『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』第2話「嵐の日」の感想

 恒例にしていく予定のアニメ感想文『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』、今回はその第2話「嵐の日」の感想だ。前回のヒキで、どんな嵐が訪れるかと思っていたのだが、比喩ではなく本当にそのままの嵐だったという……。ただその嵐のため、物語の最後に現れた人物が今後のストーリーを動かしていく予感がする。


  • 前回のアニメ『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』の感想は、

『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』第1話「ル・クールへようこそ」の感想
 をご覧ください。

 未明、リック(CV:神谷浩史)が住居とする帆船の寝室に、前日と同様に訪問者の姿があった。前日と違うのは、そのやって来た人影がひとりであったこと。まだ眠るリックの唇に触れて起こすエアリィ(CV:三上枝織)。その挑発的な態度は、まるで抜けがけのような背徳的な印象を受けてしまう。



 いつも通りパンを仕込む時間に起こされたと思うリックだが、実はエアリィはそれよりも早い時間に訪問したことを告げる。リックのパン職人としての師匠に当たるマデラ(CV:江森浩子)から、今日は忙しくなるのだと告げられたのだ。

 赤い月が夜空を照らす中、カンテラを持って彼らのパン工房、ル・クールへと2人は向かう。その頃マデラのパン屋の看板には、本日はル・クールで営業することを告知する張り紙がしてあった(ちなみに張り紙は英語で書かれていた。この後の城からのお触れもそうだったし、この世界の公用語は英語?)。

 ル・クールでいつものようにバンダナとエプロンに身を包み、工房内の姿を取るリック。今日はこの工房で共同作業をすることになったマデラが言うには、エルフの森のラナ(CV:広橋涼)から、今度来る嵐はいつもより大きなものになるという伝言を受けたらしい。自然現象を見通す能力は、人間より圧倒的に優れたエルフからの忠告だから、信用できるだろう。前回登場した精霊(シルフ)も風の精霊だし。

 そう聞かされても、自分たちに出来ることはパンを焼くことだけと達観しているアミル (CV:伊藤かな恵)。嵐だと自宅で食事をとる人が多くなり、パンがたくさん売れるという算段となると張り切るネリス(CV:相沢舞)。人助けでもあり、自分たちが儲かる機会でもある訳だ。

 パンを仕込むリックを見つめ、感心したように褒めるネリスとエアリィ。彼は元々はここのパン職人ではなかったことが示唆される。しろうと同然だったリックをここまで仕込んだのは、マデラであり、アミルたち3人娘の成果なのだろう。

 だが褒められて慢心したのだろうか、つい力を込めてボールをかき混ぜているところをマデラに叱責される。街で人気のパン職人となったリックだが、パン職人としては、まだまだ学ばないといけない部分が多そうだ。



 マデラ。自らもパン屋を営むが、今回は嵐の接近ということもあり、こちらで共同作業しているのだろう。


 そして朝の開店時間を迎える。やはりリックのパンは盛況で、飛ぶように売れていく。レジ係のアミルはこの島に嵐が近づいていることを客に伝え、警戒を呼びかける。街の人たちから信のあるマデラからも口添えがあり、客たちはその話を喫緊の重要事として認識する。

 そしてエアリィはいつもの如く、訪問販売に出かける。バスケットにパンを詰めて出かけるが、空を厚く覆う雲、そして強くなってきた風の雰囲気を感じ、嵐が確実に近づいていることをエアリィは意識する。


 教会の中の孤児院で子供たちにパンを手渡すエアリィ。無邪気に喜ぶ子供たちの中で、年長の子供が風が強い現状を心配して質問する。それに優しく答えるエアリィ。安心させるように笑顔で語るその姿に、子供たちも安堵したようだ。



 その頃、街の中心の噴水広場では、兵士が城からの触れ書きを看板にして立てていた。嵐の接近を警戒するよう告げるものだった。その話題はもう街の病院でも医師と患者が世間話で語り合うほどに知れ渡っているようだった。港では漁に出ていた船が続々と帰還し、街全体に警戒感が漂っていた。


 ル・クールの周りも夕暮れの闇が迫ってきていた。だがそんな時間になっても、エアリィは帰って来ていなかった。心配するネリスとアミルに事後を任せ、リックは探しに行くことにする。そのついでにパンを売ってきて欲しいという商魂たくましさを見せるネリスに、リックとアミルは些か失笑気味だ。


 パンが満載のバスケットを片手に、エアリィを探すリック。街では住人たちが嵐の襲来に備えてドアなどを釘で打ち付ける作業に追われていた。まさに文字通り、嵐の前の静けさだった。


 その頃エアリィは、先の噴水広場でひとりの少女(CV:福原香織)と話し込んでいた。少女の母親が仕事からまだ帰って来ていないという。心細そうな少女を置いておけず、一緒に待っていてあげるとエアリィは言う。その優しさに触れ、少女の顔がほころぶが、次の瞬間彼女のお腹が空腹を告げる。いつもより母の帰りが遅い分、夕食が取れていない訳で、お腹が鳴ってしまったのだろう。

 エアリィは軽く笑い、売り物であるパンを少女に差し出す。おカネが無いと遠慮する少女だったが、もちろんおカネを取る気などエアリィにはさらさら無い。少女が遠慮しないよう、ひとりで母を待つ偉い行為への代償としてプレゼントすると告げる。



 パンの匂いを嗅ぎ、嬉しそうにその施しを受ける少女。そこにエアリィを見つけたリックがやって来る。エアリィは自分を探しに来たリックに謝りつつ、ここで母を待つ少女のことを伝える。少女の母は町外れのリンゴ農場で働いているらしい。リンゴの収穫期が近づいていたが、嵐からリンゴを守るため、働いている人たちはそれに追われているらしい。少女の母の帰りが遅いのもそのためだった。

 リンゴを守るという話を聞き、興味を示したエアリィは、間を取り持つためもあったのだろう、少女にその方法を聞く。リンゴ畑の周りにハシゴを架け、布を吊るして畑を覆い、風から守るのだそうだ。

 そんな2人のやり取りを楽しそうに見ていたリックだったが、その頭上から冷たいものが降ってくる。ついに雨が降り始めたらしい。雨が激しくなる前に戻らないといけないが、さりとて少女をこのまま置いておく訳にもいかない。

 困っていると、そこに少女の母(CV:江森浩子)がようやく迎えにやって来た。喜びながらも、リックたちに感謝する言葉を忘れない少女に対し、リックは大きなフランスパンをプレゼントする。仕事で遅くなった母の苦労に報いると同時に、仕事のため自宅の夕食を確保できたかどうか分からない少女宅に配慮してのリックの優しさだった。

 感謝しながら去っていく母娘を見送り、リックとエアリィも暖かい自宅へと向かうことにする。嵐の襲来は間もなくだ。


 戻り着いたル・クールで今日の客の多さなどを思い返していた一同。何気なく外を見たエアリィは、本降りの中、町外れの方角へ走っていく先ほどの少女の母の姿を目撃する。リンゴ畑の仕事が残っているのかも、と言うリックに対し、エアリィは少女がひとりで留守番しているのではないかと居たたまれなくなる。



 心配そうなエアリィの心の中を、気づかない仲間たちではない。リックはエプロンを付け直し、窯の火がまだ落ちていないことを告げる。リックたちが何をしようとしているかに気づいたエアリィは、嬉しそうに微笑む。



 島は完全に暴風圏内に入っていた。暗い家中で仕事に出た母の身を案じ、帰りを待ち続ける少女。座り込むその姿は、不安と暗闇から来る恐怖に押しつぶされそうに儚い。

 そこに、家の扉を叩く音がかすかに聞こえる。最初は空耳だと思っていたその音だったが、そこに女性の来訪を告げる声が聞こえて来て、空耳ではないことに気付く少女。そしてその声が、さっきの優しいお姉ちゃんのものであることに思いが至り、少女は急いで戸口に向かう。



 そこには雨でずぶ濡れになったエアリィの姿があった。少女を気遣うエアリィは、心配を打ち消すようにおどけた調子でパンを届けにやって来た旨を明かす。そして紙袋に詰めたパンを渡す。パンを取り出した少女の顔がほころぶ。それはお兄ちゃん=リックが心を込めて作ってくれた、お守りのパン人形だったのだ。



 少女のはじけるような笑顔を見て、エアリィの顔にも笑顔が浮かぶ。


 そしてまたもずぶ濡れになりながら、ル・クールに帰還するエアリィ。それを待っていたリックからタオルを手渡される。嵐がひどくなる前にマデラは帰ったというが、同じく通い組であるリックは帰ることなく、エアリィの帰宅を待ってくれていたのだ。

 いろいろ考えれば、リックの負担が一番大きかった一日だったろう。だがリックはそんな態度を微塵も見せず、帰宅するために雨具を借りたいと告げるのみだった。


 だが嵐はかなり本格的な状態になっていた。赤い月すら覆い隠し、雲は激しく雨を降らせ続ける。リックは帰ることを断念するが、それが女の園であるル・クールに居残るための方便だったとしたら、なかなかのやり手さんだ。


 嵐に包まれ、月明かりすらない家々ではランプの暗い明かりだけが頼りだった。多くの人たちが嵐の被害を心配する中、あの少女もパンの人形を抱(いだ)いたまま、不安そうに窓外を見つめる。

 そしてエルフの森にも嵐は同様に訪れていた。この嵐の訪れを誰よりも早く察知していたアルヴィン(CV:神谷浩史)とラナの2人のエルフも、じっと嵐を見つめていた。



 アミル「こんな嵐の日だったね、リックがこの島に来たのは……」


 ル・クールの工房に敷いた布団にくるまって眠るリックを肴に、過去の話に言及するアミルたち。リックは乗っていた帆船が嵐に巻き込まれ、この島に流されて来たらしい。そして彼女たちとこのパン工房で働くことになり、今に至る。それ以前の過去は彼女たちも知らないのだろう。

 マデラの教えのおかげで一端(いっぱし)のパン職人になれたと評するネリスに対し、自分の功績を評価して欲しいとむくれるアミル。すぐに感情的に手を出すアミルを腐すネリスに対し、その守銭奴な点を腐し返すアミル。喧嘩しながらも決定的なこじれにならず仲が良い2人だったが、その争いに巻き込まれていないエアリィが視聴者的に一番株が上がったのは間違いない。

 騒がしく語らう3人娘の喧騒に、リックの目が覚めそうになってしまう。女3人寄れば姦(かしま)しいとはよく言ったものだ。疲れて眠るリックの邪魔をしないよう、口元に人差し指を当てて、静かにするようお互いを戒める3人娘。


 テーブルに着いて落ち着きつつ、先ほどお守りとしてパン人形を届けた少女の話をせがむネリス。エアリィも嬉しそうにその話を語り始める。静かな口調で語るその声は、宵闇の嵐の音に紛れて行く……。



 翌日、嵐が一過した街には優しい陽光が降り注いでいた。教会の清らかな鐘の音が朝を告げる。嵐で砂浜には大量の漂流物が打ち上げられていたが、港の方は影響ないらしく、朝からたくさんの船が漁のため出港していた。具体的な被害はさて置き、街はいつもの姿を取り戻した感がある。


 我らがル・クールの煙突からも、パンを焼いている証の煙が立ち昇っていた。昨晩は泊まりだったリックがパンの仕込みをしている中、勝手口の扉を叩く音がする。やって来たのは、昨晩の母娘だった。昨日受けたいろいろな恩に感謝して訪れたらしい。

 そこに寝ぼけまなこでやって来るアミルたち。その中で唯一母娘と面識のあるエアリィの姿を見て、少女は笑顔で声をかける。



 自分の代わりに娘を気遣ってくれたル・クールの皆に感謝する母は、そのお礼にリンゴを始めとする多くの食材を持って来ていた。リンゴを手に取り、嵐の訪れを街に知らせてくれたリックたちのおかげで収穫できたと改めて感謝の言葉を述べる母。それら食材を見たリックは、それを利用して特別なメニューを作ると決める。


 そして開店。今日もものすごいエフェクトで開店を告げる3人娘たち。



 無駄にすごいエフェクトで客を呼び込むその姿。美少女格闘変身モノアニメなどでよくあるパターンだけど、パン屋に客を呼び込む動作にそれを持ち込むのはすごい(褒めてます)。


 いつものように今日も盛況な店内。昨日の嵐の襲来を事前にここで教えられたことを、口々に感謝する客たち。アミルたちはそれを笑顔で受け、感謝してくれることに対して感謝する。

 そして仕事が一段落したのだろう、マデラのパン屋に出向き、今回のことを報告する一同。マデラは彼らと共に喜びつつも、受けた感謝の言葉を自分たちのところで止めてはならないと諭す。そしてリックたちが誰かに感謝の言葉を送る先が、きっとあるはずだと言う。その言葉にピンと来たリックは、帰る暇さえ惜しかったのだろう、その場でパン焼き窯を借りることを要請する。


 パンを焼き上げ、マデラから馬車を借りた彼らの行き先、それはエルフの森だった。人間の前に出ることを良しとしないアルヴィンを急かしつつ、ラナはエルフの森の端の木の前で待つリックたちの元にやって来る。

 彼らを呼び出したアミルは、マデラの店の窯で焼いたパンを手渡す。笑顔で受け取るラナと対照的に、アルヴィンは厳しい口調でなぜこんなことをするのかを問う。そんな理由などないというのが彼の言い分だった。

 だが、人間側からすれば理由は大有りだった。今回の嵐の襲来をマデラに伝えたのはラナであり、さらにラナに教えた大元はアルヴィンだった。街の人たちから、自分たちの功績のように感謝されたリックたちは、その感謝の気持ちをさらに彼らに伝えに来たという訳だった。そしてパン職人の彼らの誠意とは、まさにそのパンに結晶されているのだ。

 ラナは兄の嗜好を知っているのだろう、木の実が練り込まれたナッツブレッドを気難し屋の兄に手渡す。そして自分もそれを齧り、その美味しさに顔をほころばせる。その間もアルヴィンは、じっと受け取ったパンを見つめる。そのアルヴィンを、期待と不安が入り混じった表情でリックが見つめる。

 そして、ついに……



 アルヴィンがリックのパンを食べた。そして自分の様をじっと見つめていたリックたちの視線を感じ、一言。


 アルヴィン「不味くはない(皮肉な笑み)」


 彼なりの精一杯の皮肉を込めた態度だったようだが、ツンからデレに心変わりした瞬間を見抜けないリックたちではない(笑)。こちらは喜色に顔を染め、「ありがとうございます」とアルヴィンに告げる。それは街の人たちから受けた感謝の言葉を、次に伝えたということでもあった。

 リックたちは喜んでいたものの、兄の態度に素直じゃないと呆れた口調のラナだった。彼女はリックのパンを最高のものと高く評する。いつかアルヴィンもシニカルな感情抜きに、そんな風に褒めてくれる時が来るのだろうか?

 ラナのおどけた態度に笑い出す一同(アルヴィンは笑ってないと思うが)。エルフの森にも感謝の伝達がなされ、森じゅうが暖かな雰囲気に包まれ出していた。


 そしてその日も終わる。夜になり、1日ぶりに帆船の中の自分の寝床についたリックはぐっすりと眠る。空に浮かぶ月も、元の色を取り戻していた。嵐が去り、穏やかな夜だった。

 だが浜辺の波打ち際に、誰かが倒れていた。それはかつてのリックと同様、嵐に巻き込まれてこの島に流されて来た漂流者なのかもしれない。意識のないその人物は一体何者なのだろうか?




 次回に続く。



 エンディング

 世間では笑えるエンディングと評判のようだが、個人的には結構気に入っている。



 今回も基本的にパンを作るだけの話。個人的にはこういう淡々としたドラマ展開も嫌いじゃない(アルヴィン風)のだけど、そろそろ話にメリハリが出て来そうな印象。リックの過去の話なども徐々に明かされていくのだろう。

 最後に登場した漂流者が以後のストーリーの流れを変える存在になりそう。女性だし、リックのハーレム展開に一層拍車が掛かりそうな気もするのだが、リックが真面目過ぎるのもあって、本当にそんな展開にはなりそうも無い。リックの性格が「シティーハンター」の冴羽獠みたいだったら、物語は全く違う方向に行っただろうな……。


 今回はヒロイン3人のうち、エアリィにスポットライトが当てられた感じ。優しく健気な彼女の活躍が描かれ、彼女にパンを投票する人が増えるのでは無いだろうか?(公式ホームページの企画) 他にネリスがおカネ大好きとか、アミルが暴力野郎というイヤ設定がお目見えし、結果エアリィの株が上昇しているのでは無いかと思われる。

 ただリックが見ているのを知った上で、エアリィは少女にあんな優しい態度を取っているのではないかと、汚れた大人の目線で見てしまう自分が居たんだが……。

 あとエルフの気難し屋のアルヴィン、デレるの早すぎ(笑)。まさかあれほど頑なだった彼が、2話目でもうデレるとは思わなかった。あの皮肉めいた言い方でごまかせていると思っているのだろうか? 余計に王道やっちゅうねん。


 次回はこの島に大型船がやって来る。どうやらようやく「敵」という概念の存在がやって来るらしい。リックも剣を持って戦うシーンが描かれていた。その敵に見つからないように、島中の明かりを消すという展開で、次回タイトル「灯火管制」もそこから来ているようだ。戦っているということは、見つかってしまったんだろうけどね。今回のラストに漂着していた人物の正体も気になる。



 次回「灯火管制」に続く。



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