『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』第5話「とろけるような」の感想

 恒例のアニメ感想文『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』、今回はその第5話「とろけるような」の感想だ。毎日甘い種類のパンを買いに来る珍客の真意は? 日常のパンアニメの雰囲気を取り戻したかのような展開だが、今回もハートウォーミングで楽しかった。


  • 前回のアニメ『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』の感想は、

『シャイニングハーツ〜幸せのパン〜』第4話「機械人形」の感想
 をご覧ください。

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 リック(CV:神谷浩史)たちは自分たちのパン工房「ル・クール」の窯の修理の目処がつかないまま、師匠筋に当たるマデラ(CV:江森浩子)のパン屋にて営業を続けていた。

 その日もパンの売れ行きは好調で、そろそろ在庫が薄くなってきた時、その客は店を訪れた。ドアの開く音を聞き、来客を迎えるアミル (CV:伊藤かな恵)だったが、来客の姿が見えずに不審がる。気のせいかと作業に戻ろうとしたその時、来訪を告げる挨拶を受けて驚くアミル。

 見ると、床の辺りにその小さな小さな来客の姿が。どう見ても人間ではなく、その他の種族だろう。だがその闖入者はアミルの目線まで飛んできて、極めて丁寧に、甘いパンを所望していることを告げる。



 可愛いながらもコウモリっぽい羽に魔性を感じる来客。


 とびきり甘く、とろけるようなパンを欲しいと告げる。パンが欲しいと言うからにはお客様に相違ない。ただ店じまいが近く、甘い種類のパンはほぼ売り切れと聞かされ、その小さな客は落ち込む。

 幸運にも一つ残っていたチョコデニッシュを購入し、袋を提げて飛んで行く客を、やや呆然と見送るアミル。これまで見た中でもとびっきりの変わった客なのだろう。


 翌日、その客のことを意識してあえて多めに甘いパンを焼いておいたアミルは、同僚のネリス(CV:相沢舞)とエアリィ(CV:三上枝織)にその客のことを語る。閉店後の時間帯に菓子パンを食べたがるという点でも、件の客は変わっているようだ。

 噂話をすればなんとやらで、そのタイミングでやって来る珍客。アミルは自信をもって5種類のパンを勧める。帰って行く客をすでに一度見知っていたアミルは笑顔で見送るが、これが初めての出会いだったネリスとエアリィはポカーン(゜д゜)状態。


 しかしそれで終わりではなかった。その珍客は毎日のようにやって来て、新しい種類の甘いパンを順番に購入していく。ただその表情がだんだん困ったような、悩ましいような顔つきになっていく。お得意様となった珍客にすっかり慣れた3人はその日も笑顔で見送るが、その客の表情に浮かぶ憂いに気づいてもいた。


 閉店後、その客についてリックに語る3人娘。パンを選ぶときのその客の悩ましい顔つきから、何か事情があるのではないかと推察する。それを聞いたマデラは、その客のもとへパンを届けるのが良いと提案する。客の素性を知り、その上で何か役立つことが出来るかもしれないと思える良い案だった。リックもその客のために、新たな甘いパンのレシピを考案してみると協力的だ。


 そして翌日、またもやって来て悩みに満ちた表情でパンを購入した件の客を見送り、おもむろにその後をつけて行く3人娘たち。客は低空で空を飛びながら、街外れの森に入って行く。




 お客さんを尾行することに一抹の罪悪感を抱くエアリィに対し、アミルとネリスは営業と割り切り、好奇心も手伝ってか尾行に乗り気の笑顔を見せる。

 すっかり陽も落ち、暗くなった中、客の後を追う3人は不気味な墓地を通り抜けた先にある古びた、それでいて荘厳な屋敷に辿り着く。

 そこで彼女たちが聞いたのは、少女の声と思しき怒声だった。屋敷のドアが開き、そこから放り出されるように飛び出してきたのは件の客だった。アミルたちは心配して声を掛ける。

 どうしてここに居るのかを問われ、尾行して来たとも言えずに慌てるアミルたちだったが、新製品のモニターをしてもらいに来たとしれっと語ってごまかす。

 3人娘のその詭弁をまるっと信用したその客は、自らをこの屋敷の主人に仕える使い魔のソルベエ(CV:金田朋子)と自己紹介する。そしてアミルたちに対し、彼の主人に会ってもらえないかと依頼する。先ほどの喧騒を思い、やや逡巡するものの、アミルたちは笑顔で同意する。

 開かれたドアに導かれ中に入った3人は、内部の広さ、華麗さに心を奪われるが、それ以上にその寒さに反応してしまう。何故か屋敷内は寒く、そして甘い香りに満ちていた。

 そこにまたも先ほどの怒声が響く。声の主を「お嬢様」と呼ぶソルべエの態度から、その声の主こそこの屋敷の主人なのだろう。許可なく客を招き入れたことを怒る女主人に対し、いつも用立てているマデラのパン屋から新メニューを持ってきてくれたとソルべエは釈明する。



 屋敷の主人・メルティ (CV:釘宮理恵)。魔女のような出で立ち。大きな屋敷の主人にしては幼さの残る外貌。


 実験室のような部屋に案内されたアミルたち。そこではいろいろな甘味や果物が並んでいた。この屋敷の主人・メルティは究極のスイーツの完成を目指し、日夜研究に励んでいるという。実はその部屋はこの屋敷のキッチンだったのだ。

 なかなか完成しないその研究に言及したソルべエを手荒に黙らせるメルティ。ソルべエが甘いパンを毎日買い求めていたのも、メルティの究極のスイーツの完成の一助になるための、使い魔としての忠義だった。

 自分たちのパンがメルティにあまり気に入られず、申し訳ないと釈明するアミルに対し、メルティはツンデレ教科書の1ページ目に載っているようなツンで鼻を鳴らして返答する。




 顔を背けた時に、ほっぺに付いたアイスのかけらを指摘され、それを指で掬って舐めとる様も、教科書の18ページ目ぐらいに載っていそうな見事なツンデレ。さすがは声が釘宮理恵だけのことはある。


 甘い香りと屋敷内の寒さから、メルティの作ろうとするスイーツがアイスクリームであることを見抜いたエアリィ。アイスの甘さの調整の難しさを理解され、メルティはちょっとデレた調子で自らの目指すものの困難さを訴える。

 だがここでデレるのはまだ早いと自らの役目を思い出したメルティは、照れ隠しにアミルたちを怒鳴りつけ、温かいパンでは冷たいアイスの参考には成り得ないと言う。だがめげずにパンの試食を求めるネリスの笑顔に当てられ、またデレっぽくなってしまうメルティが可愛い。

 提供されたパンの美味しそうな印象に目を輝かせるソルべエは、そっぽを向く主人より先に試食を始める。



 あまりの美味しさに喜んだソルべエは、きっと気に入るとメルティにもパンを手渡す。ツン顔でそれを受け取ったメルティだったが、そのパンの美味しさに顔がほころんでしまう。慌ててその顔を隠すところがまた可愛いんだけど。

 そしてやはり役目を思い出したのか、メルティは大声を上げてアミルたちを追い出す。視聴者的には完全に手遅れなんだけどね。


 門前で主人の無礼を詫びるソルべエに対し、アミルたちは全然気にしていないと笑顔を見せる。彼女たちももうメルティのデレに気づいてるんじゃないかなぁ?

 今度は店に来て選んでもらった方が良いとネリスは提案するが、メルティは外出することが大嫌いな様子。ヒキコモリなのか種族的に太陽の下には出たくない特性なのかは分からないが、とにかく来店は難しいらしい。

 主人の怒声を聞いて慌てて屋敷内に戻っていくソルべエを見送りつつ、アミルたちはメルティのために何か手伝うことが出来ればと思うのだった。


 屋敷内では、メルティがアミルたちの持ってきたパンを前に頭を抱えて自己嫌悪に陥っていた。悔しいながらも自分に作れない、とろけるように甘いパンを絶賛し、そしてその技術を羨む。ソルべエは主人を元気づけるためにも、パン屋に直に出向いてその美味しさの秘密に迫ってみましょうと提案する。


 翌日早朝、ソルべエの導きに従って街を行くメルティの姿があった。



 眩しさ防止のためか変装のためか、サングラス姿のメルティ。髪型を変えてるのは変装だろう。


 朝は苦手らしく、とても眠そうにあくびをするが、気を抜いたその瞬間眼前に飛び出してきた小鳥に驚き、尻もちをついてしまう。メルティは、外出に誘い出したソルべエに当り散らす。



 2人が苦労して辿り着いたマデラのパン屋は、今日も朝から大盛況だった。その様子をガラス越しに見つめるメルティとソルべエの主従。訪れる客たちに笑顔で接し、悩み事や日常の会話を次々とこなしていくアミルたち。配達に向かった先で子供たちの希望に満ちた笑顔に囲まれるエアリィ。それらを眺めつつ、メルティは美味しいパンの秘密を探ろうとする。



 いつの間にか内部にまで侵入している。気づかないアミルもアミルだが。


 閉店後も明日の仕込みをしつつ、今日会ったお客さんたちのことを笑顔で語らい、さらにそのお客さんに喜んでもらうための創意工夫を熱心に相談するリックたちの姿を見つめ、メルティの心境にある感慨が湧き上がる。ソルべエに帰ることを告げ、先に歩き出してしまう。


 一方マデラのパン屋では、先に漂着してまだ療養中のカグヤ (CV:桑島法子)のために、香りの高いパンを作ってみようとリックは考案していた。眠っていることが多いカグヤを目覚めさせるには、匂いで食欲を喚起することが有効だと判断したのだ。その香りに関しては今究極のスイーツ作りで悩んでいるメルティにも何か伝えられることが出来るのではないかと、アミルたちは喜ぶ。

 メルティのことを気にかけていた彼女たちの優しさが窺えるシーンだったが、メルティ自身は先に帰宅していたのでその会話を聞いてはいない。だがメルティはそれを聞くまでもなく、すでにこのパン屋で働く彼女たちからかけがえのないものを学んでいた。


 そして後日。夜にメルティの屋敷を訪れたアミルたちは、考案した新しいパンを持参していた。迷惑がられることを懸念しつつも、アイス作りの参考にしてもらいたいという彼女たちの心尽くしだった。自分の主人に対するその思いやりに感動の涙を浮かべるソルべエ。

 以前メルティに追い出された剣幕を思い、その場で辞するつもりだったアミルだが、屋敷内から入ってくるよう声が掛かる。メルティだった。



 主人の許しを得て、アミルたちは客間に通される。そのいかにも洗練された高価そうな調度の揃う部屋に圧倒される3人の中でも、微妙に守銭奴キャラのネリスだけは目を輝かせる。


 そこでメルティによる3人が考案した甘いパンの試食が始まる。



 アミル考案のクローバーハニートースト。


 ネリス考案のブルーベリーデニッシュ。


 エアリィ考案のカスタードパイ。


 どれもとても美味しそうで、メルティの表情もあからさまに嬉しそうなのだが、食べてみないと分からないとまだツンぶった強がりを言う。

 全てを味わい、紅茶で口の中を潤したメルティは、ため息を吐き出すかのように「美味しい」と告げる。彼女が今までに食べたどのパンよりも、この3つのパンは美味しかったという。その反応を見て、心から喜ぶアミルたちを残し、メルティはどこかへと向かう。

 無言で彼女が向かった先、それはあのキッチンだった。気遣って後を追ってきたソルべエを追いやり、メルティは一心にボウルと食材に向かう。その顔はソルべエを追い払った声の質とは違い、とても穏やかなものだった。

 メルティの無礼とも言える中座と、自らの至らなさをアミルたちに詫びるソルべエだったが、それは彼の杞憂であった。戻ってきたメルティは、その押してきたワゴンの上にアイスの入った容器を載せていた。

 彼女が作ったアイスはアミルたちにも配られる。一口食べたアミルはその美味しさに相好を崩す。それはネリスやエアリィも同様だった。異口同音にアイスの美味しさを褒め称える言葉を聞き、我がことの様に喜ぶソルべエ。

 だがメルティはそこで自ら種明かしをする。彼女はアミルたちのパン作りと同じことをしただけだと言うのだ。遠まわしの感謝の言葉だったことに気づいた3人娘は笑顔でそれを受けるが、ソルべエが口を滑らせ、パン屋に出向いてスパイしたことまでバラしてしまう。

 不肖の従者に怒ったメルティだったが、そのあと恐ろしいほどに素直な表情で、アミルたちのパン作りの姿勢を真似たことを告げる。それは誰かに喜んでもらえるため、その誰かの顔を思い浮かべて作ったものは美味しくて当然という食べ物職人の基本的な姿勢だ。今回のパンが今までで一番美味しかったのも、アミルたちがメルティのために、メルティに喜んでもらうために作ったものだった訳だ。

 今まで自分の名誉、虚栄心のためだけに究極のスイーツを作ろうとしていたメルティはそれらを学び、基本に忠実に食べてもらう相手の顔を思い浮かべながらこのアイスを作ったのだった。

 究極のスイーツへと至る手がかりを得た主人をソルべエは涙ながらに称える。だがメルティは赤いアイスを皿によそい、それをソルべエに食べるよう勧める。そしてこのアイスはソルべエの喜ぶ顔を思いながら作ったものだから、美味しいはずだと顔を赤らめながら語る。これまでの忠義、そしてこの視点に至る道のりを示してくれた従者に対する、メルティなりの感謝の印だった。



 そのアイスはソルべエにとって最高の味がしたに違いない。感激の涙を流しながらアイスを食べるソルべエを見つめ、メルティも嬉しそうに微笑む。そして感極まるソルべエを見て、自らも浮かべてしまった涙を見えないよう、そっと拭う。感涙にむせぶソルべエにおかわりをよそおうとするメルティの姿を見て、アミルたちも嬉しさで満たされる。


 そして遅くに帰宅したアミルたちは、まだ残ってパン種を仕込んでいたリックに無事の帰還を報告する。迎えたリックは、そこに見知らぬ4人目の少女と、それに付き従う飛翔体がいることに気づいた。



 彼女は私と従者とが幸せになれるパンをくださいと恥ずかしそうに告げる。リックは初対面だったが、これがアミルたちの話に出ていたメルティとソルべエの2人だと瞬時に理解し、笑顔でこの場違いに遅い時間帯にパン屋を訪れたお客さんを迎える。



 次回に続く。



 エンディング




 今回は昨今のテレビアニメでも稀に見るツンデレ回だった。さすがにツンデレの女王・くぎゅうがキャスティングされるとこうなるのだろうと思われる。とにかくメルティは可愛かったんだけど、使い魔のソルべエがこれまたとても可愛くいじらしく、今回は本当に観ていて楽しい回だった。前回予告ではおどろおどろしい雰囲気だったんだけどね。とにかく今回はキャラも可愛いしストーリーもハートウォーミングで、パンとアイスも美味しそうで素敵だった。本編と独立した話として、興味ない人にもお試し的に観てもらいたいぐらいの神回だったと思う。

 前期の感想文『ペルソナ4』の大ファンでもある私としては、ペルソナで久慈川りせ役で出演していた釘宮理恵が声優の名簿にあったことも、今季の感想文はこの『シャイニングハーツ』で行こうと決めた理由の一つだったんだけどね。今後、里中千枝役の堀江由衣も登場するらしいのでこれまた楽しみだ。なお、ヒロインのアミル役の伊藤かな恵はペルソナではあの根性の悪いエビジョンイルこと、海老原あい役を演じている。驚愕の事実。

 あと言うまでもないが、今回のタイトル「とろけるような」はその求める甘さを示唆するものだが、メルティの名前“Melty”の訳「とろける」と掛かってる。あとメルティが作っていたアイスも溶ける食べ物。


 次回はこれまで存在感だけは示していた、この島を治める城の王子が出てくるらしい。王族よりも、猫耳のメチャクチャ目立つメイドキャラがとりあえずの注目だ。骨董商のシャオメイ(CV:斎藤千和)猫耳だったけど、何か関係が有るのだろうか? 何にせよ今回のメルティと合わせ、ますますハーレム展開になって行きそうだけどねぇ。



 次回登場予定の猫耳モナーメイドさん

【追記】上記メイドの耳は猫ではなく、狐耳だったことが判明。詳しくは次回感想にて。



 あとついでだけど、リックの記憶が戻りつつあるようで、漂流した時の鎧姿で剣も振るっていた。パンアニメの本作としてはあくまでもついでだけどな。




 次回「王子からの依頼」に続く。



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