのかは分からないという表情だ。おそらく無我夢中で彼らの中に潜む能力を発動させたに違いない。


グロス「精神の極限に達した時、奥底に眠るソウルが呼び覚まされるのだ」


 火口に降りて来たログロスはこの事象を端的に解説する。すべては神童と井吹のソウルの力を目覚めさせるためにログロスが仕組んだ、真の意味での試練であった。

 ソウルを覚醒させるための方策だと最初から分かっていれば、神童たちは身の危険を感じられなかったはずであり、それは同時にソウル発動にはマイナスに働いていたであろう。真意を隠して命を危険にさらされてこそ、ソウルはその姿を現して神童と井吹を救ったのだ。

 ログロスがそこまで考えて自分たちに試練を与えていたことを賢明な神童は見抜いていた。そしてその好意のおかげで真の力に目覚めることが出来たと、感謝して礼を述べる。

 井吹の方はまだ怖い目に遭わされたことについて納得いかないようだったが、ガードン人たちにそのソウルの強さを褒められてまんざらでもない様子。井吹はおだてに弱いようだ。


神童「でも良いのですか!?」


 神童は感謝しつつも、目覚めたその能力こそがログロスの息子であるアルベガを打倒し、この星を滅ぼす結果になってしまう可能性を思うとそう問わずにはいられなかった。

 ログロスは神童たち地球人が敵であることを理解した上で、なおその力を目覚めさせたことを承知していた。アルベガが神童たちに敗れることがあれば、この先も勝ち続けることは出来ないと語る。それは神童を指導したこの父、ログロスをも超えていないことの証明であるからだ。

 そしてさらなる正論でもってログロスは神童に畳み掛ける。



グロス「それに、例え試合の結果がどうであれ宇宙を救ってくれるのではなかったのかな?」


 ログロスは神童が話した少女の話を信じてくれたのだ。それは同時にその話の発信源である天馬をも信じるということだ。神童はログロスのその懐(ふところ)の広さに言葉を失い、そして先に控える試合への思いを募らせる。地球人に全幅の信頼を持ってくれているこの長老のためにも試合は負けるわけには行かない。



 試合会場ではすでに観客が満ち、アースイレブンのメンバーもアップを始めていた。とうとう戻って来なかった2人を思い、天馬は苦渋の表情を浮かべる。

 そこで黒岩から、本日の先発メンバーが発表される。FWは三枚で臨むと告げ、瞬木、座名九郎、剣城京介(CV:大原崇)の三者の名を呼ぶ。剣城こと剣偽は前回の試合出場を回避した経緯があるが、今回は参戦を決める。2人の欠員がいる以上、出ないわけには行かないしな。



 そしてキーパーには信助が初めて選出される。信助と座名九郎は2人で誓い合ったリザーブの選手心得を確認し合うかのように視線を合わせ、うなづき合う。


 天馬は正選手がいない時こそチームとしての底力が試される時だと言って親友を鼓舞する。そして信助がアースイレブン入りして以来、兄貴分として彼を気に掛けていた鉄角もエールを送る。



「信助、俺は何が何でもソウルを引き出して見せるぜ!」


 信助を励ますと同時に、自分自身の思いをも奮い立たせるガッツマンの鉄角は信助にとっても心強い兄貴分だった。笑顔で互いの健闘を誓い合う。

 天馬は神童と井吹が戻って来るまで自分たちで踏ん張るという意思を仲間に統一させる。天馬は神童と井吹の帰還をまだ疑ってはいなかった。もちろんその意思はすかさずアースイレブン全メンバーに浸透する。



 一方のチーム・ガードン陣では、機械の腕をドライバーで調整するアルベガの姿があった。その彼に語りかけるのは、実力でもってこのチームの強制助っ人になったロダンだった。

 彼の姑息な計画によってこの場にアースイレブンの正GKとチームの司令塔が存在しない状況は、チーム・ガードンにとっては有利に働くことは確かだ。



 ロダンは信助が相手なら何点でも得点できると嘯(うそぶ)き、勝利は間違いないと笑って立ち去る。アルベガは傲岸不遜(ごうがんふそん)なロダンの態度に怒りを募らせる。正々堂々とアースイレブンを倒すことで自分たちの選択した機械化の道が正しいことであることを証明したいアルベガにとって、ロダンの行為は余計なことでしかない。


 だがアルベガは勝利のためという第一義的問題を挙げ、そのためならロダンに大きい顔をされている現状もやむを得ないと憤(いきどお)る自身の気持ちを納得させる。

 そんなアルベガの心情を理解するのであろう、忠実なチームメンバーたちは揃ってアルベガに従うことを決めていた。コヨパク・ジャリガー(CV:不明)が代表してその意を告げる。




 恒例の試合開始直前の両チームの布陣。チーム・ガードンは3-3-4という変則的なフォーメーション。だが攻めっけの強そうな選手が前線に揃い、超攻撃的な構成と言えよう。1番GKのアルベガ、8番FWのコヨバクと10番FWのロダン以外の名前は、2番DFのマヨン・クレステ(CV:不明)、3番DFのメラピル・セクレタ(CV:不明)、4番DFのミスティ・オール(CV:不明)、5番MFのネバド・コンダルム(CV:不明)、6番MFのエトゥナ・ホルク(CV:不明)、7番MFのプロモ・シュービル(CV:不明)、9番FWのヴェス・ホーネ(CV:岡林史泰)、11番FWのニーラ・フェズン(CV:田尻浩章)。ちなみにロダン以外は全員、その名を見ればどんな鳥類がモデルになっているのかが分かるようになっている。またピンク文字は女の子。鳥頭だと男女の区別が付けにくい。


 一方のアースイレブンは4-3-3とFW3枚の攻撃的布陣。注目はやはり正式な試合で初めて選出されたキーパー信助だろう。ソウルに目覚めた井吹が帰って来るまで頑張って欲しいところだが、ロダンの発言を考えると引き立て役になっちゃう可能性も……。



 そして気になるロダン以外の紫天王のリュゲル・バラン(左 CV:ランズベリー・アーサー)、ガンダレス・バラン(右 CV:興津和幸)の白黒兄弟。この2人はベンチ入りしていないようなので、やはり顔見せだけで次の惑星での敵になりそう。



 試合開始前から、フィールドに充満する熱気のせいでアースイレブンの選手たちはバテ気味の様子だった。やはり懸念されていた通り、この星の環境が最初の敵となりそうな印象を受ける。

 天馬は仲間の様子を見つめながら、彼にとっての精神的支柱と言える神童と井吹の帰還を心待ちに待っていた。そんな気持ちは試合開始に何ら考慮されることなど無い。


 いま高らかに試合開始のホイッスルが鳴り響く。その過酷な戦いの開始を象徴するかのように、会場外ではコロナのような炎が湧き上がる。



 次回に続く。



  エンディング



 ようやくガードンとの試合が開始される段になったが、その前の神童と井吹の覚醒が今回の見どころだ。彼らのソウルを発動させるにはかなり強引な指導が必要だったということが描かれていた。


 東の種族の長老、ログロスと西の種族族長のアルベガが親子というのは、関係性に世代間、ジェネレーションという新たな対立軸が描かれた印象だ。「親の心子しらず」という言葉や「老いては子に従え」という言葉があるように、この関係性の場合どちらが正しいのかは常に争いの種になり得るものだと思う。

 若いアルベガの側が常に発展する精神性を重視して翼を捨て機械化に邁進する気持ちも分かる。そして自然を重視してそれを蔑(ないがし)ろにしてはならないと説くログロスの気持ちも分かる。

 アルベガは親子の縁を切ったと言っていた。確かに国家存亡の危機に際し、滅びることも自然の摂理と達観する老人の意見に流されて若者である自分たちまでもが滅ぶことを同意する訳にもいかないだろうけど、親に対してあの口の利き方はどうだろう? とも思う。

 ちなみに本文中に書いた「エディプスコンプレックス」とは男の子が父親を憎みそれを乗り越えようとする思考のこと。ギリシャ神話のオイディプスの悲劇がその語源。有名なスフィンクスが出したなぞなぞの話はこのオイディプスの話の一部。


 願わくば、アースイレブンとの戦いを経てこの親子の関係が修復されることを望む。この親子のケンカがそのまま東と西の見解の相違に直結しているはずだから、この両者が和解すればガードンの内紛も収まるはず。



 神童と井吹の新たなソウルがアースイレブン勝利の鍵だとは思う。次回はそれが描かれることになるのだろうか。早く帰って来ないと信助とその兄貴分が痛い目に遭いそうなの……。




 国民投票、追加メンバーは円堂カノンだった。そして驚くべき重大発表。それはこの選出されたベストイレブンでアニメが制作されるということだ!!


 そのベストイレブンが戦うべき敵チームはこのメンバー。なるほどザナークが投票する候補にいなかったの理由がこれでハッキリした。ただ白竜とかフェイとかは選ばれなかった腹いせで敵になってる感が否めない。ベータちゃんとザナークがDFというのもしっくり来ないけどメンバー的に仕方ないのかな。



  次回「強烈!シュートカウンター!!」に続く。



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『イナズマイレブンGOギャラクシー』第28話「灼熱の惑星ガードン!」の感想 【新しい紫天王は不動似のショタっ子】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第28話「灼熱の惑星ガードン!」を観ての感想を書く。今度の舞台は火の惑星、そして相手は鳥人間だった。焼き鳥を食べたくなったのは私だけであろうか?



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第27話「皆帆のオウンゴール!」の感想 【ポトムリの正体がイケメン過ぎる】
 をご覧ください。

  • それ以外の感想は、

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 松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】は星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の本戦2回戦【惑星サザナーラ】に勝利して次の目的地へと向かう。



 次の目的地の名、それは【惑星ガードン】。月面のようなクレーターと赤錆(あかさび)た色合いが荒涼とした雰囲気を醸し出す星だった。アースイレブンを載せた【ギャラクシーノーツ】号はガードンのステーションに到着する。

 乗降ドアが開くのを今か今かと待ち受けていたピクシー(CV:北原沙弥香)が一番乗りで外に飛び出そうとするが、吹き込んできた蒸気に悲鳴を上げる。天馬たちも開いたドアから流れ込む蒸気という事態に驚く。

 ガードンは灼熱のマグマ惑星だったのだ。その温度、湿度の高さから一同は蒸し暑さを感じる。降り立ったばかりなのに早々にバテてしまう一行。



 この状況に準備良くうちわを仰(あお)ぐ野咲さくら(CV:遠藤綾)と、その準備の良すぎるさくらの装備品に呆れ口調の鉄角真(CV:泰勇気)。このやり取り一つを見てもこの2人はやっぱり名コンビだという気がする。



 まるで蒸し風呂のようなその状態はメガネっ子である真名部陣一郎(CV:野島裕史)にとっては天敵だ。嬉しいわけでもないのにメガネが曇る状態を森村好葉(CV:悠木碧)に心配され、さらには黒い性格を隠さなくなった瞬木隼人(CV:石川界人)には指を指されて笑われる始末。


 面白い状況になっていると瞬木にからかわれながらも、真名部はこれは気温の高さの証明だと人差し指でメガネを持ち上げる例のクセを見せる。

 そしてさすが頭脳派らしく、この星の高温の状況を推測し始める。太陽による熱以外にもマグマによる放熱、そして活動的な地熱の影響も大きいであろうことを推察する。

 神童拓人(CV:斎賀みつき)は真名部の解説から星全体が暑いということを感じ取る。地熱により発せられるスチーム(蒸気)が湿度を高め、より一層熱く感じられるのであろう。


 彼らの想像が正解だということを、グランドセレスタ・ギャラクシー開催中は彼らのコーディネイターとして随行するイシガシ・ゴーラム(CV:遠藤綾)が肯定する。いつものように次の目的地に先着していたイシガシは、これもまた恒例となった無感動な口調でアースイレブンの到着を歓迎する。彼(!)自身はこの暑さの中、汗ひとつかかない涼しげな表情で。


イシガシ「ようこそ、惑星ガードンへ……」



   オープニング



 イシガシはこの星の環境に慣れないうちはこまめに水分補給するよう地球人たちに忠告する。前回のサザナーラが涼しい水の惑星だった分、この茹(う)だるような暑さは選手たちに過酷な状況に感じられた。九坂隆二(CV:岡林史泰)はだらしなく両手をだらりと下げながら歩き、ボクシング経験者の鉄角ですら止まらない汗に辟易(へきえき)していた。



 タオルを絞ったらこんなに汗が。確かに暑いがその異常な量の汗は鉄角が単に汗っかきだったということだろう。代謝しすぎだろ。その汗っかき体質自体を嫌悪するような目で見つつ、皆帆和人(CV:代永翼)はこの地をサウナに例える。


 西園信助(CV:戸松遥)は空に何かが飛んでいることを発見する。鳥のようにも見えるが、それは翼だけで身体のフォルムは人間だった。


神童「鳥人間……?」


 イシガシはそれをガードンの住人だと説明する。次の敵チームが空を飛びながらサッカーするという可能性を示唆され、鉄角が抗議するが、イシガシは戦うべき相手は彼らではないと語る。


 さくらは地上で見かけるガードン人を見て、顔だけが鳥であることに気づく。ガードン人には先ほど空を飛んでいた翼のある者と、翼を捨てて機械の腕を取り付けたものとの二種が存在することが明らかとなる。天馬たちアースイレブンが戦うべき相手は、翼のない方のガードン人だとイシガシは告げる。まぁ確かにサッカーはキーパーが手を使うし、スローインの時も手を使うしねぇ。

 地上のガードン人たちは地球人である天馬たちがこちらを見ていることを察し、姿を隠してしまう。どうやら警戒しているらしい。


 天馬の質問に答える形で、イシガシはこの星でどうして二種類のガードン人が存在するのか、その経緯を説明する。

 かつてガードン人は全員が翼を持ってこの星に存在していた。しかし近年、その翼を手放して機械の腕を付けるガードン人が増加しているという。それはその手にハンマーやスパナを持って工業化に進むため、ガードン人たちが自ら選択した新しい進化の形であった。



 その手でハンマーを振るい、その手で握ったスパナでネジを締める。そうして工業化に進んだガードン人たちは様々な機械製品を開発し、高度な文明を築き上げて地上での生活に適応していく。

 空を飛べるというアドバンテージを手放してまで工業化に進んだ行為を、皆帆はやや不思議そうな思いで聞いていた。ただそれは最初から飛べない分、飛ぶことに憧れる地球の人間の発想ではある。ガードン人の一部からすれば地球人のように腕が欲しいという気持ちになることも想像に難(かた)くない。

 しかし一方で、彼らの特性である翼を手放すことを潔(いさぎよ)しとせず、機械化を拒(こば)んだガードン人たちもいた。

 それが今も空を飛んでいる東の種族であり、機械化を受け入れたガードン人は西の種族と呼ばれている。



 左のガードン人は買い物かごとまつ毛からして女性なのだろう。西の種族は腕以外にウンコみたいな髪型までもがアバンギャルドで斬新だ。


 東と西の種族はその見解の相違もあり、惑星ガードンの支配権を巡(めぐ)って対立関係にあるという。同じ星の種族なのに、考えが違うことで争い合うということに信助は悲しそうな表情になる。地球人だって資本主義と共産主義という考えの違いで殺し合った歴史を持つわけで、一概にガードン人の行為を愚行(ぐこう)と断罪することは出来ないだろう。

 問題は星の中でも争っている時に、その星全体の運命がアースイレブンとのサッカー対決で決まってしまうということだろう。実際に戦う西の種族はともかく、東の種族は自分たちと関係ないところでそのようなことが決められることに納得はしないだろう。

 そんな現状を瞬木はケンカして勝手に自滅してくれたら良いのにとハッキリ語る。ハッキリ言うようになった瞬木だが、神童はその考えも一理あると肯定的だ。何といってもこの戦いは負けるわけにはいかないのだ。敵が分裂していることをチャンスと判断することは卑怯でも何でもない。


 天馬はカトラ・ペイジ(CV:上田麗奈)からかけられた言葉を思い返す。そう、勝ち続けて彼女のもとにたどり着くまで天馬は、アースイレブンは負けるわけにはいかない。カトラに会えれば地球だけでなくこの銀河系すべての人間を救うことが出来るはずだ。天馬はドリンクの入ったボトルを強く握り締めて決意を新たにする。

 そして次の戦いに勝利するためにも特訓を開始すると宣言する。キャプテンらしくメンバーに檄を飛ばし、次の戦いへの布石を打つ。もちろん一同に異論はない。高温多湿というガードンの過酷な環境にあっても彼らのサッカーへの情熱だけは揺るがない。



 天馬たちの様子を高々度から見つめる視線があった。それは機械で造られた鳥。スパイバードだった。地球人の監視に使われていることは間違いない。



 案の定、そのスパイバードが送る画像は西の種族族長でありチーム・ガードンの敵キャプテンでもあるアルベガ・ゴードン(CV:高口公介)の元に送られていた。



 アルベガ。ワシのような顔を持ったガードン人。思うにガードン人は鳥類が進化してその星の支配者となった例であろう。サンドリアスが爬虫類の進化系だったように。もしかしたら地球のように哺乳類が進化して地上の支配者となった例の方がこの銀河系では少ないのかもしれない。


 高度な機械文明を築き上げた彼らだけに、スパイバードからの映像から彼らの筋力など潜在能力まで調査してしまう。この技術により、試合前からアースイレブンの能力は丸裸にされ、情報戦においては圧倒的に不利な情勢に追い込まれてしまう。



 そして恐るべきことに、現在ソウルを発動できる選手までもが把握されてしまう。好葉、市川座名九郎(CV:小西克幸)、瞬木、皆帆の4名。いきなり出すことで意表を突くことが出来るソウルパワーも事前に知られてしまっては効果も半減する。


 アルベガの側近はソウルそのものを軽視して前時代的なパワーだと一笑に付す。アルベガも翼を捨てたとともにソウルも不要だと言い捨てる。彼らの矜持(きょうじ)、それは翼とソウルを捨ててでも手に入れた機械の腕を絶対視し、彼らの選択が間違いではなかったことを東の種族の連中に知らしめるということであった。



 一方、ガードン人たちにスパイされていたことも気づかずに石畳のグラウンドで練習を開始するアースイレブン。近くの石柱の上から、先ほどのスパイバードとは違う目線で彼らを見つめる視線があった。

 老人の姿をしたガードン人は彼ら地球人の到来を吉か凶かと占うかのように謎めいた言葉をつぶやき、その翼で飛び立つ。翼を持ったその姿から、この老人は東の種族に属していることを強く示唆していた。



 そしてグランドセレスタ・ギャラクシーの開催の元となった惑星【ファラム・オービアス】に舞台は移る。王宮では女王のララヤ・オビエス(CV:高垣彩陽)が剣城京介(CV:大原崇)の帰還を待っていた。

 剣城の帰還に、ララヤは明らかに喜びを込めた口調で語りかける。剣城はララヤに求めていた「1日の猶予」を終え、約束通り戻ってきたのだ。

 ララヤは王になる決心(=自らと結婚する決心)を改めて問う。剣城はそれに即答を避け、逆にララヤが女王としてしなければならないことは何ぞやと質問する。



ララヤ「決まっておる。この星の幸せを守ることじゃ」


 ララヤはいきなりの質問に小考し、笑ってそう答える。だが剣城はこの星が決して幸せな状態ではないと深刻な口調で語る。ララヤは自分の星の絶対の幸福を否定されたことに怒り出す。

 だが剣城はララヤを王宮に閉じ込め、都合の悪い真実を教えずに隠し通そうとしている勢力が存在していることを示唆する。女王の代わりにこの星を治める権利を委託する貴族たちは彼女が尊敬する亡き父から任命されたものであり、自身を裏切ってこの星を操ることなどありえないとララヤは色をなす。

 しかし剣城は確信していた。そしてララヤが女王であるというのなら、真実を見なければならないと強く迫る。おそらく剣城が欲した「1日の猶予」の期間中、剣城はこの星の実情を観察しに向かっていたのだろう。



 舞台は再度、ガードンへ。好葉とさくらの女子2人はランニングに汗を流すが、この星の暑さは彼女たちから容赦なく体力を奪い取る。いきなりこの暑さに慣れることは難しい。だがそんな中、鉄角だけは全力で声を張り上げ、全力でダッシュして全力でシュートする。

 その姿はバテていた他のメンバーを驚かせる。鉄角は未だそのソウルに目覚めていない自分の状況を鑑(かんが)み、ここが成長への踏ん張りどころだと見据えているのかもしれない。

 鉄角の暑苦しいまでのその頑張りは、暑苦しい仲間の座名九郎や九坂などの魂にも火を点ける。さわやかコンビのまなみなにまで派生したそのド根性という士気の高まりを利用しない手はない。天馬はその意気だと張り切る仲間たちを鼓舞する。


 鉄角と九坂の競り合いから、ボールがあさっての方向に飛んでいってしまう。だが高く上がったそのボールに飛びつき、豪快なボレーでゴールにシュートを叩き込む影があった。

 グラウンドに降り立ったその人影は機械の手を持ったガードン人だった。その機械製の腕に紫のキャプテンマークを巻いたその人物、それはアースイレブンをスパイしていたアルベガその人だった。

 アルベガは名を名乗り、次の対戦相手の代表として挨拶に来たと尊大に述べる。いきなり乱入してきたその無礼な態度を、これがガードン流の挨拶なのかと非難する神童。ケンカ上等の九坂は早くもその挑発に応じようとして天馬に諫(いさ)められる。

 翼を捨てた鳥人間と瞬木に揶揄(やゆ)されたアルベガは目を見開き、翼よりも機械の腕を選択した自分たちの考えが正しいことを証明するためにアースイレブンを倒すと宣告する。究極の進化を遂げた自分たちに敵は無いと自信満々に。

 言いたいことを言ったアルベガはその場を立ち去る。宣戦布告にやって来たということであろう。直接対峙した敵の将の姿に、アースイレブンはその気を引き締める。



 そしてファラム・オービアス。剣城は城下の繁華街にララヤを誘(いざな)っていた。以前、街に登場したときは熱狂的な市民に迎えられた彼女のことだ。その再現をさせてしまっては真実の視察にはならないだろう。変装したララヤは街を行き交う市民が誰も自分のことに気づかないことが楽しそうだ。



 お忍びで街を歩くことを嬉しそうにはしゃぐララヤちゃん。そのクリンとした特徴的なモミアゲからして一目瞭然なんだけど。


 いつもと変わらぬ平和そうな街の様子を見て、ララヤは安心した様子で歩いていた。剣城は人々の表情をよく見ろと忠告する。そう言われてよく見ると、確かに市民たちの表情は暗く沈んでいた。


ララヤ「誰も……笑っておらぬ……」


 彼女の知るファラム・オービアス国民はいつも幸せそうに笑っていた。だが女王が見ていないところでは、誰もその笑顔を浮かべてはいなかった。剣城はさらに深刻な場へとララヤを導く。


 そこは街の華美な華やかさとは無縁のバラックが建ち並ぶ、いわゆるスラムだった。まさか自分の治める国内にこのような貧民街があることにララヤは絶句する。

 財産と住む家を奪われ、その地にひっそりと存在する彼らを見て、ララヤは怒りを込めて彼らから財産を奪ったその首謀者を問う。



 その首謀者が、これまでララヤが信頼していた上級貴族たちであることを剣城から聞かされ、ララヤは言葉に詰まる。途方に暮れて焚き火の前でせめてもの暖を取る子供たちの姿……それが上級貴族たちの自身への裏切りの結果であることをララヤは痛感する。


剣城「お前の父、国王アクロウスが本当に作りたかった国はこんな国なのか?」



 追い討ちのように剣城の言葉がララヤの胸に突き刺さる。ララヤの瞳からは、自分が何も知らなかったことに対する後悔と悔悟と痛惜の念が入り混じった熱い涙がにじむ。自らをお飾りにして勝手な行為に及んだ貴族たちへの怒りの涙へと転嫁することはあるのだろうか?



 舞台は三度(みたび)ガードンへ。ガードン人たちの本拠地では、アルベガとファラム・オービアスから送り込まれた刺客たちとの間でいざこざが巻き起こっていた。

 誇り高く自分たちが築き上げた文明に自信を持っているガードン人はファラム・オービアスの助っ人は不要との立場だった。



 だがファラム・オービアスよりの刺客、紫天王のロダン・ガスグス(CV:藤村歩)は挑発的に笑って、今のチームではガードンはアースイレブンには勝てないと言い切る。余談だけどこの前髪と目つきから、不動明王(CV:梶裕貴)を思い出したのは私だけではないだろう。あとこのイジワルな口調からも。


 仮に助っ人を得た上で勝利してもそれは東の種族に対する優越性の証明にならないという判断が働いているアルベガはロダンの意見に聞く耳を持たない。

 再度の拒否で交渉は決裂したかに思えた。だがロダンはガードン人たちが誇りと思っている究極の進化という言葉自体をバカにする。そうしてアルベガたちを後に引けない状態にして、ロダンは条件闘争に持ち込む。



 本拠地内にあるサッカーグラウンドで、ロダンは1対3でサッカー勝負をすることを提案する。数の上でも不利なのだが、さらにボールを奪われた時点でロダンの負けという圧倒的に不利な条件だ。ロダンが負ければ二度とアルベガたちの目の前に現れないことという条件が示される。

 それらすべての条件を飲んで、それでもロダンは自信満々だった。キーパーのアルベガが開始を告げた直後、ロダンは疾走しその秘められた能力を全開にする。




 トラのようなアルマジロのようなソウルに身を包み、一気にゴールを陥れたロダン。アルベガもその仲間たちも一歩も動く隙のない、まさに圧勝の貫禄だった。またも余談だが、アニメ上で紫天王がソウルを使用したのはロダンが最初。


 ソウルを否定していたガードン人がソウルに敗れるというのは屈辱的だったであろう。しかも圧倒的に有利な条件であったというのに。


アルベガ「これが……ソウルの力……!?」


黒「ああ言うのをなんて言うの、リュゲル兄?」
白「『当然の結果』と言うんだ」

 こちらも3人いるというのにロダン一人に任せてこの勝負を傍観(ぼうかん)していた紫天王の2人、リュゲル・バラン(左 CV:ランズベリー・アーサー)とガンダレス・バラン(右 CV:興津和幸)の兄弟。紫天王が一気に3人も舞台に登場するとは驚き。きっと彼らも強力な能力を持っているのだろう。しつこく余談だが、リュゲル役のランズベリー・アーサーさんはアメリカ出身の超イケメン声優さん。そのご尊顔はこちら


 なんにせよ、勝負はロダンの完全勝利だ。条件を提示する立場もアルベガからロダンに移行する。彼は「悪いようにはしない」と悪い顔をしながら言い、ガードンイレブンに自分を加えることを強烈にアピールする。アルベガは勝負に敗れた以上、是非もない。



 アースイレブン側のグラウンドではまだ練習が続けられていた。鉄角と九坂が相変わらず競る。他の場では座名九郎と皆帆、瞬木と真名部などいずれも1対1の形でボールの奪い合いが繰り広げられていた。

 マネージャーの空野葵(CV:北原沙弥香)はそんなメンバーに声をかけて応援をする。彼女自身も選手と同様に汗をかきながら。


 神童のドリブルを天馬がカットする。そのボールは転々と転がり、物陰に入り込んでしまう。それを拾いに行った天馬は、その場でまたも運命の邂逅(かいこう)を果たす。



 カトラだ。またも天馬ひとりの前にその姿を現す。水川みのり(CV:高垣彩陽)の中に在するポトムリ(CV:三木眞一郎)が知ったらまたヤキモチ妬くんだろうなぁ。


 カトラはこの星には3つ目の希望のカケラ「赤い石」があることを伝えるために現れたのだった。ただその赤い石はこの星の人間、つまりガードン人の手に渡っているらしい。

 どうすれば赤い石を入手できるのかという天馬の質問に、カトラは東の山に棲む種族がかつてこの星を治めていたことを語り、彼らに赤い石の在り処(ありか)を尋ねてみることを提案する。

 そこに帰りの遅いことを心配した神童がやって来る。その瞬間、カトラは最初からそこにいなかったかのように姿を消してしまう。相変わらず、彼女は天馬以外の前にはその姿を見せようとはしない。



 カトラから聞かされた話をした天馬の口伝は、やっぱりみのり(ポトムリ)からの強い否定で返される。カトラがすでにこの世の人ではないと、みのりは信じ切っていた。

 カトラの存在の証明となるのは、この星に赤い石が存在するということだ。天馬は東の山に行って赤い石を探すよう皆に告げる。

 東といえば、機械文明を否定する翼を捨てなかったガードン人の棲家(すみか)だ。ただ鉄角は試合前だけにそんな話よりも練習して敵との戦いに備えるべきだと語る。真名部もその意見に同調する。

 天馬はこの戦いに勝利するだけでなく、宇宙全体を救う方法を獲得するためには、希望のカケラを手に入れることも大事なのだと反対派を説得する。


真名部「キャプテンはいるかどうかも分からない人の言葉を信じて行動するというのですか?」
天馬「うん! 俺はカトラを信じる!」


 あまりにもあっさりと肯定され、真名部は論理的に反駁(はんばく)しようとするが、神童も天馬の意見に否定的な口調で「そういう問題ではない」と告げる。


神童「だが試してみる価値はあるだろう。それが宇宙を救う唯一の可能性ならばな!」


 神童のその言葉に勇気を得た天馬は、改めて東の山に向かうことを仲間に提案する。だがさくらはやはり試合前の調整を優先させるべきだと返答する。他のメンバーもその意見に同調的であることを雰囲気から察し、天馬は悲しげな表情を浮かべる。

 神童はそんな後輩の思いに応えるべく、自分と天馬だけで東に向かうと天馬の隣に立つ。二番目にそれに同調したのは井吹宗正(CV:鈴木達央)だった。ひところは神童に反発しまくっていた井吹が二番目に同調するというのは物語当初を知っている立場から見れば隔世の感がある。

 そして知的好奇心が人一倍強い皆帆も同調者として名乗り出る。座名九郎も石を探すという行動の方がこの星の環境に適応できるのではないかと、参加を決める。

 そういう流れが出来てしまえば、残って練習するメンバーの数にも支障が生じる。あまり乗り気ではなかった真名部やさくら、鉄角も参加を決め、これで全員が赤い石捜索メンバーに加わることとなった。

 天馬は自分の曖昧(あいまい)な意見に全員が同調してくれたことに喜び、感謝の言葉を告げる。最初にその流れを作ってくれた神童の提案により、メンバーを3班に分けて捜索することとなる。



 グーチョキパーでグループ分けを決めようとするが、全員がチョキを出した中、ただ一人グーで勝ったと思い込んだ九坂がはしゃぎ出す。神童はアホを見るような目でそんな九坂をたしなめる(九坂の方が年上なのに)。ていうかグループ分けで一人ぼっちになったとしたら、九坂の負けなんだけどね。死ぬぞ。


 仕切り直しのグーチョキパーでメンバーは3つに分かれた。



 神童、井吹、皆帆、好葉の1班。まなみな、くさこのなどが一気に無くなってしまった布陣だが、神童と井吹の腐れ縁は存続。チームリーダーはやはり神童だろう。



 第2班。まったく接点のないメンバーが勢ぞろい。剣城が本物だったら信助と雷門つながりなんだけど、あいにくこの剣城はニセモノの剣偽だ。チームリーダーはいない感じ。本物だったらリーダーは剣城だろうけど。



 第3班。天馬を始め、体力に自信がありそうなメンバーが揃う。真名部のみ体力なさそうで心配だが。チームリーダーは言うまでもなく天馬だろう。瞬木、鉄角、座名九郎などは2班に回ればリーダーになれそうだけど。


 この捜索には加わらない葵からの、見知らぬ土地である星だけに気をつけるようにという忠告を聞きながら3つのチームは赤い石捜索に出発する。



 3つに分かれたアースイレブンの様子は、相変わらずスパイバードによって敵に筒抜けだった。サッカー勝負に勝ってもはやチーム・ガードンのリーダーのように振舞うロダンが監視する。

 そこに通信の割り込みが入る。映し出されたのは、ファラム・オービアスでララヤの隣にいた老婆、ルーザ・ドノルゼン(CV:美名)だった。



 ルーザはこの星でアースイレブンを潰すよう、ロダンに念を押す。おそらくアースイレブンと戦う予定の各惑星に紫天王を送り込んでいるのも彼女の差し金だろう。そしてさらに推測だが、ララヤをお飾りにして政(まつりごと)を私物化し、ファラム・オービアスの民を苦しめているのも彼女の仕業であろう。



 ロダンはルーザの命令を軽く請け合う。彼自身、アースイレブンを叩き潰すのが楽しみで仕方がないといった風情(ふぜい)であった。そこには命令などなくとも地球人を潰すという無邪気かつ残酷な意志が感じられた。



 溶岩のたまる傍(そば)を進む天馬たち3班。案の定、ひとり遅れ出す真名部を置き去りにしつつ鉄角が歩を早める。彼は早く石を見つけて練習に戻りたいと語る。

 熱心に練習していたことを座名九郎に指摘され、鉄角は自分も早くソウルの力を出したいのだと素直に言う。先にソウルの能力に目覚めた瞬木にからかわれるが、鉄角は前向きにサッカーへの思いを語る。もっと強くなりたい……その一心で鉄角は苦しい練習に打ち込んでいたのだ。



「その心意気、あいやお見事ぉ〜!!」


 ここぞとばかりに薄れつつある歌舞伎キャラをアピールする座名九郎。彼は強い意志が壁を打ち破り力を得るという自らの信念を語り、鉄角の努力を応援する。

 ソウルの力の先達(せんだつ)にそう太鼓判を押され、鉄角は嬉しさに有頂天になる。この辺は同じくソウルパワーの先輩の瞬木と違って座名九郎の良いところだろう。あのザナーク・アバロニク(CV:小西克幸)の祖先とは本当に思えない。顔がそっくりなのでDNA的に疑いようがないのだけど。


 浮かれている彼らを尻目に、真名部は左手にある岩がさっき見かけたものと同じように見えることに気づく。同じような光景なので気のせいだろうと言いつつ、念のために目印のバッテン印を書き込む。この慎重さは真名部がこの班にいる大きなアドバンテージになりそうな印象だ(アレ、真名部くんお荷物じゃない?)。



 彼らが遠く歩み去ったあと、その岩が静かに動き出す。それはガードン人の技術で造られた人工の岩だったのだ。ロダンはそれを動かすことによって天馬たちを道に迷わせようとしていた。灼熱地獄で体力を失わせ、試合の本番で実力が発揮できないようにするという卑怯な作戦だ。



 場面は2班の様子へ。相変わらずこの暑さに不満タラタラのさくらはさっき持っていたうちわを持っておらず、手で自身を扇(あお)ぐ。暑いという言葉は周囲をも暑く感じさせる。他のことを考えようという信助の提案で、一同はしりとりをすることになる。別のことに思考を集中させる行為は暑さを忘れるというか、暑さを紛らわせる効果はありそうだ。

 彼らと話を合わせる必要性のある剣偽は「しりとり」という言葉の意味を脳内で検索する。言葉遊びであることを理解した剣偽は、何と一番手に指名される。

 他の人間の回答を参考にすることも出来ない状況に焦る剣偽。さくらに急かされ、彼はえらいことを口走ってしまう。


剣偽「ダーレンモーシラヌ」


 それが何のことなのか、一同はさっぱり分からない。剣偽はそれが銀河の辺境にある惑星の名前だと説明するが、なぜそんなことを一介の中学生が知っているのかという根本的なことに気がついていない。ていうか地球人では大人でも知らない名前だし。

 ただ剣偽にとって幸いなことに、その発言はジョークと受け止められた。「ダーレンモーシラヌ」は「誰も知らぬ」のもじりっぽいし、ギャグに聞こえるのも分からないことはない。仕切り直しで今度はさくらからしりとりが再開される。

 しりとり→りんご→ゴリラ……というものすごい厨二の典型的な始まり方をみせる彼らのしりとり。剣偽はボロが出ないうちに脱落しておこうと考え「ライオン」と答える。「ん」が付けば負けだということは検索済みだったようだ。



 その頃1班のメンバーは険しい坂道を登っていた。



 滑落(かつらく)してしまった好葉をカッコ良く救ったのは何と井吹であった。すぐ下にはマグマだまりが見える。井吹は好葉の命の恩人といえよう。これが九坂じゃなかったことが悔やまれる。九坂、のんきにしりとりしてる場合じゃないぞ。これがきっかけで好葉と井吹が付き合ったりしたら、アースイレブン崩壊の危機だな(九坂の怒髪天で)。



 そしてその頃1班は真名部が印を付けた岩の前で途方に暮れていた。真名部の直感通り、彼らは何度もこの岩の前を歩かされていた。しかしそれは方向が分かりにくいことよりもロダンの悪知恵のせいであったのだが。

 作戦成功にロダンはほくそ笑むが、姑息な手段に誇り高いアルベガは納得が行かない。ロダンは勝たせてあげるという自分の作戦に異議を唱えることは許さないとばかり、振り向いてこう凄む。


ロダン「それとも僕に反抗する気?」


 一度勝負に敗れているアルベガたちは勝手にしろとその場を立ち去る。その時画面内から状況打破に自信を持った声が聞こえる。


真名部「大丈夫ですよ」


 地面に棒を立てて影を作り、そこから太陽の位置と角度を計算して方角を割り出せばこれ以上道に迷うことはないと真名部はその知識を生かして仲間に貢献する。



鉄角「さすが真名部!!」


 私もこのチームのお荷物は真名部だと思っていたことをここでお詫びしたい。真名部がいなかったらこの脳筋チームはダメだっただろう。

 頭脳派の存在に作戦が失敗に終わったことを見切ったロダンは、その攻撃対象を別の班に向けることを決心する。



 他の班の苦労も知らずに第2班はのんきにしりとりを続行していた。「おでん……の大根!」と卑怯に言い直しても「ん」が付いて信助が脱落し、残るは九坂とさくらの2名。

 残った2人が幸か不幸かしりとり得意のしりとりクラスタだった。一騎打ちにもお互い一歩も引かずに延々と戦いが続く。感心して見守る信助と、呆れて見ている剣偽。

 だが剣偽は正体が地球人ではない分、危機察知能力にも長(た)けていた。ロダンが何か策をこらす行為にいち早く気づいたのだ。



剣偽「伏せろ!!」


 ロダンの操作で吹き出した蒸気が4人を襲う。だが剣偽の声に反応したおかげで4人は全員が無事であった。高熱の蒸気をまともに浴びていれば大やけどを負っていただろう。

 

 特に抱きしめられる形で救われた信助は感謝の言葉を剣偽に向ける。ある種、本物の剣城に対してよりも信助の信頼度は高いのではないか? それはさておき本物の剣城ではない剣偽が信助たちを救った理由は一体……?


 剣偽はこれ以上進むことは危険と告げ、葵たちの元へ戻るよう言う。ロダンの存在に気づいた剣偽はこの後の道程も危険だということが分かるのだろう。

 このグループへの作戦も失敗に終わったロダンは、残る1班に攻撃を向けることを決める。



 溶岩だまりの横を進む一行の元に、何かの叫び声が聞こえてくる。それは野獣か怪鳥が発するような不気味な声であった。


皆帆「機械の、鳥……?」


 一直線にこちらに向かってくる黒い鳥。それはずっと彼らをマークしていたスパイバードだった。スパイバードは彼らの前に降下し、こちらに向かってその鋼鉄製のくちばしと爪で攻撃してくる。



 その攻撃はやはり一番弱そうな好葉へと向かう。動物好きの好葉ちゃんをこういう形でいじめるなよなロダン


 好葉の危機を素早く脱いだジャージで庇(かば)うのは、またも井吹であった。フラグ連発だな。井吹はジャージを振りながら、自分が引きつけている間に好葉を連れて逃げろと神童に指示を出す。



 神童は井吹を気遣いつつ、腰を抜かして立てない好葉の手を掴んで逃げる。どさくさで井吹に何も言われていない皆帆も一緒になって逃げとるな。


 全員を攻撃できないことを見て取るが、ロダンはキーパーの井吹だけでも潰す価値があるとあまり気にしていない風。

 井吹の男っとこ前な活躍で好葉(とついでの皆帆)を安全地帯に運んだ神童は井吹を救うために戦場に取って返す。スパイバードの鋭い攻撃にジリジリと後ずさる井吹は、ついに崖っぷちに追い詰められる。下は溶岩だまりであり、落ちれば万に一つも助かる可能性はない。

 とどめの一撃が井吹を襲おうとしたとき、神童の投げた石がその行為を阻害する。戻ってきた神童のデータを見たロダンは、それがアースイレブンの司令塔であることを知ってその顔を喜色に染める。正キーパーと司令塔を同時に潰せるなら、試合は間違いなくチーム・ガードンの勝利に終わるはずだからだ。



 石を投げて威嚇(いかく)する神童と、その間にジャージを着込む井吹。彼らのデータはロダンからは丸見えだ。


 投げた石を命中させ、その隙をついて逃げ出そうとする神童と井吹。だがロダンの操作するスパイバードはその爪を無慈悲に彼らに向ける……



 その攻撃を避けようとした2人は崖から転落してしまう!! すわメンバーチェンジか!? 信助にとってはライバル消失!?


 崖下にはマグマが迫る。彼らの命運は誰の目にも風前の灯に見えた……!!



 次回に続く。



  エンディング



 さて惑星ガードン編がスタートした。環境と敵が一新する展開はいつもながらワクワクする。今回の敵は鳥人間だけど、警戒すべきはソウルを持つ紫天王のロダンだろう。他の2人の紫天王は今回の戦いにはノータッチなのかな?

 緊迫の終わり方だったけど、何となく神童と井吹は助かる気がする(次回予告見たし)。井吹が死ぬとしたら、九坂に撲殺されるという説に100ガバス賭ける。


 他に今回は一見幸福そうだったファラム・オービアスの影の部分が描かれていた。官僚国家とかにはありがちな話だけど、何も知らされていなかったララヤちゃんが不憫(ふびん)で可哀想だった。ずっと騙されていたわけだからね。元老院的貴族制の悪い面が出た感じだけど、ララヤちゃんに関しては親政(王自身が直接政治に関与する手法)が望ましかったと思われる。たぶんまだ子供だからと摂政(せっしょう)が代理で立っていたんだろう。その摂政があの老婆、ルーザだったと思われる。

 ルーザの野望自体も黒幕に利用されているフシがあり、イナズマシリーズは子供向けと思えない深い部分がいつもあるという気がする。




 イナズマイレブン国民投票、FW部門の発表。何と豪炎寺修也(CV:野島裕史)が1位でシュウ(CV:沢城みゆき)が2位。イナギャラレギュラーの剣城が3位という結果だった。最近の剣城はずっと囚われの身だし仕方ないのかなぁ。追加メンバーと重大告知に関しては、次回の感想文で触れたい。実はまだ結果を知らないんだけどな〜。



  次回「翼を捨てた戦士たち」に続く。



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『イナズマイレブンGOギャラクシー』第27話「皆帆のオウンゴール!」の感想 【ポトムリの正体がイケメン過ぎる】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第27話「皆帆のオウンゴール!」を観ての感想を書く。心を読むという強敵を相手にどうすればよいのかを模索するチームの頭脳派が取った行動とは、誰もが驚くとてつもない大胆な戦略であった。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第26話「目覚めよ!俺のダークサイド!!」の感想 【瞬木のソウル発動!】
 をご覧ください。

  • それ以外の感想は、

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 松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】は星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の本戦2回戦で【惑星サザナーラ】と対決する。

 サザナーラ人は【アズル】という相手の心のかたちを見る能力を持っている。その形や色などで相手が何を考えているのか、その大凡(おおよそ)を見通してしまうのだ。つまりサザナーラ人はアースイレブンのメンバーが何を考え、どう行動するかを見抜いてしまう。

 サッカーという競技においてこの能力がどれだけ一方的に有利になるのかは言うまでもないだろう。次に右に動くのか左に動くのか、自分で向かってくるのか誰かにパスするつもりなのか、などなどすべてを見通してしまうのだから。


 アズルに苦戦するアースイレブンだったが、瞬木隼人(CV:石川界人)のドス黒いアズルに興味を抱いた敵将ポワイ・ピチョリ(CV:折笠富美子)の誤算により、瞬木は秘められたソウルの力に目覚める。

 ハヤブサに姿を変えた瞬木はキーパーヴァン・タレル(CV:泰勇気)の守備を突き破り、同点のゴールを奪う!


 勝負の均衡(きんこう)を取り戻された感のあるサザナーラ陣では【ファラム・オービアス】より遣わされた刺客、ヒラリ・フレイル(CV:小林ゆう)が満を持して参戦を表明する。



 自分の参戦を好ましく思わない同僚、12番のサラマ・サラサ(CV:不明)を排除するというやり方で強引に交代したヒラリ。その実力のほどは如何に?



   オープニング




 後半戦開始直前の両チームの布陣。アースイレブンはメンバーチェンジなし。だがソウルに目覚め、その心根を隠さなくなった瞬木の表情がふてぶてしいものに変わっている。人が変わってしまったような印象を受けるだけに、ある意味メンバーチェンジしたようなものかもしれない。


 一方のチーム・サザナーラ。メンバーチェンジは強引にチームに割り込んできた7番、ヒラリちゃん。サラマの詰めていた位置にそのまま入る。チームの司令塔ポジションだけに後半は彼女が指揮するという形態になりそうだ。ただ彼女の強引な性格はチームメンバーに歓迎されていないわけで、そこはうまく連携が取れるかどうかは疑問。



ヒラリ「ここからが本番よ。このヒラリ・フレイルがひねり潰してあげるわ!」


 助っ人の登場に気を引き締めるアースイレブンに向け、ヒラリは恐ろしい形相で凄む。その威圧的な姿には臆病な性格の森村好葉(CV:悠木碧)はもちろん、基本的に何を見ても楽観的な皆帆和人(CV:代永翼)をもたじろがせる。

 ヒラリは仲間であるサザナーラ側にも自分の命令に従って行動するよう釘を刺すが、その尊大な態度はやはりポワイをはじめとするサザナーラ人たちには不満をもって受け止められる。


ポワイ「ポワイああいうの大っきらい!」


 ファラム・オービアスと事を交えてはならないということを承知する11番のヴァルハ・ポロポ(CV:不明)にたしなめられ、ポワイは頬を膨らませながらもヒラリへの敵対心を隠しこの試合に集中することをしぶしぶ認める。



 ポワイは私情を抑え、チームを指揮するキャプテンという立場を自覚して後半戦にアースイレブンを打ち倒すよう、檄を飛ばす。チームメンバーはポワイを「ポワイ様」と呼ぶことから分かるように、彼女に絶対の忠誠を誓っている。もしかしたらサザナーラもファラム・オービアスと同様に王制の星であり、ポワイはこの星の女王なのかもしれない。ゲームをプレイしている人はこの辺の事情もすでに知ってるのかもね。


 瞬木のゴールで同点にされ、サザナーラ側はより一層本気で後半戦に臨んでくるだろう。必ず彼らはこちらの心を読んでくる。神童拓人(CV:斎賀みつき)と天馬の思いは共通していた。だが例え心を読まれたとしても、負けないという思いも共通していた。

 アースイレブンの中でもソウルを発動し、暴走状態のアズルがサザナーラ人にも思考を読ませないという特殊な立場にある瞬木のみは相手の能力を気にする必要はない。「協調性のある自分」を演じてきた彼は、これまで隠してきた本性をあらわにして俺について来いとビッグマウスを叩く。

 そのあまりの変貌ぶりにはベンチで見ている空野葵(CV:北原沙弥香)や西園信助(CV:戸松遥)も苦笑い。少しずつ地を出すならともかく、いきなり全力だもんな。


 チーム・サザナーラ9番の金髪男はそんな瞬木を見つめる。瞬木のアズルだけは読むことが出来ず、無理に読もうとすると2番ネス・ビーチャ(CV:不明)が被ったようにこちらのアズルが崩壊しかねないという。

 とはいえ瞬木以外の選手たちのアズルは手に取るように分かる……それだけでも十分に優位を築くことが可能だと、9番は策士っぽい笑みを見せる。



 後半戦が開始される。アースイレブンボールのキックオフ。瞬木からボールを受けた市川座名九郎(CV:小西克幸)が後方の天馬にパスを送る。天馬は瞬時に右サイドの野咲さくら(CV:遠藤綾)にパス。この素早い攻勢に実況のダクスガン・バービュー(CV:勝杏里)もヒートアップ。

 さくらは敵陣に隙があるのを見て取り、心で『行ける!』と考える。だがその心の変化を見ることが出来るのが今回の敵なのだ。6番の長髪女、カピス(CV:不明)が罠にハマったとニヤリと笑う。

 さくらは案の定、心を読んだヴァルハのスライディングタックルの前にボールを奪われてしまう。悔しがる鉄角真(CV:泰勇気)だったが、皆帆はそれをジッと見つめていた。心を読むという地味ながら最強の能力に対し、何か攻略の糸口を探そうとしているように。

 ヒラリはカピスの名を読んでパスを要求するが、その前にボールが飛んでくる。つまりこれはカピスがヒラリの心をも読んで先回りしたということだ。味方ながらアズルの能力に不気味さを感じつつ、ヒラリはボールを持って攻め上がる。恐るべき能力を秘めているであろう、ファラム・オービアスよりの刺客のこれがファーストプレーだ!

 その突進に立ち向かうのは九坂隆二(CV:岡林史泰)だった。九坂はヒラリだけはサザナーラ人ではない=心を読むことが出来ない存在だとアタリをつけ、心さえ読まれなければこっちのものと強気に立ち向かう。

 だがヒラリは紫天王の一角である。アズルこそ持たないものの、そのサッカー能力は侮(あなど)れない。その名の通り、ひらりと身を翻(ひるがえ)した彼女は水流状のエネルギー波を九坂に向けて放つ。



 その攻撃に驚いた九坂の目の前に移動し、男を誘うかのような妖艶(ようえん)な表情を見せるヒラリ。だがその後の九坂に待ち受けていたのは痛い洗礼だった。



 ヒラリのドリブル技「ジャックナイフ」に切り裂かれる九坂。アホ毛が可愛いヒラリちゃんだけど、攻撃はいつも容赦ない。


ヒラリ「フッ私に触ると怪我してよ!」


 倒れた九坂を満足そうに仁王立ちで見て、ヒラリは捨てゼリフを残す。そしてゴールに向けて進撃を再開する。ゴール前は皆帆と真名部陣一郎(CV:野島裕史)が守りを固めている。ヒラリは左サイドに守備の穴を見い出したが、その瞬間にヴァルハがそこに駆け込んでくる。指示を出すより前にヒラリのアズルを読んだ行動だ。味方のアズルを読むことにより、こういう面でも戦いを有利に働かせることが出来るわけだ。


「心が読めるって便利だこと♡」



 ヒラリの思った通り、その後もチーム・サザナーラのパスは以心伝心(いしんでんしん)的につながっていく。そりゃそうだ、アズルが見える彼らにとっては本当に以心伝心なのだから。



 ただチーム・サザナーラにあって、ポワイだけは若干(じゃっかん)ヒラリの命令に心から従わない面を見せる。膨れっつらのポワイちゃんはワガママ可愛い。仕草や性格など、やっぱり前作のワガママ可愛いベータちゃんを思い出す。


 ポワイも反抗しつつもヒラリの要請に応じる。やや不協和音があるものの、やはりその後もチーム・サザナーラの攻勢は止められない。心を読まれ、次の挙動が見切られているのだからアースイレブンサイドはボールを奪うどころかボールに触れることすらままならない。

 ベンチでは信助が心配そうに戦況を見つめる。別の視点で戦況を見つめ分析するのは、皆帆だった。心を読む相手を出し抜くには、思っていることと逆の行動を取ることが効果的であることに思いが至る。


 その仮説を確かめるため、皆帆はボールを持って向かってくる8番チュルカ・ポッタ(CV:佐々木日菜子)に対峙し、正面から来ると宣言しつつ左に身を寄せる。

 これが普通の相手ならフェイントが効果を発揮したかもしれない。だがチュルカは正面からと見せかけて左に寄るということさえも心の動きから見透かしていた。



「ざーんねんでした!!」


 チュルカちゃんが可愛くかつ憎ったらしく皆帆を抜き去るが、そこに駆け込んでくるのは唯一アズルが見通せない存在の瞬木だった。瞬木の背後の強大で邪悪なアズルを見てチュルカは怯(ひる)んでしまう。瞬木は難なくチュルカからボールを奪い取る。態度でかくてムカツクが、アースイレブンにとってやはりこの試合は瞬木が頼りなのかもしれない。


 ボールを奪った瞬木はその群を抜くスピードで一気に駆け上がる。天馬はその瞬木のフォローに駆け寄るが、それを阻むのはカピスだった。そう、瞬木の心こそ読めないが他のメンバーの心は筒抜けという状態に変わりはないのだ。

 仲間のフォローが期待できないことを知る瞬木は、その強気の性格も相まって自分でシュートまで持ち込むことを期する。そうはさせじとネスが必殺技「ウォーターフォール」で瞬木からボールを取り返す。



 心が読めない相手には全力の必殺技でマークする。この作戦で対応されればさしもの瞬木もシュートまで行くのは難しい。彼の切り札のソウルパワーは仲間とのパス交換の末、ゴール前で使うべきだからだ。

 ネスはまたもチュルカを「チュルカさん」と呼んでパスを送る。きっとネスはチュルカより年下なんだろうな。一気に瞬木がボールを奪った位置までボールを戻され、一転してアースイレブンにピンチが訪れる。



 虚空にアインシュタイン相対性理論を描き、必殺技「ディフェンス方程式」でボールを奪い返そうとする真名部だったが、何とチュルカはその心を読んで必殺技自体を回避してしまう!! アズル恐るべし。


 神童の指示により、一気に天馬、鉄角、好葉、そして神童自身が4人がかりでチュルカに向かう。さすがに4人全員の心を一気に読むのは聖徳太子クラスの能力でないと無理なのだろう。チュルカは不満げに後方にヒールでボールを送る。


 そこにはヒラリがいた。しかしヒラリに対してもゾーンでディフェンスするアースイレブン。ヴァルハが持ち込んでくる場面にもゾーンディフェンスで対抗する。

 この作戦は功を奏する。一人の心を読む分には万能性を発揮するサザナーラ人の能力だが、同時に2人以上にかかられるとその両方を見極めることは困難であるからだ。


 試合は膠着(こうちゃく)するかに思われたが、九坂を抜いた10番セバン・バシャ(CV:鈴木達央)が一瞬の隙を突き、必殺シュート「バブルボイル」を撃つ。

 先制点を挙げたそのシュート。同じ声の井吹宗正(CV:鈴木達央)は今度こそ止めると失点時には使えなかった必殺キーパー技で迎え撃つ。



 必殺キーパー技「ライジングスラッシュ」がセバンのシュートを阻止する。広範に渡ってゴールをカバーするこの技なら、心を読まれようと関係なく技の力対決に持ち込むことが出来る。この試合中だけは井吹は出し惜しみせず、相手のシュートには常にこの技を使っても良いぐらい。



 守りは固いが、このまま守っているだけでは勝利は見込めない。腕組みし右手をアゴに添えるという彼独特の思考ポーズを取りながら、皆帆はこの膠着状態の打開策を練り続ける。



 相手の心を読むということは相手の気持ちを考えることと同義であることに考えが至った皆帆は、かつて井吹と特訓をしていた時の神童の言葉を思い出す。


神童「行き当たりばったりではダメだ。相手の気持ちになってどう来るかを予測するんだ!」

 その言葉は皆帆に天啓(てんけい)を与える。



 その間も試合は続いている。攻勢を強めるサザナーラはヴァルハがゴール前に持ち込む。好葉がそれを阻止しようと回り込むが、ヴァルハは落ち着いて好葉のアズルを見る。

 好葉のアズルは『怖い』と告げていた。試合中のその場違いな思考にヴァルハは一瞬戸惑う。だが好葉は怖がりつつも戦うことが出来るということをサザナーラ人は知らない。

 好葉は高く飛び上がり、必殺技「このはロール」でヴァルハを巻き込み、ボールを奪取し、皆帆にパスする。皆帆の前方はクリアで、敵陣に駆け込むフリーの瞬木から声がかかる。絶好の反撃の機会だと誰もが思うそのシーンで、皆帆はとんでもないプレーをしてみせる!


皆帆「いっけぇ〜っ!!」


 振り向いた皆帆は、何と自陣ゴールめがけてシュートを放った。そのシュートはまったくの無警戒だった井吹の脇を通過してゴールネットを揺らす!!




 均衡は破られた。しかもそれは誰もが想像もしない、皆帆のオウンゴールという形で……!!

 この裏切りにも思えるプレーに、アースイレブンは呆然とした表情。それは敵であるチーム・サザナーラも同様だった。

 そんな周囲の気持ちをよそに、皆帆は自信満々の笑顔で振り向き、確信に満ちた口調でこう語るのだった。


皆帆「見つけたよ、サザナーラの攻略法を……」



 誰もが訝(いぶか)る皆帆のプレーの裏に隠された真相をただ一人理解するであろう、監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)はニヤリと笑う。だがやはり凶悪なその横顔は悪役にしか見えず、皆帆と共に黒岩裏切り説がベンチ内に流れるほど(ウソ)。




皆帆「みんな、点取っていくよ!!」


 やったことと裏腹に明るく元気に宣言する皆帆に、葵や信助はその真意が見通せないままだ。この思いは皆帆と黒岩以外の全地球人が抱いたと思うけど。



 失点した(味方のシュートで)アースイレブンのキックオフで試合再開。座名九郎の持つボールに挑み、奪い取ってしまうのは皆帆、だった。

 そしてあろうことかそのボールを敵に渡してしまう。意図不明のプレーを繰り返す皆帆。オウンゴールを反省する風でもなく、むしろ裏切り行為を邁進(まいしん)するかのような皆帆の態度は九坂の勘気(かんき)に触れる。


九坂「何してんだ!?」
皆帆「何って、相手の気持ちになって予測してるんだよ」


 怒鳴られても悪びれずにそう答える皆帆の言葉は、神童に既視感ともにその意図をも理解させるものであった。神童は皆帆に構わずに行動するよう仲間に指示する。

 天馬はその言葉の意味が分からなかったものの、神童の言葉を信じる。


 皆帆からパスを受けた体(てい)のカピスが攻め上がる。それを阻止しようとするのはさくらだったが、皆帆は何とそのさくらの邪魔をしてカピスをアシストする。



 その後も鉄角の動きを阻害し、好葉の心配をよそに自陣に向けてドリブルしたり、せっかく訪れたチャンスをふいにするカットをしてしまう。頭を抱えて苦悩する九坂の背後からは、何かを察した風な瞬木が皆帆のエキセントリックなプレーを見つめていた。


 皆帆の行動は、アズルが見えるはずのサザナーラ人たちにとっても理解不能のものであった。皆帆の傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な行動にネスだけは対応しようとするが、皆帆は保持していたボールをいきなり放棄してしまう。

 その動作にはさしものネスも驚いて動きが止まってしまう。その隙を突いたのはこの場でもう一人、サザナーラ人に心を読まれない瞬木だった。

 その動きを満足そうに見る皆帆とアイコンタクトで会話する瞬木。皆帆の作戦の意図を瞬木は読めていたということだろう。

 瞬木にとってキーパー以外の最終防衛ラインで有り続けたネスを出し抜き、前方視界クリアの状況が生まれる。こうなればあとは瞬木のソウルの力の独壇場(どくだんじょう)だ。

 
 疾駆するハヤブサがサザナーラゴールを襲う! キーパーのヴァンは必殺キーパー技「アクアブレス」で立ち向かうが、やはり1点目の再現にしかならない。サザナーラゴールが激しく揺さぶられ、アースイレブンが同点に追いつく!

 皆帆のオウンゴールで開いた差をたちどころに埋めてしまう瞬木の活躍により試合は2−2のイーブンとなる。だが皆帆の理解不能のプレーから一気の同点という展開に、アースイレブンメンバー自体の思考がついて行けていなかった。

 皆帆は自身の役割をいち早く理解した瞬木を褒め称える。その言葉の意味を座名九郎と九坂に求められた皆帆は、その解を「行き当たりばったり」と解説する。

 勝とう勝とうという意識が高じれば相手にその心を読まれてしまうが、行き当たりばったりなら相手にもその意図が理解できない。心を読んでも対処のしようがないからだ。

 神童、瞬木には理解できたこの皆帆の「行き当たりばったり」作戦を、みんなも踏襲(とうしゅう)するよう皆帆は求める。勝つための細かい戦術は一切考えず、サッカーボールで遊べば良いと皆帆は語る。

 心を読む相手特有のその対処法に他のアースイレブンも乗り気になる。



 皆帆の作戦以来、ペースを乱されっぱなしのポワイはフラストレーションが溜まったような表情で怒りを表す。ヒラリは比較的冷静に、自分が決めると意気込む。アズルと関係ない存在のヒラリの方がこういった場合に対処しやすいのだろう。


 試合はサザナーラボールのキックオフで再開。だが勢いに乗る瞬木は開始早々にボールを奪い取る。そして瞬木は皆帆の作戦を第一に遂行するため、そのまま攻めずに後方の鉄角にヒールパスを送る。

 攻め時だというのにバックパスをした瞬木の行動を理解できるのは、アースイレブンのメンバーだけだ。鉄角はなら自分も、とばかりに意味のない位置での横パスを出す。対象は真名部だ。

 理論派ゆえにこの作戦に馴染みきっていない真名部はたじろぎながらも九坂に下駄を預ける。九坂が頭ではじいたボールは好葉のもとへ。潜在的に意識しあう近しい存在同士だからだろうか、2人はここで仲良くキャッチボール的にボールをやり取りし始める。


 その試合中とは思えない一連のプレーを、サザナーラサイドはヒラリを含めて唖然として見つめていた。


 九坂と好葉は一転して敵味方に分かれたようにボールを激しく奪い合う。その行動はアズルが見えていようがいまいが理解不能のものだった。サザナーラ9番が怒りの形相でボールを奪いにかかる。九坂のアズルを見極め、その行動を探ろうとするのだが、九坂はまったく動じず9番はボールを奪うことなく抜き去ってしまう。

 それは九坂がサッカーで遊ぶことを最優先させ、敵の突進に対して何か対応しようとはしなかったからだった。考えることをしなければ、その心を読むことも不可能だ。



 サザナーラに邪魔されることなく繋がり出すアースイレブンのパス。自由奔放(じゆうほんぽう)に遊ぶ彼らのプレーの次の動作を読むことは不可能だし、読めたとしても対応するのは困難だろう。


 そしてその状態こそ皆帆が意図した展開なのだ。




 心が読めなくなって混乱するサザナーラの4番ウルミ・チャププ(CV:不明)。相変わらず敵にしておくには惜しいぐらい可愛い。


 ゴールを見越した座名九郎が敵の隙を突いてシュートする。だがそれはシュートする瞬間に見せたアズルによってヴァンに読まれてしまう。必殺キーパー技「アクアブレス」の網がノーマルシュートを阻止してしまう。




 この行き当たりばったり作戦、確かに心を読まれないことでボールのキープは可能となるのだが、いざ点を取ろうとした瞬間だけはどうしても「シュートする」という思考が入り、それを敵に読まれてしまう。

 アズルを見るとは何とも厄介な能力なのだが、皆帆は本来のオプティミスト(楽観主義)の表情を出し、だったら点を取ろうとせずに点を取れば良いと、まるで謎かけのようなことを言い出す。真名部は驚いてその意味を問うのだが、皆帆には何か策があるらしい。



 試合はサザナーラの反撃。ヒラリがボールを持って前進する。心を読まれる心配のない相手だけに、九坂がその意思を隠そうともせずに阻止しようとする。だが先ほどと同様というか使い回し的にヒラリの必殺技「ジャックナイフ」が炸裂する。



 髪の毛で精気を奪ったりしてドS属性であろうと想像されるヒラリちゃん。相手を痛めつける時ものすごい嬉しそうに笑ろてるし。


 九坂が予定調和的に返り討ちに遭うが、次にヒラリに向かうのは皆帆だ。蹴散らすつもりのヒラリに対し、皆帆はその真の力に目覚める!




 フクロウのソウルを発現させた皆帆は、暗闇で目が利く猛禽(もうきん)、フクロウの特性を発揮するかのような挙動であのドSのヒラリからボールを奪ってしまう! 皆帆の出で立ちやその熟考するスタイルからして、フクロウという彼のソウルはよく似合っている気がする。


 敵の能力を破るために考慮に考慮を重ねた皆帆の努力がこういう形で開眼したのだろう。ソウル発動に天馬は喜び、黒岩はまたあの例の悪役顔でグラサンを光らせ、我が意を得たりとほくそ笑む。


 ソウルを発動させ絶好調の皆帆はここで、3秒間目を瞑(つぶ)れと指示を出す。サッカーをする上で視覚を無くすという行為がいかに無茶なプレーなのかは言うまでもないだろう。全員がその指示に理解不能の態度を示す。


ポワイ「えっえっ、なんで目を閉じちゃうの!?」

 敵方のポワイも皆帆の言っている意味が分からず混乱する。それは良いのだけど、なんでこうもいちいちやることが可愛いのか? サザナーラはやっぱり可愛いキャラが多すぎる。敵にするには惜しい。


 わけが分からないものの、今何をするにおいても絶好調の皆帆の意見だ。その上り調子の状態に乗っかるのは分の悪い賭けではない。天馬をはじめとするメンバーは素直に目を瞑る。3秒に達した瞬間、皆帆からの「今だ!!」という叫びで全員が一斉に目を開ける。

 その瞬間、神童のすぐ前に飛んでくるサッカーボール。あわててトラップしながら、神童はその作戦の意図にも最初に気がつく。


皆帆『目を開けた瞬間、ボールに反射的に対応することで、相手に心を読む隙を与えない……点を取ろうとせずに点を取れる。名づけて……』



「ハッとして……」

「グー作戦!!」



 これが往年のアイドル、田原俊彦のヒット曲「ハッとして!Good」のもじりだということが分からない人は、お父さんお母さんに聞いてみよう。ちゅーか、日野社長の悪ふざけ感が半端ない。




【参考資料】1980年の曲だということは今から33年前だ。ほとんどの視聴者は知らない昭和のネタだよね。



 座名九郎も律儀に3秒目を閉じて開く。そこに絶好のパスが飛んでくる。ハッとしながらそれを受け、一気に獅子のソウルを身にまとう座名九郎。豪快な咆哮(ほうこう)で放たれたグーなシュートがサザナーラゴールを襲う。



 アズルを見極められないヴァンに前回のように対応する術(すべ)はない。超絶に強烈なシュートが赤い尾を引きながらゴールに吸い込まれていく。ただこれってハッとしてグー作戦とか関係なく、座名九郎のソウルパワーで押し込んだって印象だよね。キーパー技使っても止められそうにないし。


天馬「やったな座名九郎!!」
座名九郎「そう言うと思いましたよ!」


 この決めゼリフを聞いたところで、試合終了のホイッスルが鳴り響く。試合は終了間際の座名九郎の逆転シュートで3−2とアースイレブンの逆転勝利に終わった!



 負けて落ち込むチーム・サザナーラ。ポワイたちは悲しむ姿もいちいち可愛いんだけど、この前のチーム・サンドリアスの負けても潔(いさぎよ)かったチームとはあらゆる面で対極でちょっと笑える。


 そしてファラム・オービアス紫天王のヒラリも、怒りを押し包みながらスタジアムを後にする。彼女も任務を失敗してしまい、立場がなくなるのだろうか?


 怒りに震えて去って行くヒラリの後ろ姿を見送りながら鉄角は苦しみながらも勝利した余韻に浸(ひた)る。真名部もそれに同意するが、その勝利の美酒に余計な味付けをする暴言を吐く人物がいた。



瞬木「勝てたのは俺の活躍のおかげだからな!」


 確かに瞬木の活躍は大きかったが、彼一人の力で勝ち取った勝利ではないのだが……。皆帆の分析力も大きかったし、決勝ゴールは座名九郎だったしねぇ……。

 果たして本性を現した瞬木の変化が望ましかったのかどうか、鉄角たちは複雑な表情を浮かべる。



 天馬も勝利を喜んでいたが、彼の場合カトラ・ペイジ(CV:上田麗奈)との間に交わした勝利し続けることで輝く石のかけらをカトラの元に持っていくという、宇宙全体を救うという壮大な使命が背景にある。天馬は勝利し続けることによって地球だけでなく、前回のサンドリアスも、今回のサザナーラも、そして今後出会うすべての星の人たちも救うつもりでいるのだ。



 勝利して宿舎にする【ギャラクシーノーツ】号に戻っていた天馬、信助、葵の3人は車掌の蒲田静音(CV:くじら)から地球と交信できるという事実を聞く。蒲田さんの言うには、一週間に一度、10分間の頻度(ひんど)で、地球と通信が繋がるという。

 他のメンバーはすでに通信器の方に向かったらしい。たった10分しか通じないとなればみんなが先を争って向かったのも分かる気がする。

 天馬は葵から親戚の木野秋(CV:折笠富美子)と話すのかと問われ、困ったような笑顔を浮かべる。天馬は誰とも連絡するつもりは無いことをそこで打ち明ける。

 天馬はグランドセレスタ・ギャラクシーが終わって地球に帰る日まで誰とも連絡を取らないと決めていると語る。その言葉にこの戦いにかける天馬の気持ちを汲(く)んだ葵は笑顔でその意志を応援する。



葵「最後まで頑張ろうね、私も一生懸命応援するから!」


 幼なじみからのエールを受け、天馬はこの戦いが一人ではないことを感じ、笑顔でそれに応じる。



 その頃、通信器の前には瞬木がいた。地球側の映像には、彼の血縁の弟、雄太(CV:小林ゆう)と瞬(CV:戸松遥)が映る。

 勇太は瞬木の髪の色が変わっていることを目ざとく見つけ「何か(印象が)変わった?」と質問する。きっと勇太は誰に対しても本音を出すようになった兄の性格的な変化も見抜いていたのではないだろうか?

 瞬木はやや苦笑してその質問を流す。瞬は持参したおもちゃを見せつけるようにモニターに示す。友人から「宇宙超人バロンダー」のプラモを盗んだと笑顔で報告する瞬。泥棒行為を自慢する弟に対し、これまでの他人を一切信用しない瞬木だったら手放しで褒めていたであろう。

 だが瞬木は弟が信奉(しんぽう)しているであろう、バロンダーがショックを受けているだろうという言い方で弟を諭(さと)す。正義の味方のヒーローが泥棒のモノになってしまうという状況を嘆くように語る兄の言葉を聞いて、瞬は自分の犯した犯罪行為がにわかに恥ずかしいことに思えてくる。



 皮肉な物言いでバロンダーを手に入れたことを祝福され、瞬は意気消沈してそのおもちゃを手放すことを宣言する。瞬木は弟の心変わりに嬉しそうに笑い、おもちゃを間抜けな持ち主に返してやるように指示する。



 部屋に戻った天馬を迎えたのは、ピクシー(CV:北原沙弥香)だった。そしてその出現に合わせるかのように、カトラのビジョンが姿を現す。もしかしてだけど、ピクシーはカトラが天馬に連絡を取るために存在しなければならないアンテナのような存在なのかもしれない。

 カトラはまたも天馬に着いてくるよう要請する。彼女の意思に従い、宇宙を救うことが使命だと感じている天馬は二つ返事でそれに同意する。



 海中都市の中を経て、カトラは天馬をサンゴが輝く洞穴(どうけつ)に案内する。洞穴内の水中に輝く物体があることを示し、それが2つ目の希望のかけらであることをカトラは告げる。




 2つ目の希望のかけらを持ち帰り、仲間に示す天馬。2度までもカトラのビジョンが教えてくれたことをもって、天馬はやはりカトラがまだ存命であることを確信する。


 その言葉を聞いた水川みのり(CV:高垣彩陽)は、やはりそれはありえないと一蹴する。彼女の心にはカトラと同じ惑星キエル出身の人物、ポトムリ(CV:三木眞一郎)の意識が内在している。つまり今はポトムリの記憶で天馬の説がありえないと否定しているわけだ。以後のみのりは(ポトムリ)が語っていると考えてくれて差し支(つか)えない。


 天馬は実際にカトラの声も聞いたのだと言って反論する。カトラがいないと言い切る理由を問われ、みのりは少し逡巡(しゅんじゅん)する。言いにくそうに、みのりは自身が最後までカトラ姫の側に仕えていたことを明かす。


 みのりはカトラ姫の最期の瞬間を語り出すにあたり、その姿の方が落ち着くのだろうか、ピエロ人形の中に所在を変えて話を紡(つむ)ぐ。


鉄角「いちいちピエロにならなきゃ説明できないのかよ?」


 だがその姿になったのは確かな理由があった。みのりの体内にいた場合ではポトムリの意識はみのり本人の意識と融合してしまう。人形の中ならポトムリはモニター越しにその本来の姿で皆の前に現れることが出来る。



ポトムリ「これが私の本当の姿です」


 なんというイケメン! ピエロ人形とは似ても似つかぬカッコマンが現れた。驚くアースイレブンたち。視聴者も今回一番驚いたシーンだと思われる。私も驚いた。

 その本来の姿で語るポトムリの言葉はなぜか説得力がある。彼の祖国、惑星キエルがブラックホールによって消滅した話は以前語られた。

 科学者だったポトムリはブラックホールから祖国を守るため、コズミックプラズマ高主砲(字は違う可能性あり)の開発に尽力していた。それはブラックホールをも消滅させるほどの威力を誇る化学兵器だとポトムリは簡単に解説する。

 完成まで後一歩というところで、研究は行き詰まってしまったとポトムリは往時を思い返す。



 構造的には完成を見ていたのだが、コズミックプラズマの高出力に耐えうる金属、ミスリルの開発が間に合わなかったのだ。

 キエル上層部は故郷再建の可能性を未来に残すため、カトラ姫だけでも避難させようと考える。そのためポトムリたち科学者はブラックホールの引力にも負けない救命艇を建造する。

 だがロイヤルデューティーの意識が強いカトラは自身だけが逃げるという行為を潔しとはしなかった。彼女はこの星の王女としてこの星と運命を共にするという強い信念を持ち、それを曲げようとすることは誰にも出来ないことであった。

 そしてカトラは生き延びるべきなのは自分ではなくポトムリだと告げる。ポトムリには多くの人を救うことが出来る能力が備わっている。それをいつか同じような境遇の星を救うために役立てなければならない。そのためにも今生き延びるべきはポトムリなのだと、カトラは諭すように言う。


 屈託のない笑顔でまだ見ぬ他の星の人の運命を託すカトラの、その笑顔の裏にある強固な信念には、カトラの生存をこそ第一にと考えていたポトムリといえども逆らうことは敵(かな)わなかった。



 カトラへの感謝の心を持って脱出したポトムリだったが、ブラックホールの力は想像以上のものがあり、ポトムリも肉体を失って魂だけが逃げ延びた。その辺の話も以前に語られた。

 ポトムリはそのような過去があったことを踏まえ、だからこそカトラが生きていることなどあり得ないと言い切る。


 ポトムリの気持ちを慮(おもんぱか)りながらも、それでも天馬はカトラが確たる意思を持って自分たちを導いてくれていると話す。

 だがそれを聞いたポトムリが見せた態度は意外なものであった。



ポトムリ「ならばなぜ君なのだ!?」


 カトラが自分たちを導いてくれるつもりなら、生前誰よりも自分を信頼してくれたカトラが自分の前に現れないのはおかしいとポトムリは怒りを込めて語る。それは今カトラの薫陶(くんとう)を一手に受ける天馬に、まるで嫉妬しているかのような態度だった。

 そう言われて天馬は返答に詰まる。なぜカトラが自分を選んだのか? それは天馬自身にも分からないことだからだ。ポトムリは繰り返し、カトラが生きているとは思えないとつぶやく。それは自分の前に現れず、天馬を選んだということを信じたくないと言いたげな表情に見えた。

 ポトムリの意外な態度は、天馬を混乱させる。



 次回に続く。



  エンディング



 ブログ更新が遅れに遅れて本当に申し訳ない。仕事がものすごく忙しいのが主因だけど、実は他にもいろいろあるのです。まぁ言い訳にしかならないので詳細は秘すけど、今後も見に来て下さると嬉しい。

 あと今回はゲーム版『イナズマイレブンGOギャラクシー』発売後の初めての更新となる。ゲームを進めている方はもうストーリーの真相まで知っている人もいるかもしれませんが、出来ればアニメでのネタバレ以上の言及は避けていただけるとありがたいです。



 本題。サザナーラ編が終了した。かなりの強敵だったけど、皆帆のものすごいいい加減な作戦で見事に勝利した。ハッとしてグー作戦には失笑だけど、詳しくはお父さんお母さんに。


 前回は瞬木、今回は皆帆とソウルの力も順調に増えている。味方も強化されているものの、敵もその分強くなることが予想される。サザナーラの能力は驚異だったけどサッカーの能力自体はその分低かったのかもしれない。ヒラリの活躍の場面もあまり無くってその辺は残念だったかも。九坂だけは彼女の顔は二度と見たくないだろうけど、再登場して欲しい敵キャラではある。



 あと最後のポトムリの正体。あんなイケメンだったとか、後からそんな設定を見せるのはズルいよね(笑)。ピエロみたいなキャラというのが定着してたから。三木眞一郎さんの声は海外ドラマとかの吹き替えで好きだったけど、二枚目も三枚目も出来る人だから良い役どころ。

 彼が科学者だったという設定は私の予想通りだったので嬉しい。彼がカトラの死を疑わないのは「あれだけ認めてくれた自分を差し置いて何で天馬のところに出てくるんだよ!?」というヤキモチなんじゃないかなぁと。



 次回は灼熱の惑星ガードンが舞台。砂、水と来て今度は火か。新たな紫天王の姿もあったし、アースイレブンにはまたも厳しい戦いが待っていそう。




 ベストイレブン国民投票、MF部門はやはり主人公の天馬が安定の1位獲得だ。現役の神童が4位というのは意外だったけど、鬼道やアフロディの人気の高さも分かる。追加招集の募集もあったけど、もうとっくに応募も終わってるので省略。ブログ更新が遅くてリアルタイムな情報じゃなくてごめんなさいね。




 このピクシーたちの対比がすごく可愛くてほのぼのして和む(^▽^)



  次回「灼熱の惑星ガードン!」に続く。



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『イナズマイレブンGOギャラクシー』第26話「目覚めよ!俺のダークサイド!!」の感想 【瞬木のソウル発動!】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第26話「目覚めよ!俺のダークサイド!!」を観ての感想を書く。前回で他人を信用しないというその心の闇の理由が描かれた副主人公、その彼がダークな心をそのままにしてソウルのパワーに目覚める! 新たなヒーローはダークヒーローだ!



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第25話「瞬木隼人の闇!」の感想 【ポワイちゃんとヒラリちゃんサイドを応援してしまうという】
 をご覧ください。

  • それ以外の感想は、

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 松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】は星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の本戦2回戦の舞台【惑星サザナーラ】で野試合のサッカーバトルを挑まれ、敗北してしまう。

 天馬たち地球人を翻弄(ほんろう)したサザナーラ人たち。彼らは人の心のかたちを見る能力【アズル】を持っていた。対戦相手の次の行動が読めてしまうという地味ながら強力な能力を前に、天馬たちはその能力に対抗する術(すべ)を持たない。

 また、チームのストライカーである瞬木隼人(CV:石川界人)はその秘めた過去が形作っていたであろう異形のアズルをサザナーラ人に見られてしまい、激しく動揺する。



 グランドセレスタ・ギャラクシーのそもそもの原因を作った銀河系最大最強の惑星【ファラム・オービアス】では、王城に軟禁状態の剣城京介(CV:大原崇)を次期国王にと考えた女王、ララヤ・オビエス(CV:高垣彩陽)による説得が続けられていた。

 剣城は「なぜ自分が王になることを望まれるのか?」という当然の疑問がわく。ララヤは剣城ならこの星を良くしてくれると「何となく」思ったと曖昧(あいまい)な言い方に終始する。彼女の敬愛する父親と剣城が似ているから、という本音はやっぱり言えないようだ。

 剣城はファラム・オービアスはすでに良い星であり、自分に出来ることはないとつれない返答をする。ララヤはそれを聞いて悲しそうな表情を浮かべる。無理やり強引に誘拐してきた割に最後の決断は剣城にさせるというところはララヤもやはり悪人ではないと思わせる。

 剣城は王になるにもこの星をよく知らないと難しいという理由を述べ、今日一日を自由に過ごさせるよう要請する。するとララヤは突然元の強気でワガママな面が出て来る。そう言って逃げる気だと決めつけ、その手には乗らないと言い放つ。

 だが剣城は余裕ある表情で、必ず帰って来ると返答する。まだ訝(いぶか)しげな視線で剣城を見つめるララヤだったが、剣城のその笑顔、それはやはり彼女の尊敬する父に似たものであった。結局ララヤはそのジゴロ笑顔に折れ、その言葉を信用してしまう。



「分かった。良いじゃろう。1日だけじゃぞ!!」



   オープニング



 一方、惑星サザナーラでは次の戦いを控えてファラム・オービアスから送り込まれた紫天王の一人、ヒラリ・フレイル(CV:小林ゆう)がお風呂タイムを迎えていた。水の惑星での快適なお風呂のはずなのだが、ヒラリの表情は冴えない。



 視聴者サービス的にお風呂シーンを披露するヒラリ。残念ながら水着着てる。


 彼女の不快感の理由、それは先刻のサザナーラ人たちとの諍(いさか)いに因を発していた。ヒラリはチーム・サザナーラへの助っ人としてこの地に赴任したわけだが(そういう点で惑星サンドリアスでのバルガ・ザックス(CV:岩崎了)と同じ立場)、彼女のアズルを覗き見ようとしたチームのキャプテンのポワイ・ピチョリ(CV:折笠富美子)を痛めつけた経緯があった。


 情報共有のため瞬木のアズルの話を問いただすヒラリ。ポワイの側近でチームのゴールキーパーであるヴァン・タレル(CV:泰勇気)は、ポワイの同意を得てアズルとは何かを語り始める。

 それによるとアズルとは人の心のかたちであり、その対象の人物が考えることを様々な色や形で見極めることが可能だという。



 例示。男性からプレゼントを受け取った女性のアズルは優しい色と形になり、女性が喜んでくれていることによって男性のアズルも優しく穏やかなものとなる。


 だがそのシーンを見た男性の恋敵(こいがたき)は、先を越され女性の心も奪われてしまったことに激しい怒りと嫉妬の念を抱く。そのアズルはこのようにドス黒くトゲトゲした邪悪なものとして見えるというわけだ。


 サザナーラ人は心のかたち、アズルを見ることで対象が何を考えているのかを理解する。それは対象が次に何をしようとしているのかを読み取る能力でもあるのだ。

 ヴァンは自分たちにファラム・オービアスからの使者に逆らう意思など無いことを示すため、ヒラリも自分たちのアズルを見ることが出来れば良いのですが、と語る。

 だがその慇懃(いんぎん)な口調とは裏腹に、ヴァンの意図を察したサザナーラ人たちがヒラリを取り囲む。

 ヴァンはアズルがある限りサッカー対決に負けることはないと笑顔で語り、試合は自分たちに任せて欲しい旨(むね)を告げる。そしてヒラリを長旅の疲れを癒すという口実をつけて何処(いずこ)かへと連行させる。



 体(てい)よく邪魔者であり異分子であり彼らのリーダー(ポワイ)に無礼を働いたヒラリを排除することに成功したヴァンのこの策士のような含み笑い。サンドリアスの時もそうだったが、紫天王と現地人との仲の悪さがアースイレブンの付け入る隙となるだろう。


 ……以上がヒラリの回想となる。つまり彼女のお風呂タイムは強制的に連行された末の事態であった。不快になる気持ちも分からないでもないのだけど、そこはやっぱり女の子。


「気持ち良いから、まぁいいか♪」

 男勝りと言われようが女佐久間次郎と言われようが(言ってるのは私だが)、やっぱり女の子にとって風呂は命の洗濯だ。コロッと誤魔化(ごまか)されてるところが可愛い……



 ……と思いきや、やはり彼女はファラム・オービアスの栄光たる紫天王の一角。突如表情を引き締め、サザナーラの選手たちが劣勢になった暁(あかつき)には自分が乗り出してアースイレブンを叩き潰すと自身に課せられた使命を思い返し、気合いを込めるのだった。



 そして我らのアースイレブンは、今回の試合が行われる試合会場を視察していた。水中ながら会場はドームで覆われ、地勢的な不利は感じられない。その点はサンドリアスの時よりはマシだが、今回の相手はこちらの行動を読んでしまうという大きなハンデがある……。

 それを踏まえ、天馬は厳しい戦いになることを予想するが、相手がどんな能力を持っていようと自分たちは自分たちのサッカーをするしかないと言い聞かせる。


天馬「全力でぶつかって行くぞ!!」
一同「オウッ!!」


 キャプテンの檄にメンバーは力強く応じる。いよいよ決戦は明日だ。



 そしてその日はやって来た。ダクスガン・バービュー(CV:勝杏里)によるDJ調の実況が繰り広げられる中、大歓声の試合会場ではすでにチーム・サザナーラがベンチ入りしていた。ヒラリはサザナーラ側の要請か、先発メンバーでは無さそう。余裕の表情でベンチに腰掛ける。


 そこに地球代表、アースイレブンが入場してくる。早速その姿を見定め、天馬たちのアズルを見極めるポワイ。



 なるほど部下のヴァンから聞いたとおり、瞬木のアズルだけはドス黒く異様な形を表している。他に気になる点としては、天馬が異様に明るいアズルを見せる点と、ニセモノの剣城である剣偽のアズルが他のメンバーと同じように見えているところ。入れ替わられてもその精神状態が安定していればサザナーラ人にすら見破れないということなのだろうか。


 傍(かたわ)らの九坂隆二(CV:岡林史泰)と一見にこやかに話す瞬木だが、その心の内面を見通すサザナーラ人たちからすればその本質を見破ることも容易だ。



 サザナーラの3人娘たちが瞬木の異様なアズルを見て露骨に拒絶反応を示す。サザナーラはポワイ、ヒラリ以外にも女性の選手が多い。


 彼らがこちらを見ていることは、それだけで地球人を不安にさせる。マネージャーの空野葵(CV:北原沙弥香)が警戒する中、皆帆和人(CV:代永翼)はもうすでに自分たちの心の中を見られていることを断言する。

 その言葉を聞き、一番ナーバスになるのはやはり瞬木だった。心に秘めたドス黒い秘密を容赦なく見られることに、瞬木は怒りの形相で不快感を隠さない。そんな瞬木を、天馬は心配そうに見つめるのだった。


 野咲さくら(CV:遠藤綾)や鉄角真(CV:泰勇気)は敵ベンチに、猫耳が特徴のサザナーラ人とは違う姿のヒラリを見とがめる。またも異星人の援軍を得ている敵チームに警戒感を隠さない鉄角と、どこか指摘する点がずれているさくらちゃん。


さくら「なんか顔ツヤツヤしてない?」


 それは入浴による美肌効果だと思われ。あるいはポワイから精気を吸い取ったせいかと。




 ポワイは改めて瞬木のアズルを見つめる。それはドス黒いだけでなく、張り出したトゲが触手状に瞬木本体に絡みつき、精神上に大きな影響を与えていること明らかであった。ここまでドロドロしたアズルはポワイでさえ見たことがないものであった。


 方や天馬のアズルを見て感動するポワイ。天馬のアズルはとても美しく、仲間を信頼しきっている者だからこそ持てるアズルであると絶賛する。だがその同じ地球人とは思えない2つのアズルを見て、ポワイは何かを企(たくら)む。


「ポワイ面白いこと思いついちゃった♪」



 ポワイは仲間にその作戦を告げる。それは「アズルつぶし」と命名されたようだ。内容はまだ判明しないが、その作戦は一同の賛同を得る。ただポワイの見た目より勝気な性格や、ただ勝つだけでは面白くないという作戦の意義を鑑(かんが)みれば、その作戦がえげつないものであることが予測される。

 チーム・サザナーラのその様子を眺めつつ、ファラム・オービアスよりの刺客であるヒラリはとりあえず静観を決め込む。



 その頃、アースイレブンベンチでは驚くべきことが起きていた。剣偽が監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)に「休ませて欲しい」という要望を告げたのだ。剣偽は体調がすぐれないと言い訳を口にするが、天馬はそれを本気で心配する。

 強敵を前にしてチームのエースストライカーを失ってしまうのはチームにとって大いなる損失だ。サードストライカー的存在の九坂隆二(CV:岡林史泰)は戦力ダウンに懸念を表明する。

 黒岩は現状、もっとも信頼に足る存在である背番号18番、市川座名九郎(CV:小西克幸)を剣偽の代役に指名する。座名九郎は歌舞伎の見栄を切るような顔つきで振り向き、例の決め台詞を吐く。


座名九郎「そう言うと思いましたよ!」


 エースストライカーが不在なものの、ソウルの力に目覚めた座名九郎がFWに入ることで戦力減は感じさせない。それに天馬たちは気づいていないが剣偽はニセモノだし、実力は本物と互角とはいえ本気で戦ってくれるかどうか分からないしねぇ。ただここで剣偽が試合に参加しない理由が気になるが……。




 恒例の試合開始直前の両チームの布陣。チーム・サザナーラはキーパーを軸にした二等辺三角形のような形の2-5-3。キャプテンのポワイは後列のMFポジションだ。司令塔ではない模様(12番が司令塔ポジ)。現段階で判明している分で、ポワイの他に4番ウルミ・チャププ(CV:不明)、6番(名前CV:不明)、12番、8番のチュルカ・ポッタ(CV:佐々木日菜子)が女の子確定。2番のネス(CV:不明)も女の子っぽく見えるが男の子のよう。


 アースイレブンはサンドリアス戦の時と同じ、4-3-3の攻撃的フォーメーション。天馬がFWに入るという形態だ。注目はやはり先発した座名九郎だろう。アズルの異様さを知る敵によって何らかの作戦に狙われそうな瞬木も注目。つまり今回はFW3人が注目されるポジションと言えそうだ。


 ヒラリを警戒する鉄角は、彼女がベンチスタートであることを意外さと安堵感の両面で見やる。ただ紫天王を先発させないということは、それだけ現有戦力に自信があるということの裏返しでもある。


 瞬木は野試合で敗れたあと心を見透かされた屈辱を忘れられない。あの時のサザナーラ人の能力と同じものをこの敵チームは先発した全員が持っている。そう思うだけで憎悪感が湧いてくるのだった。



 瞬木の敵愾心(てきがいしん)が深まる中、試合開始のホイッスルが鳴る。

 キックオフはサザナーラ。美男美女が揃うウクライナのようなこのチームにあって珍しく強面(こわもて)タイプの11番のヴァルハ・ポロポ(CV:不明)が攻め上がる。同じく11番の瞬木が怒りの気持ちを持ったまま挑みかかるが、ヴァルハは余裕の表情でそれをかわす。アズルが見えている敵選手に真っ向から挑んでもボール奪取は難しいということなのだろうか。

 ヴァルハはチュルカにパスを送る。そこに駆け込んでボールを奪ったのは九坂であった。

 九坂は天馬にパス。天馬は即座にさくらにパスを回す。そこまで来て、敵の異変に気づく。彼らが心を読めるなら、このパスもこうも上手く繋がるとは思えない。なぜ簡単にパスが通るのか、神童拓人(CV:斎賀みつき)はかえって混乱してしまう。普通のチーム相手なら「パスが繋がる」ということは気にしないどころか好都合のはずなんだけどね。


 地球人たちの混乱を見て、ポワイはなぜかプンプン怒り出す。これでもサッカーの能力を買われてサザナーラ代表となった彼らだ。心を読むことなくサッカーの実力だけで戦うのは当然だと思ったよりも正々堂々とした態度を表明する。

 その言葉は確かに殊勝なものだったが、それがおそらくは本心ではないということを、ベンチで見つめるヒラリは見抜いていたのだろう。ポワイの言葉を鼻で笑い飛ばす。



 だが地球人サイドからすればその態度表明は僥倖(ぎょうこう)だ。思わず「信じたくなる」良い知らせである。真名部陣一郎(CV:野島裕史)は「心を見る能力は使わないのだな?」と今一度その言葉の意味を確認する。

 ポワイはそんなことをしなくても勝てるという言い方で、言外にその質問を肯定する。この場合「言外」というのが曲者(くせもの)で、いつでも反故(ほご)にされそうな口約束ではあったが……。


 さくらは決然とドリブルで攻め上がる。ポワイの言葉を一応は信じた形だ。サザナーラ側もポワイの言葉を裏付けるように、さくらの突進に対して必殺技で対抗する。



ネス「ウォーターフォール!」


 ネスはアズルを見る能力ではなく、正々堂々と必殺技でさくらからボールを奪い取る。そして一気に前線の背番号10番、セバン(CV:鈴木達央)にボールを送る。

 セバンは完全フリーの状態でゴールに迫る。守るのは最終防衛ラインのキーパー、井吹宗正(CV:鈴木達央)ただ一人。井吹は野試合で心を読まれて逆をつかれた経験から、どう対処すべきなのか悩み心を乱す。

 セバンはここで必殺シュートを撃つことを採用する。必殺シュート「バブルボイル」がゴールを襲う!



井吹「右か!?」
セバン『……残念、正面だ!』


 井吹の挙動を邪悪に笑ったセバンの表情を見るに、ここで彼はアズルを見ていたに違いない。実際彼らがポワイの言うとおりに能力を使用しているかしていないかは地球人には区別できない能力であるから、口約束を信用するのは考えものだろう。ちなみにこの場面、騙したセバンと騙された井吹は中の人が同じ。



 セバンの「バブルボイル」は井吹の意表をついて真正面に飛んで来る。予測を誤った井吹はそのシュートに為(な)す術がない。シュートはアースイレブンゴールを貫き、先制点はサザナーラが獲得する。



 落ち込む仲間を鼓舞するのはキャプテンの仕事だ。天馬は1点を取り返すぞとチームに喝を入れる。

 アースイレブンもすかさず勇気を取り戻す。心を見られないなら条件は同じと、鉄角はまだポワイの口約束を信用している様子。そうやって戦う意志を失わないアースイレブンを見て、ポワイは嬉しくてたまらないといった感じで身体をくねらせる。


 ポワイ提唱の「アズルつぶし」とはどういう作戦なのか。ここでその作戦を提示した時の回想シーンに移る。ポワイは天馬のアズルと瞬木のアズルをぶつけてしまおうというのだ。しかも今のままでは面白くないから、醜い方(瞬木)のアズルを試合中に育てて大きくして天馬のきれいなアズルにぶつけるという非情な計画を立てていた。

 きれいなアズルって「きれいなジャイアン」みたいな言われようだな。

 さておき正反対のアズルをぶつけて消滅させるというアイデアは面白いものであると他のメンバーたちの賛同を得る。しかも邪悪なアズルを成長させ、天馬のきれいなアズルが打ち負かされるというパターンを彼らは想定していた。仲間を信じる天馬の心を打ちのめすという非情な作戦であることは言うまでもない。


 ポワイはその瞬間が訪れるのを心から楽しみにしていた。



 試合は先制されたアースイレブンのキックオフで再開されようとしていた。瞬木はその間も自分を見て蔑(さげす)みの笑みを浮かべるサザナーラの選手たちに腹を立てていた。その怒りが彼の負のアズルをより成長させるということも知らずに……。



 座名九郎からボールを受けた瞬木は自らを馬鹿にするサザナーラサイドに一気に駆け込む。自慢の脚力でマークに来ていたウルミを抜き去る。だが抜かれたウルミもそれを見ていたポワイも邪悪に笑う。そう、瞬木はなおも敵の作戦の術中(じゅっちゅう)にいるのだ。


 天馬はさくらと九坂というMF陣に瞬木のフォローに向かうよう指示するが、それを妨げるのはポワイたちであった。瞬木を孤立させるのが彼らの作戦の一環であることは疑いない。

 瞬木の前には先ほど「ウォーターフォール」でさくらを止めたネスが現れる。パス先を求めて辺りを見回す瞬木だったが、さくら、九坂、天馬、そして座名九郎までがマンマークを受けており、パスが出せない。

 その間にネスは再度の「ウォーターフォール」で瞬木からボールを奪取する。



 ネスはまたもチュルカにパス。余談だがネスは先ほども「チュルカさん」と呼んでいるようで、フェミニンな性格なのかもしれない。

 サザナーラのパスが通り、攻守は一転する。アースイレブンはたちまち防戦一方に追い詰められてしまう。ボール支配率はサザナーラが圧倒の様相。


瞬木「好きにやらせるか!!」


 瞬木だけはなぜか相手のプレーに対応が可能な様子で、6番からボールを奪い取る。だがその後にパスを出そうにも、やはり同じパターンでパスコースを封じられてしまう。

 パス先を探す隙をまたもゼスにつかれ、ボールを奪い取られる瞬木。その後はまたもサザナーラの攻勢が続く。しかし彼らも押し気味に試合を進めながら、押し切るまでは行かないのは何らかの意図が働いているのだろうか?


 九坂がボールを保持しようとした瞬間、瞬木はパスを要求する。だがそれを先読みするかのようにチュルカがヘディングでクリアしてしまう。繰り返される味方の自分無視(瞬木にはこう見えている)に対し、瞬木の心にドス黒い感情が芽生えてしまう。


 今度はクリアボールを押さえた天馬にパスを要請する瞬木。天馬もそれに応じようとするが、やはり的確にそのパスを未然に防いでしまうサザナーラの対応を前に、瞬木の孤立感は深まって行く。

 これら一連のプレーはやはりポワイの思惑通り、瞬木のダークなアズルを育てる過程にあると見て良いだろう。瞬木だけには甘いプレーでボールを奪われるのもその作戦の一環なのであろう。ポワイたちは作戦が着々と進展しつつある状況に笑みをこぼす。

 その笑みを不快に思う瞬木はますます心の負のアズルを育成してしまう。



 瞬木のフラストレーションは頂点に達する。その攻撃性は敵だけでなく、自分の足を引っ張る(ようにポワイたちが演出している)仲間たちにまで向けられ、その負のアズルの方もどんどん増幅していく!



 敵のその戦略も含めた異常時に最初に気づくのはやはり神童であった。ポワイの口約束に対しても疑念を抱いた神童は、それを確認するために冷静にこれまでのプレーと現在の状況を照らし合わせる。


 試合は相変わらず瞬木だけが敵からボールを奪い取ることに成功する。だがその後はパスコースを潰され、ゴール前で必ずネスに奪われるまでがワンセットの状況が繰り返されていた。



 今度はネスだけでなく、もう一人3番の選手も加わって瞬木の前進を阻(はば)んでしまう。


 瞬木だけを自由にしてゴール前でそれを止める。その行為にどのような意味があるのか。神童の慧眼(けいがん)をもってしてもその作戦の真意は見通せない。ただ何かを企んでいることだけは確かだ。


 瞬木をはじき飛ばしたネスは憎まれ口を叩いて瞬木の憎悪を増幅させる。しかも3番はボールを保持したまま瞬木の前に仁王立ちで、試合を意図的に止めてしまう。攻めようとしないその態度は、実況のバービューから見ても奇妙なプレーに思われた。

 倒れたままの瞬木を気遣って天馬たちが駆けてくる。それに対し、瞬木は『今さら来ても遅い』と心の中で悪態をつく。



瞬木『友達ヅラしやがって……!!』


 瞬木のアズルがとんでもなく増幅している状況を把握し、それでも表面上はチームの仲間に感謝するような友達ごっこを演じる瞬木の態度……それはすべてを演出し企画したポワイにとって何よりも面白い見世物であった。

 激しく笑い出したポワイの態度に九坂は不快感を示すが、ポワイはここで仲間ごっこはやめろと告げる。

 瞬木に思っていることを言えと指図するポワイは、種明かしをするかのように瞬木が試合中に仲間に抱いていた不満を言葉で表す。


ポワイ「『俺の足ばっかり引っ張りやがって!』『お前らが不甲斐ないから俺が力を発揮できないんだ!』ってね♪」


 その言葉を聞かされ、瞬木は顔面蒼白になる。そして瞬木を気遣っていた鉄角も瞬木を疑いの目で見つめ始める。

 そこまで来て神童は敵の策略に気づく。ポワイたちは瞬木の心を乱し、仲間割れを引き起こすためにあえてあのようなプレーをしていたのだ! しかも心を見ないと言っておきながら、ずっと瞬木のアズルを見ていたと約束違反を公言している。おそらく他の選手のアズルも見て、行動を先読みしていたであろうことも確実だ。


 ポワイは瞬木をさらに追い詰めるべく、瞬木が誰も信用していないことを言葉に出してアースイレブン全員に告げる。その言葉は瞬木を見つめる仲間の視線を懐疑的に変えてしまう。

 瞬木もその空気の変化に気づき、自分のことを信用しない仲間たちに自身の真相を訴えかける。



「そうさ! 俺はそういう奴なんだ!!」


 そしてここまで隠して来たおのれの思いをすべてぶつけるかのようにその感情を吐露(とろ)する。他人を信用などしないということ、このチームのメンバーも一度だって信用したことはない、ただ物分りの良い人物を演じていただけだと開き直ったように言い切る。


瞬木「それがこの俺、瞬木隼人なんだ! 誰にも文句は言わせない!!」


 瞬木の感情の爆発をアースイレブンのメンバーは悲しげな表情で聞いていた。逆にサザナーラ人たちはその仲間割れの光景を楽しそうに見ていた。

 そして感情の迸(ほとばし)りが制御できなくなったのか、瞬木の黒いアズルが閃光を発し始める。ウルミはそれを待ち焦がれていたように期待感を持って見つめていた。だがしかし……


天馬「文句なんか、無いよ」


 天馬だった。その屈託のない瞬木を肯定する言葉はその場のすべての人々の驚愕をもって迎えられた。もちろん瞬木自身も。

 天馬は瞬木がどこかで覚めていて他人を信用していないということに気づいていたと語る。そして天馬はそれを否定しない。天馬が分からなかったこと、それはなぜ瞬木がそれを隠していたのかということだった。なぜ皆に「良い人」と思われようとしたのかを、天馬は問う。

 意表を突かれまくりの瞬木はしどろもどろになりつつ、それが大人の対応だからだと返す。しかし天馬はそれに明確な否定をもって返答とする。


 瞬木が「良い人」を演じようとしたわけ、それは瞬木自身も本当の自分が嫌だったからなのではないかと天馬は見当をつける。本当は他人を信用したいのに、出来ない自分自身を否定したい気持ちがその態度に現れたのではないかと告げられ、瞬木のアズルは混乱する。


 瞬木は黙って聞いていたが、天馬の主張を頑なに認めようとしない。


瞬木「お前たちみたいな爽やかぶった青春野郎どもとは訳が違う。おれは悪人なんだ!!」


 強硬に自己否定の言葉をまくし立てる瞬木のその態度に、周囲の青春野郎どもは言葉がない。ほくそ笑むポワイ。だがやはりその言葉をあるがままに受け入れる声がそこに響く。


座名九郎「良いんじゃないですか、悪人だって」


 今度は座名九郎だった。座名九郎は達観したような表情で、悪い心を持たない人間などいないと真理を説く。それは子孫に規格外にものすごい悪党を産み出すことになる座名九郎が言うからこそ説得力にあふれたものとなる(もちろんそのことを瞬木は知らないけど)。



「私だって役で演じているほど善人ではありませんし」


 その説得力ある言葉はまたも瞬木のアズルを混乱させる。そして瞬木のアズルを暴走させようと計画していたポワイも、その意図が上手く行かなくなって来ていることに驚愕する。

 天馬は座名九郎の意見に賛成し、誰にでもある悪い心を否定するのではなく、それを受け入れ乗り越える勇気を持つべきだと瞬木を説得する。その天馬の背後には、これまで以上にきれいなアズルが輝きを放っていた。



天馬「良いところも悪いところも全部ひっくるめて、瞬木隼人だ! ぜーんぶ、俺の仲間の瞬木隼人だ!!!」


 胸に手を当てて本音を訴える天馬の気持ちは、アズルが見えない瞬木から見ても嘘偽りのない真実の気持ちを語っていることがよく分かったであろう。キャプテンは本気で自分を心配し、本気で自分を仲間として受け入れてくれている……。

 天馬の正のアズルが膨張し、瞬木の負のアズルを覆(おお)い尽くしていく。完全にそのアズルに飲み込まれた瞬木が再び姿を現したとき、その身に目に見える変化が生じていた!


「ホントに……おもしれえ奴だぜ!!」

 本音を明かした自分を本音で信じると断言する天馬のその態度は、人間不信の瞬木をして面白いと思わせるものがあった。自身のアズルと向き合った瞬木の姿は、その右髪の一部先端が青く染まり、何らかのソウルの発動を示唆(しさ)するものであった。


 目覚めつつある瞬木の姿を見て、ベンチの黒岩はしてやったりの笑みを見せる。



 瞬木は突如、先ほど自分をはじき飛ばした3番に向けて猛烈なスピードで走り出す。そう、試合自体は止まっていたがそれはボールがデッドになっていたわけではない。あくまでもサザナーラ側が試合を止めていただけで、プレー自体は中断されてはいないのだ。

 そのあまりの展開の速さ、そして瞬木の疾(はや)さを前にして、アズルを見るどころではない。3番は何もできないままボールを奪取されてしまう。



 ボールを奪って突き進む瞬木の前には、これまで彼を何度も止めているネスが立ちはだかる。ネスは冷静に瞬木のアズルを見極め行動を予測しようとするのだが、その黒きアズルが暴走状態で何も推し量ることが出来ない!


 ネスを抜き去り、瞬木の前身は止まらない。ゴールを守るヴァンがはじめてそのプレーを披露する瞬間が訪れた。だが今の瞬木はその力の大きさを自覚していた。猛然と宙に舞い上がり、その秘められた力、ソウルを発動させる。

 中空で彼の姿はハヤブサに変わり、ゴールに迫り寄せる。ヴァンはソウルを見ても努めて冷静に必殺キーパー技「アクアブレス」で対抗する。




 そのぶつかり合いを制したのは、やはり瞬木のソウルパワーだった。ソウルシュートが豪快にサザナーラゴールネットを揺らし、試合はアースイレブンが1−1の同点に追いつく。


 同点はもちろん、瞬木がソウルを発動させてゴールを奪ったことが天馬には何よりも嬉しかった。

 そしてそこで前半戦終了のホイッスルが鳴り響く。強敵を相手にして、アースイレブンは前半を同点で折り返すことが出来た。勝負の趨勢(すうせい)は後半30分に委(ゆだ)ねられることとなった。

 ベンチの葵や西園信助(CV:戸松遥)も大喜びの展開。天馬は開眼なった瞬木の元に駆けつける。そのシュートを心から祝福する天馬に対し、瞬木はニヒルに「自分が気に食わないなら(いつでも交代させてくれても良い)」と言おうとした。

 だがそれを聞く前に天馬は、今の瞬木こそが本当の飾らない瞬木だと言う。



天馬「やっと本当のお前と仲間になれたんだ! 嬉しいよ!」


 まさに人心掌握(じんしんしょうあく)においてこれ以上の言葉はないだろう。瞬木は否定されると思っていた自分の本当の姿を見てなお、そのことを素直に喜んでくれる天馬の態度に感動を覚える。


 その段になって、さくらはようやく瞬木の外見が変わっていることに漠然と気づく。そんな仲間に対し、瞬木は外見以上に自身の態度が変わることを言い聞かせるべく、不敵な笑みで本音丸出しの暴言を吐き出し始める。



瞬木「俺のスピードに着いて来られるように、お前ら練習に精出せよ!」


 その豹変ぶりにはさしもの鉄角やさくら、九坂、座名九郎といったメンバーも毒気を抜かれたような表情になる。瞬木は取り繕(つくろ)うように頭を掻いて冗談めかしたように笑うが、それこそが本物の瞬木であることをチームメンバーはすでに理解していた。




 その瞬木の背後にあるアズルがさらに邪悪な形態に変化していることをポワイは見て取る。そのアズルが瞬木のソウルを覚醒させたとしたら、前半の彼らの作戦はまさにヤブヘビだったと言えるだろう。


 作戦の見直しを期するポワイに向け、これまでサザナーラの自由にさせていたヒラリがついに自身が乗り出す意思を表明する。

 もちろんその存在を歓迎する選手はいない。12番が露骨に嫌な表情でヒラリの参戦を拒否したところ、その態度にキレたヒラリが前回ポワイを痛めつけたあの能力を駆使する。



 ヒラリの髪の毛は巻き取った相手の精気を吸い取ってしまう。まともに受けた12番はその場に崩れ落ちる。ヒラリの態度はともかく、交代の選手を出さないわけには行かなくなってしまう。

 敵チームに沸き起こる不協和音はチャンスとなるかもしれないが、それ以上にヒラリの能力が上回ればむしろアースイレブンにとってはピンチとなり得る。風雲急を告げる後半戦、一体この戦いはどうなってしまうのだろうか?


ヒラリ「待ってなさい、今後は私が相手になってあげる……」




 次回に続く。



  エンディング



 更新が遅れて本当にごめんなさい。今週は土日も含めて休みがないのですよ(~_~;)


 本題。今回は前回の瞬木の心の闇を解説する回に続いて、その闇と向き合い、本当の自分をさらけ出す回だった。天馬のKYに見えてよく観察していた行為が功を奏して、瞬木の心にも彼の思いが伝わったと言えそうだ。

 瞬木にとってはソウルを発動させたことよりも、本音を見せてなおかつそれを祝福してくれた天馬に対しての喜びの方がむしろ大事だっただろう。ソウルはあくまでもその心の平安の地平に誕生したものであるからだ。黒岩もこの辺のことは全部お見通しの上で天馬にキャプテンを任せていたんだろうな。

 瞬木の負のアズルを暴走させようとしたポワイたちの作戦は失敗に帰したが、彼らの誤算は天馬の正しいアズルがものすごく大きなものになるということを見極められなかったという点にあるだろう。


 瞬木の能力が開眼したとはいえ、アズルを見通すサザナーラ側の優位は動かないし、さらに恐るべき女佐久間次郎が後半は試合に参戦して来る。アースイレブンはまだまだ気を抜くことが出来ない。



 次回は皆帆が活躍する内容になるようだが、気になるのはそのタイトル。何と彼がオウンゴール自殺点)をしでかしてしまうらしい。一体どうなるのか……というか、このシーンのウルミちゃんが可愛すぎる。敵にするのが惜しいぐらい。




 国民投票、今回はFW部門だ。剣城が順当に強そうだが豪炎寺やフェイ、今回見せ場があった瞬木といった新旧対決も苛烈を極めそう。名も無き小市民はエントリーされなかったのね。ちなみにもう投票は終了していて、結果発表も終わってると思われるので掛けても無駄です。



 で、DF部門の発表。見事に1位に輝いたのは菜花黄名子(CV:悠木碧)でした! やったやんね! 蘭丸と風丸も順当な印象。壁山さんが入賞しなかったのは、やはりネット投票とは勝手が違うからだろうな。



  次回「皆帆のオウンゴール!」に続く。



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