春休みという事で 『ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇』の感想文

 自業自得ではありますが、個人的に残念な事がありました。その瞬間から、胃がキリキリと痛むほど、相当こたえています。リアルの世界では無い、ネットの世界でこんなにこたえる事があるとは思いませんでした。煽りの耐性は我ながら常人以上にあると自覚していますが、それ以外のダメージに自分がこれだけ弱いとは、恥ずかしながら知りませんでした。


 さて置き、震災の影響で触れる機会も気概も持てなかった、ゲーム感想文を敢えて今回、挙げようと思います。当方にとって、そして当方のブログにとっての「日常」とは、ゲームの話をする事です。震災からの復興とは、気持ちの問題も大きなものだと思います。もちろん、自分がそう思うだけの自己満足なのかも知れない事を百も承知で申すのですが、拙ブログが震災で傷ついた全ての方々の気持ちを日常の方向へほぐす役割が担えるのならば、これに勝る喜びはありません。


 今回挙げるのは、『ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇』の感想文。時期的にずいぶん場違いな感想文だと思えますが、実は【ゲームクエスト】に投稿したのも、2年前のこの時期でした。感想文中でもネタにして、またそのミスマッチも受けたのか、ありがたい事にその月の月間賞を戴きました。その日担当して下さった編集さんがとても高く評価してくれて、とても嬉しかった事を2年経った今でも昨日の事の様に覚えています。【ゲームクエスト】における、当方の最良の思い出の一つで、個人的にも気に入っている感想文です。再録で恐縮ですが、楽しく読んで下さると嬉しいです。


甘茶さん の「ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇」 (プレイステーション2)
記憶から枯れることのない「ひと夏の思い出」
誰にでもある、しかしその人にとってはかけがえのない宝石のような夏休みの日々がこの感想文からにじみ出ています。感動しました。ゲームってすごいですね。

甘茶
記憶から枯れることのない「ひと夏の思い出」(2009.03.26)
 世間では、学生さんが『ぼくのはるやすみ』を満喫している事だろうが、現在そういったものとは無縁の当方は『ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇』の感想を書かせて頂く。哀愁と切なさとその他諸々の感情をごまかすべく、「ぼく」視点での散文調の表現を随所に交える事をまずお断りしておく。頭が変になったと思われたくないから……(笑)。それに伴い、ゲームの技術面や物語進行上のフラグ、やり込みなどといった無粋な話も今回は避けたい。あと、季節感の無い作品の感想、誠に申し訳ない。夏はホラーゲーム尽くしで行きたい故、ご容赦を。


 主人公、「ぼく(CV:村田貴輝)」が8月の1カ月間を過ごすことになる富海(ふみ)の里は、山あり海あり、谷川に森林ありと、まさに我々現代人が想定する、夏の魅力に溢れる田舎そのものだ。母親の出産のため、ここに住む叔母夫婦の家に預けられる、「ぼく」。親元を離れる事に因る当初の不安は、叔母一家の優しい心遣いに触れるうちに早々に失せてしまう。素敵で快適な、大自然との触れ合いの生活の始まり……。

 朝のラジオ体操は、眠くて面倒だけど参加しよう。一日の始まりとして、これ以上無いほど爽やかで上々だ。朝食を済ましたら、お楽しみの虫取りに出発だ。カブトムシやクワガタを捕まえて、タケシ兄ちゃんの持っている虫に相撲で挑戦。勝ったり負けたりやっていると、すぐに夕暮れ時が来てしまう。そうそう、子供のころは一日が短く感じて仕方が無いほど、周囲が楽しい事で満ち溢れてたよなぁ。叔母ちゃんが夕飯を用意して待っていてくれている、あったかくて心落ち着く家に帰ろう。

 叔母ちゃんの家は、4人家族。いささか思慮が足りないながらも健(すこ)やかに育った2人の少年、タケシ(CV:高山みなみ)とシゲル(CV:大谷育江)。「ぼく」がここにいる間は兄と弟になるんだ。もうすぐお兄ちゃんになる「ぼく」としては、この環境は勉強になるかも知れないな。そして息子たちそっくりの外見・メンタリティーの持ち主のマイペース親父の叔父ちゃん(CV:天田益男)。「ぼく」と2人の息子、そして普段はだらしない叔父ちゃんを含めた男たちを見守るしっかり者の叔母ちゃん(CV:一城みゆ希)。まさにどこかで見た、古き良き家族の風景。

 叔母ちゃん家は、民宿「茜ハウス」をやっている。宿泊するお客さんも何人かいるけど、みんな何やら一癖ありそう。写真好きの陽気な外人、サイモン(CV:デビット・ニール)は機会がある度に、ぼくらの写真を撮ってくれる。ちょっと寂しい話だけど、サイモンの写真は夏が終わった時の何よりの思い出になるんだ。自称女子大生の芳花お姉ちゃん(CV:田中敦子)は、気が強いけど美人だ。きれいなお姉ちゃんが増えるのは大歓迎だけど、何やら不穏な空気を子供心ながらに感じたり……。


 近所の相良さん一家の、靖子お姉ちゃん(CV:坂本真綾)と光ちゃん(CV:最上莉奈)の姉妹とは度々関わり合う事になる。「ぼく」のおせっかいが靖子お姉ちゃんの心の中の小さな痞(つか)えを取り除くお手伝いになるとは思ってもみなかったけどね。それから光ちゃんの占いはとても良く当たるんだ。一日の行動を起こす前に、一言アドバイスを貰うのも良いかも知れない。あと、相良のお爺ちゃん(CV:平野稔)がお医者さんをしている診療所での不思議な思い出と、見たことも無い不思議な50円玉は、とても心に残っているよ。


 時にハプニングが子供心を揺らすけど、ネガティブな印象は2秒後には鶏の様に全て忘れ、サイダーの王冠を探す事に血道を挙げる、これぞ子供の特権。子供は興味の対象が幼い分、純粋でその意思も強固だ。でっかいでかいクワガタを捕まえた時の興奮は、大人が欲しかった新車を入手した時の興奮などを遥かに凌駕(りょうが)するであろう。異性がらみの興奮には、さすがに負けるかも知れないが、それはまぁ、仕方ないだろう。


 相良じいちゃんの肩を叩いて、貰ったお小遣いで買った駄菓子の味(文字を見て味覚に思いを馳せるだけなわけだが)。泳いでいる最中、出会ったタコを素手でつかんで引っ張り回した感触。タケシ兄ちゃんの最終兵器を倒して獲得した、何よりも素晴らしい景色。洞窟での不安感と、その後の大発見。夕暮れの海岸で、芳花お姉ちゃんが奏でる見事なギター。夜釣りで釣り上げた、信じられないほど大きなイシダイ。サイモンと約束した、タケシ兄ちゃんとシゲルと「ぼく」とでアサガオを咲かせる競争……。何もかもが良い思い出で、語り尽くせない。

 「ぼく」のズボラさが災いし、アサガオは枯らしてしまったけれど(泣)、ひと夏のこの思い出が「ぼく」の記憶から枯れる事は無いだろう。語り尽くせぬ珠玉の思い出のあるひと夏って、普通に憧れる。いや、憧れて止まない。最後のお別れのシーン、見送るみんなに手を振る「ぼく」の姿に涙を流すのは、きっと当方だけでは無かったはずだ。そう思いたい。この感動の涙は、決して加齢に因る涙もろさなどでは無いはずだ。


 なあ、みんなも泣いただろ?
 

 『ぼくのなつやすみ』シリーズのキャラクターデザインは、薬用ハンドソープ「キレイキレイ」のCMでお馴染みのイラストレーターの上田三根子さん。このPOPでファンシーな絵が、本作シリーズがヒットした秘訣だろう。有限会社・草薙の描くリアルで、それでいて絵画的に美麗な夏の背景も、素晴らしい。



 主要キャラ勢揃いの図。左から、芳花お姉ちゃん、ロケット好きの洋くん(CV:進藤一宏)、謎の外国人サイモン、シゲル、叔母ちゃん、「ぼく」、叔父ちゃん、タケシ、看護婦の凪咲(なぎさ)さん(CV:石塚理恵)、光ちゃん、靖子お姉ちゃん。

 ちなみに有りし日の「ぼく」を、大人になった現在の視線で振り返る役割として、タレントのダンカンがナレーターを演じている。とつとつと、素朴な口調が聴かせる。



 夕暮れの海辺にある公園。夕日を撮影するサイモンと佇む「ぼく」。この絵はすごく好き。


 本作はPSP版でリメイクされています。機会があれば、ぜひやってみたいと思っています。




 オープニングと、主題歌である「少年時代」。このゲームにこれほどマッチした曲は無いだろう。ゲームでは沢田知可子バージョンだけど、多くの人の琴線に触れるのは、井上陽水バージョンだと思う。でもこれも実に良い曲。



 本作のCM。ゲーム画面を一切見せずに「魅せる」演出。ソニーは昔からCMが上手い。「せがた三四郎」以前のセガはCMが下手だったなぁ……。本作のCMはたくさんあるので、いろいろ探してみて下さい。どれも良いですよ。



 面白動画も紹介したかったけど、もうちょっと気持ちが落ち着けば、追記しますね。



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