『イナズマイレブンGOギャラクシー』第29話「翼を捨てた戦士たち」の感想 【神童と井吹のソウル発動!】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第29話「翼を捨てた戦士たち」を観ての感想を書く。タイトルとは逆に、翼を捨てずに残し続けた戦士の姿こそ描かれている印象が深い内容の本編。彼らとの出会いにより2人の地球の戦士が新たな力に目覚める。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第28話「灼熱の惑星ガードン!」の感想 【新しい紫天王は不動似のショタっ子】
 をご覧ください。

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 松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】は星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の本戦3回戦の舞台【惑星ガードン】に乗り込む。そこは灼熱(しゃくねつ)のマグマ惑星だった。


 その星を支配するガードン人たちは鳥類の進化系であり、そこには理念の違いから翼を機械の腕に持ち替えて文明を興(おこ)した西の種族と、種族の伝統たる翼を捨てなかった東の種族の二つの派閥に分かれていた。


 その地でカトラ・ペイジ(CV:上田麗奈)から託された「希望のカケラ」の一片である赤い石を探すことにした天馬たちは3つの班に分かれ、東の山に住むという東の種族の元へと向かう。

 だがファラム・オービアスからガードンに送り込まれていた紫天王のロダン・ガスグス(CV:藤村歩)の卑怯な罠にハマり、神童拓人(CV:斎賀みつき)と井吹宗正(CV:鈴木達央)の両名が崖から落ちてしまう!

 崖下はこの惑星の熱気を象徴するマグマだまりだ。そこに落ちれば万が一にも助かる可能性は無いだろう……



 だが2人は運が良かった。マグマを目前にする最下層に張り出した足場に落下し、ターミネーター状態だけは避けられたのだ。



ターミネーター状態」の図。


 お互いの無事を確認し、立ち上がった両名だが、上に戻る足場は無い。……善後策は仲間の救援を待つことだろう。2人は先に逃がした皆帆和人(CV:代永翼)と森村好葉(CV:悠木碧)が仲間を呼んで戻ってくることに期待する。



   オープニング



 ガードンに設けられた練習グラウンドでは3班の天馬たちのグループと2班の西園信助(CV:戸松遥)たちのグループが戻って来ていた。いずれの班もロダンの卑劣な作戦によって前進を阻(はば)まれ、ここに帰って来ていたのだ。

 東の種族に会うという目的を果たせず落ち込む天馬たちは、まだ戻って来ていない神童たちのグループが良い知らせを持って帰って来ることに期待する。


 だがそこに息を切らせて走って来た皆帆と好葉から神童と井吹と離ればなれになったことを聞き、2人に異変が起こったことを天馬たちは理解した。



 その頃、神童と井吹は崖下から脱出しようと急勾配(きゅうこうばい)を泥まみれになりつつ登っていた。しかしろくに足場も無いその勾配を登る行為はかなりの難事だ。神童が足を滑らせて一気に最下層の足場まで逆戻りしてしまう。

 それに気を取られた井吹の掴んでいた石も崖から剥離(はくり)し、井吹も落ちてしまう。勢いがついた井吹の身体は足場で止まらず、マグマのところまで飛ばされてしまう!



 井吹のターミネーター状態をすんでのところで救うのは神童だった。


 今回は何とか無事に済んだが、2人はこの崖を登る行為はそのまま命懸けであることを否応なく理解する。絶望的な状況をしばし忘れようとするかのように、井吹は天馬が語っていたカトラに関する話を、神童は信じているのかを問いかける。

 神童は小考し、天馬がどんな局面でも諦めない性格の後輩であることを語り始める。


神童「あいつはなんとかなると信じてみんなを引っ張って行った。そんなあいつを俺は信じてやりたいと思っている……」


 多くの葛藤(かっとう)を乗り越え、神童をある種の敬意を込めて見ている井吹にとってその言葉は重く感じられた。井吹はこの神童が全幅の信頼を置いているキャプテン、天馬のことを信じることがチームの、そして自分のためになると確信するに至る。



井吹「俺もキャプテンを信じてみるか!」


 そして井吹は立ち上がり、2人の信じるキャプテンの元に早く戻ろうと告げるのだった。


 その2人を後方の岩場に降り立った老人が見つめていた。その挙動、老人は翼を持たない者には絶対に不可能な物理法則でその場に存在していた。この星で翼を持っているガードン人、それは彼らが探し求めていた存在に違いない。


神童「……東の、種族!?」




 数刻後、神童と井吹は東の山頂に建立(こんりゅう)された東の種族の村の客人として迎え入れられていた。危ういところを救われ、神童と井吹は先ほどの老人に感謝の言葉を述べる。

 老人はその翼を腕のように動かして長く立派なヒゲを触りつつ、この一帯が自分たちの縄張りであり、地球人がどうしてやって来たのかを問いただす。

 神童はここで天馬に聞いた、この星にあるという赤い石のことを尋ねるためにやって来たと理由を明かす。その言葉を聞いたガードン人たちは一斉に動揺し、落ち着きを失う。



 長老にして東の種族の族長、ログロス・ゴードン(CV:園部啓一)は重ねて、地球人が赤い石を求める理由を尋ねる。この名前、西の種族の族長であるアルベガ・ゴードン(CV:高口公介)と苗字が同じだ。おそらくこの両名は親子であろう。ログロスもアルベガもワシのような顔を持っているし。


 神童は自分自身も確信が持てないからか、やや口ごもりながらも、それを求めることが「宇宙を救う」ことになるからだと答える。

 神童は新たに問われるよりも前に、星の存続をサッカーの勝負で決めるグランドセレスタ・ギャラクシーの意義の誤謬性(ごびゅうせい)を持ちかけ、赤い石を含む希望のカケラさえあれば宇宙の危機を救うことが出来るのだと熱弁を振るう。

 その根拠を問うログロスに対し、神童はカトラの話を持ち出し、彼女の言う4つのカケラを揃(そろ)えて彼女のもとにたどり着くことが出来れば、すべての星を救うことが出来るという話を告げる。これは神童自身も直接聞いたわけではなく、天馬しか会ったことがない少女の話なのだが……。

 だが神童はカトラがこの星で赤い石を探せと言及したことに触れる。先ほどのガードン人たちの反応を見て、この星の人間が赤い石を知っていることを確信したに違いない。そして本当に赤い石があるということは、イコールとしてカトラの言葉自体の信憑性(しんぴょうせい)を高めることに繋がる。


 神童の熱弁にもログロスは心を動かさない。安易な言い分だと一蹴(いっしゅう)する。不遜(ふそん)な態度だが、相手は危機を救われた恩人であり教えを乞(こ)うべき相手だ。神童は重ねて赤い石について教えて欲しいと懇願(こんがん)する。

 ログロスからの返答は何も知らないとにべもない。その状況に我慢できなくなった井吹は立ち上がり、しらばっくれずに教えてくれと叫ぶ。

 ログロスは宇宙を救うという話の担保、すなわち信憑性を求める。神童はその話を持ちかけた少女(カトラ)と交信するのは自身の仲間(天馬)であり、神童自身は仲間を、天馬を信じたいと語る。


 ログロスは熟考する時のクセなのだろう、またもそのヒゲをしごいて思いに浸る。そして彼は問いかけの形態を変える。

 翼を捨て、機械の腕を選んだ西の種族について、ログロスは批判する。彼らの行為は文明を発展することがすべてであり、ありのままの自分を受け入ない彼らは自然を象徴するソウルをも否定すると、その状態を嘆かわしく思っていることをログロスは隠そうとしない。

 その嘆きの一番大きな部位を占めることとして、彼はその西の種族を統(す)べるリーダーが自身の息子であるアルベガであることを明かす(やっぱりそうだった)。

 その言葉は神童と井吹を驚かせる。アースイレブンの練習に乱入し、無礼にもシュートを放って宣戦布告をしたあのアルベガの名を聞き、井吹はその瞳に敵愾心(てきがいしん)をみなぎらせる。

 その井吹の態度を見て、ログロスは地球人がすでにアルベガと出会っていたことに気づく。親であるだけあって、ログロスはアルベガが何を考えているのかを手に取るように理解していた。




 グランドセレスタ・ギャラクシーに参戦する上で、アルベガは自分たち西の種族がガードンを代表して出場することを会談の場でログロスに告げる。それによって機械の腕を選んだ自分たちの選択が正解であったことを旧世代である父親に見せつけたいという思いが彼の原動力となっていた。いわゆる一種のエディプスコンプレックス。


 そんなアルベガに対し、ログロスはアルベガの父であるより前に東の種族の代表として振舞う。アルベガのグランドセレスタ・ギャラクシーへの出場を許可し(といっても突き放したような態度であるが)、この問題とは関わりを持たないということを明言する。

 自分たちの星を自分たちで守ろうとしない父に向け、腰抜けと面罵(めんば)するアルベガに対し、自然の動静を重視するログロスは滅びさることもまた自然の摂理なのだと滔々(とうとう)と解く。

 その言葉を、滅び行く年寄りの戯言(たわごと)とみなすアルベガはついて行けないと決別宣言し、ログロスと縁を切ったことをむしろ誇らしげに語る。



 ログロスが語った息子との確執、それはそのまま東と西の種族の見解の相違に直結していた。ログロスは息子の考えこそが愚かな誤(あやま)りであることを自覚させるためにも、アースイレブンとの戦いでは息子よりも地球代表たる神童たちを応援することを明言する。

 もちろん全力で戦うと返す神童と井吹に対し、ログロスはアルベガの強さも誰よりも知っていた。


グロス「今のお前たちで果たして勝てるかどうかだがな」


 そう言ってダメ出ししたログロスだったが、その直後、神童たちを見て興味深げにその目を細める。


グロス「ほぉ、『七色の翼』に『巨大な牙』か……」

 これは一体……? ログロスはこの2人のソウルを見ることが出来るのだろうか? 自然を重視する彼の能力なら自然のパワーの発露であるソウルの力は見えてもおかしくはないが……。彼以外にソウルが見えるというアースイレブン監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)も実は自然大好きのエコロジー爺いなのかもしれない。


 2人に俄然興味を示しだしたログロスは2人にしばらくこの場に留まるよう告げる。これはアースイレブンを勝利に導くために、特訓でもしてくれるのであろうか?



 一方、神童と井吹がそんな状態になっていることなど知りようもない天馬たちは2人が落下した崖の上にやって来ていた。だが当然のごとく彼らは神童と井吹の姿を見い出すことが出来ない。


さくら「もしかしてここに落ちたんじゃ……?」

 野咲さくら(CV:遠藤綾)は眼下に広がるマグマだまりを見て思わず不吉な想像を口にする。それを聞いた鉄角真(CV:泰勇気)は縁起でもないと烈火のごとく怒り出す。誰もが心の片隅に抱く不安感をあっさりと口にしたさくらちゃんハンパねぇ。


 だが2人の行方(ゆくえ)は杳(よう)としてしれない。最悪の事態は考えられないとしても、間もなく太陽が沈んでしまう。迷子の経験からこの星の太陽周期を計算したインテリ真名部陣一郎(CV:野島裕史)が言うように日没後の暗闇での捜索作業はかなりの難事だし、自分たちも遭難しかねないという二次被害の恐れが広がる。

 暗に本日の捜索を打ち切ろうという真名部の意見にハッキリ言う性格になった瞬木隼人(CV:石川界人)は同調する。九坂隆二(CV:岡林史泰)は最終決断をキャプテンである天馬に託す。考え込む天馬。


???「探しましたよ、アースイレブンの皆さん」


 上空から声が響く。上を見ると、翼を持った山伏(やまぶし)のような出で立ちのガードン人が降下してくる。彼は東の種族の使者(CV:田尻浩章)を名乗り、長老(ログロス)の使いでメッセージを届けるためにやって来たと語る。

 あれだけ会いたかった東の種族の人間が自ら会いに来た。それ自体は僥倖(ぎょうこう)と言えるが、今は神童たちの安否が気になる。

 ただ東の種族の使者の言うには、神童と井吹はその長老のもとにいるという。東の種族のガードン人に危ういところを保護されたことを聞き、天馬たちは安堵(あんど)の息をつく。



 特に神童と井吹と共に行動していた皆帆と好葉はその安堵感もひとしおだっただろう。神童たちは彼らを助けるために犠牲になった側面もあり、皆帆と好葉は2人の失踪に大きな責任を感じていたはずだから。


 神童たちの無事を改めて確認する天馬。東の種族の使者はそれを肯定しつつも、訳あって彼らが帰還できないことを告げる。しかし明日の試合には必ず返すという長老からの伝言も同時に伝える。



 それだけを告げると東の種族の使者は、東の種族の特徴である翼を広げて空に舞い上がる。これこそがこの星の人間の本来の姿であるのだが。


 だが天馬たちはまだ聞きたいことが残っていた。何といってもガードン人は明日の試合に負ければ滅亡の危機なのだ。東と西の諍(いさか)いはあれど、自分たちの星の存続のためには共通の敵がアースイレブンであるはずなのだ。

 神童と井吹を本当に返してくれるのか? その確証が取れなかったことに天馬や鉄角は納得が行かず大声で呼び止めようとするが、メッセンジャーは振り返ることもなく飛び去ってしまう。こうなると翼のない人間はどうしようもない。



 東の種族の村、長老ログロスの館では夕餉(ゆうげ)の時を迎えていた。神童と井吹もその席に相伴(しょうばん)していた。ログロスは生きとし生ける物は自然によって生かされており、そのことを意識し、自然に感謝して食べるよう2人に言い渡す。



 グロスに、そして隣席の男に促(うなが)され、神童は団子状の物を頬張る。そしてそのあまりの美味に相好(そうごう)を崩す。


神童「美味しいです!!」


 その言葉にログロスは満足げにうなづく。



 敵に施(ほどこ)しを受けるのは気が引けるのか、井吹は試合中にバテたくないと言い訳をしながら一口齧るが、そのあまりの美味しさに口に運ぶ箸(はし)が止まらなくなる。



 あっという間に完食してしまう井吹。地球人が旺盛(おうせい)な食欲で自分たちの郷土的な料理を食べたことは他のガードン人たちも嬉しかったらしい。にこやかに井吹を見つめ、もっと食えとばかりに自分たちの分を与えてくる。


 その接待攻勢に井吹は困惑しまくるが、その微笑ましい様子に地球人とガードン人との友情を見る思いの神童は笑ってそれを見ていた。

 そしてログロスに向き直り、ガードンの料理が地球の料理と味が似ていることを打ち明ける。ログロスは地球の話に興味を抱き、何か話して欲しいと神童に要請する。

 神童は地球が自然豊かな星であることを告げる。緑あふるる大地と生命を育む海、そして青い空が広がっていると地球の特徴を説明する。

 ガードン人たちはその中でも特に「青い空」という部分に心を動かす。湿度が高いガードンの曇った空しか知らない彼らにとっては飛んでみたい憧れに思えたのかもしれない。

 地球にも空を飛ぶ生物がいて、その青い空を飛び回っていることを神童は語る。自分たち人間は空を飛べないが、青い空は心を落ち着かせたり明るい気持ちにさせてくれる、なくてはならない存在であることを率直に話す。

 地球人が自分たち東の種族と同様に、自然と共生して生きていることを聞き、ログロスは引き締めていた表情を弛緩(しかん)させる。

 ガードン人も地球人と同様であったことを語り、そして一つ息をつくような間を置き、息子も同じだったとしみじみと語る。


 ログロスは何かを決心したような表情で、神童と井吹に伝えたいことがあると語る。それはもしかしたら本来は愛する息子に伝えたかったことなのかも知れない。



 その頃、天馬たち残されたアースイレブンの面々も夕食時を迎えていた。あれから天馬たちは結局メッセンジャーの言ったことを信じて彼らの宿舎である【ギャラクシーノーツ】号に戻って来ていたのだ。



蒲田「今日はチキンだよ〜チキン! チキンを食べてチキンに勝つ! だよ」


 何と鳥人間であるチーム・ガードンに勝つためにチキンカツをおかずにした寮母の蒲田静音(CV:くじら)。これをログロスたち東の種族が見たら怒りと恐怖のあまり発狂するんじゃなかろうか?

 蒲田さんのその語呂合わせにその気になった鉄角や九坂がチキンカツを噛み締めて、明日の試合への闘志を燃やす。チキンの匂いをさせて試合に臨めば、ガードン人たちはビビるかも知れないしな。


 男子たちのアホな饗宴(きょうえん)にさくらが呆れる。マネージャーの空野葵(CV:北原沙弥香)は神童たちがどうして明日まで帰れないのかと疑問を天馬に尋ねる。もちろん天馬にもその真意は分からない。だが天馬の神童に対する信頼は絶対だ。大丈夫だと請け合う。


瞬木「機械の身体に改造されてたりしてな♪」



 そうやってビビらせるブラック瞬木のイジワルに乗せられて震え出す好葉ちゃん。そこに助け舟を出すのが皆帆だった。東の種族は機械文明を否定する立場であることを覚えている皆帆には瞬木のブラック攻撃は通用しない。


 そう聞いて、心配になっていた天馬や信助もホッと息をつく。瞬木は悪びれつつ、チキンカツを頬張って帰って来ない2人の境遇を不審がる。その気持ちだけは天馬も同意するのであった。心配のあまり、美味しいはずのチキンカツを食べる天馬の顔色は晴れない。



 そしてその心配される神童と井吹は客人のまま寝床に身体を横たえていた。神童は自分たちをこの場に留めたログロスが何を考えているのかを思い、眠れぬ夜を過ごしていた。

 ログロスの老獪(ろうかい)な思慮を考えれば、その思惑は思っているよりずっと深いものなのかもしれない。彼の息子であるアルベガや惑星ガードンにとっても為になることを考えている可能性がある……



井吹「神童」


 寝ていると思われた井吹に名を呼ばれハッとなる神童。井吹は大事な試合を控えているのにこんなところでのんびり過ごしている場合ではないと神童に語る。確かに夕食後にギャラクシーノーツ号に戻っていれば深夜までブラックルームで特訓が出来たはずだ。

 しかし神童は今はログロスの言うとおりしてみようと返す。まだログロスの真意を見定めていないことが神童をしてそう言わしめる理由だが、井吹はなお明日の試合を控えて気が気ではない様子。

 だが神童の気持ちを翻意(ほんい)させることが出来ないと判断した井吹は、舌打ちしつつも素直に現状に甘んじることを覚悟する。


井吹「チッしょーがねぇな……」
神童「……おやすみ」

 枕を並べ眠る2人。イナギャラが始まった当初はこんな関係になるなんて思えなかった犬猿の仲の2人。このシーン、井吹はジャージを枕の上に置いている。これは神童の返答次第ではこの場をすぐに抜け出してチームの元へと帰れるようにしていたのだと思われる。



 そして翌日、目を覚ました井吹は隣で寝ていた神童がすでにいないことに気づく。あわてて着替えを終えた井吹は室外で目付け的に存在した見張り役の男の隙をついて外に出る。


 神童は朝日を浴びながら館の正面に立ち、何かを見つめていた。そして駆けつけた井吹にその見ていたものを指し示す。そこには空を舞うガードン人。神童が見ていたのは長老ログロスが優雅に空を飛んでいる姿であった。



 朝もやの中、泰然自若(たいぜんじじゃく)に飛ぶログロスの姿。それは幻想的な美しさに満ちていた。鳥居のような石碑の前で、2人はしばしその光景に釘付けとなる。


 ログロスは2人に気づいたのか、その前に着地する。神童はその神々しい姿に見入っていたと正直に述べる。


グロス「求めていたのだ……!」


 思いがけない言葉が返って来て、神童と井吹は驚く。ログロスは自身の翼が空を求め、空もまたこの翼で飛ばれることを求めていたのだとその言葉の意味を説明する。


神童「それは本能ということですか?」


 その質問にログロスはうなづく。本能の赴(おもむ)くままに風を感じていたと述べ、そして意味ありげに振り向く。

 ログロスが神童と井吹にも「風を感じてもらう」と告げると、2人の上空を複数の翼を持ったガードン人たちが飛び始める。



 何が始まるのかと警戒する2人の身体を、2人のガードン人が足で掴んで上空に連れて飛び上がる。驚愕し抵抗する2人だが、抵抗しすぎて地面に落とされてしまえば待っているのは死だ。2人は何をされるのかという恐怖を感じつつも、なすがままにされるよりない。

 そしてログロスを始めとする他のガードン人たちも一斉に飛び上がる。彼らは何をしようというのだろうか?



 2人を連れたまま、東の種族の一行は雲を突いて東の山からどんどん先へ進む。やがてかつて見たマグマの溜まる山岳地帯に行き着く。神童はもしかしたらここから自分たちを突き落とすつもりなのではないかと緊張しながら井吹に告げる。

 その直後、彼らを抱えるガードン人は急降下、悲鳴を上げる2人を掴んだまま地表スレスレで方向を変えて彼らを翻弄(ほんろう)する。

 そして今度は両者向き合って猛スピードで相対する!



 すわ激突かと思われた瞬間、両者はギリギリかすめるようにすれ違う。繰り返される危険な行為、だがそれを地上から見つめるログロスの表情は真剣そのものだった。

 この行為にログロスの意図を感じる神童は、なぜこのようなことをするのかという疑問が湧く。だがログロスも他のガードン人たちも、誰もその疑問を晴らしてはくれない。



 神童と井吹がそのような試練を迎えていることなど天馬たちは知る由(よし)も無かった。ギャラクシーノーツ号の前で2人の帰還を待ち続けるアースイレブン。



 瞬木が本当に2人を返すのかと疑念を表明する。敵対していたとしても同じ星の人間だし、負けたら滅びるのだからと私と同じ読みを見せる。ブラック瞬木と同じ考えだということに個人的にはやや凹む。


 皆帆は例によって耳をピクピク動かして、彼なりの推理を披露する。2人を返すつもりがないのなら、わざわざあの場面で地球人に話しかけてくるだろうかという彼の推理は的(まと)を射ている。

 それに反論するのは真名部だった。あそこで話しかけたのは地球人を油断させ、陥れるための罠だった可能性に触れる。


 その可能性もあるが、鉄角の言う通りいちいち疑い出してはキリがない。ここは東の種族の信義にかけるより他は無い。天馬は東の種族の長老の約束だけにそれを履行しないはずはないと、信じて待つことを一同に告げる。


 ただ試合開始の時間が迫っている。コーディネーターのイシガシ・ゴーラム(CV:遠藤綾)はどうするのかと決断を促す。現状のアースイレブンは2人欠けても11人いるわけで、一応試合に臨むことは不可能ではない。

 そこでギャラクシーノーツ号の乗降ドアが開き、黒岩が水川みのり(CV:高垣彩陽)を伴(ともな)って降りてくる。彼は2人の欠員のことなど眼中に無いかのように試合会場への移動を命じる。

 イシガシはそれを受け、一同を試合会場へと案内し始める。


 天馬たちは釈然としない表情のまま、イシガシの後に続く。井吹の欠員で一気に先発出場が濃厚となった信助に、市川座名九郎(CV:小西克幸)が歌舞伎の舞台になぞらえてその心得を説く。



座名九郎「舞台袖にいる時も気持ちを高めて出番を待ちます。いつお呼びが掛かってもいいように準備しておきましょう」



 これまではベンチで出番を待つことの方が多かった両者だ。信助は座名九郎から受けた言葉に勇気を得て、顔を平手で叩いて気合いを入れる。



 その間も神童と井吹に与えられる試練は続いていた。今度は今にも噴火しそうな火山口に向けて運ばれる両者。まさかそこに放り込まれるのではないかと神童は恐れる。

 そしてまたも火口直前で方向を変え、急激に上昇していく。降下から上昇へという変化に体感するGの衝撃は相当なものだろう。神童と井吹はうめき声を上げるぐらいしか出来ることは無い。


 そしてついに恐れていた行為に及ぶ。上昇したガードン人は2人をその場で解放したのだ。それはつまり飛べない地球人にとっては落下するより他ない状況を指す。



 すがるものの無い今度こそ絶望的な悲鳴を上げて落下する2人。そのまま加速を付け一直線に火口に向けて落ちて行く。助ける能力のあるガードン人たちは見つめるだけで動こうとはしない。



 絶望的に思われたその状況。だが落下する2人の身体を輝くオーラが包み込む。雄叫びを上げる2人。それはあたかも絶望に抗(あらが)うことでおのれの潜在能力のすべてを利用し尽くし生き延びようとする野生の行為のように思われた!!


 ログロスたちが見守る中、火口内に落ちた神童と井吹。その姿が没した直後、ものすごい轟音と衝撃波が周囲の空気を震わせる。



 火口縁(かこうぶち)の岩棚に悠然と着地した神童と、それとは逆にワイルドに穴を穿(うが)ちつつも無傷な状態の井吹の両者の姿があった。2人ともその身に何が起こったのかは分からないという表情だ。おそらく無我夢中で彼らの中に潜む能力を発動させたに違いない。


グロス「精神の極限に達した時、奥底に眠るソウルが呼び覚まされるのだ」


 火口に降りて来たログロスはこの事象を端的に解説する。すべては神童と井吹のソウルの力を目覚めさせるためにログロスが仕組んだ、真の意味での試練であった。

 ソウルを覚醒させるための方策だと最初から分かっていれば、神童たちは身の危険を感じられなかったはずであり、それは同時にソウル発動にはマイナスに働いていたであろう。真意を隠して命を危険にさらされてこそ、ソウルはその姿を現して神童と井吹を救ったのだ。

 ログロスがそこまで考えて自分たちに試練を与えていたことを賢明な神童は見抜いていた。そしてその好意のおかげで真の力に目覚めることが出来たと、感謝して礼を述べる。

 井吹の方はまだ怖い目に遭わされたことについて納得いかないようだったが、ガードン人たちにそのソウルの強さを褒められてまんざらでもない様子。井吹はおだてに弱いようだ。


神童「でも良いのですか!?」


 神童は感謝しつつも、目覚めたその能力こそがログロスの息子であるアルベガを打倒し、この星を滅ぼす結果になってしまう可能性を思うとそう問わずにはいられなかった。

 ログロスは神童たち地球人が敵であることを理解した上で、なおその力を目覚めさせたことを承知していた。アルベガが神童たちに敗れることがあれば、この先も勝ち続けることは出来ないと語る。それは神童を指導したこの父、ログロスをも超えていないことの証明であるからだ。

 そしてさらなる正論でもってログロスは神童に畳み掛ける。



グロス「それに、例え試合の結果がどうであれ宇宙を救ってくれるのではなかったのかな?」


 ログロスは神童が話した少女の話を信じてくれたのだ。それは同時にその話の発信源である天馬をも信じるということだ。神童はログロスのその懐(ふところ)の広さに言葉を失い、そして先に控える試合への思いを募らせる。地球人に全幅の信頼を持ってくれているこの長老のためにも試合は負けるわけには行かない。



 試合会場ではすでに観客が満ち、アースイレブンのメンバーもアップを始めていた。とうとう戻って来なかった2人を思い、天馬は苦渋の表情を浮かべる。

 そこで黒岩から、本日の先発メンバーが発表される。FWは三枚で臨むと告げ、瞬木、座名九郎、剣城京介(CV:大原崇)の三者の名を呼ぶ。剣城こと剣偽は前回の試合出場を回避した経緯があるが、今回は参戦を決める。2人の欠員がいる以上、出ないわけには行かないしな。



 そしてキーパーには信助が初めて選出される。信助と座名九郎は2人で誓い合ったリザーブの選手心得を確認し合うかのように視線を合わせ、うなづき合う。


 天馬は正選手がいない時こそチームとしての底力が試される時だと言って親友を鼓舞する。そして信助がアースイレブン入りして以来、兄貴分として彼を気に掛けていた鉄角もエールを送る。



「信助、俺は何が何でもソウルを引き出して見せるぜ!」


 信助を励ますと同時に、自分自身の思いをも奮い立たせるガッツマンの鉄角は信助にとっても心強い兄貴分だった。笑顔で互いの健闘を誓い合う。

 天馬は神童と井吹が戻って来るまで自分たちで踏ん張るという意思を仲間に統一させる。天馬は神童と井吹の帰還をまだ疑ってはいなかった。もちろんその意思はすかさずアースイレブン全メンバーに浸透する。



 一方のチーム・ガードン陣では、機械の腕をドライバーで調整するアルベガの姿があった。その彼に語りかけるのは、実力でもってこのチームの強制助っ人になったロダンだった。

 彼の姑息な計画によってこの場にアースイレブンの正GKとチームの司令塔が存在しない状況は、チーム・ガードンにとっては有利に働くことは確かだ。



 ロダンは信助が相手なら何点でも得点できると嘯(うそぶ)き、勝利は間違いないと笑って立ち去る。アルベガは傲岸不遜(ごうがんふそん)なロダンの態度に怒りを募らせる。正々堂々とアースイレブンを倒すことで自分たちの選択した機械化の道が正しいことであることを証明したいアルベガにとって、ロダンの行為は余計なことでしかない。


 だがアルベガは勝利のためという第一義的問題を挙げ、そのためならロダンに大きい顔をされている現状もやむを得ないと憤(いきどお)る自身の気持ちを納得させる。

 そんなアルベガの心情を理解するのであろう、忠実なチームメンバーたちは揃ってアルベガに従うことを決めていた。コヨパク・ジャリガー(CV:不明)が代表してその意を告げる。




 恒例の試合開始直前の両チームの布陣。チーム・ガードンは3-3-4という変則的なフォーメーション。だが攻めっけの強そうな選手が前線に揃い、超攻撃的な構成と言えよう。1番GKのアルベガ、8番FWのコヨバクと10番FWのロダン以外の名前は、2番DFのマヨン・クレステ(CV:不明)、3番DFのメラピル・セクレタ(CV:不明)、4番DFのミスティ・オール(CV:不明)、5番MFのネバド・コンダルム(CV:不明)、6番MFのエトゥナ・ホルク(CV:不明)、7番MFのプロモ・シュービル(CV:不明)、9番FWのヴェス・ホーネ(CV:岡林史泰)、11番FWのニーラ・フェズン(CV:田尻浩章)。ちなみにロダン以外は全員、その名を見ればどんな鳥類がモデルになっているのかが分かるようになっている。またピンク文字は女の子。鳥頭だと男女の区別が付けにくい。


 一方のアースイレブンは4-3-3とFW3枚の攻撃的布陣。注目はやはり正式な試合で初めて選出されたキーパー信助だろう。ソウルに目覚めた井吹が帰って来るまで頑張って欲しいところだが、ロダンの発言を考えると引き立て役になっちゃう可能性も……。



 そして気になるロダン以外の紫天王のリュゲル・バラン(左 CV:ランズベリー・アーサー)、ガンダレス・バラン(右 CV:興津和幸)の白黒兄弟。この2人はベンチ入りしていないようなので、やはり顔見せだけで次の惑星での敵になりそう。



 試合開始前から、フィールドに充満する熱気のせいでアースイレブンの選手たちはバテ気味の様子だった。やはり懸念されていた通り、この星の環境が最初の敵となりそうな印象を受ける。

 天馬は仲間の様子を見つめながら、彼にとっての精神的支柱と言える神童と井吹の帰還を心待ちに待っていた。そんな気持ちは試合開始に何ら考慮されることなど無い。


 いま高らかに試合開始のホイッスルが鳴り響く。その過酷な戦いの開始を象徴するかのように、会場外ではコロナのような炎が湧き上がる。



 次回に続く。



  エンディング



 ようやくガードンとの試合が開始される段になったが、その前の神童と井吹の覚醒が今回の見どころだ。彼らのソウルを発動させるにはかなり強引な指導が必要だったということが描かれていた。


 東の種族の長老、ログロスと西の種族族長のアルベガが親子というのは、関係性に世代間、ジェネレーションという新たな対立軸が描かれた印象だ。「親の心子しらず」という言葉や「老いては子に従え」という言葉があるように、この関係性の場合どちらが正しいのかは常に争いの種になり得るものだと思う。

 若いアルベガの側が常に発展する精神性を重視して翼を捨て機械化に邁進する気持ちも分かる。そして自然を重視してそれを蔑(ないがし)ろにしてはならないと説くログロスの気持ちも分かる。

 アルベガは親子の縁を切ったと言っていた。確かに国家存亡の危機に際し、滅びることも自然の摂理と達観する老人の意見に流されて若者である自分たちまでもが滅ぶことを同意する訳にもいかないだろうけど、親に対してあの口の利き方はどうだろう? とも思う。

 ちなみに本文中に書いた「エディプスコンプレックス」とは男の子が父親を憎みそれを乗り越えようとする思考のこと。ギリシャ神話のオイディプスの悲劇がその語源。有名なスフィンクスが出したなぞなぞの話はこのオイディプスの話の一部。


 願わくば、アースイレブンとの戦いを経てこの親子の関係が修復されることを望む。この親子のケンカがそのまま東と西の見解の相違に直結しているはずだから、この両者が和解すればガードンの内紛も収まるはず。



 神童と井吹の新たなソウルがアースイレブン勝利の鍵だとは思う。次回はそれが描かれることになるのだろうか。早く帰って来ないと信助とその兄貴分が痛い目に遭いそうなの……。




 国民投票、追加メンバーは円堂カノンだった。そして驚くべき重大発表。それはこの選出されたベストイレブンでアニメが制作されるということだ!!


 そのベストイレブンが戦うべき敵チームはこのメンバー。なるほどザナークが投票する候補にいなかったの理由がこれでハッキリした。ただ白竜とかフェイとかは選ばれなかった腹いせで敵になってる感が否めない。ベータちゃんとザナークがDFというのもしっくり来ないけどメンバー的に仕方ないのかな。



  次回「強烈!シュートカウンター!!」に続く。



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