『イナズマイレブンGOギャラクシー』第35話「希望の欠片」の感想 【ニセ剣城の本当の顔が見たい】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第35話「希望の欠片」を観ての感想を書く。次回への展開も踏まえた物語の大きな転換点を迎えたという印象。伏線が回収されつつ新たなフラグが立ったりしてね。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


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 松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】は、星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の本戦4回戦、準決勝戦で【惑星ラトニーク】を破って決勝戦に進出する。

 チーム・ラトニークのバンダ・コローギュ(CV:金野潤)が文字通り命を賭(と)して戦ったその試合は素晴らしい余韻(よいん)を残してアースイレブンメンバーの心に留まる。

 【ギャラクシーノーツ】号に乗り込み、決勝戦の舞台に向かうアースイレブンの選手たち。特にバンダと個人的に友情を交わした九坂隆二(CV:岡林史泰)は、窓外に去りゆく緑の惑星ラトニークをいつまでも見つめていた。


 地球人と比較して圧倒的に短い寿命を懸命に生き抜いた友達(ダチ)の思い出を糧(かて)に、九坂はもっともっと強い人間になることを誓うのであった。



 キャプテンの天馬はそんな九坂の決意を背中から感じ、自身も成すべき大きな使命があることを思い返す。



   オープニング



 悲しい思い出も辛かった思い出も、そして楽しかった思い出も内包(ないほう)した旅路はもうすぐ終焉を迎える。この銀河の危機を救う方法を知るというカトラ・ペイジ(CV:上田麗奈)に託された、4つの希望のカケラの収集はすでに完了していた。


 ギャラクシーノーツ号の制御室で4つの欠片(かけら)を並べ、機械を操作する蒲田静音(CV:くじら)。鉄角真(CV:泰勇気)や野咲さくら(CV:遠藤綾)は4つ揃うことで欠片が意味を持った存在であることを意識する。

 この4つの欠片をどうしようというのか? 天馬は仲間内で欠片の正体をただひとり熟知するであろう水川みのり(CV:高垣彩陽)に問いかける。

 ポトムリ(CV:三木眞一郎)の精神が内在するみのりですら、欠片の深い意味は分からないらしい。だからこそ蒲田の協力を得て欠片を調べることにしたのだという。蒲田が操作していた機械は非破壊で物質を調べる3Dスキャナーだったのだ。

 そしてスキャンが完了した瞬間、みのりは呻(うめ)くようにつぶやく。


みのり「やはり……」


 つまり彼女には大方の想像がついていたのだ。カトラが何を集めさせてきたのかを。集めてくれたことを感謝するみのりの言葉を聞き、天馬にも自然と笑みがこぼれる。

 ただ欠片の意味はまだ説明がされていない。神童拓人(CV:斎賀みつき)はそれをみのりに問う。惑星サンドリアスで手に入れた「太陽岩」、惑星サザナーラで獲得した「海水晶」、惑星ガードンでゲットした「紅蓮の炎石」、惑星ラトニークで入手した「緑光石」……それらはいずれも伝説の鉱石「ミスリル」を産み出す原料となるもの……「ミスリルストーン」なのだとみのりは解説する。



 左から「緑光石」、「紅蓮の炎石」、「太陽岩」、「海水晶」


 みのり(ポトムリ)が惑星キエルの化学者だった頃、ミスリルを製造するために探しに探したが、入手することが出来なかった素材だ。

 それが地球人である天馬たちの協力で今目の前にある。みのりの瞳に光るものが見えた。そしてみのりはその身体を輝かせ、一人の男性に姿を変える。



 何と、その場に現れたのは死んで魂だけの存在になったはずのポトムリだった! 予期しない驚くべき事象に一同は驚愕するが、ポトムリは元の姿に戻れたことを素直に喜んでいた。



 ピエロの姿がポトムリの正体という気持ちが抜けきれなかった西園信助(CV:戸松遥)はあれはぬいぐるみだと森村好葉(CV:悠木碧)に突っ込まれる。ちびっこボケちびっこツッコミだ。


 だがこの場にポトムリが現れたということはみのりが消えたということと同義だ。井吹宗正(CV:鈴木達央)がみのりの消息を問う。ポトムリはミスリルストーンが揃ったことで高揚(こうよう)した自身の精神状態がみのりとの結合度を高め、周囲にはみのりの姿よりもポトムリの姿が見えている……ということらしい。

 科学者らしく分からない人が聞いても理解不能な物言いに、鉄角やさくらはまったく分からない状態。過程を気にしない瞬木隼人(CV:石川界人)は結果的に本来のポトムリが見えているのだろうとなかなか鋭い。


 ポトムリはこれでミスリルを作り出すことが可能だと語る。彼が惑星キエルで研究していたこと、それはブラックホールを消失させるためにコズミックプラズマ光子砲を作り出すことだ。その高出力にこの世でただ一つ耐え得る素材、それがミスリルなのだ。皆帆和人(CV:代永翼)や真名部陣一郎(CV:野島裕史)といった面々、特に理系に造詣(ぞうけい)が深い真名部はメガネをしきりに押し当ててポトムリの動向に見入る。

 ポトムリはスキャナーから欠片……ミスリルストーンを取り出しケースに収める。カトラがこれらを集めるよう天馬に指示したのは、ミスリルの材料を集めるためだったのだ。


 コズミックプラズマ光子砲の開発、及びその核となるミスリルの製造の知識、設計図的なものは確かにポトムリの脳内にあろう。しかしそれを製造するだけの大掛かりな装置などはこのギャラクシーノーツ号内には無いのではないか? 蒲田がポトムリにそう尋ねたその時、突如天井の照明が撃ち抜かれる!



 銃を撃った人物。それは剣城京介(CV:大原崇)だった! 視聴者的にはコイツがニセモノであることを23話の時点から知っていたわけで、やっと正体を現したかというのが正直な感想。


 危険な行動を制止しようと九坂が近寄るが、その足元に光線銃の熱線を引き絞る剣城(ニセ)。さらに近寄る瞬木たちにも容赦なく銃口を向け、動くなと命令する。

 この場を制圧したニセ剣城は、騒動のショックからか元のみのりの姿に戻ってしまったポトムリに、欠片の入ったケースを渡すよう命じる。

 だがみのりはその脅しに屈しようとはしない。これが宇宙の希望そのものであるということが、絶対に他者に渡してはならないという気概につながっているのだろう。

 渡さなければ容赦なく撃つとニセ剣城は凄むが、みのりはケースを抱き抱えるようにしてその要求を拒む。前回、この姿を「希望のカケラをパクろうとしてるのでは?」と想像してしまった自分が恥ずかしい。


天馬「どうしちゃったんだよ!?」

 緊迫する場面、友の信じられない行為に天馬は動揺を隠せない。ただ友ならあの目のクマとかに早めに気づくべき。他方、市川座名九郎(CV:小西克幸)はこの事態にも油断なくあたりを見回し、何かを画策している様子。


 埒(らち)があかないと判断したニセ剣城はみのりに駆け寄り、強引にケースを奪おうとする。相次ぐ友の常軌を逸した行動に天馬は憤(いきどお)るが、そこに背後の座名九郎から声を潜めた指示が送られる。



座名九郎「次に(剣城が)背中を見せた時がチャンスです」


 2人がかりで挟み撃ちにしようという座名九郎の作戦は効果的に思われた。しかし声を潜めての会話だったはずなのにニセ剣城はそれを聞いてしまう。地球人ではないのだからその能力も当然かも知れないが。

 完全に警戒したニセ剣城はみのりを盾に、隙を見せなくなってしまう。これでは座名九郎も手が出せない。


神童「お前、剣城じゃないな!!」


 そこでようやく神童が核心を突く。まだ騙されていた天馬たちは驚くが、指摘されたニセ剣城は笑って、自分がニセモノであることを明かす。


ニセ剣城「俺は剣城京介の顔を借りている……とだけ言っておこうか」


 かつて好葉が剣城に感じていた違和感は外れてはいなかった。確信こそ無かったが好葉は早々に剣城がニセモノと入れ替わっていたことを鋭い観察力で感じていたのだろう。


 本物の剣城を排除しない限りこの計画は成り立たない。心配する天馬は本物の剣城が何処(どこ)にいるのかを問いただす。

 ニセ剣城は「さあな」と嘯(うそぶ)き、銃の上部にあるスイッチを操作する。すると掴んでいるみのりごとその姿が光に包まれる。空間転移(テレポート)で逃げるつもりなのだ!


 そうはさせじと飛びかかるのはピクシー(CV:北原沙弥香)だった。ニセ剣城はみのりとピクシーを連れたまま、その姿を消す。大事な希望のカケラも持って。



 大切な仲間、そして文字通り宇宙を救う鍵となる希望のカケラを奪われ、何も出来なかったアースイレブンのメンバーは落胆する。特に仲間だと思って来た剣城がニセモノだったということを今まで見破れなかったことが大きなショックだっただろう。「演技」が本分である歌舞伎役者として、座名九郎は他のメンバーよりもそのことに責任を感じていた。



 逃げたニセ剣城がたどり着いた場所。そこは巨大な宇宙船の内部であった。ニセ剣城とみのりを待っていた人物が声をかける。それは銀河連邦評議員という肩書きでアースイレブンをここまで導いてきたはずのビットウェイ・オズロック(CV:津田健次郎)だった。

 黒幕がオズロックであったことにみのりは驚く。その隙にニセ剣城にケースを奪われ、光磁帯の中に閉じ込められてしまう。

 ニセ剣城に下がるよう命じるオズロックに対し、ニセ剣城は成功報酬を求める。オズロックはそんなことかと言わんばかりの侮蔑の笑みを浮かべつつ、好きなだけくれてやると返す。そして改めてこの場から消えるよう言い渡す。


ニセ剣城「消えるさ、この鬱陶(うっとう)しい地球人の顔にもうんざりだからな!」


 ……と本物の剣城が聞いたら激怒しそうな捨てゼリフを残し、ニセ剣城はケースを置いて去って行く。


 邪魔者が去り、オズロックはみのり……いや、ポトムリに対して恭(うやうや)しく出会いの祝辞を述べる。みのり=ポトムリは再度その姿を元の状態に戻してオズロックに対峙(たいじ)する。

 そして銀河連邦評議会議員である肩書きを無視し、このような蛮行(剣城を誘拐してニセ剣城を送り込んだことや、ミスリルストーンを強奪したこと)を重ねてブラックホール除去の妨害をする理由を尋ねる。

 オズロックはこの場における勝者ゆえの余裕からその質問を一切無視して見せる。そして逆に頼みがあると要望を告げる。


オズロック「コズミックプラズマ光子砲を完成させて欲しい」


 ??? それは言われなくともポトムリは作るつもりだったものだ。オズロックの真意をなおも尋ねるポトムリに対し、オズロックはおどけた口調でそれを愚問と両断する。

 ブラックホールを消失させて宇宙を救うためだと語るオズロック。だがそれならポトムリを誘拐するようなことなどする必要がない。敬愛するカトラ姫の導きによって製造過程の直前まで来ていたことをポトムリは語る。

 カトラの名を聞いたオズロックはそこで衝撃的な発言をする。



オズロック「彼女は我々の協力者だよ……」
ポトムリ「何!? では何処におられる!?」


 オズロックの言が本当であればカトラが生きているということになる。ポトムリはこれまでの科学者としての冷静さを失ってカトラに会わせて欲しいとオズロックに懇願する。

 その要求を容(い)れるには、もちろんこちらの要求を先に飲まなければならないと言外に告げ、オズロックはコズミックプラズマ光子砲作成に協力するよう再度求める。

 オズロックの態度にどうしても理解、信用できない面があることは確かだった。だが囚われの身となり、カトラに会うためという大義名分の前に、ポトムリの意思は是非もない状態に追い込まれる。




 ニセ剣城と、さらにみのり(ポトムリ)が途中下車してしまった状態のギャラクシーノーツ号だが、その歩みを止めるわけにも行かず宇宙を疾走し続けていた。

 通路では信助と空野葵(CV:北原沙弥香)が落ち込んだ表情でうなだれていた。そこにやって来たさくらが様子がおかしいことに気づいて声をかける。2人は剣城がニセモノだったことに対するショックが大きく、まだその事実を受け入れられない状態だった。

 さらに心配なのは彼らと同様にショックを受けているであろう天馬が部屋に閉じこもったきり出て来ないことだった。

 さくらは、彼らがアースイレブン結成前からの雷門中の仲間であることを慮(おもんぱか)り、落ち込む理由に理解を示す。


 本物の剣城を心配するあまり、葵は今にも泣き出しそうな表情になる。彼らの中でも一番ショックを受けているのは天馬だと信助は推察する。



 天馬と剣城は競い合うライバルであるとともに、互いの力を認め合った親友でもあったのだ。天馬が出したパスを剣城がシュートする。それは雷門中最強のホットラインとして信助をはじめとする仲間たちに絶大の信頼を受けていた。


 初めての出会いでは彼らは敵同士だったが、サッカーを介して剣城は変わっていった。誰よりも天馬の影響を受けたのは剣城だった。


葵「それはきっと神童先輩以上だと思う」

 なぜか葵のこの言葉に合わせて神童の現在の姿がかぶさる。天馬と剣城の間に入れない状況を悲観しているように見えて仕方がない。あるいは「神童先輩異常だと思う」と聞こえたか。


 影響を受けたのは剣城だけではないと信助は語る。ドリブル以外はダメダメだった天馬のサッカー技術が、剣城というライバルを前にしてメキメキ上達していき、ついにはキャプテンの座に就いたことを挙げる。



 そしてキャプテンになった天馬を影に日にサポートしていたのも、実は剣城であった。ホーリーロード決勝戦で天馬をはじめて下の名で呼び、決勝ゴールのお膳立てをしたのも剣城だった。


 親友でありライバルという関係性に、さくらはうっとりと憧(あこが)れに似た感情を抱く。孤独な新体操時代を送っていた彼女には無縁の存在であり、その関係性を羨(うらや)ましいと思う。


 だからこそ、その喪失感が大きい。今この場に天馬にとってもっとも必要とされる人物がいないのだ。ぽっかりと心に穴が開いたような心境なのではないだろうか?

 信助は放ってはおけないと、もう一度声をかけることを決意する。さっきさくらがこの場に来た時に落ち込んでいた2人は、一度天馬に声をかけて拒絶された直後だったのだろう。



 天馬の部屋のドアを叩く音が響く。ドアを開けた信助と葵は、明かりもつけずにベッドに座り込む天馬を見て絶句する。

 慎重に声をかける2人に対し、天馬は剣城が何処にいるのかとつぶやく。剣城は親友のはずなのに本物とニセモノの区別がつかないまま今まで行動を共にしていたことに、天馬は激しく自己嫌悪していた。

 様子がおかしいと感じたことはあったが、それ以上深く考えず、結果入れ替わっていることを見逃していた自身に腹を立てる天馬。

 そしてそのボタンの掛け違いがさらなる悲劇を招いたとして、みのりやミスリルストーンまでもを奪われてしまったことを悔やむ。


 落ち込む人間には時には強い叱咤も必要だ。葵は珍しく声を荒らげて天馬に対する。



葵「天馬、心配なのはみんな同じ……でも天馬はキャプテンなんだよ!!」


 その使命感を思い出した幼なじみの瞳に戻りつつある光彩を葵は見逃さない。しっかりしなくちゃと、キャプテン天馬の立場を想起させる。


 そこに蒲田からギャラクシーノーツ号の先頭車両に集合するよう連絡が入る。緊急通信が入ったというのだ。この状況で連絡が入るとしたら、そのチャンネル先はある程度限定される。いずれにせよ剣城の問題を進展させる話になることは間違いない。



 先頭車両、ホログラムによる連絡を送ってきたのはグランドセレスタ・ギャラクシー大会のコーディネーター、イシガシ・ゴーラム(CV:遠藤綾)であった。



 ニセ剣城が【ファラム・オービアス】より送り込まれたスパイではないかとイシガシは告げる。だがオズロックの命(めい)によってニセ剣城を送り込んで来たのはイシガシ自身だったはずだ。

 おそらくイシガシは罪をファラム・オービアスのみに押し付け、自分たちへの疑いの目をあらかじめ逸らそうとしていると思われる。オズロックがミネル・エイバ(CV:佐藤健輔)の指示を受けて行動していたことを思うとこれは全面的に作り話ではないからバレにくいという面もある。

 ミネルがなぜ剣城を誘拐するように命じたのかと言えば、元をたどればララヤ・オビエス(CV:高垣彩陽)が剣城をお婿(むこ)さんにしたいというワガママから来ているのだけど……。オズロックとイシガシはそれを上手く利用したと言えるだろう。


 ファラム・オービアスといえば次の決勝戦の相手だ。みのりを誘拐した行為と合わせ、アースイレブンに対する強迫行為なのではないかとイシガシは告げる(いけしゃあしゃあと)。

 井吹は卑劣な行為に怒りを募らせる。煽っていたイシガシは冷静になるよう告げ、みのりを心配する(素振りをする)。


 しかしそこで「これまで何していたの?」と言いたくなる空気っぷりを破って、監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)が口を開く。黒岩はみのりが大丈夫であるとなぜか確信を持って語る。

 なぜそう言い切れるのか問う九坂だったが、真名部や皆帆は彼女が宇宙人であり幽霊であるという前提を持ち出し、あまり心配には当たらないと見当をつける。


 何も知らない天馬は、誘拐の片棒を担いだイシガシ本人に、剣城が何処にいるのか心当たりはないかと聞く。そのあまりの善人っぷりにさすがに良心の呵責(かしゃく)を抱いたか、イシガシは一瞬目をそらす。

 ややあって、剣城はファラム・オービアスによって何処かに幽閉されているのではないかと告げる。これはクーデターによって実権を奪われたララヤとともに幽閉されている剣城の現状を思うとある程度正確な情報だ。さすがに良きアズルの持ち主である天馬くんに嘘をつき続けるのはイシガシでも難しいのかもしれない。


 何処かという不確かな情報を聞かされ、天馬は何処なのかを詰問する。それが失礼にあたることを神童に諭(さと)され、天馬は謝罪する。イシガシは剣城を捜索、救出する手立てを考えると事務的に返答する。

 試合に集中するよう告げるイシガシに対し、どうしても感情を抑えきれない天馬はまた食ってかかろうとする。が、寸でのところでそれを抑える。親友のことが心配でどうしても感情の制御が難しいのだろう。


 剣城が心配なのは確かだが、今は試合に集中することが大事だ。カトラも語っていたが、決勝戦を勝って彼女のもとにたどり着くことも宇宙を救うための条件の一つだったはずなのだから。


天馬『剣城だって俺たちの勝利を願っているはずだ!』



 ファラム・オービアスへの道程は、特訓の時間に費やされる。真剣の特訓場と化したブラックルームではメンバーがより一層の高みを目指して汗を流していた。誰もが当初からは考えられないほどの上達をしていたが、誰もその動きを止めようとはしなかった。勝利が剣城の願いでもあることを、誰もが理解していたからだ。


 シュートを止めるキーパー練習を繰り返す井吹にとっては、剣城は特別の存在であった。手加減の無い剣城のシュートを阻止する特訓が井吹を銀河で1、2を争う名キーパーに育て上げたのだ。



井吹「あの練習が無ければ、今の俺は無い!!」


 そして誓う。


井吹「必ず勝って、お前を助ける!!」



 剣城との因縁が浅くないのは、鉄角も同じだった。サッカーの面白さが分かり始めていた頃、サッカーが油断ならない生き物であり、目を背ければ喰らい尽くされてしまう恐るべき野獣であることを鉄角に教示したのは剣城だった。



鉄角「お前に言われたこと、忘れてないぜ!!」


 その哲学を受け継いでいることを証明する総決算の舞台、それが次の戦いであることを鉄角は感じていた。




 頑張る彼らの疲れを癒し、さらなるエネルギー補充の為にイナズマ名物のおにぎりを差し入れに持って来る蒲田さん。その優しい心付けは選手たちを勇気づけることだろう。ギャラクシーノーツ号の車掌したりメカニックエンジニアしたり寮母のおばちゃんをしたりと忙しい人だ。



 そして、誰よりも剣城と因縁のある存在、天馬である。砂漠のような荒涼とした空間を黙々と走り続ける天馬。決勝戦で勝てば、剣城もみのりも助けることが出来ると天馬は確信していた。ファラム・オービアスが彼らを誘拐したと信じていたからだ(半分正解だが)。


 そこで唐突に背景が途絶える。ブラックルームの装置を神童が停止したのだ。神童は自分の部屋に来るよう告げる。折り入って話したいことがあるという。



 神童の部屋にやって来た天馬は、そこで黒岩が剣城をニセモノだと以前から見破っていた可能性を聞かされる。驚く天馬に、神童はなぜそう思ったのかを説明する。

 神童が偶然見てしまったもの、それはギャラクシーノーツ号のコクピットルームで何かを操作する黒岩の姿だった。声をかけることが憚(はばか)られる雰囲気の中、ふと見た側面のモニターには剣城の画像に、何やら怪しげな数値が……



 「今思えば……」と神童は述懐する。あれは本物とニセモノの画像照合データだったのではないかと。黒岩はそのことに気づき、不信を抱いていた……


 しかしそれだと大いなる疑問が残る。黒岩はなぜそのことを天馬たちに秘密にし、しかも試合で使い続けたのであろうか?

 神童もそこが理解できない。だがその時点で手を打っておけば現状は避けられたはずなのだ。様子がおかしいということは神童も感じていたことだったが、まさかそっくりすり替わっていたとまでは考えなかった。


神童「もしかしたらこの大会は俺たちが思っているほど単純なものではないかもしれない」
天馬「えっ!?」


 そりゃ驚くよね。地球代表として宇宙で戦うって話だけでもものすごく複雑な話だと思うのに、神童さんの中では単純だったとは……。

 さて置き、神童はこの大会には大きな裏の陰謀があるのではないかと言う。さすが神童、【聖堂山中→ドラゴンリンク】、【エルドラド→セカンドステージ・チルドレン】といった、どんでん返しで真の敵が出て来るイナズマパターンを見抜いている。


 その正確な答えは、やはりファラム・オービアスにあるはずだ。剣城とみのりの救出、そして大いなる陰謀を挫(くじ)くためにも決勝戦は負けられない!


天馬「すべては、ファラム・オービアスに……」



 ギャラクシーノーツ号は順調に進行しワープ空間に入る。18万8千光年に及ぶ旅路ももうすぐ終わる。ワープの衝撃に歯を食いしばりながら、天馬は心ならず離れてしまった親友に思いを馳せる。



 オズロックの宇宙船内、厳重に隔離された一角の小部屋にポトムリの姿があった。彼は幽閉され、オズロックに協力を強(し)いられているのだろう。



 孤独な状態のポトムリの前に、ピクシーが姿を見せる。みのり(ポトムリ)がニセ剣城に連行された際、ピクシーも一緒にここにやって来ていたのだけど、今まで気づかれずに隠れていたのだろうか。


 小さな援軍といえ、ポトムリは笑顔でそれを迎える。だがオズロックに見つかるとまずいと、ポトムリは隠れているように指示する。


ポトムリ「君は私が守るから」


 指示自体は分かっていないような素振りのピクシーだったが、自分を守ると言うポトムリの気持ちは理解できたらしい。笑顔で返答するピクシーが可愛い。



 その頃、ギャラクシーノーツ号は最後のワープを完了していた。



 モニターに映る巨大惑星ファラム・オービアス。だがそれ以上に目を引くのは、その後方にドス黒く存在するブラックホールの姿だ。かつて惑星キエルを滅ぼしたブラックホールが、今度はファラム・オービアスをひと呑みにせんと迫っていた。


 銀河一の発展した惑星であるファラム・オービアスですら、ブラックホールの驚異からは逃れられないのだ。その圧倒的な存在感に一同は唖然となる。



葵「星が今にも呑まれそう……」
鉄角「でっかい化け物みたいだな……」
信助「うん……」

 座り位置的にいつも両親と子供のような絵ヅラになるこの3人。


 そんな中、瞬木だけは何やら楽しそうにブラックホールを見つめていた。心の闇の大きな瞬木には親近感を抱かせるものがあったのかもしれない。



 先頭車両の上部、監督室に黒岩を訪ねる神童。彼は黒岩が剣城がニセモノだと知っていたことを確認に来たのだ。


黒岩「見たのか、あのデータを……?」


 黒岩は否定せず、あの日操作していたニセ剣城のデータの存在を認める。神童は気づいていたのになぜ何の手も打たなかったのかを問いただす。

 黒岩が貫く無反応な態度は神童を攻撃的にさせる。推察だったであろう言葉が黒岩糾弾(きゅうだん)の言葉として紡(つむ)ぎ出されていく。


神童「あなたは地球を……いや宇宙を救う気など無い! ……そうじゃないんですか!?」


 だが黒岩はなおも返答をしない。構わず続ける神童。黒岩の監督としての才覚は大いに評価しつつ、黒岩から感じる違和感についても言及する。



神童「あなたのサッカーに対する思いは俺たちの思いとは違う! あなたの目的は一体何なのですか!?」


 大抵の返答なら神童は驚かなかったと思う。だが黒岩の返答は神童の予想をはるかに超えるものであった。


黒岩「私は『サッカーの神』になる……」
神童「えっ!?Σ(゚д゚lll)」


 黒岩は恐るべき野望を開陳(かいちん)する。彼はサッカーという概念を宇宙の歴史に刻み付けるという行為を成すことで自身は神になるというのだ。



 サッカーというちっぽけな球遊びのお遊戯が、今では宇宙の運命すら左右しているという現状に酔うかのように語る黒岩は、その象徴であるブラックホールと風前の灯火の運命のファラム・オービアスを見つめ、高らかに宣言する。



 彼がまだ影山零治と名乗っていた頃から愛し、憎んできたサッカー。それを宇宙の歴史に刻み付けるという行為を究極的に実現する現状を前に黒岩は興奮を隠しきれない。これも一つの愛情表現なのかもしれない。ただ完全にイっちゃってる感がハンパないが。


 神童はそれを聞き、さすがに「どうかしてる……」とこの場にふさわしい感想を述べる。そして黒岩の狂気に付き合うためにここまで来たのではないと決然と告げる。


神童「俺たちはこれ以上あなたに着いていけません!!」


 黒岩はそれを聞き、なぜか不敵に笑って了承する。大事な試合を前に監督がチームを離脱することになるのだろうか? アースイレブンにとっては大きな不安材料となりそうだ。



 ギャラクシーノーツ号はファラム・オービアスへの着陸軌道に入る。元気の無い神童を見て天馬が話しかける。だが黒岩の狂気に彩られた考えなど仲間に話すわけにはいかないと、神童は言葉を濁(にご)す。



 ファラム・オービアスのステーションに着陸したギャラクシーノーツ号を出迎えるのは、やはりコーディネーターのイシガシだった。

 剣城の件で会話していたイシガシがこの場に先着している姿に違和感を抱く一同だったが、ここが決勝戦の場であるとイシガシに告げられ、心は戦いのモードに移行する。



 一方、オズロックの駆る巨大宇宙船もファラム・オービアス上空にワープ・インして来る。ポトムリから奪ったミスリルストーンを改めて見返し、オズロックは邪悪な笑みを浮かべる。



 果たして彼の真意とは?



 次回に続く。



  エンディング



 更新が遅れまくっていてごめんなさい。現在人生で一番忙しい時期を迎えています。次回更新がいつになるかもまだ未定。それでも最後まで感想文は書くつもりなので見てくださると嬉しい。



 本題。最終決戦、ファラム・オービアス戦直前までの動き。ポトムリが実体を現したり剣偽がようやく正体を現したりと物語の伏線がほぐされていく先駆けとなるような内容だった。

 本文中でも触れたけど、イシガシのしれっと騙す態度は凄かった。オズロックとイシガシの2人は大いなる野望を抱いたカップルだと思っていたのだけど、イシガシが男だということでその可能性も消えた。いや、腐女子的にはそれの方がアリという感覚だろうけど。


 あと黒岩監督の無茶な承認欲求というか、「神になる」発言は心底驚いた。神童は完全に引いてたし。オズロックと黒岩の野望はリンクしているのか、それとも別個に動いているものなのか。その辺が気になる。



 次回のオズロックさん。凶悪な本性を隠さなくなっている。



 味方サイドに目を転じると、剣城と天馬の友情というものがフィーチャーされていた。わたし的には「そんなに仲良かったっけ?」という気分なのだけど。つかず離れず的な感じだと思ってたよ。

 井吹と鉄角の剣城との絡みもキチンと取り上げられていて良かったと思う。その分他のキャラが目立たない回ではあったけど。

 カトラが生きていたのかも? と思わせる部分や、ピクシーがここで果たす役割など今後の展開において気になる部分が多かった。早く次回を見て感想を書きたいと思う。次回のタイトルの意味が今のところ全然分からないんだけどね〜。



  次回「最凶!イクサルフリート誕生!!」に続く。



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『イナズマイレブンGOギャラクシー』第34話「涙の怒髪天シュート!」の感想 【超感動の神回】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第34話「涙の怒髪天シュート!」を観ての感想を書く。ラトニーク編の最後を締めくくる笑いと涙の感動回。これまでのイナギャラの中でも歴史に残る神回だったと個人的には思う。今回は気合いを込めて感想を書くよ〜。



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『イナズマイレブンGOギャラクシー』第33話「限りある時間!永遠の友情!!」の感想 【極めて形而上的な死生観とおバカ兄弟が噛み合わねぇ】
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 松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】は、星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の本戦4回戦、準決勝戦を【惑星ラトニーク】で戦うことになる。


 チーム・ラトニークのバンダ・コローギュ(CV:金野潤)との会話から、天馬たちは昆虫の進化した種族であるラトニーク人たちが地球人と比較して圧倒的にその人生が短いということを知る。

 その死生観に戸惑いつつ、天馬たちはあくまでも勝利しなければならない。この宇宙に軽んじられる命は無いと確信する天馬は、カトラ・ペイジ(CV:上田麗奈)から託された全宇宙の人たちを救うという使命を果たすために負けるわけにはいかないのだ。


 だがアースイレブンの希望を打ち砕くことを存在意義とする【ファラム・オービアス】よりの刺客、紫天王のリュゲル・バラン(CV:ランズベリー・アーサー)とガンダレス・バラン(CV:興津和幸)のバラン兄弟が先制ゴールを奪い、アースイレブンの前に立ちはだかる。



リュゲル「そこのヘタレども! これで分かったか!?」

 先制ゴールを決めて勝ち誇るリュゲル。今までお笑い担当という狂言回し的役どころが多かったせいなのか、鬱憤(うっぷん)を晴らすかのような罵詈雑言(ばりぞうごん)をアースイレブンに浴びせる。


 そうしておいて、点を取ったあとはこうやって相手にビシッとものを言い、精神的に優位に立つことが重要なのだと弟のガンダレスに教えてみせる。ガンダレスはよく分からないながら、その「分からないことを尊敬する兄は知っている」ということも含めて兄に最大級の賛辞を贈る。



ガンダレス「やっぱりスゲェよなぁ〜頭良いよなぁ〜リュゲル兄は!」
リュゲル「言うなよガンダレス。それ以上何も言うな」


 それまでの間が抜けた印象とシュートを決めるまでの見違えるような流れとのギャップには、人間観察力の権威である頭脳派、真名部陣一郎(CV:野島裕史)と皆帆和人(CV:代永翼)の2人も完全に出し抜かれた思いだ。


 天馬は自身の瞬木隼人(CV:石川界人)へのロングパスがリュゲルにカットされてしまったことが失点に繋がったことを反省し、今後は細かいパス回しで攻めることをメンバー全員に指示徹底する。



 この試合が人生初の実戦で、かつ人生最後の試合であることを本能的に自覚するバンダはこの試合で輝くことで短い人生の有終の美を飾ろうと強く決意していた。そしてバンダのその思いに触れて、ソウルを出せないことで悩んでいる九坂隆二(CV:岡林史泰)の心境にも微妙な変化が訪れようとしていた……。



   オープニング



 試合は失点を喫したアースイレブンのキックオフで再開される。剣城京介(CV:大原崇)のニセモノ、剣偽(CV:大原崇)からボールを受けた瞬木は細かいパスをつなぐという指示を出した天馬に、その指示通りにパスを送る。

 九坂、野咲さくら(CV:遠藤綾)と天馬の思い描いた通りの展開でアースイレブンが反撃に移る。さくらの前にバンダと同じく新人のカマキリ、背番号5番のティス・カーマ(CV:悠木碧)が向かって来るが久々に披露する必殺技「ビューティフルフープ」で華麗に抜き去る。



 久々の必殺ドリブル技「ビューティフルフープ」。ティスは前回では天馬に抜かれていたし、やはりまだルーキーらしく未熟な面を見せてしまう。


 ティスを抜いたさくらに続いて挑みかかるのは、3番、蛾(が)のモス・ガー(CV:不明)だった。ティスを抜いたことで安心していたのか、さくらは何ら抵抗を示すことなくボールを奪取されてしまう。さくらちゃん、蛾が嫌いなだけなのかもしれない。

 モスにパスを要請するのはバンダだった。この試合で初めて試合展開に絡む機会を得たバンダだったが、そこはディフェンスも出来るMFとして定着した感のある神童拓人(CV:斎賀みつき)にカットされてしまう。


 神童は天馬にボールを送り、先ほどの攻撃展開の再現を図らせる。アースイレブンは天馬から九坂、瞬木と細かいパス回しで攻撃を組み立てなおす。

 それを看過(かんか)する今のバラン兄弟ではない。おちゃらけバカ兄弟の側面だけではないということを示した2人は瞬木に襲いかかる。

 そして陸上短距離のアスリート出身で足の速さには絶対の自身を持つ瞬木から意図も簡単にボールを奪い取ってしまう。


リュゲル「それでも走ってるつもりか? 走るってのはこういうのを言うんだ!!」


 言うが早いが、バラン兄弟は疾風のような素早さのドリブルで天馬の横を走り抜けていく。その動きはまさに常軌を逸した疾(はや)さであった。ベンチで試合を見つめていた空野葵(CV:北原沙弥香)や西園信助(CV:戸松遥)も信じられないものを見るような目になる。

 バラン兄弟は一気にアースイレブン陣内に侵入し、ゴール前を窺(うかが)う。この2人が先ほど先制のゴールを挙げたことを思うと、試合再開後すぐに2度目の危機が訪れたということになる。

 神童の号令一下、真名部、皆帆、鉄角が待ち受ける中、バラン兄弟はペナルティエリア外であることも構わずにシュート体勢に入る!



リュゲルがどこから取り出したのか小一時間問い詰めたい黄金色に輝くリンゴを一口齧(かじ)り、中空に投げ出す。落ちて来たリンゴにガンダレスが叫び声とともに瘴気(しょうき)を当て、その黒ずんだリンゴを2人同時にシュートする。それが彼らの合体必殺シュート技「スクリーム・オブ・エデン」だ!! ……言葉で説明するのがこれほど困難なシュートがかつて他にあっただろうか? アニメで見るとめちゃカッコ良いシュートなんだけどね。文章力不足で伝わらず申し訳ない。



 まなみなと鉄角は鎧袖一触(がいしゅういっしょく)の勢いで吹き飛ばされてしまう! 「スクリーム・オブ・エデン」の威力は圧倒的だ!


 最後の砦はキーパーの井吹宗正(CV:鈴木達央)だけとなる。井吹は前回、何の考えも無しで出した初期必殺技「ワイルドダンク」があっさりと敗れた経験から、新型必殺技である「ライジングスラッシュ」で迎撃を図る。

 だが何ということだろう! 3人が身体を呈して勢いを減速し、さらに新必殺技で迎撃したにも関わらず「スクリーム・オブ・エデン」は止められない。井吹の「ライジングスラッシュ」を破壊したシュートはさすがに勢いを失いつつもゆっくりとゴールに向かう。



 しかしそこで運命はアースイレブンに味方する。井吹の弾いた位置が良かったらしく、ボールはゴールポストに当たってそのままラインを割る。完全に力負けしてはいたが何とかゴールだけは守り通せたという形だ。

 だが都合4人がかりでもバラン兄弟のシュートが止められなかったことはアースイレブンに大きな衝撃を与える。しかもバラン兄弟のゴール前までの突進も誰も止められなかったのだ。天馬たちはさっきまでは単なるバカだった目の前の兄弟が、これまで戦って来た紫天王の中でも最強の敵であることを今さらながら知って心胆(しんたん)を寒(さむ)からしめられる。



リュゲル「外したか」
ガンダレス「命拾いしやがって!」


 外してもなおこの余裕の態度は、さっき失点を喫した時にリュゲルが浴びせた罵詈雑言よりもずっとアースイレブンを萎縮(いしゅく)させ、精神的に優位に立ったように思われた。



 そしてそこからはまさにバラン兄弟のターンであった。2人の猛攻に晒(さら)され、身体を張ってシュートを阻止するアースイレブンDF陣。彼らはマゾではない。技術やスピードで対抗することが出来ず、身体で止めるより他ないのだ。



 アースイレブンゴールに猛攻を仕掛けるバラン兄弟。あの憎めないほど可愛いバカだった頃がウソのような悪い顔だ。紫天王の中でも後から出て来た彼らが単なる道化役(どうけやく)であるはずはないのだが。


 隙を突いて跳ね返りのボールを奪った鉄角が皆帆にボールを回す。皆帆はバラン兄弟の実力を正確に見極め、このままではまず勝てないことを悟っていた。そこで彼はイチかバチかの奇策に打って出る。

 何と敢(あ)えてバラン兄弟の方に向けてドリブルしたのだ。このフィールドで最強のサッカープレーヤーにわざわざ向かって行く皆帆の奇策とは!?



皆帆「あそこにUFO!!」


バラン兄弟「えっ!?」


 これが皆帆の新必殺技「あそこにUFO」誕生の瞬間であった。まさかこんなのが必殺技認定されるとは……バカ以外には通用しないんじゃないの?

 「どこどこ?」と思わずUFOを探し出したバラン兄弟を尻目に、皆帆はまんまと両者を抜くことに成功する。バラン兄弟、本領を発揮したとはいえこういうところで簡単に騙されるところは地というか、やっぱりバカでお茶目だ。ていうかお前らが宇宙人だし、お前らが乗ってる宇宙船がUFOなんじゃないのかと小一時間問い詰めたい


 その敵ばかりでなく味方まで呆れさせる皆帆の奇策には、天馬たちまでしばらくポカンと呆けてしまってにわかに対応することが出来ない。

 皆帆の企(たくら)みを、さすがにリュゲルは即座に気づくが、ガンダレスはまだ空に浮かぶ技の残像であるUFOに見入っていた。まんまと騙され、リュゲルは歯噛みして悔しがる。そしてまだ騙されたことにも気づかずにUFOを探し続けているバカ弟を怒鳴りつける。



ガンダレス「どこにいるんだ〜?」
リュゲル「いつまで見てんだよ!」


 兄の叱責を受け、ようやく騙されたことに気づくガンダレスがぼんやり可愛い。


リュゲル「いいかガンダレス、こういうのを『コケにされた』って言うんだ」
ガンダレス「コケにされた(よく分かってない顔)……? (言葉の調子から判断して)何か間抜けな感じだぞ! 嫌だぞリュゲル兄、俺そんなの!」


 バラン兄弟は怒りにその顔をこわばらせる。だがそれは余裕を持って見くだしていたアースイレブンに対して冷静さを欠(か)いた反応を示したことでもある。分かりやすく言えば「皆帆の挑発に乗った」ということだ。



 皆帆からパスを受けた九坂はバンダのスライディングをジャンプでかわし、上がっていた皆帆にパスを返す。そこに先ほどの復讐をしようとバラン兄弟が追いついてくる。

 皆帆はあわてず騒がず、またも同じような挙動から必殺ドリブル技「あそこにUFO」を発動する。



 そしてまたも同じように引っかかってしまうバラン兄弟。ガンダレスは兄も認める天然バカだけどリュゲルも相当な天然だよなぁ。



 リュゲルは思わず騙されたことを自己嫌悪しているが、ガンダレスはまだUFOを探しててバカ正直可愛い。こういうやたら能力が高く、かつ自意識過剰でオツムがちょっと弱い相手には瞬木のように力で対抗するアスリートタイプよりも皆帆のような頭脳プレーで乗り切る方が効果的だということなのだろう。しかしそれにしてもバカス。


リュゲル「くっ、また騙された!!」
ガンダレス「工エエェェ(´д`)ェェエエ工 また騙されたのか!?」


 当初の余裕など完全に無くなったバラン兄弟。必死の形相で皆帆に追いすがるが、そうなるともう皆帆の術中に堕ちてしまったも同然だった。皆帆は赤子の手をひねるが如くに、3度目の「あそこにUFO」を披露する。




リュゲル「何で騙されるんだ〜!!」


皆帆『分かっていてもつい見てしまう……人間の心理を巧みに突いた僕にしか編み出せない完璧な必殺技!』

葵「そこまで言う……」


 皆帆の心の中の回想がなぜか聞こえる葵ちゃんであった。もしかしたら皆帆は声に出してペラペラ自慢していたのかもしれない。


 バラン兄弟が完全にコケにされ、フィールドの雰囲気は一変する。しかしそれはここまで輝くことが叶(かな)わなかったバンダにとってはむしろチャンスである。彼は果敢に皆帆に向かって行くが、ボールを奪うことは出来なかった。


 皆帆からパスを受けた九坂には、さくらを止めたモスが挑みかかりボールを奪う。なにげにこのモスが敵チームでは一番活躍している。やっぱ蛾はキモいからな。

 そこにものすごい勢いで走り込んできたのは瞬木だった。モスからさらにボールを奪い取り、その秘められた能力をここで解放する。瞬木は蛾が平気なタイプ?

 ハヤブサのソウルに身を包んだ瞬木は一気にシュートする。



 ラトニーク側のキーパー、カミキリムシのロンガ・カミキュラ(CV:不明)には、なす術(すべ)がない。ラトニークゴールに同点シュートが突き刺さる!


 ゴール!

 これで試合は1−1の同点となる。天馬の祝福にも当然だと涼しい顔で受け流した瞬木は意気揚々と自陣に戻って来る。だが九坂が難しい顔をしているのに瞬木は気づく。殊勲の同点ゴールを喜んでいないように見えるその様子が、ソウルを出せる者と出せない者との間にある葛藤(かっとう)であることに、果たして瞬木は思いが至っていたであろうか?



 そして事態の打開を果たしたという意味では瞬木以上の殊勲者である皆帆はその頃、バラン兄弟をより挑発していた。


 にっこり笑って仁王立ちの皆帆は相手の神経をいい感じで逆撫(さかな)でするに十分の生意気な態度だった。皆帆にペースを狂わされっ放しのリュゲルはここで驚くべき対応に出る。


リュゲル「撤退だぁ〜っ!!」


 そしてバラン兄弟はラトニークにやって来る時に載っていた宇宙船に乗り込み、さっさとこの場を飛び去ってしまう。何の釈明もする間もない、見ている側が介入する余地もない瞬(またた)く間の行動であった。



 そこで都合よく前半戦終了のホイッスルが鳴る。アースイレブンの同点ゴールとそれに伴(ともな)うバラン兄弟の退場という2つのファクターを混乱なく後半戦につなぐという意味で両チームにとって良いインターバルとなるはずだ。



 ただベンチへ引き上げるバンダの表情は冴えなかった。彼は前半戦、まったくと言って良いほど活躍する機会が無かったのだ。今日で人生が終わる彼にとってこの展開はジリジリするほどもどかしいものだっただろう。



 そしてバンダと同じような気持ちを持つ者は、アースイレブンサイドにも存在した。ただ一人、孤立して腰掛ける九坂はソウルを使ってゴールを決めた瞬木の活躍により一層、ソウルが出せないという自身の状態に危機感を抱いていた。


九坂『やっぱりソウルが出せない俺にはみんなと一緒に戦う資格が無いのか……』


 九坂の脳裏にバンダとかわした約束が蘇(よみがえ)る。今日の試合を、素晴らしいものにしようと語ったバンダの笑顔。バンダにとってこれが最後の試合なのだ。九坂は友との約束をも未だ果たせていない自身の不甲斐なさに腹を立て、手にしたタオルを強く握り締める。


九坂『いや、例えソウルが出せなくてもこれはバンダの最初で最後の試合! バンダと約束したんだ……最高の試合にするって!!』




 ソウル抜きでも全力で試合に臨まねばという思いは精神的により一層、九坂を焦(あせ)らせる。顔をタオルでゴシゴシ擦(こす)る九坂の後ろ姿を、またも森村好葉(CV:悠木碧)が心配そうに見つめていた。



 まもなく後半戦が始まろうとしていた。



 後半戦開始直前の両チームの布陣。チーム・ラトニークはバンダ兄弟が一気に抜けてしまったため、FWに2人が加わる。12番イナゴのローカス・イナグス(CV:不明)と13番、これは前回も登場していた蜂のホネット・ハーチャ(CV:不明)。ちなみにローカストは英語でイナゴ、ホーネットは英語でスズメバチのこと。その他は前半と同じ選手、フォーメーション。


 一方のアースイレブンはメンバー変更、フォーメーションチェンジは一切なし。監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)は剣偽に代えて市川座名九郎(CV:小西克幸)を出してやれよ。このままだとラトニークでの座名九郎の思い出は「ゴンドラで大はしゃぎ」だけになっちゃうだろ、視聴者的にも。


 前半を終えて得点経過は1−1と互角の様相。勝負はすべてこの後半戦に持ち越された。この後半戦で活躍すること、それがバンダの人生の証であり、そのバンダと約束した九坂の使命でもある。


 敵味方それぞれの思いとは別に、天馬にも戦う確たる理由がある。宇宙のすべての命を守るため、彼はこの試合に勝たねばならない。


天馬「みんなー、点取って行くぞ!!」
(ほぼ)全員「おうっ!!」

 なぜほぼ全員か? それは九坂以下、天馬の檄に応じる中で剣偽だけは返事をしなかったからだ。ここで無言を貫く剣偽は何を思っているのだろうか?



 後半戦開始のホイッスルが鳴り響く。チーム・ラトニークのキックオフ。FWが総入れ替えとなったのでローカスとホネットの2人が相次いでボールにファーストタッチを果たす。

 ホネットが攻め上がる中、キャプテンの9番、クワガタのスタッグ・クワッタ(CV:不明)がパスを要求する。スタッグは向かって来る剣偽に対して一声吼(ほ)え、その身体をオーラに包み込む。これは、ラトニーク側の見せるソウルだ!



 スタッグのソウル。何やら象のような獣型のソウルだ。名前はグスフィー(Wikipedia調べ)。地球人がハヤブサやライオンなど地球の動物に変化するように、スタッグもラトニークにいる現住動物の姿に変わっているのだろう。


 スタッグのソウルは角(つの)に付いた木の実のような形の物体を剣偽に投げつける。それが地上に落ちて激しく爆発し、剣偽の体勢を崩してしまい、スタッグは難なくその横を通り抜ける。

 さすがは敵キャプテン、スタッグはソウルの能力保持者だった。ソウルを見せたのは驚いたけど、剣偽相手だったら前回に皆帆を翻弄(ほんろう)した必殺技「マッシュルームホップ」でも十分だったような気もするけどな。


 スタッグに追いすがる天馬は、敵もソウルを持っていることに珍しく舌打ちして不快感を表出させる。これは九坂ほどは表に見せてはいないものの、天馬自身もソウルに未だ覚醒していないことを気にしている思いの表れなのかもしれない。




 ファラム・オービアスの助っ人だったバラン兄弟抜きの純正なラトニーク人だけでの攻勢も十分に迫力がある。スタッグは8番、バッタのホッパー・バタ(CV:不明)にハイボールを送る。ホッパーはバッタだけあって抜群の跳躍力でそのボールにフィールド上ただ一人飛びつく。

 信じられない高空から、ホッパーは6番、蝶のパタフ・チョチョ(CV:不明)にパス。バタフも蝶が空を舞うかのようにマークする地球人が届かない高さでボールを受け、そしてバンダにパスをつなぐ。

 バンダはようやくまともにボールを持ってドリブルを開始する。彼がこの試合で輝くためには、ここでシュートを決めることが求められる。


 ただアースイレブンもその前進を指をくわえて見ているわけがない。バンダが今日死ぬ運命であることを知らない好葉がソウルパワーを発動させ、挑みかかる。



 キツネのソウルでバンダからボールを奪う好葉ちゃん。空気を読まない子。でももしバンダがもうすぐ死ぬって知ってたら、好葉ちゃんは優しいから手を抜いてしまっていた可能性もあるわけで。でもそうなるとバンダが望んでいる「最高の試合」では無くなるわけで、やはり好葉の全力プレーはこの場面、有りなのだ。


 好葉は九坂にパスを送る。攻め込む九坂だったが、4番、アリのアントワ・アーリィ(CV:不明)にボールを奪い返される。お互いに最高の試合をしようと約束し合ったバンダ、九坂がともにボールを奪われるというつらい展開だ。


 アントワは「アリアリアリアリ……!」とJOJOに出てくるような掛け声で、皆帆をも抜き去る。今回の皆帆くんは攻撃で優れていたけど防御ではあまり良いところが無い。




【参考資料】JOJOの「アリアリ……」アリーヴェ・デルチ




 アントワだけではない、これまで良いところが無かったティスも序盤にさくらに「ビューティフルフープ」でやられた倍返しとばかりに効果的に抜き去る。


 昆虫の身体能力を十全に発揮するラトニークの大攻勢の前に、アースイレブンはボールを奪うことが出来ない。そんな展開でもバンダだけは自分が活躍できていないことを気に病(や)んでいた。

 輝けないまま命が尽きてしまうことを気にするバンダ。おそらく彼にとって今まで死ぬことなど恐ろしくはなかっただろうが(今も恐れてはいないだろうが)、ここで初めて死という概念を嫌なものとして認識したのではないだろうか?


 天馬がホッパーにスライディングタックルを見舞うが、ホッパーはさすがにバッタだけあってそれをジャンプでかわす。その身体能力の高さには、事前にそのことを熟知しているはずの真名部ですら舌を巻く。


 だが彼らの強さがそれだけではないことを、九坂だけは気づいていた。ラトニーク人の寿命は短い。つまり話は聞いていないが、この試合がバンダと同様に彼らの最後の試合になる可能性のある選手がいるはずだ。彼らは全員がその思いで戦っている。最高の試合をするために最高のプレーをする。そんなチームのプレーが弱いはずがない。その思いの強さで地球人を圧倒しているのだ。


九坂「それがすげぇプレーに繋がってるんだ!」


 ホッパーからアントワにボールが渡る。またもアリーヴェ・デルチ状態で駆け上がってくるアントワを、瞬木は虫けら扱いして激しくチャージする。



 このシーンの瞬木はひどい。虫けら扱いされたアントワちゃんがかわいそう。


 九坂もそう思ったのだろう。ラフプレーの瞬木に「正々堂々と戦え!」と怒鳴りつける。だが瞬木は悪ぶれることもなく、味方である九坂にも暴言を吐く。


瞬木「ウジウジと自分の殻に閉じこもってるお前なんかに言われたくないんだよ!」


 怒る九坂に対し、瞬木は横目で一瞥(いちべつ)しただけで走り出してしまう。ラフプレーでアントワを倒したことは確かだが、反則を取られてプレーが中断したわけでも無かったのだ。九坂はムキになって瞬木の後を追う。



 しかしその後も九坂のプレーは振るわない。瞬木に言われたことが気になっているのだろうか、余計にそのプレーが精彩(せいさい)を欠いてしまう。ついにはトラップをミスするという初歩的なミスをしでかし、ボールはそのままサイドラインを割ってしまう。


 一人で抱え込んで悩む九坂の後ろ姿に瞬木はただ一言


瞬木「バカ……」


 と声をかける。九坂は思うとおりに行かないフラストレーションを、叫ぶことで晴らすより無かった。それがどれほどの効果があったかは想像に難(かた)くないが。


好葉「今日の九坂くん、失敗ばかり……」


 現状の九坂に対するムチが瞬木なら、アメと呼べるのは好葉かもしれない。好葉は九坂の焦る気持ちを抑えようと務める。九坂はこの試合を素晴らしい試合にし、ブレイクスルーしなければならないという思いを打ち明ける。


九坂「この程度じゃダメなんだ!」
好葉「この程度……九坂くん、この程度の自分を認めなきゃ」


 好葉は自身の弱い部分をしっかりと受け入れ、それを理解することが現状を乗り越える手段なのだと語る。「この程度の自分」を見つめようとせずにそれは不可能であると。

 そして好葉は九坂の悩みの核心を突く。


好葉「九坂くん、みんなに劣ったりしてないよ」

「九坂くんの弱点、それはここ(胸を押さえながら)」
「九坂くんが弱いのは心。でもそれは強いところでもある」


  九坂の良いところは、強くて弱いところ、激しくて穏やかなところだと、好葉は謎かけのような言葉を手向(たむ)ける。

 好葉がマドワシソウに襲われた時、おのれの危険を顧(かえり)みずに好葉を守ろうと飛び出したのに、マドワシソウの幼生を見た瞬間、その敵意を失ってソウルを発動させなかったこと……。

 先ほど瞬木がラフプレーでアントワを攻撃した時、味方と敵を区別せずに激しい怒りを持って瞬木を諌めようとしたこと……



好葉「九坂くんは、優しさの中に本当の強さがあるんだと思う」


 好葉にそう言われ、九坂は自身が何を目指すべきなのか、そして何を持ってこの試合に臨めば良いのかをおぼろげながら理解する。



 試合はチーム・ラトニークのスローインで再開。バタフからスタッグへのパスを九坂がカットする。すかさず激しいチャージでボールを奪い返すスタッグ。倒された九坂を心配するのは、敵でありながらも熱い友情で結ばれたバンダだった。

 九坂はここで諦めない。なおもスタッグに絡んで行き、ボールを再度奪い返す。その頑張りはバンダにも何かを伝える。


九坂「神童〜!!」


 年下ながらこれまで敬意を払って来た神童を呼び捨てにしてパスを送る九坂。どうやら色んなものが吹っ切れたらしい。好葉ちゃん効果か?


 九坂は今の自分に出来ることを見つけ、愚直なまでにそれを実行に移している。そしてその思いはバンダにも伝わる。バンダはこれまで自分が輝こうとばかり思っていた。しかし九坂のプレーを見て、彼は大事なことは自分が目立って輝くことではなく、全力で今を生きるということなのだということに思いが至る。


 神童から再びボールを受けた九坂がゴール前に迫る。モス、2番カナブンのドロン・ナブーン(CV:不明)というチーム・ラトニークきっての巨漢が迫り来る中、九坂はトレードマークのバンダナを静かに外す。それは彼が普段は秘めている怒りのモード、怒髪天モードへの布石だった。



「うおおおおぉぉおっ、出て来い、ケモノぉ〜!!」


 高田総統ばりの呼びかけに応え、見る間にソウルのオーラが九坂を包み込む。そしてその場に降り立ったソウル、それは灰色熊グリズリーのソウルであった!



 地上で一番獰猛と言われるグリズリーのソウルとは、怒髪天状態の九坂にふさわしいソウルだ。ラトニーク人もこんな獣を見たことが無いだろうから心底怖かっただろうな。



 グリズリーはDF2人をその巨体の下敷きにしてノックアウトしてしまう。おい、これってお前が怒ってた瞬木がやったラフプレーよりひどいんじゃないか!? やられたモスとナブーンがごつい男だからあまりひどいようには見えないけどな。


 そしてグリズリーの時と変わらぬその怖い目つきのまま、九坂は必殺シュート「キョウボウヘッド」をぶちかます。瞬木のソウルにはしてやられたキーパー、ロンガも必殺キーパー技の「ビッグマウス」で対抗する。



 食虫植物を思わせる必殺技「ビッグマウス」。昆虫人間であるロンガがこれ使うのはおかしい気もするんだけど。きみ、捕食される側じゃん。


 この勝負はロンガの「ビッグマウス」が勝利を収める。なにげに「キョウボウヘッド」初黒星だ。だがバンダナを締め直す九坂にシュートを止められたという悲壮感はない。また駆け寄ってくる天馬たちも満面の笑みだ。

 悩んでいた九坂がついにソウルの力に開眼したこと、それが何よりも大きな収穫だったからだ。安堵(あんど)して笑う好葉の前に立ち、九坂はまたも好葉のアドバイスに救われたことに対する礼を述べる。

 そして好葉を「森村」ではなく「好葉」と下の名で呼び、またも愛の告白をしてのける。宇宙だしサトちゃんの目も無いしな!!



九坂「好葉、オレ決めた! 俺はやっぱ、お前を彼女にしてみせる!」
好葉「九坂くん……(ボッ)」


 その甘酸っぱい告白シーンを微笑ましく見つめる仲間たち。その後ろではバンダが、九坂を見習って全力のプレーをしてみせることを誓っていた。


バンダ「よし、僕も!!」


 これが「僕もバタフに告白する!」とかいう展開だったりしたら面白かったんだけどなぁ。さすがにそんな展開にはならず。



 ロンガのゴールキックで試合再開。一気にフィードされたボールをスタッグから奪う神童。だがそこに駆け込んでくるバンダが気合一閃、何と神童からボールを奪い取る!



 あの神童からボールを奪ったバンダ。全力プレーで行くと決めた明鏡止水(めいきょうしすい)の心境のバンダだからこそ出来たプレーだろう。好葉は愛情のこもった励ましで九坂を目覚めさせたが、その九坂を介して敵側にも恐るべき戦士を目覚めさせたと言えよう。


 バンダの見事なプレーは、敵であるはずの九坂を笑顔にさせる。今こそ2人は試合前の約束「最高の試合をしよう!」と言い合える立場になれたのだ。

 バンダはドリブルで駆けながらも目立って輝きたいなどとは欠片も思わなかった。ただ全力でプレーすること。その思いがバンダの最後の試合を演出する。

 バンダはローカスにパス。しかしそれをカットするのは九坂であった。その後も両者はお互いのプレーを高め合い、称え合うかのように全力プレーを尽くす。実況のダクスガン・バービュー(CV:勝杏里)も「素晴らしい試合」とこの試合を賛辞で表現する。



 そうしている間に残り時間が少なくなって来た。次の得点が試合を決定づける決勝点になることは間違いない。そこでドリブルで前進するスタッグに向かっていくのは、九坂だった。

 果敢にボールを奪取する九坂。さっきは確執があった瞬木にパスを送る。こういう面でも九坂は精神的に成長していると思わせる。受けた瞬木も九坂の思いに応える気持ちは満々だった。

 バラン兄弟がこの場にいない現在、ゴール前に向かう瞬木のスピードに追いつける者などいない。そう思われた瞬間、何者かが瞬木の前に回り込む。それは全力プレーのバンダであった。


バンダ「僕が止める!!」


 打ち出されたバンダの必殺技「テンタクルホールド」。タコの足を思わせる触手が瞬木を巻き取る! チョココロネの具のようになってしまう瞬木。アントワちゃん的にはざまぁやんね!


 瞬木を上回るスピードでボールを奪ったバンダはチームの危機を救った。確実に失点しそうな状況だっただけに、この活躍は彼を輝かせたに違いない。だがバンダはそんなことをもう考えるつもりも無い。

 がむしゃらにボールを追い、全力でサッカーをすることを、いま彼は心の底から楽しんでいた。そしてその背中を追いかける九坂も同じ思いだった。2人の間に流れる人生の時間軸は違えど、今この時間を楽しむ思いだけは共有していた。



 そして……その瞬間は唐突に訪れた。

 笑顔で駆けていたバンダの瞳が静かに閉じられていく……。転がるボールに、その足が着いていかない。走るのを止めたバンダは、九坂の目の前でゆっくりと地面に倒れていく……



 その瞬間、バンダに何が起こったのかを天馬たちも瞬時に察する。それは合同練習の時、一度見た光景だったからだ。

 アースイレブンの全選手の表情がこわばる。

 しかしチーム・ラトニークのバタフは何事も無かったかのようにボールをサイドラインに蹴り出す。先ほどまで生きていた、仲間であるバンダが蹴っていたボールを無感動に……。



 試合が中断された瞬間、九坂はバンダの名を呼びながら駆け寄る。そして動かなくなったバンダの半身を起こして呼びかける。その目は二度と開かれることは無かった。

 しかし、九坂に呼びかける人懐っこい声……それはこの世を去りつつあるバンダの魂が最後の挨拶に現れたものだった。



バンダ「寿命が、来たみたいだ」


 バンダは生きていた頃と同じような表情ながら、最後まで続けられれば良かったのにとそこだけが心残りだったような口調で語る。

 そしてバンダは九坂に感謝の言葉を贈る。最後に楽しいプレーが出来たことは、九坂のおかげだと言うのだ。


バンダ「良い試合だったよね?」
九坂「ああ、もちろんだ!!」


 九坂も笑顔で応じる。最高の試合であったことをバンダは九坂の口から聞きたかったのだろう。九坂もバンダに感謝したい気持ちでは同じだったはずだ。バンダのプレーを輝いていたと最大級の賛辞で称える。


九坂「誰にも負けないぐらい、最高に輝いてた!」

バンダ「そうか、僕、輝けたんだね?」


 そう言って見せたバンダの人懐っこい笑顔……それが最後の別れの挨拶となった。彼は短い生涯に確実に後世に残る輝きを残して、そして逝(い)った……。



 運ばれて行くバンダの遺体。その表情は何かを成し遂げ、人生を確実に最後まで生き切って大往生(だいおうじょう)した者だけがすることが出来る満足げな表情に満ちていた。



 チーム・ラトニークは一切の感傷に浸ることなく、バンダに代わって蜘蛛(クモ)のターラン・チュラクモ(背番号不明 CV:不明)をピッチに送り込む。



 アースイレブンのスローインで試合再開。神童はバンダの死で試合が途切れたことに対する礼儀で、敢えてチーム・ラトニークにボールをパスして返す。受け取ったのは代わったばかりのターランだ。

 ターランはスタッグにつなぐ。天馬はそちらに向かおうとするが、ふと見ると九坂がまだバンダの倒れた位置で棒立ちになっていた。


 九坂はバンダの死を受け入れることが出来ないのだろうか? 試合は再開されている現在、この状態はアースイレブンにとってまずい。

 九坂はこんな時に寿命を迎えてしまったバンダの死を悼(いた)み涙をこぼす。しかしそれは死んでなお感じられるバンダの偉大さへの手向けの涙でもあった。訪れた死をも悔やまず、ただ良い試合が出来たことを九坂に確認にやって来たバンダ……。

 この試合に臨んで命を失うことをも厭(いと)わなかったバンダに比べ、たかがソウルごときで悩んでいた自身への戒(いまし)めの涙でもあった。

 そのバンダの思いを最後まで成就(じょうじゅ)させる方策、それは九坂も全力でプレーし、この試合を素晴らしいものとして完結させることだ。



 九坂は勇躍駆け出す。バンダへの決別の涙とともに。

 そしてスタッグからボールを奪い取り、またもバンダナを外す。怒髪天モードから撃ち出す必殺シュート「キョウボウヘッド」に対し、一度止めているロンガは再度の「ビッグマウス」で立ち向かう。




 だが今回の「キョウボウヘッド」は九坂の集大成と言える思いがこめられていた。その思いが「ビッグマウス」を粉砕し、ゴールネットを揺さぶる!!


 このゴールで、アースイレブンが2−1と逆転する。そしてここで試合終了のホイッスルが鳴る。決勝点はバンダの遺志を受け継いだ九坂が挙げ、この素晴らしい試合を見事に完結させたのだった。きっとこの終わり方なら、死んだバンダも納得するに違いない。



 ベンチの葵は勝利に喜ぶが、フィールドで立ったままの選手たちの表情を見て顔を曇らせる。全員がまるでお通夜のような沈鬱(ちんうつ)な顔つきだった。

 その中心には最後のゴールを挙げた九坂がいた。声をかけるのも憚(はばか)られるその姿に、天馬はその名を呼ぶのが精一杯だった……。



 夕暮れのラトニーク。共同体を形成する大きな木の根元に、バンダの遺体が葬られる。埋めるだけで手を合わせることもなく、一言の別れの言葉もかけることなく立ち去っていくラトニークのメンバーたち。さすがに違和感のあるさくらが不満を言及する。地球人から見ればどうにも冷たい対応だが、この星では仲間の死は日常の一部であり、悲しむべきことでは無いのが実態だ。

 その分を埋め合わせるかのように、九坂はバンダの墓の前に膝まづく。



 そして心の中でバンダに語りかける。この星に来て経験したことが九坂の心には、九坂がこの世を去るまで残される。つまり九坂の心の中で、最高のダチとしてバンダは生き続けるのだ。

 九坂はバンダに感謝して、今後の戦いを見守って欲しいと告げる。自身もバンダのように輝いてみせるという誓いを立てながら……。



ピクシー「ピク〜!」


 バンダとの別れを惜しむメンバーの前に、唐突にピクシー(CV:北原沙弥香)が降りてくる。そう、バンダとの別れがあまりに劇的だったため忘れていたが、この星には宇宙を救うための最後の希望のカケラが存在する。

 カトラ(のビジョン)に導かれ、森の中を進んでいく天馬の前にそれはあった。



カトラ「それが4つ目……最後の石よ」


 まるで木の葉のような形の緑色に光る石。それが最後の希望のカケラだとカトラは言う。ついに4つの希望のカケラを集め、天馬たちの使命も終盤を迎えた。

 あとはグランドセレスタ・ギャラクシー決勝戦に勝利し、カトラの元へたどり着くこと……天馬は改めてその気持ちを強くする。



 次回に続く。



  エンディング



 ラトニーク編、終了。

 泣いた、泣いたよ。こらえきれずに泣いた。前半はバラン兄弟と皆帆の活躍のおかげでイナギャラでも1、2を争うギャグ回だった。しかし後半は本当に泣けた。バンダが死ぬことは分かっていたのに、あの唐突さがたまらない別れ方だった。きっとバンダは最後まで試合をしたかっただろうなぁ。


 ラトニーク人は決して冷たいというわけではない。それはこの地を訪れた人間には(地球人に対しても、ファラム・オービアス人に対しても)とても親切で歓迎の意を示していたことでも明らかだ。ただ死というものを悲しいものとか、つらいものとして意識していないというだけだ。バンダだって他の仲間が死んだ時は悲しんだりしなかったことが作中で示唆されていたしね。

 監督のシムール・フェロモナ(CV:根本圭子)は結構年齢が高そうだったけど、彼女の寿命はまだなのかな? バンダより絶対年上なのにバンダの方が先に死んじゃうんだもんね。

 でもこんなに寿命が短いと、種族の子孫を残すことにもっと熱心であっても良い気がする。バンダはやはりバタフかアントワかホネットの誰かに告白して欲しかったな。違う虫同士だと子孫が残らないのかもしれんが……。


 バラン兄弟は早々に逃げ出してしまったけど、これで決着というのはやや納得がいかない。他の紫天王たちも決着がついたという形でその場を去ったという例が無い分、もしかしたら再登場して敵として立ちはだかるかも知れない。キーパータイプの紫天王がまだ出て来ていないんだけどね。



 アースイレブンに話を戻すと、希望のカケラも揃ってあとは決勝戦に向かうことが次の目的だろう。剣偽を含め、次回では結構いろんな伏線が大きく動き出しそうな印象だ。



 希望のカケラが詰め込まれたトランクをなぜかしっかと持って渡そうとしないような態度を取る水川みのり(CV:高垣彩陽)ちゃん。今回出られなかったことを恨んでの犯行か? 実際は中の人であるポトムリ(CV:三木眞一郎)がまた拗(す)ねちゃったんだろうなぁ。




  次回「希望の欠片」に続く。



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『イナズマイレブンGOギャラクシー』第33話「限りある時間!永遠の友情!!」の感想 【極めて形而上的な死生観とおバカ兄弟が噛み合わねぇ】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第33話「限りある時間!永遠の友情!!」を観ての感想を書く。哺乳類が進化した地球人とはまったく違った概念で生というものを感じる種族がいた。生きるという意味を考えることは死ぬという意味を考えることと表裏の関係であり、それは実は同義である。極めて哲学的な命題になりそうだが、今回はそんなお話。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第32話「緑の惑星ラトニーク!」の感想 【さくら、真名部がソウル覚醒!】
 をご覧ください。

  • それ以外の感想は、

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 星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の本戦4回戦のため【惑星ラトニーク】を訪れた松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】は、そこで虫が進化した形態のラトニーク人たちから思わぬ歓迎を受ける。


 大自然の緑濃きラトニークの住人たちは、例え星を奪い合うというグランドセレスタ・ギャラクシー本来の概念があったとしてもそのようなことに関係なく外部からの客人には礼儀を持って迎えるらしい。それは彼らにとって危険な植物であるマドワシソウを絶滅させずに棲み分けていることからも察せられる彼らの優しい気質から来るものであった。

 そこで出会ったチーム・ラトニークの選手、バンダ・コローギュ(CV:金野潤)はそんなラトニーク人の中にあっても特にその傾向が強い、好奇心あふれる少年だった。サッカーが好きな同士には国境どころか惑星という垣根すら障壁とはならない。意気投合した天馬たちとバンダはマドワシソウの妨害を受けつつも楽しいひと時を過ごした。



 一夜明け、清々(すがすが)しい朝を迎えた天馬はステーション前にまで広がる森林のマイナスイオンを吸収するかのように大きく伸びをする。そこに同じく早起きした空野葵(CV:北原沙弥香)がやって来て、おいしい空気を分かち合う。


葵「良いよね〜緑って。命を感じるっていうかさ!」
天馬「ああ!」



 同じ頃、九坂隆二(CV:岡林史泰)は昨日襲われたマドワシソウの残骸(ざんがい)の前にいた。バンダが救ってくれなければ今頃九坂はこの場に生きてはいない。

 さらに同じようにピンチに陥ったはずの野咲さくら(CV:遠藤綾)と真名部陣一郎(CV:野島裕史)は彼らの潜在能力のソウルの力を発動させてピンチを脱したのに、自身はそれが出来なかったことを悔しがる。



九坂「どうして俺にはソウルが出せないんだ!?」


 他者に出遅れた気持ちの九坂は、能力が劣っているのではないかと考える。九坂の惚(ほ)れてる森村好葉(CV:悠木碧)はとっくにソウルを出しているしね(時系列的にはメンバー中2番目にソウルパワーに目覚めている)。惚れた男の立場的にそれはつらいかも。



   オープニング


 今回から新オープニングだ。オープニングの変化の際は描かれるサブストーリーキャラに注目。ストーリー展開的に30話を超え、新たな敵、もしくは真の敵が描かれる可能性が高まるわけで、そこにビットウェイ・オズロック(CV:津田健次郎)が登場するのは極めて象徴的と言えよう。前作イナクロでもSARU(CV:岡本信彦)が真の敵として出てたしね。




 一瞬だけ現れたのは懐かしのマネと雷門イレブンの面々。もしかして彼らも登場するのだろうか? 18万8千光年先の銀河に物理的に来れるとは思えないのだけど……。【ギャラクシーノーツ】号のような乗り物がまだ残っているなら何とか……。



 オズロックが率いるチームっぽい。ちなみに今回のオープニングテーマ曲「スパノバ!」もおなじみの“T-Pistonz+KMC”がボーカル担当だ。



 ギャラクシーノーツ号の前に集結したアースイレブンのメンバーは、そこでバンダからある提案を受ける。何と合同で練習しようと言い出したのだ。これから真剣勝負をする相手、しかもお互いの棲む惑星の運命をかけてという一大勝負を前にして、手の内を晒(さら)し合うような合同練習などおよそ考えられない。ワールドカップで敵チーム同士が一緒に練習するシーンなどあり得ないことを思えばこの提案が無茶だということも理解できるだろう。

 だがこの提案を持って来たバンダは相変わらずまったくの屈託(くったく)がない。監督も了解済みの話だとして誘いをかけてくる。ここまで友好的にされるとさしもの鉄角真(CV:泰勇気)や皆帆和人(CV:代永翼)といえども何か裏があるのではないかと懐疑的(かいぎてき)になる。

 敵の戦力を分析したい真名部陣一郎(CV:野島裕史)はその意見に乗るべきだと語る。真名部が覚えたてのソウルの力を使いたいだけだと瞬木隼人(CV:石川界人)に混ぜっかえされ、あわてて否定する真名部だが、どうやら瞬木の指摘は的(まと)を射(い)ていたらしい。



 日頃の冷静さを欠いてあわてて釈明する真名部と、それを見透かした笑みを浮かべる瞬木の対比が面白い。


 2人の掛け合いはチームに笑いをもたらし、気分の軟化を喚起する。



 だが笑う九坂の横顔に、何か隠しきれない悩みを感じた好葉は心配そうにその横顔を見つめる。好葉は剣偽(CV:大原崇)が剣城京介(CV:大原崇)のニセモノだと疑った時もその観察力の鋭敏(えいびん)さを見せたが、今回もその眼力の鋭さを見せる。


 何にせよ、軟化したメンバーはバンダの誘いを受けることとなった。彼の案内でゴンドラに乗って移動することになる。


 風光明媚(ふうこうめいび)な景色の中をゴンドラで移動という話に、女の子の野咲さくら(CV:遠藤綾)が喜ぶ。乗り込んだメンバーが見て驚いたのは、ゴンドラのロープを掴むのが大きなイモムシであることだった。

 しっかり掴まってというバンダの言葉に従い、天馬たちは備え付けのシートベルト(?)状の蔦(つた)を身体に結びつける。

 イモムシが少し進んだ先は急勾配(きゅうこうばい)の下り坂だった。そこからは下りのロープを滑って猛烈な勢いでゴンドラは進む。ジェットコースターに乗っているかのようなスピードとスリルに地球人たちは歓声(悲鳴)を上げる。



 中でも一番はしゃいでいたのが意外なことに日頃は大人っぽい市川座名九郎(CV:小西克幸)であった。この屈託のない笑顔……。スピード感に対するあこがれが子孫に受け継がれたのだろうか?


 終点に到着し、実は怖かったらしい天馬は大きくため息をつく。逆にさくらや好葉といった女子陣はこの旅程(りょてい)を大いに楽しんでいたようだ。



 真名部と皆帆はお互いが悲鳴を上げていたことを指摘し合うが、その横で未だにはしゃいでいる座名九郎の姿に毒気を抜かれてしまう。座名九郎も皆帆の呆れたような視線を感じて気まずい様子で体裁を取り繕(つくろ)う。みんな子供だなぁと思わされる微笑ましいシーン。



 ジェットコースター状態を女子陣や座名九郎のように無邪気に喜べない面子もいた。顔にタテ線が入った状態の鉄角は珍しく井吹宗正(CV:鈴木達央)に心配される。天馬や鉄角、まなみなといった連中は絶叫マシンが苦手なタイプと言えそう。特に鉄角は三半規管(さんはんきかん)がダメっぽい。



 そこから大木の上にある道を歩いて、一行は目的地である森の中のサッカーグラウンドに到着する。

 そこではチーム・ラトニークのメンバーがすでに練習を開始していた。8番MF、コメツキムシのコメッキー・ショリョウ(CV:不明)からパスを送られた5番MF、カマキリのティス・カーマ(CV:悠木碧)がトラップ出来ずにボールを後ろにそらしてしまう。

 ちなみにだが今回もラトニークの選手たちは名前からどの昆虫がモチーフになっているのかが分かる仕様になっている(カマキリは英語でマンティス(Mantis))。


 ラトニークの選手がサッカーをしている姿を見て鉄角も元気が出て来る。乗り物酔いの後遺症は窺えない(笑)。パスを受けるコメッキーが人間離れしたジャンプ力を見せ、天馬たちを驚かせる。さすがはビンビン跳ねるコメツキムシの進化系だけあってそのジャンプ力は素晴らしい。


鉄角「見たか今のジャンプ!?」
天馬「ああ、高さだけじゃなくてスピードもあるね!」


 そして彼らの確実なボールコントロールの足さばきに注目するのは、神童拓人(CV:斎賀みつき)だった。さっきのジェットコースター降りた時の反応が見たかった神童さん。

 その身体能力、ボールをキープする能力など、どこを取ってもチーム・ラトニークがここまで勝ち上がって来たにふさわしい実力を感じさせた。次の戦いは手ごわいものとなると神童は確信を持って予測する。

 コメッキーから再びティスにパスが送られる。今度はそれを上手くトラップしたティスは笑顔を見せる。だがしかし、まるで指導していたティスの成長を見届けたかのようにコメッキーがゆっくりとフィールドに倒れこむ。


 コメッキーは倒れたまま動かない。天馬たちは心配して見つめるが、バンダがこの現象に対してまたも信じられないような言葉を告げる。


バンダ「寿命だよ」


 笑顔でそう告げるバンダの言葉の意味がにわかに理解できないのは、地球人のメンタリティーとしては至極当然だろう。徐々にその言葉の意味を理解した九坂は驚く。


九坂「寿命って……死んだってことか!?」


 バンダは事も無げにそれを肯定する。今サッカーをしていた最中(さなか)での死、である。しかも仲間の死に対してまったく動じようとしないバンダの態度に、九坂はもどかしげに再度尋ねる。むろんバンダの返答は変わらない。

 寿命といえば、地球人基準としては相当に年齢が行ってしまった老人のそれであり、倒れた選手(コメッキー)がそんなに老けているようにはどう見ても思えない。


バンダ「彼の寿命は、君たちの星の時間の長さで言えば1ヶ月だから」


 またも事も無げにものすごいセリフを吐くバンダ。しかもそれはコメッキーだけではない。この星の人間はみんな、地球人と比較するとものすごくその寿命が短いというのだ。彼らの寿命は平均して1ヶ月で、長い者でも1年の命という。早いものではわずか1週間でその命は尽きる……。

 地球人とはまったく別の時間軸でその生命を育(はぐく)み、人生を謳歌(おうか)し、そして死んでいく……それがラトニーク人なのだった。

 そんな短い人生では悲しすぎると地球人のさくらたちは同情するが、バンダはまったく悲しくないと言い切る。

 虫が進化した種族であるラトニーク人は、その運命を当然のものとして受け入れている。そう考えると彼らがマドワシソウという天敵の生命をも大事にしたり、自分たちの棲む惑星を賭けているというプレッシャーからも無縁の立場でいられることも理解できる。彼らは地球人とは考え方の根本からして違っているのだ。


 それでも悲しくかわいそうだと言うさくらに対し、バンダはコメッキーがそのサッカーの技術をティスに受け継ぐことが出来たという点を挙げ、コメッキーは役目を果たしたのだと語る。


 そう言われて運ばれて行くコメッキーの死体を見る天馬たち。その顔は何かをやり遂げたという満足感のあふれる表情であり、決して短い人生を悲観している者のそれでは無かった。



「僕たちはそうやって確実に次の世代へと技術を伝えて行くんだ!」


 そう言うバンダの表情にも、短い人生を恨むような素振りは見受けられない。九坂は何気なく肩をさすりながらその言葉を聞いていた。目ざとくその様子に気づいたバンダが確認する。九坂の肩は青黒く変色していた。

 それがマドワシソウからかけられた消化液の影響だとバンダは説明する。放置すると毒が全身に回ってしまうというから恐ろしい。

 ただ今から処置すれば大丈夫だというバンダの言葉が皆を安心させる。九坂のことは任せて欲しいとバンダは語り、他のメンバーは後を託して本来の目的である練習の方に向かう。



 場面はちょっと飛んで練習後。森に設けられたテーブルについて九坂の帰りを待つアースイレブンメンバーたち。西園信助(CV:戸松遥)が合同練習の感想について複雑な心境を語る。井吹もそれに同意し、彼らの寿命がそれぞれもうすぐなのだと心で思ってしまうことが不可避だったと鎮痛な面持ちで語る。

 地球人とは感覚が違うとはいえ、もうすぐ死んでしまうような連中と時間をともにしていると思うと、それだけで気持ちが落ち込んでしまうのは無理もない。

 鉄角が回想する彼らは、すぐ先にある「死」という概念をまるで感じさせないように満面の笑顔でサッカーに興(きょう)じていた。その姿がなおさら地球人たちを困惑させ、動揺させるのだった。



 昆虫の姿を多く残している他のメンバーと違い、比較的人間に近い姿をした13番FW、蜂(はち)のホネット・ハーチャ(CV:不明)ちゃん。これは可愛い。美男美女揃いだったサザナーラ人と比較しても負けてない。でもこんな彼女も寿命は1年以内で尽きてしまうんだよね……。ちなみにスズメバチは英語でホーネット(Hornet)。ミツバチはビー(Bee)。


 真名部はバンダの言っていた「時間の流れが違う」という言葉をそのまま受け取れば良いと努めて論理的に考え、感傷的になって安直にラトニーク人に同情することを愚行(ぐこう)だと両断する。

 何百年も生きられる宇宙人から見れば、80年ほどしか生きられない我々地球人だって同じように見られることもあり得ると語る真名部の意見は正論だ。

 だが理屈ではそんなこと、みんな理解しているのだ。それでも抑えきれないある種の感慨、それが彼らの闘争心をスポイルしていた。どうにもならないその感慨がもどかしい思いの鉄角はしたり顔で理論を語る真名部を怒鳴りつける。

 さくらは寿命という概念を知るまでは楽しい星だと思っていたと深くため息をつく。そんな中、天馬が真剣な表情で何かを考えていることに葵は気づく。葵に尋ねられた天馬は言葉を選ぶように空を見上げ、そして語り始める。


天馬「命って何なのかな……って」


 天馬は監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)から宇宙に飛び出して戦うことを聞かされた時のことを思い返す。宇宙とはどんなところなのかをその時初めて、天馬は考えることとなったのだ。

 漫然と地球を救うためだと思っていた天馬だったが、サンドリアス、サザナーラ、ガードンと他の星に棲む人々との出会いが、彼に宇宙には色んな星があるということを考える機会を与えた。

 サンドリアス人の誇り高き性格、サザナーラ人の心を読む【アズル】という驚愕すべき能力、火山だらけの過酷な環境に打ち勝とうと頑張るガードン人の存在……どれも天馬だけでなく、天馬と冒険をともにするほかのメンバーたちも経験してきたことだ。

 どの星の人たちも必死で頑張り自分たちの星を守るために戦い、その命を次代に伝えようとしていた。

 天馬はそこで笑顔になる。宇宙に来て彼が確信したこと、それはこの宇宙に無くなって良い命は一つもないということだった。そして滅んで良い星も一つもない。そのために天馬はカトラ・ペイジ(CV:上田麗奈)の教え通りに希望のカケラを集めて来たのだ。

 その天馬の気持ちを一番理解する神童が拳を握って言葉を続ける。そのためにグランドセレスタ・ギャラクシーに優勝してカトラの元にたどり着かねばならない、と。

 ラトニーク人の地球人とは違う死生観という現実は、天馬たちにそんな思いを喚起させることとなった。この本分を見失わなければ、どんな相手だって彼らの闘争心が衰(おとろ)えることは無いだろう。




 その頃、九坂はラトニーク人の村でバンダの治療を受けていた。毒を抜き応急措置を受けた九坂は、明日には治っているとバンダに明るく告げられる。敵である九坂に対し(虫だけに)無私の気持ちで治療するバンダはやっぱりナイスガイだ。

 九坂はお礼を言うことも忘れ、聞きたかったことをバンダに尋ねる。



九坂「お前の寿命も1ヶ月しか無いのか?」
バンダ「うん、僕の寿命は明日で終わる」


 もう何度驚かされただろうか? バンダはこれも驚愕する事実を事も無げに言い放つ。九坂に明日の試合に出られる治療を施(ほどこ)したバンダ自身が明日には寿命を迎えてしまうというのだ。しかもその言葉には悲壮感はまったく無い。

 バンダは明日が最後の試合であることを本能的に悟っていた。明日のアースイレブンとの試合が彼の人生の最後の試合であり、同時に最初の試合でもあると言う。寿命の短いラトニークでは選手の入れ替わりも目まぐるしいのだろう。バンダはつい最近メンバーに加わったばかりなのだと言う。

 最短で1週間という彼らの生物的テロメアだと、メンバー入りして次の試合を迎える前に死んでしまう者もいたはずだ。つまり練習だけして試合には一度も出られないまま生涯を終えた選手も数知れない。それでもアースイレブンと同じく4回戦まで勝ち上がっているのは、さっき死んだコメッキーのように次世代にその技術を受け継ぐことに文字どおり全生命を賭けているからであろう。


 九坂は目の前のバンダが平気な顔をしていることが信じられない。だがその理由はもう説明済みだ。バンダはそれが自分たちの宿命(さだめ)だとして、従容(しょうよう)とその運命を受け入れるつもりだった。


バンダ「人生はどれだけ生きたかじゃ無い。何をしたか、だって」


 その言葉は九坂に深い感銘を与える。九坂ならずともこの言葉は深いと思えるはずだ。漫然と生きていてもそれは生きていることにならないのではないか。生きているということは、何を成したかで決まるものだという考え方に寿命の長短は関係ないだろう。

 出られる試合が一試合であっても、そこで輝くことが出来ればバンダたちラトニーク人にとっては十分に生きた証となるのだ。逆に考えれば彼らは全員が試合に命を賭けているとも言える。


バンダ「九坂くん、明日は良い試合にしようね」
九坂「ああ!」


 明日はバンダの生涯でたった一度の晴れ舞台だ。九坂もその試合を最高のものにしようという気持ちになるのも当然だろう。



 ラトニーク人の住居があるその森林内の村に、紫に光る飛行物体が到着する。それはこの地で協力者としてラトニーク人を探していた紫天王のリュゲル・バラン(CV:ランズベリー・アーサー)とガンダレス・バラン(CV:興津和幸)のバラン兄弟の宇宙船であった。



 値踏みするような視線でラトニーク居住地を見るバラン兄弟。どうやらマドワシソウに食われてしまう事態は回避できたようだ。


 マドワシソウの悪夢が未だ覚めやらない2人は先に進むことを躊躇する。しばし考えたリュゲルは名案とばかりに弟のガンダレスに、先に降りるよう命じる。



リュゲル「大丈夫だったら俺も降りる」
ガンダレス「なるほどぉ、その手があったか!」
ガンダレス「やっぱりリュゲル兄はすげえよな。頭良いよな〜」
リュゲル「言うなよガンダレス。それ以上何も言うな」


 おバカなガンダレスが生け贄(いけにえ)にされるということを理解するのはこの数秒後のことだった……。

 嫌がって暴れたガンダレスのせいで、宇宙船は停止してしまい、地表までかなりの高度を真っ逆さまに落ちてしまう。


 落下の衝撃で砂嵐状になっている正面モニターを操作した2人は、そこに映るラトニークの監督、シムール・フェロモナ(CV:根本圭子)の姿にビビる。それもマドワシソウの後遺症なのだが。


 紆余曲折(うよきょくせつ)はあれど、ようやくチーム・ラトニークと合流できたバラン兄弟。ファラム・オービアスから思惑含みでやって来た2人を、シムールをはじめとするチーム・ラトニークはアースイレブンを迎えた時と同じように歓迎する。

 思わぬ歓迎に、バラン兄弟もいささか緊張の面持ちで返答を述べる。これまでの惑星ではファラム・オービアスから送り込まれた刺客とはトラブルもあったのだが、今回に関してはそれは無さそうだ。



 かくして役者は揃った。一夜明けた試合当日。本戦4回戦がグランドセレスタ・ギャラクシー準決勝であることが実況のダクスガン・バービュー(CV:勝杏里)の口から語られる。


 ラトニークベンチ前ではリュゲルが偉そうな講釈を垂れていた。兄の口上にあこがれる弟に対し、リュゲルは自信満々にこう告げる。


リュゲル「いいかガンダレス、こういうのを『泥船に乗った気でいろ』と言うんだ!」
ガンダレス「ウオォォ〜リュゲル兄、難しいこと知ってるな!!」



神童「それを言うなら『大船に乗った気』だろう……」


 バカ同士の会話にはツッコミ役が不在だ。その役どころを今回は神童が買って出るという意外展開。前日まではいなかったバラン兄弟こそがファラム・オービアスよりの助っ人であることは間違いない。ことわざも知らないそのバカっぷりからして大したことは無さそうだと鉄角は舐めてかかる。


 そしてこのフィールドを感慨深げな表情で見つめるバンダがいた。彼にとってはこれが人生初の試合であり、人生最後の試合でもある。彼はこの試合で必ず輝いてみせることを心に誓う。それがバンダというラトニーク人がこの世に存在した証明となると言わんが如(ごと)くに。

 そのバンダを見つめるのは九坂だった。彼はバンダのためにもこの試合を最高のものにしようと思っているはずだ。



 恒例の試合前の両チームの布陣。ラトニークは2−6−1−1の超変則的なフォーメーション。10番FWリュゲルがワントップでそのすぐ後ろに弟の11番FWガンダレスが控える。ポイントゲッターはこの助っ人2人だろう。他のメンバーは1番GK、カミキリムシのロンガ・カミキュラ(CV:不明)、2番DF、カナブンのドロン・ナブーン(CV:不明)、3番DF、蛾(が)のモス・ガー(CV:不明)、4番MF、アリのアントワ・アーリィ(CV:不明)、5番MFティス、6番MF、蝶(ちょう)のパタフ・チョチョ(CV:不明)、7番MFバンダ、8番MF、バッタのホッパー・バタ(CV:不明)、9番MF、クワガタのスタッグ・クワッタ(CV:不明)。ちなみにキャプテンはこのクワガタであってバンダではない。チーム・ガードンの時同様、ピンク字は女性キャラ。


 一方のアースイレブン。4−3−3の最近よく取る攻撃的布陣。リザーブに回ったのはいつもの信助と座名九郎。信助はともかく座名九郎は剣偽よりも活躍しそうなんだけどな。ゴンドラでもはっちゃけてたし。注目はこの星でソウルに目覚めたさくらと真名部、そしてバンダと友情を深めた九坂の3人か。九坂はこの試合でソウルを覚醒させることが命の恩人であるバンダに対する返礼となるだろう。


 天馬はキャプテンとして仲間たちに檄を飛ばす。この試合に勝って先に進むことが、結果的に銀河系すべての人々を助けることになる。メンバーも大きな声でその檄に応える。



 そして試合開始のホイッスルが鳴る。これからの1時間が、地球人とラトニーク人にとっての命を賭けた戦いとなる。時間軸の違う両種族がこの時は同じサッカーという競技を行い、同じ時間を共有するのだ。


 アースイレブンのキックオフで試合開始。瞬木から天馬にパスが渡る。九坂、さくらと細かいパス回しで攻め上がるアースイレブン。

 だがキャプテン、スタッグの指示を受けたホッパーが信じられない跳躍力で飛び上がり、太陽の光に姿を消して一瞬にしてさくらの眼前に降り立ち、ボールを奪ってしまう。

 さくらが取り返そうと追いすがる中、ホッパーは逆サイドのバタフにパスを送る。瞬木が立ちはだかるが、バタフはボールを足の甲に乗せ、器用に操りながら瞬木を翻弄(ほんろう)、抜き去ってしまう。



 まさに蝶のように舞い、瞬木をかわし続けるバタフ。その妖艶かつ軽やかな動きは本当に羽が生えてヒラヒラと飛んでいるかのような錯覚を見る者に抱かせる。髪型が蝶の羽みたいだもんな。



 その身体能力の高さは戦前に神童が警戒した通りだった。バタフちゃん神童も軽く抜いてしまうところが本当にすごい。余談だが彼女、ハマーン・カーンに似てる。


 選手の活躍にシムールも満足そうに試合を見つめる。目立ちたい精神が旺盛(おうせい)なガンダレスは自分たちも目立とうと兄に提案する。だがリュゲルはあわてずにここぞというタイミングでインパクトを与えた方が目立てると、したり顔で語る。

 その考えの深さ(?)をまたも弟に褒められまくり、「皆まで言うな」とまんざらでもないリュゲルだった。


 ボールは大活躍のバタフからアントワに渡る。アントワはものすごい挙動で鉄角、真名部というアースイレブン自慢のDF陣を一瞬で切り裂き、前進する。本領を発揮した昆虫人類の身体能力の高さには真名部も負け惜しみのダジャレで返すしかない。



真名部「そんなのアリ!?」


 アントワの前進を阻んだのはさっきはバタフに抜かれた神童であった。反撃に移るアースイレブン。相手のプレーに飲まれるなと、まるでキャプテンのように仲間に指示を出す神童が頼もしい。

 神童は本当のキャプテンである天馬にパス。その前にはコメッキーの遺志を引き継いだティスが立ちはだかる。



 しかしやはりまだ新人のティスに天馬は止められない。おそらくティスはバンダと同じくこの試合が初めての実戦なのだろう。



 その後は一進一退の攻防が続く。お互いに持ち味を生かした好試合となる。ここまでまるで出番の無いバンダはこの試合で輝くという自らに課した誓いを果たそうと、積極的に前に出る。

 ホッパーからスタッグにパスが通り、ラトニークにチャンスが訪れる。皆帆がスタッグの突進を止めにかかるが、スタッグは必殺ドリブル技「マッシュルームホップ」で皆帆を抜き去る。



 「マッシュルームホップ」で抜かれる皆帆くんの表情に注目。


 そしてゴール前に持ち込むスタッグ。そこに向かうのは真名部だった。彼は早く試合で見せたかったソウルの力を解放し、ラーテルの姿でその爪を振るう。



 スタッグの吹き飛ばされた先では鋭い爪あとが地面を抉(えぐ)り、その威力の凄まじさを物語っていた。真名部のソウルによるその活躍を、九坂は悔しそうに見ていた。

 鉄角に褒められ、バラン兄弟もかくやと思えるほど目立とう精神が旺盛な真名部は気取ってそのメガネのズレを直す。


 真名部はボールを一気に前線の天馬に送る。カウンター攻撃に出るアースイレブン。阻止に現れたモスを必殺技「Zスラッシュ」で抜き去り、先行する瞬木にパスを出す。これが通ればアースイレブンに最大のチャンスが訪れる。



 しかしこの瞬間こそがリュゲルの言う「インパクトあるタイミング」だったのだろう。これまで私生活を含めまったく良いところが無かったリュゲルが天馬−瞬木のホットラインを分断する!



 もちろんリュゲルのその姿を見るガンダレスは大はしゃぎ。カッコ良い兄を称える。


 その動きは試合前に鉄角が見くびっていた者の動きとは思えなかった。ボールを取り返そうと瞬木が挑みかかるが、リュゲルは身軽な動作でそれを華麗にかわす。ようやく紫天王としての本領を発揮したと見るべきか、バカだった頃の姿からは想像も出来ない素晴らしい動きだ。

 そしてリュゲルはガンダレスとワンツーパスを繰り返し、アースイレブン陣内に攻め上がる。神童の指示で鉄角、真名部、好葉が3人がかりでボールを奪いに向かうが、息の合った兄弟プレーの前にボールに触れることすら出来ない。これはリュゲルのみならず、ガンダレスの能力の高さをも証明するプレーだ。

 その攻撃にバンダも加わろうとするが、ガンダレスに邪魔だとばかりに押し倒されてしまう。


 ゴール前に到達するバラン兄弟。頼みの綱は井吹のみだ。リュゲルはその手に輝くリンゴを持ち、それを齧(かじ)って空(くう)に投げる。落ちて来るリンゴにガンダレスが大声で叫んで瘴気(しょうき)を当て、黒ずんだリンゴを2人が同時に蹴る。その長い思わせぶりな動作がバラン兄弟の合体必殺シュート「スクリーム・オブ・エデン」の挙動であった。



 バラン兄弟の合体必殺シュート「スクリーム・オブ・エデン」。リンゴを使用したりガンダレスが叫んだりという挙動からして「エデンの園の悲鳴」とでも訳すべきか。


 これに対して必殺技「ワイルドダンク」で立ち向かう井吹だったが、ソウルではなく初期必殺技を使ったという段階でこれは失点したなと思った。



 そりゃこうなるよね。合体技まで使っておいて井吹にまさかの阻止成功とかされてたとしたらバラン兄弟は本当にバカ兄弟のまま終わるところだった。


 ここで好試合の均衡は崩れ、先制点はチーム・ラトニークが挙げる! 

 戦前の予測をはるかに超えるバラン兄弟の実力に、鉄角は顔面蒼白だった。だがバラン兄弟の活躍は確かだったが、それにあたって仲間であるバンダを押し倒した行為は敵チームの不協和音の元になる可能性がある。



 意気揚々と自陣に引き上げるバラン兄弟を睨みつけるバンダ。いつも陽気で明るかった彼にしては珍しく怒りの表情だ。残り少ない人生を良い形で全(まっと)うするため、バンダも必死なのかもしれない。



 次回に続く。



  エンディング



 ラトニークとの戦いがスタートした。前フリ部分で書いたとおり、今回は気が重くなるような哲学的な命題が天馬たち、及び視聴者の前にゴロリとさらけ出される。なにせイナズマイレブンの世界観で人が死ぬという場面が描かれるわけだから。

 黒岩こと影山零治(CV:佐々木誠二)が鉄骨を落とした時ですら人死にが出なかった上、その黒岩も絶対に死んだと思われた場面でも死ななかったぐらいの作品なのに、今回は実にあっさりと死者が出たものだ。虫の命は確かに短く儚(はかな)いものだけど、それだけに哺乳類では計り知れない死生観を持っていてもおかしくはない。


 あの明るく話をするバンダが今日中に死ぬというのはものすごく大きな意味を持つように思われるが、それが九坂にソウルへの目覚めを後押しするものとなるのかもしれない。九坂はバンダと出会うことで心に秘められた能力に覚醒できるということになるのではないかと思われる。


 どんな生き物も最終的に「死」という概念からは逃れられない。地球人はラトニーク人よりは長く生きられる分、それを意識する機会が限られるという点で現実感に乏しいのかもしれない。常にそんなことを考える必要はないが、たまには「自分がなぜ生きているのか?」とか「生きている間に何をしようか?」とか「死んだ時、自分は何が残せるだろうか?」ということを考えるのは決して無意味なことではない。寝る前に5分ぐらい考えるのはきっとその後のあなたの人生を有意義なものとすると思われる。


 バラン兄弟が加勢するラトニークとの戦いが終われば、いよいよ決勝戦となる。おそらくファラム・オービアスの手勢と戦うことになるのではないかと予測しているが、オープニングに秘められた色々な事象を想像するのも楽しい。果たして雷門中の面々はどうなるのか? 今回は触れなかったが残された天馬や剣城のソウルはどういう形で発動するのか? などなど。




 エンディングテーマ曲「嵐・竜巻・ハリケーン」は、今度は北原沙弥香さんと小林ゆうさんのデュオだ。ということはやはり霧野蘭丸(CV:小林ゆう)が出るという布石なのかな? ヒラリ・フレイル(CV:小林ゆう)の再登場なのかもしれないけど。作曲と編曲はこれももうおなじみとなった、タモリ倶楽部によく出る面白い外人さん、マーティー・フリードマンが担当。




 これは皆帆の新必殺技!?


  次回「涙の怒髪天シュート!」に続く。



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『イナズマイレブンGOギャラクシー』第32話「緑の惑星ラトニーク!」の感想 【さくら、真名部がソウル覚醒!】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第32話「緑の惑星ラトニーク!」を観ての感想を書く。砂、水、炎と来て次の戦地のシンボルカラーは緑の木となる。これはイナズマシリーズの特性「火、山、風、林」によく似た4つのチェックポイントに思われる。



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第31話「ダブルソウル!井吹と神童!!」の感想 【惑星ガードン編終了!】
 をご覧ください。

  • それ以外の感想は、

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 星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の本戦3回戦で松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】は【惑星ガードン】との戦いに勝利を収める。


 理念の違いから東と西の種族に分離していたガードン人たちも和解がなる。西の族長、アルベガ・ゴードン(CV:高口公介)は敗北はしたもののその後の銀河系すべての運命をアースイレブンに託して、秘宝である赤い石「紅蓮の炎石」を天馬に預けた。

 グランドセレスタ・ギャラクシーという過酷な戦いを勝ち抜くにあたって欠かせないソウルの力も、鉄角真(CV:泰勇気)、神童拓人(CV:斎賀みつき)、井吹宗正(CV:鈴木達央)の3人が覚醒、獲得するという大団円のガードン遠征行であった。


 だが水川みのり(CV:高垣彩陽)の身体を借りて生存しているポトムリ(CV:三木眞一郎)は、宇宙の運命を救うという役割を自分ではなく天馬に託したカトラ・ペイジ(CV:上田麗奈)の姿を見て動揺する。

 落ち込むポトムリだったが、カトラが生きていたことを確認した彼は、これまで頑なに認めようとしなかった天馬が語っていたことを事実と認めるに至る。



「しかし(カトラ姫は)なぜ君の前に現れた? ……私ではなく……なぜ?」


 事実は事実として受け入れるものの、その事実がどうしても納得いかないポトムリは、なおもカトラが自分ではなく天馬を選んだことを疑問に思っていた。

 カトラが宇宙の命運を任せたのは天馬だった……ポトムリは悲しげな表情を浮かべ、その意識をみのりの中に閉じる。



 心の動揺、そして人形からではなく生身の人間からのビジョン投影は体力を奪うのだろうか、ポトムリの姿が消えたとたん、みのりは意識を失って倒れこむ。天馬はそのみのりではなく、先ほどまでポトムリが映っていた窓に視線を向け、その思いを想起する。



   オープニング



 天馬たちが次の惑星に向かっていた頃、アースイレブンと敵対するファラム・オービアスよりの刺客(しかく)、紫天王のリュゲル・バラン(CV:ランズベリー・アーサー)とガンダレス・バラン(CV:興津和幸)の兄弟はその目的地、【惑星ラトニーク】に先着していた。



 宇宙船の操縦もソツなくこなす兄に対し、またもベタ褒めする弟。それを心地よく受け止めつつ、それ以上言うなと弟を制するリュゲルという構図は、彼らが出演し続ける限り続けられるのだろう。


 2人が降り立った惑星、そこは生きるものが存在しないのではないかと思わせる、砂だらけの不毛な土地であった。どうやらここは目的地ではなかったらしい。

 ガンダレスは兄を怒らせないよう控えめに、ここが目的地では無いのではないかと進言(しんげん)する。だが日頃偉そうに振る舞っているリュゲルは兄の威厳を守るためにあえて高圧的な態度に出る。



リュゲル「なんだガンダレス? まさか俺がまた惑星を間違えたとでも言いたいのか?」
ガンダレス「違うよ〜違うよ、違うけど……」


 しかしやはりここが惑星ラトニークではないことをリュゲル自身も認めざるを得なかった。

 リュゲルが「また」と言っていたことからも、彼の間違え(方向オンチ?)が繰り返されてきたことが想像できる。ガンダレスはこんな兄をよく尊敬できるよな。



 【ギャラクシーノーツ】号の自室では、天馬がここまでに得た3つの希望のカケラに見入っていた。そこにマネージャーの空野葵(CV:北原沙弥香)と親友の西園信助(CV:戸松遥)がやって来る。

 一週間に一度の、地球との通信がつながったことを伝えに来たのだ。雷門中の懐かしい面々と会話できるという状況に2人はこぞって天馬も一緒に行こうと誘う。

 だが天馬はこの戦いに勝利して帰るまで誰とも話さないという誓いを立てていた。繰り返される拒否の姿勢に葵と信助は残念そうだ。


???「そういうの、意味あるのかな?」


 そう言って天馬たちの会話の中に割って入ってきたのは、瞬木隼人(CV:石川界人)だった。他者との距離を保ってきた昔の瞬木だったらこんなおせっかいは言わなかっただろう。ズケズケと物を言うようになったところはあるが、今の瞬木は裏表のない忌憚(きたん)のない意見を言うところが良い。

 その言葉に援軍を得た思いの葵と信助は、改めて天馬を通信機での通話に誘う。強引に信助に手を引かれ、天馬はやむなく以前の誓いを反故(ほご)にする。



 久しぶりに顔を合わせる雷門イレブン。旅立ちの際には姿が見えなかった瀬戸水鳥(CV:美名)と山菜茜(CV:ゆりん)の姿も見える。



 一方、アースイレブンの方も天馬が来たので一同が勢ぞろいした。剣城京介(CV:大原崇)だけはニセモノだけどな。彼らは地球旅立ちの際、雷門イレブンとサッカーで戦った仲だ。一度でもサッカーで対決すると真の友になれるということは、その後のグランドセレスタ・ギャラクシーでの敵だった惑星の人たちをみれば理解が可能だろう。


 ホームシックになったんじゃないかといつものシニカルな言い方で再会を喜ぶ狩屋マサキ(CV:泰勇気)。信助の密航が今の地球での彼らのトレンド情報となっているらしい。狩屋も密航したかったと軽口を叩き、井吹がそれを混ぜっかえす。

 倉間典人(CV:高垣彩陽)から次の対戦相手への勝算を聞かれ、九坂隆二(CV:岡林史泰)と鉄角は力強く勝利を約束する。

 錦龍馬(CV:岩崎了)、霧野蘭丸(CV:小林ゆう)からもエールが贈られ、蘭丸の親友である神童はチームのまとまりをキャプテンの頑張りに起因すると天馬のキャプテンシーを褒める。

 勝つまで顔を見せないと言っていた天馬を、皮肉屋の倉間は叱りつける。三国太一(CV:佐藤健輔)もそれを受け、天馬にはもっと肩の力を抜けとアドバイスする。

 宇宙を救うという個人で抱えるにはあまりに大きな目的を課せられた天馬にとって、その言葉はとても価値のある一言であった。肩から重圧が抜けていくと感じた天馬は、通信機の前に来て始めて自然な表情で笑う。


水鳥「マネージャーも頑張れよ!!」


 マネージャー間のエールも贈られる。水鳥からそう叱咤激励(しったげきれい)され、葵は明るく返事をする。茜も何か言えと水鳥に急(せ)かされ、宇宙に行きたかったとやや的外れな言葉が手向(たむ)けられる。茜のこの気持ちは彼女がSF3級で宇宙にも興味があることと、あとは恋い慕う神童と一緒に旅に出たかったという思いの表出なのであろう。


 そこまで来て、画像にノイズが入る。通信の限界時間である10分が訪れたのだ。天城大地(CV:奈良徹)、車田剛一(CV:野島裕史)からも見た目通りの力強い応援を受け、天馬は心からの援軍を得た気持ちになる。

 距離は何万光年と離れていようと、サッカーが繋いだ雷門イレブンとアースイレブンのこの友情だけは不断不変のものだった。



 一方、久々のファラム・オービアス本星では、本物の剣城が街を歩きながら思案に耽(ふけ)っていた。そこに女王、ララヤ・オビエス(CV:高垣彩陽)の名を語りながら言い争う声が聞こえる。剣城は物陰からその様子を窺(うかが)う。

 声の主は近くの建物の中にいるようだ。その窓から見える顔、それはララヤの側近として侍っていた老婆、ルーザ・ドノルゼン(CV:美名)だった。

 ララヤがスラム街に見る施策に大いに不満を抱いていると部下からの報告を聞いたルーザはそれを一笑に付(ふ)す。亡き国王に似た地球人(剣城)から何かくだらない入れ知恵をされたのだと決めつけたルーザは、ララヤと剣城を政治の表舞台から消えてもらうと恐ろしい本性を現す。

 国王親政のファラム・オービアスにおいて、ルーザのこの考えは言うまでもなく反逆罪だ。部下がそれを心配するが、ルーザはララヤが病に伏せたと偽りの布告を出してその実、彼女を監禁してしまおうと画策していた。



 ルーザ。悪い顔やで。どうやら紫天王を含め、ファラム・オービアスの悪い面はすべてがこの女の野望の元に動かされている作戦のようだ。ブラックホールの発生で宇宙が混乱する状況に乗じて実権を握り、支配者になろうとしているかに思われる。余談だがこの悪い老婆の中の人が水鳥ねえさんと同じというのは結構な驚き。


 その計画を剣城に聞かれたことに気づいても、その顔に動揺の色は見えない。ララヤがお飾りにされていた間、ルーザの実権はそれほどまでに強大になっていたのだろうか。その悪の手がララヤに、そして銀河全体に忍び寄る! 果たして剣城はララヤを救うことが出来るのだろうか?



 王宮にて剣城はララヤに事の子細(しさい)を伝える。ララヤはずっと自身を支えてきたルーザが裏切ろうなどとは夢にも思わず、剣城の言葉にもにわかには耳を貸そうとしなかった。

 だが剣城はルーザが野望を果たすためにララヤに取り入っていたのだと告げ、その結果があのスラム街の悲惨さに繋がっていることを示唆(しさ)する。お忍びの視察でその惨状を目の当たりにしたララヤは、そう言われて返す言葉がない。

 剣城は反逆の手がララヤに迫っていることを告げ、先んじてルーザを逮捕するように指示を出す。だが、遅かった。ルーザの動きは思っていた以上に早かったのだ。彼女の手先の武装兵士たちが王宮内になだれ込み、彼女を捕らえにやって来たのだ。



 兵士たちの後ろから現れたルーザは勝利者の笑みを浮かべ、女王は休みを取られると方便を述べてララヤを政治の舞台から退場させる旨を明かす。



 そしてララヤの反論など無かったように兵士たちに命じ、ララヤと剣城を捕らえさせる。この退場劇はおそらく完遂(かんすい)してしまうと永遠のものとなってしまうのは歴史の常識だ。監禁され、事の遅早はあれど、命尽きるまで二度と日の目を見ることはない。こういう時にミネル・エイバ(CV:佐藤健輔)は傍にいないし……ミネルは紫天王の一角だからもしかしたらルーザの側についてしまうかもしれないけど。


 自身を裏切っていたのが側近中の側近であり、しかも今まさに自分自身をも排除しようとするルーザの態度にララヤは激しい怒りを抱く。だが時はすでに遅かった。剣城に事の次第を盗み聞きされてもルーザが動じなかったのは、すでにここまで計画が進んでいたからであろう。



 ファラム・オービアスでの政変など知ることもなく、ギャラクシーノーツ号は目的地である惑星ラトニークに到着する。


 そこでコーディネーターのイシガシ・ゴーラム(CV:遠藤綾)のビジョンからラトニーク人が虫の進化した種族であることを聞かされ、アースイレブンはさすがに驚く。爬虫類(サンドリアス)、鳥類(ガードン)はあったが、ついに虫とは……。



 虫と聞かされ、鉄角は訝(いぶか)しげだが真名部陣一郎(CV:野島裕史)はその潜在能力の高さを勘案すると侮(あなど)れない相手だと語る。皆帆和人(CV:代永翼)も彼を衝(つ)き動かす動機、興味があることに目を輝かせる。皆帆は虫人間とか興味あるんだろうか?


 葵や野咲さくら(CV:遠藤綾)といった女子陣はやはり虫が苦手だと苦笑いするが、森村好葉(CV:悠木碧)だけは虫が好きだと語る。

 短い命を一所懸命に生きる虫には、彼女は共感するものがあるらしい。動物が好きな好葉は虫にもその博愛精神を持っていたようだ。その彼女らしい優しさに、九坂は思わず微笑する。


 この星に4つ目の希望のカケラがあるかもしれないと、天馬は気を引き締める。4つ揃えることが出来れば宇宙を救えるというカトラの話を天馬は信じ、そんな天馬を葵や信助、神童らが信じていた。

 その信頼関係を、立場や理念上その輪に加われない剣偽とみのり(ポトムリ)は複雑そうな表情で見ていた。



 ラトニークでは、接近するギャラクシーノーツ号を見つめる人影があった。彼(?)はその船影を見て満面の笑みを浮かべる。



 緑の大自然に覆われた惑星ラトニークでは例によってイシガシが先着し、アースイレブンの皆を出迎える。虫から進化した種族の棲む星ということがあり、やはり葵とさくらは警戒感を隠せない。好葉は大丈夫だと請け合い、さらにイシガシもラトニーク人が非常に礼儀正しく穏やかな種族であることを告げる。



 ステーションの外で天馬たちは現地人、ラトニーク人と出会う。彼らは一斉にお辞儀をし、地球人をして驚かせるほどの儀礼に則(のっと)った歓迎の意を見せる。



 長旅を労(ねぎら)い、歓迎するチーム・ラトニークの監督、シムール・フェロモナ(CV:根本圭子)。なんと女性の監督だ。昆虫には女王アリや女王蜂など、指導者が女性の場合がまま見受けられるのでこれもありえる話なのだろう。


 試合前からのこの敵チームの歓迎は、これまでの惑星では見られなかったことだった。それは当然のことであり、グランドセレスタ・ギャラクシーの理念では負けた側は棲む星を失い、滅亡の憂き目に遭うわけだから。それなのにラトニークの人たちは選手を含めてそんな敵意を微塵(みじん)も見せることがない。

 その礼儀にはこちらも礼儀でもって応えなければならない。監督の黒岩流星(CV:佐々木誠二)も丁重に返礼を述べ、握手する。


 その瞬間、周囲にいた一般のラトニーク人たちが一斉に歌い出す。虫の特徴を活かした、楽器を使用しない見事なまでのハーモニーあふるる歌声に、これまで警戒していた葵やさくらもうっとりと酔いしれる。これは虫人間であるラトニーク人たちの最大限の歓迎の態度なのだろう。

 シムールは選手に案内をさせるので、自分たちの棲むこの星をよく知ってほしいと黒岩に恭(うやうや)しく告げる。その洗練された対応は、この宇宙でも指折りの礼儀正しさであり、虫が進化した人たちであるということを感じさせない。


瞬木「裏がなければいいけどね……」


 ラトニーク人を素直に信頼する天馬や信助と違い、かつては自身も「いい人」を演じて来た瞬木にとってはここまで良い人ぶってる人には裏があるということを疑って掛かるという性癖が染み込んでいた。


 そこに一人のラトニーク人が近づいてくる。それはギャラクシーノーツ号の接近をいち早く気づき、満面の笑みを浮かべていたあの少年だった。

 「こんにちは」という地球式の挨拶(あいさつ)を教わった彼は、律儀に頭を下げて挨拶してくる。



 彼の名はバンダ・コローギュ(CV:金野潤)。名前のとおり、コオロギの進化した姿。案内役は彼が担当するらしい。どう見てもお人好しのタイプで瞬木が言っていたような裏表があるタイプでは無さそう。中の人はあの天然キャラの浜野海士(CV:金野潤)と同じだし。

 バンダの独特の挨拶法に感化されつつ、アースイレブンのメンバーは彼と好(よしみ)を結ぶ。バンダがここまで積極的な理由は、彼が外界の人間に興味を抱いているからだとシムールは推測する。この感覚は皆帆と似ているので、2人は気が合うかもしれない。


 どこへ案内すると天馬たちが喜ぶのかを尋ねるバンダに、天馬はサッカーが出来るところが良いと希望を告げる。地球人も自分たちと同じくサッカーが好きなのだと気づいたバンダはその昆虫の特性を生かしてバック転を決めて喜ぶ。


バンダ『地球人もサッカーが好き……一つ覚えた!』


 宇宙共通の言語であるサッカーの魅力はどの星でも同じらしい。喜ぶバンダを見て、天馬まで嬉しくなってくる。



 バンダの案内で森林地帯を進んでいく一行。道中、サッカー好き同士、天馬とバンダは活発にサッカーに関する話題を語らう。

 地球人との戦いを心底から楽しみにしている風のバンダに対し、疑いの目を向ける瞬木はこの試合に種族の運命がかかっていることを述べ、それでも楽しみなのかとやや意地悪な質問をする。

 だがバンダは屈託なく、そんな大事な試合に出られること自体が嬉しいと瞳を輝かせる。勝ち負けにこだわる瞬木の質問に、バンダは地球人はそんなことを考えて試合をするのかと逆に疑問形で応じる。



 森林を抜けた先には、誰もが目を見張る素晴らしく美しいお花畑が広がっていた。その中に足を踏み入れようとするのは人情だろう。九坂が飛び入ろうとするが、バンダはその肩を掴んで強引に引き戻す。

 尻もちをつかされた九坂は怒り出すが、バンダが言うには赤いロープで仕切られた先はマドワシソウの土地であり、侵入してはいけないとこれまでにない強い口調で言う。

 マドワシソウというものの意味が分からない地球人に示すように、バンダは石を拾って赤いロープの向こうに投げ込む。

 すると一瞬にして綺麗なお花畑が暗紫色(あんししょく)の結界に覆われ、ウツボカズラを連想させる巨大な食虫植物が現れる。




 そのグロテスクな姿に葵とさくらは悲鳴を上げるが、好葉だけは何だか嬉しそうにその食虫植物を見つめる。好葉ちゃん、虫だけじゃなく食虫植物まで好きなの?


 マドワシソウとは幻を見せて自分のテリトリーに獲物を引き入れ、捕食する恐ろしい肉食の植物だった。虫人間の彼らにとっては食虫植物は進化する前からの天敵だっただろう。食虫植物の側も進化してこんな能力を身につけたのかもしれない。

 こんな危険な植物をどうして排除しないのかと真名部や九坂は問うが、それに対するバンダの回答は実に驚くべきものであった。


バンダ「そんなことをしたら可哀想だよ」


 ラトニーク人にとってはマドワシソウも自然の一部であり、一方的に刈り取ってしまうやり方は自分たちのメンタリティーに反するのだ。

 危険な生物をそのままにしておくという発想は驚くべきものだが、バンダの指し示すマドワシソウの胎内には、その子供というべき幼生が息づいていた。



 マドワシソウを気持ち悪がっていたのに一転して可愛いと言い出す葵やさくら。マドワシソウが生きて子孫を残すために必要悪で捕食をしているということまで考えて共存を図っているラトニーク人の態度に、九坂は感嘆する。


 だが九坂から問いかけられた「考える」という言葉に、バンダは何故か黙り込んでしまう。そして長考の末、彼が口にした言葉は……



バンダ「考えるって……何を?」
ガク〜ッ!!


 一同は激しくズッコケる。これが地球人とラトニーク人との考え方の大いなるギャップであることを、天馬たちは徐々に知っていくこととなる。



 その頃、バラン兄弟もようやくこの星に到着していた。ガードン戦の途中で旅立ったはずの彼らはアースイレブンに対してかなり先行していたはずなのに、遅れて到着するところがアホっぽいのだが、とにかく到着した。

 リュゲルは不可抗力(ふかこうりょく)だろうけど宇宙船の搭乗台からガンダレスを地面に突き落としてしまう。



 張られていた赤いロープに絡まるガンダレス。そう、そこはマドワシソウのテリトリーのライン上であった。


 ロープを切って弟を救うリュゲル。ふと見ると赤いロープがずっと張り巡らされていることに気づく。リュゲルは何かを思いついたのか、そのロープを巻き取るようガンダレスに指示する。

 指示には従うものの、なぜそのようなことをするのかまでは見通せないガンダレスは真意を兄に問う。それに対するリュゲルの返答がアホ満載で振るっていた。

 彼らとここで協力するラトニークのチームメンバーとは赤いロープで繋がっているはずなので、これを辿(たど)ればきっとその仲間の元に行き着くというのだ。

 そしてそれに納得してしまうバカ弟。当初はマドワシソウの境界線を無くしてしまってアースイレブンを騙し討ちにするつもりとかすごいことを考えていると思ったのに……バカすぎる。



 一方、バンダに案内されているアースイレブンはサッカーグラウンドに到着していた。緑が豊富なラトニークのグラウンドだけあって、芝生の色ツヤが素晴らしい。

 そんな素晴らしいグラウンドを前にしてじっとしていられるサッカー小僧たちではない。バンダを誘って早速サッカーを始めようとする。その際、サッカーをするためというより剣城の不在をチームに隠し、さらにスパイを行うことが任務である剣偽だけは離脱してしまうのだが。

 1人抜けて12人となり、子孫があんな傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な性格とは思えないほど気配りが出来る調整タイプの市川座名九郎(CV:小西克幸)もさらなる数合わせとして自ら抜けて見学に回る。これでバンダを加えて6対6で模擬戦が行われることになる。



 キックオフ。早速ボールを持ったバンダが猛スピードで上がる。その速さに驚きつつ、九坂がマークに向かう。ラトニークサイドのバンダとすれば本当の戦い前に真の実力は隠した方が良策であることは疑いないが、そういう裏表を見せないところがバンダらしい。やはり瞬木とは違う。

 巧みなステップで九坂をかわすバンダだったが、その前進は皆帆に阻まれる。地球人も同じくその実力を隠さずにバンダに接する。



九坂「これが地球人のサッカーだぜ!」
バンダ「やるね〜地球人!!」


 自分の力ではなく皆帆の力でボールを奪ったのになぜか偉そうな言い分の九坂であったキートン山田調)。

 ごく最初のプレーで早くも彼我(ひが)の種族の違い、棲む星の違いを無くしてしまう素晴らしきスポーツ、サッカーの恩恵に天馬も嬉しくなってくる。



 一方、バラン兄弟は未だ見つからぬラトニーク代表選手を追い求めていた。身の丈の半ばほどに大きくなった巻き取られたロープの束を前に、ガンダレスはややうんざり気味。リュゲルからもうしばらくの辛抱と言われ、あっさりその気になるところがやはりバカだが。



 場面はまたも天馬たち。天馬とバンダのワンツーパスが決まり、バテ始めた皆帆が抜かれてしまう。タフネスを誇る鉄角も未だに疲れを見せないバンダの身体能力に舌を巻く。

 九坂が後を追うが鼻歌混じりのバンダにはまったく追いつくことが出来ない。地球人たちが軒並み疲れを見せる中、バンダは息一つ切らさずに走る。

 とうとう真名部、さくら、好葉といった面々がへばって座り込んでしまう。温暖な気候で気象条件は地球と変わらないラトニーク。これまでのように過酷な気候が敵では無い分、その体力差はそのままフィジカルの差である。今回の敵は虫人間だけあって侮れない(真名部説)。


 その様子を見ていた信助は、何か変な匂いが漂(ただよ)ってくることに気づいて鼻を押さえる。倒れた真名部たちもそれに気づくが、匂いに気づいた段階ですでにマドワシソウの術中に陥(おちい)っていた。



 ふと目を向けた真名部の視線の先には、お花畑に佇(たたず)んでこちらに手を振る懐かしき両親の姿が。彼岸で手を振る姿って、そっちに行ってはいけないという意味合いでは三途の川と同じ感覚だな。


 惑わされた真名部はゆっくりとそちらに向かって歩き出す。さくらもそこに彼女の両親の姿を認め、やはり虚(うつ)ろな表情でそちらに歩いて行く。

 好葉にはそこにちびっこ動物園での友達、可愛いウサギの姿が見える。マドワシソウはそれぞれの人が懐かしいと思う親しい人物の姿を幻覚で見せているようだ。



好葉「ウサちゃん……」


 早々に異変に気づいて鼻を押さえた信助以外の3人はゾロゾロと危険地帯に向かう。マドワシソウの影響力が届かない範囲にいた天馬たちもその異変に気づく。

 ロープの張られていない(バラン兄弟の仕業だ)その先がマドワシソウの生息域であることを知るバンダはそれを止めようとするが、神童と瞬木にぶつかってしまって転倒してしまう。



バンダ「早くみんなを止めて! マドワシソウにコントロールされている!!」


 事態の緊急性を理解した天馬たち、だが真名部たち3人はすでに境界ラインを越えていた。駆け寄る残りのメンバーたちだったが、そこにはマドワシソウの吐き出す匂いが立ち込める。危うく吸い込むと真名部たちと同じくコントロールされてしまう。

 あわてて鼻を押さえ、立ち止まる天馬たち。真名部、さくら、好葉を救う手段は残されていないのか!?



 射程範囲内に捕らえられた真名部たちの見る幻覚に変化が訪れる。真名部には誰よりも認められたい父が自己を否定しているという絶望感を囁(ささや)く3つの影。さくらにも同じ影が襲いかかる。その精神攻撃は獲物の生への執着を断ち切るためにマドワシソウがあえて見せる優しさなのかもしれない。



 彼らの様子がおかしいことに鉄角が気づく。だがその後ろではなぜか座名九郎がもっともっとおかしな様子になっていた。座名九郎も幻覚を見て、それと葛藤しているのだろうか?(理由は後に述べられる)



 好葉を救いたい九坂は危険を承知でラインを越えて好葉に駆け寄る。おそらく好葉は幻覚の中でウサギを可愛がっている状態なのだろう。


 彼らを救おうと信じられないジャンプ力で飛び上がったのは、バンダだった。飛びついた先に存在したマドワシソウの感覚器官(?)に噛み付く。それによって真名部たちは一斉に幻覚から醒(さ)める。

 バンダはその代償にマドワシソウの触手に強(したた)かに地面に打ち付けられてしまう。彼らの場は未だにマドワシソウの捕食範囲内だ。マドワシソウの触手がさくらに迫る。誰の助けも間に合いそうにない!


 その危険が彼女のソウルの力を引き出したことは運命の皮肉と言えるだろうか。さくらは野性的に大きく吠え、あろうことかマドワシソウに向かって行く。その身体を白いオーラが包み込み、彼女はその姿をカモシカに変え、マドワシソウを粉砕する!!




 もう一体のマドワシソウが今度は真名部に襲いかかる。一瞬目をつぶった真名部だが、やはり彼もその身に秘めた能力に導かれるようにその危機に立ち向かう。同じく吠えた真名部はその身をイタチ科の「ラーテル」に姿を変える!




 その小さな姿から「でも、あれじゃ(無理)」と葵にダメ出しされた真名部のソウル。だがその鋭い爪はマドワシソウを千々(ちぢ)に切り裂く! 葵にダメ出しされた真名部の意地もあったかもしれない。


 一気に2人のソウルが開眼し、九坂はその光景に見とれる。だが好葉を操っていたマドワシソウがまだ残っている。それは好葉をかばおうと前に出ていた九坂の目の前にいるのだ!

 九坂に襲いかかるマドワシソウの触手。九坂は一念発起(いちねんほっき)して自分もソウルを出そうと試みる。



 そんな九坂の目に、マドワシソウの幼生が写る。バンダが語った「マドワシソウも生きている」という言葉が脳裏にオーバーラップする中、九坂はソウル発動を途中で止めてしまう。

 その隙を突かれ、マドワシソウは毒液を九坂に吐きかける。もんどりうって倒れる九坂。そのピンチを救うのはバンダだった。またもマドワシソウに飛びつき、必死で噛み付いてその動きを止める。バンダに命を救われた九坂は呆然とその光景を見ていた。



 何とか危機を脱してサッカーグラウンドに戻って来た一行。殊勲のバンダには葵が応急治療を施(ほどこ)す。救われたことを感謝する天馬、そして九坂。地球のバンドエイドを貼られたバンダは笑いつつも無益な戦いになってしまい、結果的にマドワシソウを殺してしまったことを悲しむ。

 惑わされて騒動の原因を作ってしまった真名部、さくらも反省しきりだ。結果論だけどそのおかげで2人はソウル発動に成功したわけだけどね。


 皆帆は座名九郎の様子がおかしかったことも目ざとく気づいていた。座名九郎は隠すことなく、自身も危なかったと正直に語る。



 穏やかでいようとする自分の中に隠された暴走する心、それが赤いバイクで暴れまくる姿だったという。あの動きはバイクのハンドルを握ってアクセルを吹かす動作だったらしい。で、この時の暴走性が子孫に祟(たた)るというわけか。


 チーム一冷静でいるように見えた座名九郎ですらそんな特性を持っていたということを聞き、他のメンバーもやや救われた思いだろう。天馬とバンダは顔を見つめ合わせ、どちらからともなく笑い出す。



 その頃バラン兄弟はといえば……。



 お菓子の家を前にして大喜びだった。よく見ると彼らは赤いロープの内側に入り込んでしまっている。言うまでもなくこのお菓子の家はマドワシソウが見せる幻覚であろう。



 くしゃみと共に甘い幻覚から醒め、今置かれている状況を察したバラン兄弟。悪い奴らなんだろうけど、この辺はどうしてもバカっぽくて憎めない。



 舞台は再度、ファラム・オービアスへ。静養とは名ばかりの牢獄に幽閉されたララヤは膝を抱え、途方に暮れて瞳を潤(うる)ませる。


ララヤ「妾はどうすればよいのじゃ……」


 その絶望に震える細い肩を、しっかりと掴む頼もしき男が傍にいた。剣城だった。ララヤの不安を取り除くため、こんな境遇でも笑みを絶やさずに剣城は励ましの言葉を向ける。



 そしてララヤの笑顔を確認して一転して厳しい表情を浮かべ、この星の未来を取り戻すと宣言する。


剣城「取り戻すさ、この国、この星を……!」


 格子の隙間から見える空に剣城は誓う。ララヤに、そして自分自身に向けて。



 次回に続く。



  エンディング



 惑星ラトニーク編スタート。虫人間というから無茶苦茶にキモイ展開を想像していたんだけどなんともナイスガイな奴らばかりで驚いた。監督も美人だし、バンダは気の良い熱血漢だし、今までで一番気持ちの良い敵なのかもしれない。

 私は虫人間と言うと「カールビンソン」のチカちゃんを思い出してしまうのだ。あれ読むと虫人間への見方が変わること請け合いだ。



 ラトニークにはゴキブリとかハエとかの進化系は存在しないの? 言わない方が良いかもしれないけど、バンダのコオロギは実はゴキブリに非常に近い種族なんだけどな。ちなみにカマキリも近い種族。


 そして今回はさくらと真名部がソウルに目覚めた。神童、井吹の時も似てたけど危ない目にも遭ってみるもんだね。九坂も一気に発動かと思われたけど、それは次回への持ち越しなのかな。いつでも出せたはずの描写だったしね。


 バラン兄弟は上述したけどかなりとぼけた性格で、敵ながら憎めない。ガードンでのロダン・ガスグス(CV:藤村歩)と比べると今のところかなり良い奴という印象。ラトニーク人も良い人ばかりなので、次の戦いはフェアプレーの戦いになるのかもしれない。


 そのバラン兄弟の上司にあたるファラム・オービアス上層部、ルーザの裏切りからの反逆が今回で一気に実行されてしまった。ララヤは確かに能天気過ぎたけど、味方が少ない状況では仕方が無かったといえよう。一般国民の信望は疑いなく篤(あつ)いだろうけど、中枢でルーザに実権を任せていたのが仇になったようだ。

 剣城が傍にいるのは今のララヤにとって何よりも頼もしい存在だろう。私がルーザだったら剣城は別の部屋に閉じ込めたけどな。というか生かして置かなかったかもしれず。ルーザは剣城には今後なんらかの利用価値を見い出している可能性がある。……ルーザ側の考え方をしてしまう自分が嫌だが。




 1月8日からはイナギャラは7時27分スタートとなる。この感想文の更新が遅れているからもう遅すぎる情報なんだけどな(ごめんなさい)。



 何と、三国先輩が化身を引っ提げて本編参戦!? この見慣れない化身は新番組「妖怪ウォッチ」のキャラだそうだ。それにしても三国さん、念願の化身をやっと付けたと思ったらもう時代は化身→化身アームド→ソウルと2世代遅れていたりする。




  次回「限りある時間!永遠の友情!!」に続く。



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『イナズマイレブンGOギャラクシー』第31話「ダブルソウル!井吹と神童!!」の感想 【惑星ガードン編終了!】

 恒例のアニメ感想文、今回は『イナズマイレブンGOギャラクシー』第31話「ダブルソウル!井吹と神童!!」を観ての感想を書く。強敵との戦いにこれ以上ない心強いチームメイトが帰って来る。しかも彼らだけが持つ最強の力を引っ提げて!



 当ブログは、『イナズマイレブンGOギャラクシー』を視聴しての感想を、自分なりに面白いと思えるよう、コミカルにそしてシニカルに描く事をモットーにしています。その事に不快を感じる方はご覧にならないよう、お願いします。


  • 前回の感想は、

『イナズマイレブンGOギャラクシー』第30話「強烈!シュートカウンター!!」の感想 【鉄角が主役回。ヒロインは信助】
 をご覧ください。

  • それ以外の感想は、

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 星間サッカー大会【グランドセレスタ・ギャラクシー】の本戦3回戦。松風天馬(CV:寺崎裕香)率いる【アースイレブン】と【惑星ガードン】との戦いが繰り広げられる中、チームの精神的支柱であり司令塔である神童拓人(CV:斎賀みつき)と守護神、チームの正GKの井吹宗正(CV:鈴木達央)の両名の姿がそこにはなかった。


 2人はガードンの伝統や自然を守る立場の東の種族の客人として迎えられ、そこでソウル発動の試練を受けていた。彼らの不在を受け、先発出場した控えGKの西園信助(CV:戸松遥)は頑張るが、敵の猛攻の前に右肩を痛め、ここまで2失点を喫してしまう。

 そんな信助を弟分として可愛がる鉄角真(CV:泰勇気)が意地の新必殺技を披露して1点を返し、なおも訪れたピンチに、彼の心の深奥(しんおう)からの叫びがついに具現化した!!


鉄角「見せてやるぜ! 俺の中の『サッカー』という野獣の姿をっ!!」




 鉄角の心の中に眠っていた野獣、荒ぶる雄牛が目を覚まし、彼の身体に憑依(ひょうい)する! 何者をも駆逐(くちく)するその角(つの)のパワーにはファラム・オービアスからの刺客、紫天王の一員としてこの試合に参戦していたロダン・ガスグス(CV:藤村歩)を一蹴する。


 ついに現れた5人目のソウル発動者。ボールを奪い取って仁王立ちする鉄角の威容に、チーム・ガードンのキャプテンであり西の種族族長のアルベガ・ゴードン(CV:高口公介)も目を見張る。


鉄角「見たか!? これが俺のソウルだ!!」


 念願だったソウルを体現させた鉄角は、信助や天馬から祝福される。そして影になり日になり鉄角にアドバイスを送っていた市川座名九郎(CV:小西克幸)もその成果に納得の表情を浮かべ、一つ大きくうなづく。



 ベンチでもマネージャーの空野葵(CV:北原沙弥香)と水川みのり(CV:高垣彩陽)が笑顔を見せる。誰もが鉄角の努力を認めていたから、その成功が我がことのように嬉しかったのだろう。葵はともかくみのりのこの穏やかな表情は珍しい。



 そしてここで前半戦終了のホイッスルが鳴る。展開は1−2とアースイレブン側に不利な経緯だが、最後のロダンのシュートを阻止した鉄角のソウル発動のプレーにより、雰囲気はむしろアースイレブンに優位な情勢だ。

 その展開をことさらに否定するのは、アルベガだった。自らが採用した機械文明を絶対視し、ソウルなどという前時代の遺物を認めたくはない彼にとって、鉄角のソウルの力は打ち破るべき障壁でしかなかった。スコアボードを見つめながら、彼は「ソウル打倒」→「東の種族の思想否定」→「父であるログロス・ゴードン(CV:園部啓一)を克服する」という意思を固める。



   オープニング



 ハーフタイム中にも神童、井吹の帰還は無い。葵がまだ戻らぬチームメイトの安否を心配するが、天馬は彼らが帰ってくることを微塵(みじん)も疑ってはいなかった。

 瞬木隼人(CV:石川界人)はこのまま帰還することなく後半戦が始まってしまうことを告げる。キーパーである信助が負傷していることが懸念されるという彼の言い分。歯に衣(きぬ)着せぬその物言いは信助にとっては酷だが、真っ当な意見だった。

 しかしソウルに目覚め自信を深めている鉄角が、信助のことを責任をもってカバーすると堂々と告げる。もはや精神的に鉄角は完全に信助の兄貴分だ。


 瞬木の意見と鉄角の意見がぶつかり合う中、それでも今できることを模索する天馬。それは現有戦力で戦うしかないということだ。いつか帰ってくる2人のチームメイトを信じて。



 そしていよいよ後半戦が始まる。両チームともにメンバーチェンジはない。アースイレブンのキックオフ、剣城京介(CV:大原崇)のニセモノ、剣偽からボールを受けた座名九郎はバックパス。キャプテンであり現状はチームの司令塔を兼ねる天馬にボールは渡る。

 そのアースイレブンのプレーを、前半と変わらぬ分析力で見透(みとお)し、仲間に的確な指示を出すアルベガ。ロダン以外のフィールドプレーヤーは全員がアルベガの忠実な部下だ。指示通りにマークが付き、天馬のパスコースは限定されてしまう。



 天馬はフリーの剣偽にパスを送るが、3番DFのヘビクイワシ、メラピル・セクレタ(CV:不明)にカットされる。剣偽の能力を把握した上でマークを外していたこともアルベガを始めチーム・ガードンの策略だったのだろう。


 メラピルは前線のキジ、FW11番のニーラ・フェズン(CV:田尻浩章)にフィード。今度はアースイレブンのDF、森村好葉(CV:悠木碧)が必殺技「このはロール」で阻止する。だが疲れの見える好葉はそのボールをキープ出来ず、サイドラインを割り込んでしまう。

 敵はチーム・ガードンだけではない。この星特有の暑さという見に見えない敵とも戦う必要がアースイレブンにはあるのだ。その地の利を熟知するアルベガはこの状況に満足げに笑う。



 遠い火山地帯のマグマだまりを臨む原野では、そのアルベガを誰よりも気にかける男、ログロスの姿があった。思想の違いから袂(たもと)を分かった親子ながら、ログロスはまだアルベガがガードン人としての誇りを忘れていないことを信じていた。


グロス「アルベガよ、思い出すのだ。ガードンの魂を……」


 その父の思いは、果たして息子に通じるのであろうか?



 試合展開は一進一退ながら、やはり暑さという慣れない敵と戦わねばならない分、アースイレブンに徐々に不利な情勢となっていく。

 ルーズボールを奪い合うニーラと好葉。だが体力面で限界が近い好葉が振り切られる。そのカバーに皆帆和人(CV:代永翼)が懸命のスライディングでボールをサイドラインに押し出す。


 身体の小さい好葉が肩で息をする姿は天馬や葵を心配させる。そうすることで疲れた選手たちに自身の力を分け与えられると思うのだろう、葵は拳を握り締めて応援する。

 そこに出し抜けにみのりの声が。一点を見つめるみのりの視線を追った葵の表情が見る見るうちに喜色に染まる!



 その間も攻勢に出るチーム・ガードン。アルベガはチーム内の問題児、ロダンに指示を出す。またも渋々といった風情でその指示に従うロダン

 ロダンを含め、コヨパク・ジャリガー(CV:不明)、先制点を挙げたヴェス・ホーネ(CV:岡林史泰)といったガードンのFWが3人、横並びに攻め上がってくる。信助を守ると豪語した鉄角はその言葉に責任をもって行動する瞬間が訪れた。

 ここまで全員がシュートを撃っているのだ。巧妙に横並びで上がってくる3人の誰がシュートを撃つのかが鉄角には見極められない。

 その鉄角の隙を突き、ラストパスはヴェスに届く。ヴェスは2度目の挑戦で信助の防御を貫き、その腕に怪我を負わせた必殺シュート「カザンガン」を3度(たび)放つ。

 鉄角の加護(かご)がないまま迎え撃つ信助も3度目のキーパー技「ぶっとびパンチ」で対抗する。



 歯を食いしばってのその防御は何とかボールを弾き返し、ボールはサイドラインを割る。ゴールを死守したものの信助の右肩はもう限界だろう。無茶を諫(いさ)める天馬や鉄角に無理に笑いかけてみせる信助の頑張りがいじらしい。


黒岩「選手交代だ……」


 そこに選手交代を告げる監督、黒岩流星(CV:佐々木誠二)の怜悧(れいり)な声が響く。確かに信助の怪我は深刻だが、代わりの選手などいないはず……。



 そう思って黒岩を顧(かえり)みた天馬の視線に、待ち焦がれた2人の男の姿が!! 先ほど葵の表情を喜色に染めた理由も彼らの帰還であったことが明かされる。



 メンバーチェンジ。信助の位置にはもちろん井吹が入り、疲労が限界に達していた好葉がベンチに下がって神童が入るという形になる。好葉の弱々しくボロボロになった手を気遣うようにタッチしてフィールドに入ってくる神童の姿は、それだけで仲間の気持ちを大いに鼓舞する。


神童「心配をかけたな、天馬」


 天馬を思ってかけた神童のその言葉は、意外な形で否定される。


天馬「いえ、必ず来てくれると信じてました!」


 この戦場への帰途(きと)、神童が天馬を信じていたように、いや、あるいはそれ以上の信頼感をもって天馬は神童の帰還を信じていたのだ。その心意気に触れて神童は満足そうにうなづく。


 そして互いが互いを信じていた思いを交わす儀式は、2人のゴールキーパーの間でも行われていた。信助の小さな拳と井吹の大きな拳が触れ合う。


井吹「よくやったな!」
信助「あとは任せたよ!」


 かつてはお互いをライバル視して心を置かなかった両者が、方や自分の不在の間の健闘を称え、そして留守を預かっていた側も絶対の信頼をもってこの後のゴールを託したのだ。

 この2組の厳(おごそ)かにして感動的な儀式は今後のアースイレブンの勝利を確定させるものであったことがこのあと証明されることになる。




 そしてこれが神童、井吹加入後のアースイレブンの新布陣だ。DFである好葉に代わってMFの神童が入った分、攻撃性が増している。前がかりの3−4−3の布陣。司令塔を神童に譲った天馬もシュートを狙えるポジションに入り、十全たる行動が取れるようになった。



 そして名誉の負傷でベンチに下がった好葉、信助は帰って来た2人にこの後の試合を託した。見た目、葵がちびっ子2人を介抱している優しいお姉さんのようだ(注:この3人は同い年)。



 試合はチーム・ガードンのスローインで再開される。6番MF、タカの女の子、エトゥナ・ホルク(CV:不明)のスローインがヴェスに送られるが、それを野咲さくら(CV:遠藤綾)がカットする。神童と井吹の帰還がチーム全体の士気を上げるという副次効果を呼んでいた。九坂隆二(CV:岡林史泰)だけは好葉が交代してしまったことで落ち込んでるかもしれないが……。

 さくらは奪ったボールを早速、その神童に送る。神童は座名九郎を名指しする。アルベガはそんな神童の指揮能力を機械仕掛けのスコープで冷静に分析し、4番DFのフクロウの女の子、ミスティ・オール(CV:不明)に指示を出す。

 神童から座名九郎へのパスは通るが、その後の進撃はミスティの的確なスライディングを受けて阻止されてしまう。



 その後もアースイレブンの動きが俄然(がぜん)良くなってくる。さくらは鉄角のソウル発動にはノンリアクションだったくせに神童の帰還後はやたら張り切っている。鉄さくが理想の私にとってはちょっと解せない展開。さくらちゃん、神童狙いなのかな?


 神童、井吹というレギュラーの復帰がチーム全体の士気を上げ、それが如実(にょじつ)にプレーにも現れていた。その事実はデータを重視するアルベガも敏感に察していた。


 神童からのパスが瞬木に送られる。自分を活かしてくれるパスを出す神童の復帰を待ち受けていた瞬木はここで彼のソウル、隼の力を発動させる!



 鳥人間相手に鳥のソウルで挑むという瞬木のシュートに、アルベガは一歩も動くことが出来なかった。これで試合は2−2とアースイレブンが追いつく展開となる。これも神童、井吹の帰還が生み出した効果だろう。


 ソウルという否定しなければならない忌(い)むべき力にしてやられ、アルベガはゴールポストを叩きつけて悔しがる。

 そこに悪魔のように邪悪な囁(ささや)きをする小柄な男。ロダンは全員攻撃をさせるよう、アルベガに要請する。納得しかねるアルベガに対し、ヤバい展開になったら指揮系統は一時的に自身に委(ゆだ)ねられるという事前の約束事をロダンは盾にする。


アルベガ「それはお前が勝手に決めたことだ!」
ロダン「2点も取られたよねぇ? その自慢の腕で止められなくって(嘲笑)」


 出会った当初から仲が悪い両者だ。上手く進行していないこの試合展開もあって激しく罵(ののし)り合う。アルベガはあくまでもチームのキャプテンが自分であることを強調する。だがファラム・オービアスの意向を背景に持つロダンはこういう場合に部外者である特性を利した殺し文句を持っている。



「負けてもいいの?」


 負ければこの惑星ガードンは滅びる。それはこの星を代表するアルベガにとっては無視できない脅迫だ。自分たちが負ければ西の種族はもちろん、そもそもこの戦いにはノータッチである東の種族をも巻き込んでガードン人が滅亡してしまう。

 勝って自分たちの理念が正しいということを証明したいアルベガは、ロダンの悪魔の囁きについに屈服する。

 アルベガの同意を取り付けたロダンは携帯の端末を操作し始める。すると会場外に敷設されていた砲台の向きが変わり、天空に赤い光弾が発射される! これは一体……ロダンは何をしようとしているのだろうか?



 さらにロダンの要求に屈したアルベガがチームメンバーに指示を発する。それはFW、MFを一体化しての全体攻撃であった。

 その作戦を見た瞬間、神童はチャンスと見て必殺技「アインザッツ」でマヨン・クレステ(CV:不明)からボールを奪い取る。



 そしてすかさず必殺タクティクス「神のタクトFI(ファイアイリュージョン)」で仲間に攻勢のタクトを振るう。だが神童はログロスから受けていた忠告『ガードンが全員攻撃してきた場合、攻めてはならない』という言葉を忘れていた。


 そう、アースイレブンの攻勢こそロダンの思惑通りだったのだ。ロダンの指示を受けたアルベガが口笛を吹き(クチバシで口笛を吹くとは器用だな)、仲間たちをより一層前に進ませる。

 ボールを無視して前方に走る敵チームの行動はアースイレブンを混乱させる。その動き、そして神童から聞かされたログロスの言葉を思い出した井吹はハッとなって叫ぶ。


井吹「神童、攻めるな!!」


 その言葉を受け、神童はようやくログロスからの忠告を思い出す。すんでのところで留まった神童は、チャンスとみられるその状況の中、ボールをサイドラインに蹴り出し、全員に自陣へと戻るよう指示する。

 当然ながらその指示はにわかには伝わらない。瞬木は公然と異を唱え、天馬や座名九郎ですらその指示には従いかねる様子だった。

 だが神童の鬼気迫る口調に何か異変を感じないほど彼らはバカではない。「いいから戻れ!」という神童の剣幕に押され、彼らは自陣に駆け戻る。

 そのプレーの変化には実況のダクスガン・バービュー(CV:勝杏里)もわけが分からず戸惑うが、その直後、空が赤く染まるという異変を彼は目にする。


 それは巨大な焼ける岩だった。先ほどロダンの操作で打ち上げられた赤い光弾はまさにこの岩だった。岩は上空で分離し、多量の火山岩となってフィールド目がけて降り注ぐ!!




 驚愕する一同を前に、火山弾のかけらが土煙を上げて落ちてくる。もしガードン陣内に選手がいれば大惨事となっていたであろう。怖がり3人組のこの表情もよく分かる。


 ログロスが語っていたことはまさにこのことだった。敵である地球人の神童にこのことを教えてくれたログロスは、事前に砲台のコントロールを確保していたロダンの悪巧みを知っていたのだ。

 ログロスはこの星の運命よりも地球人である神童たちとの信義を重んじてくれたのだ。その真心を知り、神童は感謝の念に耐えず、拳を握り締める。



 一方、アルベガもここまでひどい作戦だったということは聞いていなかったらしい。ロダンの胸ぐらを掴んで怒りをぶつける。



 そのロダンだが、ちっとも悪びれることなく(表情は悪そのもののゲス顔だが)、一人も潰せなかったと残念そうに語る。この場合の「潰す」はもちろん物理的に。敵チームに鉄骨を落とした過去を持つ黒岩とロダンは話が合うかもしれん。ひょっとしたら親戚? 中の人は黒岩の甥の影山輝(CV:藤村歩)と同じ人だし。


 ロダンの態度に激怒したアルベガは以後一切の協力を拒(こば)み、自分の信じる道を行くと告げる。自分の信じるところを貫いて勝たなければ意味がないという彼の信念は正しい。


 そこに割り込んでくるのは、チーム・ガードンの監督のカルデラ(CV:不明)だった。彼の口から告げられたのは選手交代、それもファラム・オービアス肝いりの選手、ロダンを交代させるという驚くべき采配(さいはい)だった。


ロダン「ちょっと……あり得ないでしょこれは!?」


 異議を唱えるロダンを乱暴に投げ捨て、アルベガは監督の采配を正しいと断言する。カルデラも毅然とした態度でロダンにフィールドから去るよう要請する。



 あまり目立たなかった敵チーム監督、カルデラそれでもサンドリアスやサザナーラでは監督の存在感ゼロだったから逆に違和感。年齢はアルベガより上だろう。種族の長は若いアルベガだがサッカーチームとしての上官はカルデラということになるのだと思われる。


 バックに控えるファラム・オービアスの意向を示唆(しさ)して脅しにかかるロダンの言葉を遮(さえぎ)り、カルデラは出世欲という野心のみで行動するロダンはチームには不要だと両断する。彼らガードン人は種の存続、そして信じて来た信念のために戦っている。出世を考えるロダンの存在は彼らにとっては助けになるどころか邪魔なものでしかない。

 ここまでファラム・オービアスの方針に異を唱えなかった監督がここまで強気な態度に出たことは、味方であるアルベガでさえ意外な気持ちで受け止められた。ロダンは捨てゼリフを残し、フィールドを後にする。

 12番FW、パラキートのタール・パラキー(CV:不明)が代わりにフィールドに入る。純正のチーム・ガードンがここに復活し、アルベガは監督に感謝しつつ今度こそ自分たちの思いのために戦うことを誓う。



 フィールドでは火山岩の落下によって生じた穴を元に戻す作業が行われていた。ローラー車を駆使して即座に復元してみせるところなどはこの星の機械文明の発展の度合いを実感させる。



 ここまで試合を傍観してきたリュゲル・バラン(CV:ランズベリー・アーサー)とガンダレス・バラン(CV:興津和幸)のバラン兄弟。リュゲルはここで帰ることを弟に告げる。最後まで見てアースイレブンを偵察しようというガンダレスに対し、リュゲルは得意げに返す。



リュゲル「奴らはもう倒した。俺のイメージトレーニングの中でね」
ガンダレス「それマジ!?」


 脳内ソースを自慢げに語る兄と、それを少しも疑わない弟。相変わらずのバカ兄弟ぶりだ。褒められまくってまんざらでもない兄は形ばかり、それを制しようとする。ただそれってダチョウ倶楽部の「押すなよ!」と同じであることを弟は知っていた。



リュゲル「言うなよ、それ以上何も言うな」
ガンダレス「すげーや! やっぱすげーマジすげーったら〜!」



 バラン兄弟が去った試合会場。もはやこの場にファラム・オービアスの監視の目は無い。ただ地球人とガードン人の思惑だけがこの試合の趨勢(すうせい)を決める。




 そしてロダンが抜けた後のチーム・ガードンの布陣。フォーメーションは変化なく、ロダンのいた位置にパラキーが入ったのみ。



 ロダンという異分子がいなくなったことで、他のガードンの選手たちはむしろその精度を上げていた。神童、井吹の復帰で意気上がるアースイレブンと互角の展開で試合は推移する。


 天馬から神童へとパスが渡る。即座にアルベガからそれを迎撃するよう指示が飛ぶ。神童はマークが届くまでの隙を見て、必殺シュート「フォルテシモ」を撃つ。

 しかしそのシュートはアルベガにとっては押さえることにまったく造作無い。技を使うこともなく処理してしまう。天馬の「真マッハウィンド」すら素手で止めたぐらいだもんねぇ。



 試合会場から続く通路には、この試合から放逐(ほうちく)されたロダンがいた。彼はこの試合などどうでも良いと悪態を吐きつつ、またも例の携帯端末を操作する。



 粘着質な奴に逆恨みされると大変だ。


 悪夢の再現か、砲台からまたも火山弾が打ち上げられる。放置すれば先ほどのようにフィールドに落ちてくるのは確実だ。しかも今度はガードン側にも分からないタイミングで。



 そんなことなど露知らず、試合は続いていた。アルベガの絶妙の指示が飛び、チーム・ガードンが攻勢に転じていた。さらに会場のギミックまでもがガードンの味方をする。ミスティが外に蹴り出したように見えたボールが蒸気排出システムによって跳ね返され、インフィールドに(これも排出のタイミングをあらかじめ知っているアルベガの指示なのだが)。

 そしてフリーの形でボールを受けたのが、信助の腕を痛めたシュートを放ったヴェスだった。ヴェスは4度目の必殺シュート「カザンガン」を、今度は井吹に向けて撃ち込む。



井吹「やらせるか!!」


 井吹はやおら地に伏せ、気合いを込める。すると彼の全身をあの白いオーラが包み込む。これはソウル発動の先触れだ!!

 


 マンモスの姿に身を変えた井吹はその弩級(どきゅう)の前脚でシュートを踏みつけ、その圧でボールを押し込める。それはマンモスのソウルという豪快さにふさわしい圧巻のシュート阻止だった。


 ソウルパワーという心強い能力を引っ提げて帰って来た井吹の姿を天馬は大喜びで祝福する。アルベガはまたも増えたソウルの使い手に唖然とする。

 相次ぐ地球人のソウルの力に勝利が遠のくことを感じるアルベガに、上空から近づく影があった。それはかつては彼とは親子の間柄だったログロスだった。スタジアムの屋根に陣取った父を見つめ、アルベガは何を思うのだろう?


 そしてそこで上空を見たからこそアルベガは気づくことが出来た。空を赤く染めて落下する火山弾。それはロダンが放った第二弾である。


アルベガ「ロダンの奴、余計な真似を!!」



 神童は全員にフィールド外に出るよう指示する。敵も味方もない、全員がその指示に従う。真名部陣一郎(CV:野島裕史)はそれがここに落下することを予測するがそんなこと言われなくても分かる。


皆帆「言われなくても分かってるよ!」


 ヴェスも逃げようとするが、ふと見ると自陣ゴール前でじっと佇(たたず)むキャプテンの姿を認める。ヴェスはアルベガにも逃げるよう勧めるが、アルベガは自身の信念の戦いを邪魔されたことが我慢ならなかった。
 

アルベガ「俺の邪魔をするな〜っ!!」


 そう叫んだ彼の身体を、なんと白いオーラが包み込む。発動したアルベガのソウル! その力は落下してくる火山弾に向けられる。



 顔は鳥のままだが、身体はアルマジロセンザンコウのような姿になったアルベガ。尻尾の部分で火山弾を受け止める。偶然にもこのタイミングで地震が……。


 アルベガのソウルは、試合を邪魔をされたくない思いが結晶して生じたものなのだろうか? 火山弾を消し去ってしまう。破壊したというよりも残骸がひとかけらも残らないまま、霧消(むしょう)させたのだった!


 その奇跡的な様相にフィールドの誰もが目を見張った。だがその誰よりもこの現象に驚いているのは当のアルベガ本人だった。あれだけ否定してきたソウルが自身の中にも存在し、機械文明ではどうしようも出来ないことをやってみせたのだ。


グロス「あやつ……やりおったな!」


 アルベガの中に潜むソウルの力を想定していたログロスだけが、その事態を冷静に受け止めていた。きっと彼は息子にその能力があり、ここでそれが発現したことが嬉しかったに違いない。



 火山弾の問題が解決し、試合は再開される。お互いの星を賭けた戦いはまだ終わっていないのだ。井吹のロングフィードに、天馬から前線に上がるよう指示が飛ぶ。アースイレブンが誇るストライカーたちがそれに応え、一斉に上がっていく。

 ピンチの到来に、5番MF、コンドルのネバド・コンダルム(CV:不明)がアルベガに指示を求める。これまでのアルベガなら的確な指示が即座に飛んでいたはずだった。だが自身の内にもソウルがあるという事実に茫然自失のアルベガの耳には、そのコンダルムの悲鳴のような要請が届かない。

 ふと我に返ったアルベガの前には、天馬を筆頭に押し寄せてくるアースイレブンのストライカーたちの姿だった。天馬の隣を併走する神童がパスを求める。

 神童は必殺技「プレストターンV2」でコンダルムを抜き去り、個人技で次々と敵DFをかわしていく。そして前方視界クリア。アルベガがそうはさせじと飛び出すが、その叫び声に負けない声を上げ、神童が吠える!!



 ともに文明人とは思えない野生の叫びの表出、それはお互いのソウルの激突であった。クジャクの姿に変わった神童とセンザンコウの姿のアルベガ。その姿はどう見てもサッカーアニメのワンシーンには見えなかった。



 閃光が弾け、激突を制したのは神童だった!


 神童は野生の残渣(ざんさ)を残したままの豪快さで吠えて無人のゴールにシュートを叩き込む! ついに試合は3−2と、この試合始まって初めてアースイレブンがリードを奪うことに成功する!!


 すべてをぶつけた末に失点して悔しがるアルベガを尻目にする神童。そこにそのソウルを称えながら天馬が駆け寄る。そして敵ゴール前の彼からはもっとも遠い位置にいた井吹からも祝福が贈られた。そこにはともにこの星で試練を受けてソウルに目覚めた同士、心で通じるものがあった。



 試合は残り時間わずか。始めて追う立場となったチーム・ガードンは必死だ。全員で遮二無二(しゃにむに)突進してくる。一斉攻撃、しかもキーパーであるアルベガまでもがゴールをガラ空きにして突進してくる。これが最後のプレーであることは両チーム把握している。ガードンに今さら失点を恐れる必要などない。1点差でも2点差でも、負けは負けなのだから。

 ボールを持つコンダルムはもっとも信頼できるアルベガにラストプレーを託す。アルベガは最後のシュートと、渾身の力を込めて足を振り抜く。待ち受けるのは井吹だ。



 アルベガの最後のシュートを受け止め、誇らしげにボールを掲げる井吹。


 そしてそこでタイムアップ。試合終了のホイッスルが鳴り響く!! 試合はアースイレブンの勝利に終わる。歓喜に沸くアースイレブンベンチ。


 一方、敗れたチーム・ガードンのベンチ前では、監督のカルデラがその戦いを労(ねぎら)っていた。負けたことで滅びてしまうという現実を受け止めたくないアルベガは苦悶に呻(うめ)く。

 そこに降り立って来るのは、ログロスだった。うろたえるなと語る彼はアルベガに視線を促(うなが)す。アルベガの視線の先には、ログロスに宇宙を救う方法があると伝えた神童、井吹、そしてその根拠となる天馬の3人の姿があった。

 ログロスは地球の若者の健闘を称える。それを聞いてアルベガはログロスが彼らにソウル発動の方法を教えたことを察する。

 きっかけを与えただけだとログロスは応じるが、敵を利したその態度は機械化を、そして息子であるアルベガの思想を否定することにほかならないとしか受け止められなかった。

 ログロスはそれを認めない。アルベガを否定するために協力したのではなく、地球の若者たちの将来性を認めただけだと言う。

 そして彼らの希望、それが勝ち進むことによって宇宙全体を救うことに繋がっていることをログロスはアルベガに伝える。



 それに呼応するように、天馬が話を始めるが、アルベガはそれを信じようとしない。地球人の都合の良いウソに父親も踊らされただけだと猜疑心(さいぎしん)の塊(かたまり)のような態度をとる。

 試合に勝った後でそんな嘘をついても仕方がないということにアルベガは気づかないのだろうか? 怒りの憎しみはしばしばその目を曇らせる。

 ログロスは彼らを信じると語るが、アルベガはそれにも反発する。どこの星の人間とも分からない存在の言う言葉をどうして信じられるのか、若い彼には理解できないのだろう。

 ログロスは自分の言葉を彼らが信じたから、自分も彼らを信じることが出来たと返す。それは自分の言葉を信じようとしなかったアルベガに対する辛辣(しんらつ)なアンチテーゼでもあった。

 ログロスの言葉を信じたことで神童たちはロダンの罠にハマることを避けられた。初めて出会った異星人であるログロスの言葉を信じた彼らを、ログロスも信じたという思いは道理に適(かな)っている。


 ログロスは赤い石を探しているという地球人側の事情に言及する。ログロスの言葉を信じた上で試合に勝った彼らに対するご褒美(ほうび)であるかのように、彼はそれを地球人に与えると語る。

 その赤い石についてはアルベガも心当たりがあった。それが種族の秘宝「紅蓮の炎石」を指すと聞き、アルベガは動揺する。進化して旧文明を否定すると言いつつ、古い言い伝えの石ころにこだわる息子を諭すように語るログロスに、「紅蓮の炎石」はガードン人の秘宝だとしてアルベガは譲らない。

 だがグランドセレスタ・ギャラクシーの公式戦に敗れた彼らにとって、残していても滅亡するだけのお宝にどれほどの意味があるだろう? ガードンに生きる者の魂を守ることこそが大事だと再びログロスに諭され、アルベガは返す言葉がない。

 だが貶(おとし)めることだけではない。お前にはそれが出来るとアルベガの能力を認めた上での言動だったことを同時に明かすログロス。「たまには人を信じるのも悪くないぞ」と好々爺(こうこうや)の笑みを向けられ、アルベガはおのれの未だ至れない高き境地に父が達しているという単純な事実に気が付くのであった。



 後日、発車寸前の【ギャラクシーノーツ】号の前で天馬に至宝「紅蓮の炎石」を渡すアルベガの姿があった。それは父と同じく天馬たちの使命を信じ、賭けてみる気になったからこそであった。今回の戦いを経て少し大人になったアルベガは、笑顔でかつての敵に大事な宝を託したのだった。



 天馬たちとの戦いが、結果的にガードン人たちの種族の融和にも影響したと言える。アルベガも父の言うソウルの力を信じてみる気になったはずだ。そう思うとグランドセレスタ・ギャラクシーの戦いも不毛なものではまったく無く、とても有意義なものだったと言えるだろう。親子の絆はきっと前よりも強く結びついたはずだ。



 アルベガの、全ガードン人たちの希望を託されて天馬たちは次の惑星へと向かう。



 サンドリアスで手に入れた黄色い石、サザナーラで入手した青い石、そして今回のガードンでゲットした赤い石の計3つの石を前に感慨に浸る天馬。カトラ・ペイジ(CV:上田麗奈)が語っていた話によると、希望のカケラはあと一つということになる。


 そこに件(くだん)のカトラ(のビジョン)が姿を現す。天馬が今回の試練も見事に成功させたことを知っているのだろうか、その顔には満面の笑みをたたえていた。



 カトラと天馬のその邂逅(かいこう)を扉の覗き窓から見ている者がいた。それはカトラを姫と仰ぎ慕うポトムリ(CV:三木眞一郎)の意識を内在させる、みのりであった。天馬の話を信じなかったみのり=ポトムリはこの姿を見て激しく驚き、動揺する。


 見られていることなど知らないカトラは天馬に感謝の言葉を述べる。しかし宇宙の平和を守りたいカトラの望みはそのまま天馬の望みでもある。礼を言われたことが口はばったい天馬はこう言ってカトラに配慮する。


天馬「俺は宇宙の人たちとも自由に楽しくサッカーをやりたい。そのためにも知りたいんだ……宇宙を救う方法を!」


 カトラは残り一つのカケラを手に入れることが出来ればその思いも実現できると笑顔で語り、その姿を消していく。消えていくカトラを見てその気持ちが抑えられなくなったみのり(ポトムリ)は思わず天馬の部屋のドアを開けてしまう。

 覗き見していたことなどお構いなしに室内に駆け込んでカトラの姿を探すみのり(ポトムリ)。不思議そうに見つめる天馬に声をかけられ、我に返る。カトラ姫が自分の元ではなく、天馬の元にだけ姿を現すという話が事実であったこと……それはカトラを慕うポトムリにとっては受け入れがたい事実であった。



 カトラが生きていたことは命を賭してカトラを救おうと考えていたポトムリにとってはこれ以上ないほど喜ばしい話であるに違いない。だが窓に写るポトムリのその寂しそうな顔は、自分が彼女にとって最重要ではなかったという悲しみに覆われていた。



 次回に続く。



  エンディング



 惑星ガードン編終了。その後のことは描かれてはいなかったが、アルベガとログロスの親子間の確執もおそらく解決に向かったのだろう。それは同時に東の種族と西の種族との和解にもつながる。お互いの意見のどちらが正しいということはないという気がするわけで、どちらも譲り合って理想のガードン人たちの未来を追求するのが理想的だろう。鳥類の進化系であり、翼を持って誕生したガードン人たちは我々地球人よりもその必要性が高いと思われるし。いずれにせよアルベガにもソウルの能力があったということで、和解の大いなる触媒になるだろう。

 ソウルといえば、ロダンもすごいソウルを持っていたのにそれを実戦で何ら披露することなく退場させられてしまったのは残念な気がする。あのソウルと井吹のマンモスのソウルとの激突は見てみたかった気がする。


 味方に目を転ずると、鉄角に続けて神童、井吹も実戦でソウルを披露した。使えるようになった順としては鉄角の方が後手なんだけど。3人ともイメージ通りのソウルだけど、私は鉄角はイノシシのソウルだと思ってたんだけどね。彼って猪突猛進タイプでしょ? 神童のクジャクというのも華麗な彼らしくて良かったかも。キジ科のクジャクは結構獰猛らしいし。


 これでまだソウルを出していないキャラは天馬、信助、さくら、真名部、九坂、そして囚われの身である剣城の6人となった。過半数の7人がソウルを発動できるようになったというわけだ。次は誰なのか。非常に楽しみである。


 そして次の惑星の敵はどんな相手なのか?パッと見たところ、何だか昆虫の進化系のような印象だった。私は虫が基本的に嫌いな人なので、ちょっと嫌な敵かも。さくらとかも苦手そうな気がする。



  次回「緑の惑星ラトニーク!」に続く。



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