『イナズマイレブンGOギャラクシー』第33話「限りある時間!永遠の友情!!」の感想 【極めて形而上的な死生観とおバカ兄弟が噛み合わねぇ】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第33話「限りある時間!永遠の友情!!」を観ての感想を書く。哺乳類が進化した地球人とはまったく違った概念で生というものを感じる種族がいた。生きるという意味を考えることは死ぬという意味を考えることと表裏の関係であり、それは実は同義である。極めて哲学的な命題になりそうだが、今回はそんなお話。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第32話「緑の惑星ラトニーク!」の感想 【さくら、真名部がソウル覚醒!】
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 星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の本戦4回戦のため【惑星ラトニーク】を訪れた松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】は、そこで虫が進化した形態のラトニーク人たちから思わぬ歓迎を受ける。


 大自然の緑濃きラトニークの住人たちは、例え星を奪い合うというグランドセレスタ・ギャラクシー本来の概念があったとしてもそのようなことに関係なく外部からの客人には礼儀を持って迎えるらしい。それは彼らにとって危険な植物であるマドワシソウを絶滅させずに棲み分けていることからも察せられる彼らの優しい気質から来るものであった。

 そこで出会ったチーム・ラトニークの選手、バンダ・コローギュ(CV:金野潤)はそんなラトニーク人の中にあっても特にその傾向が強い、好奇心あふれる少年だった。サッカーが好きな同士には国境どころか惑星という垣根すら障壁とはならない。意気投合した天馬たちとバンダはマドワシソウの妨害を受けつつも楽しいひと時を過ごした。



 一夜明け、清々(すがすが)しい朝を迎えた天馬はステーション前にまで広がる森林のマイナスイオンを吸収するかのように大きく伸びをする。そこに同じく早起きした空野葵(CV:北原沙弥香)がやって来て、おいしい空気を分かち合う。


葵「良いよね〜緑って。命を感じるっていうかさ!」
天馬「ああ!」



 同じ頃、九坂隆二(CV:岡林史泰)は昨日襲われたマドワシソウの残骸(ざんがい)の前にいた。バンダが救ってくれなければ今頃九坂はこの場に生きてはいない。

 さらに同じようにピンチに陥ったはずの野咲さくら(CV:遠藤綾)と真名部陣一郎(CV:野島裕史)は彼らの潜在能力のソウルの力を発動させてピンチを脱したのに、自身はそれが出来なかったことを悔しがる。



九坂「どうして俺にはソウルが出せないんだ!?」


 他者に出遅れた気持ちの九坂は、能力が劣っているのではないかと考える。九坂の惚(ほ)れてる森村好葉(CV:悠木碧)はとっくにソウルを出しているしね(時系列的にはメンバー中2番目にソウルパワーに目覚めている)。惚れた男の立場的にそれはつらいかも。



   オープニング


 今回から新オープニングだ。オープニングの変化の際は描かれるサブストーリーキャラに注目。ストーリー展開的に30話を超え、新たな敵、もしくは真の敵が描かれる可能性が高まるわけで、そこにビットウェイ・オズロック(CV:津田健次郎)が登場するのは極めて象徴的と言えよう。前作イナクロでもSARU(CV:岡本信彦)が真の敵として出てたしね。




 一瞬だけ現れたのは懐かしのマネと雷門イレブンの面々。もしかして彼らも登場するのだろうか? 18万8千光年先の銀河に物理的に来れるとは思えないのだけど……。【ギャラクシーノーツ】号のような乗り物がまだ残っているなら何とか……。



 オズロックが率いるチームっぽい。ちなみに今回のオープニングテーマ曲「スパノバ!」もおなじみの“T-Pistonz+KMC”がボーカル担当だ。



 ギャラクシーノーツ号の前に集結したアースイレブンのメンバーは、そこでバンダからある提案を受ける。何と合同で練習しようと言い出したのだ。これから真剣勝負をする相手、しかもお互いの棲む惑星の運命をかけてという一大勝負を前にして、手の内を晒(さら)し合うような合同練習などおよそ考えられない。ワールドカップで敵チーム同士が一緒に練習するシーンなどあり得ないことを思えばこの提案が無茶だということも理解できるだろう。

 だがこの提案を持って来たバンダは相変わらずまったくの屈託(くったく)がない。監督も了解済みの話だとして誘いをかけてくる。ここまで友好的にされるとさしもの鉄角真(CV:泰勇気)や皆帆和人(CV:代永翼)といえども何か裏があるのではないかと懐疑的(かいぎてき)になる。

 敵の戦力を分析したい真名部陣一郎(CV:野島裕史)はその意見に乗るべきだと語る。真名部が覚えたてのソウルの力を使いたいだけだと瞬木隼人(CV:石川界人)に混ぜっかえされ、あわてて否定する真名部だが、どうやら瞬木の指摘は的(まと)を射(い)ていたらしい。



 日頃の冷静さを欠いてあわてて釈明する真名部と、それを見透かした笑みを浮かべる瞬木の対比が面白い。


 2人の掛け合いはチームに笑いをもたらし、気分の軟化を喚起する。



 だが笑う九坂の横顔に、何か隠しきれない悩みを感じた好葉は心配そうにその横顔を見つめる。好葉は剣偽(CV:大原崇)が剣城京介(CV:大原崇)のニセモノだと疑った時もその観察力の鋭敏(えいびん)さを見せたが、今回もその眼力の鋭さを見せる。


 何にせよ、軟化したメンバーはバンダの誘いを受けることとなった。彼の案内でゴンドラに乗って移動することになる。


 風光明媚(ふうこうめいび)な景色の中をゴンドラで移動という話に、女の子の野咲さくら(CV:遠藤綾)が喜ぶ。乗り込んだメンバーが見て驚いたのは、ゴンドラのロープを掴むのが大きなイモムシであることだった。

 しっかり掴まってというバンダの言葉に従い、天馬たちは備え付けのシートベルト(?)状の蔦(つた)を身体に結びつける。

 イモムシが少し進んだ先は急勾配(きゅうこうばい)の下り坂だった。そこからは下りのロープを滑って猛烈な勢いでゴンドラは進む。ジェットコースターに乗っているかのようなスピードとスリルに地球人たちは歓声(悲鳴)を上げる。



 中でも一番はしゃいでいたのが意外なことに日頃は大人っぽい市川座名九郎(CV:小西克幸)であった。この屈託のない笑顔……。スピード感に対するあこがれが子孫に受け継がれたのだろうか?


 終点に到着し、実は怖かったらしい天馬は大きくため息をつく。逆にさくらや好葉といった女子陣はこの旅程(りょてい)を大いに楽しんでいたようだ。



 真名部と皆帆はお互いが悲鳴を上げていたことを指摘し合うが、その横で未だにはしゃいでいる座名九郎の姿に毒気を抜かれてしまう。座名九郎も皆帆の呆れたような視線を感じて気まずい様子で体裁を取り繕(つくろ)う。みんな子供だなぁと思わされる微笑ましいシーン。



 ジェットコースター状態を女子陣や座名九郎のように無邪気に喜べない面子もいた。顔にタテ線が入った状態の鉄角は珍しく井吹宗正(CV:鈴木達央)に心配される。天馬や鉄角、まなみなといった連中は絶叫マシンが苦手なタイプと言えそう。特に鉄角は三半規管(さんはんきかん)がダメっぽい。



 そこから大木の上にある道を歩いて、一行は目的地である森の中のサッカーグラウンドに到着する。

 そこではチーム・ラトニークのメンバーがすでに練習を開始していた。8番MF、コメツキムシのコメッキー・ショリョウ(CV:不明)からパスを送られた5番MF、カマキリのティス・カーマ(CV:悠木碧)がトラップ出来ずにボールを後ろにそらしてしまう。

 ちなみにだが今回もラトニークの選手たちは名前からどの昆虫がモチーフになっているのかが分かる仕様になっている(カマキリは英語でマンティス(Mantis))。


 ラトニークの選手がサッカーをしている姿を見て鉄角も元気が出て来る。乗り物酔いの後遺症は窺えない(笑)。パスを受けるコメッキーが人間離れしたジャンプ力を見せ、天馬たちを驚かせる。さすがはビンビン跳ねるコメツキムシの進化系だけあってそのジャンプ力は素晴らしい。


鉄角「見たか今のジャンプ!?」
天馬「ああ、高さだけじゃなくてスピードもあるね!」


 そして彼らの確実なボールコントロールの足さばきに注目するのは、神童拓人(CV:斎賀みつき)だった。さっきのジェットコースター降りた時の反応が見たかった神童さん。

 その身体能力、ボールをキープする能力など、どこを取ってもチーム・ラトニークがここまで勝ち上がって来たにふさわしい実力を感じさせた。次の戦いは手ごわいものとなると神童は確信を持って予測する。

 コメッキーから再びティスにパスが送られる。今度はそれを上手くトラップしたティスは笑顔を見せる。だがしかし、まるで指導していたティスの成長を見届けたかのようにコメッキーがゆっくりとフィールドに倒れこむ。


 コメッキーは倒れたまま動かない。天馬たちは心配して見つめるが、バンダがこの現象に対してまたも信じられないような言葉を告げる。


バンダ「寿命だよ」


 笑顔でそう告げるバンダの言葉の意味がにわかに理解できないのは、地球人のメンタリティーとしては至極当然だろう。徐々にその言葉の意味を理解した九坂は驚く。


九坂「寿命って……死んだってことか!?」


 バンダは事も無げにそれを肯定する。今サッカーをしていた最中(さなか)での死、である。しかも仲間の死に対してまったく動じようとしないバンダの態度に、九坂はもどかしげに再度尋ねる。むろんバンダの返答は変わらない。

 寿命といえば、地球人基準としては相当に年齢が行ってしまった老人のそれであり、倒れた選手(コメッキー)がそんなに老けているようにはどう見ても思えない。


バンダ「彼の寿命は、君たちの星の時間の長さで言えば1ヶ月だから」


 またも事も無げにものすごいセリフを吐くバンダ。しかもそれはコメッキーだけではない。この星の人間はみんな、地球人と比較するとものすごくその寿命が短いというのだ。彼らの寿命は平均して1ヶ月で、長い者でも1年の命という。早いものではわずか1週間でその命は尽きる……。

 地球人とはまったく別の時間軸でその生命を育(はぐく)み、人生を謳歌(おうか)し、そして死んでいく……それがラトニーク人なのだった。

 そんな短い人生では悲しすぎると地球人のさくらたちは同情するが、バンダはまったく悲しくないと言い切る。

 虫が進化した種族であるラトニーク人は、その運命を当然のものとして受け入れている。そう考えると彼らがマドワシソウという天敵の生命をも大事にしたり、自分たちの棲む惑星を賭けているというプレッシャーからも無縁の立場でいられることも理解できる。彼らは地球人とは考え方の根本からして違っているのだ。


 それでも悲しくかわいそうだと言うさくらに対し、バンダはコメッキーがそのサッカーの技術をティスに受け継ぐことが出来たという点を挙げ、コメッキーは役目を果たしたのだと語る。


 そう言われて運ばれて行くコメッキーの死体を見る天馬たち。その顔は何かをやり遂げたという満足感のあふれる表情であり、決して短い人生を悲観している者のそれでは無かった。



「僕たちはそうやって確実に次の世代へと技術を伝えて行くんだ!」


 そう言うバンダの表情にも、短い人生を恨むような素振りは見受けられない。九坂は何気なく肩をさすりながらその言葉を聞いていた。目ざとくその様子に気づいたバンダが確認する。九坂の肩は青黒く変色していた。

 それがマドワシソウからかけられた消化液の影響だとバンダは説明する。放置すると毒が全身に回ってしまうというから恐ろしい。

 ただ今から処置すれば大丈夫だというバンダの言葉が皆を安心させる。九坂のことは任せて欲しいとバンダは語り、他のメンバーは後を託して本来の目的である練習の方に向かう。



 場面はちょっと飛んで練習後。森に設けられたテーブルについて九坂の帰りを待つアースイレブンメンバーたち。西園信助(CV:戸松遥)が合同練習の感想について複雑な心境を語る。井吹もそれに同意し、彼らの寿命がそれぞれもうすぐなのだと心で思ってしまうことが不可避だったと鎮痛な面持ちで語る。

 地球人とは感覚が違うとはいえ、もうすぐ死んでしまうような連中と時間をともにしていると思うと、それだけで気持ちが落ち込んでしまうのは無理もない。

 鉄角が回想する彼らは、すぐ先にある「死」という概念をまるで感じさせないように満面の笑顔でサッカーに興(きょう)じていた。その姿がなおさら地球人たちを困惑させ、動揺させるのだった。



 昆虫の姿を多く残している他のメンバーと違い、比較的人間に近い姿をした13番FW、蜂(はち)のホネット・ハーチャ(CV:不明)ちゃん。これは可愛い。美男美女揃いだったサザナーラ人と比較しても負けてない。でもこんな彼女も寿命は1年以内で尽きてしまうんだよね……。ちなみにスズメバチは英語でホーネット(Hornet)。ミツバチはビー(Bee)。


 真名部はバンダの言っていた「時間の流れが違う」という言葉をそのまま受け取れば良いと努めて論理的に考え、感傷的になって安直にラトニーク人に同情することを愚行(ぐこう)だと両断する。

 何百年も生きられる宇宙人から見れば、80年ほどしか生きられない我々地球人だって同じように見られることもあり得ると語る真名部の意見は正論だ。

 だが理屈ではそんなこと、みんな理解しているのだ。それでも抑えきれないある種の感慨、それが彼らの闘争心をスポイルしていた。どうにもならないその感慨がもどかしい思いの鉄角はしたり顔で理論を語る真名部を怒鳴りつける。

 さくらは寿命という概念を知るまでは楽しい星だと思っていたと深くため息をつく。そんな中、天馬が真剣な表情で何かを考えていることに葵は気づく。葵に尋ねられた天馬は言葉を選ぶように空を見上げ、そして語り始める。


天馬「命って何なのかな……って」


 天馬は監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)から宇宙に飛び出して戦うことを聞かされた時のことを思い返す。宇宙とはどんなところなのかをその時初めて、天馬は考えることとなったのだ。

 漫然と地球を救うためだと思っていた天馬だったが、サンドリアス、サザナーラ、ガードンと他の星に棲む人々との出会いが、彼に宇宙には色んな星があるということを考える機会を与えた。

 サンドリアス人の誇り高き性格、サザナーラ人の心を読む【アズル】という驚愕すべき能力、火山だらけの過酷な環境に打ち勝とうと頑張るガードン人の存在……どれも天馬だけでなく、天馬と冒険をともにするほかのメンバーたちも経験してきたことだ。

 どの星の人たちも必死で頑張り自分たちの星を守るために戦い、その命を次代に伝えようとしていた。

 天馬はそこで笑顔になる。宇宙に来て彼が確信したこと、それはこの宇宙に無くなって良い命は一つもないということだった。そして滅んで良い星も一つもない。そのために天馬はカトラ・ペイジ(CV:上田麗奈)の教え通りに希望のカケラを集めて来たのだ。

 その天馬の気持ちを一番理解する神童が拳を握って言葉を続ける。そのためにグランドセレスタ・ギャラクシーに優勝してカトラの元にたどり着かねばならない、と。

 ラトニーク人の地球人とは違う死生観という現実は、天馬たちにそんな思いを喚起させることとなった。この本分を見失わなければ、どんな相手だって彼らの闘争心が衰(おとろ)えることは無いだろう。




 その頃、九坂はラトニーク人の村でバンダの治療を受けていた。毒を抜き応急措置を受けた九坂は、明日には治っているとバンダに明るく告げられる。敵である九坂に対し(虫だけに)無私の気持ちで治療するバンダはやっぱりナイスガイだ。

 九坂はお礼を言うことも忘れ、聞きたかったことをバンダに尋ねる。



九坂「お前の寿命も1ヶ月しか無いのか?」
バンダ「うん、僕の寿命は明日で終わる」


 もう何度驚かされただろうか? バンダはこれも驚愕する事実を事も無げに言い放つ。九坂に明日の試合に出られる治療を施(ほどこ)したバンダ自身が明日には寿命を迎えてしまうというのだ。しかもその言葉には悲壮感はまったく無い。

 バンダは明日が最後の試合であることを本能的に悟っていた。明日のアースイレブンとの試合が彼の人生の最後の試合であり、同時に最初の試合でもあると言う。寿命の短いラトニークでは選手の入れ替わりも目まぐるしいのだろう。バンダはつい最近メンバーに加わったばかりなのだと言う。

 最短で1週間という彼らの生物的テロメアだと、メンバー入りして次の試合を迎える前に死んでしまう者もいたはずだ。つまり練習だけして試合には一度も出られないまま生涯を終えた選手も数知れない。それでもアースイレブンと同じく4回戦まで勝ち上がっているのは、さっき死んだコメッキーのように次世代にその技術を受け継ぐことに文字どおり全生命を賭けているからであろう。


 九坂は目の前のバンダが平気な顔をしていることが信じられない。だがその理由はもう説明済みだ。バンダはそれが自分たちの宿命(さだめ)だとして、従容(しょうよう)とその運命を受け入れるつもりだった。


バンダ「人生はどれだけ生きたかじゃ無い。何をしたか、だって」


 その言葉は九坂に深い感銘を与える。九坂ならずともこの言葉は深いと思えるはずだ。漫然と生きていてもそれは生きていることにならないのではないか。生きているということは、何を成したかで決まるものだという考え方に寿命の長短は関係ないだろう。

 出られる試合が一試合であっても、そこで輝くことが出来ればバンダたちラトニーク人にとっては十分に生きた証となるのだ。逆に考えれば彼らは全員が試合に命を賭けているとも言える。


バンダ「九坂くん、明日は良い試合にしようね」
九坂「ああ!」


 明日はバンダの生涯でたった一度の晴れ舞台だ。九坂もその試合を最高のものにしようという気持ちになるのも当然だろう。



 ラトニーク人の住居があるその森林内の村に、紫に光る飛行物体が到着する。それはこの地で協力者としてラトニーク人を探していた紫天王のリュゲル・バラン(CV:ランズベリー・アーサー)とガンダレス・バラン(CV:興津和幸)のバラン兄弟の宇宙船であった。



 値踏みするような視線でラトニーク居住地を見るバラン兄弟。どうやらマドワシソウに食われてしまう事態は回避できたようだ。


 マドワシソウの悪夢が未だ覚めやらない2人は先に進むことを躊躇する。しばし考えたリュゲルは名案とばかりに弟のガンダレスに、先に降りるよう命じる。



リュゲル「大丈夫だったら俺も降りる」
ガンダレス「なるほどぉ、その手があったか!」
ガンダレス「やっぱりリュゲル兄はすげえよな。頭良いよな〜」
リュゲル「言うなよガンダレス。それ以上何も言うな」


 おバカなガンダレスが生け贄(いけにえ)にされるということを理解するのはこの数秒後のことだった……。

 嫌がって暴れたガンダレスのせいで、宇宙船は停止してしまい、地表までかなりの高度を真っ逆さまに落ちてしまう。


 落下の衝撃で砂嵐状になっている正面モニターを操作した2人は、そこに映るラトニークの監督、シムール・フェロモナ(CV:根本圭子)の姿にビビる。それもマドワシソウの後遺症なのだが。


 紆余曲折(うよきょくせつ)はあれど、ようやくチーム・ラトニークと合流できたバラン兄弟。ファラム・オービアスから思惑含みでやって来た2人を、シムールをはじめとするチーム・ラトニークはアースイレブンを迎えた時と同じように歓迎する。

 思わぬ歓迎に、バラン兄弟もいささか緊張の面持ちで返答を述べる。これまでの惑星ではファラム・オービアスから送り込まれた刺客とはトラブルもあったのだが、今回に関してはそれは無さそうだ。



 かくして役者は揃った。一夜明けた試合当日。本戦4回戦がグランドセレスタ・ギャラクシー準決勝であることが実況のダクスガン・バービュー(CV:勝杏里)の口から語られる。


 ラトニークベンチ前ではリュゲルが偉そうな講釈を垂れていた。兄の口上にあこがれる弟に対し、リュゲルは自信満々にこう告げる。


リュゲル「いいかガンダレス、こういうのを『泥船に乗った気でいろ』と言うんだ!」
ガンダレス「ウオォォ〜リュゲル兄、難しいこと知ってるな!!」



神童「それを言うなら『大船に乗った気』だろう……」


 バカ同士の会話にはツッコミ役が不在だ。その役どころを今回は神童が買って出るという意外展開。前日まではいなかったバラン兄弟こそがファラム・オービアスよりの助っ人であることは間違いない。ことわざも知らないそのバカっぷりからして大したことは無さそうだと鉄角は舐めてかかる。


 そしてこのフィールドを感慨深げな表情で見つめるバンダがいた。彼にとってはこれが人生初の試合であり、人生最後の試合でもある。彼はこの試合で必ず輝いてみせることを心に誓う。それがバンダというラトニーク人がこの世に存在した証明となると言わんが如(ごと)くに。

 そのバンダを見つめるのは九坂だった。彼はバンダのためにもこの試合を最高のものにしようと思っているはずだ。



 恒例の試合前の両チームの布陣。ラトニークは2−6−1−1の超変則的なフォーメーション。10番FWリュゲルがワントップでそのすぐ後ろに弟の11番FWガンダレスが控える。ポイントゲッターはこの助っ人2人だろう。他のメンバーは1番GK、カミキリムシのロンガ・カミキュラ(CV:不明)、2番DF、カナブンのドロン・ナブーン(CV:不明)、3番DF、蛾(が)のモス・ガー(CV:不明)、4番MF、アリのアントワ・アーリィ(CV:不明)、5番MFティス、6番MF、蝶(ちょう)のパタフ・チョチョ(CV:不明)、7番MFバンダ、8番MF、バッタのホッパー・バタ(CV:不明)、9番MF、クワガタのスタッグ・クワッタ(CV:不明)。ちなみにキャプテンはこのクワガタであってバンダではない。チーム・ガードンの時同様、ピンク字は女性キャラ。


 一方のアースイレブン。4−3−3の最近よく取る攻撃的布陣。リザーブに回ったのはいつもの信助と座名九郎。信助はともかく座名九郎は剣偽よりも活躍しそうなんだけどな。ゴンドラでもはっちゃけてたし。注目はこの星でソウルに目覚めたさくらと真名部、そしてバンダと友情を深めた九坂の3人か。九坂はこの試合でソウルを覚醒させることが命の恩人であるバンダに対する返礼となるだろう。


 天馬はキャプテンとして仲間たちに檄を飛ばす。この試合に勝って先に進むことが、結果的に銀河系すべての人々を助けることになる。メンバーも大きな声でその檄に応える。



 そして試合開始のホイッスルが鳴る。これからの1時間が、地球人とラトニーク人にとっての命を賭けた戦いとなる。時間軸の違う両種族がこの時は同じサッカーという競技を行い、同じ時間を共有するのだ。


 アースイレブンのキックオフで試合開始。瞬木から天馬にパスが渡る。九坂、さくらと細かいパス回しで攻め上がるアースイレブン。

 だがキャプテン、スタッグの指示を受けたホッパーが信じられない跳躍力で飛び上がり、太陽の光に姿を消して一瞬にしてさくらの眼前に降り立ち、ボールを奪ってしまう。

 さくらが取り返そうと追いすがる中、ホッパーは逆サイドのバタフにパスを送る。瞬木が立ちはだかるが、バタフはボールを足の甲に乗せ、器用に操りながら瞬木を翻弄(ほんろう)、抜き去ってしまう。



 まさに蝶のように舞い、瞬木をかわし続けるバタフ。その妖艶かつ軽やかな動きは本当に羽が生えてヒラヒラと飛んでいるかのような錯覚を見る者に抱かせる。髪型が蝶の羽みたいだもんな。



 その身体能力の高さは戦前に神童が警戒した通りだった。バタフちゃん神童も軽く抜いてしまうところが本当にすごい。余談だが彼女、ハマーン・カーンに似てる。


 選手の活躍にシムールも満足そうに試合を見つめる。目立ちたい精神が旺盛(おうせい)なガンダレスは自分たちも目立とうと兄に提案する。だがリュゲルはあわてずにここぞというタイミングでインパクトを与えた方が目立てると、したり顔で語る。

 その考えの深さ(?)をまたも弟に褒められまくり、「皆まで言うな」とまんざらでもないリュゲルだった。


 ボールは大活躍のバタフからアントワに渡る。アントワはものすごい挙動で鉄角、真名部というアースイレブン自慢のDF陣を一瞬で切り裂き、前進する。本領を発揮した昆虫人類の身体能力の高さには真名部も負け惜しみのダジャレで返すしかない。



真名部「そんなのアリ!?」


 アントワの前進を阻んだのはさっきはバタフに抜かれた神童であった。反撃に移るアースイレブン。相手のプレーに飲まれるなと、まるでキャプテンのように仲間に指示を出す神童が頼もしい。

 神童は本当のキャプテンである天馬にパス。その前にはコメッキーの遺志を引き継いだティスが立ちはだかる。



 しかしやはりまだ新人のティスに天馬は止められない。おそらくティスはバンダと同じくこの試合が初めての実戦なのだろう。



 その後は一進一退の攻防が続く。お互いに持ち味を生かした好試合となる。ここまでまるで出番の無いバンダはこの試合で輝くという自らに課した誓いを果たそうと、積極的に前に出る。

 ホッパーからスタッグにパスが通り、ラトニークにチャンスが訪れる。皆帆がスタッグの突進を止めにかかるが、スタッグは必殺ドリブル技「マッシュルームホップ」で皆帆を抜き去る。



 「マッシュルームホップ」で抜かれる皆帆くんの表情に注目。


 そしてゴール前に持ち込むスタッグ。そこに向かうのは真名部だった。彼は早く試合で見せたかったソウルの力を解放し、ラーテルの姿でその爪を振るう。



 スタッグの吹き飛ばされた先では鋭い爪あとが地面を抉(えぐ)り、その威力の凄まじさを物語っていた。真名部のソウルによるその活躍を、九坂は悔しそうに見ていた。

 鉄角に褒められ、バラン兄弟もかくやと思えるほど目立とう精神が旺盛な真名部は気取ってそのメガネのズレを直す。


 真名部はボールを一気に前線の天馬に送る。カウンター攻撃に出るアースイレブン。阻止に現れたモスを必殺技「Zスラッシュ」で抜き去り、先行する瞬木にパスを出す。これが通ればアースイレブンに最大のチャンスが訪れる。



 しかしこの瞬間こそがリュゲルの言う「インパクトあるタイミング」だったのだろう。これまで私生活を含めまったく良いところが無かったリュゲルが天馬−瞬木のホットラインを分断する!



 もちろんリュゲルのその姿を見るガンダレスは大はしゃぎ。カッコ良い兄を称える。


 その動きは試合前に鉄角が見くびっていた者の動きとは思えなかった。ボールを取り返そうと瞬木が挑みかかるが、リュゲルは身軽な動作でそれを華麗にかわす。ようやく紫天王としての本領を発揮したと見るべきか、バカだった頃の姿からは想像も出来ない素晴らしい動きだ。

 そしてリュゲルはガンダレスとワンツーパスを繰り返し、アースイレブン陣内に攻め上がる。神童の指示で鉄角、真名部、好葉が3人がかりでボールを奪いに向かうが、息の合った兄弟プレーの前にボールに触れることすら出来ない。これはリュゲルのみならず、ガンダレスの能力の高さをも証明するプレーだ。

 その攻撃にバンダも加わろうとするが、ガンダレスに邪魔だとばかりに押し倒されてしまう。


 ゴール前に到達するバラン兄弟。頼みの綱は井吹のみだ。リュゲルはその手に輝くリンゴを持ち、それを齧(かじ)って空(くう)に投げる。落ちて来るリンゴにガンダレスが大声で叫んで瘴気(しょうき)を当て、黒ずんだリンゴを2人が同時に蹴る。その長い思わせぶりな動作がバラン兄弟の合体必殺シュート「スクリーム・オブ・エデン」の挙動であった。



 バラン兄弟の合体必殺シュート「スクリーム・オブ・エデン」。リンゴを使用したりガンダレスが叫んだりという挙動からして「エデンの園の悲鳴」とでも訳すべきか。


 これに対して必殺技「ワイルドダンク」で立ち向かう井吹だったが、ソウルではなく初期必殺技を使ったという段階でこれは失点したなと思った。



 そりゃこうなるよね。合体技まで使っておいて井吹にまさかの阻止成功とかされてたとしたらバラン兄弟は本当にバカ兄弟のまま終わるところだった。


 ここで好試合の均衡は崩れ、先制点はチーム・ラトニークが挙げる! 

 戦前の予測をはるかに超えるバラン兄弟の実力に、鉄角は顔面蒼白だった。だがバラン兄弟の活躍は確かだったが、それにあたって仲間であるバンダを押し倒した行為は敵チームの不協和音の元になる可能性がある。



 意気揚々と自陣に引き上げるバラン兄弟を睨みつけるバンダ。いつも陽気で明るかった彼にしては珍しく怒りの表情だ。残り少ない人生を良い形で全(まっと)うするため、バンダも必死なのかもしれない。



 次回に続く。



  エンディング



 ラトニークとの戦いがスタートした。前フリ部分で書いたとおり、今回は気が重くなるような哲学的な命題が天馬たち、及び視聴者の前にゴロリとさらけ出される。なにせイナズマイレブンの世界観で人が死ぬという場面が描かれるわけだから。

 黒岩こと影山零治(CV:佐々木誠二)が鉄骨を落とした時ですら人死にが出なかった上、その黒岩も絶対に死んだと思われた場面でも死ななかったぐらいの作品なのに、今回は実にあっさりと死者が出たものだ。虫の命は確かに短く儚(はかな)いものだけど、それだけに哺乳類では計り知れない死生観を持っていてもおかしくはない。


 あの明るく話をするバンダが今日中に死ぬというのはものすごく大きな意味を持つように思われるが、それが九坂にソウルへの目覚めを後押しするものとなるのかもしれない。九坂はバンダと出会うことで心に秘められた能力に覚醒できるということになるのではないかと思われる。


 どんな生き物も最終的に「死」という概念からは逃れられない。地球人はラトニーク人よりは長く生きられる分、それを意識する機会が限られるという点で現実感に乏しいのかもしれない。常にそんなことを考える必要はないが、たまには「自分がなぜ生きているのか?」とか「生きている間に何をしようか?」とか「死んだ時、自分は何が残せるだろうか?」ということを考えるのは決して無意味なことではない。寝る前に5分ぐらい考えるのはきっとその後のあなたの人生を有意義なものとすると思われる。


 バラン兄弟が加勢するラトニークとの戦いが終われば、いよいよ決勝戦となる。おそらくファラム・オービアスの手勢と戦うことになるのではないかと予測しているが、オープニングに秘められた色々な事象を想像するのも楽しい。果たして雷門中の面々はどうなるのか? 今回は触れなかったが残された天馬や剣城のソウルはどういう形で発動するのか? などなど。




 エンディングテーマ曲「嵐・竜巻・ハリケーン」は、今度は北原沙弥香さんと小林ゆうさんのデュオだ。ということはやはり霧野蘭丸(CV:小林ゆう)が出るという布石なのかな? ヒラリ・フレイル(CV:小林ゆう)の再登場なのかもしれないけど。作曲と編曲はこれももうおなじみとなった、タモリ倶楽部によく出る面白い外人さん、マーティー・フリードマンが担当。




 これは皆帆の新必殺技!?


  次回「涙の怒髪天シュート!」に続く。



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