『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』第1話「ル・クールへようこそ」の感想

 散々迷った末、新しいアニメ感想文は『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』で行くことに決めた。今回はその第1話「ル・クールへようこそ」の感想だ。


 唐突な開始なので、ちょっと説明しておく。感想文をこの作品にしたのは、個人的に観てて楽しかったのと、絵がキレイ、声優が豪華、そしてゲームが原作になっているという4点が理由。あああと追加で、パンが美味しそうだったこと(笑)。私は朝はご飯派なんだけど、パンがやたら美味しそうだった。パン好きの人は十分に観る価値アリな作品だ。

 『ペルソナ4』の時は始まる半年前からずっと心待ちにしていた訳で、感想を書くことになったのも深く考えるまでもない当然のことだったのだけど、今回は直前まで何を書くかが決まらず大変だった。他にもいろいろ候補はあり、諦めるには惜しい作品もあったのだけど、週に3本以上この密度で感想を書くのは無理と判断した。残念だった。それだけに選んだ本作には面白い展開になって欲しいなぁ。次回からは新作アニメの予習も欠かさないようにしたい。


【参照記事】


 鬱蒼と茂る深い森の中、一本の巨木を背景に言葉が響く。少女のような声の主の姿は見えないが、その訴える痛切なまでの思いは聴く者の心の中まで伝わってくるかのようだ。


「どうして憎しみ合うの?」


 人の行為を悲しみ嘆くかのようなその言葉。巨木の前の湖には、何かを象徴するかのような赤い月が映し出されていた。


 その物語の舞台は「ウィンダリア島」


 まだ未明の島の海岸線を、3人の人影がどこかへと向かう。どうやら全員女性のようだ。島の砂浜に置かれた帆船、その中の居住空間に歩を進める3人。そこにはベッドで眠るひとりの男性がいた。

 その男性とは知己なのだろう、ベッドの上に乗っかるという大胆な態度でその寝姿を観察する3人の女性。彼女たちの目的は、その男性を目覚めさせることだった。


「起きてぇ〜!リック!!!」

 右からエアリィ(CV:三上枝織)、ネリス(CV:相沢舞)、アミル(CV:伊藤かな恵)。


 リックと呼ばれた青年(CV:神谷浩史)は、眠そうにしながらも女の子たちの名前を順番に呼ぶ。と呼ばれた3人は、同時に早く目覚めた喜びを分かち合い、ついでにリックのことも起こしに来たらしい。

 着替えを促し、まだ足取りがおぼつかないリックを引っ張り、どこかへと急かせる3人。美女3人が世話を焼くというなんとなくハーレム展開の情勢に、夢うつつのリックはまんざらでもなさそう。

 未明の夜、その4人を空から見つめる月はやはり赤かった。何か緊張した面持ちでその月を見つめる老婆の姿が。この月には何か意味があるのだろうか?



 4人の行き先、それは彼らが仕事場兼(リック以外の)住居としているパン屋「ル・クール」だった。なるほど、だから朝早くから動き出さないといけなかった訳だ。

 かまどに火を炊き、パンの生地をこねるリックを尻目に、3人娘たちは眠りに付こうとする。リックを働かせておいて自分たちは二度寝とはよいご身分だが、これはいつものスタイルらしく、リックも不平一つ言わずに彼女たちを寝室に見送る。定時が来れば起こしてくれるようリックに告げ、アミルは笑顔でプライベートスペースへと続く扉を閉じる。

 リックは働き者らしい。ひとりでパンを作る工程を淡々とこなす。そして太陽が上り、外が明るくなった頃、先ほどとは逆に、ベルを鳴らして3人娘を目覚めさせる。

 このパン工房は街でも評判らしく、開店前から多くの人が列を作って待っていた。開店時刻となったのだろう、3人娘が恭しくドアを開けて、客を店内に導く。焼きたてのパンの匂いはこの世でも有数の幸せの匂いだろう。客もまずその匂いを満喫する。

 盛況な店内だったが、「ル・クール」は訪問販売もするらしい。エアリィがバスケット一杯にパンを詰め、出かけていく。



 評判のパンは人気を博し、昼を待つことなくあっという間に売り切れてしまう。その売れ行きも満足だが、それ以上にリックの作るパンの評判が高いということにアミルとネリスは嬉しそうだ。そこに帰ってきたエアリィの持つバスケットも空っぽだった。完売状態を喜ぶ3人だったが、そこで慢心せずにこれ以上に精進することを自戒する。リックは果たして自惚れるということがあるのだろうかと語り合い、そして見てみたいと笑い合う。つまり逆を返せばリックはそういった慢心を外に見せない謙虚な性格だということが窺い知れる。


 そこに工房の方の仕事を終えて、そのリックが出てくる。3人娘はバターを受け取りに牧場に出かけるという。働き者のリックもその道程に付き合うこととなる。お昼の弁当を用意するまでの間、パン工房の屋上で待つリック。彼の眺める海岸線には、物見櫓っぽい建築物、そしてその向こうには彼が住居とする帆船が見えた。その帆船には彼の過去と何か関係があるらしい。想いに浸るリックの表情は沈んだもので、その過去が彼にとって、決して快いものでは無いことを暗示していた。


 「マデラのパン屋」を訪れる4人。マデラ(CV:江森浩子)とはリックのパン職人としての師匠で、今朝赤い月を観て憂慮の表情を浮かべていた老婆だった。マデラから馬車を借りた4人は、村を出発する前に教会に寄ることにする。


 教会の子供たち(おそらく孤児)に、リックお手製のパンを渡す。子供たちの顔が一斉に喜色に染まる。ここでも彼のパンは人気の的なのだろう。お礼の言葉を受け、エアリィたちも嬉しそうだ。エアリィはシスターっぽい格好をしているから、もしかしたらこの教会の関係者なのかもしれない。

 教会は雨漏りを防ぐために改修中だった。神父(CV:荒井聡太)が言うには、最近大口の寄付があったそうだ。そしてパンを無償で提供してくれるリックたちにも感謝の言葉を忘れない神父。だがエアリィがパン作りに入れ込み過ぎて、最近はお祈りがおろそかになっているとちょっと皮肉めいた口調で咎める。やはりエアリィは本来は教会関係者なのかな?

 神父と子供たちの感謝の挨拶を受けながら、4人は馬車で去っていく。その先でちょっと変わった人物が馬車の横を通り過ぎる。



 猫耳に猫しっぽ、チャイナ服に春麗のような頭のボンボリという、何やら狙い過ぎの萌え属性を持ったキャラ。


 案の定、その立ち過ぎたキャラに興味を惹かれた感のあるリックが彼女が誰なのかを気にする。エアリィが彼女を見知っていた。彼女は骨董屋で働くシャオメイ(CV:斎藤千和)。彼女もリックのパンのファンだという。その場は一言の会話もなく別れたが、また会う時が来るのだろう。伏線ぽいし。



 いよいよ街を出発する一行。夜までには戻ったほうが良いと警備の兵士に忠告を受ける。街を一歩出ると、やはり物騒な空間なのだろう。RPGの世界観ぽくなってきた。

 目的地はそう遠くはなく、急ぎの旅程でもないのだろう。一行は途中の滝で水を汲みがてら、水遊びに興じる。



 アミル。

 ネリス。

 エアリィ。


 サービスカット的なキャッキャウフフを満喫する3人娘たち。その後はその場でランチタイム。リックのパンにジャムを塗り、ハムやレタスを挟んで食べる。とても美味しそうで、深夜にこのシーンを見せるのはハッキリ言って反則だ。


 そして目的地の牧場へ。バターを受け取り、代金の追加という感じでパンを渡す。街に出かけられない牧場主・サミィ(CV:藤東知夏)は大変喜ぶ。街以外でもリックのパンは評判なのだ。褒められたことに気づかないリックを肘鉄で促しつつ、アミルたちはその鈍感さを笑い出す。パン作りは一流の腕前だが、それ以外はあまり冴えない印象のリック。

 帰り道、マデラから頼まれた砂糖露草(さとうつゆくさ)が足りないことに気づくアミル。日暮れに間に合うよう気をつけつつ、一行は自生地に足を伸ばすことにする。ただそこは彼ら人間にとっては禁忌の「エルフの森」の近くらしい。エアリィがネリスに心配を告げるが、ネリスは大丈夫だと取り合わない。

 馬車から降りて徒歩で目的地に向かう一行。大木の下に大量に自生する砂糖露草を見つけ、みんなで摘み始める。位置を変えようとしたアミルは、木の裏側で倒れている小さな精霊(シルフ CV:斎藤千和)を発見する。

 怖がる精霊に優しく声をかけて近寄ったアミルは、持っていたパンをちぎって与える。



 すると精霊はすごい勢いでパンを食べ始める。倒れていたのは、どうやらお腹が減っていたのが原因らしい。リックのパンが美味しいから急いで食べていると言うアミルに同意するかのように一声鳴く精霊。

 その微笑ましい情景を、木の陰から誰かが見ていた。


 精霊をその場に置いていくわけにもいかず、精霊の住処である「エルフの森」まで連れて行ってあげようと、リックは提案する。人間にとっては禁忌の森だが、この場合はやむを得ない。エルフの側も事を荒立てたりはしないだろうと判断し、精霊を運ぶことにする。

 ただ森の奥深くだ。獣に出会する可能性もない訳ではない。本来の目的が近場のお使いだったため、ちゃんとした対獣用の武器を持ってこなかったことをネリスは悔やむ。

 そんな緊張が高まる中、一陣の風が一行を襲う。警戒する一行だったが、そこに現れたのは、精霊の主人であるエルフの男だった。エルフは厳しい目付きで精霊を渡すようリックに告げ、早く立ち去るよう要請する。



 出し抜けに敵対心を露わに無礼ともいえる要求をするエルフに対し、やや言葉を失っていたリックだったが、ここに来た目的は精霊をエルフに返すことなのは変わりない訳で、素直にその言葉に従うことを告げる。

 そして「シルフのため」と方便を言いながら、パンを精霊と同時に地面に置く。エルフがこの好意を受け取って欲しいと望んでのことだ。だがエルフはパンの紙袋には目もくれず、精霊を抱き上げて行ってしまおうとする。

 リックのパンを「精霊の餌」扱いしたエルフに、アミルが怒って抗議する。森の中でエルフを怒らせるとどうなるか分からないというのに度胸がある。リックのパンを侮辱されたことが許せなかったのだろう。

 だがエルフはすげなくあしらう。パンを置いたのはリックの勝手であり、それを受けるかどうかはこちらの決定事項だと言い放つ。そして感情的になる人間の思慮を嘲るかの物言いを残し、霧の中に姿を消していく。

 まだ怒りの矛が収まらないアミル。リックにも諭されて、今度はリックに怒り出す。本人以上にリックのパンが侮辱されたのが悔しかったのだ。リックを置いて先に帰路を歩き出してしまう。その後を追いながら、アミルのフォローをするネリス。だがその気持ちはリックにも痛いほど伝わっていた。


 前を行くアミルが大木の前に差し掛かった時、頭上から一人の女性が降りてきた。



 よく見ると、彼女の耳も尖っている。これはエルフの特徴だ。さっきの男性エルフと違ってとてもフレンドリーな口調の彼女は、さっきのエルフを兄と呼ぶ。彼女は精霊を助けた時に木陰から彼らの様子を窺っていた人影の正体だった。リックたちが悪い人間ではないと観察していたという彼女、立ち去ろうとするリックを呼び止め、荷物になるならパンを置いていっても良いと言い出す。だがその直後に彼女のお腹が鳴る。空腹をごまかしていたのだ。

 エルフらしくないその態度に一行の緊張も解ける。女エルフも素直に、リックのパンを食べたいと告白する。またお腹を鳴らす彼女に、リックたちはこれまで見せてきた当然の行為を行う。

 パンを受け取り、その匂いを胸一杯に吸い込むエルフ。リックのパンを、マデラのパンとは少し違うと表現する。彼女はマデラを知っていたのだ。長命なエルフのことだ、マデラの若き日の頃からの知り合いなのかもしれない。

 次の機会には、焼きたてのもっと美味しい状態のパンを届けてあげると約束する一行。大喜びのエルフだったが、森に近づき過ぎると兄エルフの逆鱗に触れるかもしれない。森の外れであるこの木の下に届けて欲しいと告げるエルフ。兄はこの森の守人の長という立場上、厳しく接せざるを得ないのだと釈明する。

 そしてラナ(CV:広橋涼)と自らの名前を告げる。兄の名はアルヴィン (CV:神谷浩史)。以後よろしくと、明るい笑顔で語る。日がだいぶ傾いてきていた。街への帰路を急がなくてはならない。またパンを持って訪問することを約し、一行はラナと別れる。

 楽しい友人を得た訳だが、その姿を崖の上から、アルヴィン がじっと見つめていた。その表情に険はなく、妹の行動を黙認するようだ。守人の長の役割のため、さっきは冷たくリックに当たっていたが、本当のところはラナの言っていた通り、悪いエルフではないのだろう。そして彼は一転険しい表情で夕日に染まる空を見やる。


 そして夜、街に帰り着いたリックたちは、お使いの報告のため、マデラの家を訪れていた。エルフの森を訪れたという話を聞き、マデラは一行を労わる。リックのパンを受け取ったと聞いたマデラは驚くが、そのエルフがアルヴィン ではなくラナだったと聞いて納得したようだ。マデラはラナだけでなく、アルヴィンとも面識があるようだ。アルヴィンの気難しさをよく知っているのはそのせいだろう。

 アルヴィンが自分たちと目を合わせず、空ばかり見ていたとリックは言う。アルヴィンが何かに気づいていると合点するマデラだった。空には月、それも赤い月が浮かんでいたはずだ。


 一方、エルフの森のアルヴィンの自宅。ラナが無邪気に精霊にパンを食べさせながらリックたちのことを兄に語る。だがアルヴィンは空を見つめ、またも険しい表情だ。


 アルヴィン「この島に嵐が来る」


 いつもより大きな嵐が来るとだけ告げ、アルヴィンは明日に備えて早く寝るよう、妹に命じる。唐突な兄の言葉の理由が分からず、ラナはやや動揺の表情を浮かべる。

 夜の森の上空に浮かぶ赤い月を見つめ、ラナは兄の言葉の意味を探る。だが分からなかったのだろう、彼女は街のマデラの元を訪れる。ラナの訪問を、事前に分かっていたかのように迎え入れるマデラ。

 月明かりだけの室内でマデラは語り始める。赤い月がこの地に何かをもたらすらしい。そんなことを露ほども知らないエアリィ、ネリス、アミルはパン工房で眠りに着いていた。そして帆船ではリックが。それらを見下ろすように、赤い月は静かに地上を照らし続けていた。冒頭の、誰のものか分からない少女の声がまた響く。


 「もう疲れたよ、もう何も見たくない……」



 次回に続く。



 エンディング

 オープニング・エンディングテーマ曲はヒロイン3人娘が歌う。



 第1回はキャラクター紹介的な感じ。原作を全く知らないから、どういう展開になるのかも全く分からない。『ペルソナ4』の時とは違う感触だ。果たしてこのままパン屋のお話が続くのか? それとも冒険活劇モノになっていくのか? 全部で何話になるのかも実は調べていない。1クールだと12話ぐらい、2クールだと24〜25話ぐらいかな。

 豪華声優が目を引いた本作、今後も大物声優さんが登場するらしい(なぜかこんな情報は知っている)。主人公のリックとエルフの守人のアルヴィンの声優を敢えて同じ神谷浩史さんに演じさせているのは、何か理由があるのだろうか?


 『ペルソナ4』と違い、この作品の感想を書こうと前々から思っていた訳ではないので、この感想が最後まで上手くいくのかどうかも分からない。ただ今後も観に来て下さると嬉しく思う。


 あと、何度も言うけど私は本作は本当に未知の世界なので、間違えがあった場合、優しく、本当に優しく指摘してくださると助かります。間違っても『ペルソナ』の時のような容赦ないツッコミは禁止の方向でお願いします。



 次回「嵐の日」に続く。



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