『イナズマイレブンGOギャラクシー』第10話「特訓!ブラックルーム!!」の感想 【「徹子の部屋」より恐ろしい「流星の部屋」】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第10話「特訓!ブラックルーム!!」を観ての感想を書く。準決勝に進出した【イナズマジャパン】を今後の敵はさらなる脅威で待ち受ける。チーム全体により一層の強化が求められるにあたり、監督の用いる奇策とは……?



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


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『イナズマイレブンGOギャラクシー』第9話「帝王の涙!」の感想 【鬼の目にも涙】
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 少年サッカー世界大会「フットボールフロンティアインターナショナル(通称FFIV2)」アジア予選3回戦でイナズマジャパンは強敵サウジアラビア代表【シャムシール】を撃破する。

 過去のトラウマに悩む九坂隆二(CV:岡林史泰)がその誤解に気付き、吹っ切れたプレーを見せて最後は逆転勝利を収めるという爽快感ある勝利であった。



 その日本代表・イナズマジャパンが合宿所を構えるお台場サッカーガーデン駅にひと組の男女が降り立つ。



 見たところ30〜40代と見られる両者はお似合いの美男美女ではあるが、ともにメガネを掛け極めて理知的で怜悧(れいり)なお堅い印象を受ける。


 男は人差し指でメガネのズレを直すという、この作品中どこかで見たような癖(くせ)を見せる。果たして彼らの正体は、そしてその目的は?



   オープニング



 合宿所のグラウンドでは3回戦を突破していよいよ「アジアの向こうの世界」という舞台が目の前に見えてきたイナズマジャパンの選手たちが練習に汗を流していた。チームをオフェンスとディフェンスの二手に分けそれぞれの連携と個人技のスキルアップを果たす実戦形式の練習だ。

 野咲さくら(CV:遠藤綾)から松風天馬(CV:寺崎裕香)へパスが渡る。それを迎え撃とうとする鉄角真(CV:泰勇気)を人差し指と親指で作るフレームで追いながら分析するのは、真名部陣一郎(CV:野島裕史)だ。彼は高確率で天馬が鉄角を抜くことを見越して行動する。

 事態は真名部の読み通りに展開する。同じディフェンスチームである鉄角が抜かれてしまったというのに予測が当たったことで真名部は嬉しそうな表情を浮かべる。



 だがその真名部も次の瞬間、あっさりと天馬にかわされてしまう。天才的理系頭脳により導き出される真名部の読みはさすがの分析力なのだが、相変わらず自己分析だけは苦手なようだ。いくら理論が正しくともそれについて行く体力と技術が現在の真名部には無い。


真名部「計算はバッチリだったのに……」


 真名部はそうつぶやくと、ズレたメガネを人差し指で直す。


 天馬はドリブルで上がった後、九坂にパスを送る。前回の試合で開眼なった九坂は上達したドリブルで敵陣を切れ上がる。天馬や瞬木隼人(CV:石川界人)といったオフェンス陣の仲間に励まされ、九坂は攻め上がる。

 彼はサウジアラビア戦で学んだ『恐れるものから逃げずに向き合うことこそ本当の強さ』という思いを胸に、それを最初に教えてくれた森村好葉(CV:悠木碧)を見つめる。

 自分をなぜか理解してくれていた好葉に対し、九坂は深く強く感謝していた。そして自分と同じ悩みを持っていることを示唆していた好葉の力になりたいと思うようになっていた。自分を理解してくれる人の存在、それがあってこそ自分は立ち直れたことを九坂はよく分かっていたからだ。

 九坂はひとしきり前進した後、さくらにパス。さくらは鉄角のボクサーを思わせる執拗(しつよう)なフットワークに行く手を阻まれる。



 今度はボールを持った瞬木が攻め上がる。彼は毎試合観客席で応援してくれる弟の雄太(CV:小林ゆう)と瞬(CV:戸松遥)のことを思いつつ戦っていた。次の試合も活躍するため、この練習にも気を抜かないという心境が見える。

 マークにやって来た皆帆和人(CV:代永翼)を軽くかわし、天馬にパスを送る。その卓越した上達には、かつては自分が一番でないと気が済まなかったはずのさくらからも褒め言葉が出る。


 彼らの上達を神童拓人(CV:斎賀みつき)は相変わらず無表情で見ていたが、ベンチから練習を見つめるマネージャーの空野葵(CV:北原沙弥香)は新人たちの上達ぶりに手応えを感じていた。そして同僚のマネージャー、水川みのり(CV:高垣彩陽)に思いを馳せる。彼女はこれまで同様、監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)に張り付いていてこの練習の場にも姿を見せてはいなかった。



 天馬から九坂へのパスを鉄角がカットする。鉄角も着実にディフェンス能力を高めている。鉄角はここで好葉にパスを送る。これまでまったくプレーに絡んで来なかった好葉はあわててしまい、思わずボールを避けるような動きを取ってしまう。



 高レベルの練習が好葉の未熟とも言えるプレーによって途切れてしまったことに、さくらはあからさまに不満の声を上げる。その言葉は好葉をいたたまれない思いに追いやる。好葉は確かになぜ日本代表のメンバーに入っているのか分からないほどここまで目立った活躍の場が無い存在ではあるが、この態度はあまりに可哀想だ。さくらは同性だしオフは一緒に遊びに行った仲なんだから、本来は好葉の悩みを聴いてあげる立場にならないといけないのに……。


 好葉のその思いに一番近い位置にいるのは、九坂であった。落ち込む好葉を見る九坂は、自らを救ってくれた恩返しに彼女を救いたいと考える。



 一方、練習の場に姿を見せなかった黒岩は暗い監督室のモニタを操作して、選手たちのデータを見ていた。傍(かたわ)らに佇(たたず)む謎の存在、ポトムリ(CV:三木眞一郎)は瞬木、さくら、そして九坂と次々と真の力に目覚めたサッカー選手を選び出した黒岩の眼力と手腕に驚かされたといった口調で語りかける。



黒岩「彼らの力はまだまだこんなものでは無い」
ポトムリ「ほぉ、それはそれは……」


 慇懃無礼(いんぎんぶれい)に言い返すポトムリを無視し、黒岩はモニタに大映しになった九坂を見つめる。



 練習では天馬から剣城にボールが送られる。ようやくつながった旧雷門中ホットラインだ。皆帆がその前に立ちはだかるが、それを意外な人物が邪魔をする。


井吹「皆帆、撃たせろ!」


 何とディフェンス側の最終防衛線を務めるキーパーの井吹宗正(CV:鈴木達央)が剣城に撃たせろと言い放ったのだ。どうでもいいけどこの関係性、皆帆の方が年上なんだよね〜。まぁ井吹は神童ですら呼び捨てだから驚くに値(あたい)しないんだけどさ。

 井吹は剣城にシュートを撃たせて自分が止めると言い放つ。キーパーの練習も必要ではあるが、DFのマークなしにあえて撃たせるというところが井吹らしい。剣城は強烈なシュートを放つ。ノーマルシュートとはいえキック力抜群の剣城のシュートだ。必殺技なしで止められるわけがなく、井吹はその体躯(たいく)ごとゴール内に持っていかれる。



 ゴールを許してしまったことを確認し、井吹は悔しそうに拳を握る。剣城クラスのキック力の敵が現れたら今の井吹では必殺技なしでは止められないということか。またそれを見る神童さんの冷ややかな視線が……。



 ここで葵の笛が鳴り響く。まだ日は高いが本日の練習はこれで終了となる。葵の用意してくれたドリンクで水分を補給しながら、一同はベンチ前でクールダウンする。チーム内の連携や個人の能力の向上を見て、皆帆はチームが良い状況に向かっていると語る(オメーはどうなんだよ?)。真名部もそれを受けて、運動量も27%向上していると理系らしく数字を挙げてチーム力アップを語る(オメーはどうなんだよ?)

 身体を動かすことが好きな鉄角は汗をかいて満足げだったが、そこに神童が声を掛ける。神童が新人メンバーに声を掛けるなど、これまでに無かった珍事だ。一同は興味ありげにそちらを見つめる。


神童「だいぶ動きにキレが出てきたな。でもまだまだ甘い」


 神童はスピードを落とさないよう前に出ろと言って立ち去る。これは一見するとダメ出しに見えるが、これまでの神童ならそもそもこのようなアドバイスはしなかっただろう。これはつまり鉄角を仲間と認めたと解釈しても良いと思われる。

 それに気付いた葵は嬉しそうに天馬に向き合う。天馬も神童の意識が変わりつつあることを認め、笑顔を見せる。自分が気に入っている新生イナズマジャパンを神童も認めてくれたことは何よりも嬉しいことだ。だけど神童、その優しさを井吹にも向けてやってくれさい。


 神童の変化はチームの他のメンバーにも好意的に受け止められた。最初に出会った時は自分たちを認めてくれなかったばかりか、早々に辞めて欲しいとまで言っていた神童が少なくともアドバイスをするほどには認めてくれたのだ。嬉しくないはずがない。

 だがそんな中でも一人取り残されたように寂しげな表情を浮かべる好葉。それに気付いて心配そうに見つめるのは、九坂だった。



 思わず好葉に近寄る九坂だったが、その前にドリンクを差し出す皆帆。わざとではないのだが、九坂の邪魔をしてしまうナチュラル迷惑野郎の皆帆くんが視聴者的に憎い。真名部もKYという点では同罪だが。



 宿舎の自室に戻った真名部はタブレット端末でなぜかマンションの情報を見ていた。誰にも監視されない環境で暮らすこと、それが真名部の望みのようだった。一介の中学生の彼にそんな財力があるとは思えない。おそらく日本代表チーム入りするにあたって、真名部が黒岩と交わした契約はこの辺にあるのではないかと思われる。

 良い物件を見つけて満足した真名部は室外に出る。早速その物件を見に行くつもりなのかもしれない。


???「陣ちゃん!」


 真名部に語りかける女性の声が響く。真名部を下の名の愛称で呼ぶその女性は、冒頭で駅に降り立ったあの男女の女性の方だった。



真名部「ママ!? ……パパ!?」



 グラウンド脇のベンチには皆帆が一人座って何かを見つめていた。にこやかに笑みを浮かべてそれを見ていた皆帆は大事そうにそれをポケットにしまい、立ち上がる。そこで彼は真名部家のゴタゴタを目にしてしまう。皆帆は思わず茂みの陰に隠れる。


 真名部は一言も交わさず立ち去ろうとするが、母(CV:不明)がそれを止める。母の語るところによると、真名部は両親に無断でイナズマジャパン入りしていたらしい。海外出張から帰って来た両親は事の真相を問いただすためにこの合宿所にやって来たのだ。

 母は真名部が勉強しないでスポーツにかまけていることを心配する。真名部はサッカーの日本代表として戦うということが自身の経歴にマイナスになるはずがないと言って反論する。

 もう少しやらせて欲しいと言う真名部に対し、父(CV:不明)は心の底から冷徹な口調でこう言い放つ。


父「球蹴りなんかのどこが良いんだ?」


 厳格な父は真名部にとって畏怖(いふ)せしめる存在なのだろう。目を合わせることなく、真名部は父からの辛辣(しんらつ)な言葉を受け止める。父は今すぐに辞めるわけには行かないだろうが、適当なところで切り上げて帰って来いと告げる。それは一家の家長の命令として逆らうことが困難な口調であった。

 そして真名部はその言葉に逆らえない。真名部からの「はい」という返答を受け取り、父はそれだけのためにここに来たと言いたげに去っていく。母は真名部のことを心配しつつも父に同調した意見を述べて父の後を追う。


 ひとりその場に残された真名部はとても悲しげな表情で佇んでいた。今にも泣き出しそうなその姿を見て、皆帆は何を思うのだろうか?



 お台場の夕陽の沈む海を見に来た真名部。黄昏(たそがれ)る彼の前に現れたのは、彼が落ち込む理由を知る皆帆だった。真名部は一人になりたいと邪険(じゃけん)に扱うが、皆帆はそれに対して意外な質問をする。


皆帆「真名部くん、サッカー辞めちゃうの?」


 その一言で、真名部は皆帆が両親との一件を聞いていたことに思いが至る。こうなると皆帆を無視する訳にも行くまい。皆帆は真名部がイナズマジャパンに入団した理由を尋ねる。

 両親がその動機に絡んでいるということを見事言い当てられ真名部は驚く。観念したかのように素直になった真名部は自身が参加するにあたっての条件を語り出す。

 両親から離れて暮らす裁判の手続きをしてもらうこと……それが真名部の参加条件だった。真名部は両親から離れたかったのだ。真名部の父は世界中を渡り歩く超一流の商社マン、母は外交官という超エリートな一家だった。



 親の体面を傷つけないよう勉強に明け暮れる日々、真名部は優等生であり続けなくてはならない毎日に嫌気がさしていた。真名部はそのエリートな両親の存在が疎(うと)ましく、常に監視されているという感情を抱いていたのだ。


 親が自分たちの価値観を子供に押し付け、支配することしか考えていないと真名部は考える。だが皆帆はあっさりとその意見に反対する。皆帆にはその裏付けがあった。彼の父は以前話題に上ったが警視総監賞を受賞した警視庁の刑事だ。

 皆帆は父の洞察力や推理力に対して心底尊敬の念を抱いていた。日本のシャーロック・ホームズと呼ばれる父を誇りに思っている皆帆にとって、真名部の語る親の像は少なくとも自分には当てはまらないと告げる。

 将来はそんな父のような刑事になりたいと考える皆帆が黒岩と交わした条件とは、本場ロンドンのスコットランドヤードへの見学であったことを明かす。余談だが小説「シャーロック・ホームズ」シリーズに出て来るスコットランドヤードをはじめとした警察組織は私立探偵シャーロック・ホームズに出し抜かれる無能な狂言回し的役どころだけどな。


 父を尊敬する皆帆の態度は父を疎ましい存在と見ている真名部にとっては面白くない。自分の家庭はうまく行っていると自慢されたように感じた真名部は感情的になり皆帆を非難する。皆帆の説得は完全に裏目に出てしまったようだ。不快感をあらわにして真名部はその場を去ってしまう。



 翌日の合宿所。レストルームで朝食を取る天馬はサンドイッチの美味しさに瞳を輝かせる。具に使われている魚が美味しさの秘密なのだが、その魚の名を鉄角からアイナメだと教わる。

 鉄角はさすがに漁師の息子だけあって魚に関して詳しい。アイナメのことを微にいり細に渡って解説する。

 一方、昨日喧嘩してしまった真名部と皆帆も顔を合わせる。皆帆は明るく朝の挨拶(あいさつ)をするのだが、真名部はそれを徹底無視する。その態度を見て皆帆はいつまでも根に持つ真名部を子供と断定し、本当は親に甘えたいだけなんじゃないかと語る。



 子供扱いされて当然ながらプライドの高い真名部が黙っているわけがない。怒って昨日の続きを始めてしまう。まだ2人の険悪なムードに気付かずにサンドイッチの美味しさに笑顔の天馬くんがのんきで笑える(この直後にさすがに気付くのだが)。


 すかさず鉄角が仲裁に入る。真名部はこの喧嘩の理由として皆帆に非があることを告げようとするのだが、それを語ると彼が隠したい両親の話もしなければならない。真名部は深く語らずに立ち去ってしまう。そして皆帆も不愉快そうに無言を貫く。

 何にせよ、チームプレーが大事なサッカーという競技においてこの仲間割れは深刻な問題だ。九坂は彼らを見て、そして昨日から気にかけている好葉を見る。好葉は一人ぼっちで黙々と朝食を取っていた。



 やはり放っておけない性格の九坂はそちらに向かうが、今度はさくらが好葉の前に座ろうとやって来る。またも邪魔されてしまう九坂。【くさ×この】進展しねぇ! このチームはナチュラルに邪魔する邪魔者に満ちている。ある意味故意よりタチが悪いやんね。



 そして一同はミーティングルームに集結する。コーチの船木宏正(CV:金野潤)からこれまでの健闘を褒められ、一同に笑顔が浮かぶ。真名部と皆帆も顔を見合わせて笑うが、次の瞬間互いに喧嘩中だということを思い出して顔を背(そむ)け合う。これってテンプレの【ホントは仲が良いコンビ】の証明なんだけどね。

 だが黒岩はこのままでは予選突破は不可能だと言い切る。韓国、オーストラリア、サウジアラビアと強い国を撃破したというのにまだそんなことを言いますか?

 そして黒岩は一同についてくるよう命じ、先頭を切って歩き始める。合宿所地下に続く扉を開いた黒岩。続いて降りていく一同だが、宿舎の中にこのような設備があったなど聞かされてはいなかった。



 地下にしては結構広い一室に案内された一同。サッカーグラウンドよりも少し狭いぐらいか。


 床を叩いて材質を推測する真名部。どうやら底部は強化ガラス製のようだ。他には前部壁面にプロジェクター状の機械が設置されている点が目立つ。その機械の前のコンソールを操作するみのり。すると途端に周囲の風景が一変する!


さくら「草原!?」


 先ほどまで地下の一室にいたはずなのに、見える景色は広大な草原が広がっていた。さっぱり理解できない鉄角に対し、真名部は冷静に瞬間移動を疑う。

 戸惑っている天馬に対し、黒岩が自分の元まで走ってくるよう命じる。その真意は分からず天馬は葵と顔を見合わせるが、決心して黒岩に向けて走り出す。だがどうも様子が変だ。いくら駆けても黒岩の元にたどり着くことが出来ないのだ。

 不思議な現象だが、実は天馬の走る地面が走る方向と逆に動いていたのだ。つまりルームランナー上で走っていたのと同じ状況だったということになる。そして周囲の風景はすべてが映像プログラムであることを黒岩は明かす。

 ただそれは単なるプログラムでは無かった。彼らの脳に直接信号を送ることで、本物と同じ感覚を与えるという。真名部が触る地面は本物の草の感覚があり、先ほどのような無機質な強化ガラスがそこにあるとは思えないほどだ。


 そこに突如、ユニフォームを着た人影が現れる。それもプログラムなのだが、彼が放ったボールを受け止めた井吹はそのボールの圧力や重み、腕の痛みを実際に感じていた。



 真名部はプログラムでここまで実体験させるコンピュータ技術に無邪気に感心する。井吹の掴んでいたボールが現れた時と同じ突如さで消え去り、一同は元の地下の部屋に戻る(実際はずっとこの場にいたのだが、脳が感じた印象では「戻る」という表現が一番この瞬間の感性に合致していると思われる)。

 黒岩は以後、ブラックルームと名付けられたこの空間で特訓するよう厳命する。そしてその言葉が皮切りになったのだろうか、場面がまたも切り替わる。そこは大都会を思わせるビル群だった。

 黒岩は次は状況を判断しながらボールをキープする特訓だと告げる。


黒岩「鉄骨を避けながらボールを向こう側まで運ぶ……」
九坂「テッコツ……?」


 鉄骨という現実離れした単語の意味が理解できないままの一同の頭上から、黒い塊、鉄骨が降ってくる!! それは映像とは思えない質量を持って彼らの眼前に振り落ちてくる。黒岩は安全は確保されていると言うが、重さ数トンにも及ぶ鉄骨が頭上から落ちてくるこの恐怖感はそんじょそこらの3D映画の比ではない。誰もが逡巡(しゅんじゅん)する中、一番手を引き受けるのはやはりキャプテンの天馬だった。

 天馬は今のままでは勝てないと黒岩に断言されたことを克服すべく前向きになっていた。アジア予選を突破し、世界に向けて進むためにも特訓を恐れているわけには行かない。


みのり「ではレベル1からです」


 事務的に告げるみのりがコンソールを操作する。同時に天馬はドリブルで駆け出す。ビル群を駆け抜ける天馬の頭上から3本の鉄骨が降ってくる!



 葵の叫び声を聞いて天馬は思わず立ち止まってしまう。おかげで天馬は直撃を免(まぬが)れる。天馬の怖じ気付かないひたむきなプレーは他のメンバーにも勇気を与える。鉄角、九坂が後に続く。そしてさくらも好葉に声を掛けて先に進んで行く。好葉も恐れつつそれに従う。神童も剣城とともに試練に向かって行く。

 残されたのは井吹、そして真名部と皆帆の3名だった。どうするか迷う真名部と皆帆に黒岩は別メニューを課す。彼らには足腰を鍛えてもらうと言うのだ。



 客観的に鉄骨の特訓を見るとこういう風になっているということがよく分かるシーン。


 2人が連れてこられた先は、渓谷にかかる長い吊り橋だった(プログラム内での話だが)。まだ何の特訓かは分からない両者の背後から、不穏な音が響いてくる。振り返ると足場である吊り橋の床板がどんどん消えて無くなっていく! このままこの場にいてはいずれ墜落してしまう!


「お、落ちる〜!!」

 皮肉屋さんの普段にはあり得ないほど崩れた表情で驚く真名部と皆帆。もちろんプログラムなんだから本当に落ちることは無いんだけど、そう感じさせるバーチャルリアリティ感が半端ないのは先ほどの鉄骨で証明済み。


 必死で床板が無くなるのと逆の方向に逃げ出す2人。向こう岸に逃れるのが残された唯一の道だ。そして逃げに逃げてもう少しで向こう岸というところに達した段階で床板の消失が止まる。ホッと一息ついた2人の前で床板がどんどん元に戻って行く。これはもしかしたら……。

 やはりそのまさかだった! 今度は逆方向の床板が消失し始めたのだ! またも消える床板に追われる両名は、今度は逆方向に逃げて行く。これの繰り返しによって彼らに足りない基礎体力である足腰の強化につなげようというのが黒岩の考えだろう。誠にもってドSな仕組みだ。



 この特訓を客観的に見るとこう。こうして見るとよりドドドSな仕様だ。


 そして最後に残された井吹。キーパー用に残された特訓が、もちろんあった。彼を待っていたのは灼熱の砂漠だった(プログラム上の)。だがそのバーチャル感の完成度は折り込み済みだ。井吹は足に砂が絡みついてくる感覚を感じる。

 動きづらいその足元で、敵のイメージが放つシュートを阻止すること、それが井吹に課せられた特訓だ。1本目のシュートは砂に足を取られて追いつくことが出来ない。あっさりと決められた上、顔から地面に落ちて顔をうずめてしまった屈辱とともに井吹は立ち上がる。



「もう一回だ!!」


 全員にプログラムを課し終えた黒岩はブラックルームを出て行く。まるでもっと大事な要件が待っているかのようなそのそっけない態度に葵は意表を突かれ、深くため息をつく。しかしそこで感じた違和感にみのりを見つめる。みのりに「何か?」と問われて葵は笑ってごまかすが……。



 あなたはこのシーンの葵ちゃんの違和感に気付いただろうか? これまで黒岩がどこに行くにしても、必ずその後を追っていたみのりが今回に限ってはこの場に居残ったということを。これまでは男子トイレにすらついて行きそうな忠実な秘書ぶりだったもんね。



 過酷な特訓を終え、合宿所には夜が訪れていた。真名部はまたもタブレットで住宅物件を見つめ、束縛のない自由な生活を夢想していた。



 翌日、ここが新たな特訓の場となったブラックルームで選手たちは前日の特訓を繰り返す。鉄角、さくら、剣城は降り注ぐ鉄骨を避けながらのドリブルに、真名部と皆帆は消える床板に追われ続けて基礎体力の増進に、そして井吹は踏ん張りの効かない砂地でのキーパーの技量を磨く特訓を。






 メンバーは昨日には無かった新たな試練にも挑む。



 天馬、九坂、好葉は前日には無かった岩場でのロッククライミングからの空中ボレーに挑む。



 神童と瞬木はボードに乗って急流を下りながらのジャンピングボレーの特訓。神童は華麗に乗りこなすが、瞬木はやはり経験不足から水中に落ちてしまう。



 旧雷門組と井吹を除くメンバーは恐竜にも追われる。黒岩分かってないなぁ。こういうのこそ神童とか剣城にやらせたら絵ヅラ的に笑えるのに(注:黒岩は笑わせるためにやらせている訳ではありません)



 3日目ともなるとプログラムの操作は自分たちでするほどになる。鉄角は鉄骨落としの特訓をレベル2に設定する。これまでの5割増の量の鉄骨が降ってくることになる。そんなの無理だと九坂は抗議するが、「無理だからやるんだ!」と鉄角は取り合わない。

 ……とはいえ実際始めてみると、あまりの鉄骨の量にビビる。


鉄角「……やっぱりレベル1で」




 レベル2では日和(ひよ)った彼らもレベル1ならもう克服しつつあった。さすがは黒岩に見込まれただけのことはある。素晴らしい上達の速さだ。



 急流下りも乗りこなすだけなら一応真名部や皆帆、好葉にも出来ているようだ。さすがにこの状態でボールを蹴ることは無理そうだけど。



 その日の練習を終え、レストルームに集ったメンバーに対し、皆帆は抱いていた疑問を語る。

 皆帆の推理では、サッカーのためにあのようなすごい施設を造るということに違和感があったのだ。掛かっている費用は少なく見積もっても数十億円は下らないだろうと真名部も同調する。この2人、喧嘩してるはずなんだけどやはり論理的な意見を言わせると同調してしまうところがある。

 さくらも破格の待遇には疑問を抱くものの、気にすることもないと楽観的だ。


さくら「もしかして私たち、このまま優勝できるんじゃない?」
皆帆「え、優勝?」


 着実に厳しい特訓についていけていることに選手たちの自信も深まっていた。皆帆の問いかけに瞬木、さくら、鉄角が一斉にうなづく。だが皆帆の言いたいことはそういうことでは無かった。

 彼らが黒岩と交わした契約に「優勝」という条件は無かった。条件は「参加すること」……つまり無理に優勝しなくとも彼らの望む報酬は受け取ることが可能なのだ。いつの間にかサッカーの魅力に取り憑かれ、自然と優勝を目指すことが当然だった彼らだが、皆帆にそう言われて我に返る。

 確かめて来ようかという皆帆の言葉を明確に拒否するのは鉄角だった。ボクシングという夢を諦めた彼にとってはサッカーから逃げ出すという選択は無かった。彼は契約がどうであろうとこのまま続行することを宣言する。鉄角はやっぱりナイスガイだ。天馬がこの意見を聞いたら涙チョチョギレるだろうな。


鉄角「自分の中の熱い思いとちょっと向き合おうかと思ってな」

 その言葉を聞いたさくらもサッカーから受けた熱い情熱を思い返す。鉄角は脱退試験のときもそうだったけど、こういう時に雰囲気で仲間を引っ張る素質がある。今回のように天馬、神童、剣城がいない場面では彼がリーダーにふさわしい気がする。脳みそは筋肉作りっぽいけど。


 鉄角は他のメンバーに身の振り方を問う。瞬木はみんながやると言うならやるとやや消極的ながら続行を示唆する。前回でサッカーの素晴らしさに目覚めた九坂ももちろん続行派だ。井吹ももちろん続行を誓う。彼の場合、神童との決着が着いていないことがその理由のほとんど全てだろうけど。



 続行者が続出する中でも雰囲気に流されないのが残されたコイツらだ。真名部は分からないと言明を避ける。意見が合った関係の皆帆と顔を合わせるが、ここで喧嘩してたことを思い出してまたお互いに顔を背けてしまう。


さくら「好葉はどうする?」


 さくらに急にそう問われ、好葉は返答に窮(きゅう)する。ハッキリしないことに業を煮やしたさくらに怒られて好葉はすっかりしょげて謝る。



「……ごめんなさい」


 九坂はそんな好葉がやはり気がかりでならない。意を決して好葉に声を掛けようとしたその瞬間、レストルームに葵が駆け込んでくる。本当に間が悪いというか、ナチュラル邪魔しマンが多すぎというか……。


 葵は次の対戦相手が決まったという情報を持って来たのだった。次の対戦相手はタイ代表の【マッハタイガー】だ。5−0という大差でカタール代表の【デザートライオン】に圧勝して準決勝に勝ち上がって来たという。獅子と虎の対決に勝利したマッハタイガーとはどんなチームなのか!?



 早速、葵持参のタブレットで対戦相手のビデオ映像を見る一同。


 デザートライオンも無印イナズマイレブンでイナズマジャパンのライバルとして登場したチームだ(しかもその時はタイ代表チームに勝っている)。決して弱いチームではない。前評判でもデザートライオンが圧倒的に有利だと言われていたのだが、下馬評(げばひょう)を覆(くつがえ)してそのチームに圧勝して勝ち上がって来たマッハタイガーは不気味だ。


皆帆「そういえばこの大会は番狂わせが多いな」


 素人集団の君たちもね。


 さておき実力が高くないチームが勝ち上がっていることをつぶやく皆帆に対し、真名部は今頃気付いたのかとやや嘲笑気味(ちょうしょうぎみ)に語る。

 そう言って去っていく真名部を見送る背後で瞬木はまだ喧嘩しているのかとちょっと呆れた口調で語る。だがその後に彼は皆帆に聞こえるか聞こえないかの微妙なトーンで本音を語る。



『喧嘩なんて馬鹿らしい……他人なんて所詮分かり合えないんだから表面上うまく付き合って行けば良いのに……』


 これまでも幾度か見せたどす黒い闇の面を表出させ、瞬木はサブリミナルを与えるかのように皆帆の耳元でそう語る。皆帆はあわてて振り向くが、瞬木はとぼけて葵と会話を始める。まるで皆帆の聞いた言葉は空耳であると思わせるかのように……。



 次の対戦相手が決まり、天馬たちの特訓にもターボが掛かる。これまでより確実に増えた鉄骨(レベル2に挑んでいることを暗示)を避けながら、天馬は強敵に立ち向かう心構えを固めていた。


「マッハタイガー、負けるもんか!!」



 次戦が迫る中、皆帆はグラウンド脇のベンチに腰掛けてまたも何かを見つめていた。それは彼の最愛の父と自身が写ったツーショットの写真だった。



 マッハタイガーのその実力のほどは? 真名部は両親と和解することが出来るのだろうか? そして好葉の悩みとは? 九坂は誰にも邪魔されず好葉にちゃんと話しかけることが出来るのか?(個人的にはこれが一番気になる)



 様々な懸案材料を持ち越し物語は次回に続く。



  エンディング



 今回は真名部の過去やチーム参加条件が明らかになる回だった。だけど総体的に真名部の両親にはさくらの両親と同じような印象を受けてしまった。今回の親はこんなタイプしかいないのかいな? 皆帆がそうではないことを示唆していたけど、なんか最後に意味ありげに見ていた写真を鑑みるに、もしかしたら皆帆のお父さんは故人なのかもしれない。だとしたら微笑んで写真見たりはしないか。

 本文中でも触れたけど、スコットランドヤードシャーロック・ホームズにコケにされる引き立て役だから皆帆はホームズに憧れているんならそんなところに行っても無駄だよ。どうせ行くならベーカー街221番地Bの階段を17段上がった部屋に行くべし。


 今回は他にも新しい特訓とか次の対戦相手が決まるなどいろんな内容があった。皆帆が今回は番狂わせが多い大会と言っていたけど、韓国やオーストラリアといった強豪国が消えてるのにここでやっとタイが出てくるというのもそういうところが影響しているのだろう。タイはどう見ても前述の国よりは格下だから。



 さて次回はいよいよ好葉ちゃんの過去が語られる回になるようだ。なぜ彼女が他人に心を開かないのか、そして九坂はちゃんと好葉に話しかけることが出来るのかという注目点もある。九坂の悩みを解決に導いた好葉を、今度は九坂が助ける番だな(バンダナ)。



 猫と戯(たわむ)れる好葉ちゃんが可愛い。人間嫌い≒動物好きという図式もテンプレだけど興味深い。動物相手に彼女が見せる屈託のない表情がいつしか人間に向けられることが望ましい。そしてその鍵は九坂が握っているのだろう。



  次回「じぶん嫌い」に続く。



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