『ペルソナ4』第5話「Would you love me?(私を愛してくれる?)」の感想

 恒例のテレビアニメ『ペルソナ4』を観ての感想文、今回は『ペルソナ4』第5話「Would you love me?(私を愛してくれる?)」の感想を書きたい。感想を書くにあたって週をまたいでしまったのが残念だ。そう思えるほど今回の内容は面白く、早く感想を書きたかった回だった。



 今後のストーリーの根幹に関わる大きなネタバレは避けていますが、少しのネタバレも観たくない方は、閲覧にご注意下さい。


 はこちらから。


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 物語はベルベットルームより。主人公・鳴上悠(なるかみ ゆう CV:浪川大輔)の前に2つのアルカナ、月(ムーン)と剛毅(ストレングス)が現れ、間もなく悠と絆を結ぶことを予告するマーガレット(CV:大原さやか)。

 両者との邂逅が悠にとって深い意味のあるものになると謎めいた提言を告げ、主・イゴール(CV:田の中勇)と共に悠の意識下より去っていく。




  オープニング



 冒頭、どこか建物の屋上で見知らぬ女の子(美人)に交際を迫られ、うろたえる悠。女の子(美人)はさらに積極的に目を閉じ、悠の眼前に物理的にも迫って来る。


 「私のこと、愛して」


 何故そういう事態になったのか? 物語は3日ほど遡(さかのぼ)る。前回テレビの中の世界に消えたクラスメイトの天城雪子(あまぎ ゆきこ CV:小清水亜美)を救出した悠と花村陽介(はなむら ようすけ CV:森久保祥太郎)、里中千枝(さとなか ちえ CV:堀江由衣)の3人は、達成感と心地よい疲労感とともに学校で再会した。雪子は救出されたものの心身に負った負担が大きく、学校はしばらく欠席するという。

 連日の戦闘で精神的・肉体的疲労がピークに達している陽介に対し、変わらずぴんぴんしている悠のその体力に感心した千枝は、悠に一つの頼みごとをする。


 千枝に連れて行かれた先は、体育館だった。バスケット部が真面目……とは言えない雰囲気の中、部活を行っていた。部員のうち、熱心に練習していた数少ない部員、キャプテンの一条康(いちじょう こう CV:小野大輔)に声を掛ける千枝。千枝の来訪にたちまち笑顔になる一条は、メンバーに休憩を告げ、千枝のもとに駆けつける。

 一条に新入部員を連れて来たと言い、悠を示す千枝。取りあえず見学、という悠の言を無視し、完全に入部扱いして握手して白い歯を光らせる一条。一条の親友でサッカー部の長瀬大輔(ながせ だいすけ CV:杉田智和)もやって来る。彼は幽霊部員が多いバスケ部の助っ人として部活に参加していたのだ。千枝が悠をここに連れて来たのもそういう意味で、廃部になりかけのバスケ部を救うためだった。

 心象風景「花」を咲き散らかせて悠を歓迎する一条。外堀を埋められた感を感じる悠。千枝や長瀬にまで拝み倒されて、しかたなく仮入部することとなる。



 一条(中)と長瀬(右)の2人は、以前述べたとおり、アルカナ・剛毅のコミュを司る。この2人とコミュを築くことにより、悠の使えるペルソナが増えていく。


 力押しによって入部させられた悠。部員たちとの挨拶に臨むが、たった4人を除いて帰宅してしまっていた。幽霊部員以外のメンバーにもおおよそやる気が感じられないバスケ部の中にあって、同様にマネージャーもやる気のない態度を見せる。それが、物語冒頭で悠に交際とキスを迫っていた、あの女の子(美人)であった。



 バスケ部マネージャーの海老原あい(えびはら あい CV:伊藤かな恵)。2年生。超わがままで自分勝手、世界は自分中心に回っている。学校のサボりを常習し真面目なタイプではないが、それも含めて容姿の悪さからいじめられた過去のコンプレックスからの言動。ゲームでは一緒に授業をサボる勇気が無いとコミュを築くことすら出来ない。恋人になるのが実は一番難しいキャラ。剛毅キャラ(アニメ設定では一条)に片思いしている。主人公に影響を及ぼすアルカナはムーン(月)。「JOJO」でいうところのキャプテン・テニール。


 マネージャーでありながら高飛車な態度で帰って行くあいにつられて、他のメンバーも合コンに向かってしまう。やる気の無いのは幽霊部員だけではなく、バスケ部全体に蔓延する構造的なものであるらしい。



 その夜、堂島家に帰って来る悠の叔父、刑事の堂島遼太郎(どうじま りょうたろう CV:石塚運昇)。父の帰宅を喜ぶ菜々子(ななこ CV:神田朱未)だったが、何かを恐れて悠の背後に隠れてしまう。




 堂島が部下の足立透(あだち とおる CV:真殿光昭)を連れて来ていたのだ。悠との初対面でも堂島の後ろに隠れていたが、人見知りする菜々子が可愛い。

 足立が雪子失踪に関して捜査情報を迂闊に喋るのを鉄拳で制する堂島。それはそれだけが理由では無く、悠の友人である雪子を疑うそぶりを見せないための叔父としての気づかいもあったと思われる。

 話題を変え、ゴールデンウィークにどこか出かけようと菜々子に話す堂島。父の職業柄、日頃あまり甘える機会の無い菜々子は大喜びする。弁当を作る役どころを押し付けられる悠。菜々子は無邪気に、行きたいところを宣言する。


 「菜々子ね、ジュネスに行きたい!」


 おおよそお弁当を持って泊りがけで出かける場所ではないが、そこがまた可愛い。本当に近所のスーパー、ジュネスが大好きな菜々子。



 翌日の午前中、校内であいと再会する悠。あいは午前の授業をバッくれてショッピングに行かないかと誘う。バスケ部のための買い物だという方便に乗せられ、授業をサボる悠。感心は出来ないが、勇気ある行動を取る。


 私服に着替え、洋服や帽子など、バスケとは縁もゆかりも無い商品を物色するあいに、悠は乗せられたことに気付く。



 あいにされるがままにヘンテコメガネをかけられる悠。


 小休止のスターバックスぽい喫茶店で折り鶴を折る悠。ナプキンで器用に折り紙する悠を見て、楽しげに笑うあい。他の男子と違った雰囲気の悠に、少し興味を抱く。



 翌日のバスケ部の練習時、マネージャーが現れないことを、援助交際を窺わせる噂をもとに揶揄する部員たち。一条はそんな部員たちの下卑た想像を無粋なものと叱るが、そのやり取りを当のあいが聴いてしまう。

 黙って立ち去るあいを見て、その後を追いかける悠。傷ついたはずのあいを慰めようとする。いつものことだと強がるあいだったが、その後に発した「嬉しい」という言葉は本気のものであった。


 「ずっと気になっていたんだよね……一条君のこと」


 おもわせぶりな態度に一瞬息をのんだ悠を気にかけることも無く、一条への募る想いを打ち明けるあい。彼女は自分を庇(かば)ってくれた一条の言葉を嬉しく思ったのだ。そして悠は、一条に好きな人がいるのかどうかを確認してくれるよう協力を依頼される。


 部活の後片付けの際、体育用具室でさっそく一条に質問する悠。ストレートな質問に面喰らいながらも、一条はある女性の名を告げる。


 一条「さ、里中さん……」

 悠  「げえ!?」



 意中の人を告白し、照れる一条。


 意外な人物の名を聴かされ、驚愕して思わず咳きこんでしまう悠。千枝と席が隣ということすら羨ましい一条は、悠を恨みがましく見やる。そして、聞いたからには千枝との仲を取り持つよう要請し、一条はその場を去る。

 一条が立ち去った後、静かに用具室の備品の跳び箱の上部を開く悠。そこには一条の告白を確かめるために忍び込んでいたあいが意気消沈していた。


 そして一条に振られた悔しさから、あいは屋上に上がり金網を乗り越えんとする。千枝に対する恨み節を叫び、自殺を示唆するあいを必死に止める悠。あいはついに泣きだしてしまう。

 落ちついた後、身の上話をするあい。可愛くなかった頃にいじめられた経験、見返してやろうと懸命に努力して可愛くなったが、それでも好きになった人には顧みられないという現実を悲観する。

 励ます悠を、なにか特別な目線で見つめるあい。そして悠の手を取り、こう告げる。


 「私たち、付き合おうか?」




 物語の進展がめでたく冒頭の回想シーンに繋がったところで、CMアイキャッチ。根気と伝達力が1段階上がっている。あいという厄介な女子と付き合うことで、その辺が上昇したのかも知れない。



 翌日、朝の登校時に陽介と千枝に出会う悠。そこに、挨拶もそこそこに闖入者がやって来る。それは悠のことを下の名前で呼び捨てにして、すっかり恋人気分のあいだった。呆気に取られる陽介と千枝を残し、学校をサボって自分に付き合うよう悠に言いつけ、腕を組んで立ち去っていく。傍目から見ても恋人同士にしか見えない。

 その後もあいのわがままに振り回される悠。プリクラ(おそらくアトラス製)の前でキスをせがまれるなど、悠はあいの積極性を持て余す。


 翌日、担任の諸岡金四郎(CV:龍谷修武)にサボりを叱責される悠(とあい)。未遂で留めたものの、雪子も巻き込まれた連続殺人事件を追う捜査に悠を誘う陽介と千枝だったが、そこに流れて来る悠の携帯の着信音。



 あいの登録名が「エビ」というところがぞんざいで良い。ちなみに着信音は有名なサラサーテ作曲の「ツィゴイネルワイゼン」。関西人はこれを聴くとまず桑原和夫の「神様」ギャグを連想する。



 電話に出た時のあいの余りの高飛車ぶりに即ギリする悠であったが、そのままにしておくとさらに性質が悪くなることも知っている。席を外し、慌てて詫びの電話を掛け直す様が哀れだ。


 さすがにこの事態に穏やかでないのが千枝だった。あいに振り回される悠を見て、怒りをぶちまける。これが友人を思う態度なのか、それとも嫉妬から来るものなのかは定かではないが、千枝の怒りを聴かされた陽介は後者と取ったらしい。一人で合点する陽介にピンと来ない千枝のギャップが可笑しい。



 3日後、バスケ部の部活で練習試合が決まったことを部員たちに告げる一条。そこに陽介がやって来て、千枝をバスケ部のマネージャーに推す。陽介としては、千枝があいから悠を奪うためのお膳立てをするつもりだったのだ。恋愛感情はさておき、悠からあいの影響を排したい千枝も、試合での雑用ぐらいならと、しぶしぶながら引き受ける。千枝が好きな一条はもちろん諸手を挙げて大賛成。

 そんな一条を見て、あいはもちろん面白くない。千枝を石化させんばかりの形相で睨みつける。睨みつけられる理由が分からない千枝と、悠を巡っての女の闘いと誤解する陽介、千枝さえいればそれでいい一条、何が起こっているのかよく理解できない朴念仁の悠と、場には複雑な感情が入り混じり、異様な様相を呈して来る。

 バスケ部の更衣室で悠と2人きりになった一条は、次の試合を最後に部を辞めるかもしれないとその胸の内を語る。おそらく部内で一番バスケを愛する男からの意外な言葉に驚く悠。両親からの反対をその理由に挙げる一条。親友の長瀬にしか語ったことの無い話を悠に話し、次の試合で完全燃焼すること、そして勝って千枝に告白することを誓う。


 そして4月29日の昭和の日、いよいよ練習試合の日がやって来た。

 応援に来ただけの陽介まで急造の部員に狩り立てなければならないほど部員が揃わず逼迫した八十神高校バスケット部。サッカー部のはずの長瀬も付き合い良く選手として顔を出している。

 試合の模様を録画するため、カメラ合わせをする千枝の前に立ちはだかるあい。相変わらず敵意丸出しの形相だ。



 猛ゲンカを始める両者を生暖かく見つめる陽介。(陽介の脳内で)修羅場の主人公たる悠に皮肉を言うが、朴念仁の悠は何を言われているのか良く分かっていない。


 そうこうしているうちに、試合が始まる。

 ただマネージャーの2人は、試合そっちのけで罵り合いを始める。(本人に自覚は無いが)一条に愛され、悠を友達と断言できる千枝に対し嫉妬するあいは、ついに千枝の横顔を平手で張り飛ばしてしまう。そして顔面を掴み合う両者。



 お互い噛み合わない感情を、実際の暴力でぶつけ合う2人。千枝の戦闘能力を考えると、本気を出したらあいちゃん死んでしまいかねないんだけど。そして相変わらずそんな2人を生暖かく見守る陽介。


 残り時間がわずかになる中、ビデオ撮りも忘れて喧嘩する2人に、一条の最後の試合を撮影しないことは許せないと悠は苦言を呈する。周囲の喧騒をよそに、懸命のプレーでゴールを奪う一条。そこで試合は終了する。

 40対68と試合は完敗だったが、一条は全力を尽くして戦った。その姿は、嫉妬に狂うあいを我に帰らせるだけの迫力があった。


 試合終了後、八十神高校生行きつけの中華料理店「愛家」で打ち上げを行うバスケ部。



 アニメ版オリジナルキャラクターの中村あいか(なかむら あいか 左 CV:悠木碧)。悠たちのクラスメイトという設定。『ペルソナ4 ゴールデン』で登場するキャラだと思うんだけど、出て来たからには意味があるはずなので予想すると、アニメでは表現しにくいコミュ担当キャラの代理で、主人公とコミュを築く役どころなのかもしれない。ハーミット(隠者)とかエンプレス(女帝)とか。


 この試合を持って、不本意なまま部を辞めると言っていた一条。明るくふるまう彼を、その事情を知っているために含蓄のある目で見守る長瀬と悠。2人は最後の試合を勝利で飾れなかった事を詫びるが、一条は明るい表情で引退を撤回する。


 「俺、辞めるのを辞めるわ」


 一条にとって、バスケを愛する気持ちは抑えきれないということに気付いた今日の試合だった。負けたまま終われないと言い、悠が入部してくれたからこそ今日の試合が行えたとして、逆に悠に感謝の言葉を掛ける。そして勝利した上で今度こそ千枝に告白すると悠だけに聞こえる声で言い、ともにバスケを続けることを悠に望んだ。

 千枝は撤退を決めたが、あいは未だ届かぬ想いを胸に、マネージャーを続行して良いかを一条に問う。当たり前だと快諾する一条の言葉に、あいはこれまでに無い素直な表情で顔をほころばせる。


 店を出て、雨上がりの中を帰宅する一行。最後尾の悠に話しかけるあい。


 「もう、1人で大丈夫だから」


 悠の優しさに甘え、振られた傷心を癒して来たあいだったが、一条の真摯な態度に感化され、改めて今は届いていない想いを伝えるために悠の元を去ることを決意したのだ。



 短い付き合いの記念品として、あいから手渡された「プリクラの写真」。朴念仁のはずの悠のこのうろたえぶりは、おそらく今後もこれを越えるものは見られないという最大級の感情がこもった表情。


 その前向きな気持ちに自らを導いてくれたのは、悠のおかげだと笑顔で語るあい。そして果敢に一条の隣に駆け寄り、友達として接するかのように談笑する。今は叶わぬ想いを、いつか叶えるために。

 優しい表情でそれを見守りつつも、さすがに今回は最後に安堵のため息をつく悠であった。



  エンディング



 今回はアニメ開始以来繰り返された【戦闘+心の闇と向き合う=仲間獲得】というパターンから解き放たれた日常パート。仲間以外の人たちとの絆を深め、それらのコミュを手に入れるという面が描かれている。

 【主人公の心の成長=ペルソナの強化】というこの特殊な物語の説明パートでもある。もちろんそれだけでなく、前回までの心の闇を見せられるというやや鬱な展開から物語の流れに変化を付ける、普通に楽しいパートでもあった。



 今回は月と剛毅のコミュを一気に入手した主人公。運動部のコミュは2人いて描写が結構複雑なのだけど、もう一度ぐらいコミュを深める描写はあるのだろうか。あって欲しいんだけどね。月コミュの方も、今回だけで終わりにするのは惜しい気がする。夏祭りやクリスマス、雪子やもう一人のキャラとのデート場面の修羅場なんかもぜひ観たい。


 今エンディングで確認したけど、月コミュは終わったっぽい。タロットの両面に月の絵が描かれていて、コミュ終了を暗示するものだったので。



 翌日。エンディング後のエピローグ。雪子が復帰し、いよいよ自称特別捜査隊の活動が本格的に再開されようとしていた。連続殺人事件を解決できるのは、テレビの中の世界に行くことが出来る彼らだけに可能なことなのだ。



 千枝は「緑のたぬき」、雪子は「赤いきつね」とそれぞれのカラーに合った麺が好物。これは原作ゲームで東洋水産(マルちゃん)とタイアップしているので、そのままの商品名で出ていた。


 千枝と雪子のカップ麺の味見をねだり、そしてついつい食べ過ぎてしまう悠と陽介。この代償は、きっと次回に支払わされることだろう。ここでは大事な具を主人公に食べられて悲しそうにつぶやく雪子の名言が再現されていて、原作ファンは感涙。


 「お、おあげ……」(切ない口調で)



 次回は本作中、一番きっついキャラがついに登場する。ハマる人はメチャクチャ笑うけど、ハマらない人はドン引きする可能性もあるという、因業なキャラ。どちらにしてもこのキャラのシャドウを真顔で見ることは不可能だと思うので、ちょっと不安な気もするが、ここまで素晴らしい内容のアニメを制作し続けて来たスタッフの手際を信じたい。



【追記】
 あと最後に、書き忘れていたけどずっと書きたかったことを一つ。第3話でペルソナ悪魔に「ジャックランタン」がなぜ選ばれたかがようやく分かった。あれってハロウィンの時節柄だったからなんだよね。



 これって、ハロウィンでよく使われる、カボチャのオバケそのものだもんね。なんでこんな単純なことにすぐ気付かなかったのか、我ながら呆れる。




 次回「I'll beat you, and beat you good(絞めんぞ!キュッと絞めんぞ!!)」に続く。



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