震災が浮き彫りにした原子力発電の問題

 東北地方太平洋沖地震東日本大震災)は、直接被災された方々の生活そのものをも破壊し、多数の犠牲者を出しました。死者は2万7千人を越え、復旧が進むにつれ、その数もさらに増える事になりそうです。亡くなられた方々には、改めて哀悼の意を表するとともに、被災された方々の1日も早い平穏な日常への復帰に、物心の両面で協力したいという気持ちを持って日々を送ろうと思います。


 また震災は被災地のみならず、日本全体にあった原子力発電という問題をも浮き彫りにしました。

 福島第1原子力発電所放射能漏れ事故に於いては、国内にある55基の原発すべてを見直し、将来的に建設中、計画中の14基も延期、再稼働停止などが考慮されているそうです。

 九州電力では、再稼働予定であった玄海原発2号機、3号機の再稼働を延期すると発表しました。これにより、本来は震災の影響を受けなかったはずの西日本でも夏場は計画停電の可能性が高まっています。電力を必要とする工場などは西日本に拠点を移す予定であったと言う事でしたが、これで西日本も難しくなる事になります。工場が国外に一度拠点を移せば、再び国内に戻って来る可能性は少なく、国内産業の一層の空洞化が心配されるという事態にまで発展しそうです。


 福島第1原発放射能漏れ事故が大変な事故であったことは間違いなく、慎重な姿勢が望まれる事はもちろんですが、福島第1原発以外の東北地方の原発は震災の際、安全に停止しました。これは日本の原発技術の高さを証明するものであると思います。

 そして福島第1原発に関しては、天災だけが原因とは言い切れない余地があります。政府、管首相及び東京電力の初動の遅れ、つまり人災の疑いが指摘されているのです。震災後、管首相は何ができる訳でもないのにヘリコプターで福島第1原発に向かう政治パフォーマンスと揶揄される行為で現場を混乱させ、さらには初動を遅らせる事態を招きました。そしてその後の事態の悪化には、「原発の爆発の説明が遅れた理由は東京電力の報告が遅れたから」と、責任をひたすら東京電力に転嫁しました。

産経新聞3月13日より引用

 12日朝、首相は原発視察に先立ち、記者団に「現地で責任者ときっちりと話をして、状況を把握したい。必要な判断は場合によっては現地で行うかもしれない」と意気込みを語った。

 政府関係者によると視察は首相が突然言いだした。枝野氏も12日未明の会見で「陣頭指揮を執らねばならないという強い思いが首相にあった」と説明した。

 しかし、現場はすでに放射性物質の一部放出をしなければならない事態に陥っていた。そこに首相がヘリコプターから降り立ったため、現場担当者も首相の対応に追われた。

 退避指示も当初「風向きなどを考えて」として3キロから始まり10キロ、20キロと範囲を広げた。枝野氏は「専門家が詳細な分析をしているので、周辺住民は落ち着いて対応してほしい」と言いながら、退避指示の拡大などのメディアへの情報提供が遅いことには「間違いのない情報を伝えないといけないから」と強弁した。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110312/dst11031223220294-n2.htm


2ちゃんねる電力板より引用

194 :名無電力14001:2011/03/12(土) 10:11:56.71
管が来る、とか言い出さなきゃ東電は午前4時だろうが申請して避難させて弁開けただろうよ。
結果、開けてないのに漏れる=破損という事態を6時に招いた。


10分間隔で公表していた放射量測定値を午前5時10分で


管首相が6時に原発視察を発表
      ↓
圧力弁開放を中止、東京に帰るまで待機。
      ↓
首相視察後圧力弁開放するも間に合わず、炉心溶融始まる


時事ドットコム3月13日より引用

「東電の報告遅れた」=福島原発の爆発−菅首相
 菅直人首相は13日午後、首相官邸社民党福島瑞穂党首と会談し、福島第1原発1号機の12日の爆発の説明が遅れた理由について東京電力の報告が遅れた」と述べた。同党の重野安正幹事長が記者団に明らかにした。(2011/03/13-17:46)

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201103/2011031300237



 原発に詳しい」と豪語しながら、有識者に「臨界ってなんだ?」と尋ねていた菅首相。この2語が同一人物の口から語られた事を矛盾なく説明する事は不可能。


          
              それはひょっとしてギャグで言っているのか!?


 不謹慎のそしりは免れないでしょうが、これがギャグであってくれた方がどれだけマシであった事でしょう。これが現在の日本の最高責任者、菅首相の本気であり全力であり、限界だから憂うべき事なのです。


 国家の最高責任者に責任を押し付けられた東電側ですが、彼らの責任も重大です。福島第1原発は停止はしたものの、冷却水供給システムが発動しなかったのは発電所を管理していた東電側の責任です。40年という長期に渡って稼働させていた福島第1原発に対する適切なメンテナンス、改良を施してきたのかという部分にも疑問が残ります。

 また3月24日に復旧作業中に被曝したエンジニア(作業員)3名の方は、実は東電の社員ではなく、その下請けの社員の方でした。東電は最も危険な作業に自らが出向くのではなく、その下請けの社員を送り込んでいました。しかも考えられない杜撰なレベルの指導のもとに。

スポニチ3月25日より引用

作業員被ばくに自衛隊怒り 東電を猛批判

東日本大震災

 東電関連会社の作業員が被ばく、負傷する事故が起こったことに対し、同じ3号機で放水活動を続けてきた自衛隊の幹部らからは東電の安全管理を危ぐする声が上がった。陸上自衛隊幹部は「同じ復旧を目指す立場として、作業員が負傷したことには心が痛む」と顔をしかめた。水に漬かりながらケーブル敷設作業をしていたことに、海上自衛隊幹部は「そんなやり方を誰が認めたのか。東電の指示、監督はどうなっているのか」と憤った。

http://www.sponichi.co.jp/society/news/2011/03/25/kiji/K20110325000495080.html

 怒っているのが、彼らと同様に危険な作業に従事している自衛隊員という点が印象的です。東電社員はこの間何をやっていたのでしょう。全員が、という訳ではありませんが、こういう人がいました。


東電社員「東電を非難するのは構わないが、自分たちが被害者だといった考えはやめろ」「贅沢な生活をしていることを今一度再認識しろ」


 上記文は意訳ですが、こう読めるような内容のブログを挙げていた様です(批判が高まり、現在は削除している様です。ただ魚拓を取られているので、確認は可能です。ココ)。

 こういった意見を発する東電社員がいる一方で、現地では東京電力の現地社員の方が頑張っているという情報もあります。


朝日新聞3月18日より引用

福島第1原発で作業にあたる人々が、欧米メディアやネット上で「フクシマ50」と呼ばれている。

米紙ニューヨーク・タイムズ電子版が15日、「顔の見えない無名の作業員が50人残っている」とする記事を東京発で載せた。米ABCテレビも「福島の英雄50人――自発的に多大な危険を冒して残った原発作業員」と報道。オバマ米大統領は17日の声明で「日本の作業員らの英雄的な努力」とたたえた。

最前線で危険な作業を担うのは、東京電力のほか、東電工業、東電環境エンジニアリングといった子会社、原子炉を製造した東芝日立製作所などメーカーの社員たちだ。

http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103180477.html

 安全な地にいながらブログでズレた発言をする行為が、どれだけ頑張っている同胞の地位を貶めているのかを自覚する必要があるのではないでしょうか?


 原発問題に関しては慎重な議論が必要というのが当方の認識ではありますが、それを管理、管轄する側がこの様な態度では、原発の信用性が揺らぐのも無理もない気がします。こんな政府、こんな企業が日本の、ひいては世界の破滅に繋がる危険物を取り扱っているという現実を、今回の震災は浮き彫りにしました。

 原発行政を続けるのか? 廃止するとすれば、国内電力の3割を発電してきた原発に代わる代替策は何にするのか? 今後のエネルギー政策に対して、また危機管理に関して、日本人は大きな課題を突き付けられたと言えるでしょう。


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